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■インフルエンザ治療薬「タミフル」、10歳代への投与再開へ 厚労省の専門家会議 [健康ダイジェスト]

 インフルエンザの治療薬で服用した患者の異常行動が相次ぎ、10歳代への投与が原則禁止されていた「タミフル」について、厚生労働省の専門家会議は、異常行動はタミフル特有のものとはいい切れないとして、使用を再開する方針を示しました。
 タミフルは2001年に成人用、2002年に乳小児用の販売が始まりましたが、服用した中学生がマンションから転落するなどの事故が相次いだことを受けて、厚労省は2007年3月、「因果関係は不明」としながらも緊急安全性情報を出し、10歳代の患者への投与を原則禁止としました。
 厚労省の専門家会議は禁止を継続すべきか検討してきましたが、16日、タミフルを服用していない患者やほかの治療薬を服用した患者でも同じような異常行動が起きているなどとする調査結果をまとめました。
 これを受けて、異常行動は高熱などによるものでタミフル特有のものとはいい切れないとして、ほかのインフルエンザ治療薬と同じように10歳代の患者への使用を再開する方針を示しました。
 2006年の調査では、約15万の全医療機関で、インフルエンザ患者で飛び降りや駆け出しなど異常行動を示した症例が137件あり、そのうち6割がタミフルを服用。年齢別では、10歳代が42人と最も多くなりました。
 一方、厚労省の研究班による18歳未満の1万人を対象にした調査では、タミフルを使用しても、使用しない人と比べて異常行動は少ないとする結果がありました。
 タミフル投与の原則中止後は、吸入薬のリレンザやイナビルなど他のインフルエンザ治療薬が活用されましたが、タミフルは飲み薬で使いやすいため、専門家から投与再開を求める声が上がっていました。
 インフルエンザ治療薬の主流となっているタミフルの10歳代への使用再開で、患者にとっての利便性が増します。ただ、他の治療薬も含めて異常行動はなくなっておらず、厚労省は、インフルエンザが流行する11月ごろまでに、製薬会社にタミフルの添付文書の改訂を指示するとともに、異常行動への注意を促す記載を新たに求め、引き続き保護者などに対し十分注意するよう呼び掛けていくことにしています。
 厚労省の副作用報告では、2016年に10歳代の2人がリレンザやイナビルを使用した後、マンションから飛び降りた事例もあります。厚労省の研究班の調査では、タミフルに限らず、2017年までの8年間で約800件の異常行動が報告されました。
 厚労省は2007年のタミフル投与の原則中止後、10歳未満の患者は少なくとも2日間、保護者が目を離さないよう呼び掛けました。2017年11月には、ドアや窓の施錠や、一戸建ての場合は1階に寝かせるなどの対策を施すよう求める通知を出しています。
 日本小児科学会によると、インフルエンザは治療薬の投与がなくても自然治癒で治ることが多いものの、高熱の期間を短くしたり、重症化を予防したりするとして、子供への薬の投与が勧められているといいます。
 厚労省の担当者は、「異常行動とタミフルとの因果関係はまだわかっていない。患者を守るためのさまざまな対策が必要で、これから練っていく」と話しています。

 2018年5月19日(土)

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■iPS細胞を使った心臓病治療、大阪大が初実施へ 厚労省の審議会が了承 [健康ダイジェスト]

 体のさまざまな組織になるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って重い心臓病の患者を治療する、大阪大学の臨床研究が16日、厚生労働省の審議会によって了承されました。iPS細胞を使った心臓病の治療の研究は世界で初めてで、研究チームは今年度中にも1例目を実施するということです。
 大阪大学の澤芳樹教授らの研究チームは、iPS細胞から作製した心臓の筋肉の細胞をシート状にして重い心臓病の患者の心臓に直接貼り付ける手術を行い、機能の回復を目指す臨床研究を厚労省に申請していました。
 この研究についての2回目の審議会が16日、厚労省で開かれ、研究の対象を重症の患者に絞るほか、患者に対する同意の文書をわかりやすいものにすることを条件に、計画は了承されました。
 研究チームは、今年度中にも患者の臨床研究を始めて安全性と有効性を確認し、これまで治療が難しかった重い心臓病の新たな治療法として確立することを目指しています。
 京都大学の山中伸弥教授が11年前に作り出したiPS細胞を応用した再生医療の臨床研究は、神戸市にある理化学研究所などが目の難病、加齢黄斑変性で実施していますが、世界で初めて心臓病の治療で実施することで、医療分野での応用が本格的に進むことになります。
 厚生労働省研究開発振興課の森光敬子課長は、「大変難しい臨床研究なので、安全性に気を付けて慎重に進めてほしい」と話していました。
 重い心臓病の患者1人に移植する2枚のシートには、細胞が約1億個含まれていて、心臓の筋肉と同じように収縮を繰り返します。澤教授らの研究チームは、このシートを患者の心臓に直接貼り付け、心臓の収縮する力を回復させる研究を進めており、これまでにも、患者自身の足から取り出した筋肉の元となる細胞をシート状に培養して心臓に貼り付け、機能を回復させる研究を50例以上実施しているということです。
 今回の臨床研究では、iPS細胞を使った心臓の筋肉のシートを合わせて3人の患者に移植して、安全性などを確認する計画です。その上でさらに医師主導の治験を行って、心臓移植しか助かる方法のない重い心臓病の患者の新たな治療法として確立したいとしています。
 また、今回使われるiPS細胞は、京都大学iPS細胞研究所があらかじめ作製し、保存しているものです。患者自身のiPS細胞を使う場合に比べ、治療までにかかる期間やコストを大幅に減らすことができるということです。
 澤教授は16日午後、東京都千代田区にある大阪大学東京オフィスで記者会見し、「ここまで10年にわたって研究を続けてきて、ようやくスタート地点に立つことができたと、身が引き締まる気持ちだ。難しい道がまだまだ待っていると思うが、1人でも多くの患者がよりよい治療で助かるように努力したい」と述べました。その上で、今後の見通しについて「これから患者に投与する細胞の培養を始めて、安全に最大限の配慮をしながら、年度内に1例目をスタートしたい」と述べました。

 2018年5月18日(金)

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