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■乳がん予防手術を条件付きで「強く推奨」 学会、診療ガイドラインを改訂 [健康ダイジェスト]

 女性のがんとして最も多い乳がんの治療法に関する日本乳癌学会の診療ガイドラインが改訂され、遺伝子の変異によって再び乳がんになるリスクが高い患者に対しては、カウンセリングの体制が整っていることなどを条件に、がんになっていない乳房も切除して予防することを「強く推奨する」ことになりました。発症や死亡を確実に減らせるとのデータが集まったことが理由。
 この診療ガイドラインは16日に公開され、乳がんを予防するための手術が今後、増える切っ掛けになるとみられます。
 乳がんについて標準的な治療法をまとめた日本乳癌学会の診療ガイドラインでは、これまで乳がんを予防するためにがんのない乳房を切除する手術は「検討してもよい」とされ、「推奨」まではされてきませんでした。
 学会はこの診療ガイドラインを3年ぶりに改訂し、片方の乳房にがんが見付かった「BRCA」と呼ばれる遺伝子に変異がある患者については、再び乳がんになるリスクが高いとして、患者が希望し、カウンセリング体制が整備されていることなどを条件に、がんがない乳房も切除して予防する手術を「強く推奨する」としました。
 国立がん研究センターの推計では、年間約9万人が乳がんと診断されていて、その10%程度の患者にBRCA遺伝子の変異があるとされていますが、この予防手術は健康保険の対象になっておらず、昨年までに報告された実施件数は79件。
 診療ガイドラインの改訂の背景には、乳がんと遺伝子の関係などが明らかになってきたことがあります。がんを抑制するBRCA遺伝子に変異がある女性は、乳がんになる確率が約40%から90%で、一般の人の約9%の5倍から10倍程度になるとされています。さらに、一度、乳がんになった患者が、10年以内にもう一方の乳房にも再びがんが見付かる確率は、BRCA遺伝子に変異がある場合は約20%で、患者全体の約2%の10倍程度になるということです。
 しかし、予防手術によって再び乳がんになる確率を10分の1に低下させることができるとされています。こうした予防手術の結果、患者の15年後の生存率は86%で、手術を受けていない患者の74%よりも12ポイント高くなったと海外の臨床研究で報告されています。
 さらに、再び乳がんになる不安を軽減する効果や社会的なコストを減らす効果も複数の研究で示されたため、学会は、医師の勧めではなく患者本人が自発的に希望し、理解や選択を助けるカウンセリング体制が整った病院で行うことなどを条件に、これまでの「検討してもよい」から「強く推奨する」に診療ガイドラインを変更しました。
 一方、同じ遺伝子の変異があるもののがんが見付かっていない人に対して、両方の乳房を予防のために切除することについては、本人が希望していることを条件に「弱く推奨する」としています。
 生存率を高めることが明確には示されていないものの、発症を減らし、患者の不安も軽くできるのが理由。この両方の乳房を切除する予防手術については、変更前のガイドラインでは「検討してもよい」となっていましたが、学会は、今回の改訂で推奨する程度を5段階から4段階に変更したことに伴うもので、これまでの位置付けと変わっていないとしています。
 アメリカでは乳がんを予防するために乳房を切除する手術は、遺伝子の変異がわかった女性のおよそ50%が受けているという報告があり、5年前にはハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが予防のために両方の乳房を切除したことで注目されました。
 診療ガイドラインの改訂を担当した順天堂大学附属順天堂医院ゲノム診療センターの新井正美副センター長は、「乳がんを予防するための手術が今後、増えると予想され、カウンセリングなどの病院側の体制整備も課題になってくる。対象となる人は医師などとよく相談して決めてもらいたい」と話しています。

 2018年5月19日(土)

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