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■iPS細胞を使う視細胞移植、大阪大に申請へ 理研・高橋氏が2つ目の臨床研究 [健康ダイジェスト]

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、目が感じた光を脳に伝える「視細胞」のもとになる細胞を作り、「網膜色素変性症」という難病の患者に移植する臨床研究について、理化学研究所の高橋政代・客員主管研究員は8月31日、大阪大学の有識者委員会に計画の審査を申請する意向を明らかにしました。
 時期は未定で、準備が整い次第、審査機能を持つ大阪大の委員会に申請するといいます。計画が妥当と認められれば、厚生労働省に実施の承認を申請します。
 網膜色素変性症は、網膜の内部にあり、光を電気信号に変えて脳に送る視細胞に異常が起きる病気。視野が狭くなり、視力の低下や失明につながります。患部は視細胞がなくなってしまうことから、iPS細胞から視細胞のもとになる細胞を作って患者の目に移植し、視細胞に成長させて視力の回復など症状の改善を目指します。
 高橋氏らの研究チームは2014年、別の目の重い病気である「加齢黄斑(おうはん)変性」の患者に、同様の方法で作った網膜細胞を移植する世界初の臨床研究を実施しており、iPS細胞を使った2つ目の臨床研究となります。
 iPS細胞を使う再生医療研究は、ほかに京都大がパーキンソン病、大阪大が目の角膜の病気でそれぞれ移植を実施。大阪大の心不全治療、京都大の再生不良性貧血への輸血、慶応大の脊髄損傷治療も厚労省に計画が承認され、実施の準備を進めています。

 2019年9月2日(月)

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■子宮頸がんワクチン接種「決めかねる」約4割 厚労省調査 [健康ダイジェスト]

 厚生労働省は8月30日、子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するワクチンの情報の認知度について調査した結果を発表しました。ワクチン接種については、「決めかねている」「わからない」と答えた人が合わせて6割近くに上りました。
 昨年10月、全国の12~69歳の男女2400人にインターネットで調査しました。12~16歳には母親が横にいる状態で回答してもらいました。
 このうち、HPVワクチンの定期接種の対象となっている12~16歳の女性と、同居する家族計235人に、ワクチン接種への考えを尋ねたところ、「わからないことが多いため、決めかねている」が41・3%、「わからない」が17・0%に上りました。「接種したい(してほしい)と思っているが、まだ接種をしていない」は17・4%、「すでに接種をした」は2・6%でした。
 厚労省が昨年、ワクチンの効果やリスクの理解を深めてもらうために改訂したリーフレットについては、回答者全体の86・3%が「見たことはない」と回答しました。「ワクチンの意義・効果」と「接種後に起こりえる症状」については、「知らない、聞いたこともない」と答えた人がそれぞれ34・2%、45・5%でした。
 厚労省の担当者は、「情報が伝わっていないことは残念だ。ワクチンの接種対象者やその保護者に対し、より確実に情報を届ける方法を検討する必要がある」としています。
 HPVワクチンは、2013年4月から小6~高1の女子を対象とした定期接種が始まりました。だが、接種後に長期的な痛みやしびれなどを訴える声が相次ぎ、国は同年6月、積極的な勧奨を中止しました。

 2019年9月2日(月)

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■再生医療の新しい研究指針を策定 iPS細胞の産業化を見据える [健康ダイジェスト]

 文部科学省は8月に、iPS細胞(人工多能性幹細胞)に代表される幹細胞を使った再生医療の実用化へ向けた新しい研究指針を策定しました。これまでは主に細胞移植の効果や安全性を調べる研究に軸足を置いていましたが、新指針はiPS細胞の備蓄事業の公益法人化や、安価なiPS細胞の作製など産業化を見据えた戦略に書き換えました。
 日本は臨床研究では一歩リードするものの、産業応用の面では欧米に後れをとる面もあり、再生医療の普及に向けた実効性のある戦略が求められています。
 文科省が8月に新指針をまとめたのは、幹細胞や再生医療に関する研究の指針。政府が関連する研究を支援する際の方針に当たるもので、文科省の専門部会で検討されてきました。2012年に初めて作成してから今回が2回目の改正で、産業応用を見据えた研究の方向性を示しました。
 大きな変更は、京都大学iPS細胞研究所の「iPS細胞ストック」と呼ぶ事業を公益法人に移すことです。この事業では、再生医療で使うのに適したiPS細胞をあらかじめ備蓄しています。2012年度から年間約10億円の公的資金を充ててきましたが、国の再生医療関連予算は約3年で期限を迎えます。
 そこにiPS細胞研究所所長の山中伸弥さんが危機感を抱き、民間資金を入れて運営できるように考えたのが公益法人化です。公益法人は高品質なiPS細胞を製造し、企業や研究機関に供給します。受け取った企業が高品質のまま移植直前の状態に育てたり、管理したりしやすいようにする役割です。
 iPS細胞研究所で、iPS細胞の製造や供給を担う約100人を異動させます。プロジェクトごとの任期付きという不安定な身分から、公益法人の正規職員にし、優秀な人材を維持できるようにします。新指針がまとまった8月の専門部会で山中さんは、「実用化で欧米の後じんを拝しないよう、適正なコストで供給できる取り組みを前に進めたい」と安堵の表情をみせました。
 もう一つ山中さんが構想を示していた「マイiPS細胞」も、指針に初めて盛り込まれました。自分専用のiPS細胞を安価に作るというもので、再生医療の普及を見据えます。製造コストを現在の10分の1以下の約100万円にし、製造期間を今の約1年から数週間にします。山中さんは、「2025年までには実用化したい」と話しています。
 新指針には、遺伝子を自在に改変できるゲノム編集を活用することも、新たに盛り込みました。人によって免疫の型の種類は異なるため、型を合わせずに細胞を移植すると拒絶反応が起こります。ゲノム編集で免疫の型に左右されずに使えるiPS細胞を作る研究などを推進する狙いです。マイiPS細胞とともに、再生医療の普及の鍵になる研究です。
 一方、新指針は再生医療の課題も指摘しました。1つは論文数や特許数の低迷で、1998~2017年の論文数では首位のアメリカが他国を圧倒。日本は5位にとどまります。2006~2018年に公開された特許の出願数をみると、iPS細胞に関してはアメリカに次ぐ2位と高いものの、分野別でみると、患者に移植する段階の「細胞療法」ではスイスに次ぐ3位でした。この要因は、ゲノム編集技術を使って細胞を作る技術の特許取得を進める企業がスイスにあるためで、今後競争が激しくなる可能性を指摘しました。
 幹細胞を取り巻く環境は、国際的に変化しています。特にアメリカでは研究などに使う幹細胞を備蓄、供給する専門機関が続々と設立され、企業が研究用試料の作製などに利用しています。今後は企業などが参入しやすいように、いかに低コストで高品質な細胞を作れるかが重要となります。

 2019年9月2日(月)

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