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■「着床前診断」の審査体制を見直しへ 産科婦人科学会が18年ぶり諮問 [健康ダイジェスト]

 体外受精させた受精卵の特定の遺伝子などを調べ、異常がないものを子宮に戻す「着床前診断」について、日本産科婦人科学会は8月31日の理事会で、医療機関の申請を受け、学会がすべての審査を担う体制を見直し、法律や倫理など外部の有識者を交えた倫理審議会に諮問することを決めました。厚生労働省にも公的な審査の場や法整備の必要性などを働き掛けていきます。
 産科婦人科学会が倫理審議会に諮問するのは、代理出産の是非を検討した2001年以来18年ぶり。これまで審査対象を「命が危ぶまれる重篤な症例」や流産を繰り返す「習慣流産」に限っていましたが、昨年から「日常生活を強く損なう症例」にも拡大しました。
 ただ、「日常生活を強く損なう」との定義が医師ら関係者の間で異なるため、学会だけでの対応に限界があると判断。学会への医療機関の申請は、累計で500件を超えており、調べる病気が多様化していることも背景にあります。
 理事会後に記者会見した学会倫理委員会の三上幹男委員長は、「着床前診断の施設の認定や症例の認可などの判断は学会が行ってきたが、医療や人々の考え方が進歩してきている中で、審査方法を見直す時期にきている」と述べました。
 新たな審査体制については、倫理審議会のほか、日本人類遺伝学会など遺伝医学関連の10学会や患者団体などからも話を聞いてまとめます。学会内では、患者と接する医療機関の倫理委員会に審査を任せるなどの意見も出ているといいます。
 日常生活を強く損なう症例を巡っては昨年、遺伝性の悪性腫瘍(しゅよう)である「網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)」の申請があり、一度は承認しませんでしたが、再申請を受けて審査を継続しています。この病気は失明の恐れがあるものの、命にかかわる危険はありません。
 新たな審査体制が確立するまでの間、命が危ぶまれる重篤な症例や習慣流産については引き続き、産科婦人科学会で審査を行います。
 着床前診断の審査は、遺伝性疾患に対して2015年度までに138件の申請があり、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなど成人までに死亡することが多い125件を承認。習慣流産は411件の申請中359件を認めました。審査対象の拡大で、申請件数が大幅に増えることを懸念する声もあります。

 2019年9月3日(火)

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■皮膚がんを遺伝子操作したウイルスで治療 東大と信州大が臨床試験を開始へ [健康ダイジェスト]

 信州大病院と東京大医科学研究所病院は8月27日、がん細胞を狙い撃ちするよう遺伝子操作したウイルスを使って、皮膚がん治療の治験(臨床試験)を9月にも始めると発表しました。切除ができなかったり転移があったりする皮膚がん患者を対象に、安全性と治療効果を確かめます。
 臨床試験が始まるのは、口の周りに水膨れなどを起こす「単純ヘルペスウイルスI型」の遺伝子を改変した「T―hIL12」を使う治療。がん細胞の中だけで増え、増える時にがん細胞を破壊するよう遺伝子操作してあります。免疫細胞を活性化するタンパク質の遺伝子も加えてあるため、患者自身の免疫によるがん細胞の攻撃を強化する効果があると期待されます。
 臨床試験は、皮膚がんの一種、悪性黒色腫(メラノーマ)の患者計24人を対象に2病院で行う予定で、臨床試験に参加する患者を募集しています。
 第1段階(第1相試験)は、標準的治療の効かなかった患者6人が対象。開発したウイルスを2週間おきに2~4回、がんができている部分に注射します。
 第2段階(第2相試験)は、標準治療の1つである免疫チェックポイント阻害剤・オプジーボによる治療が予定されている患者18人を対象に、オプジーボとウイルス療法を併用します。研究チームは、ウイルスとオプジーボの相乗効果に期待しており、他のがんの治療にも応用できるとみています。
 今回の治療用ウイルスの土台となる遺伝子改変ウイルスは、脳腫瘍(しゅよう)患者を対象にした臨床試験がすでに終わっており、安全性と効果が確認されています。
 治療用ウイルスを開発した東大医科学研究所の藤堂具紀(ともき)教授は、「皮膚がんは、患者自身の免疫による攻撃が比較的功を奏しやすいので、体内でウイルスが増殖するたびに免疫を活性化するタンパク質が作られる今回のウイルスは効果があると考えられる。土台となる治療用ウイルスにさまざまな遺伝子を加えることで、異なる性質のがんに合った治療用ウイルスを開発していきたい」と話しています。

 2019年9月3日(火)

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