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■アメリカの「オピオイド」訴訟で製薬会社破たんも 鎮痛剤乱用で年5万人近く死亡 [健康ダイジェスト]

 アメリカでは、「オピオイド」と呼ばれる鎮痛剤の乱用による薬物中毒で年間5万人近い人が死亡し、深刻な社会問題になっています。この問題を巡り、製薬会社などを相手取った訴訟が2000件以上起きており、中には巨額の和解金のため、経営破たんする製薬会社も出てくるなど影響が広がっています。
 オピオイドはケシの成分などを使った鎮痛剤で、アメリカでは1990年代半ばから広く処方されるようになり、その結果、乱用によって中毒になる人が増え、深刻な社会問題になっています。
 過剰摂取による死者の数は、2007年は1万8515人でしたが、10年後の2017年には4万7600人へと急激に増えました。これは1日当たり130人がなくなる事態で、同じ2017年のアメリカでの交通事故による死者数3万7000人を大幅に上回ります。トランプ政権はこの年、「非常事態」を宣言しています。
 この問題を巡っては、製薬会社や医師が安易に販売したり処方したりしたとして、州政府などが製薬会社などを相手取って損害賠償を求める訴訟がアメリカ全土で2000件以上起きています。
 8月には医薬品大手の「ジョンソン・エンド・ジョンソン」が、日本円にして約606億円の賠償命令を受けたほか、9月15日には、「パーデュー・ファーマ」が、日本円で約1兆1000億円の和解金が必要になり経営破たんしました。
 10月21日には、各地の訴訟を一括した審理が100を超える企業を被告としてオハイオ州の裁判所で始まる予定で、影響はさらに広がるものとみられています。
 オピオイドは、がんなどの鎮痛剤として長く使われてきましたが、経済協力開発機構(OECD)によりますと、製薬会社が販売を促進し、医師が比較的簡単に処方し始めた1995年ごろから、消費量が大幅に増えたということです。中には、依存症のリスクを過小評価して販売を進めた製薬会社もあり、その結果、中毒になる人が増えて深刻な社会問題になりました。
 トランプ大統領が非常事態を宣言した直後の2017年11月に大統領経済諮問委員会がまとめたレポートによりますと、オピオイドの問題に伴って起きる生産性の低下や、医療費の増大といった経済的な負のコストは、2015年時点のアメリカの国内総生産(GDP)の2・8%に相当する5040億ドル、日本円で54兆円に上るとしています。
 9月15日に経営破たんした「パーデュー・ファーマ」は、積極的にオピオイドを販売していたとして、厳しい目が向けられていました。多くの損害賠償訴訟を抱え、このうち24の州などと和解することで合意しましたが、日本円にして1兆円余りの和解金を準備するため、日本の民事再生法に当たる連邦破産法11条の適用を申請し、経営破たんしました。しかし、依然として合意していない州もあるため、完全な和解には至っていません。
 また、パーデュー・ファーマのオーナーであるサックラー一家はアメリカ屈指の富豪ともいわれ、今回の約1兆1000億円の和解金のうち約3200億円を用意するとしていますが、「不十分だ」と指摘するメディアもあります。
 このほか、同じくオピオイドの製造で業績を伸ばしていた「マリンクロット」社は、2015年3月には132ドルあった株価が、今年に入って急落し、現在は2ドル前後と60分の1に下落するなど、厳しい経営環境に直面する関連企業も少なくありません。
 3年前に亡くなった世界的な歌手、プリンスさんの死因が、オピオイドの一種フェンタニルの過剰摂取だったことも、オピオイドが社会問題化する一因になりました。
 製薬業界について詳しいリサーチ アナリストのデビッド・アムセレム氏は、「来月始まる審理では、一刻も早い救済が必要だとする原告側の要望もあり、被告となった企業が早期に原告と和解するため、各企業が資金を拠出する『基金』の創設のような話が出てくると考えられる。企業にとっては、長期間にわたって巨額の資金が必要になるため、財務状況が悪化するところも出てくるのではないか」と話しています。

 2019年9月22日(日)

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■乳房再建治療の中断、3000人を超える 人工乳房の自主回収の影響 [健康ダイジェスト]

 乳がん患者の乳房再建で使う人工乳房が特殊な血液がんを発症するリスクがあるとして自主回収になった影響で、代替品がなく、予定していた手術が取りやめになり、治療の中断を余儀なくされた患者が3000人超いることが、関係学会の緊急調査で明らかになりました。自主回収が始まり間もなく2カ月たちますが、混乱が続いています。
 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が8月上旬、人工乳房による再建手術を行う全603医療機関を調査。回答があった414カ所で、乳房再建のため、胸の皮膚を伸ばす拡張器を挿入中の患者が3493人いました。学会は、この9割以上が人工乳房による再建手術を予定していた患者とみています。
 3493人のうち、172人が拡張器から人工乳房への入れ替えなど緊急の手術が必要と報告されました。拡張器が挿入されていることで、磁気共鳴画像(MRI)検査や追加のがん治療が受けられないケースなどです。
 アメリカの食品医薬品局(FDA)が7月24日、人工乳房の挿入後に特殊な血液がんを発症した人が世界で573人おり、33人死亡していたと発表し、発症リスクが高い製品「ゲル充填人工乳房」の自主回収をアイルランドの製薬大手アラガンに要請しました。アラガンは8月末、日本で緊急の入れ替えが必要な患者に限り、別製品の先行受注を始めました。10月中旬から本格販売を始めます。
 ただ、この別製品は2013年に公的医療保険の適用になったものの、破損しやすいなどの問題があり、昨年、販売中止になりました。治療を中断した患者は、再販売されるアラガン社の別製品を使う、自分の脂肪などで乳房をつくる「自家再建」に変更する、他社製品の保険適用を待つなどの選択を迫られています。

 2019年9月22日(日)

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■乳幼児の胃腸炎を予防、ロタワクチン定期接種化へ 早ければ2020年度にも [健康ダイジェスト]

 乳幼児の重い胃腸炎の原因になるロタウイルスのワクチンについて、厚生労働省の専門部会は13日、公費で受けられる定期接種の対象とする方針を決めました。定期接種化に向けて課題だったワクチンの価格について、ワクチンメーカー側が値下げの要請に応じました。接種の時期や対象などについて引き続き検討し、早ければ2020年度中にも実施するといいます。
 ロタウイルスは感染力が強く、5歳までにほぼすべての子供が感染します。患者の便に触った手などから口に入り、下痢や嘔吐(おうと)、発熱、腹痛などを引き起こします。抗ウイルス薬なく、通常1~2週間で自然に治るものの、免疫がない子供は重症化しやすく、脱水症状で点滴や入院が必要になる場合もあります。
 ワクチンは、グラクソ・スミスクライン社の「ロタリックス」と、MSD社の「ロタテック」の2つが国内で承認されており、厚労省は定期接種の対象にするかを検討してきました。
 厚労省の小委員会は今年7月、ワクチン接種に伴う副反応と比べて予防の利益が上回ると評価。一方、費用対効果の面では、接種にかかる費用を1人当たり4000円ほど下げる必要があるとしました。
 このため、厚労省はワクチンメーカー2社に値下げを要請。13日の部会の非公開の聞き取りで2社が値下げに応じたため、予防接種法に基づき公費で賄う定期接種とすることを了承しました。

 2019年9月22日(日)

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