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■「紅麹」サプリの死者調査報告3月以降なし、武見厚労相「もう任せておけない」 小林製薬「確認を重視」と釈明  [健康ダイジェスト]

 小林製薬の「紅麹(べにこうじ) 」成分入りサプリメントを巡る健康被害問題で、同社が摂取との因果関係を調査している76人の死者について、厚生労働省に報告していなかったことが28日、明らかになりました。問題の発覚時にも行政への報告の遅れが指摘されており、同社の姿勢に批判の声が上がっています。
 「報告がなかったことは極めて遺憾。もう小林製薬だけに任せておけない。厚生労働省が小林製薬に調査計画を立てさせ、進捗(しんちょく)状況も管理する」。この日、報道陣の取材に応じた武見敬三厚労相は、語気を強めました。
 今回の健康被害を巡っては、小林製薬が1月に「紅麹コレステヘルプ」などのサプリによる健康被害の情報を把握してから、国や自治体に報告するまで約2カ月かかったことが問題視されました。
 このサプリは機能性表示食品で、問題を受け、政府は5月末、同食品の製造・販売事業者に医師の診断がある健康被害情報を把握した場合、因果関係にかかわらず、速やかな報告を義務付ける再発防止策をとりまとめた経緯があります。
 今回、76人の死亡事例の相談が寄せられていることは、厚労省が13日に同社に問い合わせたことが切っ掛けで明らかになりました。厚労省の担当者は、「毎日やり取りしており、会社の対応を信頼していた。非常に悲しい」と話しました。
 小林製薬は問題発覚後の3月29日の記者会見で、「我々がやるべきことは、被害を受けた患者や不安を感じている方に情報を提供することだ」などと述べ、患者らの不安払拭(ふっしょく)のために、情報開示を進めていく方針を示していました。
 同社に寄せられた相談を基に、死者数や入院者数、医療機関の受診者数を厚労省に報告していました。だが、3月29日に関連が疑われる死者数を5人と発表して以降、2カ月余りにわたって、この5人以外の死者に関する情報は、一切報告していませんでした。
 同社は28日、報告をしていなかった理由について「確認手続きが完了していなかった。詳細な確認を(した後で報告することを)重視していた」と釈明しました。
 死者に関しては、これまでは摂取との関連性が疑われる腎関連疾患と診断されたケースに限っていた報告の対象を、がんや脳梗塞、肺炎など他の疾患の診断などにも広げたといいます。
 同社はこの日、記者会見を開きませんでした。理由については「伝えたい内容が多岐にわたり、正確かつ同時に知らせるには、文書による発表が適切だと判断した」と回答しました。
 小林製薬は、この問題に関する補償対応本部を新設することも発表しました。
  太田肇・同志社大教授(組織論)は、 「死亡事例の公表の遅れは、原因究明の遅れに直結する。小林製薬は少しでもリスクを把握した段階で報告すべきだった。最初の健康被害を把握してから公表まで2カ月余りかかった初動対応に続き、情報発信への消極的な姿勢が改善されておらず、重大な社会問題と認識できているか疑わしい」と話しました。
 台湾紙・「自由時報」によると、小林製薬の「紅麹」成分入りのサプリメントの健康被害問題で、台湾消費者保護協会は27日、摂取した後に体調不良を訴えた約30人が同社の子会社「台湾小林製薬」を相手取って集団訴訟を起こし損害賠償を求めると明らかにしました。
 報道によると、台湾当局は6月14日までに60件以上の被害を確認しています。同協会は、被害者に訴訟への参加を呼び掛けています。

 2024年6月29日(土)

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■精神障害の労災883件、過去最高を5年連続で更新 カスハラは52件 [健康ダイジェスト]

 厚生労働省は28日、仕事によってうつ病などの精神障害を発症し、2023年度に労災認定を受けたのは883件だったと発表しました。前年度から173件増加し、統計を始めた1983年度以降の過去最多を5年連続で更新しました。自殺や自殺未遂に至ったケースは計79件で、前年度より12件多くなりました。
 精神障害の原因で最も多かったのは「上司などからのパワハラ」(157件)で、「セクハラ」(103件)が続きました。2023年9月に精神障害による労災の認定基準が改正され、原因項目に追加されたカスタマーハラスメント(カスハラ)による労災は、今回の初集計で52件に上りました。うち45件は女性で、顧客から迷惑行為の標的にされやすい傾向を示す結果となりました。
 厚労省の担当者は労災件数の増加について、「精神障害が認定の対象だという周知が進んだほか、心理的負荷の原因となった出来事別の項目が拡充され、労働者が自身のケースを当てはめやすくなったのではないか」としています。

 2024年6月29日(土)

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■自閉スペクトラム症、海馬異常で他者覚えづらく 東大がマウスで特定 [健康ダイジェスト]

 東京大学の奥山輝大准教授らは、自閉スペクトラム症(ASD)で脳の海馬にある特定の神経同士の接続が弱くなり、他者を記憶する能力が下がることをマウスの実験で突き止めました。ASDでは他者を記憶しづらくなる社会性記憶障害が起きることがあります。成果はASDの解明や治療法の開発に役立ちます。
 脳が物事を記憶する際、複数の神経細胞がつながる神経回路に情報を保存していると考えられています。他者に関する記憶の場合、相手に応じて反応する神経細胞の集団が変わります。
 ASDではコミュニケーション障害や興味の 幅が狭まる症状のほか、社会性記憶障害が起きることがあります。研究チームはASD発症者の多くで変異が生じる遺伝子「Shank3」について、マウスの脳全体で働かなくさせるとこの障害が起きることを見付けていました。だが、詳しい仕組みは未解明でした。
 今回の研究では、記憶にかかわる脳の海馬だけでShank3遺伝子が働かないように遺伝子操作したマウスを使い、社会性記憶障害との関連を調べました。通常のマウスは初対面の相手に興味を抱き、近寄って観察する時間が長くなります。一方で、面識がある相手を観察する時間は短くなります。ところが、遺伝子操作したマウスは面識がある相手にも長く接しました。
 他者に関する記憶には一定数の神経細胞が必要なこともわかりました。Shank3遺伝子が働かないようにした海馬の神経細胞の数を徐々に増やすと、ある段階で社会性記憶障害が起きました。
 アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、8歳児の36人に1人がASDの患者だと推定されています。ASDにかかわる遺伝子は数百個あり、複数の遺伝子変異の蓄積で発症する場合も多くなっています。症状はさまざまで、根本的な治療法はありません。
 研究チームは人のASDの社会性記憶障害でも、脳の海馬の同様な仕組みがかかわっているとみています。奥山准教授は、「海馬がASD治療の新たな標的となる可能性がある」と話しています。海馬の神経細胞のつながりを改善する研究などを進める考えです。
 アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)などとの共同研究で、成果をまとめた論文はイギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されました。

 2024年6月29日(土)

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