■iPS細胞で「水疱性角膜症」治療、矯正視力0・5に回復 藤田医科大や慶応大チーム [健康ダイジェスト]
角膜の細胞が減り視力が落ちる「水疱(すいほう)性角膜症」の患者の目にiPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の細胞を移植する臨床研究で、患者の矯正視力が0・5に回復したと、藤田医科大や慶応大などの研究チームが発表しました。13日付医学誌「セル・リポーツ・メディシン」に論文が掲載されました。
水疱性角膜症は、黒目の内側で水分量を調節する「角膜内皮細胞」が減って角膜が水膨れし、視界が濁って視力が落ちます。白内障手術などの合併症として発症する例が多く、放置すると失明の危険もあります。
研究チームは2022年10月、健常者のiPS細胞から作製した角膜の細胞約80万個を、70歳代の男性患者の左目に特殊な注射器で移植しました。男性は手術前に眼鏡をかけても視力が0・02で「矯正不能」と判定されていたものの、術後1年までに眼鏡で0・07、コンタクトレンズで0・5まで回復しました。視界の濁りや角膜の水膨れも改善したといいます。
移植後に副作用や合併症は確認されていませんが、移植に使った角膜の細胞で、がんを抑制している遺伝子の配列に変異が見付かりました。研究チームは遺伝子の配列を移植前に4回検査し、最初の3回は正常でした。4回目の検査は移植直前に行い、移植後に変異が判明しました。変異があったのは遺伝子の機能に影響がない部位で、研究チームは健康に影響する可能性は低いとみています。
角膜移植の待機患者数は現在、全国で2000人近いとされます。今回の研究が実用化すれば、献体を必要とする角膜移植に代わる可能性があり、慶応大発の新興企業「セルージョン」(東京都中央区)が治験の準備を進めています。
2025年1月14日(火)
水疱性角膜症は、黒目の内側で水分量を調節する「角膜内皮細胞」が減って角膜が水膨れし、視界が濁って視力が落ちます。白内障手術などの合併症として発症する例が多く、放置すると失明の危険もあります。
研究チームは2022年10月、健常者のiPS細胞から作製した角膜の細胞約80万個を、70歳代の男性患者の左目に特殊な注射器で移植しました。男性は手術前に眼鏡をかけても視力が0・02で「矯正不能」と判定されていたものの、術後1年までに眼鏡で0・07、コンタクトレンズで0・5まで回復しました。視界の濁りや角膜の水膨れも改善したといいます。
移植後に副作用や合併症は確認されていませんが、移植に使った角膜の細胞で、がんを抑制している遺伝子の配列に変異が見付かりました。研究チームは遺伝子の配列を移植前に4回検査し、最初の3回は正常でした。4回目の検査は移植直前に行い、移植後に変異が判明しました。変異があったのは遺伝子の機能に影響がない部位で、研究チームは健康に影響する可能性は低いとみています。
角膜移植の待機患者数は現在、全国で2000人近いとされます。今回の研究が実用化すれば、献体を必要とする角膜移植に代わる可能性があり、慶応大発の新興企業「セルージョン」(東京都中央区)が治験の準備を進めています。
2025年1月14日(火)
■エーザイの認知症薬、アメリカで自宅投与も可能に FDAが申請受理 [健康ダイジェスト]
エーザイは14日、アメリカのバイオジェンと共同開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ(製品名レケンビ)」の皮下注射製剤の承認申請について、アメリカの食品医薬品局(FDA)が受理したと発表しました。8月31日までに審査を完了します。承認されれば自宅での投与がアメリカで可能となります。
レカネマブは静脈注射の投与法が実用化されています。静脈注射による初期の治療を終えた後、継続して投与する治療手段として承認申請していました。皮下注射製剤は週1回専用のペン型注入器で投与し、平均15秒で投与できます。通院や看護の負担を軽減できます。
レカネマブはアメリカや日本、中国、韓国など10カ国・地域で承認を取得しています。ヨーロッパ(EU)など17カ国・地域で承認申請をしています。
2025年1月14日(火)
レカネマブは静脈注射の投与法が実用化されています。静脈注射による初期の治療を終えた後、継続して投与する治療手段として承認申請していました。皮下注射製剤は週1回専用のペン型注入器で投与し、平均15秒で投与できます。通院や看護の負担を軽減できます。
レカネマブはアメリカや日本、中国、韓国など10カ国・地域で承認を取得しています。ヨーロッパ(EU)など17カ国・地域で承認申請をしています。
2025年1月14日(火)
■第一三共もインフルエンザ治療薬「イナビル」を供給調整、流行拡大受け 今年度の供給量は予定通り [健康ダイジェスト]
第一三共が14日、インフルエンザ治療薬「イナビル」について供給調整を始めたことがわかりました。特定の医療機関の過剰発注を防ぐ目的で、卸売業者など関係機関に周知しました。インフルエンザは流行が拡大しており、他の治療薬では供給停止や供給調整が実施されています。第一三共は、「在庫の偏在を防ぐ目的で出荷量を限定する」としています。
第一三共のイナビルは、吸入型のインフルエンザ治療薬です。今年度のイナビルの供給量として約999万人分を計画し、前年度の供給実績量(約413万人分)を大幅に上回る予定としています。この供給量に変更はありませんが、インフルエンザは2024年12月から、流行が急拡大しています。2025年1月に入り、沢井製薬のタミフル後発薬が一時的な供給停止となったことを切っ掛けに、薬局や卸業者の間では他の薬の確保を急ぐ動きが広がっています。
中外製薬は先発薬「タミフル」を、塩野義製薬もインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」の出荷量を限定する措置を始めています。第一三共は「イナビルは現時点で供給不足の状態にはない」とした上で、「発注の急増による欠品や品薄を回避するため、限定出荷することを決めた」と説明します。限定出荷対応の期間は現時点では「未定」といいます。
一方、厚生労働省はインフルエンザ治療薬について、過剰な発注を控えるよう促す通知を各都道府県に行っています。
2025年1月14日(火)
第一三共のイナビルは、吸入型のインフルエンザ治療薬です。今年度のイナビルの供給量として約999万人分を計画し、前年度の供給実績量(約413万人分)を大幅に上回る予定としています。この供給量に変更はありませんが、インフルエンザは2024年12月から、流行が急拡大しています。2025年1月に入り、沢井製薬のタミフル後発薬が一時的な供給停止となったことを切っ掛けに、薬局や卸業者の間では他の薬の確保を急ぐ動きが広がっています。
中外製薬は先発薬「タミフル」を、塩野義製薬もインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」の出荷量を限定する措置を始めています。第一三共は「イナビルは現時点で供給不足の状態にはない」とした上で、「発注の急増による欠品や品薄を回避するため、限定出荷することを決めた」と説明します。限定出荷対応の期間は現時点では「未定」といいます。
一方、厚生労働省はインフルエンザ治療薬について、過剰な発注を控えるよう促す通知を各都道府県に行っています。
2025年1月14日(火)
■マダニが媒介する脳炎、北海道外でも感染可能性 9月にワクチン販売開始 [健康ダイジェスト]
野山に潜むマダニが媒介する感染症は数種類ありますが、そのうちのダニ媒介脳炎(TBE)は致死率が高く、手足のまひなどが残ることがあるので要注意です。国内では2024年10月末時点で北海道でのみ7人の患者報告があり、近年、原因不明の脳髄膜炎と診断されていた本州や九州の人から、事後的に感染の証拠が見付かるなど、北海道外でも広がっている可能性が指摘されています。TBEの発症を予防するワクチンも承認・販売されました。
マダニは野山や畑など屋外に生息するクモの仲間で、家の中にいてアレルギーの原因となるダニとは異なります。体長は成長段階により1ミリ程度から3〜8ミリとなり、動物や人間が近付くとくっついて、血を吸う際に保有する病原体を感染させます。
マダニが媒介して感染する病気では、細菌リケッチアが原因の日本紅斑熱や、ウイルスが原因の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などがあります。TBEはTBEウイルスが原因で、頭痛や発熱、吐き気がみられ、悪化すると精神錯乱や意識不明、けいれんが起こることがあります。ただし、70%以上は感染しても症状がないとされます。
発症した場合、有効な薬などの治療法は今のところなく、対症療法が基本となります。致死率は20%以上と高く、手足や感覚のまひ、認知機能の低下といった後遺症も生存者の30〜40%でみられます。
ヨーロッパやロシア、アジアで多発しており、渡り鳥などでウイルスが日本に入ったとみられます。1993年に北海道で初の患者が確認され、2024年7月までに道内で7人が発症、うち2人が死亡しました。
「北海道の感染例は氷山の一角で、ほかの地域でも診断されていない人たちがたくさんいるだろう」。北海道での勤務経験もありTBEに詳しい新潟市民病院総合診療内科の児玉文宏・副部長はこう警戒感を示します。
TBEウイルスを媒介し得るマダニは国内全域に生息しています。国立精神・神経医療研究センターなどのチームは、原因不明の脳髄膜炎と診断されていた520人の北海道外の患者を対象に、残された血液を分析したところ、TBEウイルスへの感染を示す抗体が東京都、岡山県、大分県の計3人から見付かったと20923年に発表しました。いずれも北海道への旅行歴はなく、居住地域で刺されて感染したと推定されます。
また、栃木県のニホンジカ、富山県と長崎県(対馬市)のイノシシ、島根県のアカネズミから抗体が見付かり、これも北海道外にTBEウイルスが存在する証拠とみられています。
感染を防ぐには、野外で活動する際に腕や足、首など肌の露出を少なくしてマダニにかまれないことが重要です。マダニは数日間にわたって吸血することが多く、血で10ミリ以上に膨らんで、ほくろができたと勘違いしがち。かまれたら、体調の変化に注意し、発熱があれば医師の診察が勧められるといいます。
ヨーロッパやアジアを中心にTBEは世界で年間1万例前後報告されており、ワクチンが開発されています。国内でも、ヨーロッパやロシアなどへの渡航や北海道内での野外活動向けにワクチンが利用されてきました。厚生労働省は2024年3月にファイザーのワクチン「タイコバック」を承認、9月から販売が始まっています。一定の間隔をおいて3回接種し、その後は3〜5年おきに追加接種し免疫を維持します。
児玉さんは、「今のところ、北海道以外の人にワクチンを強く勧めるほどではないが、北海道でキャンプやハイキング、山菜採りなど野外活動をする場合は、接種を検討してもよい」と話しています。
2025年1月14日(火)
マダニは野山や畑など屋外に生息するクモの仲間で、家の中にいてアレルギーの原因となるダニとは異なります。体長は成長段階により1ミリ程度から3〜8ミリとなり、動物や人間が近付くとくっついて、血を吸う際に保有する病原体を感染させます。
マダニが媒介して感染する病気では、細菌リケッチアが原因の日本紅斑熱や、ウイルスが原因の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などがあります。TBEはTBEウイルスが原因で、頭痛や発熱、吐き気がみられ、悪化すると精神錯乱や意識不明、けいれんが起こることがあります。ただし、70%以上は感染しても症状がないとされます。
発症した場合、有効な薬などの治療法は今のところなく、対症療法が基本となります。致死率は20%以上と高く、手足や感覚のまひ、認知機能の低下といった後遺症も生存者の30〜40%でみられます。
ヨーロッパやロシア、アジアで多発しており、渡り鳥などでウイルスが日本に入ったとみられます。1993年に北海道で初の患者が確認され、2024年7月までに道内で7人が発症、うち2人が死亡しました。
「北海道の感染例は氷山の一角で、ほかの地域でも診断されていない人たちがたくさんいるだろう」。北海道での勤務経験もありTBEに詳しい新潟市民病院総合診療内科の児玉文宏・副部長はこう警戒感を示します。
TBEウイルスを媒介し得るマダニは国内全域に生息しています。国立精神・神経医療研究センターなどのチームは、原因不明の脳髄膜炎と診断されていた520人の北海道外の患者を対象に、残された血液を分析したところ、TBEウイルスへの感染を示す抗体が東京都、岡山県、大分県の計3人から見付かったと20923年に発表しました。いずれも北海道への旅行歴はなく、居住地域で刺されて感染したと推定されます。
また、栃木県のニホンジカ、富山県と長崎県(対馬市)のイノシシ、島根県のアカネズミから抗体が見付かり、これも北海道外にTBEウイルスが存在する証拠とみられています。
感染を防ぐには、野外で活動する際に腕や足、首など肌の露出を少なくしてマダニにかまれないことが重要です。マダニは数日間にわたって吸血することが多く、血で10ミリ以上に膨らんで、ほくろができたと勘違いしがち。かまれたら、体調の変化に注意し、発熱があれば医師の診察が勧められるといいます。
ヨーロッパやアジアを中心にTBEは世界で年間1万例前後報告されており、ワクチンが開発されています。国内でも、ヨーロッパやロシアなどへの渡航や北海道内での野外活動向けにワクチンが利用されてきました。厚生労働省は2024年3月にファイザーのワクチン「タイコバック」を承認、9月から販売が始まっています。一定の間隔をおいて3回接種し、その後は3〜5年おきに追加接種し免疫を維持します。
児玉さんは、「今のところ、北海道以外の人にワクチンを強く勧めるほどではないが、北海道でキャンプやハイキング、山菜採りなど野外活動をする場合は、接種を検討してもよい」と話しています。
2025年1月14日(火)
■夜は暗く、昼は日を浴びて 国際研究チームが死亡リスクとの関連報告 [健康ダイジェスト]
夜間に明るい光を浴びると死亡リスクが高まり、日中に明るい光を浴びると死亡リスクが低減することがわかったとの研究結果を、オーストラリアと英米の国際研究チームがアメリカの科学誌に発表しました。
40~69歳の約8万9000人を対象とした大規模研究の結果で、研究者は「夜間の光を避けて昼間は日光を浴びれば健康と寿命を促進する可能性があることが示された。この方法は簡単で実行しやすく、費用対効果も高い」とコメントしました。
研究では、イギリスのバイオバンクに登録し、浴びた光を持続的に測る装置を利き手の手首に7日間装着した対象者を平均で8年間追跡しました。得られたデータから睡眠時間や睡眠の効率も推定。年齢や性別、人種、住所地の日照条件などほかの要因の影響を考慮して、光と死亡リスクとの関係を分析しました。
期間中に対象者のうち3750人が亡くなり、そのうち798人が糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの「心代謝性疾患」に関連していました。
光を浴びることと死亡リスクとの関係では、ほかの要因の影響をより厳密に取り除いても、夜間により明るい光を浴びた上位10%の人は下位50%に比べて死亡リスクが1・21倍と高く、日中により明るい光を浴びた上位10%の人の死亡リスクは下位50%に比べて0・83倍と低くなりました。
人の体内時計の乱れはメタボリック症候群や糖尿病、肥満と関係があり、心血管系の病気の発症にも深く関係するとされます。研究チームは、今回の研究結果も夜間に明るい光を浴びることによって体内時計が乱れ、体に悪影響をおよぼしたことで説明できるとしています。
2025年1月14日(火)
40~69歳の約8万9000人を対象とした大規模研究の結果で、研究者は「夜間の光を避けて昼間は日光を浴びれば健康と寿命を促進する可能性があることが示された。この方法は簡単で実行しやすく、費用対効果も高い」とコメントしました。
研究では、イギリスのバイオバンクに登録し、浴びた光を持続的に測る装置を利き手の手首に7日間装着した対象者を平均で8年間追跡しました。得られたデータから睡眠時間や睡眠の効率も推定。年齢や性別、人種、住所地の日照条件などほかの要因の影響を考慮して、光と死亡リスクとの関係を分析しました。
期間中に対象者のうち3750人が亡くなり、そのうち798人が糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの「心代謝性疾患」に関連していました。
光を浴びることと死亡リスクとの関係では、ほかの要因の影響をより厳密に取り除いても、夜間により明るい光を浴びた上位10%の人は下位50%に比べて死亡リスクが1・21倍と高く、日中により明るい光を浴びた上位10%の人の死亡リスクは下位50%に比べて0・83倍と低くなりました。
人の体内時計の乱れはメタボリック症候群や糖尿病、肥満と関係があり、心血管系の病気の発症にも深く関係するとされます。研究チームは、今回の研究結果も夜間に明るい光を浴びることによって体内時計が乱れ、体に悪影響をおよぼしたことで説明できるとしています。
2025年1月14日(火)
■「十分に眠った」と感じているのに、実際は睡眠不足も 筑波大発表、自己評価と客観的分析に差 [健康ダイジェスト]
「十分に眠った」と感じているのに、実際は睡眠不足―。筑波大国際統合睡眠医科学研究機構(茨城県つくば市)の柳沢正史機構長らが14日、睡眠の時間や質に関する自己評価は、脳波の測定に基づく客観的な結果とは異なる場合が多いと発表しました。睡眠障害の早期発見や予防には、計測による正確な把握が重要だとしました。
421人の被験者から、自身の睡眠状態の自己評価や睡眠中の脳波などのデータを収集し、医師の見解との差を分析しました。結果、十分な睡眠があると自覚している人の45%が実際には睡眠不足だった一方、睡眠に不調を感じている人の66%が客観的には問題ありませんでした。
また、主な睡眠障害の一つ「睡眠時無呼吸症候群」で、中等症以上の危険性がある人の割合は、睡眠の質の自己評価にかかわらず同程度であることが判明。自覚だけでは睡眠の健康状態を十分に評価できないため、脳波の計測といった客観的なデータに基づく判断が必要と訴えています。
客観的には眠れているのに「眠れない」と感じる人もいることから、睡眠脳波の分析を進め、メカニズムを解明したいとしています。
2025年1月14日(火)
421人の被験者から、自身の睡眠状態の自己評価や睡眠中の脳波などのデータを収集し、医師の見解との差を分析しました。結果、十分な睡眠があると自覚している人の45%が実際には睡眠不足だった一方、睡眠に不調を感じている人の66%が客観的には問題ありませんでした。
また、主な睡眠障害の一つ「睡眠時無呼吸症候群」で、中等症以上の危険性がある人の割合は、睡眠の質の自己評価にかかわらず同程度であることが判明。自覚だけでは睡眠の健康状態を十分に評価できないため、脳波の計測といった客観的なデータに基づく判断が必要と訴えています。
客観的には眠れているのに「眠れない」と感じる人もいることから、睡眠脳波の分析を進め、メカニズムを解明したいとしています。
2025年1月14日(火)