■用語 無症候性副腎腫瘍 [用語(ま行)]
症状が現れていず、ほかの疾患の検査で偶然、認められる副腎の腫瘍
無症候性副腎腫瘍(ふくじんしゅよう)とは、症状が現れていず、健康診断や副腎以外の疾患の検査中に偶然、副腎に認められる大きさ1センチ以上の、はれ物。副腎偶発腫瘍、副腎偶発腫(副腎インシデンタローマ)とも呼ばれます。
副腎は、左右の腎臓の上に位置する小さな内分泌臓器。副腎の内部を構成する髄質と、髄質を包む皮質からできており、皮質からはグルココルチコイド(糖質コルチコイド)とアルドステロン(鉱質コルチコイド)という生命の維持に必要な2種類のホルモンのほかに、男女を問わず、男性化作用のあるアンドロゲンというホルモンを分泌しています。髄質からはアドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)を分泌しています。
副腎腫瘍は、ホルモンを過剰に分泌する機能性腫瘍と、ホルモン活性のない非機能性腫瘍に分類されます。ほとんどは非機能性腫瘍で、皮質腺腫(せんしゅ)、骨髄脂肪腫、嚢腫(のうしゅ)、転移性腫瘍などがあります。
機能性腫瘍がホルモンを過剰に分泌する場合には、さまざまな疾患の原因となります。代表的なのは、血圧を上げるホルモンであるアルドステロンが多く作られる原発性アルドステロン症という疾患です。高血圧患者の1割弱を占めるともいわれています。
また、グルココルチコイドが多く作られるクッシング症候群、アドレナリンやノルアドレナリンが多く作られる褐色細胞腫という疾患も多くみられ、高血圧や糖尿病などを引き起こします。
原発性アルドステロン症などのような副腎疾患に特徴的な症状を示さず、あるいは自覚症状を示さずに、胃腸、肝臓、腎臓などの腹部の疾患に対するCT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査、超音波(エコー)検査などの画像診断による精査過程で偶然、発見される無症候性副腎腫瘍は、副腎腫瘍の中で最も多いものです。
近年、画像検査機器の精度が高くなり、小さな腫瘍も明瞭に描出できるようになったため、無症候性副腎腫瘍の発見頻度は増えています。一般に、50歳以上の人では、3パーセント以上の人に認めるとされ、人体中で最もよく見付かる腫瘍の一つでもあります。
症状は、副腎腫瘍からのホルモン分泌の過剰の有無によってさまざまで、多くは無症状です。無症候性副腎腫瘍の約半数は、非機能性腫瘍かつ良性腫瘍の皮質腺腫とされており、体に異常がなければ、様子を見るだけで治療の必要はありません。
一方、無症候性副腎腫瘍の中には、プレ(サブ)クリニカルクッシング症候群(グルココルチコイド産生腺腫)と無症候性の褐色細胞腫がおのおの5~10パーセントの頻度で発見され、原発性アルドステロン症(アルドステロン産生腺腫)が5パーセント程度、原発性副腎がんが1〜2パーセント含まれるとされています。
そのほか、転移性副腎がん、骨髄脂肪腫、嚢腫、神経節神経腫、囊胞などが含まれます。
手術による無症候性副腎腫瘍の摘出が必要か否かは、ホルモン分泌の過剰の有無と、悪性腫瘍(原発性副腎がんや転移性副腎がん)の可能性の2点により判断されます。
無症候性副腎腫瘍の検査と診断と治療
内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科などの医師による診断では、悪性腫瘍の可能性は腫瘍の大きさが3センチ以上であることや、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査での悪性を疑わせる所見の有無で判断します。
ホルモン分泌の過剰の有無については、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫の3つの疾患について内分泌検査を行います。
内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科などの医師による治療では、検査の結果、ホルモンを過剰に分泌している所見がなく、腫瘍の大きさが3センチ未満であれば、その時点では手術を行わずに経過を観察します。そして、半年から1年ごとにホルモン検査と画像検査を行います。
一方、腫瘍の大きさが3センチ以上、またはホルモンを過剰に分泌している所見がある場合は、手術による腫瘍摘出について総合的に判断します。
また、検査でプレ(サブ)クリニカルクッシング症候群と診断された場合も、目立った症状を引き起こすことがなくとも、数年かけて高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、骨粗鬆(こつそしょう)症などを引き起こす可能性がありますので、腹腔(ふくくう)鏡下の手術による腫瘍摘出が勧められます。
無症候性副腎腫瘍(ふくじんしゅよう)とは、症状が現れていず、健康診断や副腎以外の疾患の検査中に偶然、副腎に認められる大きさ1センチ以上の、はれ物。副腎偶発腫瘍、副腎偶発腫(副腎インシデンタローマ)とも呼ばれます。
副腎は、左右の腎臓の上に位置する小さな内分泌臓器。副腎の内部を構成する髄質と、髄質を包む皮質からできており、皮質からはグルココルチコイド(糖質コルチコイド)とアルドステロン(鉱質コルチコイド)という生命の維持に必要な2種類のホルモンのほかに、男女を問わず、男性化作用のあるアンドロゲンというホルモンを分泌しています。髄質からはアドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)を分泌しています。
副腎腫瘍は、ホルモンを過剰に分泌する機能性腫瘍と、ホルモン活性のない非機能性腫瘍に分類されます。ほとんどは非機能性腫瘍で、皮質腺腫(せんしゅ)、骨髄脂肪腫、嚢腫(のうしゅ)、転移性腫瘍などがあります。
機能性腫瘍がホルモンを過剰に分泌する場合には、さまざまな疾患の原因となります。代表的なのは、血圧を上げるホルモンであるアルドステロンが多く作られる原発性アルドステロン症という疾患です。高血圧患者の1割弱を占めるともいわれています。
また、グルココルチコイドが多く作られるクッシング症候群、アドレナリンやノルアドレナリンが多く作られる褐色細胞腫という疾患も多くみられ、高血圧や糖尿病などを引き起こします。
原発性アルドステロン症などのような副腎疾患に特徴的な症状を示さず、あるいは自覚症状を示さずに、胃腸、肝臓、腎臓などの腹部の疾患に対するCT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査、超音波(エコー)検査などの画像診断による精査過程で偶然、発見される無症候性副腎腫瘍は、副腎腫瘍の中で最も多いものです。
近年、画像検査機器の精度が高くなり、小さな腫瘍も明瞭に描出できるようになったため、無症候性副腎腫瘍の発見頻度は増えています。一般に、50歳以上の人では、3パーセント以上の人に認めるとされ、人体中で最もよく見付かる腫瘍の一つでもあります。
症状は、副腎腫瘍からのホルモン分泌の過剰の有無によってさまざまで、多くは無症状です。無症候性副腎腫瘍の約半数は、非機能性腫瘍かつ良性腫瘍の皮質腺腫とされており、体に異常がなければ、様子を見るだけで治療の必要はありません。
一方、無症候性副腎腫瘍の中には、プレ(サブ)クリニカルクッシング症候群(グルココルチコイド産生腺腫)と無症候性の褐色細胞腫がおのおの5~10パーセントの頻度で発見され、原発性アルドステロン症(アルドステロン産生腺腫)が5パーセント程度、原発性副腎がんが1〜2パーセント含まれるとされています。
そのほか、転移性副腎がん、骨髄脂肪腫、嚢腫、神経節神経腫、囊胞などが含まれます。
手術による無症候性副腎腫瘍の摘出が必要か否かは、ホルモン分泌の過剰の有無と、悪性腫瘍(原発性副腎がんや転移性副腎がん)の可能性の2点により判断されます。
無症候性副腎腫瘍の検査と診断と治療
内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科などの医師による診断では、悪性腫瘍の可能性は腫瘍の大きさが3センチ以上であることや、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査での悪性を疑わせる所見の有無で判断します。
ホルモン分泌の過剰の有無については、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫の3つの疾患について内分泌検査を行います。
内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科などの医師による治療では、検査の結果、ホルモンを過剰に分泌している所見がなく、腫瘍の大きさが3センチ未満であれば、その時点では手術を行わずに経過を観察します。そして、半年から1年ごとにホルモン検査と画像検査を行います。
一方、腫瘍の大きさが3センチ以上、またはホルモンを過剰に分泌している所見がある場合は、手術による腫瘍摘出について総合的に判断します。
また、検査でプレ(サブ)クリニカルクッシング症候群と診断された場合も、目立った症状を引き起こすことがなくとも、数年かけて高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、骨粗鬆(こつそしょう)症などを引き起こす可能性がありますので、腹腔(ふくくう)鏡下の手術による腫瘍摘出が勧められます。
■用語 埋没陰茎 [用語(ま行)]
下腹部に陰茎が埋もれて、実際のサイズよりも小さく見える疾患
埋没陰茎とは、男性の陰茎が周囲の皮下脂肪に埋もれたり、恥骨上の過剰な皮下脂肪に埋もれたりして、実際のサイズよりも小さく見える疾患。
先天的に発症する場合と、後天的に発症する場合があり、先天的な発症は幼小児に多くみられます。
幼小児にみられる埋没陰茎では、陰茎は皮下脂肪に埋もれながらも、そのサイズは長さ、太さとも年齢相応に発育していくケースが多いとされています。陰茎を持ち上げると、正常の外観となります。
陰茎は基本的に、陰茎ワナ靭帯(じんたい)と陰茎提靭帯という靭帯で、骨盤の前面にある左右2つの恥骨とつながっています。靭帯と恥骨とのつながり方が先天的に悪い場合には、陰茎が根元周囲の皮下脂肪の中に引き込まれ、表面に出ている陰茎の部分が少なくなり、実際のサイズよりも小さく見えます。
また、陰茎を包み込む皮膚の内側にある浅陰茎筋膜(ダルトス筋膜、コーレス筋膜 )、深陰茎筋膜(バック筋膜)という筋膜の付着異常で先天的に進展性が悪い場合にも、陰茎が根元周囲の皮下脂肪の中に引き込まれ、表面に出ている陰茎の部分が少なくなり、実際のサイズよりも小さく見えます。
程度にもよりますが、基本的には埋没陰茎に包茎を伴います。仮性包茎ならば、思春期以後から包皮を押しのけて亀頭が現れるようになりますが、真性包茎を伴っていると、陰茎が年齢相応に発育せず亀頭も露出しません。
埋没陰茎に真性包茎を伴って、生殖年齢になっても埋没陰茎が自然に改善していない場合、表面に出ているいる陰茎が短いために、パートナーの女性との性行為の際に陰茎を膣(ちつ)に挿入することが困難となり、性交困難症の原因になることがあります。このことがコンプレックスとなり、心因性(機能性)勃起障害(ED )の原因となる場合もあります。
一方、後天的に発症する埋没陰茎は、肥満によって起こります。恥骨付近に皮下脂肪がたまったり、肝臓や腸管などの内臓の周囲に脂肪がたまったりした結果、陰茎が下腹部に埋もれ、表面に出ている陰茎が割合として少なくなり、実際のサイズよりも小さく見えます。皮下脂肪が厚ければ厚いほど、つまり肥満であればあるほど陰茎が埋もれた状態になります。
肥満をベースとするので、多くは後天的に発症する埋没陰茎ですが、まれにプラダー・ウィリー症候群という先天的な肥満疾患が、埋没陰茎の原因となる場合もあります。
なお、外傷によっても埋没陰茎が生じることがあり、この場合は外傷性埋没陰茎として、別に扱われます。埋没陰茎といった場合は、一般的に非外傷性を指します。
先天的に発症する埋没陰茎の多くは、両親などが気付いて心配し、小児泌尿器科、小児外科などを受診します。後天的に発症する埋没陰茎の場合は、生殖年齢になって本人が悩み、泌尿器科、外科などを受診します。
埋没陰茎の検査と診断と治療
小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、外科などの医師による診断では、ほとんどのケースで、体形や陰茎の視診と触診、生下時からのエピソードの問診によって判断します。陰茎の根元周囲や恥骨上の皮膚を抑えて、陰茎を引き出して触診すると、年齢相応のサイズの陰茎と亀頭を触知することが可能です。
診断に際しては、矮小陰茎(ミクロペニス)との鑑別を行い、矮小陰茎の原因となる疾患である性腺(せいせん)機能低下症、類宦官(るいかんがん)症、クラインフェルター症候群などを除外します。
小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、外科などの医師による治療では、基本的に形成手術は必要ないとされ、問題の多い重症例が形成手術の対象になります。
形成手術を行う場合は、陰茎の根元周囲の脂肪組織を切除して陰茎の皮下組織を固定する方法、恥骨上の脂肪組織を切除して陰茎の皮下組織を固定する方法があります。
さらに、陰茎と恥骨の結合部にある靭帯の一部を剥離(はくり)し、埋没してたるんでいた陰茎を引き出し、陰茎の皮下組織を吸収糸で固定す方法、浅陰茎筋膜や深陰茎筋膜を剥離、切除し、埋没してたるんでいた陰茎を引き出し、陰茎の皮下組織を吸収糸で固定する方法などがあります。
通常の包茎として間違えて包皮切除術を行うと、埋没陰茎自体に対する改善処置が行いにくくなってしまう場合があるので、 その鑑別は慎重に行います。
一方、肥満によって後天的に陰茎が埋もれている場合は、食生活など生活習慣を改善することによる減量が治療となります。重症例では、恥骨付近の皮下脂肪を減らす脂肪吸引なども行います。
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■用語 三つ口 [用語(ま行)]
上唇の一部に裂け目が現れ、唇が三つに分かれているような形を示す先天性異常
三つ口とは、上唇(うわくちびる)の皮膚と筋肉の一部に縦の裂け目が現れ、鼻の下で唇が三つに分かれているような形を示す先天性異常。口唇裂、唇裂、兎唇(としん)、いぐち、欠唇(けっしん)とも呼ばれます。
妊娠初期に複雑な発生の過程をへて、胎児の顔面が形成されます。胎生期第4~7週ころに、前頭突起(内側鼻隆起)と左右の上顎(じょうがく)突起が癒合して上唇ができます。この癒合が障害されると、三つ口になります。三つ口といえば通常、上唇の皮膚と筋肉の一部に裂け目が現れる上唇裂をいい、下唇に裂け目が現れる下唇裂は非常にまれです。
この三つ口は、裂け目が鼻まで達する完全口唇裂、裂け目が鼻まで達しない不完全口唇裂、左右の唇のどちらか一方に裂け目がある片側口唇裂、左右両側に裂け目がある両側口唇裂、さらに、唇の縁の小さなへこみや、唇から鼻の穴までの傷跡のように見える軽微な三つ口である痕跡(こんせき)口唇裂に分けられます。
三つ口は、さまざまな要因が複雑に絡み合って現れると考えられており、特定の原因があるわけではありません。口腔(こうくう)の発生にかかわる遺伝子の変異が関係したり、妊娠中の喫煙、胎内での風疹(ふうしん)感染、胎児脳内圧の異常高進、薬物、放射線障害などの環境要因が関係していると考えられています。染色体異常に伴う場合は、内臓疾患や生後の発育、発達の遅れがみられる場合があります。
三つ口は単独でみられることもありますが、口と鼻を隔てている上顎(うわあご)に先天性に破裂が現れる口蓋裂(こうがいれつ)と合併した口唇口蓋裂が多くみられます。さらに、歯を支えている顎骨である歯槽骨の破裂が現れる顎裂(歯槽裂)を合併することもあります。
三つ口の発生頻度は、全出産の0・08パーセントといわれています。三つ口、口蓋裂、口唇口蓋裂、顎裂を含めた発生頻度は、全出産の0・2パーセントといわれています。
胎児の顔面の口や鼻が形成された後、胎生期第7~12週ころの間に、口の中では口蓋がつくられます。口腔と鼻腔の間に口蓋突起が左右から伸び、前方から後方へと癒合が進んで上顎(口蓋)が形成されます。この過程が障害されると、口蓋突起が最期まで癒合せずに口腔と鼻腔が破裂したままになり、口蓋裂ができます。
口蓋裂は、口蓋の奥の部分の軟口蓋に破裂があるもの、口蓋の前方3分2の部分の硬口蓋に破裂があるもの、軟口蓋と硬口蓋の両方に破裂があるものに分けられます。
生後すぐ、あるいは胎児期の超音波検査で、三つ口が認められます。
口唇口蓋裂があると、歯の形態異常、欠損、歯列不正などが認められます。授乳障害もあり、母乳やミルクが鼻から逆流しやすくなったり、発音が鼻に抜けたりする症状がみられ、中耳炎、誤嚥(ごえん)性肺炎を合併することが多くみられます。
出生後、三つ口のほか、口蓋裂、口唇口蓋裂、痕跡口唇裂が認められた場合は、口唇口蓋裂を専門に治療し、発育、発達の定期的なフォローも含め、総合的に診療している口腔外科、形成外科を紹介してもらい、受診することが望まれます。痕跡口唇裂の場合、外見上は軽微な変化であっても、その下にある口輪筋への影響があり、深刻度を判断してもらう必要があります。
三つ口の検査と診断と治療
口腔外科、形成外科の医師による治療は、矯正歯科、小児歯科、耳鼻咽喉(いんこう)科、言語聴覚士、小児科など各科の医師とのチーム医療で行われることが一般的です。
口腔外科、形成外科の医師による治療は、形成手術が主体で、手術前にはホッツ床という柔らかい樹脂でできた入れ歯のようプレートを上顎にはめて、授乳しやすくします。
手術時期は、三つ口と口蓋裂で異なり、発音機能と上顎の発育の両面を考えながら決めます。一般的には、三つ口はミラード法などで生後3カ月以後、体重5キログラムを目安に実施し、裂けた口唇の閉鎖と再建、変形した鼻の位置の適正化、口輪筋の連続性の再建を図ります。
口蓋裂は1歳以降に、ファーロー法などの手術を実施し、口蓋部分における口腔と鼻腔の閉鎖、軟口蓋における口蓋帆挙筋などの左右に分かれた筋群の再建を図ります。
高度な三つ口で、裂け目が鼻まで達する完全口唇裂では、初回の手術だけで完全な形態の再建が完成するとは限らず、就学前あるいは青年期に、口唇や鼻の二次的な修正手術を必要とすることがあります。言語聴覚士による発音の訓練も必要です。
三つ口とは、上唇(うわくちびる)の皮膚と筋肉の一部に縦の裂け目が現れ、鼻の下で唇が三つに分かれているような形を示す先天性異常。口唇裂、唇裂、兎唇(としん)、いぐち、欠唇(けっしん)とも呼ばれます。
妊娠初期に複雑な発生の過程をへて、胎児の顔面が形成されます。胎生期第4~7週ころに、前頭突起(内側鼻隆起)と左右の上顎(じょうがく)突起が癒合して上唇ができます。この癒合が障害されると、三つ口になります。三つ口といえば通常、上唇の皮膚と筋肉の一部に裂け目が現れる上唇裂をいい、下唇に裂け目が現れる下唇裂は非常にまれです。
この三つ口は、裂け目が鼻まで達する完全口唇裂、裂け目が鼻まで達しない不完全口唇裂、左右の唇のどちらか一方に裂け目がある片側口唇裂、左右両側に裂け目がある両側口唇裂、さらに、唇の縁の小さなへこみや、唇から鼻の穴までの傷跡のように見える軽微な三つ口である痕跡(こんせき)口唇裂に分けられます。
三つ口は、さまざまな要因が複雑に絡み合って現れると考えられており、特定の原因があるわけではありません。口腔(こうくう)の発生にかかわる遺伝子の変異が関係したり、妊娠中の喫煙、胎内での風疹(ふうしん)感染、胎児脳内圧の異常高進、薬物、放射線障害などの環境要因が関係していると考えられています。染色体異常に伴う場合は、内臓疾患や生後の発育、発達の遅れがみられる場合があります。
三つ口は単独でみられることもありますが、口と鼻を隔てている上顎(うわあご)に先天性に破裂が現れる口蓋裂(こうがいれつ)と合併した口唇口蓋裂が多くみられます。さらに、歯を支えている顎骨である歯槽骨の破裂が現れる顎裂(歯槽裂)を合併することもあります。
三つ口の発生頻度は、全出産の0・08パーセントといわれています。三つ口、口蓋裂、口唇口蓋裂、顎裂を含めた発生頻度は、全出産の0・2パーセントといわれています。
胎児の顔面の口や鼻が形成された後、胎生期第7~12週ころの間に、口の中では口蓋がつくられます。口腔と鼻腔の間に口蓋突起が左右から伸び、前方から後方へと癒合が進んで上顎(口蓋)が形成されます。この過程が障害されると、口蓋突起が最期まで癒合せずに口腔と鼻腔が破裂したままになり、口蓋裂ができます。
口蓋裂は、口蓋の奥の部分の軟口蓋に破裂があるもの、口蓋の前方3分2の部分の硬口蓋に破裂があるもの、軟口蓋と硬口蓋の両方に破裂があるものに分けられます。
生後すぐ、あるいは胎児期の超音波検査で、三つ口が認められます。
口唇口蓋裂があると、歯の形態異常、欠損、歯列不正などが認められます。授乳障害もあり、母乳やミルクが鼻から逆流しやすくなったり、発音が鼻に抜けたりする症状がみられ、中耳炎、誤嚥(ごえん)性肺炎を合併することが多くみられます。
出生後、三つ口のほか、口蓋裂、口唇口蓋裂、痕跡口唇裂が認められた場合は、口唇口蓋裂を専門に治療し、発育、発達の定期的なフォローも含め、総合的に診療している口腔外科、形成外科を紹介してもらい、受診することが望まれます。痕跡口唇裂の場合、外見上は軽微な変化であっても、その下にある口輪筋への影響があり、深刻度を判断してもらう必要があります。
三つ口の検査と診断と治療
口腔外科、形成外科の医師による治療は、矯正歯科、小児歯科、耳鼻咽喉(いんこう)科、言語聴覚士、小児科など各科の医師とのチーム医療で行われることが一般的です。
口腔外科、形成外科の医師による治療は、形成手術が主体で、手術前にはホッツ床という柔らかい樹脂でできた入れ歯のようプレートを上顎にはめて、授乳しやすくします。
手術時期は、三つ口と口蓋裂で異なり、発音機能と上顎の発育の両面を考えながら決めます。一般的には、三つ口はミラード法などで生後3カ月以後、体重5キログラムを目安に実施し、裂けた口唇の閉鎖と再建、変形した鼻の位置の適正化、口輪筋の連続性の再建を図ります。
口蓋裂は1歳以降に、ファーロー法などの手術を実施し、口蓋部分における口腔と鼻腔の閉鎖、軟口蓋における口蓋帆挙筋などの左右に分かれた筋群の再建を図ります。
高度な三つ口で、裂け目が鼻まで達する完全口唇裂では、初回の手術だけで完全な形態の再建が完成するとは限らず、就学前あるいは青年期に、口唇や鼻の二次的な修正手術を必要とすることがあります。言語聴覚士による発音の訓練も必要です。
■用語 ミクロペニス [用語(ま行)]
ペニスが基準よりも小さい状態にある性機能疾患
ミクロペニスとは、男性のペニス(陰茎)が基準よりも大幅に小さい状態にあり、生殖や性行為に支障を来す性機能疾患。マイクロペニス、矮小(わいしょう)陰茎とも呼ばれます。
短小ペニスという呼び方もありますが、こちらは俗語であって医学的に定義されたものではなく、個人差の範囲にすぎないものを指している場合が多く認められます。これに対して、ミクロペニスは医学的に定義されたもので、性機能疾患として認められている疾患の一つです。
ペニスの形態は正常であるものの、その大きさが平常時はもちろん、勃起(ぼっき)時でも一定の基準よりも小さく、成人男性で勃起時の長さが5センチ以下のものが、ミクロペニスと定義されています。勃起時でも長さ太さともに5ミリに達せず、陰嚢(いんのう)に埋没して、外見上は生まれ付きペニスを所有しない陰茎欠損症に見える極端な例もあります。
性腺(せいせん)からのホルモンの分泌不足によって起こる性腺機能低下症が、最も多い原因と考えられています。また、全身的な症候群の一症状として、ミクロペニスがみられることもあります。積極的な治療を必要とするミクロペニスは、男児250人に1人程度に認められるとされています。
ペニスの発達はまず、胎生期における生殖茎の分化、成長が基軸にあります。排泄腔(はいせつくう)ひだが左右ともに癒合し合って、生殖結節が形成され、その生殖結節が伸びた状態が生殖茎であり、その生殖茎が男性のペニス、女性のクリトリス(陰核)のベースになります。
生殖茎は、おおよそ胎生12週までは男女ともに同様の分化、成長を続けます。その後、男性では胎児精巣(睾丸〔こうがん〕)から分泌される男性ホルモンの一種であるテストステロンの影響で、生殖茎が伸びていき、ペニスの形状をなしていきます。生殖茎は伸長に並行して、尿道ひだを引き込んで尿道を形成し、それに応じて尿道口が亀頭の先端に形成されます。
この生殖茎の伸長と尿道ひだの引き込みが、テストステロンの分泌量が足りない場合に不十分に進行して、ミクロペニスと、尿道の出口が亀頭の先端になくてペニスの途中や陰嚢などにある尿道下裂の原因になります。
また、第二次性徴期におけるテストステロンの分泌障害もまた、ペニスの成長発達を阻害し、結果としてミクロペニスを示すことがあります。
胎生期ならびに出生後に発生するテストステロンの分泌障害は、精巣自体に問題がある原発性性腺機能低下症と、テストステロンの上位ホルモンで、脳下垂体から出される性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンの分泌障害などが原因の続発性性腺機能低下症があります。
こうしたテストステロンの分泌不足によって発生するミクロペニスなどの障害は、テストステロンの受容体の障害でも同様に発生します。
原発性性腺機能低下症によってミクロペニスを示す疾患には、類宦官(るいかんがん)症や、クラインフェルター症候群などの染色体異常を示す疾患があります。クラインフェルター症候群では、第二次性徴の障害は続発性性腺機能低下症などに比較して少ないことが多く、成人後の勃起障害(ED)や男性不妊症で、クラインフェルター症候群自体が発見されることも珍しくありません。
ミクロペニスでは、ペニスが小さすぎるために性交障害を生じる時があります。また、テストステロンの相対的な不足は勃起障害(ED)を引き起こし、これもミクロペニス同様の性交障害の原因になります。
通常は新生児期に、医師や看護師による性別の確認が行われる際に見付かり、専門医に紹介されて治療が行われます。
ミクロペニスの検査と診断と治療
小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、内分泌代謝科の医師による診断では、染色体分析検査、性ホルモンの測定、アンドロゲン(男性ホルモン)受容体の検査、超音波検査、X線造影検査、CTやMRI検査による内性器の存在確認を行います。
また、埋没陰茎、翼状陰茎などと鑑別します。これらの疾患は、いずれもペニスが一定の基準より小さい、もしくは小さく見えるという疾患になります。
小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、内分泌代謝科の医師による治療では、ミクロペニスは男性ホルモンであるテストステロンの分泌不全、もしくは機能不全が問題であることがほとんどなので、幼少期のテストステロン製剤による刺激療法を行います。テストステロン製剤には塗布薬と注射薬があり、病態に合わせて局所塗布か全身投与かを決めます。
注射薬を用いて全身投与を行う場合、骨の成長を進行させる副作用があり、骨の発達が早期に完了してしまうリスクがあります。身長が伸びる思春期以前に、このホルモン療法を行うと、背が十分伸びないことがあります。
また、子供をつくる生殖能力を獲得するために、性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンの注射など、上位ホルモンから性腺に刺激を与える治療を行うこともあります。
ミクロペニスの成人以降の処置としては、自家移植手術の陰茎海綿体延長術が行われることもあります。大腿(だいたい)部や腹部から採取した真皮を使用して、ペニスの勃起機構の主体をなす陰茎海綿体に移植して、ミクロペニスの伸長を図ります。
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