■用語 OAT症候群 [用語(A〜Z、数字)]
男性不妊症の原因疾患の総称で、パートナーの妊娠率が低下
OAT症候群(Oligoasthenoteratozoospermia Syndrome)とは、乏精子症(Oligozoospermia)、精子無力症(Asthenozoospermia)、奇形精子症(Teratozoospermia)の頭文字をとって付けられた男性不妊症の原因の総称。
精子の数が少ない乏精子症の場合、精子の運動率が悪い精子無力症や、正常な形態の精子が少ない奇形精子症の症状も同時にみられることが多いので、これらの症状をまとめてOAT症候群と呼びます。
乏精子症は精液に含まれる精子の数が少ない状態
乏精子症は、男性の精液の中に含まれる精子の数が正常よりも極端に少ない状態。ただし、国際保健機関(WHO)の基準により、精子の数だけでなく精子濃度、精子運動率、奇形率などを総合的にみて、乏精子症と見なすこともあります。
男性の精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢腺(せいのうせん)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢腺成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣(睾丸〔こうがん〕)や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。
運動能力を持ち、卵子と結合して個体を生成する男性の精子のほうは、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体において成熟し、精嚢腺と前立腺で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。射精によって精液が尿道から出ていく際には、最初は主に前立腺からの成分、続いて精嚢腺からの成分が出ていきます。
乏精子症は男性不妊症の原因となり、日常生活におけるパートナーによる自然妊娠を難しくすると考えられます。その程度により、軽度乏精子症、中等度乏精子症、重症度乏精子症に分けられます。
精子の数の正常値は1ml当たり6000~8000万以上であり、約5000万の場合は軽度乏精子症、1000万以下の場合は中等度乏精子症、100万以下の場合は重症度乏精子症に相当します。自然妊娠には精子の数が4000万以上あることが望ましいとされるものの、数100万で自然妊娠することも、ごくまれにあります。
乏精子症の原因には、精巣の静脈に血液が逆流することで起きる精索静脈瘤(りゅう)、あるいは、精巣の働きの悪さから精子が作られにくい造精機能障害などがあります。詳細に検査をしても、原因が判明しない特発性造精機能障害によることも多くみられます。
造精機能障害を起こす原因疾患としては、X染色体が1つ以上多いクラインフェルター症候群などの染色体異常症、脳下垂体と視床下部の障害による性腺刺激ホルモンの低下、おたふく風邪による精巣炎、高プロラクチン血症による精子形成の低下、薬の副作用による性腺刺激ホルモンの低下などがあります。
精索静脈瘤は、精巣の上の精索部の静脈が拡張し、静脈瘤ができた状態。後天性の乏精子症、男性不妊症の主要な原因となっています。
静脈には、血液の逆流を防ぐ弁があります。精索内の静脈弁に障害があると、腎(じん)静脈から内精索静脈へ血液が逆流することにより、陰嚢(いんのう)上部にある精索の静脈(蔓〈つる〉状静脈叢〈そう〉)が蛇行して、こぶ状に拡張し、うっ血します。その程度が強い場合は、陰嚢内に腫瘤(しゅりゅう)を形成します。
この精索静脈瘤の大部分は、左側に生じます。左側の精索静脈は右に比べて長く、左の腎静脈へと合流していますが、還流障害が生じて静脈血が停滞、逆流する原因としては、静脈弁の先天性不全や、左腎静脈が上腸間膜動脈により圧迫されることが考えられています。
精索静脈のうっ血により、陰嚢内の温度が上昇して、体温より2度ほど低い温度でよく機能する精巣の発育不全、委縮、機能低下、精子の形成不全、男性ホルモンを作るライディッヒ細胞の機能の低下などを引き起こして生殖機能が損なわれることで、乏精子症、男性不妊症の原因になります。
精索静脈瘤は、一般の健康な青年男性の10〜15パーセントに認められるのに対し、男性不妊症の人では20~40パーセントと高率に認められます。思春期以降に多くみられますが、小児にもみられます。大抵は無症状です。時には、陰嚢や鼠径(そけい)部の痛みや突っ張り感などの不快な症状を生じる場合もあります。
精子無力症は精子の運動率が低下した状態
精子無力症は、男性の射出精液内の精子の運動率が低下した状態。
運動能力を持つ精子は、中片部と尾部の鞭毛(べんもう)を振動させて動かし、結合して個体を生成するために卵子を目指して泳いでいきますので、運動率の低下、とりわけ真っすぐ前進し、高速で泳ぐ精子の割合が低いことは、卵子へ到達する精子が少ないということ、また到達しても鞭毛を振れずに卵子の透明体を通過できないということにつながり、受精障害となります。
この精子無力症は、軽度精子無力症、中等度精子無力症、重症度精子無力症に分けられます。運動率に関しては、正常な精子ではだいたい70~80パーセント以上が運動しているのに対して、軽度精子無力症では50パーセント程度、中等度精子無力症では20~40パーセント、重症度精子無力症は10パーセント以下に低下しています。
精子無力症の原因は、先天的なものが大半を占めますが、前立腺炎、おたふく風邪による精巣炎、高熱による精巣炎、精索静脈瘤などが原因になっているケースもあります。なお、長期間の禁欲も精子の運動率を低下させます。
奇形精子症は精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態
奇形精子症は、射精された精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態。精子奇形症とも呼ばれます。
男性の誰(だれ)しも精子の100パーセントが正常な形態ということはありませんが、形態の異常を伴う奇形の精子が多く、正常な形態の精子が4パーセント未満の場合は、奇形精子症に相当します。
精子には、精液中の数はもちろんのこと、濃度、運動率、奇形率などさまざまな要素があります。その中でも精子の奇形率が高い場合、日常生活におけるパートナーの妊娠率の低下が引き起こされます。
奇形精子症は、精子の奇形のパターンによって、大きく2つに分類されます。1つは尾部の奇形、2つ目は頭部の奇形です。
2つのうち、頭部が明らかに小さい、異常な形態をしているなど頭部の奇形に関しては、遺伝子情報である核DNAを含有する頭部に奇形があるため、受精自体が非常に困難になり、妊娠率が非常に低くなります。精子尾部の奇形に関しても、結合して個体を生成するために卵子を目指し、鞭毛を振動させて泳いでいく運動能力を尾部が担っているため、妊娠率の低下が引き起こされます。
奇形精子症は原因不明であることが多く、精索静脈瘤、逆行性射精、染色体異常、過度なストレスなどが原因となって発生することもあります。
OAT症候群の検査と診断と治療
乏精子症の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液中に存在する精子の数が常に正常値を下回る場合に乏精子症と判断します。
精索静脈瘤に対しては、視診と触診を行い、精巣の上部に腫瘤を触れたり、陰嚢や鼠径部の痛みを認めることもあります。数分間立位して腹圧をかけると、静脈の拡張がはっきりします。立位で容易に静脈瘤が触知できたり、陰嚢皮膚ごしに静脈瘤が見えることもあります。片側の精巣サイズが小さいこともあります。アイソトープを使った診断法もありますが、通常は視診、触診と超音波検査で十分診断できます。
泌尿器科の医師による治療では、明確な原因の判明しない乏精子症のケースでは効果的な治療が難しいため、軽度乏精子症の場合には人工授精、中等度乏精子症の場合には体外受精、重症度乏精子症の場合や受精しにくい場合には顕微授精を用いて、妊娠を期待するのが一般的です。
精索静脈瘤の場合は、精液所見が悪い成人男性でいずれ子供が欲しいと考えているケースや、陰嚢や鼠径部の痛みや違和感があるケースで、外科手術を行います。 思春期の男性でも、片側の精巣サイズが小さくなっているケースには、将来の不妊を予防するため手術が考慮されます。片側の精巣サイズが小さくなっていない場合は、年1回の診察と精液検査を行います。
外科手術では、病変のある静脈を縛る結紮(けっさつ)を行います。手術により、精液所見は60~70パーセントで改善し、30~50パーセントでパートナーの妊娠が得られるといわれています。手術後の精液検査は、3カ月後に行われます。精子の作り始めから精子として射出されるまで、約3カ月かかるためです。
何らかの原因により性腺刺激ホルモンが低下し、造精機能が障害されている場合には、ホルモン補充療法を行い、精巣で精子が作られるようになることを期待します。
精子無力症の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に正常値を下回る場合に精子無力症と判断します。
泌尿器科の医師による治療では、軽度精子無力症の場合には、飲み薬や漢方薬を処方しながら、定期的に精液検査を行い、運動率が改善しているかどうか様子をみる場合もあります。精子を作るのに要する期間が74日間、その精子が運動能力を獲得するのに要する期間が14日間ですので、少なくとも3カ月以上は薬の処方を継続します。
薬の処方で精子の運動率に変化がみられないケースはもちろん、運動率が改善しても自然妊娠に至らないケースでは、人工授精などを用いる不妊治療を併用し、妊娠を期待します。
中等度精子無力症と重症度精子無力症の場合には、精子の運動率を改善する効果はあまり期待できないため、中等度精子無力症では人工授精か体外受精、高度精子無力症では体外受精か顕微授精を用いて、妊娠を期待します。
奇形精子症の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、4~5日間の禁欲後に、マスターベーションにより精液を採取し、精液検査とクルーガーテストを行って判断します。
クルーガーテストでは、特殊な溶液で精子を色付けして、奇形率と奇形のパターン、あるいは正常な形態の精子がどれだけいるかを顕微鏡で調べます。
泌尿器科の医師による治療では、原因となる疾患があれば、その治癒をまず図ります。
パートナーの妊娠を期待する場合は、できる限り状態のよい精子を選んで、人工授精や体外受精、顕微授精を試みます。正常な形態の精子が15パーセント以上であれば自然妊娠が期待できますが、4パーセント未満である奇形精子症では自然妊娠が見込めないためです。
通常、顕微授精を試み、場合によって体外受精から試みたり、パートナーが20歳代と若くて不妊症がなければ人工授精から試みたりすることもあります。
射精された精液中に奇形精子しかいない場合は、精巣上体精子回収法を行って、精巣上体から正常な形態で運動良好な精子を回収して顕微授精を試みます。精巣上体から回収した精子も奇形精子であった場合もしくは精子が見付からない場合は、精巣生検を行って、精巣から後期精子細胞を回収して顕微授精を試みます。
OAT症候群(Oligoasthenoteratozoospermia Syndrome)とは、乏精子症(Oligozoospermia)、精子無力症(Asthenozoospermia)、奇形精子症(Teratozoospermia)の頭文字をとって付けられた男性不妊症の原因の総称。
精子の数が少ない乏精子症の場合、精子の運動率が悪い精子無力症や、正常な形態の精子が少ない奇形精子症の症状も同時にみられることが多いので、これらの症状をまとめてOAT症候群と呼びます。
乏精子症は精液に含まれる精子の数が少ない状態
乏精子症は、男性の精液の中に含まれる精子の数が正常よりも極端に少ない状態。ただし、国際保健機関(WHO)の基準により、精子の数だけでなく精子濃度、精子運動率、奇形率などを総合的にみて、乏精子症と見なすこともあります。
男性の精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢腺(せいのうせん)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢腺成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣(睾丸〔こうがん〕)や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。
運動能力を持ち、卵子と結合して個体を生成する男性の精子のほうは、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体において成熟し、精嚢腺と前立腺で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。射精によって精液が尿道から出ていく際には、最初は主に前立腺からの成分、続いて精嚢腺からの成分が出ていきます。
乏精子症は男性不妊症の原因となり、日常生活におけるパートナーによる自然妊娠を難しくすると考えられます。その程度により、軽度乏精子症、中等度乏精子症、重症度乏精子症に分けられます。
精子の数の正常値は1ml当たり6000~8000万以上であり、約5000万の場合は軽度乏精子症、1000万以下の場合は中等度乏精子症、100万以下の場合は重症度乏精子症に相当します。自然妊娠には精子の数が4000万以上あることが望ましいとされるものの、数100万で自然妊娠することも、ごくまれにあります。
乏精子症の原因には、精巣の静脈に血液が逆流することで起きる精索静脈瘤(りゅう)、あるいは、精巣の働きの悪さから精子が作られにくい造精機能障害などがあります。詳細に検査をしても、原因が判明しない特発性造精機能障害によることも多くみられます。
造精機能障害を起こす原因疾患としては、X染色体が1つ以上多いクラインフェルター症候群などの染色体異常症、脳下垂体と視床下部の障害による性腺刺激ホルモンの低下、おたふく風邪による精巣炎、高プロラクチン血症による精子形成の低下、薬の副作用による性腺刺激ホルモンの低下などがあります。
精索静脈瘤は、精巣の上の精索部の静脈が拡張し、静脈瘤ができた状態。後天性の乏精子症、男性不妊症の主要な原因となっています。
静脈には、血液の逆流を防ぐ弁があります。精索内の静脈弁に障害があると、腎(じん)静脈から内精索静脈へ血液が逆流することにより、陰嚢(いんのう)上部にある精索の静脈(蔓〈つる〉状静脈叢〈そう〉)が蛇行して、こぶ状に拡張し、うっ血します。その程度が強い場合は、陰嚢内に腫瘤(しゅりゅう)を形成します。
この精索静脈瘤の大部分は、左側に生じます。左側の精索静脈は右に比べて長く、左の腎静脈へと合流していますが、還流障害が生じて静脈血が停滞、逆流する原因としては、静脈弁の先天性不全や、左腎静脈が上腸間膜動脈により圧迫されることが考えられています。
精索静脈のうっ血により、陰嚢内の温度が上昇して、体温より2度ほど低い温度でよく機能する精巣の発育不全、委縮、機能低下、精子の形成不全、男性ホルモンを作るライディッヒ細胞の機能の低下などを引き起こして生殖機能が損なわれることで、乏精子症、男性不妊症の原因になります。
精索静脈瘤は、一般の健康な青年男性の10〜15パーセントに認められるのに対し、男性不妊症の人では20~40パーセントと高率に認められます。思春期以降に多くみられますが、小児にもみられます。大抵は無症状です。時には、陰嚢や鼠径(そけい)部の痛みや突っ張り感などの不快な症状を生じる場合もあります。
精子無力症は精子の運動率が低下した状態
精子無力症は、男性の射出精液内の精子の運動率が低下した状態。
運動能力を持つ精子は、中片部と尾部の鞭毛(べんもう)を振動させて動かし、結合して個体を生成するために卵子を目指して泳いでいきますので、運動率の低下、とりわけ真っすぐ前進し、高速で泳ぐ精子の割合が低いことは、卵子へ到達する精子が少ないということ、また到達しても鞭毛を振れずに卵子の透明体を通過できないということにつながり、受精障害となります。
この精子無力症は、軽度精子無力症、中等度精子無力症、重症度精子無力症に分けられます。運動率に関しては、正常な精子ではだいたい70~80パーセント以上が運動しているのに対して、軽度精子無力症では50パーセント程度、中等度精子無力症では20~40パーセント、重症度精子無力症は10パーセント以下に低下しています。
精子無力症の原因は、先天的なものが大半を占めますが、前立腺炎、おたふく風邪による精巣炎、高熱による精巣炎、精索静脈瘤などが原因になっているケースもあります。なお、長期間の禁欲も精子の運動率を低下させます。
奇形精子症は精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態
奇形精子症は、射精された精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態。精子奇形症とも呼ばれます。
男性の誰(だれ)しも精子の100パーセントが正常な形態ということはありませんが、形態の異常を伴う奇形の精子が多く、正常な形態の精子が4パーセント未満の場合は、奇形精子症に相当します。
精子には、精液中の数はもちろんのこと、濃度、運動率、奇形率などさまざまな要素があります。その中でも精子の奇形率が高い場合、日常生活におけるパートナーの妊娠率の低下が引き起こされます。
奇形精子症は、精子の奇形のパターンによって、大きく2つに分類されます。1つは尾部の奇形、2つ目は頭部の奇形です。
2つのうち、頭部が明らかに小さい、異常な形態をしているなど頭部の奇形に関しては、遺伝子情報である核DNAを含有する頭部に奇形があるため、受精自体が非常に困難になり、妊娠率が非常に低くなります。精子尾部の奇形に関しても、結合して個体を生成するために卵子を目指し、鞭毛を振動させて泳いでいく運動能力を尾部が担っているため、妊娠率の低下が引き起こされます。
奇形精子症は原因不明であることが多く、精索静脈瘤、逆行性射精、染色体異常、過度なストレスなどが原因となって発生することもあります。
OAT症候群の検査と診断と治療
乏精子症の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液中に存在する精子の数が常に正常値を下回る場合に乏精子症と判断します。
精索静脈瘤に対しては、視診と触診を行い、精巣の上部に腫瘤を触れたり、陰嚢や鼠径部の痛みを認めることもあります。数分間立位して腹圧をかけると、静脈の拡張がはっきりします。立位で容易に静脈瘤が触知できたり、陰嚢皮膚ごしに静脈瘤が見えることもあります。片側の精巣サイズが小さいこともあります。アイソトープを使った診断法もありますが、通常は視診、触診と超音波検査で十分診断できます。
泌尿器科の医師による治療では、明確な原因の判明しない乏精子症のケースでは効果的な治療が難しいため、軽度乏精子症の場合には人工授精、中等度乏精子症の場合には体外受精、重症度乏精子症の場合や受精しにくい場合には顕微授精を用いて、妊娠を期待するのが一般的です。
精索静脈瘤の場合は、精液所見が悪い成人男性でいずれ子供が欲しいと考えているケースや、陰嚢や鼠径部の痛みや違和感があるケースで、外科手術を行います。 思春期の男性でも、片側の精巣サイズが小さくなっているケースには、将来の不妊を予防するため手術が考慮されます。片側の精巣サイズが小さくなっていない場合は、年1回の診察と精液検査を行います。
外科手術では、病変のある静脈を縛る結紮(けっさつ)を行います。手術により、精液所見は60~70パーセントで改善し、30~50パーセントでパートナーの妊娠が得られるといわれています。手術後の精液検査は、3カ月後に行われます。精子の作り始めから精子として射出されるまで、約3カ月かかるためです。
何らかの原因により性腺刺激ホルモンが低下し、造精機能が障害されている場合には、ホルモン補充療法を行い、精巣で精子が作られるようになることを期待します。
精子無力症の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に正常値を下回る場合に精子無力症と判断します。
泌尿器科の医師による治療では、軽度精子無力症の場合には、飲み薬や漢方薬を処方しながら、定期的に精液検査を行い、運動率が改善しているかどうか様子をみる場合もあります。精子を作るのに要する期間が74日間、その精子が運動能力を獲得するのに要する期間が14日間ですので、少なくとも3カ月以上は薬の処方を継続します。
薬の処方で精子の運動率に変化がみられないケースはもちろん、運動率が改善しても自然妊娠に至らないケースでは、人工授精などを用いる不妊治療を併用し、妊娠を期待します。
中等度精子無力症と重症度精子無力症の場合には、精子の運動率を改善する効果はあまり期待できないため、中等度精子無力症では人工授精か体外受精、高度精子無力症では体外受精か顕微授精を用いて、妊娠を期待します。
奇形精子症の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、4~5日間の禁欲後に、マスターベーションにより精液を採取し、精液検査とクルーガーテストを行って判断します。
クルーガーテストでは、特殊な溶液で精子を色付けして、奇形率と奇形のパターン、あるいは正常な形態の精子がどれだけいるかを顕微鏡で調べます。
泌尿器科の医師による治療では、原因となる疾患があれば、その治癒をまず図ります。
パートナーの妊娠を期待する場合は、できる限り状態のよい精子を選んで、人工授精や体外受精、顕微授精を試みます。正常な形態の精子が15パーセント以上であれば自然妊娠が期待できますが、4パーセント未満である奇形精子症では自然妊娠が見込めないためです。
通常、顕微授精を試み、場合によって体外受精から試みたり、パートナーが20歳代と若くて不妊症がなければ人工授精から試みたりすることもあります。
射精された精液中に奇形精子しかいない場合は、精巣上体精子回収法を行って、精巣上体から正常な形態で運動良好な精子を回収して顕微授精を試みます。精巣上体から回収した精子も奇形精子であった場合もしくは精子が見付からない場合は、精巣生検を行って、精巣から後期精子細胞を回収して顕微授精を試みます。
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■用語 OYL(黄色靭帯骨化症) [用語(A〜Z、数字)]
脊椎椎弓の前面を上下に連結し、脊椎を縦走する黄色靭帯が骨化し、神経障害が出る疾患
OYL(Ossification of the Yellow Ligament)とは、脊椎(せきつい)の後方部分を構成する椎弓と呼ばれる円柱状の骨の前面を上下に連結し、脊椎を縦走する黄色靭帯(おうしょくじんたい)が骨化する疾患。黄色靱帯骨化症とも呼ばれ、特定疾患(難病)である脊柱靭帯骨化症の一種です。
背骨、すなわち脊椎の骨と骨の間は、靭帯で補強されています。椎弓の前面に位置し、脊髄の通り道である脊柱管の後面に位置する黄色靭帯は、骨に適度な動きと安定性をもたらしています。
この黄色靭帯が分厚くなって骨のように硬くなると、脊髄の通り道である脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて、知覚障害や運動障害が症状として現れます。
頸椎(けいつい)にもOYLは出現しますが、ほとんどは胸椎の下部に出現します。黄色靱帯が骨化する脊椎の部位によって、頸椎黄色靭帯骨化症、胸椎黄色靭帯骨化症、腰椎黄色靭帯骨化症に分類することもあります。
年齢的には20歳以降に出現しますが、一般的には40歳以上に出現します。男女の性差なく出現します。
黄色靱帯が骨化する原因は、いまだに不明。遺伝的素因、カルシウムやビタミンDの代謝異常、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位における局所ストレスなど複数の要因が関与して発症すると推測されているものの、原因の特定には至っていません。
ほとんどが胸椎の下部に出現する原因は、胸椎と腰椎の連結する部分に相当し負担がかかるためと見なされています。
同じ脊柱靭帯骨化症の一種で、OPLL(Ossification of Posterior Longitudinal Ligament、後縦靭帯骨化症)という、脊椎の前方部分を構成する椎体と呼ばれる四角い骨の後面を上下に連結し、脊椎を縦走する後縦靭帯が骨化する疾患と合併しやすく、この場合は特に家族内発症が多いことから、遺伝子の関連が有力視されています。
胸椎に黄色靭帯骨化が起こった場合に最初に出てくる症状としては、下肢の脱力やこわばり、しびれがあります。腰背部痛や下肢痛が出現してくることもあります。
また、長い距離を歩くと下肢の痛みが起こるようになり、休息しながら歩くようになる間欠性跛行(はこう)を来すこともあります。重症になると、両下肢まひを来して歩行困難となり、日常生活に障害を来す状態になります。
症状の進行は年単位の長い経過をたどり、軽い痛みやしびれで長年経過する場合もある一方で、年単位の経過で足の動作がかなりの程度傷害される場合もあります。また、軽い外傷、例えば転倒などを切っ掛けに、急に足が動かしづらくなったり、今までの症状が強くなったりすることもあります。
OYL(黄色靭帯骨化症)の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、まずX線(レントゲン)検査を行います。しかし、胸椎に多いOYL(黄色靭帯骨化症)を見付けることが困難なことが多いため、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などで精査します。
CT検査は骨化の範囲や大きさを判断するのに有用で、MRI検査は脊髄の圧迫程度を判断するのに有用です。
整形外科の医師による治療では、原因が不明で経過が予測できないため、消炎鎮痛剤などを投与して経過を観察します。下肢や腰背部の痛みが強い場合には、脊髄の周囲の硬膜外腔(がいくう)に局所麻酔薬を注射して、神経の痛みを和らげる硬膜外ブロックを行うこともあります。
経過観察中に進行がみられる場合や、神経症状が強い場合には、胸椎椎弓の骨化部位を取り除いて、脊髄や神経根の圧迫を解除する手術を行うこともあります。
OYLを完全に予防することはできませんが、仕事や遊び、泥酔などで転倒、転落することで神経症状を出現させたり、悪化させたりしないことが必要です。
OYL(Ossification of the Yellow Ligament)とは、脊椎(せきつい)の後方部分を構成する椎弓と呼ばれる円柱状の骨の前面を上下に連結し、脊椎を縦走する黄色靭帯(おうしょくじんたい)が骨化する疾患。黄色靱帯骨化症とも呼ばれ、特定疾患(難病)である脊柱靭帯骨化症の一種です。
背骨、すなわち脊椎の骨と骨の間は、靭帯で補強されています。椎弓の前面に位置し、脊髄の通り道である脊柱管の後面に位置する黄色靭帯は、骨に適度な動きと安定性をもたらしています。
この黄色靭帯が分厚くなって骨のように硬くなると、脊髄の通り道である脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて、知覚障害や運動障害が症状として現れます。
頸椎(けいつい)にもOYLは出現しますが、ほとんどは胸椎の下部に出現します。黄色靱帯が骨化する脊椎の部位によって、頸椎黄色靭帯骨化症、胸椎黄色靭帯骨化症、腰椎黄色靭帯骨化症に分類することもあります。
年齢的には20歳以降に出現しますが、一般的には40歳以上に出現します。男女の性差なく出現します。
黄色靱帯が骨化する原因は、いまだに不明。遺伝的素因、カルシウムやビタミンDの代謝異常、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位における局所ストレスなど複数の要因が関与して発症すると推測されているものの、原因の特定には至っていません。
ほとんどが胸椎の下部に出現する原因は、胸椎と腰椎の連結する部分に相当し負担がかかるためと見なされています。
同じ脊柱靭帯骨化症の一種で、OPLL(Ossification of Posterior Longitudinal Ligament、後縦靭帯骨化症)という、脊椎の前方部分を構成する椎体と呼ばれる四角い骨の後面を上下に連結し、脊椎を縦走する後縦靭帯が骨化する疾患と合併しやすく、この場合は特に家族内発症が多いことから、遺伝子の関連が有力視されています。
胸椎に黄色靭帯骨化が起こった場合に最初に出てくる症状としては、下肢の脱力やこわばり、しびれがあります。腰背部痛や下肢痛が出現してくることもあります。
また、長い距離を歩くと下肢の痛みが起こるようになり、休息しながら歩くようになる間欠性跛行(はこう)を来すこともあります。重症になると、両下肢まひを来して歩行困難となり、日常生活に障害を来す状態になります。
症状の進行は年単位の長い経過をたどり、軽い痛みやしびれで長年経過する場合もある一方で、年単位の経過で足の動作がかなりの程度傷害される場合もあります。また、軽い外傷、例えば転倒などを切っ掛けに、急に足が動かしづらくなったり、今までの症状が強くなったりすることもあります。
OYL(黄色靭帯骨化症)の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、まずX線(レントゲン)検査を行います。しかし、胸椎に多いOYL(黄色靭帯骨化症)を見付けることが困難なことが多いため、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などで精査します。
CT検査は骨化の範囲や大きさを判断するのに有用で、MRI検査は脊髄の圧迫程度を判断するのに有用です。
整形外科の医師による治療では、原因が不明で経過が予測できないため、消炎鎮痛剤などを投与して経過を観察します。下肢や腰背部の痛みが強い場合には、脊髄の周囲の硬膜外腔(がいくう)に局所麻酔薬を注射して、神経の痛みを和らげる硬膜外ブロックを行うこともあります。
経過観察中に進行がみられる場合や、神経症状が強い場合には、胸椎椎弓の骨化部位を取り除いて、脊髄や神経根の圧迫を解除する手術を行うこともあります。
OYLを完全に予防することはできませんが、仕事や遊び、泥酔などで転倒、転落することで神経症状を出現させたり、悪化させたりしないことが必要です。
■用語 X脚 [用語(A〜Z、数字)]
膝をそろえて立った際に、両足のくるぶしの間が開いて、下肢全体の型がX型に見える状態
X脚(えっくすきゃく)とは、膝(ひざ)をそろえて立った際に、両側の脚(あし)が内側に凸に変形していて、両足の内くるぶしの間が開いて、下肢全体の型がX型に見える状態。
片側だけの変形は外反膝(がいはんしつ)といい、両側とも変形している外反膝がX脚に相当します。
子供の脚は、3歳ころからX脚、いわゆる生理的X脚になり、7歳ころに、だいたい真っすぐになって、大人の脚に似てきます。従って、7歳以上になってX脚がある時は、異常といえます。
両足の内くるぶしの間が、指5本分以上開いていれば、変形があるといえます。X脚の子供は、全身の関節が著しく軟らかい関節弛緩(しかん)がみられるので、立った際に膝が後ろのほうに反り返る反張(はんちょう)膝、足が左右の方向に反っているため足裏のアーチである土踏まずが低い外反扁平(へんぺい)足がよくみられます。
この全身の関節弛緩がみられる場合には、運動に機敏さがなく、転倒しやすいなど、膝に無理がかかりやすいので、夜、寝ている時に脚が痛むことがあります。
X脚でも骨に病的な変化がみられない場合がほとんどですが、まれに、骨にかかわる疾患を持っている場合もあります。
X脚変形が高度になると、痛みや機能障害を示します。青年期発症のX脚も存在します。
X脚による痛みや生活に支障がある場合は、整形外科などを受診することが勧められます。
X脚の検査と診断と治療
整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、脚の骨に病的な変化がみられないかどうか調べます。
整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による治療では、子供のX脚の大部分は年齢的な変形で、成長するとともに自然に矯正されるため、特に治療は施しません。定期的な経過観察だけで十分です。
かつては矯正靴を使って治療していましたが、その治療効果は何もしないで自然に矯正される度合いと差がないことから、現在では矯正靴は使用されなくなっています。
骨にかかわる疾患が原因で起こったX脚の場合は、その疾患の治療を行い、すねの骨に切り込みを入れるなどして曲がりを矯正する手術を行うこともあります。
X脚(えっくすきゃく)とは、膝(ひざ)をそろえて立った際に、両側の脚(あし)が内側に凸に変形していて、両足の内くるぶしの間が開いて、下肢全体の型がX型に見える状態。
片側だけの変形は外反膝(がいはんしつ)といい、両側とも変形している外反膝がX脚に相当します。
子供の脚は、3歳ころからX脚、いわゆる生理的X脚になり、7歳ころに、だいたい真っすぐになって、大人の脚に似てきます。従って、7歳以上になってX脚がある時は、異常といえます。
両足の内くるぶしの間が、指5本分以上開いていれば、変形があるといえます。X脚の子供は、全身の関節が著しく軟らかい関節弛緩(しかん)がみられるので、立った際に膝が後ろのほうに反り返る反張(はんちょう)膝、足が左右の方向に反っているため足裏のアーチである土踏まずが低い外反扁平(へんぺい)足がよくみられます。
この全身の関節弛緩がみられる場合には、運動に機敏さがなく、転倒しやすいなど、膝に無理がかかりやすいので、夜、寝ている時に脚が痛むことがあります。
X脚でも骨に病的な変化がみられない場合がほとんどですが、まれに、骨にかかわる疾患を持っている場合もあります。
X脚変形が高度になると、痛みや機能障害を示します。青年期発症のX脚も存在します。
X脚による痛みや生活に支障がある場合は、整形外科などを受診することが勧められます。
X脚の検査と診断と治療
整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、脚の骨に病的な変化がみられないかどうか調べます。
整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による治療では、子供のX脚の大部分は年齢的な変形で、成長するとともに自然に矯正されるため、特に治療は施しません。定期的な経過観察だけで十分です。
かつては矯正靴を使って治療していましたが、その治療効果は何もしないで自然に矯正される度合いと差がないことから、現在では矯正靴は使用されなくなっています。
骨にかかわる疾患が原因で起こったX脚の場合は、その疾患の治療を行い、すねの骨に切り込みを入れるなどして曲がりを矯正する手術を行うこともあります。
■用語 O脚 [用語(A〜Z、数字)]
立った際に両膝の間が開き、下肢全体の型がO型に見える状態
O脚(おーきゃく)とは、立った際に、両側の脚(あし)が外側に凸に変形していて、両膝(ひざ)の間が開き、下肢全体の型がO型に見える状態。いわゆるがに股(また)のことです。
片側だけ湾曲している場合は内反膝(ないはんしつ)といい、両側が湾曲している場合の内反膝がO脚に相当します。
ほとんどの子供は、2歳までは軽いO脚、いわゆる生理的O脚ですが、成長とともに自然に改善され、3歳ではむしろ両足の内側のくるぶしがつかないX(えっくす)脚になり、通常は7歳ごろに真っすぐになります。
従って、2歳をすぎてもO脚の程度が強い時は、注意が必要です。
両足首をつけて立って、両膝の間に大人の指が3本以上入る際は、O脚変形が強いといえます。O脚の子供は、内股歩き(内旋歩行)をするので、転びやすかったり、疲れやすかったりします。
O脚でも骨に病的な変化がみられない場合がほとんどですが、まれに、すねの大きな太い骨である脛(けい)骨の膝のところの関節面に発育異常が起こるブラウント病が生じている場合があります。
また、カルシウム不足から全身の骨の発育障害を生じるくる病や、骨の異常を伴うさまざまな疾患でも、強いO脚がみられることがあります。
O脚変形が高度になると、痛みや機能障害を示します。青年期発症のO脚も存在します。高齢者では、膝の軟骨が擦り減って、O脚がひどくなることがあります。
O脚による痛みや生活に支障がある場合は、整形外科などを受診することが勧められます。
O脚の検査と診断と治療
整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、脚の骨に病的な変化がみられないかどうか調べます。
整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による治療では、子供のO脚の大部分は年齢的な変形で、成長するとともに自然に矯正されるため、特に治療は施しません。定期的な経過観察だけで十分です。
かつては矯正靴を使って治療していましたが、その治療効果は何もしないで自然に矯正される度合いと差がないことから、現在では矯正靴は使用されなくなっています。
O脚の変形の程度が強く、生活に支障がある場合は、手術を行うこともあります。手術では、すねの骨に切り込みを入れるなどして、曲がりを矯正します。全身麻酔で1〜2時間かかり、4週間前後の入院が必要です。
ブラウント病は、軽症であれば成長とともに自然に治ります。重症の場合は、変形が進むため手術が必要となります。
くる病によるO脚は、ビタミンDなどの薬剤の服用でくる病が改善されれば、変形も治ってきます。
暮らしの中では、O脚を自己流で矯正しようとすると関節などを痛める恐れがあり、注意が必要です。また、肥満だと膝に負担がかかるため、適正な体重を保つ必要があります。激しいスポーツで膝に過度の負担をかけないことも大切です。
O脚(おーきゃく)とは、立った際に、両側の脚(あし)が外側に凸に変形していて、両膝(ひざ)の間が開き、下肢全体の型がO型に見える状態。いわゆるがに股(また)のことです。
片側だけ湾曲している場合は内反膝(ないはんしつ)といい、両側が湾曲している場合の内反膝がO脚に相当します。
ほとんどの子供は、2歳までは軽いO脚、いわゆる生理的O脚ですが、成長とともに自然に改善され、3歳ではむしろ両足の内側のくるぶしがつかないX(えっくす)脚になり、通常は7歳ごろに真っすぐになります。
従って、2歳をすぎてもO脚の程度が強い時は、注意が必要です。
両足首をつけて立って、両膝の間に大人の指が3本以上入る際は、O脚変形が強いといえます。O脚の子供は、内股歩き(内旋歩行)をするので、転びやすかったり、疲れやすかったりします。
O脚でも骨に病的な変化がみられない場合がほとんどですが、まれに、すねの大きな太い骨である脛(けい)骨の膝のところの関節面に発育異常が起こるブラウント病が生じている場合があります。
また、カルシウム不足から全身の骨の発育障害を生じるくる病や、骨の異常を伴うさまざまな疾患でも、強いO脚がみられることがあります。
O脚変形が高度になると、痛みや機能障害を示します。青年期発症のO脚も存在します。高齢者では、膝の軟骨が擦り減って、O脚がひどくなることがあります。
O脚による痛みや生活に支障がある場合は、整形外科などを受診することが勧められます。
O脚の検査と診断と治療
整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、脚の骨に病的な変化がみられないかどうか調べます。
整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による治療では、子供のO脚の大部分は年齢的な変形で、成長するとともに自然に矯正されるため、特に治療は施しません。定期的な経過観察だけで十分です。
かつては矯正靴を使って治療していましたが、その治療効果は何もしないで自然に矯正される度合いと差がないことから、現在では矯正靴は使用されなくなっています。
O脚の変形の程度が強く、生活に支障がある場合は、手術を行うこともあります。手術では、すねの骨に切り込みを入れるなどして、曲がりを矯正します。全身麻酔で1〜2時間かかり、4週間前後の入院が必要です。
ブラウント病は、軽症であれば成長とともに自然に治ります。重症の場合は、変形が進むため手術が必要となります。
くる病によるO脚は、ビタミンDなどの薬剤の服用でくる病が改善されれば、変形も治ってきます。
暮らしの中では、O脚を自己流で矯正しようとすると関節などを痛める恐れがあり、注意が必要です。また、肥満だと膝に負担がかかるため、適正な体重を保つ必要があります。激しいスポーツで膝に過度の負担をかけないことも大切です。