■病気 ウイルソン病 [病気(う)]
脳、肝臓に銅が沈着してくる遺伝性疾患
ウイルソン病とは、体内に銅が沈着することにより、脳、肝臓、腎(じん)臓、目などが侵される疾患。その原因は、日常の食事で摂取された銅が肝臓から胆汁中へと、正常に排出されないことによります。
常染色体劣性遺伝に基づく先天性銅代謝異常症であり、病名はウイルソンという人が見付けたことに由来しますが、進行性レンズ核変性症、肝レンズ核変性症とも呼ばれています。
銅は微量元素の一つで、必須栄養素であり、過剰に摂取した場合、急性や慢性の銅中毒になります。その慢性銅中毒に、ウイルソン病はよく似ています。食物中の銅は、十二指腸や小腸上部で吸収されて、肝臓に運ばれます。肝臓において、銅はセルロプラスミンと結合して銅結合蛋白(たんぱり)質となり、血液中に流れてゆきます。また、脳や骨髄など全身の諸臓器に必要量が分布し、過剰な銅は肝臓から胆汁中、腸管中に排出され、平衡を保っているのです。
しかし、ウイルソン病においては、この肝臓での銅代謝が障害されています。肝臓中に取り込まれた銅がセルロプラスミンと結合できないために、胆汁中へ銅が排出されず、肝臓にたまっていきます。そして、肝臓からあふれて血液中へ流れ出た銅が、脳、腎臓、目の角膜などへ蓄積します。
近年、13番染色体上のATP7B遺伝子異常が、ウイルソン病の原因遺伝子として特定されました。ATP7Bは、肝臓に特異的に発現するATP依存性メタルトランスポーターで、この異常によってセルロプラスミンへの銅の取り込みが損なわれます。
ウイルソン病の発症率は、3~4万人に1人と見なされ、日本全国で1500人の患者がいるといわれています 。発症率は、欧米諸国より高くなっています。年齢的には、3~15歳の小児期を中心に発症し、30~40歳で発症することもあります。
肝臓の症状は、疲れやすかったり、白眼や皮膚が黄色くなったりして気付かれます。多くの場合は無症状で、血中GOT、GPTなど肝機能の異常を指摘され、発見されます。しかし、原因不明の急性肝炎とか慢性肝炎などと診断されることもあり、急激な肝不全状態となって、黄疸(おうだん)や意識障害などを生じ、急に死亡してしまうこともあります。肝障害は徐々に進行し、思春期過ぎには肝硬変になる場合が多くみられます。
脳の症状の多くは、思春期ごろから現れます。初期においては、言葉が不明瞭(めいりょう)になり、何かをしようとすると手指が震えたりして、字を書くことや細かい作業が下手になります。
さらに進行すると、表情が硬くなり、次第に歩くことができなくなり、ついには寝たきりになってしまいます。記憶力や計算力も鈍り、精神状態も不安定、無気力、うつ状態、統合失調症(精神分裂病)様の反応を示すようになります。
目の症状としては、角膜輪(カイザー・フライシャー輪)をみます。黒目の周りに銅が沈着し、青緑色や黒緑褐色に見えます。この角膜輪が肉眼的にはっきり見えるのは、思春期過ぎです。
これらの多彩な症状は、すべての罹病(りびょう)者に出るのではなく、無症状期の発症前型、 10歳以下の小児期に多い肝型、 10歳以降に多くて年齢とともに増加する神経型、 神経型と同様の傾向を示す肝神経型に分かれます。治療しなければ進行し、ついには、死亡したり、荒廃したりします。
遺伝性代謝疾患ながら治療は可能
ウイルソン病は、遺伝性代謝疾患のうちでは数少ない、治療可能あるいは発症予防可能な疾患です。遺伝性代謝疾患は、いわゆる難病とされ、治療が不可能なものが多いのです。幸い、常染色体劣性遺伝性の疾患であるウイルソン病は治療ができ、早期発見により発症を予防することもできるのです。
早期発見ためには、同じ病気を持つ血族の有無も重要になります。兄弟姉妹を検査すると、25パーセントの確率でウイルソン病であったりします。しかし、約30パーセントは突然変異でウイルソン病が発病するため、家族や血族発生のないこともあります。
家族内検索により発見された小児の場合、発症前型に分類され、治療することにより日常生活や学校生活、就職などすべての面に渡って、正常者と同じ生活を維持することができます。
ウイルソン病の診断は、問診や臨床症状から銅代謝異常の可能性を疑い、血清総銅量やセルロプラスミン濃度の低下、尿中排出量の増加、眼の角膜輪(カイザー・フライシャー輪)の証明などにより、銅代謝異常のあることを診断します。
さらに、肝生検による組織診断、肝生検組織の銅染色、肝生検組織中の銅含有量の測定、胆汁中の銅濃度量の測定などにより、診断が確定します。
治療法としては、銅を多く含む食事の制限を行う食事療法と、D-ペニシラミン(メタルカプターゼ)や塩酸トリエンチン、メタライトといった銅排出促進藥(キレート薬)を服用する薬物療法が基本となります。
食事療法としては、生涯に渡って銅含有量の多い食物の摂取を制限して、1日1・5ミリグラム以下の低銅食を指導します。銅含有量の多い食物として挙げられるは、貝類、レバー、チョコレート、キノコ類など。
薬物療法としては、体内にたまった銅の除去、銅毒性の減少を目指して、銅排出促進薬による治療が、発症予防を含めて第一選択になります。この薬剤には副作用がありますし、生涯に渡って服用しなければなりません。
また、肝障害や神経障害に対する対症療法も必要に応じて行われます。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
ウイルソン病とは、体内に銅が沈着することにより、脳、肝臓、腎(じん)臓、目などが侵される疾患。その原因は、日常の食事で摂取された銅が肝臓から胆汁中へと、正常に排出されないことによります。
常染色体劣性遺伝に基づく先天性銅代謝異常症であり、病名はウイルソンという人が見付けたことに由来しますが、進行性レンズ核変性症、肝レンズ核変性症とも呼ばれています。
銅は微量元素の一つで、必須栄養素であり、過剰に摂取した場合、急性や慢性の銅中毒になります。その慢性銅中毒に、ウイルソン病はよく似ています。食物中の銅は、十二指腸や小腸上部で吸収されて、肝臓に運ばれます。肝臓において、銅はセルロプラスミンと結合して銅結合蛋白(たんぱり)質となり、血液中に流れてゆきます。また、脳や骨髄など全身の諸臓器に必要量が分布し、過剰な銅は肝臓から胆汁中、腸管中に排出され、平衡を保っているのです。
しかし、ウイルソン病においては、この肝臓での銅代謝が障害されています。肝臓中に取り込まれた銅がセルロプラスミンと結合できないために、胆汁中へ銅が排出されず、肝臓にたまっていきます。そして、肝臓からあふれて血液中へ流れ出た銅が、脳、腎臓、目の角膜などへ蓄積します。
近年、13番染色体上のATP7B遺伝子異常が、ウイルソン病の原因遺伝子として特定されました。ATP7Bは、肝臓に特異的に発現するATP依存性メタルトランスポーターで、この異常によってセルロプラスミンへの銅の取り込みが損なわれます。
ウイルソン病の発症率は、3~4万人に1人と見なされ、日本全国で1500人の患者がいるといわれています 。発症率は、欧米諸国より高くなっています。年齢的には、3~15歳の小児期を中心に発症し、30~40歳で発症することもあります。
肝臓の症状は、疲れやすかったり、白眼や皮膚が黄色くなったりして気付かれます。多くの場合は無症状で、血中GOT、GPTなど肝機能の異常を指摘され、発見されます。しかし、原因不明の急性肝炎とか慢性肝炎などと診断されることもあり、急激な肝不全状態となって、黄疸(おうだん)や意識障害などを生じ、急に死亡してしまうこともあります。肝障害は徐々に進行し、思春期過ぎには肝硬変になる場合が多くみられます。
脳の症状の多くは、思春期ごろから現れます。初期においては、言葉が不明瞭(めいりょう)になり、何かをしようとすると手指が震えたりして、字を書くことや細かい作業が下手になります。
さらに進行すると、表情が硬くなり、次第に歩くことができなくなり、ついには寝たきりになってしまいます。記憶力や計算力も鈍り、精神状態も不安定、無気力、うつ状態、統合失調症(精神分裂病)様の反応を示すようになります。
目の症状としては、角膜輪(カイザー・フライシャー輪)をみます。黒目の周りに銅が沈着し、青緑色や黒緑褐色に見えます。この角膜輪が肉眼的にはっきり見えるのは、思春期過ぎです。
これらの多彩な症状は、すべての罹病(りびょう)者に出るのではなく、無症状期の発症前型、 10歳以下の小児期に多い肝型、 10歳以降に多くて年齢とともに増加する神経型、 神経型と同様の傾向を示す肝神経型に分かれます。治療しなければ進行し、ついには、死亡したり、荒廃したりします。
遺伝性代謝疾患ながら治療は可能
ウイルソン病は、遺伝性代謝疾患のうちでは数少ない、治療可能あるいは発症予防可能な疾患です。遺伝性代謝疾患は、いわゆる難病とされ、治療が不可能なものが多いのです。幸い、常染色体劣性遺伝性の疾患であるウイルソン病は治療ができ、早期発見により発症を予防することもできるのです。
早期発見ためには、同じ病気を持つ血族の有無も重要になります。兄弟姉妹を検査すると、25パーセントの確率でウイルソン病であったりします。しかし、約30パーセントは突然変異でウイルソン病が発病するため、家族や血族発生のないこともあります。
家族内検索により発見された小児の場合、発症前型に分類され、治療することにより日常生活や学校生活、就職などすべての面に渡って、正常者と同じ生活を維持することができます。
ウイルソン病の診断は、問診や臨床症状から銅代謝異常の可能性を疑い、血清総銅量やセルロプラスミン濃度の低下、尿中排出量の増加、眼の角膜輪(カイザー・フライシャー輪)の証明などにより、銅代謝異常のあることを診断します。
さらに、肝生検による組織診断、肝生検組織の銅染色、肝生検組織中の銅含有量の測定、胆汁中の銅濃度量の測定などにより、診断が確定します。
治療法としては、銅を多く含む食事の制限を行う食事療法と、D-ペニシラミン(メタルカプターゼ)や塩酸トリエンチン、メタライトといった銅排出促進藥(キレート薬)を服用する薬物療法が基本となります。
食事療法としては、生涯に渡って銅含有量の多い食物の摂取を制限して、1日1・5ミリグラム以下の低銅食を指導します。銅含有量の多い食物として挙げられるは、貝類、レバー、チョコレート、キノコ類など。
薬物療法としては、体内にたまった銅の除去、銅毒性の減少を目指して、銅排出促進薬による治療が、発症予防を含めて第一選択になります。この薬剤には副作用がありますし、生涯に渡って服用しなければなりません。
また、肝障害や神経障害に対する対症療法も必要に応じて行われます。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
タグ:病気(う) ウイルソン病 チック症 自閉症 適応障害 不安障害 双極性障害(躁うつ病) パニック障害 糖尿病 分娩後甲状腺炎 肝レンズ核変性症 先天性銅代謝異常症 甲状腺機能亢進症 生活習慣病 肥満 メタボリック症候群 壊血病 高脂血症 痛風 バセドウ病 やせ 慢性甲状腺炎(橋本病) プランマー病 ビタミンB2欠乏症 ビタミン欠乏症 類宦官症 ビタミン過剰症 無痛性甲状腺炎 橋本病(慢性甲状腺炎) ヌーナン症候群 ニコチン酸欠乏症 糖尿病性網膜症 糖尿病性腎症 糖尿病性神経障害 単純性甲状腺腫 ターナー症候群 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症) 甲状腺ホルモン不応症 甲状腺クリーゼ 甲状腺機能低下症 くる病(骨軟化症) 亜急性甲状腺炎 アジソン病 機能性甲状腺腺腫 かっけ(脚気) クレチン症(先天性甲状腺機能低下症) クラインフェルター症候群 卵巣の形態異常(ターナー症候群) 偽痛風(軟骨石灰化症) 軟骨石灰化症(偽痛風)
■病気 ウェゲナー肉芽腫症 [病気(う)]
鼻と肺の肉芽腫が認められる全身の血管炎
ウェゲナー肉芽腫(にくげしゅ)症とは、鼻と肺の肉芽腫、壊死(えし)性半月体糸球体腎(じん)炎が認められる全身の血管炎。膠原(こうげん)病の中でも、まれな病気です。
1939年にドイツの病理学者であるウェゲナー博士によって、世界で初めて報告されました。原因はいまだ不明ですが、免疫の異常の関与が考えられており、抗好中球細胞質抗体という自己抗体が、風邪などの上気道感染の後に炎症によって産生されたサイトカインとともに好中球を活性化し、各種の悪害因子を放出して、血管炎や肉芽腫を起こすと見なされています。
日本では、国の特定疾患(難病)に指定されていて、全国に600~800人ほどの発症者がいると考えられています。男女比は1:1で明らかな性差は認められていません。
鼻腔(びくう)や肺、腎臓に、炎症によって細胞が異常増殖して塊になった肉芽腫ができ、さらに全身に血管炎を生じるため、さまざまな症状を引き起こします。全身症状として、発熱、倦怠(けんたい)感、食欲不振、体重の減少があります。
全身症状に続いて、または同時に、鼻、目、耳、咽喉(いんこう)頭などの上気道、肺、腎臓の炎症による症状が起こります。上気道のうち鼻腔に肉芽腫ができると、鼻詰まりや血の混じった鼻汁が出ます。慢性鼻炎や副鼻腔炎が起こりやすくなります。その他の上気道に炎症が起こると、難聴、耳漏、耳痛、視力低下、眼充血、眼痛、眼球突出、咽喉頭痛、嗄声(させい)などがみられます。
肺に肉芽腫ができると、せきやたんが出て、血たんが出ることもあります。X線で検査すると、肺に肉芽腫による影や空洞が映ります。腎臓に肉芽腫を伴った炎症が生じると、蛋白(たんぱく)尿や血尿が出て、腎臓の機能が落ちてきます。その他の血管炎を思わせる症状として、紫斑(しはん)、多発性関節痛、多発神経炎などが起こります。
ウェゲナー肉芽腫症の検査と診断と治療
ウェゲナー肉芽腫症では、すべての症状が起こるわけではなく、一人一人の発症者によって出てくる症状、障害される臓器が違うことに、理解を要します。最初は、鼻や耳の疾患、あるいは胸の疾患を思わせる症状が出て、後で腎臓を含め全身の血管炎による多臓器の症状を呈する場合があり、注意が必要です。専門医の指示に従い、早期発見、早期治療を行うことが勧められます。
医師による診断では、血液検査で炎症反応を調べたり、血清中の抗好中球細胞質抗体が陽性かどうかを調べます。さらに、肉芽腫ができやすい鼻腔、肺、腎臓の生検を行って組織を調べて、診断を確定します。肺の肉芽腫を調べるには、MRIやCT検査も行われます。
治療には、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)と免疫抑制剤が用いられます。普通、副腎皮質ホルモンと免疫抑制剤を併用して1カ月から2カ月大量に投与し、以降は疾患の活動性と血液中の抗好中球細胞質抗体の値の推移を見ながら、徐々に減量していきます。症状が落ち着いた状態になったら、使用している免疫抑制療法を維持し、疾患が再発しないように6カ月~5年ほどの長期間に渡って、慎重に経過を観察することが必要です。
また、このウェゲナー肉芽腫症は上気道、肺に二次感染を起こしやすいので、必要によりサルファ剤と抗菌薬を配合したST合剤の内服、鼻腔、咽頭ネブライザーなどにより、細菌感染症に対する対策を十分に行うことも大切です。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
ウェゲナー肉芽腫(にくげしゅ)症とは、鼻と肺の肉芽腫、壊死(えし)性半月体糸球体腎(じん)炎が認められる全身の血管炎。膠原(こうげん)病の中でも、まれな病気です。
1939年にドイツの病理学者であるウェゲナー博士によって、世界で初めて報告されました。原因はいまだ不明ですが、免疫の異常の関与が考えられており、抗好中球細胞質抗体という自己抗体が、風邪などの上気道感染の後に炎症によって産生されたサイトカインとともに好中球を活性化し、各種の悪害因子を放出して、血管炎や肉芽腫を起こすと見なされています。
日本では、国の特定疾患(難病)に指定されていて、全国に600~800人ほどの発症者がいると考えられています。男女比は1:1で明らかな性差は認められていません。
鼻腔(びくう)や肺、腎臓に、炎症によって細胞が異常増殖して塊になった肉芽腫ができ、さらに全身に血管炎を生じるため、さまざまな症状を引き起こします。全身症状として、発熱、倦怠(けんたい)感、食欲不振、体重の減少があります。
全身症状に続いて、または同時に、鼻、目、耳、咽喉(いんこう)頭などの上気道、肺、腎臓の炎症による症状が起こります。上気道のうち鼻腔に肉芽腫ができると、鼻詰まりや血の混じった鼻汁が出ます。慢性鼻炎や副鼻腔炎が起こりやすくなります。その他の上気道に炎症が起こると、難聴、耳漏、耳痛、視力低下、眼充血、眼痛、眼球突出、咽喉頭痛、嗄声(させい)などがみられます。
肺に肉芽腫ができると、せきやたんが出て、血たんが出ることもあります。X線で検査すると、肺に肉芽腫による影や空洞が映ります。腎臓に肉芽腫を伴った炎症が生じると、蛋白(たんぱく)尿や血尿が出て、腎臓の機能が落ちてきます。その他の血管炎を思わせる症状として、紫斑(しはん)、多発性関節痛、多発神経炎などが起こります。
ウェゲナー肉芽腫症の検査と診断と治療
ウェゲナー肉芽腫症では、すべての症状が起こるわけではなく、一人一人の発症者によって出てくる症状、障害される臓器が違うことに、理解を要します。最初は、鼻や耳の疾患、あるいは胸の疾患を思わせる症状が出て、後で腎臓を含め全身の血管炎による多臓器の症状を呈する場合があり、注意が必要です。専門医の指示に従い、早期発見、早期治療を行うことが勧められます。
医師による診断では、血液検査で炎症反応を調べたり、血清中の抗好中球細胞質抗体が陽性かどうかを調べます。さらに、肉芽腫ができやすい鼻腔、肺、腎臓の生検を行って組織を調べて、診断を確定します。肺の肉芽腫を調べるには、MRIやCT検査も行われます。
治療には、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)と免疫抑制剤が用いられます。普通、副腎皮質ホルモンと免疫抑制剤を併用して1カ月から2カ月大量に投与し、以降は疾患の活動性と血液中の抗好中球細胞質抗体の値の推移を見ながら、徐々に減量していきます。症状が落ち着いた状態になったら、使用している免疫抑制療法を維持し、疾患が再発しないように6カ月~5年ほどの長期間に渡って、慎重に経過を観察することが必要です。
また、このウェゲナー肉芽腫症は上気道、肺に二次感染を起こしやすいので、必要によりサルファ剤と抗菌薬を配合したST合剤の内服、鼻腔、咽頭ネブライザーなどにより、細菌感染症に対する対策を十分に行うことも大切です。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
タグ:病気(う)
■病気 うつ病 [病気(う)]
うつ病とは
うつ病とは文字通り、「気分が憂うつになる病気」には違いありませんが、単に嫌なことがあって不愉快になるとか、仕事が難しすぎてうんざりするというのとは、ちょっと違います。
次のような質問に「ハイ」、「イイエ」で答えてみてください。
1)最近、寝付きが悪い。夜明けに目が覚めてしまい、眠れない。
2)午前中が特に気分が沈んで、何もする気がしない。
……朝刊に目を通すのも、おっくうだ。
3)食欲がない。食べ物が砂を噛むようで、美味しく感じない。
4)体重が減ってきた。
5)いつも疲れた感じで、ぐったりしている。
6)異性に魅力(性欲)を感じない。
……恋愛とかセックスなど煩わしくて、やる気が起きない。
7)何をするのも面倒くさいのに、じっとしていると不安でイライラする。
8)このまま消えてしまえればどんなに楽だろう、と思う。
質問に3つ以上も「ハイ」があるようでしたら、あなたはうつ病の候補者かもしれません。
ただ、うつ病の自己診断をしてもらおうというので、このような質問を並べたわけではありません。うつ病というのがどういう病気なのかをわかっていただくために、その特徴的な病状を列挙したのです。
「うつ病」は決して「怠け病」ではない
人間は本来、誰しも「面白いことがあればやってみたい」「お金を稼いでいい思いをしたい」「きれいなものを見たい」「美味しいものを食べたい」といった「欲」や「好奇心」をもっています。これが人間の生きる意欲・バイタリティというものです。
うつ病は、このバイタリティの電圧が下がってしまい、「見たい、やりたい、稼ぎたい」というのがおっくうで、どうでもよくなってしまう病気なのです。
なぜそんなことになるのかは、十分にわかっていませんが、脳内の神経伝達の一部が、一時的に悪くなって、情報(刺激)の伝わり方が部分的に悪くなっているのではないか、と考えられています。
ですから、うつ病の人がやる気をなくしてぐったりしているのは、決して怠けているわけではないのです。脳、あるいは神経という臓器が一時的に不調になっている「体」の病と考えた方が分かりやすいかもしれません。
よく、うつ病の人に「頑張れ! 立ち上がれ!」といった励ましをするのは逆効果だというのは、そのためです。病人自体が人一倍「頑張ってなんとか立ち直らなければ」と思っているのですが、どうしても体が、気持ちが、ついていかないのです。それを励まされたらますます追いつめられてしまいます。
風邪で高熱を出して伸びてしまっている人に「頑張れ、立ち上がれ、働け!」とは普通いわないでしょう。それと同じことです。
うつ病で一番の危険は「自殺」してしまうこと
うつ病の病状の特徴をはじめに列挙しました。この8項目の7番目までは、本人にとってつらい症状ではありますが、すぐさま命に関わるようなものではありません。
しかし、8番目の「このまま消えてしまえればどんなに楽だろう、と思う。」というのだけは、非常に危険な症状です。これが一歩進めば、消えるための自殺に簡単につながるからです。
一般には、自殺などという行為は、よほどの悩みや苦しみに追いつめられた末の一大決心がないとできないこと、と思われがちですが、うつ病の自殺は違います。うつ病の患者さんにとっては、自殺が一番楽な救いの道なのです。うつ病から治った人に、その頃のことを聞くと「自殺がとてもすてきな、甘美なものに思えた」といいます。
しかも困るのは、自殺は、病気が重い状態の時はあまり起こりません。そんな時は、ぐったりしてしまって自殺という行動を起こす意欲もなくなっているからです。むしろ、病いの初期の頃とか、治りきる直前とかに、突然起こるのです。
「あんなに元気になっていたのに、何故!」というような場合が多いのです。
ともかく、うつ病で最も注意しなければいけないのは、この突発的な自殺です。これを防止するために医師だけでなく、家族や周囲の人々も十分に気をつけなければいけません。
「うつ病」になりやすい人、なるきっかけは?
現代社会は、うつ病を引き起こすストレスに満ちあふれています。しかしながら、誰も彼もがうつ病になるわけではありません。やはり、なりやすいタイプの人、なりにくい人があります。なりやすい人とはどんなタイプでしょう。
・几帳面な人
・何事もこだわりがあって、いい加減にできない完全主義者
・他人に不義理ができない「気配り」の人
・責任感、義務感の強い人
いわば、現代のサラリーマン社会、組織社会では優秀で「いい人」のタイプです。こういう人は当然組織の中で信頼され責任あるポストに昇進するでしょう。そして、そのまかされた仕事が自分のこだわりや「完全主義」でこなせている間は「いい人」であり「有能な人」で有り続けます。しかし、いつかは仕事が溢れ、手に負えなくなり、どうしようもなくなる時がきます。
その時、適当にやりすごせればいいのですが、几帳面な性格だとそうはできず、破綻の重圧に押しつぶされることになってしまいます。いわゆる「燃え尽き症候群」といえるものです。
しかし、うつ病はそういう「重圧」のようなものだけでなく、仕事が一段落してヒマになったとか、昇進したとか、引っ越し、新居を建てた、息子や娘の進学、就職、自立、といったおめでたいはずのことがきっかけで起こることもあります。要するに人生の節目、生活の大きな変化で起こる場合もあるのです
うつ病の治療はどうするか
うつ病においては、励ますとか、いろいろ身近で親切に面倒を見てあげるといった心理的な介助は、かえって本人の負担になってこじらせてしまう場合もあります。
対処法の第一は、専門医(精神神経科)にかかって、抗うつ薬による治療を始めることです。現在では、脳神経の減退した情報伝達を回復させるいい薬剤が何種類も開発されていて、うつ病治療は格段に進んでいます。
また、患者をストレスから解き放って、休養させることも大切です。サラリーマンの場合には、怠け病という偏見を解き、本人の不利にならぬように休養をとれるよう周囲が手配りする必要があります。主婦などの場合は、案外身近な姑との確執とか近所への気兼ねがストレス要因になっていることもあります。
自殺の危険が大きい場合、昼間独りでいなければいけないといった生活状況の場合などには、いっそ入院させた方がいいかもしれません。
数カ月かかるが、必ず治る病気
――うつ病の治療は――
・薬剤
・休養
・自殺防止
の3つがポイントです。これを守って経過を見ていけば必ず治る病気です。
ただ、3カ月から場合によると6カ月くらいの時間がかかります。薬を飲んだからといって、風邪の熱が解熱剤で翌日には下がった、というような治り方はしません。一進一退で、時には少し悪くなったんじゃないかと思える日もあれば、今日はいやに調子がいい、という日もあり、そんな状態を繰り返しながら次第に軽快していき、ある日気付いてみたら、全く元通りの健康な状態になっていた、というような経過をたどります。
ですから、途中で焦っていらいらしたり、絶望的になって治療を放棄してはいけません。経過の途中には、時にはいらいらや不安がつのって、いてもたってもいられないような状態(パニック)に陥ったり、不眠や不安が強くなったりする場合もあるかもしれません。そういう症状にはそれぞれ対処する薬剤を処方することもできますので、医師に相談して下さい。
おわりに
うつ病は、働き盛りの責任ある立場の男性とか、一家の中心になっている主婦などがかかりやすい病気ともいえます。しかし、数カ月で必ず治りますし、治った後は以前と同じ活動的な姿に戻れるのですから、この病気によって職場や家族関係などに回復できない破綻を作ってしまうことは避けなければなりません。
そのためには、家族や職場など、周囲の人々もこの病気の特徴をよく理解して、適切に対処していただきたいと思います。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
うつ病とは文字通り、「気分が憂うつになる病気」には違いありませんが、単に嫌なことがあって不愉快になるとか、仕事が難しすぎてうんざりするというのとは、ちょっと違います。
次のような質問に「ハイ」、「イイエ」で答えてみてください。
1)最近、寝付きが悪い。夜明けに目が覚めてしまい、眠れない。
2)午前中が特に気分が沈んで、何もする気がしない。
……朝刊に目を通すのも、おっくうだ。
3)食欲がない。食べ物が砂を噛むようで、美味しく感じない。
4)体重が減ってきた。
5)いつも疲れた感じで、ぐったりしている。
6)異性に魅力(性欲)を感じない。
……恋愛とかセックスなど煩わしくて、やる気が起きない。
7)何をするのも面倒くさいのに、じっとしていると不安でイライラする。
8)このまま消えてしまえればどんなに楽だろう、と思う。
質問に3つ以上も「ハイ」があるようでしたら、あなたはうつ病の候補者かもしれません。
ただ、うつ病の自己診断をしてもらおうというので、このような質問を並べたわけではありません。うつ病というのがどういう病気なのかをわかっていただくために、その特徴的な病状を列挙したのです。
「うつ病」は決して「怠け病」ではない
人間は本来、誰しも「面白いことがあればやってみたい」「お金を稼いでいい思いをしたい」「きれいなものを見たい」「美味しいものを食べたい」といった「欲」や「好奇心」をもっています。これが人間の生きる意欲・バイタリティというものです。
うつ病は、このバイタリティの電圧が下がってしまい、「見たい、やりたい、稼ぎたい」というのがおっくうで、どうでもよくなってしまう病気なのです。
なぜそんなことになるのかは、十分にわかっていませんが、脳内の神経伝達の一部が、一時的に悪くなって、情報(刺激)の伝わり方が部分的に悪くなっているのではないか、と考えられています。
ですから、うつ病の人がやる気をなくしてぐったりしているのは、決して怠けているわけではないのです。脳、あるいは神経という臓器が一時的に不調になっている「体」の病と考えた方が分かりやすいかもしれません。
よく、うつ病の人に「頑張れ! 立ち上がれ!」といった励ましをするのは逆効果だというのは、そのためです。病人自体が人一倍「頑張ってなんとか立ち直らなければ」と思っているのですが、どうしても体が、気持ちが、ついていかないのです。それを励まされたらますます追いつめられてしまいます。
風邪で高熱を出して伸びてしまっている人に「頑張れ、立ち上がれ、働け!」とは普通いわないでしょう。それと同じことです。
うつ病で一番の危険は「自殺」してしまうこと
うつ病の病状の特徴をはじめに列挙しました。この8項目の7番目までは、本人にとってつらい症状ではありますが、すぐさま命に関わるようなものではありません。
しかし、8番目の「このまま消えてしまえればどんなに楽だろう、と思う。」というのだけは、非常に危険な症状です。これが一歩進めば、消えるための自殺に簡単につながるからです。
一般には、自殺などという行為は、よほどの悩みや苦しみに追いつめられた末の一大決心がないとできないこと、と思われがちですが、うつ病の自殺は違います。うつ病の患者さんにとっては、自殺が一番楽な救いの道なのです。うつ病から治った人に、その頃のことを聞くと「自殺がとてもすてきな、甘美なものに思えた」といいます。
しかも困るのは、自殺は、病気が重い状態の時はあまり起こりません。そんな時は、ぐったりしてしまって自殺という行動を起こす意欲もなくなっているからです。むしろ、病いの初期の頃とか、治りきる直前とかに、突然起こるのです。
「あんなに元気になっていたのに、何故!」というような場合が多いのです。
ともかく、うつ病で最も注意しなければいけないのは、この突発的な自殺です。これを防止するために医師だけでなく、家族や周囲の人々も十分に気をつけなければいけません。
「うつ病」になりやすい人、なるきっかけは?
現代社会は、うつ病を引き起こすストレスに満ちあふれています。しかしながら、誰も彼もがうつ病になるわけではありません。やはり、なりやすいタイプの人、なりにくい人があります。なりやすい人とはどんなタイプでしょう。
・几帳面な人
・何事もこだわりがあって、いい加減にできない完全主義者
・他人に不義理ができない「気配り」の人
・責任感、義務感の強い人
いわば、現代のサラリーマン社会、組織社会では優秀で「いい人」のタイプです。こういう人は当然組織の中で信頼され責任あるポストに昇進するでしょう。そして、そのまかされた仕事が自分のこだわりや「完全主義」でこなせている間は「いい人」であり「有能な人」で有り続けます。しかし、いつかは仕事が溢れ、手に負えなくなり、どうしようもなくなる時がきます。
その時、適当にやりすごせればいいのですが、几帳面な性格だとそうはできず、破綻の重圧に押しつぶされることになってしまいます。いわゆる「燃え尽き症候群」といえるものです。
しかし、うつ病はそういう「重圧」のようなものだけでなく、仕事が一段落してヒマになったとか、昇進したとか、引っ越し、新居を建てた、息子や娘の進学、就職、自立、といったおめでたいはずのことがきっかけで起こることもあります。要するに人生の節目、生活の大きな変化で起こる場合もあるのです
うつ病の治療はどうするか
うつ病においては、励ますとか、いろいろ身近で親切に面倒を見てあげるといった心理的な介助は、かえって本人の負担になってこじらせてしまう場合もあります。
対処法の第一は、専門医(精神神経科)にかかって、抗うつ薬による治療を始めることです。現在では、脳神経の減退した情報伝達を回復させるいい薬剤が何種類も開発されていて、うつ病治療は格段に進んでいます。
また、患者をストレスから解き放って、休養させることも大切です。サラリーマンの場合には、怠け病という偏見を解き、本人の不利にならぬように休養をとれるよう周囲が手配りする必要があります。主婦などの場合は、案外身近な姑との確執とか近所への気兼ねがストレス要因になっていることもあります。
自殺の危険が大きい場合、昼間独りでいなければいけないといった生活状況の場合などには、いっそ入院させた方がいいかもしれません。
数カ月かかるが、必ず治る病気
――うつ病の治療は――
・薬剤
・休養
・自殺防止
の3つがポイントです。これを守って経過を見ていけば必ず治る病気です。
ただ、3カ月から場合によると6カ月くらいの時間がかかります。薬を飲んだからといって、風邪の熱が解熱剤で翌日には下がった、というような治り方はしません。一進一退で、時には少し悪くなったんじゃないかと思える日もあれば、今日はいやに調子がいい、という日もあり、そんな状態を繰り返しながら次第に軽快していき、ある日気付いてみたら、全く元通りの健康な状態になっていた、というような経過をたどります。
ですから、途中で焦っていらいらしたり、絶望的になって治療を放棄してはいけません。経過の途中には、時にはいらいらや不安がつのって、いてもたってもいられないような状態(パニック)に陥ったり、不眠や不安が強くなったりする場合もあるかもしれません。そういう症状にはそれぞれ対処する薬剤を処方することもできますので、医師に相談して下さい。
おわりに
うつ病は、働き盛りの責任ある立場の男性とか、一家の中心になっている主婦などがかかりやすい病気ともいえます。しかし、数カ月で必ず治りますし、治った後は以前と同じ活動的な姿に戻れるのですから、この病気によって職場や家族関係などに回復できない破綻を作ってしまうことは避けなければなりません。
そのためには、家族や職場など、周囲の人々もこの病気の特徴をよく理解して、適切に対処していただきたいと思います。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
タグ:病気(う)