■病気 胃潰瘍 [病気(い)]
胃液によって胃の粘膜が傷付き、深い欠損を生じる疾患
胃潰瘍(かいよう)とは、強酸性の胃液によって胃の粘膜が傷付き、ただれて、深い欠損を生じる疾患。胃液で自らの粘膜が消化されてしまうという意味で、十二指腸潰瘍を含めて、消化性潰瘍とも呼ばれます。
欠損が浅い場合はびらんといいますが、潰瘍は欠損が粘膜固有層を貫いて、筋層まで深くえぐれたものです。十二指腸潰瘍が若者に多いのに対して、胃潰瘍は中年以降に多くみられます。
胃から分泌される胃液中の胃酸やペプシンと、この胃液から胃の粘膜を守る中性の粘液の分泌とのバランスが崩れ、胃液に対する胃粘膜の防御力が弱まることによって潰瘍が生じます。また、胃潰瘍の70~90パーセントで、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が発見されています。
つまり、ピロリ菌の感染などで胃の粘膜が傷付いて、胃液への防御力が弱まったところに、ストレスや過度の喫煙、暴飲暴食、刺激の強い飲食物などが誘因となって胃液の分泌が刺激されると、胃の粘膜が消化されて胃潰瘍が発症するのです。
症状としては、腹痛が代表的。食後少し時間が経過すると、みぞおちの痛みが起こり、背中の痛みも起こることもあります。痛みは潰瘍の活動期に起こり、安定期には無症状です。潰瘍の増悪期には、食後や空腹時を問わず痛むことがあります。
そのほか、胸焼け、胃のもたれ、食欲不振、体重減少など多彩な症状を示します。
場合によっては出血を起こし、頻脈、冷や汗、血圧低下、気分不快、吐血、下血などの症状が出現します。出血量が多いと、ショック症状が現れ、生命に危険が迫ります。高齢者では、胃潰瘍による出血が心筋梗塞(こうそく)や狭心症の引き金になることもあります。
重度の胃潰瘍の場合は、胃壁の欠損が胃の外側にまでつながる場合もあり、これを穿孔(せんこう)といいます。激痛と吐血を起こし、やはりショック症状を起こします。
ピロリ菌は、胃の粘膜に生息する細菌で、1980年代の初めに発見され、胃潰瘍や慢性胃炎の発生に関係していることがわかっています。通常、胃の中は、胃酸が分泌されて強い酸性に保たれているため、細菌が生息することはできません。しかし、ピロリ菌は、胃の粘膜が胃酸から胃壁を守るために分泌している中性の粘液の中に生息し、直接胃酸に触れないように身を守っています。
ピロリ菌はウレアーゼという尿素分解酵素を分泌して、胃の中に入ってくる食べ物に含まれる尿素を分解し、アンモニアを作り出します。このアンモニアも胃の粘膜に影響を及ぼし、胃潰瘍や慢性胃炎の原因の一つになると考えられています。
ただし、ピロリ菌に感染している人すべてに、症状が現れるわけではありません。感染しても、自覚症状がない場合、そのまま普通の生活を送ることができます。
ピロリ菌に感染している人の割合は、年を取るほど高くなる傾向があり、20歳未満では9〜11パーセントなのに対して、40〜60歳では55~70パーセントとなっています。このように年齢によって感染率に違いがあるのは、育った時代の衛生環境に関係していると見なされています。
胃潰瘍の検査と診断と治療
胃潰瘍と同様の症状を生じる疾患として、機能性胃腸症の頻度が最も高く、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、急性膵(すい)炎、慢性膵炎、胆石、胆嚢(たんのう)炎など、鑑別すべき疾患は極めて多くなっています。
医師による診断では、内視鏡検査やX線検査が行われます。内視鏡検査では、潰瘍の状態を観察し、疾患がどのレベルまで進んでいるかを観察します。X線検査では、潰瘍の輪郭、潰瘍の回りの粘膜や胃壁の様子を観察します。
そのほか、胃腸のどこかからの出血の有無を調べる糞便(ふんべん)潜血反応検査、胃液の量や酸の強さを調べる胃液検査を行うことがあります。
胃潰瘍の治療では、胃酸の分泌を抑え、胃の粘膜を修復する薬剤を服用します。薬剤は、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬(プロトンポンプインヒビター)など。
ピロリ菌に感染し、再発を繰り返している場合には、2~3種類の抗生物質を同時に1~2週間服用し続けることで、胃の中に生息しているピロリ菌を除菌します。2~3種類の抗生物質を用いるのは、1種類だけよりも効果が高いのと、その抗生物質に対する耐性菌(抗生物質が効かない菌)ができてしまうのを防ぐためです。
プロトンポンプ阻害薬1種類と抗生物質2種類を組み合わせた3剤を、朝夕2回、1週間服用し続けることもあります。
出血性の胃潰瘍の場合は、内視鏡的止血法が多く行われるようになっています。そのため、従来の外科的治療は激減しています。穿孔の場合や、内視鏡的に止血、コントロールできない出血の場合は、外科的治療が行われます。
完治した後も再発を防ぐため、胃酸の分泌を抑制する薬や胃粘膜を修復する薬を継続して服用します。
日常生活では、過労やストレスを避けます。出血や胃痛など症状のひどい時は、禁酒、禁煙、またコーヒー、濃い紅茶や緑茶など胃酸の分泌を促進する飲み物を控えるようにします。
食事の量も控えめにして、少量ずつ、よく噛(か)んで、ゆっくりと食べます。空気も一緒に飲み込み、おなかが張ってしまう早食いは、好ましくありません。また、食事は1日3食、決まった時間に摂取します。長時間、食事をしないと、その間は胃酸が薄められず、胃に負担がかかるからです。
胃の粘膜を保護する食材としては、ビタミンUを含むキャベツ、ムチンを含むオクラやヤマイモ、加熱しても壊れにくいビタミンCを含むジャガイモなどが挙げられます。また、でんぷん質を分解する消化酵素を含んでいる大根や、豆腐、鶏のささ身、牛乳、豆乳など消化のよい食材もお勧めです。
逆に、繊維質が多い物、焼き肉などの脂っこい物、甘味や塩気が強い物、極端に冷たかったり熱かったりする物、強い香辛料は、避けたいところです。
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胃潰瘍(かいよう)とは、強酸性の胃液によって胃の粘膜が傷付き、ただれて、深い欠損を生じる疾患。胃液で自らの粘膜が消化されてしまうという意味で、十二指腸潰瘍を含めて、消化性潰瘍とも呼ばれます。
欠損が浅い場合はびらんといいますが、潰瘍は欠損が粘膜固有層を貫いて、筋層まで深くえぐれたものです。十二指腸潰瘍が若者に多いのに対して、胃潰瘍は中年以降に多くみられます。
胃から分泌される胃液中の胃酸やペプシンと、この胃液から胃の粘膜を守る中性の粘液の分泌とのバランスが崩れ、胃液に対する胃粘膜の防御力が弱まることによって潰瘍が生じます。また、胃潰瘍の70~90パーセントで、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が発見されています。
つまり、ピロリ菌の感染などで胃の粘膜が傷付いて、胃液への防御力が弱まったところに、ストレスや過度の喫煙、暴飲暴食、刺激の強い飲食物などが誘因となって胃液の分泌が刺激されると、胃の粘膜が消化されて胃潰瘍が発症するのです。
症状としては、腹痛が代表的。食後少し時間が経過すると、みぞおちの痛みが起こり、背中の痛みも起こることもあります。痛みは潰瘍の活動期に起こり、安定期には無症状です。潰瘍の増悪期には、食後や空腹時を問わず痛むことがあります。
そのほか、胸焼け、胃のもたれ、食欲不振、体重減少など多彩な症状を示します。
場合によっては出血を起こし、頻脈、冷や汗、血圧低下、気分不快、吐血、下血などの症状が出現します。出血量が多いと、ショック症状が現れ、生命に危険が迫ります。高齢者では、胃潰瘍による出血が心筋梗塞(こうそく)や狭心症の引き金になることもあります。
重度の胃潰瘍の場合は、胃壁の欠損が胃の外側にまでつながる場合もあり、これを穿孔(せんこう)といいます。激痛と吐血を起こし、やはりショック症状を起こします。
ピロリ菌は、胃の粘膜に生息する細菌で、1980年代の初めに発見され、胃潰瘍や慢性胃炎の発生に関係していることがわかっています。通常、胃の中は、胃酸が分泌されて強い酸性に保たれているため、細菌が生息することはできません。しかし、ピロリ菌は、胃の粘膜が胃酸から胃壁を守るために分泌している中性の粘液の中に生息し、直接胃酸に触れないように身を守っています。
ピロリ菌はウレアーゼという尿素分解酵素を分泌して、胃の中に入ってくる食べ物に含まれる尿素を分解し、アンモニアを作り出します。このアンモニアも胃の粘膜に影響を及ぼし、胃潰瘍や慢性胃炎の原因の一つになると考えられています。
ただし、ピロリ菌に感染している人すべてに、症状が現れるわけではありません。感染しても、自覚症状がない場合、そのまま普通の生活を送ることができます。
ピロリ菌に感染している人の割合は、年を取るほど高くなる傾向があり、20歳未満では9〜11パーセントなのに対して、40〜60歳では55~70パーセントとなっています。このように年齢によって感染率に違いがあるのは、育った時代の衛生環境に関係していると見なされています。
胃潰瘍の検査と診断と治療
胃潰瘍と同様の症状を生じる疾患として、機能性胃腸症の頻度が最も高く、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、急性膵(すい)炎、慢性膵炎、胆石、胆嚢(たんのう)炎など、鑑別すべき疾患は極めて多くなっています。
医師による診断では、内視鏡検査やX線検査が行われます。内視鏡検査では、潰瘍の状態を観察し、疾患がどのレベルまで進んでいるかを観察します。X線検査では、潰瘍の輪郭、潰瘍の回りの粘膜や胃壁の様子を観察します。
そのほか、胃腸のどこかからの出血の有無を調べる糞便(ふんべん)潜血反応検査、胃液の量や酸の強さを調べる胃液検査を行うことがあります。
胃潰瘍の治療では、胃酸の分泌を抑え、胃の粘膜を修復する薬剤を服用します。薬剤は、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬(プロトンポンプインヒビター)など。
ピロリ菌に感染し、再発を繰り返している場合には、2~3種類の抗生物質を同時に1~2週間服用し続けることで、胃の中に生息しているピロリ菌を除菌します。2~3種類の抗生物質を用いるのは、1種類だけよりも効果が高いのと、その抗生物質に対する耐性菌(抗生物質が効かない菌)ができてしまうのを防ぐためです。
プロトンポンプ阻害薬1種類と抗生物質2種類を組み合わせた3剤を、朝夕2回、1週間服用し続けることもあります。
出血性の胃潰瘍の場合は、内視鏡的止血法が多く行われるようになっています。そのため、従来の外科的治療は激減しています。穿孔の場合や、内視鏡的に止血、コントロールできない出血の場合は、外科的治療が行われます。
完治した後も再発を防ぐため、胃酸の分泌を抑制する薬や胃粘膜を修復する薬を継続して服用します。
日常生活では、過労やストレスを避けます。出血や胃痛など症状のひどい時は、禁酒、禁煙、またコーヒー、濃い紅茶や緑茶など胃酸の分泌を促進する飲み物を控えるようにします。
食事の量も控えめにして、少量ずつ、よく噛(か)んで、ゆっくりと食べます。空気も一緒に飲み込み、おなかが張ってしまう早食いは、好ましくありません。また、食事は1日3食、決まった時間に摂取します。長時間、食事をしないと、その間は胃酸が薄められず、胃に負担がかかるからです。
胃の粘膜を保護する食材としては、ビタミンUを含むキャベツ、ムチンを含むオクラやヤマイモ、加熱しても壊れにくいビタミンCを含むジャガイモなどが挙げられます。また、でんぷん質を分解する消化酵素を含んでいる大根や、豆腐、鶏のささ身、牛乳、豆乳など消化のよい食材もお勧めです。
逆に、繊維質が多い物、焼き肉などの脂っこい物、甘味や塩気が強い物、極端に冷たかったり熱かったりする物、強い香辛料は、避けたいところです。
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■病気 胃神経症(神経性胃炎) [病気(い)]
心理的ストレスが大きな要因となって現れる胃の不快症状
胃神経症とは、いかなる検査をしても器質的な異常がないにもかかわれず、胃の痛み、もたれ、胸焼け、食欲不振などの症状が現れる疾患。神経性胃炎、上腹部不定愁訴、ノン・アルサー・ジスペプシア(NUD)とも呼ばれます。
何らかの胃の機能的な異常を反映していると考えられますが、胃の精密検査をいくら行っても、胃の粘膜には炎症やただれ、潰瘍(かいよう)などのはっきりとした異常は認められません。症状は3カ月以上に渡って繰り返し現れ、通常は、数年に渡って慢性に経過します。
胃の痛み、もたれ、胸焼け、食欲不振のほか、げっぷ、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、体重減少などの症状が比較的多くみられるものの、一定したものではありません。これらの症状が精神状態や感情の動揺などによって変動することが、特徴です。
例えば、精神状態がよい時は、消化の悪いものを食べても何の苦痛もありません。精神状態が悪い時には、何を食べても痛んだり吐いたりします。また、現れる症状が多彩で、しかも長く続くわりには、栄養の状態が比較的よいのも特徴です。
神経症的素質のある人に、心理的、精神的なストレス、過労、生活習慣などの要因が加わって、胃神経症が発症すると考えられます。その誘因としては、家庭内のごたごた、疾患に対する不安や恐怖、同じ年齢の知人や近親者の死亡、体に対する自信喪失、職場での不満や抑圧、対人関係のトラブル、事業上での失敗などが挙げられます。
20歳代の比較的若い年代にみられ、女性に多いのが特徴です。
胃神経症の検査と診断と治療
基本的に胃神経症の治療を行う科は心療内科、神経内科になりますが、まず器質的疾患がないかどうかを確認するために消化器内科を受診します。
医師はまず、X線造影検査や内視鏡検査で異常が見当たらないことを、次いで血液一般検査や便潜血反応で異常が見当たらないことを確認します。特に中年以降では、胃がんや大腸がんなどの悪性疾患と区別することが重要です。
治療の方法は、精神的治療と薬物治療に分けられます。多くは何らかの体質的な素因があり、幼少時からよく腹痛、嘔吐、下痢などを起こしていたというエピソードを持っています。その素因のある人が、何らかの強い心理的、精神的ストレスや心身の過労を体験した時に初めて、日常生活や社会生活に大きな支障を来しますので、不安な点は医師に何でも話し、予後がよいことを理解することが大切です。
薬物治療では、消化管機能改善薬が用いられ、重症の場合は抗不安薬も用いられます。 抗不安薬はベンゾジアゼピン系抗不安薬などが用いられますが、ベンゾジアゼピン系は長期間服用した場合、精神的依存や眠気などの副作用があります。
胃神経症と診断されたら、家庭や職場など環境の中で要因となっていそうなものを取り除く、あるいは緩和することが大事です。とりあえずは、精神的、肉体的安静を図り、過労を避けるように努めます。
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胃神経症とは、いかなる検査をしても器質的な異常がないにもかかわれず、胃の痛み、もたれ、胸焼け、食欲不振などの症状が現れる疾患。神経性胃炎、上腹部不定愁訴、ノン・アルサー・ジスペプシア(NUD)とも呼ばれます。
何らかの胃の機能的な異常を反映していると考えられますが、胃の精密検査をいくら行っても、胃の粘膜には炎症やただれ、潰瘍(かいよう)などのはっきりとした異常は認められません。症状は3カ月以上に渡って繰り返し現れ、通常は、数年に渡って慢性に経過します。
胃の痛み、もたれ、胸焼け、食欲不振のほか、げっぷ、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、体重減少などの症状が比較的多くみられるものの、一定したものではありません。これらの症状が精神状態や感情の動揺などによって変動することが、特徴です。
例えば、精神状態がよい時は、消化の悪いものを食べても何の苦痛もありません。精神状態が悪い時には、何を食べても痛んだり吐いたりします。また、現れる症状が多彩で、しかも長く続くわりには、栄養の状態が比較的よいのも特徴です。
神経症的素質のある人に、心理的、精神的なストレス、過労、生活習慣などの要因が加わって、胃神経症が発症すると考えられます。その誘因としては、家庭内のごたごた、疾患に対する不安や恐怖、同じ年齢の知人や近親者の死亡、体に対する自信喪失、職場での不満や抑圧、対人関係のトラブル、事業上での失敗などが挙げられます。
20歳代の比較的若い年代にみられ、女性に多いのが特徴です。
胃神経症の検査と診断と治療
基本的に胃神経症の治療を行う科は心療内科、神経内科になりますが、まず器質的疾患がないかどうかを確認するために消化器内科を受診します。
医師はまず、X線造影検査や内視鏡検査で異常が見当たらないことを、次いで血液一般検査や便潜血反応で異常が見当たらないことを確認します。特に中年以降では、胃がんや大腸がんなどの悪性疾患と区別することが重要です。
治療の方法は、精神的治療と薬物治療に分けられます。多くは何らかの体質的な素因があり、幼少時からよく腹痛、嘔吐、下痢などを起こしていたというエピソードを持っています。その素因のある人が、何らかの強い心理的、精神的ストレスや心身の過労を体験した時に初めて、日常生活や社会生活に大きな支障を来しますので、不安な点は医師に何でも話し、予後がよいことを理解することが大切です。
薬物治療では、消化管機能改善薬が用いられ、重症の場合は抗不安薬も用いられます。 抗不安薬はベンゾジアゼピン系抗不安薬などが用いられますが、ベンゾジアゼピン系は長期間服用した場合、精神的依存や眠気などの副作用があります。
胃神経症と診断されたら、家庭や職場など環境の中で要因となっていそうなものを取り除く、あるいは緩和することが大事です。とりあえずは、精神的、肉体的安静を図り、過労を避けるように努めます。
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■病気 胃切除後障害 [病気(い)]
胃の手術を受けた後に起こる各種の障害
胃切除後障害とは、胃の手術を受けた後に起こってくる各種の障害の総称。胃切除後症候群とも呼ばれます。
胃がんなどで胃の切除手術を受けた場合、胃が小さくなったり、消失したことによって、比較的長期に渡って障害が残ります。胃の大きさについては、わずかには大きくなりますが、肝臓などのように再生して元の大きさに戻ることはありません。
胃切除後障害の種類としては、術後胃炎、早期ダンピング症候群、後期ダンピング症候群、術後貧血、逆流性食道炎、残胃がんなどが挙げられます。
術後胃炎は、手術後、胃と腸をつなぎ合わせた吻合(ふんごう)部を中心として、むくみや、血液成分などが集まる細胞浸潤といった炎症が起こるものです。これは経過とともに、次第に治まってきます。まれに、数年間続く場合がありますが、あまり神経質になることはありません。
早期ダンピング症候群は、食事中や食後30分以内に、胃の不快な感じ、むかつき、発汗、動悸(どうき)、体のだるさなど一連の症状が起こるものです。手術によって、胃と十二指腸の境界部にある幽門がなくなり、括約筋による調節が失われた上に、胃が小さくなっているために食べ物が胃の内部にとどまっている時間が短いか、胃がないために直接小腸に落下(ダンピング)することによって生じます。
後期ダンピング症候群は、食後2〜3時間たって、めまい、発汗、動悸、体のだるさなど一連の症状が起こるものです。原因は、食後に食べ物が急速に小腸へ流入したために起こる高血糖と、それを是正する膵臓(すいぞう)からのインシュリン過分泌により、ある程度時間をへて低血糖症状が生じるためです。
術後貧血には、鉄欠乏性貧血と悪性貧血の2つのタイプがあります。鉄欠乏性貧血は、胃酸分泌の低下とともに、赤血球を合成するために必須の鉄分の吸収が低下するために起きます。悪性貧血は、胃液の中にあって内因子と呼ばれ、赤血球を作り出す上で必要なビタミンB12の吸収に不可欠な物質が、胃液分泌の低下とともに作れなくなるために起きます。
いずれの貧血とも、めまい、脱力感、倦怠(けんたい)感などの症状があります。胃の部分切除をした人の約35パーセント、全摘した人の約70パーセントに貧血が現れるとされています。
逆流性食道炎は、胃切除による胃噴門部の逆流防止機構の障害で、胃液や胆汁、小腸液などの消化液が食道に頻回に逆流することにより起こります。症状としては、胸焼け、胸痛などが挙げられます。
残胃がんは、胃の一部が残る胃切除を受けた後、残った胃に再度がんが発生するものです。多くは、切除断端や吻合部付近に発生します。
胃切除後障害の検査と診断と治療
手術を受けた病院でその症状を診てもらい、原因を診断してもらいます。診断を基に治療を受けるのですが、その治療で効果がない時は、他の病院の専門医に指導を受けるのもよい方法でしょう。
胃切除後障害は、再手術を要することは少なく、保存的治療で軽快することがほとんどです。逆流性食道炎と残胃がんでは、手術を含めた専門医による治療が必要になることもあります。
いずれにしても、胃切除術後に定期的な検査や診察を受けることで、さまざまな胃切除後障害を早期に発見、治療することが重要です。
早期ダンピング症候群では、食事療法が有効です。高蛋白(たんぱく)、高脂肪の食事にし、糖分摂取による血糖値の大きな変化を防ぎます。また、1回の食事の量を減らし、1日6回くらいに分けて、ゆっくり食べるように心掛けるのも効果的。食後1時間くらいは横になっていると、症状は軽くなります。一連の症状は、胃切除後、経過がたつとともに、軽快して治ります。
後期ダンピング症候群でも、蛋白質が多めの食事をゆっくり食べるように努めます。低血糖による発作の症状が起こったら、血液中の糖分を増やすために、あめや氷砂糖などを摂取すると、症状が軽くなります。
貧血では、鉄欠乏性貧血には鉄剤、悪性貧血にはビタミンB12製剤が有効です。
逆流性食道炎では、薬物療法が主となり、制酸剤、アルロイドG、蛋白分解阻害薬の内服などが有効とされます。薬物療法に抵抗する高度の逆流性食道炎に対しては、体を傷付けることの少ない腹腔(ふくくう)鏡下、または内視鏡下手術が選択されることもあります。
残胃がんでは、早期発見によって再度の胃切除を行わずに、内視鏡的粘膜切除術や他の内視鏡治療の選択が可能です。進行がんに対しては、根治手術が第一選択となります。
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胃切除後障害とは、胃の手術を受けた後に起こってくる各種の障害の総称。胃切除後症候群とも呼ばれます。
胃がんなどで胃の切除手術を受けた場合、胃が小さくなったり、消失したことによって、比較的長期に渡って障害が残ります。胃の大きさについては、わずかには大きくなりますが、肝臓などのように再生して元の大きさに戻ることはありません。
胃切除後障害の種類としては、術後胃炎、早期ダンピング症候群、後期ダンピング症候群、術後貧血、逆流性食道炎、残胃がんなどが挙げられます。
術後胃炎は、手術後、胃と腸をつなぎ合わせた吻合(ふんごう)部を中心として、むくみや、血液成分などが集まる細胞浸潤といった炎症が起こるものです。これは経過とともに、次第に治まってきます。まれに、数年間続く場合がありますが、あまり神経質になることはありません。
早期ダンピング症候群は、食事中や食後30分以内に、胃の不快な感じ、むかつき、発汗、動悸(どうき)、体のだるさなど一連の症状が起こるものです。手術によって、胃と十二指腸の境界部にある幽門がなくなり、括約筋による調節が失われた上に、胃が小さくなっているために食べ物が胃の内部にとどまっている時間が短いか、胃がないために直接小腸に落下(ダンピング)することによって生じます。
後期ダンピング症候群は、食後2〜3時間たって、めまい、発汗、動悸、体のだるさなど一連の症状が起こるものです。原因は、食後に食べ物が急速に小腸へ流入したために起こる高血糖と、それを是正する膵臓(すいぞう)からのインシュリン過分泌により、ある程度時間をへて低血糖症状が生じるためです。
術後貧血には、鉄欠乏性貧血と悪性貧血の2つのタイプがあります。鉄欠乏性貧血は、胃酸分泌の低下とともに、赤血球を合成するために必須の鉄分の吸収が低下するために起きます。悪性貧血は、胃液の中にあって内因子と呼ばれ、赤血球を作り出す上で必要なビタミンB12の吸収に不可欠な物質が、胃液分泌の低下とともに作れなくなるために起きます。
いずれの貧血とも、めまい、脱力感、倦怠(けんたい)感などの症状があります。胃の部分切除をした人の約35パーセント、全摘した人の約70パーセントに貧血が現れるとされています。
逆流性食道炎は、胃切除による胃噴門部の逆流防止機構の障害で、胃液や胆汁、小腸液などの消化液が食道に頻回に逆流することにより起こります。症状としては、胸焼け、胸痛などが挙げられます。
残胃がんは、胃の一部が残る胃切除を受けた後、残った胃に再度がんが発生するものです。多くは、切除断端や吻合部付近に発生します。
胃切除後障害の検査と診断と治療
手術を受けた病院でその症状を診てもらい、原因を診断してもらいます。診断を基に治療を受けるのですが、その治療で効果がない時は、他の病院の専門医に指導を受けるのもよい方法でしょう。
胃切除後障害は、再手術を要することは少なく、保存的治療で軽快することがほとんどです。逆流性食道炎と残胃がんでは、手術を含めた専門医による治療が必要になることもあります。
いずれにしても、胃切除術後に定期的な検査や診察を受けることで、さまざまな胃切除後障害を早期に発見、治療することが重要です。
早期ダンピング症候群では、食事療法が有効です。高蛋白(たんぱく)、高脂肪の食事にし、糖分摂取による血糖値の大きな変化を防ぎます。また、1回の食事の量を減らし、1日6回くらいに分けて、ゆっくり食べるように心掛けるのも効果的。食後1時間くらいは横になっていると、症状は軽くなります。一連の症状は、胃切除後、経過がたつとともに、軽快して治ります。
後期ダンピング症候群でも、蛋白質が多めの食事をゆっくり食べるように努めます。低血糖による発作の症状が起こったら、血液中の糖分を増やすために、あめや氷砂糖などを摂取すると、症状が軽くなります。
貧血では、鉄欠乏性貧血には鉄剤、悪性貧血にはビタミンB12製剤が有効です。
逆流性食道炎では、薬物療法が主となり、制酸剤、アルロイドG、蛋白分解阻害薬の内服などが有効とされます。薬物療法に抵抗する高度の逆流性食道炎に対しては、体を傷付けることの少ない腹腔(ふくくう)鏡下、または内視鏡下手術が選択されることもあります。
残胃がんでは、早期発見によって再度の胃切除を行わずに、内視鏡的粘膜切除術や他の内視鏡治療の選択が可能です。進行がんに対しては、根治手術が第一選択となります。
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■病気 胃粘膜下腫瘍 [病気(い)]
胃粘膜の下に病変があって、胃粘膜の一部が隆起
胃粘膜下腫瘍(しゅよう)とは、胃粘膜の下の胃壁内にある病変に押し上げられて、胃の粘膜の一部が盛り上がってくる疾患。病変の多くは良性で、胃粘膜下良性腫瘍とも呼ばれます。
大部分は先天性のもので、筋肉組織の層の一部からできる平滑筋腫、脂肪組織からできている脂肪腫、血管腫、神経腫などがあります。また、まれには膵臓(すいぞう)の組織の一部が迷い込んだ迷入膵(異所膵)などもあります。盛り上がった表面は、多くは平滑で、くぼみや潰瘍(かいよう)があることもあります。
胃粘膜下腫瘍の発生の度合いは、胃ポリープよりもはるかに少ないものです。
胃ポリープと同じように多くは無症状で、健診などで偶然発見されています。まれに、腫瘍が大きくなって、胃粘膜の表面に潰瘍を伴うようになると、腹痛や腹部不快感を伴うこともあります。悪性では、腫瘍が崩れて出血し、吐血や下血を生じることもあります。
胃粘膜下腫瘍の検査と診断と治療
まず内科か外科を受診して、手術が必要なのか、それとも経過観察でよいのかどうかを診断してもらいます。経過観察中は、特に生活上の制限はありません。
医師による診断では通常、胃のX線検査、内視鏡検査、超音波内視鏡検査などが行われ、病変の一部を採取して顕微鏡で組織を調べる胃生検で、腫瘍の種類やがんの有無を調べます。
胃内視鏡で観察すると、多くの場合は盛り上がった表面は特別な変化を伴わない普通の胃粘膜であり、粘膜下層にある腫瘍によって単に押し上げられているにすぎないことがわかります。押し上げられてできる縦じわがみられることが、特徴です。
小さいものは、年に1、2回精密検査を行って、経過を観察します。大きいものや、出血するもの、あるいは肉腫などの悪性腫瘍が疑われるものは、内視鏡下に、あるいは外科的に手術をして切除します。経過の観察中に、大きさや形態に変化がみられるようであれば、手術も考慮されます。
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胃粘膜下腫瘍(しゅよう)とは、胃粘膜の下の胃壁内にある病変に押し上げられて、胃の粘膜の一部が盛り上がってくる疾患。病変の多くは良性で、胃粘膜下良性腫瘍とも呼ばれます。
大部分は先天性のもので、筋肉組織の層の一部からできる平滑筋腫、脂肪組織からできている脂肪腫、血管腫、神経腫などがあります。また、まれには膵臓(すいぞう)の組織の一部が迷い込んだ迷入膵(異所膵)などもあります。盛り上がった表面は、多くは平滑で、くぼみや潰瘍(かいよう)があることもあります。
胃粘膜下腫瘍の発生の度合いは、胃ポリープよりもはるかに少ないものです。
胃ポリープと同じように多くは無症状で、健診などで偶然発見されています。まれに、腫瘍が大きくなって、胃粘膜の表面に潰瘍を伴うようになると、腹痛や腹部不快感を伴うこともあります。悪性では、腫瘍が崩れて出血し、吐血や下血を生じることもあります。
胃粘膜下腫瘍の検査と診断と治療
まず内科か外科を受診して、手術が必要なのか、それとも経過観察でよいのかどうかを診断してもらいます。経過観察中は、特に生活上の制限はありません。
医師による診断では通常、胃のX線検査、内視鏡検査、超音波内視鏡検査などが行われ、病変の一部を採取して顕微鏡で組織を調べる胃生検で、腫瘍の種類やがんの有無を調べます。
胃内視鏡で観察すると、多くの場合は盛り上がった表面は特別な変化を伴わない普通の胃粘膜であり、粘膜下層にある腫瘍によって単に押し上げられているにすぎないことがわかります。押し上げられてできる縦じわがみられることが、特徴です。
小さいものは、年に1、2回精密検査を行って、経過を観察します。大きいものや、出血するもの、あるいは肉腫などの悪性腫瘍が疑われるものは、内視鏡下に、あるいは外科的に手術をして切除します。経過の観察中に、大きさや形態に変化がみられるようであれば、手術も考慮されます。
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