■病気 多形滲出性紅斑 [病気(た)]
水っぽい紅斑が手足、ないし全身に多発する皮膚病
多形滲出(しんしゅつ)性紅斑(こうはん)とは、手足の関節の背面に、あるいは全身にできる水っぽい紅斑。
紅斑とは、血管が広がり、充血したために起こるもので、日焼けや軽いやけどの赤みも含みます。多形滲出性紅斑では、親指の頭くらいの円形から卵円形の紅斑が二重の輪郭を示し、辺縁が少し盛り上がり、中央がくぼんだ形をしたものや、平らなもの、紅斑の上に水疱(すいほう)やびらんを伴うものなどがあります。中心に白っぽい部分が残り、弓などの標的のような形になるのが特徴です
この多形滲出性紅斑は、大きく3つのタイプに分けられます。
第1は、手の甲から肘(ひじ)にかけてと、足の甲から膝(ひざ)にかけて、左右対称性に紅斑が生じる軽症のタイプです。かゆみはあるものの、全身的な症状はほとんどありません。若い女性に多くみられ、普通は2〜3週間で治りますが、春、秋に決まって数年間再発することもあります。
第2は、紅斑が全身の皮膚の広い範囲に生じるやや重症のタイプです。紅斑が広がって環状となり、時には隣接した紅斑と一緒になって地図状となることがあります。発熱や口腔(こうくう)粘膜の症状を伴う場合もあります。
第3は、口内炎や結膜炎など粘膜の病変を伴い、生命をも脅かす最も重症なタイプです。スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)とも呼ばれ、発熱とともに紅斑が現れ、水疱やびらんを伴います。口、目、陰部などの粘膜にも、高度のびらんがみられます。皮膚のびらんが体表面積の30パーセントを超えると、中毒性表皮壊死(えし)融解症とも呼ばれます。
多形滲出性紅斑は、アレルギー性の疾患と考えられていますが、その原因はさまざまです。感染症、薬剤による影響、内臓の疾患が関係することもあります。
紅斑が四肢に限られる軽症型では、感染アレルギーが考えられています。単純ヘルペスウイルスとの関連が明らかなケースもあります。全身に紅斑が多発するやや重症のタイプや、最重症のタイプのスティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死融解症では、薬剤が原因のことが多いとされています。肺炎マイコプラズマが原因と考えられるケースや、原因がわからないケースもあります。
多形滲出性紅斑の検査と診断と治療
紅斑が四肢だけで、発熱や粘膜症状がなければ、近くの皮膚科専門医を受診します。紅斑が広範囲に多発し水疱やびらんのある場合や、発熱や目の充血、唇、口内、陰部のびらんを伴う場合は重症と考えられますので、速やかに入院可能な総合病院の皮膚科を受診します。
やや重症型の多形滲出性紅斑やスティーブンス・ジョンソン症候群が疑われる場合は、皮膚を数ミリ切り取って調べる病理組織検査である皮膚生検を緊急に行い、診断を確定する必要があります。麻疹や水痘(すいとう)などのウイルス感染症との区別が難しい場合にも、病理検査が役立ちます。
多形滲出性紅斑の原因が薬剤であれば、疑わしい薬剤を中止するだけで快方に向かいます。原因がほかのものでも、軽症では塗り薬と内服薬で軽快しますが、重症な場合は副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の内服が必要なこともあります。
病理検査の結果、スティーブンス・ジョンソン症候群の早期であれば、十分量の副腎皮質ステロイド剤の点滴注射が行われます。すでに広範囲の皮膚がびらんの状態であれば、重症のやけどに準じた治療になります。スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死融解症では、死亡を免れても失明を含む目の後遺症を残すことがあります。
ウェブ版の健康創造塾にアクセスできます。
携帯i-mode版の健康創造塾にアクセスできます。
携帯au版の健康創造塾にアクセスできます。
携帯Yahoo!ケータイ版の健康創造塾にアクセスできます。
多形滲出(しんしゅつ)性紅斑(こうはん)とは、手足の関節の背面に、あるいは全身にできる水っぽい紅斑。
紅斑とは、血管が広がり、充血したために起こるもので、日焼けや軽いやけどの赤みも含みます。多形滲出性紅斑では、親指の頭くらいの円形から卵円形の紅斑が二重の輪郭を示し、辺縁が少し盛り上がり、中央がくぼんだ形をしたものや、平らなもの、紅斑の上に水疱(すいほう)やびらんを伴うものなどがあります。中心に白っぽい部分が残り、弓などの標的のような形になるのが特徴です
この多形滲出性紅斑は、大きく3つのタイプに分けられます。
第1は、手の甲から肘(ひじ)にかけてと、足の甲から膝(ひざ)にかけて、左右対称性に紅斑が生じる軽症のタイプです。かゆみはあるものの、全身的な症状はほとんどありません。若い女性に多くみられ、普通は2〜3週間で治りますが、春、秋に決まって数年間再発することもあります。
第2は、紅斑が全身の皮膚の広い範囲に生じるやや重症のタイプです。紅斑が広がって環状となり、時には隣接した紅斑と一緒になって地図状となることがあります。発熱や口腔(こうくう)粘膜の症状を伴う場合もあります。
第3は、口内炎や結膜炎など粘膜の病変を伴い、生命をも脅かす最も重症なタイプです。スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)とも呼ばれ、発熱とともに紅斑が現れ、水疱やびらんを伴います。口、目、陰部などの粘膜にも、高度のびらんがみられます。皮膚のびらんが体表面積の30パーセントを超えると、中毒性表皮壊死(えし)融解症とも呼ばれます。
多形滲出性紅斑は、アレルギー性の疾患と考えられていますが、その原因はさまざまです。感染症、薬剤による影響、内臓の疾患が関係することもあります。
紅斑が四肢に限られる軽症型では、感染アレルギーが考えられています。単純ヘルペスウイルスとの関連が明らかなケースもあります。全身に紅斑が多発するやや重症のタイプや、最重症のタイプのスティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死融解症では、薬剤が原因のことが多いとされています。肺炎マイコプラズマが原因と考えられるケースや、原因がわからないケースもあります。
多形滲出性紅斑の検査と診断と治療
紅斑が四肢だけで、発熱や粘膜症状がなければ、近くの皮膚科専門医を受診します。紅斑が広範囲に多発し水疱やびらんのある場合や、発熱や目の充血、唇、口内、陰部のびらんを伴う場合は重症と考えられますので、速やかに入院可能な総合病院の皮膚科を受診します。
やや重症型の多形滲出性紅斑やスティーブンス・ジョンソン症候群が疑われる場合は、皮膚を数ミリ切り取って調べる病理組織検査である皮膚生検を緊急に行い、診断を確定する必要があります。麻疹や水痘(すいとう)などのウイルス感染症との区別が難しい場合にも、病理検査が役立ちます。
多形滲出性紅斑の原因が薬剤であれば、疑わしい薬剤を中止するだけで快方に向かいます。原因がほかのものでも、軽症では塗り薬と内服薬で軽快しますが、重症な場合は副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の内服が必要なこともあります。
病理検査の結果、スティーブンス・ジョンソン症候群の早期であれば、十分量の副腎皮質ステロイド剤の点滴注射が行われます。すでに広範囲の皮膚がびらんの状態であれば、重症のやけどに準じた治療になります。スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死融解症では、死亡を免れても失明を含む目の後遺症を残すことがあります。
ウェブ版の健康創造塾にアクセスできます。
携帯i-mode版の健康創造塾にアクセスできます。
携帯au版の健康創造塾にアクセスできます。
携帯Yahoo!ケータイ版の健康創造塾にアクセスできます。
タグ:病気(た) 爪甲縦裂症 紅皮症(剥脱性皮膚炎) 結節性紅斑 ジベルばら色粃糠疹 せつ、よう ウイルス性いぼ 百いぼ ほくろのがん アナフィラクトイド紫斑病 エリトラスマ 紅色陰癬 うっ滞性皮膚炎 血管拡張性環状紫斑 マヨッキー紫斑 ポートワイン母斑 単純性血管腫 イチゴ状血管腫 正中部母斑 ウンナ母斑 スピッツ母斑 特発性色素性紫斑 シャンバーグ病 慢性色素性紫斑 特発性血小板減少性紫斑病 単純性紫斑 アレルギー性紫斑病 尋常性魚鱗癬 毛孔性紅色粃糠疹 進行性指掌角皮症 頭部粃糠疹 乾性脂漏 悪性黒色腫 母斑 母斑細胞性母斑 乳房外パジェット病 乳房パジェット病 マラセチア毛包炎 ミルメシア 尋常性乾癬 毛嚢炎 酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎) 酒さ 多形滲出性紅斑
■病気 たこ、魚の目 [病気(た)]
刺激や圧迫により、足の皮膚が部分的に厚くなった状態
たこ、魚の目とは、外からの持続的な機械的摩擦や圧迫などによって、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなった状態。たこの別名は、べんち。魚の目の別名は、鶏眼(けいがん)。
厚くなった皮膚の状態が平らに盛り上がっているものを、たこといいます。逆に、円錐(えんすい)状に下に向かって皮膚が厚くなっているものを、魚の目といいます。
たこは痛くありませんが、手で触ると硬く感じます。慢性化すると、表面が白くカサカサになり、女性ではストッキングが引っ掛かったりもします。魚の目は、中央にある芯(しん)が皮膚の奥深くへと入り込み、その先がとがっているため、上から押したり、立ったり歩いたりして体重が掛かると、神経を刺激して痛みを生じます。
たこと魚の目では症状が違いますが、できやすい場所は足の指の背(上側)、指と指の間、足裏の母指球の下、第2指と第3指の付け根あたり。いずれも靴による摩擦や圧迫を受けやすい場所です。まれに、かかとにできることもあります。
原因のほとんどは、靴の履き方が悪いために足に掛かる体重分散が偏ることと、足に合わない靴を履いているために摩擦や圧迫を受けることにあります。例えば、小さめの靴を履いていると、足の指や付け根などが靴に当たり、圧迫され続けます。靴幅が狭くて、指が両側から圧迫されると、指と指の摩擦が起こります。こうした圧迫や摩擦の結果 、皮膚は硬くなり、たこや魚の目になります。大きめの靴でも、足が靴の前側へと滑っていき、やはり指や付け根のあたりが圧迫されて、同じことが起こります。 底が薄い靴でも、地面から受ける衝撃が大きく、足の裏が圧迫されます。
たこや魚の目のできやすい足もあります。その代表が開張(かいちょう)足で、親指と小指の付け根を結ぶ横のラインの中央に、くぼみがなく、ベタッとした足を指します。この開張足の人は、横ラインの中央部が靴底の圧迫を受け、たこや魚の目ができやすくなります。開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。
開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、指の骨をつなぐじん帯が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のためにじん帯が伸び切った状態になり、開張足を起こします。
ハンマー足指やその他の足指の変形も、たこ、魚の目の原因となります。ハンマー足指とは、靴のつま先部分がきついために指が伸ばせず、指の関節がハンマーのような形で曲がったままになった状態です。曲がって上へ飛び出した足指の背が靴に当たるため、そこが角質化しやすくなります。
巻きづめ、内反小趾(ないはんしょうし)も、原因となります。巻きづめとは、伸びたつめの両端が皮膚に食い込んだ状態で、先の細い靴でつま足が両側から圧迫され続けると起こります。巻きづめ気味の人は、指と指がこすれ合うので、指の間にたこ、魚の目ができやすくなります。内反小趾とは、親指が圧迫を受けて変形する外反母趾と逆に、小指が圧迫を受けて変形した状態で、小指の外側にたこ、魚の目ができる人は放っておくと小指が変形し、手術の必要性が生じます。
女性では、冷え性と関係していることもあります。特に足の冷えやすい人は、血行不良から皮膚の角質化が起こりやすいとされています。中高年では、動脈硬化や糖尿病と関係していることもあります。動脈硬化の場合には足の血行不良から、糖尿病では末梢(まっしょう)神経の障害から、たこ、魚の目ができやすくなるからです。反対に、たこ、魚の目が治らないことから、動脈硬化などの疾患が発見されることもあります。
たこ、魚の目の検査と診断と治療
たこ、魚の目の治療と予防に必要なことは、外からの機械的な摩擦や圧迫を防ぐことです。そのためには、足に合った靴を選び、たこ、魚の目の上にスポンジを当てて、絆創膏(ばんそうこう)でしっかり固定するか、薬剤の入った市販の保護パッドを張っておきます。軽い症状なら、しばらくすると自然に治っていきます。
また、スピール膏を使用するのもよいでしょう。これは皮膚の角質を軟化させるもので、家庭で行える治療薬として広く使用されています。まず、スピール膏を患部の大きさと同じか、少し小さめに切って患部に当てて、その上から絆創膏で固定します。2〜3日してはがすと、患部が白くふやけているので、ナイフかはさみで削り取ります。たこの場合は痛くない程度に、魚の目の場合は芯の先を少し血が出る程度に削り取ることが必要です。これを何回か繰り返します。
保護パッドなどで治らない場合や、痛みがひどかったり、悪化したりした場合には、早めに皮膚科の専門医の治療を受けます。医師による治療では通常、外科用のレーザーメスや電気メスで厚くなった部分を削ります。その後、フェルトや毛皮でできたさまざまな種類のパッドを当てて、患部への圧迫を減らします。患部の血流障害がある時は、削って切除することはできません。この場合は、患部にかかる圧力を減らすために、矯正器具やインナーを挿入した特殊な靴が必要になります。
手術で除去しても、自分の足に合わない靴を履き続けていると再発します。予防の基本は、靴選びにあります。
靴の理想は「きつからず、緩からず」で、靴店では必ず両足とも履いて、歩いてみます。腰掛けたり、かがんだりして、つま先やくるぶし、かかとなどに当たる個所がないかどうか確認します。モデル風に一直線上を早歩きしてみると、当たる個所がわかりやすくなります。足がむくんで大きくなる夕方の時間帯に、ピッタリの靴を買っておけば、後できつくて足が痛いということもなくなります。
なお、開張足は自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。
たこ、魚の目とは、外からの持続的な機械的摩擦や圧迫などによって、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなった状態。たこの別名は、べんち。魚の目の別名は、鶏眼(けいがん)。
厚くなった皮膚の状態が平らに盛り上がっているものを、たこといいます。逆に、円錐(えんすい)状に下に向かって皮膚が厚くなっているものを、魚の目といいます。
たこは痛くありませんが、手で触ると硬く感じます。慢性化すると、表面が白くカサカサになり、女性ではストッキングが引っ掛かったりもします。魚の目は、中央にある芯(しん)が皮膚の奥深くへと入り込み、その先がとがっているため、上から押したり、立ったり歩いたりして体重が掛かると、神経を刺激して痛みを生じます。
たこと魚の目では症状が違いますが、できやすい場所は足の指の背(上側)、指と指の間、足裏の母指球の下、第2指と第3指の付け根あたり。いずれも靴による摩擦や圧迫を受けやすい場所です。まれに、かかとにできることもあります。
原因のほとんどは、靴の履き方が悪いために足に掛かる体重分散が偏ることと、足に合わない靴を履いているために摩擦や圧迫を受けることにあります。例えば、小さめの靴を履いていると、足の指や付け根などが靴に当たり、圧迫され続けます。靴幅が狭くて、指が両側から圧迫されると、指と指の摩擦が起こります。こうした圧迫や摩擦の結果 、皮膚は硬くなり、たこや魚の目になります。大きめの靴でも、足が靴の前側へと滑っていき、やはり指や付け根のあたりが圧迫されて、同じことが起こります。 底が薄い靴でも、地面から受ける衝撃が大きく、足の裏が圧迫されます。
たこや魚の目のできやすい足もあります。その代表が開張(かいちょう)足で、親指と小指の付け根を結ぶ横のラインの中央に、くぼみがなく、ベタッとした足を指します。この開張足の人は、横ラインの中央部が靴底の圧迫を受け、たこや魚の目ができやすくなります。開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。
開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、指の骨をつなぐじん帯が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のためにじん帯が伸び切った状態になり、開張足を起こします。
ハンマー足指やその他の足指の変形も、たこ、魚の目の原因となります。ハンマー足指とは、靴のつま先部分がきついために指が伸ばせず、指の関節がハンマーのような形で曲がったままになった状態です。曲がって上へ飛び出した足指の背が靴に当たるため、そこが角質化しやすくなります。
巻きづめ、内反小趾(ないはんしょうし)も、原因となります。巻きづめとは、伸びたつめの両端が皮膚に食い込んだ状態で、先の細い靴でつま足が両側から圧迫され続けると起こります。巻きづめ気味の人は、指と指がこすれ合うので、指の間にたこ、魚の目ができやすくなります。内反小趾とは、親指が圧迫を受けて変形する外反母趾と逆に、小指が圧迫を受けて変形した状態で、小指の外側にたこ、魚の目ができる人は放っておくと小指が変形し、手術の必要性が生じます。
女性では、冷え性と関係していることもあります。特に足の冷えやすい人は、血行不良から皮膚の角質化が起こりやすいとされています。中高年では、動脈硬化や糖尿病と関係していることもあります。動脈硬化の場合には足の血行不良から、糖尿病では末梢(まっしょう)神経の障害から、たこ、魚の目ができやすくなるからです。反対に、たこ、魚の目が治らないことから、動脈硬化などの疾患が発見されることもあります。
たこ、魚の目の検査と診断と治療
たこ、魚の目の治療と予防に必要なことは、外からの機械的な摩擦や圧迫を防ぐことです。そのためには、足に合った靴を選び、たこ、魚の目の上にスポンジを当てて、絆創膏(ばんそうこう)でしっかり固定するか、薬剤の入った市販の保護パッドを張っておきます。軽い症状なら、しばらくすると自然に治っていきます。
また、スピール膏を使用するのもよいでしょう。これは皮膚の角質を軟化させるもので、家庭で行える治療薬として広く使用されています。まず、スピール膏を患部の大きさと同じか、少し小さめに切って患部に当てて、その上から絆創膏で固定します。2〜3日してはがすと、患部が白くふやけているので、ナイフかはさみで削り取ります。たこの場合は痛くない程度に、魚の目の場合は芯の先を少し血が出る程度に削り取ることが必要です。これを何回か繰り返します。
保護パッドなどで治らない場合や、痛みがひどかったり、悪化したりした場合には、早めに皮膚科の専門医の治療を受けます。医師による治療では通常、外科用のレーザーメスや電気メスで厚くなった部分を削ります。その後、フェルトや毛皮でできたさまざまな種類のパッドを当てて、患部への圧迫を減らします。患部の血流障害がある時は、削って切除することはできません。この場合は、患部にかかる圧力を減らすために、矯正器具やインナーを挿入した特殊な靴が必要になります。
手術で除去しても、自分の足に合わない靴を履き続けていると再発します。予防の基本は、靴選びにあります。
靴の理想は「きつからず、緩からず」で、靴店では必ず両足とも履いて、歩いてみます。腰掛けたり、かがんだりして、つま先やくるぶし、かかとなどに当たる個所がないかどうか確認します。モデル風に一直線上を早歩きしてみると、当たる個所がわかりやすくなります。足がむくんで大きくなる夕方の時間帯に、ピッタリの靴を買っておけば、後できつくて足が痛いということもなくなります。
なお、開張足は自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。
■病気 多汗症 [病気(た)]
全身や局所に、汗が異常に分泌する症状
多汗症とは、体温の調節に必要な範囲を超えて、汗が異常に分泌する症状。全身性の多汗症と、手のひら、足の裏、わきの下、頭、鼻の頭などにみられる局所性の多汗症があります。
人間は意外と多くの場面で汗をかいており、発汗は体温調節の役割を担う大切な生理機能の一つでもあります。そのため、どのくらいの汗の量で多汗症と呼べるのかは分類が難しいのですが、多汗症の場合は気温の変化や運動などとは関係なしに汗をかくことが多いので、心当たりがある人は少し振り返ってみるといいでしょう。
特に疾患と考える必要はないにしろ、汗をかくということは日常の生活と密接に関係していることですので、さまざまな悩みや問題を抱えている人が多いのも事実です。
局所性の多汗症は、汗をかきやすいという体質に、生活環境や精神的な影響が加わったものが大部分です。肥満、過度なダイエット、生活リズムの乱れ、性格的に神経質だったり、緊張しがちなタイプだったりと、ストレスをためやすい状況下に身を置いていることが原因となっています。
これらの原因の背後には、交感神経の働きが大きく関係しています。交感神経とは、副交感神経とうまくバランスを取り合いながら、人間が日々健康で過ごせるように作用しているもの。この交感神経がストレスなどさまざまな原因により過敏になってしまうと、体温上昇とは関係なく汗を大量にかくようになり、汗をかくことでさらなるストレスを作り出し悪循環に陥ってしまいます。
全身性の多汗症も、多くは体質的なものです。比較的急激に生じた場合には、代謝機能や自律神経などが障害される、いろいろな疾患が潜んでいる可能性があります。
例えば、脳の発汗中枢を刺激するような腫瘍(しゅよう)や、炎症、外傷によって起こることもあります。バセドウ病、糖尿病、アルコール中毒などに伴うこともあります。さらに、内服している薬の副作用が原因で、多汗症の症状が現れることもあります。
多汗症の検査と診断と治療
多汗症の治療としては、原因となる疾患がある場合は、これを取り除くことが先決です。
局所制汗剤として、20パーセントの塩化アルミニウム液や、5パーセントのホルマリン・アルコール液を汗が多い部分に塗布します。1日1〜2回塗り、乾いてからパウダーを振り掛けておきます。精神的な緊張が強くて汗をかくような場合には、精神安定剤を内服することも有効です。
手足の多汗症に限りますが、交感神経ブロック手術を行って、胸の辺りにある汗の分泌を調節する神経を切除することもあります。手術は基本的に、まず片方の交感神経を切除し、その後の体調の経過をみてから、もう一方の交感神経も切除するかどうかを決定します。
手術のメリットは効果に永続性があるということ、デメリットは神経を一度切除してしまうと元には戻らないということと、副作用として代償性発汗になる場合がほとんどであることです。代償性発汗とは、手のひらなどから汗が出なくなった代わりに、背中や下半身などこれまでと違った部位から大量の発汗が起こるものです。
手足の多汗症、わきの下の多汗症に限りますが、イオン浸透療法(イオントフォレーシス療法)を行うこともあります。水道水に浸した多汗症の部位に、弱い電流を流して発汗を抑制するもので、個人差がありますが効果が出るまで数週間の集中的な治療が必要です。治療を止めると再発の可能性が高く、副作用として湿疹(しっしん)、かゆみ、皮むけ、水疱(すいほう)などが生じることがあります。
このイオン浸透療法は病院で行われる治療法ですが、同様の療法が行えるドライオニックと呼ばれる家庭用機器もあります。
わきの下の多汗症に限りますが、皮膚を切り取ったり、削る手術を形成外科で行う方法もあります。頭部の多汗症には有効な手術などはありませんが、心理療法が効果を発揮することもあります。
日常生活では、汗かきを気にせず、精神的な安静を得ることが、薬による治療よりも大切なことです。かいてしまった汗の不快感を軽減するために、日頃から清潔に気を配るようにします。シャワーを浴びる回数を増やしたり、着替えの準備をしておいたり、いつでも汗をふけるようにタオルやウェットティッシュなどを携帯しておくなどの対策も、多汗症による不快感を予防するためには欠かせません。
多汗症とは、体温の調節に必要な範囲を超えて、汗が異常に分泌する症状。全身性の多汗症と、手のひら、足の裏、わきの下、頭、鼻の頭などにみられる局所性の多汗症があります。
人間は意外と多くの場面で汗をかいており、発汗は体温調節の役割を担う大切な生理機能の一つでもあります。そのため、どのくらいの汗の量で多汗症と呼べるのかは分類が難しいのですが、多汗症の場合は気温の変化や運動などとは関係なしに汗をかくことが多いので、心当たりがある人は少し振り返ってみるといいでしょう。
特に疾患と考える必要はないにしろ、汗をかくということは日常の生活と密接に関係していることですので、さまざまな悩みや問題を抱えている人が多いのも事実です。
局所性の多汗症は、汗をかきやすいという体質に、生活環境や精神的な影響が加わったものが大部分です。肥満、過度なダイエット、生活リズムの乱れ、性格的に神経質だったり、緊張しがちなタイプだったりと、ストレスをためやすい状況下に身を置いていることが原因となっています。
これらの原因の背後には、交感神経の働きが大きく関係しています。交感神経とは、副交感神経とうまくバランスを取り合いながら、人間が日々健康で過ごせるように作用しているもの。この交感神経がストレスなどさまざまな原因により過敏になってしまうと、体温上昇とは関係なく汗を大量にかくようになり、汗をかくことでさらなるストレスを作り出し悪循環に陥ってしまいます。
全身性の多汗症も、多くは体質的なものです。比較的急激に生じた場合には、代謝機能や自律神経などが障害される、いろいろな疾患が潜んでいる可能性があります。
例えば、脳の発汗中枢を刺激するような腫瘍(しゅよう)や、炎症、外傷によって起こることもあります。バセドウ病、糖尿病、アルコール中毒などに伴うこともあります。さらに、内服している薬の副作用が原因で、多汗症の症状が現れることもあります。
多汗症の検査と診断と治療
多汗症の治療としては、原因となる疾患がある場合は、これを取り除くことが先決です。
局所制汗剤として、20パーセントの塩化アルミニウム液や、5パーセントのホルマリン・アルコール液を汗が多い部分に塗布します。1日1〜2回塗り、乾いてからパウダーを振り掛けておきます。精神的な緊張が強くて汗をかくような場合には、精神安定剤を内服することも有効です。
手足の多汗症に限りますが、交感神経ブロック手術を行って、胸の辺りにある汗の分泌を調節する神経を切除することもあります。手術は基本的に、まず片方の交感神経を切除し、その後の体調の経過をみてから、もう一方の交感神経も切除するかどうかを決定します。
手術のメリットは効果に永続性があるということ、デメリットは神経を一度切除してしまうと元には戻らないということと、副作用として代償性発汗になる場合がほとんどであることです。代償性発汗とは、手のひらなどから汗が出なくなった代わりに、背中や下半身などこれまでと違った部位から大量の発汗が起こるものです。
手足の多汗症、わきの下の多汗症に限りますが、イオン浸透療法(イオントフォレーシス療法)を行うこともあります。水道水に浸した多汗症の部位に、弱い電流を流して発汗を抑制するもので、個人差がありますが効果が出るまで数週間の集中的な治療が必要です。治療を止めると再発の可能性が高く、副作用として湿疹(しっしん)、かゆみ、皮むけ、水疱(すいほう)などが生じることがあります。
このイオン浸透療法は病院で行われる治療法ですが、同様の療法が行えるドライオニックと呼ばれる家庭用機器もあります。
わきの下の多汗症に限りますが、皮膚を切り取ったり、削る手術を形成外科で行う方法もあります。頭部の多汗症には有効な手術などはありませんが、心理療法が効果を発揮することもあります。
日常生活では、汗かきを気にせず、精神的な安静を得ることが、薬による治療よりも大切なことです。かいてしまった汗の不快感を軽減するために、日頃から清潔に気を配るようにします。シャワーを浴びる回数を増やしたり、着替えの準備をしておいたり、いつでも汗をふけるようにタオルやウェットティッシュなどを携帯しておくなどの対策も、多汗症による不快感を予防するためには欠かせません。
■病気 ターナー症候群 [病気(た)]
低身長を特徴とし、女性だけに起こる先天的な疾患
ターナー症候群とは、染色体異常のうちの性染色体異常の代表的な疾患で、女性にだけ起こる先天的な疾患。その最も大きな特徴は、背が低いことです。
他にも、首の回りの皮膚がたるんでいるためにひだができる翼状頸(よくじょうけい)、ひじから先の腕が外向きになる外反肘(がいはんちゅう)、乳房が大きくならない、初潮が来ないといった二次性徴欠如などの特徴があります。
ただ、症状にも個人差は大きく、例えば二次性徴に関して、中学生になっても性の発達が見られない女性が多い一方、ほぼ正常に二次性徴が現れるターナー症候群の女性もいます。中学生くらいまでは、低身長以外、あまり気になる症状がない女性も多くいます。また、合併症として、後天的に治療を要する症状が出てくる場合もあります。中耳炎、難聴、骨粗鬆(こつそしょう)症、糖尿病などがその例で、思春期年齢以降に起こることがあります。
ターナー症候群という疾患名は1938年、これを初めてきちんとまとめたアメリカの内科医ヘンリー・ターナーの名前に由来します。それから約20年後の1959年、染色体の検査が開発され、以後、ターナー症候群は染色体検査できちんと診断でき、幅広く見付けられるようになりました。しかし、この疾患は染色体異常が原因のため、今のところ疾患そのものを治す方法はありませんが、成長ホルモン治療で身長は改善し、二次性徴も女性ホルモン剤の使用で治療が可能です。
染色体は、体を作るすべての細胞の内部にあり、2つに分かれる細胞分裂の一定の時期のみ、色素で染めると棒状の形で確認できます。染色体には22対の常染色体と2対の性染色体とがあります。父親から22本の常染色体と1本の性染色体、母親から同じく22本の常染色体と1本の性染色体を受け継いで全部で46対の染色体を持つことになります。性染色体にはXとYという2つの種類があり、Xを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。
ターナー症候群の女性の場合の典型的な例は、45Xであり、Xが1つしかないものです。また、X染色体が2本あるのに先が欠けていたり、時には小さなY染色体の一部を持っていたり、46XXと45Xとが混ざり合っているモザイクを持つなど要因はさまざまです。
ターナー症候群の発生頻度は、1000~2000人に1人と推定されています。先天的な疾患の中では、かなり多いほうといえるでしょう。しかも、この染色体構造を持っていると圧倒的に流産の確率が上がりますので、受精卵の段階での発生数はかなりであろうと考えられます。
ターナー症候群の検査と診断と治療
早期発見が重要です。ターナー症候群という体質を正しく理解する時間的余裕が、本人と家族に得られます。背が低いのを少しでも高くしてほしいという女性に対して、よりよい治療成績も得られます。ターナー症候群における低身長症は成長速度が遅いわけですので、発見が遅れれば遅れるほど標準的な身長との差は開いて、せっかく治療しても取り戻すことが難しくなってきます。
また、低身長症の裏に重大な疾患が隠されていた場合、それを早い段階で見付けて、早く治療することが大事です。成長を促すホルモンを出す脳や甲状腺(せん)、あるいは栄養を体に活かす役割を担う心臓、腎(じん)臓、肝臓、消化器官そのものに異常がある場合は、一刻も早くその元凶を治していかなければなりません。
ターナー症候群の日本人女性は成長ホルモン治療を受けなかった場合、最終身長が平均139センチなので、治療希望の人には早期発見、早期治療は極端な低身長を防ぎ、最終身長を平均身長に近付ける上で効果が見られています。
ターナー症候群であることが確定すれば、そのすべての人に成長ホルモン治療が公費でできます。成長ホルモン治療の方法は、自己注射方法で、家庭で注射を行います。そのため、医師の適切な指示により注射をすることが必要です。年齢に応じ、夜寝る前に毎日、あるいは2日に1回注射をします。小さいうちは、親などが注射をし、自分でできるようになれば本人が行います。注射針はとても細く、痛みは少ないので心配ありません。
成長ホルモン注射は基本的に、最終身長に達するまで続けることが必要です。具体的には、年間成長率が1センチになった時か、手のレントゲンで骨端線が閉じる時まで、すなわち15〜16歳ころまで続けることになります。しかし、思春期の早い遅い、性腺刺激ホルモン分泌不全の有無によって治療期間が異なり、20歳を過ぎることもあります。身長の伸びの程度もさまざまな条件が関係してきますが、一般的にホルモン不足が重症なほど成長率も高いといえます。
成長ホルモン治療ではまれに、副作用がみられることもあります。注射した場所の皮膚が赤くなったり、かゆくなったり、注射部位がへこむこともあります。同じ場所ばかりに注射するのでなく、毎回注射する場所を変えることが重要です。 身長が伸びるのに伴って、関節が痛むこともあります。多くはいわゆる成長痛で、一時的なもので心配いりません。しかし、股関節の痛みが強い時や長時間続く時は、大腿骨(だいたいこつ)骨頭すべり症なども疑う必要があります。
一時期、成長ホルモン治療と白血病発症との関連性が心配されましたが、現在ではその関連性は否定されています。 原則として安全な治療薬ですが、治療中はもちろん、治療後も定期的に検査を行うなど、副作用がないかを専門医で調べる必要があります。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
ターナー症候群とは、染色体異常のうちの性染色体異常の代表的な疾患で、女性にだけ起こる先天的な疾患。その最も大きな特徴は、背が低いことです。
他にも、首の回りの皮膚がたるんでいるためにひだができる翼状頸(よくじょうけい)、ひじから先の腕が外向きになる外反肘(がいはんちゅう)、乳房が大きくならない、初潮が来ないといった二次性徴欠如などの特徴があります。
ただ、症状にも個人差は大きく、例えば二次性徴に関して、中学生になっても性の発達が見られない女性が多い一方、ほぼ正常に二次性徴が現れるターナー症候群の女性もいます。中学生くらいまでは、低身長以外、あまり気になる症状がない女性も多くいます。また、合併症として、後天的に治療を要する症状が出てくる場合もあります。中耳炎、難聴、骨粗鬆(こつそしょう)症、糖尿病などがその例で、思春期年齢以降に起こることがあります。
ターナー症候群という疾患名は1938年、これを初めてきちんとまとめたアメリカの内科医ヘンリー・ターナーの名前に由来します。それから約20年後の1959年、染色体の検査が開発され、以後、ターナー症候群は染色体検査できちんと診断でき、幅広く見付けられるようになりました。しかし、この疾患は染色体異常が原因のため、今のところ疾患そのものを治す方法はありませんが、成長ホルモン治療で身長は改善し、二次性徴も女性ホルモン剤の使用で治療が可能です。
染色体は、体を作るすべての細胞の内部にあり、2つに分かれる細胞分裂の一定の時期のみ、色素で染めると棒状の形で確認できます。染色体には22対の常染色体と2対の性染色体とがあります。父親から22本の常染色体と1本の性染色体、母親から同じく22本の常染色体と1本の性染色体を受け継いで全部で46対の染色体を持つことになります。性染色体にはXとYという2つの種類があり、Xを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。
ターナー症候群の女性の場合の典型的な例は、45Xであり、Xが1つしかないものです。また、X染色体が2本あるのに先が欠けていたり、時には小さなY染色体の一部を持っていたり、46XXと45Xとが混ざり合っているモザイクを持つなど要因はさまざまです。
ターナー症候群の発生頻度は、1000~2000人に1人と推定されています。先天的な疾患の中では、かなり多いほうといえるでしょう。しかも、この染色体構造を持っていると圧倒的に流産の確率が上がりますので、受精卵の段階での発生数はかなりであろうと考えられます。
ターナー症候群の検査と診断と治療
早期発見が重要です。ターナー症候群という体質を正しく理解する時間的余裕が、本人と家族に得られます。背が低いのを少しでも高くしてほしいという女性に対して、よりよい治療成績も得られます。ターナー症候群における低身長症は成長速度が遅いわけですので、発見が遅れれば遅れるほど標準的な身長との差は開いて、せっかく治療しても取り戻すことが難しくなってきます。
また、低身長症の裏に重大な疾患が隠されていた場合、それを早い段階で見付けて、早く治療することが大事です。成長を促すホルモンを出す脳や甲状腺(せん)、あるいは栄養を体に活かす役割を担う心臓、腎(じん)臓、肝臓、消化器官そのものに異常がある場合は、一刻も早くその元凶を治していかなければなりません。
ターナー症候群の日本人女性は成長ホルモン治療を受けなかった場合、最終身長が平均139センチなので、治療希望の人には早期発見、早期治療は極端な低身長を防ぎ、最終身長を平均身長に近付ける上で効果が見られています。
ターナー症候群であることが確定すれば、そのすべての人に成長ホルモン治療が公費でできます。成長ホルモン治療の方法は、自己注射方法で、家庭で注射を行います。そのため、医師の適切な指示により注射をすることが必要です。年齢に応じ、夜寝る前に毎日、あるいは2日に1回注射をします。小さいうちは、親などが注射をし、自分でできるようになれば本人が行います。注射針はとても細く、痛みは少ないので心配ありません。
成長ホルモン注射は基本的に、最終身長に達するまで続けることが必要です。具体的には、年間成長率が1センチになった時か、手のレントゲンで骨端線が閉じる時まで、すなわち15〜16歳ころまで続けることになります。しかし、思春期の早い遅い、性腺刺激ホルモン分泌不全の有無によって治療期間が異なり、20歳を過ぎることもあります。身長の伸びの程度もさまざまな条件が関係してきますが、一般的にホルモン不足が重症なほど成長率も高いといえます。
成長ホルモン治療ではまれに、副作用がみられることもあります。注射した場所の皮膚が赤くなったり、かゆくなったり、注射部位がへこむこともあります。同じ場所ばかりに注射するのでなく、毎回注射する場所を変えることが重要です。 身長が伸びるのに伴って、関節が痛むこともあります。多くはいわゆる成長痛で、一時的なもので心配いりません。しかし、股関節の痛みが強い時や長時間続く時は、大腿骨(だいたいこつ)骨頭すべり症なども疑う必要があります。
一時期、成長ホルモン治療と白血病発症との関連性が心配されましたが、現在ではその関連性は否定されています。 原則として安全な治療薬ですが、治療中はもちろん、治療後も定期的に検査を行うなど、副作用がないかを専門医で調べる必要があります。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ