■用語 紅斑性狼瘡 [用語(こ)]
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紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)とは、顔面などに生じる紅斑(こうはん)を主症状とする疾患。エリテマトーデスとも呼ばれます。
膠原(こうげん)病の一つで、自己免疫性疾患のうち最も代表的なものです。
急性で全身が侵される全身性紅斑性狼瘡と、慢性で皮膚に限局して円形の紅斑が現れる円板状紅斑性狼瘡に大別され、この間に中間型、移行型があります。
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全身性紅斑性狼瘡は、全身に症状が現れる疾患で、代表的な膠原病の一つ。全身性エリテマトーデスとも呼ばれます。
現在の日本では10万人に7〜8人の発症率で、発症しやすい年齢は20歳〜40歳、その90パーセントは女性です。
発症させる原因は、まだ解明されていません。体質、素因、免疫の異常、環境因子が関係して発症すると推定されています。免疫の異常は、自分の体の成分に対して反応する異常であるために、自己抗体が血液中にみられます。特に抗核抗体、中でもDNA(デオキシリボ核酸)に対する抗体が血液中に現れるのが、特徴です。
全身性紅斑性狼瘡を発症させる誘因には、海水浴やスキーなどで強い紫外線を浴びたり、薬剤、ウイルス感染、外傷、ストレス、さらには妊娠、出産などがあります。
全身性紅斑性狼瘡の最も特徴的な症状は、皮膚の露出部に赤い斑点である紅斑が現れることです。顔では鼻を中心に両側の頬(ほお)にかけて、蝶(ちょう)が羽を広げたような形の蝶型紅斑ができます。また、手のひら、つめの周囲、足の裏、胸にも紅斑がみられます。
紅斑は厚く盛り上がることもありますが、痛みやかゆみはありません。ただし、紅斑が治った跡に瘢痕(はんこん)が残ったり、色素沈着や色素脱失になることがあります。
髪の毛が抜けたり、つめが変形したり、日光に当たるとひどい日焼けをして火膨れができる光線過敏症などもみられます。寒冷刺激や精神的ストレスに反応して、手や足の指が真っ白になったり、青紫色になったりし、しびれ、冷感、痛みなどの症状を伴うレイノー現象も、よくみられます。
内臓に現れる症状では、腎(じん)臓がよく侵されます。これはループス腎炎と呼ばれ、むくみや蛋白(たんぱく)尿がみられますが、初期には症状として出にくいため要注意。心膜や胸膜に炎症が起こることもあり、胸痛、発熱を起こします。
脳や神経に障害が起こると、けいれん、まひがみられることもあります。関節痛もみられますが、関節リウマチのような関節の変形、運動機能の障害はありません。
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皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、免疫血清や血液の検査を行います。免疫血清検査では、全身性紅斑性狼瘡に高頻度にみられる血清中の抗核抗体を調べます。また、血液検査によって、貧血の程度や白血球減少、血小板減少の有無を調べます。
そのほか、尿や血液の検査によって、ループス腎炎やネフローゼ症候群、腎臓の機能障害が起こっていないかを調べます。また、侵された臓器の病状を知るために、必要に応じてX線検査、CT検査、MRI検査、心電図などの検査を行います。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療においては、内臓の炎症にはステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)が有効で、効果を発揮しています。炎症が強くて症状が重い場合には、大量に投与され、症状が安定すれば徐々に量を減らしていきます。腎臓に障害が現れた場合には、免疫抑制剤が用いられたり、血漿(けっしょう)交換療法が行われることもあります。
ステロイド薬の使用により、予後はかなり改善しましたが、治療に用いられる薬はいずれも副作用があります。加えて、いつ、どれぐらいの期間をかけて投与量を減らすかが非常に難しいため、医師の指示を守って治療を続けることが大切。腎臓の機能低下が起こった場合には、血液透析が必要になります。
生活上の注意としては、全身性紅斑性狼瘡を発症させる誘因があると悪化するため、強い紫外線や感染症には細心の配慮が必要です。治療のためにステロイド薬を使うと感染症にかかりやすくなるため、清潔を心掛け、インフルエンザが流行している時期は人込みを避けるなど、注意します。
比較的若い女性がかかることが多いため、妊娠や出産の問題があった際には、医師に相談します。病状が安定していれば、妊娠、出産は十分に可能です。また、経済的な問題では、全身性紅斑性狼瘡は厚生労働省の特定疾患に認定されているので、医療費の助成を受けることができます。
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円板状紅斑性狼瘡は、日光露出部である頭部、顔面、四肢などに、円板状の紅斑が好発する原因不明の皮膚疾患。円板状エリテマトーデス、慢性円板状エリテマトーデスとも呼ばれます。
膠原病の代表的な疾患で全身性の症状を伴う全身性紅斑性狼瘡と異なり、皮膚症状のみ出現する皮膚限局型紅斑性狼瘡の1つであり、慢性型のサブタイプに相当します。皮膚限局型紅斑性狼瘡には、急性型、亜急性型、中間型のサブタイプもあります。
円板状紅斑性狼瘡の症状は、類円形ないし不整形で、魚の鱗(うろこ)のようにはがれる鱗屑(りんせつ)を伴う円板状の紅斑が多発することを特徴とします。
円板状の紅斑は境目がはっきりしていて、頬、鼻、下唇、頭部など、日光が当たる部位にできます。皮膚面より少し盛り上がり、中心部は硬くなったり委縮していたりして、引きつったようになっています。口唇に症状が出る時はびらん、頭皮に症状が出る時は脱毛を伴うことがあります。また、かいたり刺激を与えたりすると、その部位に新たな円板状の紅斑が広がる傾向にあります。
この皮膚病変は、治癒過程で色素沈着ないし色素脱失、委縮を生じ、瘢痕を残します。ほかの症状として、発熱や倦怠(けんたい)感がみられることもあります。
全身性紅斑性狼瘡と異なり、全身の臓器障害はみられませんが、一部が全身性紅斑性狼瘡へ移行することがあります。全身性紅斑性狼瘡へ移行すると、円板状の紅斑が全身に広がり、内臓の炎症、腎臓の機能障害が起こります。
円板状紅斑性狼瘡は、35~45歳の女性が発症しやすいとされています。
現在のところ、円板状紅斑性狼瘡を発症する原因はわかっていません。しかし、紫外線や寒冷刺激、美容整形、妊娠・出産、タバコ、ウイルス感染、薬物などが関係していると考えられています。
全身性紅斑性狼瘡は、免疫システムが自己の細胞を攻撃する自己免疫が原因だとされていますが、円板状紅斑性狼瘡は自己免疫とは無関係と考えられています。皮膚が抗原刺激や物理的刺激を受けることで、白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種であるT細胞が増殖し、細胞間で情報を伝えるタンパク質であるサイトカインの生成が促進され、症状が現れると推測されています。遺伝との関係は、親族内や双子で発症する例が少ないことから、可能性は低いと考えられています。
円板状の紅斑ができて治りにくい場合、円板状紅斑性狼瘡の可能性があります。日光を避けて、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診しましょう。治った後でも、まれに皮膚がんである有棘(ゆうきょく)細胞がんの発生母地となることがあるため、症状が軽くてもしっかり治療をすることが大切となります。
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皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、視診をした上で、皮膚生検といって皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる検査を行い、円板状紅斑性狼瘡と確定します。
血液検査を行うこともありますが、発症者の多くはほかの臓器に変化を伴わず正常です。しかし、一部の患者では、血液沈降速度(血沈)の高進、抗核抗体陽性、白血球減少がみられ、全身性紅斑性狼瘡に移行することがあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、瘢痕が残った皮膚病変を治すことはできませんが、新しい円板状の紅斑が広がらずに限られた範囲にできている場合は、ステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)の軟こうを直接塗ることが一般的です。目立つほど顔にできている場合や、頭皮の脱毛がひどい場合は、内服のステロイド薬を使用します。
また、内服薬ではヒドロキシクロロキンなどのマラリア治療薬が皮膚症状に有効であり、欧米では第1選択薬の1つです。以前の日本では副作用のために使用が禁止され保険適応がありませんでしたが、2015年に承認されました。ヒドロキシクロロキンの長期間の効果としては半数弱の人に有効であり、残りの半分強は、内服のステロイド薬などが必要になります。
免疫抑制剤の1つであるレクチゾールやミゾリビンの内服も有効なことがわかっていますが、貧血などの副作用が現れやすいため、慎重に使用する必要があります。
全身性紅斑性狼瘡を合併する場合には、内臓の炎症に対して内服のステロイド薬が有効で、効果を発揮しています。炎症が強くて症状が重い場合には、大量に投与し、症状が安定すれば徐々に量を減らしていきます。腎臓の障害に対して、免疫抑制剤を用いたり、血漿交換療法を行うこともあります。
円板状紅斑性狼瘡の悪化を防ぐためには、紫外線を避ける必要があります。肌の露出を控えるために、日焼け止めや帽子、サングラス、長袖(ながそで)などの対策が大切です。肌に過剰な刺激を与えることも悪影響なので、かゆみがある時でもかいたり刺激を与えないように気を付ける必要があります。薬を塗る時なども、手を洗い清潔な状態で塗るようにします。
寒冷による刺激も極力受けないほうがいいため、しっかりと防寒することが重要で、夏場は清潔な服を着る、通気性のよい天然素材の洋服を着るなどの対策も大切です。加えて、ストレスを避け、適度な運動と休養をとり、バランスのとれた食事をします。
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■用語 混合性尿失禁 [用語(こ)]
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混合性尿失禁とは、腹圧性尿失禁の症状と切迫性尿失禁の症状の両方の要素を含んだ尿失禁。混合型尿失禁とも呼ばれます。
尿失禁とは自分の意思と関係なく尿が漏れる状態で、混合性尿失禁は膀胱(ぼうこう)を支え、尿道を締めている骨盤底筋群の緩みがベースにあり、膀胱と尿道の両方の機能低下が加わることで起こりやすくなります。そうした症状は加齢により増えてくるので、閉経期から後の高齢の女性に次第に生じる率が高くなります。
腹圧性(緊張性)尿失禁は、せきやくしゃみ、運動時など、腹部に急な圧迫が加わった時に尿が漏れます。尿意とは無関係に、膀胱にたまった尿が一時的に漏れるもので、その程度はさまざまで、軽度の時は少量の一方で、重度になると多量に尿が漏れることもあります。
腹圧性尿失禁は頻度が高く、中年以降の出産回数の多い女性にしばしば認められるほか、比較的若い女性にもみられます。起こる原因は、膀胱を支え、尿道を締めている骨盤底筋群が加齢や出産、肥満などで緩んで、弱くなったためです。骨盤底筋群の緩みが進むと、子宮脱、膀胱瘤(りゅう)、直腸脱などを合併することもあります。
まれに、放射線治療やがんの手術によって、尿道を締める神経が傷付くことが原因となることもあります。
腹部に急な圧迫が加わるような動作をした時、例えばせきやくしゃみをした時、笑った時、階段や坂道を上り下りした時、重い荷物を持ち上げた時、急に立ち上がった時、走り出した時、テニスやゴルフなどの運動をした時、性交時などに、一時的に尿が漏れます。通常、睡眠中にはみられません。
切迫性(急迫性)尿失禁のほうは、急な強い尿意を催し、トイレにゆく途中やトイレで準備をする間に、尿が漏れます。トイレが近くなる頻尿、夜中に何度もトイレに起きる夜間頻尿が、同時に生じることもあります。
この切迫性尿失禁は、自分の意思に反して勝手に膀胱が収縮する過活動膀胱が主な原因です。普通、膀胱が正常であれば400~500mlの尿をためることが可能で、尿が250~300mlくらいになると尿意を感じて排尿が始まりますが、過活動膀胱では100ml前後の尿がたまると膀胱が収縮するために、突然の尿意を催して、我慢できなくなるのが特徴です。膀胱が正常であれば、尿意を感じ始めて10~15分ぐらいは我慢できることもありますが、過活動膀胱ではそれも難しいとされています。
過活動膀胱の人はとても多く、日本では40歳以上の男女のうち8人に1人は過活動膀胱の症状があり、その約半数に切迫性尿失禁の症状があると報告されています。近年40歳以下でも、過活動膀胱の症状に悩まされている人が大変多くなってきています。
女性が過活動膀胱になる最も多い原因は、膀胱を支え、尿道を締めている骨盤底筋群や骨盤底を構成する靱帯(じんたい)が弱まる骨盤底障害です。骨盤底筋群や靱帯が弱まってたるむと、膀胱の底にある副交感神経の末端が膀胱に尿が十分にたまらないうちから活性化して、突然強い尿意が出るようになるのです。
女性は若い時は妊娠や出産で、また、更年期以降は老化と女性ホルモン低下の影響で骨盤底障害になりやすいので、男性よりも多くの発症者がいます。男性の場合も、老化や運動不足で骨盤底筋や尿道括約筋が衰えることによって過活動膀胱になることがあります。
また、男女ともに、脳と膀胱や尿道を結ぶ神経のトラブルで起こる過活動膀胱も増えています。こちらは、脳卒中や脳梗塞(こうそく)などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄(せきずい)損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害が原因となります。
過活動膀胱のほか、切迫性尿失禁は膀胱炎、結石などによって膀胱の刺激性が高まって起こるものもあります。
尿失禁は恥ずかしさのため医療機関への受診がためらわれ、尿パッドなどで対処している人も多いようですが、外出や人との交流を控えることにもつながりかねません。次第に日常生活の質が低下することも懸念されます。腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の2つの要因が重なって失禁に至る症状が続くようであれば、泌尿器科を受診することが勧められます。
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泌尿器科の医師による診断では、症状および各種検査を総合し、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁とが重なる混合性尿失禁の原因を確定します。
一般的には問診、尿検査、超音波検査、血液検査、尿失禁定量テスト(パッドテスト)、尿失禁負荷テスト(ストレステスト)、尿流動態(ウロダイナミクス)検査(膀胱内圧、腹圧、排尿筋圧、外尿道括約筋活動、尿流量測定、残尿測定)、尿路造影検査、内視鏡検査などを行って、混合性尿失禁の原因を探ります。
問診では、出産歴、手術歴、婦人科疾患の有無、便秘の有無、尿失禁の状況などを質問します。切迫性尿失禁の主な原因となる過活動膀胱かどうかを調べるための過活動膀胱スクリーニング質問票(リンク)や、過活動膀胱の症状の程度を調べるための過活動膀胱症状質問票(OABSS)という簡単な質問票を、問診のために使うこともあります。
尿失禁定量テスト(パッドテスト)では、パッドをつけた状態で水分を取ってもらい、せき、くしゃみ、手洗い、足踏みなど腹部に圧迫が加わりやすい動作を行ってもらい、1時間後のパッドの重量増加で尿失禁の程度を確認します。
泌尿器科の医師による治療では、問診で腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁のどちらの症状がより困っているかを質問し、まず主症状の改善を図ります。
難産を経験した女性、40歳を過ぎた女性で混合性尿失禁を起こしている場合には、尿道、膣(ちつ)、肛門(こうもん)を締める骨盤底筋体操が割合効果的です。肛門の周囲の筋肉を5秒間強く締め、次に緩める簡単な運動で、仰向けの姿勢、いすに座った姿勢、ひじ・ひざをついた姿勢、机に手をついた姿勢、仰向けになり背筋を伸ばした姿勢という5つの姿勢で、20回ずつ繰り返します。
朝、昼、夕、就寝前の4回に分けて、根気よく毎日続けて行うのが理想的です。3カ月以上続けても効果のない場合には、手術が必要となる可能性が高くなります。
骨盤底筋の強化を目的として、電気刺激によって骨盤底筋や尿道括約筋など必要な筋肉を収縮させる電気刺激療法もあります。また、腟内コーンという器具を腟内に15分程度、1日2回ほど保持し、それを徐々に重たいものに変えていくことで骨盤底筋を強化し、症状を軽減する方法もあります。
切迫性尿失禁の主な原因となる過活動膀胱の場合には、できるだけ尿意を我慢して、膀胱を拡大するための訓練をします。毎日訓練すると、膀胱が少しずつ大きくなって尿がためられるようになりますので、200~400mlくらいまでためられるように訓練します。排尿間隔を少しずつ延長させ、2時間くらいは我慢できるようになれば成功です。尿道を締める筋肉の訓練も必要です。
薬物による治療としては、交感神経に働いて膀胱壁の筋肉である排尿筋の収縮を阻止し、尿道括約筋を収縮させる作用のある抗コリン剤(ポラキス、BUP−4)、または排尿筋を弛緩(しかん)させるカルシウム拮抗(きっこう)剤(アダラート、ヘルベッサー、ペルジピン)を用います。抗コリン剤を1~2カ月内服すると、過活動膀胱の80パーセントの発症者で改善されます。状況に応じて、抗うつ薬を用いることもあります。閉経後の女性に対しては、女性ホルモン剤を用いることもあります。
重症例や希望の強い場合などには、手術による治療を行います。尿道括約筋の機能が低下している場合には、尿道の周囲にコラーゲンを注入する治療や、尿道括約筋を圧迫するように腹部の組織や人工線維で尿道を支えるスリング手術、日本ではあまり行われていない人工括約筋埋め込み術などがあります。
■用語 高血糖 [用語(こ)]
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高血糖とは、余った糖が血液中に停滞し、必要以上に糖の量が多くなった状態。
血液に含まれる糖(ブドウ糖)は、生きるために欠かせないエネルギー源。糖尿病でない人の血液に含まれる糖の量、すなわち血糖値は約70mg/dLから140mg/dLの間に維持されています。食後、食物に由来するブドウ糖やアミノ酸が体に吸収されると、膵(すい)臓からホルモンのインシュリンが分泌され、その働きにより食物から吸収されて血液に入ったブドウ糖が筋肉組織などへ取り込まれ、血糖値が一定値以上に上昇しないようになっています。
しかし、糖尿病の人では、インシュリン作用の低下のため、この糖の量を一定に維持することができません。食事から取り入れたブドウ糖を体や脳のエネルギーとして消費するという需要と供給のバランスが崩れ、血液中の糖が増えすぎると高血糖、逆に糖尿病の薬が効きすぎるなどして血液中の糖が少なくなりすぎると低血糖になります。
「食べすぎることがよくある」「菓子やジュースがやめられない」「これといった運動はしていない」「最近太り気味」といった項目に思い当たる人は、余った糖が血液中に停滞し、必要以上に糖の濃度が高まった高血糖になっている可能性があります。
遺伝的な素因や心理的ストレスの影響も大きく、さらには、ただ年を取るだけでも、高血糖のリスクは高まります。
健康診断で「血糖値は正常」といわれた人も、安心できません。空腹時の血糖値が高くなってくるよりも前に、食事の後にだけ血糖値が急上昇する食後高血糖を起こしている可能性があるからです。食後高血糖を繰り返すうちに空腹時の血糖値も上がり、ついには糖尿病を発症します。
2016年の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる成人と糖尿病の可能性が否定できない予備群とされる成人の合計は約2000万人。成人の4~5人に1人が該当します。その人数は増え続けており、もはや国民病という域に達しています。
高血糖が引き起こすトラブルは、糖尿病だけではありません。血糖値上昇に伴う酸化ストレスや炎症、余った糖と体内の蛋白(たんぱく)質が結び付く糖化、そして高血圧や脂質異常、肥満などの影響が複雑に絡み合い、全身のさまざまな部位に悪影響を及ぼします。
大きな血管では動脈硬化が進行し、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞のリスクが高まります。空腹時血糖値が正常でも、食後高血糖がある人では死亡リスクが約1・5〜3倍に跳ね上がることが大規模な疫学研究で明らかになっています。
高血糖に引き続いて起こる糖尿病が進行すると、失明の原因となる網膜症や、腎不全に発展して人工透析が必要になることもある腎症といった、生活の質を著しく損なう疾患になることもあり、神経障害により足先が腐って切断を余儀なくされることもあります。
このほか、血液の流れが悪くなり、神経も傷み、免疫力も低下するといったことが連鎖的に起こることで、歯周病や皮膚炎、感染症、勃起不全(ED)と いった疾患にかかりやすくなり、高血糖が認知症や骨の弱化、がんと関連していることも、数々の研究報告から明らかになってきました。
さらに、血糖値が著しく上昇して500mg/dl以上になると、糖尿病性昏睡(こんすい)という状態に陥って意識を失い、命にかかわる危険な状態になる恐れがあります。
糖尿病性昏睡に陥る切っ掛けは、糖尿病の治療を放置した状態にある人に感染が加わったり、ストレスや疲労、暴飲暴食によって血糖値が上昇したり、インシュリンの注射を中止したり、インシュリンの注射の量が適切でなかったりと、いろいろなケースがあります。
病態によって、主に糖尿病性ケトアシドーシス(ケトン性糖尿病性昏睡、ケトン性昏睡)と、高血糖性高浸透圧状態(非ケトン性高浸透圧性昏睡)に分類されます。
糖尿病性ケトアシドーシスは、インシュリンの絶対的不足に伴って細胞内の糖が欠乏し、慌てて脂肪酸からエネルギーを取り出そうとするために、副産物として生じる弱酸性のケトン体が全身性の代謝性ケトアシドーシスを引き起こし、血液が酸性に傾いて起こります。
口の渇き、低体温、多尿、脱力感に続いて、腹痛、嘔吐(おうと)が2〜3日あり、次第に意識が消失していきます。統計的には、1型糖尿病(インシュリン依存型糖尿病)の患者に多くみられます。
一方、高血糖性高浸透圧状態は、高血糖に脱水が加わって起こります。尿中の糖が多くなると、糖の濃度を薄める方向に血液中から水が流れ込みます。その結果として、細胞内脱水が起こります。
意識障害が主症状で、高齢者はそもそも脱水状態になりやすいので、この病態にもなりやすい傾向があります。統計的には、高齢の2型糖尿病(インシュリン非依存型糖尿病)の患者に多くみられます。
上記2つの高血糖による意識障害のほか、糖尿病患者は治療薬の副作用によって低血糖による意識障害や、乳酸アシドーシスを示す場合もあります。
糖尿病性昏睡は早く治療を開始しないと死亡するため、糖尿病の悪化症状がある時は、すぐに医師に連絡をとる必要があります。
内科、内分泌代謝内科などの医師による高血糖の治療では、原因となる基礎疾患を除去することが必要になります。例えば糖尿病が原因であれば、糖尿病の治療ということになります。糖尿病性昏睡は多くの場合、血液中の糖分を低下させるホルモンのインシュリンを静脈に注射し、血糖値を下げることによって治療が可能です。
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■用語 後天性QT延長症候群 [用語(こ)]
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後天性QT延長症候群とは、薬剤の使用や電解質異常、徐脈、心疾患などの二次的原因により、突然、脈が乱れる不整脈発作や失神発作を起こしたり、時には突然死に至ることもある疾患。二次性QT延長症候群とも呼ばれます。
医療機関において、心臓の動きをコントロールしている電気刺激の変化を記録する心電計で検査をすると、心電図に現れるQTと呼ばれる波形の部分の間隔(QT時間)が、正常な状態の心臓に比べて長くなることから、この疾患名が付けられています。
先天的な遺伝子の異常が原因で起こる先天性QT延長症候群とは異なり、遺伝子の異常が認められる頻度は少ないものの、薬剤の使用が原因になって起こる後天性QT延長症候群では遺伝子の異常もかかわっています。
安静時の元々のQT時間は正常範囲内で、正常よりも長め、または正常ですが、二次的原因が加わった場合に、心臓の筋肉である心筋細胞が収縮して全身に血液を送り出した後、収縮前の弛緩(しかん)状態に戻るQT時間が著しく延長するために、心筋細胞が過敏になって後天性QT延長症候群の不整脈発作を発症します。
症状としては、不整脈発作による動悸(どうき)、立ちくらみ、気分不快や、失神発作、けいれん発作などがあります。発作の多くは、短時間で自然に回復しますが、心室期外収縮や、トルサード・ド・ポアンツと呼ばれる多形性心室頻拍から、心室細動といわれる不整脈にまで進行して回復しない場合は、突然死に至ります。
また、失神発作、けいれん発作は、てんかんと間違えられることもよくあります。
QT時間を延長させる可能性がある薬剤は、抗不整脈薬、抗生剤(マクロライド系)、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、向精神薬、抗うつ薬、抗潰瘍(かいよう)薬、脂質異常症治療薬など多岐にわたっています。同じ薬剤でも著しくQT時間が延長する人と、延長しない人がいることから、後天性QT延長症候群でも先天性の遺伝子の異常もかかわっていると考えられます。
薬剤の使用のほか、低カリウム血症や低マグネシウム血症、低カルシウム血症によって生じる電解質異常、洞機能不全症候群や房室ブロックを起こしたりすることが原因で脈が正常よりも極端に遅くなる徐脈、急性心筋炎や虚血性心疾患などの各種心疾患、くも膜下出血などの中枢神経疾患、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症などの内分泌疾患に伴い、QT時間が延長して発症することもあります。
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循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、服薬内容の確認、心電図検査、血清中の電解質濃度を測定する血液検査が基本となります。基礎心疾患の有無をみる目的で、心臓超音波検査や運動負荷心電図を行うこともあります。
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、薬剤の内服や電解質異常、徐脈などの原因があるので、それらを取り除くとQT延長が短縮して正常化し、症状はよくなります。
脈が正常よりも極端に遅くなる徐脈性不整脈を起こしている場合は、脈を正常まで速めて発作が起こりにくいようにするため、恒久型ペースメーカーの植込みによる治療を考慮します。
ペースメーカーは、徐脈時には電気刺激を出して心臓の拍動を調整する装置で、脈の状態は心臓の中に留置したリード線を通して察知します。手術で、ライターほどの大きさのペースメーカーを鎖骨の下に埋め込みます。
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