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■用語 ウイルス性結膜炎 [用語(う)]

[目]ウイルスの感染によって目の結膜に炎症が起こる疾患
 ウイルス性結膜炎とは、ウイルスの感染によって目の結膜に炎症が起こる疾患。
 結膜は、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆っている、薄い粘膜の部分を指します。まぶたの裏側を覆っている部分は眼瞼(がんけん)結膜、白目の表面を覆っている部分は眼球結膜と呼ばれています。一方、黒目の部分を覆っている粘膜は角膜と呼ばれています。
 その結膜の働きは、直接、外界に接している目を異物の侵入から守ること。そこで、結膜には抗菌作用のある粘液や涙液が分泌され、常に作られている涙で目の表面を潤して防御しているのですが、多くのウイルスや細菌にさらされたり、睡眠不足、過労などで抵抗力が落ちている時には、炎症を起こすことがあります。
 ウイルス性結膜炎の原因となるウイルスには、アデノウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ヘルペスウイルスなどがあります。いずれも他人の分泌物などからウイルスが体に入って発症するものであり、他人に感染させる力も強く、家族内感染や学校内の集団感染などの原因になります。
 夏風邪のウイルスの一種であるアデノウイルス8型を主に、19型、37型、54型も原因となるウイルス性結膜炎には、まず流行性角結膜炎があります。
 はやり目とも呼ばれ、白目が充血し、目やにが出て、目が痛くなることもありますが、かゆみはほとんどありません。耳の前やあごの下にあるリンパ節がはれることもあります。感染してから約1週間で発症し、それから1週間くらいがピークで、次第によくなります。
 同じアデノウイルス3型、4型、7型が原因となるウイルス性結膜炎には、咽頭(いんとう)結膜炎もあります。
 プール熱とも呼ばれ、突然39度くらいの高熱が出て、のどがはれ、目が充血したり、目やにが出るなどの症状が出ます。悪化すると、肺炎になることもあります。感染してからの経過は、流行性角結膜炎とほぼ同じです。
 エンテロウイルス70型やコクサッキーA24変異株が原因となるウイルス性結膜炎には、急性出血性結膜炎があります。
 症状は急性で、目が痛くなったり、目やにが多くなり、白目に出血がみられることもあります。ひどくなると、黒目の部分の角膜に小さな傷ができることがあります。感染した翌日くらいから発症し、1週間くらいでよくなってきます。
 単純ヘルペスウイルスが原因となるウイルス性結膜炎には、ヘルペス性結膜炎があります。
 ウイルス性結膜炎の一種ではあっても、あまり他人に移ることはありません。症状としては、白目が充血したり、目やにが多く出たりするのに加え、目の周囲の皮膚面に赤く小さな水疱(すいほう)が出ることもよくあります。角膜ヘルペスを合併することもあります。
[目]ウイルス性結膜炎の検査と診断と治療
 眼科の医師による診断では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で結膜を観察して判断します。結膜の悪い部位をこすり取ったり、涙を採取したりして、その中にウイルスがいないかどうかを調べることもありますが、適応はまれです。
 眼科の医師による治療では、流行性角結膜炎、咽頭結膜炎、急性出血性結膜炎の場合、結膜炎の段階での有効な薬剤がないため、対症療法的に抗炎症剤の点眼を行い、細菌による混合感染を防ぐために抗菌剤の点眼を行います。さらに、角膜炎の症状が認められる際は、ステロイド剤の点眼を行います。熱が高い時は、解熱剤を使います。
 ヘルペス性結膜炎の場合、単純ヘルペスウイルスに対して効果がある抗ウイルス剤の眼軟こうを目に塗ります。また、症状によっては抗ウイルス剤の内服や点滴治療を併用することもあります。
 ウイルス性結膜炎の感染を予防するには、目をこすった手やハンカチ、タオルなどから感染することがありますので、目に何らかの異常がある場合には家族であってもタオルなどを共用せず、手洗いをまめに行うなどが効果的です。
 感染するのは、流行性角結膜炎や咽頭結膜炎では発症後約1~2週間、急性出血性結膜炎では3~4日です。学校保健法では、流行性角結膜炎と急性出血性結膜炎は感染力がなくなったと医師が判断するまで、咽頭結膜炎は主な症状が消えた後2日を経過するまで登校を禁止することと規定されています。

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■用語 ウイルス性髄膜炎 [用語(う)]

[かわいい]脳を取り巻く髄膜にウイルスが感染し、炎症が起こる疾患
 ウイルス性髄膜炎とは、脳を取り巻き、内側から軟膜、くも膜、硬膜の三層からなる髄膜に、原因となるウイルスが血液を介して感染し、炎症が起こる疾患。
 ウイルス性髄膜炎は無菌性髄膜炎の一部を占める疾患であり、無菌性髄膜炎はインフルエンザ菌や肺炎双球菌、髄膜炎菌などの細菌が病原体とならない髄膜炎を指し、その病原体にはウイルスやマイコプラズマ、真菌(しんきん)、寄生虫などがあり、膠原(こうげん)病、薬剤、造影剤などによっても発生します。小児に多くみられ、細菌由来の髄膜炎に比較すると病変は軽度で通常、予後は良好となります。
 無菌性髄膜炎の一部を占める疾患であるウイルス性髄膜炎を起こす原因ウイルスは、エンテロウイルス属(コクサッキーウイルスA、コクサッキーウイルスB、エコーウイルス、エンテロウイルス)が最多で、次いでムンプスウイルスです。エンテロウイルス属、ムンプスウイルスによるウイルス性髄膜炎は、春から夏にかけて多くみられます。
 また、原因ウイルスには、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、水痘・帯状疱疹(ほうしん)ウイルス、日本脳炎ウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルスなどもあります。
 原因ウイルスによって潜伏期、症状に違いはありますが、一般的に年長児と成人では、急激な発熱、頭痛、嘔吐(おうと)を主症状とします。首が強く突っ張る項部強直などの髄膜刺激症状も多く認められます。
 乳児では、発熱、不機嫌、授乳不良など非定型的な症状で発症し、髄膜刺激症状を認めないことも多くあります。新生児では、発熱、授乳不良に加えて、重篤な全身症状を引き起こす敗血症のような症状を示すことがあります。
 原因ウイルスがエンテロウイルス属の場合は胃腸病変や発疹(はっしん)がみられ、ムンプスウイルスの場合は耳下腺(せん)のはれがみられ、単純ヘルペス1型と単純ヘルペス2型の場合は発疹がみられ、何度も再燃することがあります。水痘・帯状疱疹ウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルスの場合も、発疹がみられます。
 さらに、炎症が髄膜から脳そのものまでに及ぶと髄膜脳炎、脳炎を合併し、意識障害や手足のけいれんを起こすこともあります。
 成人で発熱、頭痛、嘔吐をもって急性に発病した場合は、ウイルス性髄膜炎の疑いがあるので、内科、神経内科を受診します。乳幼児で発熱、授乳不良、何となく元気がないなど普段と様子が違う場合は、早めに小児科を受診することが重要です。
[かわいい]ウイルス性髄膜炎の検査と診断と治療
 内科、神経内科、小児科の医師による診断では通常、脊髄(せきずい)液を腰椎(ようつい)から穿刺(せんし)する髄液検査を行います。
 髄液検査の所見では、単核球(リンパ球)を主とする細胞の増加が認められます。髄膜炎を疑わせる症状がなくても、髄液検査を行うと髄液中の細胞が増えていることもあります。
 また、髄液からのウイルス分離で、原因ウイルスを証明します。あるいは、RT‐PCR法(逆転写酵素ーポリメラーゼ連鎖反応法)を用いて、ウイルス遺伝子(RNA)を検出します。最近の分子生物学的手法により、ウイルスがワクチン株(ワクチン由来)か野生株かの判定が可能になりました。
 髄膜炎や、合併した髄膜脳炎、脳炎の程度をみるために、CT(コンピューター断層撮影)検査やMRI(核磁気共鳴画像)検査を行うこともあります。周囲でのウイルス性感染症の流行状況、その年に多く分離されているウイルスの動向なども、診断の参考にします。
 内科、神経内科、小児科の医師による治療では、入院が必要になり、ほとんどのウイルスに特異的な治療法がないため、発熱や痛みに対する対症療法を行います。
 単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、水痘・帯状疱疹ウイルスによる髄膜炎に対しては、アシクロビルなどの抗ウイルス剤の点滴投与を行います。
 ムンプスウイルスによる髄膜炎の場合は、髄液検査において穿刺をすると、頭痛や嘔吐がある程度改善します。脱水症状を示している場合は、輸液(点滴)を行います。
 一般的にウイルス性髄膜炎は早期に発見して早期に治療すれば、予後は良好で数週間の安静で自然治癒し、後遺症を残すことはほとんどありません。髄膜脳炎を合併した場合でも、ほかの原因による髄膜脳炎に比べると予後は良好です。

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■用語 運動ニューロン疾患 [用語(う)]

[スキー]運動神経だけが障害される進行性の神経変性疾患の総称で、筋委縮性側索硬化症が代表
 運動ニューロン疾患とは、骨格筋を支配する神経細胞である運動ニューロンのうち、大脳からの運動の命令を筋肉まで伝える運動神経だけが選択的に障害され、運動神経以外の感覚神経や自律神経、脳の高度な機能はほとんど障害されない進行性の神経変性疾患の総称。MND(Motor Neuron Disease)とも呼ばれます。
 代表的なのが筋委縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic Lateral Sclerosis)というまれな疾患で、日本では特定疾患、いわゆる難病に指定されています。
 筋委縮性側索硬化症の特徴は、上位運動ニューロン(一次運動ニューロン )と下位運動ニューロン(二次運動ニューロン)の両方が侵されることです。上位運動ニューロンは、大脳皮質の運動領野から起こって、延髄または脊髄(せきずい)までいく神経系。下位運動ニューロンは、延髄または脊髄から末梢(まっしょう)神経を経て、筋肉に達する神経系。
 運動ニューロンが侵されるため、大脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり、筋肉が委縮していき、同時に脊髄の運動神経線維である側索(錐体〔すいたい〕路)も変性を起こしてきます。一方、体の感覚や知能、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれることが普通です。
 運動ニューロンが侵される運動ニューロン疾患には、下位運動ニューロンだけが侵され、筋委縮の強い脊髄性進行性筋委縮症や、延髄の神経核が侵され、飲み下しにくくなる嚥下(えんげ)障害、言語障害などの延髄症状の強い進行性球まひなどもあります。いずれも経過をみると、最後には同じ状態となります。
 筋委縮性側索硬化症の原因はまだ、よくわかっていません。一部には遺伝的に発生するものもあり、体質も問題にされています。また、一部の発症者はがんに合併するので、何らかの因子が関与しているのではないかとも考えられています。1年間で新たに発症する人は人口10万人当たり約1人で、男女比は約2:1と男性に多く認めます。
 発症は一般的に遅く、40〜60歳代に起こります。一般的には、手指の筋肉が次第に委縮し、力が入らなくなります。時には、足先から委縮が始まります。
 委縮は次第に体の上のほうに進んで全身に及び、ついには舌の筋肉も委縮して、嚥下困難、発語困難となり、さらに進行すると呼吸筋もまひして、呼吸も十分にできなくなります。筋肉の委縮とともに、脊髄の下位運動ニューロンが変性するために、筋肉が勝手に細かくピクピクと収縮を起こすのも特徴です。
 進行性に悪化するために、多くは平均3〜5年で死亡します。進行性球まひは進行が早く、平均約1年7カ月といわれています。時には、数十年に渡って徐々に進行するものもあります。
[スキー]運動ニューロン疾患の検査と診断
 神経内科の医師による筋委縮性側索硬化症の診断では、筋委縮が起こる部位の分布は特異的で、筋電図や、筋肉の組織の一部を切り取って顕微鏡などで調べる筋生検などで、運動ニューロンの病変を確かめられます。
 末梢性筋委縮を示すものに、末梢神経炎や進行性筋ジストロフィー症の末梢型があり、時には区別の困難なこともあります。
 神経内科の医師による治療としては、進行を遅らせる作用のあるリルゾール(商品名:リルテック)という薬が日本でも承認されて、使用されるようになりました。しかし、その効果はごく軽微。
 一般的には、対症療法的にビタミン剤や、弱い筋弛緩(しかん)剤を用い、筋委縮が進行して呼吸障害を来した時には、呼吸管理を自動調節する機械であるレスピータを用います。
 体の自由が利かないことや、疾患に対する不安などから起こる不眠には、睡眠薬や精神安定剤(トランキライザー)を使います。筋肉や関節の痛みに対しては、毎日のリハビリテーションが大切になります。
 生活上の注意としては、疾患が進行性であることや特別な治療法のない点で、発症者は精神的にショックを受け、次第にわがままになる傾向がありますので、家族の理解が必要です。
 疾患が進行してくると、食べ物を飲み込みにくくなりますが、このような場合は流動食よりも、ゼリーなどで半固形食にしたほうが飲み込みやすく、栄養もよく取れます。飲み込みにくさがさらに進行した場合には、腹部の皮膚から胃に管を通したり、鼻から食道を経て胃に管を入れて流動食を補給したり、点滴による栄養補給などの方法があります。
 入浴も、一時的には浮力がついて手足を動かしやすくなりますが、疾患が進行すると入浴させるのが非常に困難になります。

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■用語 ウォルフ・ヒルシュホーン症候群 [用語(う)]

[ダイヤ]4番染色体の短腕の一部分が欠損していることが原因で引き起こされる重度の先天性障害
 ウォルフ・ヒルシュホーン症候群とは、22対ある常染色体のうち、4番染色体の短腕の一部分が欠損していることが原因となって、引き起こされる重度の先天性障害。4p(よんぴー)モノソミー、4p欠失症候群、4pー(まいなす)症候群とも呼ばれます。
 常染色体は性染色体以外の染色体のことであり、人間の体細胞には22対、44本の常染色体があります。それぞれの常染色体はX型をしていて、短腕(p)と長腕(q)という部分があり、4番染色体の短腕の一部分が欠損している状態が4pモノソミーに相当し、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群を引き起こします。
 4pモノソミーは、常染色体の一部分が欠けている常染色体部分モノソミーの一種で、常染色体部分モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれても知的障害を含む重い先天性障害を併発します。通常、2本で対をなしている常染色体が1本になる常染色体モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれることはできません。
 4pモノソミーから引き起こされるウォルフ・ヒルシュホーン症候群の主な原因は、突然変異による4番染色体の変化が原因で、欠損が短腕の約半分に及ぶものから、欠損が微小なものまであります。なぜ突然変異が起こるのか、どの遺伝子がどの症状と関係しているのかまではわかっていません。
 まれに、両親からの遺伝が原因で起こります。転座といって、ほかの染色体の一部分が4番染色体の短腕に間違ってくっついていることにより起こり、この場合は両親の片方が染色体異常の保因者であることがあります。
 ウォルフ・ヒルシュホーン症候群という疾患名は、ドイツのヒルシュホルンらによる1961年の報告と、同じくドイツのウォルフらによる1965年の報告に由来しています。
 従来、5万人に1人程度の新生児にウォルフ・ヒルシュホーン症候群が発症するとされてきましたが、医師に誤診されていたり、認識されていない発症者もいることから、頻度はもっと高いと推測されます。
 ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の新生児は、鼻筋の高く通った幅広い鼻や、弓状の眉毛(まゆげ)、両眼隔離、小さい顎(あご)などを特徴とする顔立ちをしています。
 また、子宮内から始まる成長障害、重度精神遅滞、筋緊張低下、難治性てんかん、ほ乳障害、摂食障害を認めます。そのほかにも、骨格異常、先天性心疾患、聴覚障害、視神経異常、唇裂口蓋(こうがい)裂、尿路奇形、脳の構造異常などの症状を示します。
 体重の増加もゆっくりで精神と運動の発達遅滞がみられますが、個人差はあっても年齢とともに、食事、着衣、脱衣など日常の家庭内での単純な作業の分担もできるようになります。疾患自体による生命予後は比較的良好で、個々の予後は合併症の重症度によります。
[ダイヤ]ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の検査と診断
 小児科、遺伝科の医師による診断は、特徴的な顔立ち、成長障害、精神遅滞、てんかん発作により疑いを持ち、染色体検査により4番染色体の短腕欠損を検出することにより確定診断します。
 大人になってからウォルフ・ヒルシュホーン症候群と診断されたり、子供のうちに診断される数は増えています。
 小児科、遺伝科の医師による治療は、対症療法が基本となります。てんかんのコントロールが最初の重要な治療で、抗けいれん薬(バルプロ酸など)を投与します。嚥下(えんげ)障害があれば、経管栄養や摂食訓練が必要となることもあります。
 精神遅滞のためにコミュニケーションが困難ですが、仕草や表情である程度の意思疎通は可能で、運動発達、認知、言語、社会性の能力を伸ばすための訓練を行います。
 骨格異常、先天性心疾患、聴力障害、眼科的異常などの合併症に対しては、標準的な対症療法を行います。

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