☐用語 会陰裂傷 [用語(え)]
主に分娩に際して会陰部の組織に生じる裂傷
会陰(えいん)裂傷とは、主に分娩(ぶんべん)に際して、会陰部が過度に押し広げられて生じる裂傷。会陰破裂とも呼ばれます。
裂傷は膣(ちつ)入口部と肛門(こうもん)の間、長さにして3センチほどの部分に生じ、傷口からの出血や痛みが生じます。分娩時、新生児の頭が膣壁や会陰部の組織を圧迫して引き伸ばし、最終的には約10センチほどもある頭が膣入口部から出てきます。最初は厚ぼったかった会陰部の組織は、新生児の頭が出る直前はぺらぺらの紙のように薄く引き伸ばされ、裂傷が生じやすくなります。
裂傷の程度によって、1度から4度までに分類されます。1度会陰裂傷は会陰部の皮膚および皮下組織、膣粘膜のみの裂傷で、2度会陰裂傷はさらに会陰部や膣壁の深部筋層まで及んだものをいいます。3度会陰裂傷では肛門括約筋、膣と直腸の間にある膣中隔の一部にまで達し、4度会陰裂傷は肛門粘膜や直腸粘膜をも損傷するものをいいます。
これらの裂傷は、膣や会陰の伸展が十分でない若年、もしくは高年の初産婦や、新生児の体が大きい時に生じやすくなります。経産婦は一度膣壁や会陰部が引き伸ばされた経験があるので、次の出産の際は引き伸ばされやすい傾向があります。
分娩後直ちに縫合すれば通常は後遺症を残しませんが、感染したり血液がたまって血腫(けっしゅ)をつくると、縫合部が離開して治癒に日数を要することがあります。4度会陰裂傷で治癒が不完全な場合は、膣と直腸が通じてしまう直腸膣瘻(ろう)を形成することもあります。
会陰裂傷を予防するために、介助者が新生児の頭の通過をゆっくり進行させて会陰の急速な伸展を防ぐ会陰保護を行うことが、古くから行われてきました。しかし、目に見える会陰裂傷を生じていなくても、皮下組織や深部筋層の断裂、あるいは過度な伸展によって産後の膣壁の弛緩(しかん)を生じ、後に性生活に不満を残すことがあります。
あらかじめ予防的に会陰を切開しておいたほうが治癒が早く、肛門括約筋や直腸粘膜に達するような裂傷を生じにくいことなどから、会陰部がある程度伸展した時点で人為的に切開する会陰切開が行われることも多くなっています。会陰切開は切開部位によって正中切開法と正中側切開法に分けられ、キザギザに裂ける会陰裂傷よりは縫合も簡単で治癒も早いのが特徴です。
会陰裂傷の検査と診断と治療
産婦人科、産科、産科・婦人科の医師による診断は、新生児が生まれ出て胎盤が子宮から出た直後に、赤い色の出血が見られ、膣入り口部と肛門の間の会陰組織、もしくは膣壁が裂けていることが視診で確認されると、会陰裂傷と判断します。
肉眼的に損傷の程度を確認して2度会陰裂傷かと思っても、膣の奥深くで直腸粘膜が裂けて4度会陰裂傷となっている場合もまれにあるので、分娩直後の直腸診も行い、肛門括約筋が正常に機能するか、肛門粘膜や直腸粘膜に損傷がないか確認します。
産婦人科、産科、産科・婦人科の医師による治療は、裂傷部を縫合することになります。合成吸収糸という時間がたつと自然と溶けてしまう細い糸を使用して縫合するため、一般的な裂傷では抜糸は必要ないことが多くなります。
1度会陰裂傷の場合、裂傷が1センチ以上あり出血がある際は、傷が密着して出血が止まる程度の強さで縫合します。2度会陰裂傷の場合、深い部分の傷は合成吸収糸を使う埋没縫合で止血し、表面の傷は1度会陰裂傷と同様に縫合します。2度会陰裂傷までは一般的に起こり得るもので、10分もあれば縫合も終わります。
3度会陰裂傷の場合、まず断裂した肛門括約筋を縫合します。不完全な断裂であっても、肛門括約筋は肛門の周囲を取り囲む輪ゴムのような筋肉で、断裂すると肛門の締まりが緩くなり、排便障害などの後遺症を残すことがあるため、断裂した筋肉を元のように引き寄せて縫合し、残りの傷は2度会陰裂傷と同様に縫合します。分娩後3~4日は便が硬くなりすぎて傷に負担がかからないように、便を柔らかくする緩下剤を使う場合があります。
4度会陰裂傷の場合、裂傷を縫合する前に、肛門から直腸の厳重な消毒を行います。次に破れた直腸粘膜の縫合と肛門括約筋の縫合を行い、後は2度会陰裂傷と同様に縫合します。縫合に1時間以上かかることもあります感染予防のために抗生物質の投与し、さらに3~4日程、便を止める場合もあります。また、直腸の挫滅(ざめつ)がひどく縫合がうまくいかずに直腸と膣がつながってしまう直腸膣瘻を形成することもあります。この際は抗生物質を用いて炎症を抑え、傷がある程度落ち着いてから再度縫合を行うこともあります。
会陰裂傷後に特に気を付けるべきことは、排便などで息む時に縫合部分に負担をなるべくかけないことです。そのため、緩下剤などで便の柔らかさをコントロールする必要があり、水分もこまめに飲むように心掛けます。傷の痛みが強い時には、授乳中も服用できる鎮痛剤を服用します。ほかにも、滅菌コットンなどでのふき取り、洗浄、ワセリンの塗布で、傷口を清潔に保つことが必要です。
■用語 嚥下障害 [用語(え)]
食べ物を口の中に取り込んで飲み込むまでの過程が正常に機能しない状態
嚥下(えんげ)障害とは、食べ物や水分を口の中に取り込んでから飲み込むまでの過程が正常に機能しない状態。嚥下困難、摂食嚥下障害とも呼ばれます。
物を食べることは、食べ物を認識し、口に入れ、噛(か)んで、飲み込むまでの一連の動作からなります。このうちの飲み込むという動作が、嚥下に当たります。
嚥下は、主に舌の運動により食べ物を口腔(こうくう)から咽頭(いんとう)に送る口腔期、嚥下反射により食べ物を咽頭から食道に送る咽頭期、食道の蠕動(ぜんどう)運動により胃まで運ぶ食道期に分けられます。嚥下には多くの器官がかかわっており、これらが障害を受けるさまざまな疾患で、嚥下障害が起こります。
嚥下障害が起こると、食物摂取障害による栄養低下と、食べ物が気道へ流入する誤嚥による嚥下性肺炎(誤嚥性肺炎)が問題になります。
嚥下障害を引き起こす疾患にはさまざまなものがありますが、脳出血や脳梗塞(こうそく)、認知症、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症などが原因となることがあります。
嚥下する際には嚥下にかかわる筋力が必要となるため、筋ジストロフィーや重症筋無力症などで筋力が低下することが原因となります。
加齢により咀嚼(そしゃく)や嚥下に必要な筋力が衰えるのも、原因の一つです。加齢に伴い唾液(だえき)が少なくなったり、歯の本数が少なくなったりすることから食べ物を噛みにくくなることも、原因として挙げられます。筋力が低下すると飲み込む時に気道を閉じることができなくなり、食べ物が気管に入りやすくなります。高齢者の肺炎のかなりの部分は、加齢による嚥下機能の低下による誤嚥によって引き起こされるともいわれています。嚥下性肺炎を発症すると、発熱、咳(せき)や痰(たん)の増加、呼吸回数の増加、息苦しさなどを認めます。
そのほか、口腔がんや咽頭がんなどの悪性腫瘍(しゅよう)や、口唇口蓋(こうがい)裂、精神的要因、薬剤、環境要因、姿勢なども嚥下障害の原因となります。
嚥下障害を起こすと、食べ物が飲み込みにくい、飲み込めない、つかえるとの自覚や、食事の時のむせ込みなどの症状が現れます。明らかな症状がないこともありますが、食事の状態で判断することもできます。固い物、ぱさついた物、まとまりのない物、味噌(みそ)汁など固形物と水物の混合した物は飲み込みにくい食べ物であり、食事に時間がかかるようになります。
誤嚥の有無は、食べ物を飲み込んだ後の咳や、食後によく痰が出るなどからも判断できます。声質の変化もよくみられる症状で、食べ物を飲み込んだ後に声がかすれたり、口腔内に食べ物が残留することから痰が絡みやすくなり、がらがらした声になったりします。
嚥下障害の検査と診断と治療
耳鼻咽喉(いんこう)科、飲みこみ外来、嚥下外来などの医師による診断では、精神機能や身体機能も含めた全身状態をチェックします。次に口腔・咽喉頭の所見から、おおよその嚥下機能を判断します。舌の運動性は口腔期の食べ物の移動に、咽頭の知覚は咽頭期を引き起こすのに重要です。
口腔から咽頭にかけては比較的簡単に観察できますが、下咽頭や喉頭の機能を確認するには、喉頭ファイバースコープなどの内視鏡検査が必要になります。実際に食べ物などを嚥下させて誤嚥などを検出する検査には、嚥下内視鏡検査があります。また、実際に食べ物がどのように飲み込まれるかを調べる方法としては、造影剤を用いて嚥下状態をX線透視下に観察する嚥下造影検査があり、現在では最も信頼性の高い方法と考えられています。
耳鼻咽喉科、飲みこみ外来、嚥下外来などの医師による治療では、嚥下障害を引き起こす原因があればそれを取り除くことが重要です。また、嚥下障害の程度により、栄養摂取と誤嚥防止の観点から対応や治療法を決定します。
嚥下障害が軽度な場合には、誤嚥が起こりにくいように、食べ物の硬さや形状を工夫します。水のようなものは誤嚥しやすいためトロミを付けることなどが、その代表例です。ある程度以上の嚥下障害があると、経口のみでは栄養摂取が不十分になるため、ほかの栄養補給法に頼らざるを得ません。栄養摂取については、高カロリー輸液を静脈内に投与する方法や、さまざまな経管栄養が発達してきており、生活スタイルに合わせてある程度の選択が可能です。
一方、誤嚥の防止は非常に難しい問題になってきます。誤嚥は肺炎を引き起こし、生命の危険を招く可能性があります。厄介なことに、肺炎の発症は誤嚥の程度だけで決定されるものではありません。誤嚥物の性質、気道からの吐き出す力、肺の状態や全身状態などが複雑にかかわり、場合によっては少量の誤嚥でも肺炎を起こします。
必要に応じ、嚥下リハビリテーション(嚥下訓練)や口腔ケアで、嚥下機能を保持したり、改善させたりすることを図ります。改善しないケースでは、肺炎すなわち誤嚥を防止するために、気管切開を行った上でカフ付きの気管カニューレという器具を装着することが必要な場合もあります。嚥下障害の改善や誤嚥防止を目的として、手術治療が行われることもあります。誤嚥をできるだけ少なくして経口摂取を可能にしようとする嚥下機能改善手術と、誤嚥をなくすことを主眼とした気道と食道を分離する誤嚥防止手術に大別されます。
嚥下機能改善手術だけで嚥下機能が完全に回復するわけではないので、食事を取るためには術後の嚥下リハビリテーションが必須です。誤嚥防止手術では発声機能が失われるリスクがあるため、手術には医師による慎重な判断と、患者、家族の理解が必要となります。
嚥下(えんげ)障害とは、食べ物や水分を口の中に取り込んでから飲み込むまでの過程が正常に機能しない状態。嚥下困難、摂食嚥下障害とも呼ばれます。
物を食べることは、食べ物を認識し、口に入れ、噛(か)んで、飲み込むまでの一連の動作からなります。このうちの飲み込むという動作が、嚥下に当たります。
嚥下は、主に舌の運動により食べ物を口腔(こうくう)から咽頭(いんとう)に送る口腔期、嚥下反射により食べ物を咽頭から食道に送る咽頭期、食道の蠕動(ぜんどう)運動により胃まで運ぶ食道期に分けられます。嚥下には多くの器官がかかわっており、これらが障害を受けるさまざまな疾患で、嚥下障害が起こります。
嚥下障害が起こると、食物摂取障害による栄養低下と、食べ物が気道へ流入する誤嚥による嚥下性肺炎(誤嚥性肺炎)が問題になります。
嚥下障害を引き起こす疾患にはさまざまなものがありますが、脳出血や脳梗塞(こうそく)、認知症、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症などが原因となることがあります。
嚥下する際には嚥下にかかわる筋力が必要となるため、筋ジストロフィーや重症筋無力症などで筋力が低下することが原因となります。
加齢により咀嚼(そしゃく)や嚥下に必要な筋力が衰えるのも、原因の一つです。加齢に伴い唾液(だえき)が少なくなったり、歯の本数が少なくなったりすることから食べ物を噛みにくくなることも、原因として挙げられます。筋力が低下すると飲み込む時に気道を閉じることができなくなり、食べ物が気管に入りやすくなります。高齢者の肺炎のかなりの部分は、加齢による嚥下機能の低下による誤嚥によって引き起こされるともいわれています。嚥下性肺炎を発症すると、発熱、咳(せき)や痰(たん)の増加、呼吸回数の増加、息苦しさなどを認めます。
そのほか、口腔がんや咽頭がんなどの悪性腫瘍(しゅよう)や、口唇口蓋(こうがい)裂、精神的要因、薬剤、環境要因、姿勢なども嚥下障害の原因となります。
嚥下障害を起こすと、食べ物が飲み込みにくい、飲み込めない、つかえるとの自覚や、食事の時のむせ込みなどの症状が現れます。明らかな症状がないこともありますが、食事の状態で判断することもできます。固い物、ぱさついた物、まとまりのない物、味噌(みそ)汁など固形物と水物の混合した物は飲み込みにくい食べ物であり、食事に時間がかかるようになります。
誤嚥の有無は、食べ物を飲み込んだ後の咳や、食後によく痰が出るなどからも判断できます。声質の変化もよくみられる症状で、食べ物を飲み込んだ後に声がかすれたり、口腔内に食べ物が残留することから痰が絡みやすくなり、がらがらした声になったりします。
嚥下障害の検査と診断と治療
耳鼻咽喉(いんこう)科、飲みこみ外来、嚥下外来などの医師による診断では、精神機能や身体機能も含めた全身状態をチェックします。次に口腔・咽喉頭の所見から、おおよその嚥下機能を判断します。舌の運動性は口腔期の食べ物の移動に、咽頭の知覚は咽頭期を引き起こすのに重要です。
口腔から咽頭にかけては比較的簡単に観察できますが、下咽頭や喉頭の機能を確認するには、喉頭ファイバースコープなどの内視鏡検査が必要になります。実際に食べ物などを嚥下させて誤嚥などを検出する検査には、嚥下内視鏡検査があります。また、実際に食べ物がどのように飲み込まれるかを調べる方法としては、造影剤を用いて嚥下状態をX線透視下に観察する嚥下造影検査があり、現在では最も信頼性の高い方法と考えられています。
耳鼻咽喉科、飲みこみ外来、嚥下外来などの医師による治療では、嚥下障害を引き起こす原因があればそれを取り除くことが重要です。また、嚥下障害の程度により、栄養摂取と誤嚥防止の観点から対応や治療法を決定します。
嚥下障害が軽度な場合には、誤嚥が起こりにくいように、食べ物の硬さや形状を工夫します。水のようなものは誤嚥しやすいためトロミを付けることなどが、その代表例です。ある程度以上の嚥下障害があると、経口のみでは栄養摂取が不十分になるため、ほかの栄養補給法に頼らざるを得ません。栄養摂取については、高カロリー輸液を静脈内に投与する方法や、さまざまな経管栄養が発達してきており、生活スタイルに合わせてある程度の選択が可能です。
一方、誤嚥の防止は非常に難しい問題になってきます。誤嚥は肺炎を引き起こし、生命の危険を招く可能性があります。厄介なことに、肺炎の発症は誤嚥の程度だけで決定されるものではありません。誤嚥物の性質、気道からの吐き出す力、肺の状態や全身状態などが複雑にかかわり、場合によっては少量の誤嚥でも肺炎を起こします。
必要に応じ、嚥下リハビリテーション(嚥下訓練)や口腔ケアで、嚥下機能を保持したり、改善させたりすることを図ります。改善しないケースでは、肺炎すなわち誤嚥を防止するために、気管切開を行った上でカフ付きの気管カニューレという器具を装着することが必要な場合もあります。嚥下障害の改善や誤嚥防止を目的として、手術治療が行われることもあります。誤嚥をできるだけ少なくして経口摂取を可能にしようとする嚥下機能改善手術と、誤嚥をなくすことを主眼とした気道と食道を分離する誤嚥防止手術に大別されます。
嚥下機能改善手術だけで嚥下機能が完全に回復するわけではないので、食事を取るためには術後の嚥下リハビリテーションが必須です。誤嚥防止手術では発声機能が失われるリスクがあるため、手術には医師による慎重な判断と、患者、家族の理解が必要となります。
■用語 エリテマトーデス [用語(え)]
膠原病の一つで、顔面などに生じる紅斑を主症状とする疾患
エリテマトーデスとは、顔面などに生じる紅斑(こうはん、エリテマ)を主症状とする疾患。紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)とも呼ばれます。
膠原(こうげん)病の一つで、自己免疫性疾患のうち最も代表的なものです。
急性で全身が侵される全身性エリテマトーデスと、慢性で皮膚に限局して円形の紅斑が現れる円板状エリテマトーデスに大別され、この間に中間型、移行型があります。
全身性エリテマトーデスは全身に症状が現れる膠原病の一つ
全身性エリテマトーデスは、全身に症状が現れる疾患で、代表的な膠原病の一つ。全身性紅斑性狼瘡とも呼ばれます。
現在の日本では10万人に7〜8人の発症率で、発症しやすい年齢は20歳〜40歳、その90パーセントは女性です。
発症させる原因は、まだ解明されていません。体質、素因、免疫の異常、環境因子が関係して発症すると推定されています。免疫の異常は、自分の体の成分に対して反応する異常であるために、自己抗体が血液中にみられます。特に抗核抗体、中でもDNA(デオキシリボ核酸)に対する抗体が血液中に現れるのが、特徴です。
全身性エリテマトーデスを発症させる誘因には、海水浴やスキーなどで強い紫外線を浴びたり、薬剤、ウイルス感染、外傷、ストレス、さらには妊娠、出産などがあります。
全身性エリテマトーデスの最も特徴的な症状は、皮膚の露出部に赤い斑点である紅斑が現れることです。顔では鼻を中心に両側の頬(ほお)にかけて、蝶(ちょう)が羽を広げたような形の蝶型紅斑ができます。また、手のひら、つめの周囲、足の裏、胸にも紅斑がみられます。
紅斑は厚く盛り上がることもありますが、痛みやかゆみはありません。ただし、紅斑が治った跡に瘢痕(はんこん)が残ったり、色素沈着や色素脱失になることがあります。
髪の毛が抜けたり、つめが変形したり、日光に当たるとひどい日焼けをして火膨れができる光線過敏症などもみられます。寒冷刺激や精神的ストレスに反応して、手や足の指が真っ白になったり、青紫色になったりし、しびれ、冷感、痛みなどの症状を伴うレイノー現象も、よくみられます。
内臓に現れる症状では、腎(じん)臓がよく侵されます。これはループス腎炎と呼ばれ、むくみや蛋白(たんぱく)尿がみられますが、初期には症状として出にくいため要注意。心膜や胸膜に炎症が起こることもあり、胸痛、発熱を起こします。
脳や神経に障害が起こると、けいれん、まひがみられることもあります。関節痛もみられますが、関節リウマチのような関節の変形、運動機能の障害はありません。
全身性エリテマトーデスの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、免疫血清や血液の検査を行います。免疫血清検査では、全身性エリテマトーデスに高頻度にみられる血清中の抗核抗体を調べます。また、血液検査によって、貧血の程度や白血球減少、血小板減少の有無を調べます。
そのほか、尿や血液の検査によって、ループス腎炎やネフローゼ症候群、腎臓の機能障害が起こっていないかを調べます。また、侵された臓器の病状を知るために、必要に応じてX線検査、CT検査、MRI検査、心電図などの検査を行います。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療においては、内臓の炎症にはステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)が有効で、効果を発揮しています。炎症が強くて症状が重い場合には、大量に投与され、症状が安定すれば徐々に量を減らしていきます。腎臓に障害が現れた場合には、免疫抑制剤が用いられたり、血漿(けっしょう)交換療法が行われることもあります。
ステロイド薬の使用により、予後はかなり改善しましたが、治療に用いられる薬はいずれも副作用があります。加えて、いつ、どれぐらいの期間をかけて投与量を減らすかが非常に難しいため、医師の指示を守って治療を続けることが大切。腎臓の機能低下が起こった場合には、血液透析が必要になります。
生活上の注意としては、全身性エリテマトーデスを発症させる誘因があると悪化するため、強い紫外線や感染症には細心の配慮が必要です。治療のためにステロイド薬を使うと感染症にかかりやすくなるため、清潔を心掛け、インフルエンザが流行している時期は人込みを避けるなど、注意します。
比較的若い女性がかかることが多いため、妊娠や出産の問題があった際には、医師に相談します。病状が安定していれば、妊娠、出産は十分に可能です。また、経済的な問題では、全身性エリテマトーデスは厚生労働省の特定疾患に認定されているので、医療費の助成を受けることができます。
円板状エリテマトーデスは皮膚限局型エリテマトーデスの一つ
円板状エリテマトーデスは、日光露出部である頭部、顔面、四肢などに、円板状の紅斑が好発する原因不明の皮膚疾患。慢性円板状エリテマトーデス、円板状紅斑性狼瘡とも呼ばれます。
膠原病の代表的な疾患で全身性の症状を伴う全身性エリテマトーデスと異なり、皮膚症状のみ出現する皮膚限局型エリテマトーデスの1つであり、慢性型のサブタイプに相当します。皮膚限局型エリテマトーデスには、急性型、亜急性型、中間型のサブタイプもあります。
円板状エリテマトーデスの症状は、類円形ないし不整形で、魚の鱗(うろこ)のようにはがれる鱗屑(りんせつ)を伴う円板状の紅斑が多発することを特徴とします。
円板状の紅斑は境目がはっきりしていて、頬、鼻、下唇、頭部など、日光が当たる部位にできます。皮膚面より少し盛り上がり、中心部は硬くなったり委縮していたりして、引きつったようになっています。口唇に症状が出る時はびらん、頭皮に症状が出る時は脱毛を伴うことがあります。また、かいたり刺激を与えたりすると、その部位に新たな円板状の紅斑が広がる傾向にあります。
この皮膚病変は、治癒過程で色素沈着ないし色素脱失、委縮を生じ、瘢痕を残します。ほかの症状として、発熱や倦怠(けんたい)感がみられることもあります。
全身性エリテマトーデスと異なり、全身の臓器障害はみられませんが、一部が全身性エリテマトーデスへ移行することがあります。全身性エリテマトーデスへ移行すると、円板状の紅斑が全身に広がり、内臓の炎症、腎臓の機能障害が起こります。
円板状エリテマトーデスは、35~45歳の女性が発症しやすいとされています。
現在のところ、円板状エリテマトーデスを発症する原因はわかっていません、しかし、紫外線や寒冷刺激、美容整形、妊娠・出産、タバコ、ウイルス感染、薬物などが関係していると考えられています。
全身性エリテマトーデスは、免疫システムが自己の細胞を攻撃する自己免疫が原因だとされていますが、円板状エリテマトーデスは自己免疫とは無関係と考えられています。皮膚が抗原刺激や物理的刺激を受けることで、白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種であるT細胞が増殖し、細胞間で情報を伝えるタンパク質であるサイトカインの生成が促進され、症状が現れると推測されています。遺伝との関係は、親族内や双子で発症する例が少ないことから、可能性は低いと考えられています。
円板状の紅斑ができて治りにくい場合、円板状エリテマトーデスの可能性があります。日光を避けて、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診しましょう。治った後でも、まれに皮膚がんである有棘(ゆうきょく)細胞がんの発生母地となることがあるため、症状が軽くてもしっかり治療をすることが大切となります。
円板状エリテマトーデスの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、視診をした上で、皮膚生検といって皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる検査を行い、円板状エリテマトーデスと確定します。
血液検査を行うこともありますが、発症者の多くはほかの臓器に変化を伴わず正常です。しかし、一部の患者では、血液沈降速度(血沈)の高進、抗核抗体陽性、白血球減少がみられ、全身性エリテマトーデスに移行することがあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、瘢痕が残った皮膚病変を治すことはできませんが、新しい円板状の紅斑が広がらずに限られた範囲にできている場合は、ステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)の軟こうを直接塗ることが一般的です。目立つほど顔にできている場合や、頭皮の脱毛がひどい場合は、内服のステロイド薬を使用します。
また、内服薬ではヒドロキシクロロキンなどのマラリア治療薬が皮膚症状に有効であり、欧米では第1選択薬の1つです。以前の日本では副作用のために使用が禁止され保険適応がありませんでしたが、2015年に承認されました。ヒドロキシクロロキンの長期間の効果としては半数弱の人に有効であり、残りの半分強は、内服のステロイド薬などが必要になります。
免疫抑制剤の1つであるレクチゾールやミゾリビンの内服も有効なことがわかっていますが、貧血などの副作用が現れやすいため、慎重に使用する必要があります。
全身性エリテマトーデスを合併する場合には、内臓の炎症に対して内服のステロイド薬が有効で、効果を発揮しています。炎症が強くて症状が重い場合には、大量に投与し、症状が安定すれば徐々に量を減らしていきます。腎臓の障害に対して、免疫抑制剤を用いたり、血漿交換療法を行うこともあります。
円板状エリテマトーデスの悪化を防ぐためには、紫外線を避ける必要があります。肌の露出を控えるために、日焼け止めや帽子、サングラス、長袖(ながそで)などの対策が大切です。肌に過剰な刺激を与えることも悪影響なので、かゆみがある時でもかいたり刺激を与えないように気を付ける必要があります。薬を塗る時なども、手を洗い清潔な状態で塗るようにします。
寒冷による刺激も極力受けないほうがいいため、しっかりと防寒することが重要で、夏場は清潔な服を着る、通気性のよい天然素材の洋服を着るなどの対策も大切です。加えて、ストレスを避け、適度な運動と休養をとり、バランスのとれた食事をします。
エリテマトーデスとは、顔面などに生じる紅斑(こうはん、エリテマ)を主症状とする疾患。紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)とも呼ばれます。
膠原(こうげん)病の一つで、自己免疫性疾患のうち最も代表的なものです。
急性で全身が侵される全身性エリテマトーデスと、慢性で皮膚に限局して円形の紅斑が現れる円板状エリテマトーデスに大別され、この間に中間型、移行型があります。
全身性エリテマトーデスは全身に症状が現れる膠原病の一つ
全身性エリテマトーデスは、全身に症状が現れる疾患で、代表的な膠原病の一つ。全身性紅斑性狼瘡とも呼ばれます。
現在の日本では10万人に7〜8人の発症率で、発症しやすい年齢は20歳〜40歳、その90パーセントは女性です。
発症させる原因は、まだ解明されていません。体質、素因、免疫の異常、環境因子が関係して発症すると推定されています。免疫の異常は、自分の体の成分に対して反応する異常であるために、自己抗体が血液中にみられます。特に抗核抗体、中でもDNA(デオキシリボ核酸)に対する抗体が血液中に現れるのが、特徴です。
全身性エリテマトーデスを発症させる誘因には、海水浴やスキーなどで強い紫外線を浴びたり、薬剤、ウイルス感染、外傷、ストレス、さらには妊娠、出産などがあります。
全身性エリテマトーデスの最も特徴的な症状は、皮膚の露出部に赤い斑点である紅斑が現れることです。顔では鼻を中心に両側の頬(ほお)にかけて、蝶(ちょう)が羽を広げたような形の蝶型紅斑ができます。また、手のひら、つめの周囲、足の裏、胸にも紅斑がみられます。
紅斑は厚く盛り上がることもありますが、痛みやかゆみはありません。ただし、紅斑が治った跡に瘢痕(はんこん)が残ったり、色素沈着や色素脱失になることがあります。
髪の毛が抜けたり、つめが変形したり、日光に当たるとひどい日焼けをして火膨れができる光線過敏症などもみられます。寒冷刺激や精神的ストレスに反応して、手や足の指が真っ白になったり、青紫色になったりし、しびれ、冷感、痛みなどの症状を伴うレイノー現象も、よくみられます。
内臓に現れる症状では、腎(じん)臓がよく侵されます。これはループス腎炎と呼ばれ、むくみや蛋白(たんぱく)尿がみられますが、初期には症状として出にくいため要注意。心膜や胸膜に炎症が起こることもあり、胸痛、発熱を起こします。
脳や神経に障害が起こると、けいれん、まひがみられることもあります。関節痛もみられますが、関節リウマチのような関節の変形、運動機能の障害はありません。
全身性エリテマトーデスの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、免疫血清や血液の検査を行います。免疫血清検査では、全身性エリテマトーデスに高頻度にみられる血清中の抗核抗体を調べます。また、血液検査によって、貧血の程度や白血球減少、血小板減少の有無を調べます。
そのほか、尿や血液の検査によって、ループス腎炎やネフローゼ症候群、腎臓の機能障害が起こっていないかを調べます。また、侵された臓器の病状を知るために、必要に応じてX線検査、CT検査、MRI検査、心電図などの検査を行います。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療においては、内臓の炎症にはステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)が有効で、効果を発揮しています。炎症が強くて症状が重い場合には、大量に投与され、症状が安定すれば徐々に量を減らしていきます。腎臓に障害が現れた場合には、免疫抑制剤が用いられたり、血漿(けっしょう)交換療法が行われることもあります。
ステロイド薬の使用により、予後はかなり改善しましたが、治療に用いられる薬はいずれも副作用があります。加えて、いつ、どれぐらいの期間をかけて投与量を減らすかが非常に難しいため、医師の指示を守って治療を続けることが大切。腎臓の機能低下が起こった場合には、血液透析が必要になります。
生活上の注意としては、全身性エリテマトーデスを発症させる誘因があると悪化するため、強い紫外線や感染症には細心の配慮が必要です。治療のためにステロイド薬を使うと感染症にかかりやすくなるため、清潔を心掛け、インフルエンザが流行している時期は人込みを避けるなど、注意します。
比較的若い女性がかかることが多いため、妊娠や出産の問題があった際には、医師に相談します。病状が安定していれば、妊娠、出産は十分に可能です。また、経済的な問題では、全身性エリテマトーデスは厚生労働省の特定疾患に認定されているので、医療費の助成を受けることができます。
円板状エリテマトーデスは皮膚限局型エリテマトーデスの一つ
円板状エリテマトーデスは、日光露出部である頭部、顔面、四肢などに、円板状の紅斑が好発する原因不明の皮膚疾患。慢性円板状エリテマトーデス、円板状紅斑性狼瘡とも呼ばれます。
膠原病の代表的な疾患で全身性の症状を伴う全身性エリテマトーデスと異なり、皮膚症状のみ出現する皮膚限局型エリテマトーデスの1つであり、慢性型のサブタイプに相当します。皮膚限局型エリテマトーデスには、急性型、亜急性型、中間型のサブタイプもあります。
円板状エリテマトーデスの症状は、類円形ないし不整形で、魚の鱗(うろこ)のようにはがれる鱗屑(りんせつ)を伴う円板状の紅斑が多発することを特徴とします。
円板状の紅斑は境目がはっきりしていて、頬、鼻、下唇、頭部など、日光が当たる部位にできます。皮膚面より少し盛り上がり、中心部は硬くなったり委縮していたりして、引きつったようになっています。口唇に症状が出る時はびらん、頭皮に症状が出る時は脱毛を伴うことがあります。また、かいたり刺激を与えたりすると、その部位に新たな円板状の紅斑が広がる傾向にあります。
この皮膚病変は、治癒過程で色素沈着ないし色素脱失、委縮を生じ、瘢痕を残します。ほかの症状として、発熱や倦怠(けんたい)感がみられることもあります。
全身性エリテマトーデスと異なり、全身の臓器障害はみられませんが、一部が全身性エリテマトーデスへ移行することがあります。全身性エリテマトーデスへ移行すると、円板状の紅斑が全身に広がり、内臓の炎症、腎臓の機能障害が起こります。
円板状エリテマトーデスは、35~45歳の女性が発症しやすいとされています。
現在のところ、円板状エリテマトーデスを発症する原因はわかっていません、しかし、紫外線や寒冷刺激、美容整形、妊娠・出産、タバコ、ウイルス感染、薬物などが関係していると考えられています。
全身性エリテマトーデスは、免疫システムが自己の細胞を攻撃する自己免疫が原因だとされていますが、円板状エリテマトーデスは自己免疫とは無関係と考えられています。皮膚が抗原刺激や物理的刺激を受けることで、白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種であるT細胞が増殖し、細胞間で情報を伝えるタンパク質であるサイトカインの生成が促進され、症状が現れると推測されています。遺伝との関係は、親族内や双子で発症する例が少ないことから、可能性は低いと考えられています。
円板状の紅斑ができて治りにくい場合、円板状エリテマトーデスの可能性があります。日光を避けて、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診しましょう。治った後でも、まれに皮膚がんである有棘(ゆうきょく)細胞がんの発生母地となることがあるため、症状が軽くてもしっかり治療をすることが大切となります。
円板状エリテマトーデスの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、視診をした上で、皮膚生検といって皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる検査を行い、円板状エリテマトーデスと確定します。
血液検査を行うこともありますが、発症者の多くはほかの臓器に変化を伴わず正常です。しかし、一部の患者では、血液沈降速度(血沈)の高進、抗核抗体陽性、白血球減少がみられ、全身性エリテマトーデスに移行することがあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、瘢痕が残った皮膚病変を治すことはできませんが、新しい円板状の紅斑が広がらずに限られた範囲にできている場合は、ステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)の軟こうを直接塗ることが一般的です。目立つほど顔にできている場合や、頭皮の脱毛がひどい場合は、内服のステロイド薬を使用します。
また、内服薬ではヒドロキシクロロキンなどのマラリア治療薬が皮膚症状に有効であり、欧米では第1選択薬の1つです。以前の日本では副作用のために使用が禁止され保険適応がありませんでしたが、2015年に承認されました。ヒドロキシクロロキンの長期間の効果としては半数弱の人に有効であり、残りの半分強は、内服のステロイド薬などが必要になります。
免疫抑制剤の1つであるレクチゾールやミゾリビンの内服も有効なことがわかっていますが、貧血などの副作用が現れやすいため、慎重に使用する必要があります。
全身性エリテマトーデスを合併する場合には、内臓の炎症に対して内服のステロイド薬が有効で、効果を発揮しています。炎症が強くて症状が重い場合には、大量に投与し、症状が安定すれば徐々に量を減らしていきます。腎臓の障害に対して、免疫抑制剤を用いたり、血漿交換療法を行うこともあります。
円板状エリテマトーデスの悪化を防ぐためには、紫外線を避ける必要があります。肌の露出を控えるために、日焼け止めや帽子、サングラス、長袖(ながそで)などの対策が大切です。肌に過剰な刺激を与えることも悪影響なので、かゆみがある時でもかいたり刺激を与えないように気を付ける必要があります。薬を塗る時なども、手を洗い清潔な状態で塗るようにします。
寒冷による刺激も極力受けないほうがいいため、しっかりと防寒することが重要で、夏場は清潔な服を着る、通気性のよい天然素材の洋服を着るなどの対策も大切です。加えて、ストレスを避け、適度な運動と休養をとり、バランスのとれた食事をします。
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■用語 円板状エリテマトーデス [用語(え)]
皮膚限局型エリテマトーデスの1つで、慢性型のサブタイプに属する皮膚疾患
円板状エリテマトーデスとは、日光露出部である頭部、顔面、四肢などに、円板状の紅斑(こうはん)が好発する原因不明の皮膚疾患。慢性円板状エリテマトーデス、円板状紅斑性狼瘡(ろうそう)とも呼ばれます。
膠原(こうげん)病の代表的な疾患で全身性の症状を伴う全身性エリテマトーデスと異なり、皮膚症状のみ出現する皮膚限局型エリテマトーデスの1つであり、慢性型のサブタイプに相当します。皮膚限局型エリテマトーデスには、急性型、亜急性型、中間型のサブタイプもあります。
円板状エリテマトーデスの症状は、類円形ないし不整形で、魚の鱗(うろこ)のようにはがれる鱗屑(りんせつ)を伴う円板状の紅斑が多発することを特徴とします。
円板状の紅斑は境目がはっきりしていて、頬(ほお)、鼻、下唇、頭部など、日光が当たる部位にできます。皮膚面より少し盛り上がり、中心部は硬くなったり委縮していたりして、引きつったようになっています。口唇に症状が出る時はびらん、頭皮に症状が出る時は脱毛を伴うことがあります。また、かいたり刺激を与えたりすると、その部位に新たな円板状の紅斑が広がる傾向にあります。
この皮膚病変は、治癒過程で色素沈着ないし色素脱失、委縮を生じ、瘢痕(はんこん)を残します。ほかの症状として、発熱や倦怠(けんたい)感がみられることもあります。
全身性エリテマトーデスと異なり、全身の臓器障害はみられませんが、一部が全身性エリテマトーデスへ移行することがあります。全身性エリテマトーデスへ移行すると、円板状の紅斑が全身に広がり、内臓の炎症、腎臓(じんぞう)の機能障害が起こります。
円板状エリテマトーデスは、35~45歳の女性が発症しやすいとされています。
現在のところ、円板状エリテマトーデスを発症する原因はわかっていません、しかし、紫外線や寒冷刺激、美容整形、妊娠・出産、タバコ、ウイルス感染、薬物などが関係していると考えられています。
全身性エリテマトーデスは、免疫システムが自己の細胞を攻撃する自己免疫が原因だとされていますが、円板状エリテマトーデスは自己免疫とは無関係と考えられています。皮膚が抗原刺激や物理的刺激を受けることで、白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種であるT細胞が増殖し、細胞間で情報を伝えるタンパク質であるサイトカインの生成が促進され、症状が現れると推測されています。遺伝との関係は、親族内や双子で発症する例が少ないことから、可能性は低いと考えられています。
円板状の紅斑ができて治りにくい場合、円板状エリテマトーデスの可能性があります。日光を避けて、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診しましょう。治った後でも、まれに皮膚がんである有棘(ゆうきょく)細胞がんの発生母地となることがあるため、症状が軽くてもしっかり治療をすることが大切となります。
円板状エリテマトーデスの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、視診をした上で、皮膚生検といって皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる検査を行い、円板状エリテマトーデスと確定します。
血液検査を行うこともありますが、発症者の多くはほかの臓器に変化を伴わず正常です。しかし、一部の患者では、血液沈降速度(血沈)の高進、抗核抗体陽性、白血球減少がみられ、全身性エリテマトーデスに移行することがあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、瘢痕が残った皮膚病変を治すことはできませんが、新しい円板状の紅斑が広がらずに限られた範囲にできている場合は、ステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)の軟こうを直接塗ることが一般的です。目立つほど顔にできている場合や、頭皮の脱毛がひどい場合は、内服のステロイド薬を使用します。
また、内服薬ではヒドロキシクロロキンなどのマラリア治療薬が皮膚症状に有効であり、欧米では第1選択薬の1つです。以前の日本では副作用のために使用が禁止され保険適応がありませんでしたが、2015年に承認されました。ヒドロキシクロロキンの長期間の効果としては半数弱の人に有効であり、残りの半分強は、内服のステロイド薬などが必要になります。
免疫抑制剤の1つであるレクチゾールやミゾリビンの内服も有効なことがわかっていますが、貧血などの副作用が現れやすいため、慎重に使用する必要があります。
全身性エリテマトーデスを合併する場合には、内臓の炎症に対して内服のステロイド薬が有効で、効果を発揮しています。炎症が強くて症状が重い場合には、大量に投与し、症状が安定すれば徐々に量を減らしていきます。腎臓の障害に対して、免疫抑制剤を用いたり、血漿(けっしょう)交換療法を行うこともあります。
円板状エリテマトーデスの悪化を防ぐためには、紫外線を避ける必要があります。肌の露出を控えるために、日焼け止めや帽子、サングラス、長袖(ながそで)などの対策が大切です。肌に過剰な刺激を与えることも悪影響なので、かゆみがある時でもかいたり刺激を与えないように気を付ける必要があります。薬を塗る時なども、手を洗い清潔な状態で塗るようにします。
寒冷による刺激も極力受けないほうがいいため、しっかりと防寒することが重要で、夏場は清潔な服を着る、通気性のよい天然素材の洋服を着るなどの対策も大切です。加えて、ストレスを避け、適度な運動と休養をとり、バランスのとれた食事をします。
円板状エリテマトーデスとは、日光露出部である頭部、顔面、四肢などに、円板状の紅斑(こうはん)が好発する原因不明の皮膚疾患。慢性円板状エリテマトーデス、円板状紅斑性狼瘡(ろうそう)とも呼ばれます。
膠原(こうげん)病の代表的な疾患で全身性の症状を伴う全身性エリテマトーデスと異なり、皮膚症状のみ出現する皮膚限局型エリテマトーデスの1つであり、慢性型のサブタイプに相当します。皮膚限局型エリテマトーデスには、急性型、亜急性型、中間型のサブタイプもあります。
円板状エリテマトーデスの症状は、類円形ないし不整形で、魚の鱗(うろこ)のようにはがれる鱗屑(りんせつ)を伴う円板状の紅斑が多発することを特徴とします。
円板状の紅斑は境目がはっきりしていて、頬(ほお)、鼻、下唇、頭部など、日光が当たる部位にできます。皮膚面より少し盛り上がり、中心部は硬くなったり委縮していたりして、引きつったようになっています。口唇に症状が出る時はびらん、頭皮に症状が出る時は脱毛を伴うことがあります。また、かいたり刺激を与えたりすると、その部位に新たな円板状の紅斑が広がる傾向にあります。
この皮膚病変は、治癒過程で色素沈着ないし色素脱失、委縮を生じ、瘢痕(はんこん)を残します。ほかの症状として、発熱や倦怠(けんたい)感がみられることもあります。
全身性エリテマトーデスと異なり、全身の臓器障害はみられませんが、一部が全身性エリテマトーデスへ移行することがあります。全身性エリテマトーデスへ移行すると、円板状の紅斑が全身に広がり、内臓の炎症、腎臓(じんぞう)の機能障害が起こります。
円板状エリテマトーデスは、35~45歳の女性が発症しやすいとされています。
現在のところ、円板状エリテマトーデスを発症する原因はわかっていません、しかし、紫外線や寒冷刺激、美容整形、妊娠・出産、タバコ、ウイルス感染、薬物などが関係していると考えられています。
全身性エリテマトーデスは、免疫システムが自己の細胞を攻撃する自己免疫が原因だとされていますが、円板状エリテマトーデスは自己免疫とは無関係と考えられています。皮膚が抗原刺激や物理的刺激を受けることで、白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種であるT細胞が増殖し、細胞間で情報を伝えるタンパク質であるサイトカインの生成が促進され、症状が現れると推測されています。遺伝との関係は、親族内や双子で発症する例が少ないことから、可能性は低いと考えられています。
円板状の紅斑ができて治りにくい場合、円板状エリテマトーデスの可能性があります。日光を避けて、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診しましょう。治った後でも、まれに皮膚がんである有棘(ゆうきょく)細胞がんの発生母地となることがあるため、症状が軽くてもしっかり治療をすることが大切となります。
円板状エリテマトーデスの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、視診をした上で、皮膚生検といって皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる検査を行い、円板状エリテマトーデスと確定します。
血液検査を行うこともありますが、発症者の多くはほかの臓器に変化を伴わず正常です。しかし、一部の患者では、血液沈降速度(血沈)の高進、抗核抗体陽性、白血球減少がみられ、全身性エリテマトーデスに移行することがあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、瘢痕が残った皮膚病変を治すことはできませんが、新しい円板状の紅斑が広がらずに限られた範囲にできている場合は、ステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)の軟こうを直接塗ることが一般的です。目立つほど顔にできている場合や、頭皮の脱毛がひどい場合は、内服のステロイド薬を使用します。
また、内服薬ではヒドロキシクロロキンなどのマラリア治療薬が皮膚症状に有効であり、欧米では第1選択薬の1つです。以前の日本では副作用のために使用が禁止され保険適応がありませんでしたが、2015年に承認されました。ヒドロキシクロロキンの長期間の効果としては半数弱の人に有効であり、残りの半分強は、内服のステロイド薬などが必要になります。
免疫抑制剤の1つであるレクチゾールやミゾリビンの内服も有効なことがわかっていますが、貧血などの副作用が現れやすいため、慎重に使用する必要があります。
全身性エリテマトーデスを合併する場合には、内臓の炎症に対して内服のステロイド薬が有効で、効果を発揮しています。炎症が強くて症状が重い場合には、大量に投与し、症状が安定すれば徐々に量を減らしていきます。腎臓の障害に対して、免疫抑制剤を用いたり、血漿(けっしょう)交換療法を行うこともあります。
円板状エリテマトーデスの悪化を防ぐためには、紫外線を避ける必要があります。肌の露出を控えるために、日焼け止めや帽子、サングラス、長袖(ながそで)などの対策が大切です。肌に過剰な刺激を与えることも悪影響なので、かゆみがある時でもかいたり刺激を与えないように気を付ける必要があります。薬を塗る時なども、手を洗い清潔な状態で塗るようにします。
寒冷による刺激も極力受けないほうがいいため、しっかりと防寒することが重要で、夏場は清潔な服を着る、通気性のよい天然素材の洋服を着るなどの対策も大切です。加えて、ストレスを避け、適度な運動と休養をとり、バランスのとれた食事をします。
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