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■用語 腱黄色腫 [用語(け)]

[ダイヤ]外力の加わりやすい皮膚表面に近い腱が肥厚する状態
 腱黄色腫(けんおうしょくしゅ)とは、筋肉を骨に結び付けている強い組織である腱のうち、皮膚表面に近い腱がはれて、厚くなる状態。
 腱黄色腫の本体は、血漿(けっしょう)中のリポ蛋白(たんぱく)質という脂肪と蛋白質の結合物を取り込んで、脂肪分をためたマクロファージ由来の泡沫(ほうまつ)細胞が集合して、腱に浸潤したものです。
 このため、生活習慣病や遺伝要素、体質などによる高脂血症(高リポ蛋白血症、脂質異常症)の人に出現することが多いのですが、高脂血症と関係なく出現する場合もあります。
 外力の加わりやすいアキレス腱、手指伸筋腱、肘(ひじ)の腱、膝(ひざ)の腱に好発します。 特に、アキレス腱のはれ上がりとして認められることが多く、アキレス腱の厚みが1センチ以上あって血中コレステロール値の高い場合は、家族性高コレステロール血症である可能性が高いと考えられます。家族性III型高脂血症でも典型的な場合は、腱黄色腫ができます。
 痛みやかゆみなどの自覚症状は通常ないものの、時に痛みを伴うこともあります。通常は、皮膚表面が黄ばみを帯びた柔らかな膨らみとして見えたり、はれ上がっていたりします。太った人では、肌触りが少しほかの部分と違って柔らかいと感じる程度の膨らみとして見えます。
 腱黄色腫が原因でアキレス腱周囲炎を示す場合には、安静にしていても徐々に腱が肥大して、踵(かかと)の上が痛みを伴ってはれる傾向があります。
 腱黄色腫に気付いたら、皮膚科、ないし形成外科、内科を受診します。高脂血症の人の場合は、四肢の腱だけではなく、皮膚、まぶたや全身のいろいろな臓器に黄色腫がみられ、虚血性心疾患や心筋梗塞(こうそく)の可能性もありますので、循環器内科を受診することが勧められます。
[ハート]腱黄色腫の検査と診断と治療
 皮膚科、ないし形成外科、内科、循環器内科の医師による診断では、皮膚所見の視診、皮下の触診、肥厚の部位と成育経過で判断します。
 アキレス腱の場合は、腱黄色腫として出現する前に腱の幅が増し、簡単に触知することができます。X線(レントゲン)軟線撮影を行って、正確に肥厚度を測定し、その最大幅が9ミリ以上であれば、アキレス腱の肥厚が存在すると判断します。MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、腱が膨らんでいるのがよくわかり、変性の程度などの詳細もわかります。
 確実な診断には、黄色腫の一部を切除して組織検査を行い泡沫細胞の存在を証明することが必要ですが、通常は生検を行うケースはあまりありません。高脂血症(脂質異常症)の検査で、高脂血症に伴うものかどうかを区別します。動脈硬化性疾患の合併も調べます。
 皮膚科、ないし形成外科、内科、循環器内科の医師による治療では、血液中のコレステロール値が高い人に対しては、まず第一に高脂血症の治療として、食餌(しょくじ)療法と薬物療法を行ないます。
 食餌療法では、高脂血症のタイプに従って、欧米風の高カロリー食品やコレステロール値の高い食品、脂分の多いファーストフードの過剰な摂取を制限します。そして、野菜や果物、魚といった低カロリー食や低脂肪食、低炭水化物食を中心とした食生活に切り替えます。
 薬物治療では、抗高脂血症剤のプロブコール(シンレスタール、ロレルコ)などを内服して、黄色腫の退縮を図ります。高脂血症が正常化されると黄色腫は生育がゆっくりとなり、または多少縮小する場合があります。
 高脂血症のない人に対しては、腱黄色腫は通常痛みがないため、治療として切除することはほとんどなく、薬物治療を行ないます。

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■用語 肩甲上神経損傷 [用語(け)]

[野球]肩の使いすぎなどにより、肩の筋肉を支配している肩甲上神経が損傷する疾患
 肩甲上神経損傷とは、野球のピッチャーなどの投球動作による肩の使いすぎにより、肩の筋肉を支配している神経が損傷する疾患。
 この肩甲上神経損傷は、利き腕の上腕を肩より上に上げてボールなどを投げたり、打ったりするオーバーヘッドスローイング動作を行うスポーツ全般で生じる傾向にあり、野球のピッチャー、キャッチャーのほか、バレーボールのアタッカー、アメリカンフットボールのクォーターバック、あるいはサーブやスマッシュを行うテニス、ハンドボール、陸上競技のやり投げ、水泳のクロールとバタフライなどでも生じます。
 肩甲上神経は、首の付け根から出て、肩甲骨の上のほうにある肩甲切痕(せっこん)という骨の溝を擦り抜けるようにして、肩の筋肉である棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)へつながっている末梢(まっしょう)神経です。棘上筋と棘下筋の動きを支配しており、腕を上げるのに必要とされています。
 元来、肩甲切痕の部分の肩甲上神経の走行に無理があるため、野球のピッチャー、バレーボールのアタッカーなどのように腕を上げる動作を繰り返すと、肩甲上神経が引っ張られ、なおかつ周囲の組織によって圧迫を受けるので、肩甲上神経損傷を生じることがあります。
 また、骨のとげである骨棘(こっきょく)やガングリオン(結節腫〔(しゅ〕)が肩関節にできることによって圧迫されて、肩甲上神経損傷を生じることもあります。
 結果として、腕を上げる動作や腕を外に広げる動作がしづらい、肩が重い、肩が疲れる、肩に力が入らない、肩が痛い、肩がしびれるなどの症状が出ます。
 また、棘上筋にある肩甲切痕の部分で肩甲上神経が圧迫を受けると、棘上筋と棘下筋の筋肉がやせてきます。一方、棘下筋にある肩甲切痕の部分で肩甲上神経が圧迫を受けると、棘下筋だけがやせてきます。
 腕が上がらない、肩の周囲の筋肉がやせてきているといった症状が出たら、整形外科を受診することが勧められます。
[野球]肩甲上神経損傷の検査と診断と治療
 整形外科の医師による診断では、症状や電気生理学的検査などにより判断します。
 神経伝導検査と筋電図検査を行うことで、肩甲上神経の障害の程度や正確な障害部位を確認します。また、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うことで、肩周辺部の骨棘やガングリオンなどの肩甲上神経を圧迫している病変を確認します。
 鑑別すべき疾患には、いわゆる四十肩、五十肩といわれる肩関節周囲炎や頸椎(けいつい)疾患、腱板(けんばん)損傷があります。
 整形外科の医師による治療では、筋委縮が軽度の場合は、オーバーヘッドスローイング動作をしばらく中止し、委縮した棘上筋、棘下筋などを強化していくようにします。同時に、肩周辺筋力のバランス強化を行います。
 副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンの注入や、肩甲切痕を広げて神経の圧迫を取り除く手術を行うこともあります。
 痛みがひどく、筋委縮が重度の場合は、肩甲上神経を圧迫している骨棘やガングリオンなどを摘出する手術を行います。ガングリオンでは、太めの針の注射器で腫瘍中のゼリー状の内容物を穿刺(せんし)吸引する方法もありますが、再発しやすいのが欠点です。

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■用語 軽度認知障害 [用語(け)]

[ダイヤ]認知症になる前の段階で、健康な状態と認知症の中間にある状態
 軽度認知障害とは、認知症になる前の段階で、健康な状態と認知症の中間にある状態。つまり、認知症ではないものの、全く健康でもない状態です。
 老化に伴う物忘れよりは記憶障害が進んでいますが、それ以外の認知機能障害は現れておらず、日常生活にも支障を来していません。
 認知症になる前の段階といっても、軽度認知障害の人が将来、必ず認知症になるとは限りません。そのまま治療を受けなくても、半数は認知症にならないといわれています。逆にいえば、何もしなければ、半数の人は認知症になるわけであり、将来、認知症を発症する可能性のある予備軍といえます。
 発症する可能性のある認知症は、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく変性性認知症で、最も多いアルツハイマー型認知症のほか、レビー小体型認知症、前頭・側頭型認知症が相当します。
 65歳以上の高齢者で、アルツハイマー型認知症などさまざまな認知症の人は約462万人おり、これに対して軽度認知障害の人は約400万人いると推計されています。
 軽度認知障害の診断は、現状では医療機関への受診が必要なため、「最近物忘れがひどくなった」という状態では受診しない人が多くを占めます。
 しかし、最近の研究では、軽度認知障害の人が適切な治療を受ければ、認知症の発症を防いだり、発症を遅らせたりできることがわかってきています。早期診断で軽度認知障害が発見されれば、一生、認知症にならなくてもすむかもしれないので、早めに精神科、神経内科、内科、あるいは物忘れ外来の医師に相談することが勧められます。
[ハート]軽度認知障害の検査と診断と治療
 精神科、神経内科、内科、あるいは物忘れ外来の医師による診断では、まず記憶テストや問診などを行います。ここで軽度認知障害と診断されれば、脳血流シンチを使用して脳の血流を測定し、アルツハイマー型認知症などさまざまな認知症かどうかを判断します。
 脳血流シンチは2002年ごろから使われ始めた精密診断機器で、注射によって体内に放射性同位元素を微量注入し、その後の脳の血流の様子をシンチカメラで撮影するものです。アルツハイマー型認知症では典型的な脳の血流低下がみられますので、ここで判断することができます。
 精神科、神経内科、内科、あるいは物忘れ外来の医師による治療では、場合により、脳の代謝をよくする薬や、アルツハイマー型認知症の治療薬であるドネペジル(製品名:アリセプト)を使用します。
 軽度認知障害の段階でドネペジルを使用すれば、アルツハイマー型認知症の進行の抑制期間を長引かせる可能性が高くなります。
 軽度認知障害から認知症への進行を防いだり、遅らせるためには、趣味を楽しんだり、人と話したりして、脳を活性化することが有効です。また、食生活の改善や運動不足の解消など、ライフスタイルを見直すことも大切です。

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■用語 血液型不適合妊娠 [用語(け)]

[雷]母親と胎児の血液型や産生抗体の相性が悪いために、新生児溶血性黄疸が引き起こされる可能性のある妊娠
 血液型不適合妊娠とは、母親と胎児の血液型や産生抗体の相性が悪いために、新生児溶血性黄疸(おうだん)が引き起こされる可能性のある妊娠。母子血液型不適合妊娠とも呼ばれます。
 新生児溶血性黄疸は、さまざまな原因により新生児の赤血球が急激に破壊され、生後24時間以内に出現する早発黄疸や貧血などの症状が現れる疾患で、この血液型不適合妊娠や母体の疾患によるもの、新生児の赤血球の先天異常によるもの、薬剤や感染によるものの大きく3つに分けられます。
 この中では、血液型不適合妊娠に伴う新生児溶血性黄疸が最も多くみられ、母親と新生児の間のABO式血液型不適合妊娠、およびRh式血液型不適合妊娠が代表的です。
 ABO式血液型不適合妊娠は、O型の母親がA型もしくはB型の子供を妊娠した場合に起こるものです。このABO式血液型不適合妊娠は全出生の約2パーセントに認められ、ABO式血液型不適合溶血性黄疸の発症頻度は3000人に1人です。
 Rh式血液型不適合妊娠は、Rh陰性の母親がRh陽性の子供を妊娠した場合に起こるものです。Rh式血液型不適合妊娠は、ABO式血液型不適合妊娠に比べて重症化することが多くなっています。
 どちらの場合も、新生児の血液型抗原が母親に欠如している場合、その血液型抗原に感作されて、これに対する抗体が母親の血液中に産生されます。この抗体は、流産や出産時の胎盤剥離(はくり)の際に、少量の胎児赤血球が母体の血液に入って産生されることが多いため、普通、初回の妊娠では新生児溶血性黄疸は起こりません。
 2回目以降の妊娠中には、母親の血液中の抗体が胎盤を通過して胎児の血液中に入ると、抗原抗体反応が起こり、胎児の赤血球が破壊(溶血)される際に、その中のヘモグロビン(血色素)から作られる大量のビリルビン(胆汁色素)ができてしまうことがあります。ビリルビンが胎児の体内で異常に増え、体内に一定量以上残った場合は、組織に蓄積するために皮膚などが黄色くなる黄疸を来します。
 ABO式血液型不適合溶血性黄疸は、初回の妊娠から起こり、第1子から発症する可能性もあります。一方、Rh式血液型不適合溶血性黄疸は、Rh陰性の母親がRh陽性の子供を産み、次回の妊娠で胎児がRh陽性である場合に問題になります。日本人のRh陰性の頻度は、約0・5パーセントとされ、200人に1人です。
 なお、輸血歴のある女性が輸血血液に感作され、妊娠出産時に特殊な血液型不適合妊娠を示す可能性もあります。
 赤血球の破壊(溶血)は、胎児や新生児に貧血をもたらすほか、出生後の新生児に重症黄疸をもたらします。
 妊娠中は、大量にできたビリルビンが胎盤を通じて母体へ排出されるため、胎児の黄疸は軽くてすみます。ところが、破壊(溶血)が強い場合は、貧血によって心不全、胎児水腫(すいしゅ)となり、胎内で死亡することもあります。
[雷]血液型不適合妊娠の検査と診断と治療
 小児科の医師による診断では、ABO式、Rh式血液型など母子間の血液型不適合の有無を調べます。母子間に血液型不適合があり、母体血液中に胎児の赤血球に感作された結果生じた抗体が認められた場合や、新生児の赤血球に胎盤を通して移行してきた母親由来の抗体が認められた場合に、診断が確定します。
 小児科の医師による治療では、新生児の血液中のビリルビン値により、光線療法や、免疫グロブリンの点滴静注を行い、新生児溶血性黄疸の改善に努めます。重症例では、交換輸血が必要です。
 光線療法は、新生児を裸にして強い光を照射することで、脂溶性の間接型ビリルビンを水溶性のサイクロビリルビンに化学変化させる治療法です。水に溶けやすいサイクロビリルビンは尿によって排出されるため、体の中のビリルビンは速やかに減少します。
 光線療法でビリルビン値が下がらない場合には、交換輸血を行います。新生児自身の血液をゆっくり取り出しながら、見合う量を輸血する治療法で、新生児自身の約85パーセントの血液が交換されます。
 免疫グロブリンの点滴静注は、第2子以降のRh式血液型不適合溶血性黄疸を予防するための治療で、第1子出産直後に、抗Rh抗体を含むγ(ガンマ)グロブリンを母体に点滴静注し、2回目以降の妊娠の際に胎児の血液中で抗原抗体反応が起こらないようにします。
 なお、Rh式血液型不適合妊娠において、妊娠中に胎児が溶血性黄疸にかかって極度の貧血になり死亡してしまう恐れが場合は、治療として早期に出産させて交換輸血を行うか、子宮内胎児輸血を行う必要があります。
 子宮内胎児輸血には、超音波ガイド下に胎児の腹腔(ふくくう)内に母体側の抗体によって溶血されないRh陰性の濃厚赤血球を注入する胎児腹腔内輸血法と、直接胎児の血管内に輸血する胎児血管内輸血法の2つがあります。

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