■用語 早発月経 [用語(そ)]
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早発月経とは、初めての月経である初潮を10歳未満で迎える状態。
女児が初潮を迎える時期にはそれぞれ個人差があり、一般的には、12歳が初潮を迎える年齢の平均とされています。
個人の生活環境、遺伝、栄養状態などによって、月経が始まる時期が早まることがあります。ほかにも、性機能をつかさどる中枢である間脳の視床下部が早期に脳下垂体刺激ホルモンを分泌するようになり、そのため卵巣機能が早期に促進されることによって、月経が始まる時期が早まることあります。しかし、視床下部が早期に性中枢としての機能を発揮するようになる原因は、解明されていません。
そのほかに、脳腫瘍(しゅよう)や脳下垂体の腫瘍、脳の外傷によって、卵巣刺激ホルモンが分泌されるようになる場合や、卵巣自体や副腎(ふくじん)の腫瘍の場合などに、月経様出血が現れることもあります。
早発月経で、月経だけが早発することは少なく、多くの場合、出現時期の差はあれ、乳房発育、恥毛や腋毛(えきもう)の発毛など、ほかの二次性徴もみられる早発思春期(思春期早発症)を伴っています。
ただし、原因によっては恥毛の発毛がみられないこともあります。また、原因によっては、皮膚のカフェオレ様といわれる特徴的な斑点(はんてん)、卵巣腫瘍による腹部の膨隆、陰核の肥大がみられることもあります。
出血は起こったり止まったりすることが多く、出血が一度だけでほかの二次性徴がみられないような場合は、早発月経ではなく外傷も考えられます。
10歳未満での出血に気付いたら、外傷などによる一度きりのものでないか、乳房、腋毛、恥毛の発育状態はどうかを確認して、早発思春期の可能性があると考えられれば、婦人科、 産婦人科を受診することが勧められます。
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婦人科、産婦人科の医師による診断では、問診、視診、基礎体温の測定、血液検査(ホルモン検査)、X線(レントゲン)検査(骨年齢の測定)などを行います。
場合によっては、超音波(エコー)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査 、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などによる卵巣腫瘍や副腎腫瘍、脳腫瘍の検査も行います。
婦人科、産婦人科の医師による治療では、早発月経が遺伝や体質的なものから生じている場合、特に治療の必要はありません。
ホルモン分泌異常による場合、初潮から間もないころは身長が急速に伸びるものの、成長期に入ると成長が止まってしまい、低身長のままとなることもあるため、症状によっては、同時に起こる骨の成熟を遅らせ、最終身長を伸ばすことを目標として、脳下垂体機能を抑制して女性ホルモンを下げるGnRHアナログ(LHーRHアナログ)という薬剤による治療を行います。
月に1回の皮下注射を行うことで、多くの場合は著しい効果を示し、二次性徴の進行停止、退縮がみられ、骨年齢の進行が緩やかになります。
ただし、すでに骨の成熟が完了していると考えられる場合は、治療の対象になりません。
卵巣腫瘍、副腎腫瘍、脳腫瘍などが原因であれば、外科手術により腫瘍を摘出した後に、ホルモン剤を投与して症状を緩和します。腫瘍の摘出が不可能な場合には、化学療法や放射線療法も行います。
■用語 早発乳房 [用語(そ)]
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早発乳房とは、乳幼児期の女児の乳房がはれたり、乳房にしこりができるもの。乳房早期発育症、思春期前乳房隆起とも呼ばれます。
発生頻度は人口10万人当たり40人程度で、珍しいものではありません。2歳以下の発症が、60〜85パーセントを占めます。
乳腺(にゅうせん)と乳房が軽度に大きくなり、異常に大きくなることはありません。両側性のものがほとんどですが、片側だけの場合もあります。
通常、症状は進行せず、多くの場合2年から3年で自然に縮小し、消失します。中には、軽度のはれやしこりが5年以上持続するものがあるものの、病的な意味はなく、特別な治療も必要ありません。
早発乳房の原因は明らかでありませんが、下垂体ホルモンや卵巣ホルモンの分泌の一過性の高進や、これらのホルモンに対する乳腺の感受性の一過性の高進などが原因の一つと考えられています。
乳房の大きさが増したり、恥毛や腋毛(わきげ)が生えてきたり、初潮の発来が早すぎたり、身長の伸び方が急激すぎたりする場合は、早発乳房以外の疾患の可能性を疑う必要があります。
疑われるのは、思春期早発症などのホルモン分泌異常による性早熟や、副腎(ふくじん)などの内分泌疾患で、このような場合は経過をみて小児科、小児内分泌科を受診し、検査を受けて区別する必要があります。
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小児科、小児内分泌科の医師による診断では、視診、触診、超音波(エコー)検査で、乳腺の存在を確認します。血液検査で、ホルモンの異常がないかどうか確認します。
小児科、小児内分泌科の医師による治療では、特定の原因がない場合は、経過を観察します。一般に、特に治療を行わなくても、数カ月から3年以内に自然に縮小し、消失します。
思春期早発症、内分泌疾患によると考えられるものについては、そちらの治療を行います。
■用語 続発性女性化乳房症 [用語(そ)]
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続発性女性化乳房症とは、後天的な理由により、男性の乳房が女性のような乳房に膨らむ疾患。乳がんと間違われやすい疾患です。
男性に乳房の発育を認める疾患である女性化乳房症には、この後天的に発症する続発性女性化乳房症と、小児期より発症し先天性ないし遺伝性と考えられる遺伝性女性化乳房症(アロマターゼ過剰症)とがあります。
本来、男性の乳房は女性の乳房のように発育しませんが、乳房に膨らみや、しこりが現れたり、自発痛や圧痛を感じることがあります。肥満により脂肪のボリュームが増えたことによる乳房の肥大は、通常の女性化乳房症とは区別されています。
真の意味での女性化乳房症は、両側もしくは片側の乳腺(にゅうせん)が一時的に増殖して、乳頭部や乳輪の下に腫瘍(しゅよう)のようなものが現れる症状をいいます。
女性化乳房症のうち、遺伝性女性化乳房症(アロマターゼ過剰症)は、女性ホルモン(エストロゲン)の過剰分泌により、思春期より前ごろから症状が現れ始め、父親または兄弟に同様の症状がある場合には、この遺伝性女性化乳房症が疑われます。大きな症状としては、乳房の肥大を繰り返したり、低身長、性欲の減退などがあります。この疾患は、女性にも発症することがあり、症状は巨大乳房症や不正出血になったりします。
一方、続発性女性化乳房症には、思春期や更年期の生理的なホルモンバランスの乱れによる一過性のもの、肝臓の機能障害による女性ホルモン(エストロゲン)の増加によるもの、薬剤の副作用によるものがあります。また、原因がわからないものも多くあります。
思春期や更年期の生理的なホルモンバランスの乱れによる一過性の女性化乳房症は、思春期の13~14歳、更年期から老年期の50~80歳に起こり、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れるのが原因となって、乳腺が異常に増殖して乳房が肥大します。普通は、ほうっておけば自然によくなります。
肝臓の機能障害による女性ホルモンの増加による女性化乳房症は、重い肝臓障害や肝硬変などを患っている男性に起こることがあります。男性ホルモンは精巣で作られ、血液中に入って全身に運ばれ、筋肉、骨、脂肪、皮膚などにたどり着き、その後一部は女性ホルモンに変わります。この女性ホルモンが骨を強くしたり、抜け毛を防いだりする役割をしています。
役割を終えた女性ホルモンは、その後肝臓に向かい、最終的には肝臓で分解されます。そのため、肝臓の機能に障害があると、女性ホルモンがうまく分解できなくなる結果、男性の乳房に女性ホルモンがたまって乳房が膨らむことがあります。
薬剤の副作用による女性化乳房症は、女性ホルモンに似た働きをする薬剤などを摂取したことによる副作用として起こりますが、理由ははっきりわかっていません。薬剤としては、女性ホルモン剤、前立腺(ぜんりつせん)疾患治療剤、男性型脱毛症治療剤、利尿剤、降圧利尿剤、血管拡張剤、降圧剤、強心剤、抗結核剤、抗潰瘍(かいよう)剤、抗アレルギー剤、抗けいれん剤、胃腸運動賦活剤、抗真菌剤、向精神剤などで起こっています。
男性の続発性女性化乳房症の多くは問題のないものですが、原因がはっきりしないものもあり、乳がんなどのほかの疾患と区別するためには、外科、乳腺外科を受診することが勧められます。また、女性のように乳房が大きくなることで、特に思春期で大きな悩み、心の負担になるような場合は、美容外科や美容皮膚科などを受診し、美容的な乳房の外科手術などを受けることも勧められます。
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外科、乳腺外科の医師による診断では、原因がわからないものも多いため、問診を行って、合併症の有無や服薬の有無とその種類について聞きます。
続いて、触診と、乳がんと鑑別するための超音波(エコー)検査、マンモグラフィー(乳房X線検査)を行います。
触診した時の多くは、乳頭部や乳輪を中心とした境目の不明瞭な堅い塊として触れます。片側の乳房だけにしか認められない場合や、比較的境目が明瞭で弾力があって、硬く平らなしこりとして触れる場合もあります。
超音波(エコー)検査では、境界が不明瞭な低エコー像として見られることが多く、マンモグラフィー(乳房X線検査)では、乳頭部の下に広がる乳腺の肥大が腫瘍様の濃厚陰影として見られます。
確定診断のためには、穿刺(せんし)吸引細胞診、あるいは、針生検(せいけん)を可能な限り行います。
穿刺吸引細胞診は、専用の針をしこりに刺して一部の細胞を吸引して取り、顕微鏡で細胞の形などを調べる検査。体への負担が少ないのが利点ですが、しこりとして触れないような小さながんなどは、診断できないことも少なくありません。
針生検は、少し太めのコア針で局所麻酔をして、組織を取り出して調べる検査。体への負担が少ないのが利点ですが、病変が小さい場合は何度も刺す必要があったり、診断が付かないこともあります。
この際、初回の細胞診、組織診で悪性像がない場合でも、中~高年齢者では、一定期間は外来で経過観察を続けます。
外科、乳腺外科の医師による治療では、ホルモン異常などの疾患による女性化乳房症の場合でも、原則的には経過観察のみで薬物療法などの治療は必要ありません。薬剤の副作用として現れている女性化乳房症の場合、服用を一度中止したりして原因を調べ、さらには肝硬変などの重篤な肝機能障害などほかの疾患がないか精査します。
痛みがひどい時は、状況によって非ステロイド系の消炎鎮痛剤を使い、痛みを和らげます。
副作用の原因になる薬剤を軽減しても症状が改善されない場合や、女性のように乳房が大きくなることで悩んでいる場合は、外科的手術を行い、肥大した乳腺の組織をほぼ全部、または一部切除します。
手術後、乳腺を切除した部分に空洞ができるため、血液がたまって血腫ができた場合は、ドレーンチューブを留置します。細菌が感染した場合は、抗生物質を投与したり、乳腺を切除した部分を洗浄したりしながら経過をみていきます。乳頭部や乳輪の血流障害や皮膚の壊死が起こった場合は、皮膚がゆっくり覆うのを待つ必要があります。
■用語 ソトス症候群 [用語(そ)]
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ソトス症候群とは、さまざまな身体的異常を引き起こす先天異常症候群。脳性巨人症とも呼ばれます。
1964年に、ソトスらが最初の症例を報告しました。日本では、新生児の14000人に1人程度の罹患(りかん)率と見なされていますが、軽度の症状の場合は見過ごされている可能性があり、実際には5000人に1人に近い罹患率と考えられています。
常染色体優性遺伝性疾患であり、5番染色体にあるNSD1遺伝子の異常によって起こります。
症状には幅があり、幼少期から小児期にかけての大頭症、過成長、骨年齢の促進、特徴的な顔付き、精神発達遅滞などを示します。
出生時から身長が大きく、体重もあり、手足も大きく、骨の成熟も促進しています。顔付きも特徴的で、額の大きな大頭で、下顎(したあご)の突出、口の中の上部がへこんでいる状態の高口蓋(こうこうがい)、眼瞼(がんけん)裂斜下、両眼隔離が見られ、全身の筋肉の緊張が低下して全身の筋肉の力が弱くなっています。身長や頭囲の過成長は、乳幼児期から学童期まで続きます。
また、けいれん、心疾患、腎(じん)疾患、尿路異常、外反偏平足、脊椎(せきつい)側湾、てんかん発作などを合併することもあります。
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小児科、ないし遺伝子診療科の医師による診断では、大頭症、過成長、骨年齢の促進、特徴的な外見を認め、原因遺伝子のNSD1遺伝子などに点変異を認めるか、NSD1を含む5番染色体長腕に欠失を認める場合に、ソトス症候群と確定します。
遺伝子の変異や染色体の欠失を認めない場合は、大頭症、過成長、特徴的な外見、精神発達遅滞のすべてを満たす場合に、ソトス症候群と確定します。
小児科、ないし遺伝子診療科の医師による治療では、現在のところ根治療法はないため、対症療法として、てんかん、腎疾患に対しては必要に応じて薬物療法、心疾患に対しては必要に応じて手術や薬物療法、精神発達遅滞に対しては療育的支援を行います。
主に、心疾患、腎疾患、難治性てんかんが生命予後に影響を与えます。