■用語 垂れ乳 [用語(た)]
出産、授乳、加齢などが原因となって乳房が垂れた状態
垂れ乳とは、出産や授乳、加齢などが原因となって、女性の乳房が垂れ下がった状態を指す症状。下垂乳房、乳房下垂症とも呼ばれます。
女性の乳房の理想は、両鎖骨間のくぼみである鎖骨上窩(じょうか)と左右の乳房にある乳頭の3点をそれぞれ結んだ三角形が正三角形であることとされていますが、左右の乳頭の位置が垂れ下がると縦長の二等辺三角形となります。このような状態を指す症状が、垂れ乳です。
女性の乳房の膨らみを形作っているのは乳腺(にゅうせん)組織、脂肪組織、クーパー靭帯(じんたい)と呼ばれる繊維の束の3種類です。クーパー靭帯は、乳房内に網の目のように張り巡らされており、乳腺組織、脂肪組織を大胸筋とつなぎ、乳房の膨らみを形作る役割を果たしています。
垂れ乳は、乳腺組織、脂肪組織を支えているクーパー靭帯が伸び切ってしまうことと、乳房を覆っている皮膚の衰えが主な原因となって、乳房の形が保てなくなることで起こります。
そのクーパー靭帯の伸び切り、乳房の皮膚の衰えは、加齢などによるホルモンバランスの変化、妊娠出産授乳時の乳房の大きさの急激な変化、乳房自体の重さ、物理的な刺激、姿勢の悪さなどが要因となって、起こります。
乳腺を発達させ、乳房の張りを保つのは、エストロゲンという女性ホルモンの役割です。加齢や不規則な生活によりホルモンのバランスが変化すると、エストロゲンの分泌が少なくなり、垂れ乳の原因となります。
また、妊娠出産授乳時に乳房の大きさの急激な変化を経験すると、クーパー靭帯と乳房の皮膚が伸びます。出産授乳時には、母乳を作るためのホルモンが働いて乳腺が発達して大きくなり、併せて乳房が大きくなり、それに合わせて皮膚も張って伸びてきます。やがて授乳の必要がなくなると、乳腺は委縮し、線維化し、脂肪化します。
しかし、クーパー靭帯と皮膚のほうは、それと同じように委縮しません。中身が減ったのに伸びているので、乳房の形が保てなくなり垂れるわけです。妊娠や出産、授乳を重ねることにより、次第に形状の変化が明らかになります。
同じ意味で、体重の急激な増減に伴う乳房の大きさの変化も、垂れ乳の原因となります。
元々乳房が大きく、乳房自体の重さがあることも、クーパー靭帯と乳房の皮膚の伸びにつながり、垂れ乳の原因となります。乳房が大きすぎて垂れている場合には、重さで肩が凝ったり、猫背になったり、ブラジャーのストラップが肩に食い込んだり、乳房の下縁部に皮膚炎ができたりすることもあります。
ノーブラでランニング、ジョギングなど胸が上下に動くような激しい運動を頻繁にしたり、過度の乳房マッサージをしたりなどの物理的刺激によっても、乳腺組織やクーパー靭帯が痛められることがあり、垂れ乳につながることがあります。
日ごろから背中が丸まった猫背など悪い姿勢をとっていると、大胸筋などの胸付近の血流が滞って悪くなる結果、乳房が冷えて栄養がゆき届かなくなり、張りを失って、垂れ乳を招くこともあります。
垂れ乳は主にごく自然な生理現象として起こるので、加齢に伴う経年変化として受け入れられるのであれば、特に治療の必要はなく、放置してかまいません。
美容的な問題により、改善したいと望むのであれば、乳腺(にゅうせん)外科、形成外科、あるいは美容整形外科を受診し、垂れ乳を治療する形成外科手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。
垂れ乳の検査と診断と治療
乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による診断では、視診、触診で判断します。超音波(エコー)検査、マンモグラフィー(乳腺X線検査)で脂肪化した乳腺を確認すれば、診断は確定します。
乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による治療では、乳頭の高さによって軽度、中等度、重度の段階があり、それぞれで方法が違ってきます。
軽度の垂れ乳に対する手術は、乳輪の周囲の皮膚を切除し引き締める乳輪移動術が一般的で、乳輪から上部に渡って皮膚を切り取り、上にずらして縫合します。
中等度の垂れ乳に対する手術は、乳房の下垂や乳輪の位置の修正を目的とした乳房固定術が一般的で、乳輪の上部の皮膚を丸く切り取り、乳輪をそこへ移動させ、乳腺組織と脂肪組織を上部に縫合し、固定します。手術の後、どうしても重力の影響で乳輪の形が微妙に縦型になったり、おむすび型になったりすることがあります。これに対しては、手術部が十分落ち着いてから必要に応じて乳輪の形の修正を行います。
重度の垂れ乳に対する手術は、乳房縮小術が一般的で、乳輪を上部に移動させるだけでなく、乳房の下方をピラミッド型に切除して上に持ち上げて縫合します。
また、乳房の大きい人の場合、中身も大きく垂れていることが多いため、乳腺組織や脂肪組織を同時に除去する乳房縮小術を併用する場合もあります。
逆に、乳房が小さかったり、張りがなくなったために垂れている場合には、脂肪注入やフィラー注入、あるいは人工乳腺(豊胸バッグ)挿入による乳房形成手術(豊胸手術)を行うことで、よい結果が得られることがあります。
左右非対称の乳房の治療の場合も、同じように小さいほうの乳房を乳房形成手術(豊胸手術)で大きくする方法、もしくは大きいほうの乳房を乳房縮小術で小さくする方法で、大きさをそろえる治療をします。
ほとんどのケースは、局所麻酔下の手術が可能で日帰り手術です。入浴に関しては、手術部がぬれない半身浴なら翌日から可能です。
手術後数時間程度で麻酔が切れると、徐々に痛みが出てくる場合がありますが、処方された薬を服用することにより軽減できます。また、一時的に乳頭の感覚が鈍くなる場合がありますが、時間の経過により徐々に通常の感覚に戻ります。傷が目立たなくなり希望の状態になるまで、約半年ほどかかります。
垂れ乳とは、出産や授乳、加齢などが原因となって、女性の乳房が垂れ下がった状態を指す症状。下垂乳房、乳房下垂症とも呼ばれます。
女性の乳房の理想は、両鎖骨間のくぼみである鎖骨上窩(じょうか)と左右の乳房にある乳頭の3点をそれぞれ結んだ三角形が正三角形であることとされていますが、左右の乳頭の位置が垂れ下がると縦長の二等辺三角形となります。このような状態を指す症状が、垂れ乳です。
女性の乳房の膨らみを形作っているのは乳腺(にゅうせん)組織、脂肪組織、クーパー靭帯(じんたい)と呼ばれる繊維の束の3種類です。クーパー靭帯は、乳房内に網の目のように張り巡らされており、乳腺組織、脂肪組織を大胸筋とつなぎ、乳房の膨らみを形作る役割を果たしています。
垂れ乳は、乳腺組織、脂肪組織を支えているクーパー靭帯が伸び切ってしまうことと、乳房を覆っている皮膚の衰えが主な原因となって、乳房の形が保てなくなることで起こります。
そのクーパー靭帯の伸び切り、乳房の皮膚の衰えは、加齢などによるホルモンバランスの変化、妊娠出産授乳時の乳房の大きさの急激な変化、乳房自体の重さ、物理的な刺激、姿勢の悪さなどが要因となって、起こります。
乳腺を発達させ、乳房の張りを保つのは、エストロゲンという女性ホルモンの役割です。加齢や不規則な生活によりホルモンのバランスが変化すると、エストロゲンの分泌が少なくなり、垂れ乳の原因となります。
また、妊娠出産授乳時に乳房の大きさの急激な変化を経験すると、クーパー靭帯と乳房の皮膚が伸びます。出産授乳時には、母乳を作るためのホルモンが働いて乳腺が発達して大きくなり、併せて乳房が大きくなり、それに合わせて皮膚も張って伸びてきます。やがて授乳の必要がなくなると、乳腺は委縮し、線維化し、脂肪化します。
しかし、クーパー靭帯と皮膚のほうは、それと同じように委縮しません。中身が減ったのに伸びているので、乳房の形が保てなくなり垂れるわけです。妊娠や出産、授乳を重ねることにより、次第に形状の変化が明らかになります。
同じ意味で、体重の急激な増減に伴う乳房の大きさの変化も、垂れ乳の原因となります。
元々乳房が大きく、乳房自体の重さがあることも、クーパー靭帯と乳房の皮膚の伸びにつながり、垂れ乳の原因となります。乳房が大きすぎて垂れている場合には、重さで肩が凝ったり、猫背になったり、ブラジャーのストラップが肩に食い込んだり、乳房の下縁部に皮膚炎ができたりすることもあります。
ノーブラでランニング、ジョギングなど胸が上下に動くような激しい運動を頻繁にしたり、過度の乳房マッサージをしたりなどの物理的刺激によっても、乳腺組織やクーパー靭帯が痛められることがあり、垂れ乳につながることがあります。
日ごろから背中が丸まった猫背など悪い姿勢をとっていると、大胸筋などの胸付近の血流が滞って悪くなる結果、乳房が冷えて栄養がゆき届かなくなり、張りを失って、垂れ乳を招くこともあります。
垂れ乳は主にごく自然な生理現象として起こるので、加齢に伴う経年変化として受け入れられるのであれば、特に治療の必要はなく、放置してかまいません。
美容的な問題により、改善したいと望むのであれば、乳腺(にゅうせん)外科、形成外科、あるいは美容整形外科を受診し、垂れ乳を治療する形成外科手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。
垂れ乳の検査と診断と治療
乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による診断では、視診、触診で判断します。超音波(エコー)検査、マンモグラフィー(乳腺X線検査)で脂肪化した乳腺を確認すれば、診断は確定します。
乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による治療では、乳頭の高さによって軽度、中等度、重度の段階があり、それぞれで方法が違ってきます。
軽度の垂れ乳に対する手術は、乳輪の周囲の皮膚を切除し引き締める乳輪移動術が一般的で、乳輪から上部に渡って皮膚を切り取り、上にずらして縫合します。
中等度の垂れ乳に対する手術は、乳房の下垂や乳輪の位置の修正を目的とした乳房固定術が一般的で、乳輪の上部の皮膚を丸く切り取り、乳輪をそこへ移動させ、乳腺組織と脂肪組織を上部に縫合し、固定します。手術の後、どうしても重力の影響で乳輪の形が微妙に縦型になったり、おむすび型になったりすることがあります。これに対しては、手術部が十分落ち着いてから必要に応じて乳輪の形の修正を行います。
重度の垂れ乳に対する手術は、乳房縮小術が一般的で、乳輪を上部に移動させるだけでなく、乳房の下方をピラミッド型に切除して上に持ち上げて縫合します。
また、乳房の大きい人の場合、中身も大きく垂れていることが多いため、乳腺組織や脂肪組織を同時に除去する乳房縮小術を併用する場合もあります。
逆に、乳房が小さかったり、張りがなくなったために垂れている場合には、脂肪注入やフィラー注入、あるいは人工乳腺(豊胸バッグ)挿入による乳房形成手術(豊胸手術)を行うことで、よい結果が得られることがあります。
左右非対称の乳房の治療の場合も、同じように小さいほうの乳房を乳房形成手術(豊胸手術)で大きくする方法、もしくは大きいほうの乳房を乳房縮小術で小さくする方法で、大きさをそろえる治療をします。
ほとんどのケースは、局所麻酔下の手術が可能で日帰り手術です。入浴に関しては、手術部がぬれない半身浴なら翌日から可能です。
手術後数時間程度で麻酔が切れると、徐々に痛みが出てくる場合がありますが、処方された薬を服用することにより軽減できます。また、一時的に乳頭の感覚が鈍くなる場合がありますが、時間の経過により徐々に通常の感覚に戻ります。傷が目立たなくなり希望の状態になるまで、約半年ほどかかります。
■用語 多乳房症、多乳頭症 [用語(た)]
乳腺ないし乳頭が3つ以上ある状態
多乳房症、多乳頭症とは、乳房の通常の存在部位である両側前胸部とは異なった部位に、乳腺(にゅうせん)組織、乳頭、乳輪が存在し、乳腺ないし乳頭が3つ以上ある状態。副乳腺、副乳頭とも呼ばれます。
これは生まれ付きのものであり、多乳房(副乳腺)、多乳頭(副乳頭)の多くは、わきの下や、通常の乳房の下内側に存在します。
多乳房、多乳頭の起源は、胎児期にあります。胎生6週ころに、両わきの下から乳頭、腹部の左右、ももの内側に至る乳腺提という表皮の堤状の肥厚ができ、この乳腺提に7~9対の乳腺元基という乳腺の基が現れます。胎生9週には、1対は通常の乳房になり、残りは退縮します。しかし、いくつかの乳腺元基が残って、発育することがあります。これが多乳房、多乳頭であり、乳腺提の線上のどこにでも発育する可能性があります。
そもそも、人間や象のような少産種のほ乳動物では、1対のみの乳房を発育させるのに対して、ネズミやイノシシのような多産種のほ乳動物では、前足の両わきの下から後ろ足の間に至る乳腺提の線上に、複数対の乳房を発育させます。人間も胎児期には、通常の乳房以外の部位に乳房を発育させる要素を持っているため、多乳房、多乳頭はそれほど異常な存在ではありません。
実際、左右ともに、あるいは片側だけに多乳房、多乳頭のある人は、女性の5パーセント、男性の2パーセントに認められるといわれています。
多乳房、多乳頭は不完全で退化した乳房であるため、外から見てわかる乳首、乳輪を備えていることは少なく、あっても気付かないこともあります。目立たないため、ほくろやいぼと認識されることも多く、乳腺提の線上に対になったほくろがある場合、多乳房症、多乳頭症の可能性もあります。
まれに乳腺が少し発育して膨らみを生じ、小さないぼ状の乳首を伴うことがあります。
女性が妊娠時に、わきの下に違和感を覚え、熱く感じたり、その部分の色が濃くなってきて、多乳房、多乳頭の存在に初めて気が付くことがしばしばあります。
乳腺組織が存在する場合、通常の乳腺と同様にホルモン分泌に反応するため、女性では生理前のホルモン分泌の多い黄体期に多乳房がはれてきたり、痛みを伴うことがまれにあります。
また、妊娠授乳期にも正常な乳腺と同様に乳腺も発育するため、乳汁(母乳)が出てくる産後3~4目ころからゴルフボールのようなしこりになって、はれたり、痛みを伴うことがあります。乳腺自体から乳汁が出てくることもありますが、多乳房には乳汁が出る乳口がないことも多いので、中に乳汁がたまって乳腺炎を起こすこともあります。
妊娠授乳期においてのはれ、痛みの多くは、一時的なものであり、間もなく自然に消失します。しかし、強い痛みが生じたり、痛みが持続することもあります。妊娠ごとに、はれ、痛みを繰り返し生じることもあります。
多乳房の乳腺がはれた場合は、局所を冷却し炎症を抑えることで少しずつ治めることができます。保冷剤をガーゼで包み、冷湿布することを何回か繰り返すと、はれも引き、しぼむような形になります。熱感がある場合は、洗面器の水にペパーミントの精油を5、6滴垂らし、おしぼりを数本入れて絞って冷蔵庫で保存、これで冷湿布することを何回か繰り返すと、かなり楽になるでしょう。
ちなみに、多乳房にできる乳がん(異所性乳がん)は極めてまれであり、乳がん全体の0・4パーセントほどの頻度で生じ、そのうち3分の2はわきの下にできます。また、乳房の痛みを伴う乳がんは、あまり多いものではありませんので、多乳房が痛んでも心配はいりません。
乳頭を備えていないけれど、わきの下に違和感を覚え、熱く感じたり、多乳房が異常に大きいようで心配な場合は、婦人科、産婦人科、あるいは乳腺科、乳腺外科を受診することが勧められます。
多乳房症、多乳頭症の検査と診断と治療
婦人科、産婦人科、あるいは乳腺科、乳腺外科の医師による診断では、わきの下のしこりが疾患によって生じていないかどうか検査します。
考えられるものとして、乳がん、リンパ腺(せん)の炎症、ほかの臓器のがんからの転移、リンパの悪性腫瘍(しゅよう)、汗腺や皮脂腺の疾患などがあり、多乳房(副乳腺)との見分けがつきにくい場合には、しこりの一部を採取して顕微鏡で調べる生検を行うこともあります。
婦人科、産婦人科、あるいは乳腺科、乳腺外科の医師による治療では、多乳房に強い痛みが生じたり、痛みが持続する場合、ホルモン剤を投与し、ホルモン分泌を抑えます。
多乳房に乳腺炎が起きた場合は、初期には冷湿布して、乳汁は注射針を刺して吸引した上、抗生物質を注射か内服で投与し、鎮痛消炎剤を内服で投与します。
多乳頭(副乳頭)だけの場合には、外科的手術でほくろやいぼを切除するような要領で切除して、皮膚を縫合することも可能です。
多乳房の場合には、皮膚切除に加えて乳腺もくり抜いて切除することも可能です。くり抜いた部分が陥没しないように修正して、皮膚を縫合します。通常の乳腺と多乳房の乳腺はつながっていないことがほとんどのため、外科的には乳房温存治療ができる可能性が高いといえます。
多乳房症、多乳頭症とは、乳房の通常の存在部位である両側前胸部とは異なった部位に、乳腺(にゅうせん)組織、乳頭、乳輪が存在し、乳腺ないし乳頭が3つ以上ある状態。副乳腺、副乳頭とも呼ばれます。
これは生まれ付きのものであり、多乳房(副乳腺)、多乳頭(副乳頭)の多くは、わきの下や、通常の乳房の下内側に存在します。
多乳房、多乳頭の起源は、胎児期にあります。胎生6週ころに、両わきの下から乳頭、腹部の左右、ももの内側に至る乳腺提という表皮の堤状の肥厚ができ、この乳腺提に7~9対の乳腺元基という乳腺の基が現れます。胎生9週には、1対は通常の乳房になり、残りは退縮します。しかし、いくつかの乳腺元基が残って、発育することがあります。これが多乳房、多乳頭であり、乳腺提の線上のどこにでも発育する可能性があります。
そもそも、人間や象のような少産種のほ乳動物では、1対のみの乳房を発育させるのに対して、ネズミやイノシシのような多産種のほ乳動物では、前足の両わきの下から後ろ足の間に至る乳腺提の線上に、複数対の乳房を発育させます。人間も胎児期には、通常の乳房以外の部位に乳房を発育させる要素を持っているため、多乳房、多乳頭はそれほど異常な存在ではありません。
実際、左右ともに、あるいは片側だけに多乳房、多乳頭のある人は、女性の5パーセント、男性の2パーセントに認められるといわれています。
多乳房、多乳頭は不完全で退化した乳房であるため、外から見てわかる乳首、乳輪を備えていることは少なく、あっても気付かないこともあります。目立たないため、ほくろやいぼと認識されることも多く、乳腺提の線上に対になったほくろがある場合、多乳房症、多乳頭症の可能性もあります。
まれに乳腺が少し発育して膨らみを生じ、小さないぼ状の乳首を伴うことがあります。
女性が妊娠時に、わきの下に違和感を覚え、熱く感じたり、その部分の色が濃くなってきて、多乳房、多乳頭の存在に初めて気が付くことがしばしばあります。
乳腺組織が存在する場合、通常の乳腺と同様にホルモン分泌に反応するため、女性では生理前のホルモン分泌の多い黄体期に多乳房がはれてきたり、痛みを伴うことがまれにあります。
また、妊娠授乳期にも正常な乳腺と同様に乳腺も発育するため、乳汁(母乳)が出てくる産後3~4目ころからゴルフボールのようなしこりになって、はれたり、痛みを伴うことがあります。乳腺自体から乳汁が出てくることもありますが、多乳房には乳汁が出る乳口がないことも多いので、中に乳汁がたまって乳腺炎を起こすこともあります。
妊娠授乳期においてのはれ、痛みの多くは、一時的なものであり、間もなく自然に消失します。しかし、強い痛みが生じたり、痛みが持続することもあります。妊娠ごとに、はれ、痛みを繰り返し生じることもあります。
多乳房の乳腺がはれた場合は、局所を冷却し炎症を抑えることで少しずつ治めることができます。保冷剤をガーゼで包み、冷湿布することを何回か繰り返すと、はれも引き、しぼむような形になります。熱感がある場合は、洗面器の水にペパーミントの精油を5、6滴垂らし、おしぼりを数本入れて絞って冷蔵庫で保存、これで冷湿布することを何回か繰り返すと、かなり楽になるでしょう。
ちなみに、多乳房にできる乳がん(異所性乳がん)は極めてまれであり、乳がん全体の0・4パーセントほどの頻度で生じ、そのうち3分の2はわきの下にできます。また、乳房の痛みを伴う乳がんは、あまり多いものではありませんので、多乳房が痛んでも心配はいりません。
乳頭を備えていないけれど、わきの下に違和感を覚え、熱く感じたり、多乳房が異常に大きいようで心配な場合は、婦人科、産婦人科、あるいは乳腺科、乳腺外科を受診することが勧められます。
多乳房症、多乳頭症の検査と診断と治療
婦人科、産婦人科、あるいは乳腺科、乳腺外科の医師による診断では、わきの下のしこりが疾患によって生じていないかどうか検査します。
考えられるものとして、乳がん、リンパ腺(せん)の炎症、ほかの臓器のがんからの転移、リンパの悪性腫瘍(しゅよう)、汗腺や皮脂腺の疾患などがあり、多乳房(副乳腺)との見分けがつきにくい場合には、しこりの一部を採取して顕微鏡で調べる生検を行うこともあります。
婦人科、産婦人科、あるいは乳腺科、乳腺外科の医師による治療では、多乳房に強い痛みが生じたり、痛みが持続する場合、ホルモン剤を投与し、ホルモン分泌を抑えます。
多乳房に乳腺炎が起きた場合は、初期には冷湿布して、乳汁は注射針を刺して吸引した上、抗生物質を注射か内服で投与し、鎮痛消炎剤を内服で投与します。
多乳頭(副乳頭)だけの場合には、外科的手術でほくろやいぼを切除するような要領で切除して、皮膚を縫合することも可能です。
多乳房の場合には、皮膚切除に加えて乳腺もくり抜いて切除することも可能です。くり抜いた部分が陥没しないように修正して、皮膚を縫合します。通常の乳腺と多乳房の乳腺はつながっていないことがほとんどのため、外科的には乳房温存治療ができる可能性が高いといえます。
■用語 男性乳がん [用語(た)]
男性の乳房内でがん細胞が増殖する疾患
男性乳がんとは、男性の乳房内でがん細胞が増殖する疾患。男子乳がんとも呼ばれます。
乳がんの多くは、乳汁(母乳)を分泌する乳腺(にゅうせん)に発生します。男性にも、必要はないながらも乳腺は存在するため、乳がんになる可能性はあります。
男性乳がんは、女性を含めた乳がん全体の約0・5〜1・0パーセントを占め、発生年齢は女性の乳がんより高いとされています。また、男性の場合は女性と比べて、元来の乳腺が痕跡(こんせき)的で小さいことや皮下脂肪が少ないことから、がん細胞が皮膚や筋膜へ浸潤しやすく、やや進行したものが多いといわれています。
主に60歳代以上に発生し、その多くが女性化乳房とかかわりがあると見なされています。女性化乳房とは、男性の乳腺が女性のような乳腺に発達してしまう疾患で、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスの乱れや、肝臓の機能障害による女性ホルモン(エストロゲン)の増加が主な原因です。
内分泌系の疾患のほか、薬の副作用として現れるもの、突発性のものなど原因はさまざまですが、乳腺が発達すればするほど男性乳がんのリスクは上がります。
ほかにも、放射線の被曝(ひばく)によるもの、遺伝性のものもあると考えられています。例えば、親族内に乳がんを発症した女性が多い場合、男性であってもその遺伝子を受け継ぐ可能性が高いことがわかっていますので、乳がん家系の男性は注意が必要です。男性乳がんの発症者の約15~20パーセントは、乳がんの家族歴があるともいわれています。
男性乳がんが発生すると、多くのケースで片側の乳房の乳頭や乳輪下に硬く、移動しにくいしこりを認めます。男性は女性よりも胸部の皮下脂肪が少ないため、しこりが目立ちやすく、人によっては外側から見てもわかることがあります。
わきの下のリンパ節に転移している場合、わきの下にしこりを感じることもあります。
また、乳管の中に浸潤している場合、乳頭の変形や膨隆(ぼうりゅう)を認めることがあり、乳頭から血液混じりの分泌液があったり、皮膚の潰瘍(かいよう)を伴うこともあります。
男性であっても乳がんを発症する可能性があることを知り、乳頭や乳輪下のしこりに気付いたら、早めに内科、外科、乳腺外科を受診することが大切です。
男性乳がんの検査と診断と治療
内科、外科、乳腺外科の医師による診断では、問診を行って、合併症の有無や服薬の有無とその種類について聞きます。
続いて、胸のしこりを確認するために触診やマンモグラフィー(乳房X線検査)、超音波(エコー)検査などを行い、最終的には穿刺(せんし)吸引細胞診、あるいは針生検(せいけん)をして確定します。
内科、外科、乳腺外科の医師による治療では、女性の乳がんと同様に手術を行います。手術方法としては乳房温存手術が行うこともありますが、多くは乳房すべてとともに、胸筋やリンパ節を切除します。
手術の後、抗がん剤治療や放射線治療はもちろん、ホルモン依存性の乳がんの場合は、女性ホルモン(エストロゲン)を作っている酵素であるアロマターゼの働きを妨げるアロマターゼ阻害剤による内分泌治療も行います。
男性乳がんが骨や肺、肝臓などの遠隔臓器に転移した場合は、がんの治癒を目指すのではなく、がんの進行を抑えたり症状を和らげることで日常生活の質(QOL)を保ちながら、より長くがんと共存するための治療を行います。
男性乳がんとは、男性の乳房内でがん細胞が増殖する疾患。男子乳がんとも呼ばれます。
乳がんの多くは、乳汁(母乳)を分泌する乳腺(にゅうせん)に発生します。男性にも、必要はないながらも乳腺は存在するため、乳がんになる可能性はあります。
男性乳がんは、女性を含めた乳がん全体の約0・5〜1・0パーセントを占め、発生年齢は女性の乳がんより高いとされています。また、男性の場合は女性と比べて、元来の乳腺が痕跡(こんせき)的で小さいことや皮下脂肪が少ないことから、がん細胞が皮膚や筋膜へ浸潤しやすく、やや進行したものが多いといわれています。
主に60歳代以上に発生し、その多くが女性化乳房とかかわりがあると見なされています。女性化乳房とは、男性の乳腺が女性のような乳腺に発達してしまう疾患で、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスの乱れや、肝臓の機能障害による女性ホルモン(エストロゲン)の増加が主な原因です。
内分泌系の疾患のほか、薬の副作用として現れるもの、突発性のものなど原因はさまざまですが、乳腺が発達すればするほど男性乳がんのリスクは上がります。
ほかにも、放射線の被曝(ひばく)によるもの、遺伝性のものもあると考えられています。例えば、親族内に乳がんを発症した女性が多い場合、男性であってもその遺伝子を受け継ぐ可能性が高いことがわかっていますので、乳がん家系の男性は注意が必要です。男性乳がんの発症者の約15~20パーセントは、乳がんの家族歴があるともいわれています。
男性乳がんが発生すると、多くのケースで片側の乳房の乳頭や乳輪下に硬く、移動しにくいしこりを認めます。男性は女性よりも胸部の皮下脂肪が少ないため、しこりが目立ちやすく、人によっては外側から見てもわかることがあります。
わきの下のリンパ節に転移している場合、わきの下にしこりを感じることもあります。
また、乳管の中に浸潤している場合、乳頭の変形や膨隆(ぼうりゅう)を認めることがあり、乳頭から血液混じりの分泌液があったり、皮膚の潰瘍(かいよう)を伴うこともあります。
男性であっても乳がんを発症する可能性があることを知り、乳頭や乳輪下のしこりに気付いたら、早めに内科、外科、乳腺外科を受診することが大切です。
男性乳がんの検査と診断と治療
内科、外科、乳腺外科の医師による診断では、問診を行って、合併症の有無や服薬の有無とその種類について聞きます。
続いて、胸のしこりを確認するために触診やマンモグラフィー(乳房X線検査)、超音波(エコー)検査などを行い、最終的には穿刺(せんし)吸引細胞診、あるいは針生検(せいけん)をして確定します。
内科、外科、乳腺外科の医師による治療では、女性の乳がんと同様に手術を行います。手術方法としては乳房温存手術が行うこともありますが、多くは乳房すべてとともに、胸筋やリンパ節を切除します。
手術の後、抗がん剤治療や放射線治療はもちろん、ホルモン依存性の乳がんの場合は、女性ホルモン(エストロゲン)を作っている酵素であるアロマターゼの働きを妨げるアロマターゼ阻害剤による内分泌治療も行います。
男性乳がんが骨や肺、肝臓などの遠隔臓器に転移した場合は、がんの治癒を目指すのではなく、がんの進行を抑えたり症状を和らげることで日常生活の質(QOL)を保ちながら、より長くがんと共存するための治療を行います。
■用語 単純性早発乳房 [用語(た)]
乳幼児期の女児の乳房が大きくなるもの
単純性早発乳房とは、乳幼児期の女児の乳房がはれたり、乳房にしこりができるもの。単純性乳房肥大、早発乳房、乳房早期発育症、思春期前乳房隆起などとも呼ばれます。
発生頻度は人口10万人当たり40人程度で、珍しいものではありません。2歳以下の発症が、60〜85パーセントを占めます。
乳腺(にゅうせん)と乳房が軽度に大きくなり、異常に大きくなることはありません。両側性のものがほとんどですが、片側だけの場合もあります。
通常、症状は進行せず、多くの場合2年から3年で自然に縮小し、消失します。中には、軽度のはれやしこりが5年以上持続するものがあるものの、病的な意味はなく、特別な治療も必要ありません。
単純性早発乳房の原因は明らかでありませんが、下垂体ホルモンや卵巣ホルモンの分泌の一過性の高進や、これらのホルモンに対する乳腺の感受性の一過性の高進などが原因の一つと考えられています。
乳房の大きさが増したり、恥毛や腋毛(わきげ)が生えてきたり、初潮の発来が早すぎたり、身長の伸び方が急激すぎたりする場合は、単純性早発乳房以外の疾患の可能性を疑う必要があります。
疑われるのは、思春期早発症などのホルモン分泌異常による性早熟や、副腎(ふくじん)などの内分泌疾患で、このような場合は経過をみて小児科、小児内分泌科を受診し、検査を受けて区別する必要があります。
単純性早発乳房の検査と診断と治療
小児科、小児内分泌科の医師による診断では、視診、触診、超音波(エコー)検査で、乳腺の存在を確認します。血液検査で、ホルモンの異常がないかどうか確認します。
小児科、小児内分泌科の医師による治療では、特定の原因がない場合は、経過を観察します。一般に、特に治療を行わなくても、数カ月から3年以内に自然に縮小し、消失します。
思春期早発症、内分泌疾患によると考えられるものについては、そちらの治療を行います。
単純性早発乳房とは、乳幼児期の女児の乳房がはれたり、乳房にしこりができるもの。単純性乳房肥大、早発乳房、乳房早期発育症、思春期前乳房隆起などとも呼ばれます。
発生頻度は人口10万人当たり40人程度で、珍しいものではありません。2歳以下の発症が、60〜85パーセントを占めます。
乳腺(にゅうせん)と乳房が軽度に大きくなり、異常に大きくなることはありません。両側性のものがほとんどですが、片側だけの場合もあります。
通常、症状は進行せず、多くの場合2年から3年で自然に縮小し、消失します。中には、軽度のはれやしこりが5年以上持続するものがあるものの、病的な意味はなく、特別な治療も必要ありません。
単純性早発乳房の原因は明らかでありませんが、下垂体ホルモンや卵巣ホルモンの分泌の一過性の高進や、これらのホルモンに対する乳腺の感受性の一過性の高進などが原因の一つと考えられています。
乳房の大きさが増したり、恥毛や腋毛(わきげ)が生えてきたり、初潮の発来が早すぎたり、身長の伸び方が急激すぎたりする場合は、単純性早発乳房以外の疾患の可能性を疑う必要があります。
疑われるのは、思春期早発症などのホルモン分泌異常による性早熟や、副腎(ふくじん)などの内分泌疾患で、このような場合は経過をみて小児科、小児内分泌科を受診し、検査を受けて区別する必要があります。
単純性早発乳房の検査と診断と治療
小児科、小児内分泌科の医師による診断では、視診、触診、超音波(エコー)検査で、乳腺の存在を確認します。血液検査で、ホルモンの異常がないかどうか確認します。
小児科、小児内分泌科の医師による治療では、特定の原因がない場合は、経過を観察します。一般に、特に治療を行わなくても、数カ月から3年以内に自然に縮小し、消失します。
思春期早発症、内分泌疾患によると考えられるものについては、そちらの治療を行います。