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■用語 単純ヘルペス脳炎 [用語(た)]

[晴れ]単純ヘルペスウイルスの感染によって起こる重い急性脳炎
 単純ヘルペス脳炎とは、単純ヘルペスウイルスの感染によって起こる重い急性脳炎。単にヘルペス脳炎とも呼ばれます。
 小児、成人、高齢者とすべての年代に起こり、とりわけ成人での発症頻度が高い疾患です。日本では年に約400例という発症頻度で、時期的な集中はみられません。
 主として単純ヘルペスウイルス1型(口唇ヘルペス)の感染によって、ヘルペス脳炎は起こります。単純ヘルペスウイルス2型(性器ヘルペス)の感染では、良性の脊髄(せきずい)炎、髄膜炎が起こるのが一般的です。
 有り触れて共存的なヘルペスウイルスが重いヘルペス脳炎を起こす原因は、よくわかっていません。ヘルペスウイルスの上気道感染に続いて嗅(きゅう)神経を経由し、あるいは血液に運ばれて、好発部位である側頭葉・大脳辺縁系に侵入し、出血性壊死(えし)の傾向を示しながら脳を破壊すると推定されています。
 成人と高齢者のヘルペス脳炎の発症については、三叉(さんさ)神経節などの中枢神経系に潜伏していたヘルペスウイルスが、風邪や疲れなどで体の抵抗力が落ちた際に突然、出てきて暴れ出すとも推定されています。
 風邪の症状で始まり、40℃以上の発熱、頭痛、けいれん発作、意識障害、異常行動、性格の変化、知能障害、言語障害、運動まひなどが現れます。重症になると、ものが飲み込めなくなる嚥下(えんげ)障害や呼吸障害が現れ、昏睡(こんすい)に陥り、生命にかかわります。
 死亡率は20〜30パーセント、治療せずに放置した場合の死亡率は60~70パーセントとされています。発症早期の治療が極めて重要なので、おかしいと思ったらすぐに神経内科、内科、小児科などを受診し入院すべきです。
[晴れ]単純ヘルペス脳炎の検査と診断と治療
 神経内科、内科、小児科の医師による診断では、血液や脳脊髄液を調べ、単純ヘルペスウイルス1型の感染の証拠が得られれば判断できます。実際には、検査結果が出るまでに日数がかかるので、症状のほか、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、脳波検査などの結果から判断します。
 神経内科、内科、小児科の医師による治療では、急性期における単純ヘルペスウイルス1型の増殖を抑えるため、抗ウイルス剤のアシクロビル、ビダラビン、バラシクロビルなどを投与します。
 二次感染を予防する意味でペニシリン系、セフェム系の抗生剤を投与し、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤を併用することもあります。その他は対症療法を適切に行います。
 脳の破壊が進む以前の早期に抗ウイルス剤を使用すれば、記憶障害、行動異常、症候性てんかんなどの後遺症を残さずに治すことが可能です。単純ヘルペスウイルスに対する特効薬である抗ウイルス剤の導入以後、死亡率は10パーセント以下に減り、約半数の社会復帰例がみられています。

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■用語 多指症 [用語(た)]

[手(パー)]手の指の数が6本以上となる先天性疾患
 多指(たし)症とは、手の指の数が6本以上となる先天性疾患。完全に先天性のもので、後天的な発生はありません。
 親指(母指)に過剰な手指が発生することが圧倒的に多く、次いで小指、人差し指(示指)、中指と続きます。
 爪(つめ)も持っていて、ほぼ完全な形の過剰な手指が存在する場合から、痕跡(こんせき)的なものや、紐(ひも)状の皮膚でつながった浮遊状のものもあります。隣接した手指と皮膚性に癒合して合指を伴うことも、多くみられます。
 多くの場合は、特定の原因は不明ですが、手の発生にかかわる遺伝子の変異が関係する可能性があり、染色体異常が原因のことがあります。妊娠中の喫煙などの環境因子との複合作用も、原因として考えられています。
 胎児期に手指が分離形成される段階で、1本の手指が2本以上に分かれて過剰な手指が形成されますが、染色体異常に伴う多指症や、さまざまな身体的異常を引き起こす先天異常症候群に伴う多指症は、体のほかの部分の先天異常を合併する場合があります。
 生後すぐ、あるいは胎児期の超音波検査で、手指の数の過剰は認められます。手の先天異常のうち最も多く、出生1000人に対し1人前後の頻度でみられます。
 左右の手に、手指の数の過剰が同時に発生する場合、片方の手だけに、手指の数の過剰が発生する場合とさまざまで、 左右差がある場合もあります。
 症状の程度も、軽い場合と重い場合があります。過剰な手指の基部が末節骨に存在し、かつ骨成分を含まないものでは、関節や骨の変形が少なく、機能障害はほとんど存在しません。過剰な手指の基部が基節骨や中節骨に存在し、かつ関節や骨がほかの指と共有されているものでは、機能障害が生じ、手指の正常な屈曲、伸展に支障を来します。
 生後すぐ、多指症は産科で気付かれることが多いため、手指以外に内臓疾患の合併がないか、小児科でも診てもらうことが勧められます。また、整形外科などでも診てもらい、美容的、機能的な観点から手術を行うべきかどうか相談することが勧められます。
[手(チョキ)]多指症の検査と診断と治療
 整形外科、形成外科、ないし手の外科の医師による診断では、視診で容易に判断できますが、過剰な手指の機能障害の程度を見極めることが必要です。指骨の状態をみるためには、X線(レントゲン)検査を行います。
 整形外科、形成外科、ないし手の外科の医師による治療では、浮遊状の過剰な手指である場合、糸で結紮(けっさつ)して壊死(えし)に陥らせて切除します。
 それができない場合、過剰な手指を外科的に切除します。一般的に、過剰な手指の基部が末節骨に存在し、関節や骨の変形が少なく機能障害の少ない場合は、生後6カ月以降が手術時期の目安となり、過剰な手指の基部が基節骨や中節骨に存在し、機能障害の改善が重要な意味を持つ場合は、1歳以降が手術時期の目安となります。
 過剰な手指が小さく、機能障害の少ない場合の手術では、切除を行うのみで問題はありません。機能障害の改善が重要な場合の手術では、過剰な手指を切除した後、残した手指の向きを金属ピンや靭帯(じんたい)縫合などを用いて矯正したり、関節形成を行います。骨の変形を矯正するため、骨切り術を行うこともあります。
 合指を伴う場合は、隣接した手指との分離を同時に行います。分離する際には、手指の側面の皮膚が欠損するために、足の内くるぶし付近や足の付け根などの皮膚を採取し植皮を行います。
 手術後は治療内容により前後しますが、約4週間のギプス固定を行います。その後も、テーピングなどを行う場合もあります。機能的な問題があれば、リハビリテーションを行います。
 靭帯縫合や関節形成を行った場合、成長とともに変形が出現する場合があるため、外来にて手術後も定期的にチェックを行います。出現した変形を矯正するために、再度手術を行う場合もあります。

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■用語 胎便吸引症候群 [用語(た)]

[ブティック]胎便を肺に吸い込むことで、呼吸障害を起こす新生児の疾患
 胎便吸引症候群とは、出生前あるいは出生時などに、肺に胎便を吸い込んだ新生児が起こす呼吸困難。
 胎便とは、胎児が生まれる前に腸で作られる濃い緑色の、無菌性の便です。正常な場合は、胎便は新生児が授乳を開始した時に排出されます。
 しかし、血中酸素濃度が不十分など何らかのストレスがあると、これに反応して腸の蠕動(ぜんどう)運動が一時的に活発になり、同時に肛門括約筋が緩むため、胎児が羊水の中で胎便を排出してしまうことがあります。
 さらに、同じストレスが原因で胎児が激しくあえぐ結果、胎便を含む濁った羊水を肺に吸い込んでしまうことがあります。
 出生後、吸い込んだ胎便が気道をふさぎ、肺をつぶれた状態にしてしまうことがあります。あるいは、一部の気道が部分的にふさがれた場合、この部分より先の肺の一部に空気を届けることはできても、この空気を吐き出すことができないという状態になることがあります。
 このような状態になった肺は、過剰に膨らみます。肺が部分的に膨張し続けると、ついには破裂し、つぶれます。そうなると、空気が肺の周囲の胸腔(きょうくう)にたまる気胸を起こします。
 肺に吸い込まれた胎便は、肺の炎症である肺炎の原因にもなるため、肺感染症のリスクも高くなります。また、持続性肺高血圧症を発症するリスクも高くなります。
 胎便吸引症候群を起こした新生児は、出生時から呼吸数が1分間に60以上と速くなる、息を吸い込む際に肋骨(ろっこつ)の間や胸骨の下部がへこむ、息を吐く際に息苦しそうにうめき声を出すなどの呼吸困難に陥ります。
 血液中の酸素濃度が下がると、チアノーゼを起こして新生児の皮膚は紫色になり、血圧が下がることもあります。
 大半の新生児は助かりますが、重症の場合は死亡することもあります。胎便吸引症候群が最も重症になるのは、予定日より2週間以上遅れて生まれた過期産児です。その原因は、過期産児では、普通よりも少ない羊水の中に胎便が濃縮された状態になるからです。
[ブティック]胎便吸引症候群の検査と診断と治療
 産科、産婦人科の医師による診断は、出生時に羊水中に胎便が観察されること、新生児の呼吸困難、胸部X線(レントゲン)検査の異常所見などに基づいて行います。
 産科、産婦人科の医師による治療は、出生時に新生児が胎便で覆われて、ぐったりし、呼吸していなかった場合には、直ちに新生児の口、鼻、のどから胎便を吸引して取り除きます。
 その後、太い気道である気管の中にある胎便もすべて吸引します。より多くの胎便を吸い出すために、吸引を繰り返し行うこともあり、必要に応じて生理食塩水などによる気管や肺の洗浄を行うこともあります。
 さらに、肺感染症のリスクがあることから、新生児に抗生物質(抗生剤)を投与して、酸素吸入を行い、必要であれば人工呼吸器を使用します。新生児が人工呼吸器をつけた場合、気胸や持続性肺高血圧症などの重い合併症が起きないようによく観察します。
 胎便吸引症候群を起こした新生児のほとんどは、助かります。重症の場合、特に持続性肺高血圧症を引き起こした場合は、命にかかわる可能性があります。

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■用語 脱色素性母斑 [用語(た)]

[モバQ]生まれ付き現れる、皮膚の一部分の色が抜けたように白く見えるあざ
 脱色素性母斑(ぼはん)とは、生まれ付き、皮膚の一部分の色が抜けたように、白く見えるあざになっている状態。
 母斑は、皮膚の一部分に色調や形状の異常が現れる状態です。一般的には、あざと呼ばれます。
 生まれ付きか、生後すぐに、体幹部や四肢に出現します。顔面、頭部、手足には、あまり多く出現しません。
 生後1年くらいの間に、次第に白色がはっきりしてきますが、やや白みが薄く、完全な白とはなりません。体が成長するにつれて白く見えるあざも大きくなるものの、それ以上に大きく広がることや、数が増えることはありません。反面、自然に消えることもありません。
 何らかの原因で、胎内にいる時に、皮膚の一部分の色素を形成するメラニン色素の働きが低下、もしくは停止した場合や、メラニン色素を産生する色素細胞(メラノサイト)が破壊された場合に、脱色素性母斑が出現と考えられています。ただ、メラニン色素の働きに異常が起こる原因、色素細胞が破壊される原因までは、解明されていません。
 健康に害を及ぼすことも、他人に感染することもないため、小さな白く見えるあざが1個だけというのであれば、特に問題はありません。
 しかし、白く見えるあざの大ききが拡大するようなら尋常性白斑のことがあるほか、まれに結節性硬化症の最初の症状であったり、同じように白く見えるあざがやや広く分布した場合は類似する色素失調症の可能性があり、白く見えるあざが帯状になっている場合は神経症状を伴う伊藤白斑の可能性があり、注意が必要です。
 皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診して、類似する疾患との区別さえつけば、経過をみてよいでしょう。
 脱色素性母斑が露出部位に発生して見た目が気になるようなら、肌色のファンデーションを塗る化粧で隠すのも選択肢の一つですが、皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診して相談するのも一案です。
[モバQ]脱色素性母斑の検査と診断と治療
 皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、経過観察をすればほとんどの場合は脱色素性母斑と確定しますが、類似するいくつかの疾患との鑑別をするために、皮膚を一部採取する病理組織検査をすることもあります。
 皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、皮膚疾患の中で最も治りにくいものの一つとされ、もともと色素がない状態なので、皮膚疾患で最近主流のレーザー治療の効果は期待できません。
 主に、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の外用や内服、長波長紫外線UVAを当てるPUVA(プーバ)療法などの紫外線治療、特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法などの紫外線B波治療、あるいは表皮の移植手術を行います。

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