■用語 低髄液圧症 [用語(て)]
![[iモード]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/108.gif)
低髄液圧症とは、脳脊髄腔(のうせきずいくう)を循環する脳脊髄液が持続的、ないし断続的に漏出することによって減少し、頭痛やさまざまな全身症状を示す疾患。低脳脊髄液圧症、脳脊髄液減少症とも呼ばれます。
脳脊髄液は、脳と脊髄全体を覆うように脳脊髄腔を循環して保護液として働き、脳と脊髄を浮かせて頭や体が急激に動くことによる衝撃を柔らげたり、部分的な脳や脊髄の活動によって産生される物質を取り除く働きも併せ持つと考えられています。
脳の内側で4つに分かれて存在する脳室で、血液の成分から1日約500ミリリットル産生されて、1日で3回ほど全体が入れ替わる程度のスピードで循環しています。最終的には、くも膜という脳の保護膜と脳との間に広がっている静脈洞という部位から吸収され、血液へ戻ってゆきます。
何らかの原因で脳脊髄腔を覆っている硬膜に亀裂(きれつ)などが生じ、この脳脊髄液が脳脊髄腔から漏出することが原因で、低髄液圧症が生じます。
原因となるのは、頭や体に強い衝撃を受ける交通事故や、柔道、スノーボード、サッカー、バスケット、器械体操などによるスポーツ外傷、転倒のほか、出産、脱水などです。原因が不明なこともあります。
その症状は、起き上がると痛みが増強し、横になると痛みが軽減する起立性頭痛を主とし、付随する頸部(けいぶ)痛、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠(けんたい)感などがみられます。
また、個人により、記憶力の低下、集中力の低下、食欲の低下、むくみ、しびれ、歩行障害、顔面痛、味覚障害、動悸(どうき)、胸痛、脱力感、頻尿、無月経、性欲低下、体温調節障害、不眠など、さまざまな症状が起きることもあります。
なお、この低髄液圧症は、日本の医師によって提唱された新たな疾患概念であり、いまだに定まった知見や治療法が確立されていないため、国において専門家による医学的な解明が進められているところです。
このため、診療や治療を行っている医療機関は少なく、脳神経外科、神経内科、整形外科、麻酔科などの一部が診療のみ、あるいは診療と治療を行っています。
![[iモード]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/108.gif)
脳神経外科、神経内科、整形外科、麻酔科の医師による診断では、起立性頭痛などの症状、経過、発症の状況などを問診します。
頭部のMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、脳脊髄液の減少を評価できるほか、脳脊髄液の減少のために脳がやや下垂している画像が認められることがありますが、常に認められるわけではありません。
放射性同位元素(RI)脳槽(のうそう)・脳脊髄腔シンチグラフィーを行い、腰部から硬膜内に細い針を刺し、造影剤の放射性同位元素を外髄液腔(くも膜下腔)に注入すると、注入3時間以内に膀胱(ぼうこう)内に放射性同位元素が描出される画像や、放射性同位元素が髄液腔外に漏出している画像がみられれば、確定します。
脳神経外科、神経内科、整形外科、麻酔科の医師による治療では、十分な水分を摂取して、ベッドでの安静を保ちます。点滴による水分補給が必要な時もあります。
約2週間の水分摂取と安静で改善しない時には、ブラッドパッチ治療(硬膜外自家血注入療法)を行います。局所麻酔を行った後、X線(レントゲン)透視下で脳脊髄液の漏れている硬膜外腔(硬膜の袋の表面)の近くに針を刺します。そして、自己(患者本人)の腕から摂取した血液(ブラッド)に造影剤を混ぜ、刺しておいた針から注入します。すると、脳脊髄液の漏れている硬膜外腔の周囲に血液が広がって凝固し、硬膜の亀裂をふさぎます。
治療効果には個人差があり、初回で効果がない時は、2~3回行うことも少なくありません。ブラッドパッチ治療後、硬膜の亀裂は2週間から1カ月程度で修復します。
しかし、脳脊髄液の漏出が止まっても、脳脊髄液の生成が追い付くまで2~3カ月かかるのが一般的です。また、治療後6カ月間は再発のリスクが高いといわれています。
付随する諸症状についても、症状ごとに回復の程度が異なります。そのため、真に回復を実感するまでに1~3年かかるのが普通だともいわれています。
■用語 低LDLコレステロール血症 [用語(て)]
![[ダイヤ]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/82.gif)
![[ダイヤ]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/82.gif)
低LDLコレステロール血症とは、血液に含まれるLDL(低比重リポ蛋白〔たんぱく〕)コレステロールの値が低い状態。
明らかな基準の定義はないものの、緩い基準では80mg/dl未満、厳しい基準では25mg/dl未満となっています。
低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を示す疾患は、原発性(一次性)と続発性(二次性)に分類されます。
続発性(二次性)に LDL(低比重リポ蛋白)コレステロールが低値となる疾患としては、バセドウ病や甲状腺(せん)炎を原因とする甲状腺機能高進症、肝硬変、吸収不良症候群、悪性腫瘍(しゅよう)、低栄養が代表的です。
原発性(一次性)に LDL(低比重リポ蛋白)コレステロールが低値となる疾患には、無βリポ蛋白血症、低βリポ蛋白血症、カイロミクロン停滞病があります。
![[ハート]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/80.gif)
無βリポ蛋白血症は、血液に含まれる脂質濃度が低下して著しい低脂血症を示す、まれな常染色体劣性遺伝疾患。バッセン・コルンツヴァイク症候群、MTP(ミクロソームトリグリセライド〔中性脂肪〕転送蛋白)欠損症とも呼ばれます。
アポB含有リポ蛋白であるカイロミクロン、VLDL(超低比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)が血液中に欠損しており、乳児期から著しい低コレステロール血症、および低トリグリセライド(中性脂肪)血症を来します。
原因は、MTP(ミクロソームトリグリセライド〔中性脂肪〕転送蛋白)遺伝子の変異です。
MTPは、肝臓と小腸で合成されたアポ B 蛋白にトリグリセライド(中性脂肪)が転送され、VLDL(超低比重リポ蛋白)とカイロミクロン粒子が形成される過程に不可欠。肝臓での VLDL(超低比重リポ蛋白)の産生により末梢(まっしょう)組織に必要なコレステロールの輸送がなされ、小腸でのカイロミクロンの形成により脂肪が吸収されます。MTPの欠損により、トリグリセライド(中性脂肪)と結合しないアポ B蛋白は速やかに分解されて、血液中に分泌されません。
本来なら、トリグリセライド(中性脂肪)と結合したアポB蛋白は、LDL(低比重リポ蛋白)と略されるβリポ蛋白、VLDL(超低比重リポ蛋白)と略されるプレβリポ蛋白として血液中に分泌され、脂溶性の物質を吸収したり、運搬したりします。従って、血液中にβリポ蛋白、プレβリポ蛋白がないと、脂肪やビタミンEを始めとした脂溶性ビタミンなど多くの栄養素が臓器や組織に運ばれず、さまざまな症状が起こってきます。
無βリポ蛋白血症の症状はまず乳児期に現れ、発育不全がみられます。脂肪吸収の障害により、授乳開始とともに便に過度の脂肪が含まれる脂肪便という状態になり、便は脂っぽく、悪臭があり、水に浮かびやすくなります。慢性下痢、嘔吐(おうと)も生じます。
また、ビタミンEを始めとした脂溶性ビタミンの吸収障害により、思春期までに網膜色素変性による夜盲、視野狭窄(きょうさく)、視力低下などの目の症状が生じ、失明する可能性もあります。中枢神経系の損傷による運動失調症や精神遅滞、末梢神経系の損傷による知覚低下や腱(けん)反射消失などが起きる可能性もあります。
未治療のケースでは、30歳前後までに中枢神経系の損傷により、歩行など通常の日常生活に必要な基本的な活動が著しく障害されることもあります。
![[ハート]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/80.gif)
低βリポ蛋白血症は、低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を示す常染色体優性遺伝疾患。家族性低βリポ蛋白血症とも呼ばれます。
その原因遺伝子として、アポBとPCSK9(プロ蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)が知られています。アポB変異の大部分は、短縮アポBを生成し、VLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌障害と異化促進の結果、血液中のアポB濃度が低下します。
人間の遺伝子は、父親由来と母親由来の2つが一組となってできています。LDL(低比重リポ蛋白)受容体やこれを働かせる遺伝子の両方に異常がある場合をホモ接合体と呼び、いずれか一方のみに異常が認められる場合をヘテロ接合体と呼びます。ホモ接合体のみならずヘテロ接合体も、低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を示します。
低βリポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者では、短縮アポBを生成して、血液中の脂質であるコレステロールの濃度が軽度に低下し、一般に、総コレステロール120mg/dl未満、LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール80mg/dl未満を示します。同じ血液中の脂質である中性脂肪(トリグリセライド)の濃度は、正常の値を示します。
低コレステロール血症を示すことを除いて、自覚症状がないことが多いものの、肝臓からのVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌不全のために、脂肪肝や胆石症の合併が増加することもあります。なお、自覚症状がないケースでは、発育も正常であり、かつ心血管病にかかるリスクが低いため、通常人より長生きするという報告もあります。
低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者では、より短い短縮アポBを生成して、血液中の脂質であるコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)の濃度が低下し、一般に、総コレステロール80mg/dl未満、LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール20mg/dl未満を示すか、非常に短い短縮アポBを生成してアポB合成が欠損し、無βリポ蛋白血症と類似した症状を示します。
アポB合成が欠損した場合の症状は、まず乳児期に現れ、発育不全がみられます。脂肪吸収の障害により、授乳開始とともに便に過度の脂肪が含まれる脂肪便という状態になり、便は脂っぽく、悪臭があり、水に浮かびやすくなります。慢性下痢、嘔吐も生じます。
また、ビタミンEを始めとした脂溶性ビタミンの吸収障害により、思春期までに網膜色素変性による夜盲、視野狭窄、視力低下などの目の症状が生じ、失明する可能性もあります。中枢神経系の損傷による運動失調症や精神遅滞、末梢神経系の損傷による知覚低下や腱反射消失などが起きる可能性もあります。
また、末梢細胞へのコレステロール供給が低下するために、赤血球は有棘(ゆうきょく)赤血球となります。肝臓からのVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌不全のため、脂肪肝を示すこともあります。
未治療のケースでは、30歳前後までに中枢神経系の損傷により、歩行など通常の日常生活に必要な基本的な活動が著しく障害されることもあります。
アポB合成が欠損した場合は通常、小児期に発見されますが、まれに成人期になって偶然発見されるケースもあります。
![[ハート]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/80.gif)
カイロミクロン停滞病は、小腸でカイロミクロンを合成することができないために、脂肪吸収不良が生じる遺伝性疾患。アンダーソン病とも呼ばれます。
SARA2遺伝子の異常による非常にまれな疾患であり、常染色体劣性遺伝形式をとると考えられています。
小腸粘膜細胞内の細胞小器官である小胞体では、中性脂肪を分解する酵素のリポ蛋白であるカイロミクロンの分泌は正常に行われるものの、SARA2遺伝子の異常により、カイロミクロンの合成を行う細胞小器官であるゴルジ体へと、カイロミクロンを輸送することができないために、カイロミクロンが合成できず小腸粘膜細胞内で停滞します。
一方、肝臓における、中性脂肪を分解する酵素のリポ蛋白であるVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌、合成は損なわれません。
小腸でカイロミクロンが合成できない結果、食事由来の脂肪と脂溶性ビタミンの小腸における吸収が大きく損なわれます。動物性蛋白の摂取不足に伴って、低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を生じることもあります。
カイロミクロン停滞病の症状はまず乳児期に現れ、発育不全がみられます。便に過度の脂肪が含まれる脂肪便という状態になり、便は脂っぽく、悪臭があり、水に浮かびやすくなります。
中枢神経系が損傷し、運動失調症と精神遅滞が起きる可能性もあります。未治療の多くのケースでは、30歳前後までに中枢神経系の障害により、通常の日常生活に必要な基本的な活動が著しく障害されます。
![[ダイヤ]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/82.gif)
![[ダイヤ]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/82.gif)
![[ハート]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/80.gif)
内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)の値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。
血中の総コレステロールの値が50mg/dl未満、血中のトリグリセライド(中性脂肪)の値が15mg/dl 未満で、特徴的な脂肪便、神経症状、目の症状が認められる場合に、無βリポ蛋白血症と確定します。
鑑別する疾患には、家族性低βリポ蛋白血症、カイロミクロン停滞病(アンダーソン病)、甲状腺機能高進症があります。
内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、脂溶性ビタミン、特にビタミンEのサプリメントを使用し、多量に補充します。
無βリポ蛋白血症は遺伝子異常を背景とし、代謝異常が生涯持続するために治癒しませんが、幼児には1日1000〜2000mg、成人には5000〜10000mgの脂溶性ビタミンを長期にわたって大量に補充することによって、中枢神経系の損傷の発生と進行を遅らせることができます。
消化器症状に対しては、脂肪の摂取、特に長鎖脂肪酸の摂取を制限します。栄養障害に対しては、カイロミクロンを経ずに吸収される中鎖脂肪酸を補充することもあります。
![[ハート]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/80.gif)
内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のLDL(低比重リポ蛋白)コレステロールの低値を確認し、リポ蛋白の電気泳動で短縮アポBを検出することで、低βリポ蛋白血症と確定します。
低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者で、アポB合成が欠損している場合は、血中の総コレステロール値は25〜45 mg/dlで、そのほとんどはHDL(高比重リポ蛋白)コレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)10 mg/dl未満であることが多く、アポBは検出感度以下、脂溶性ビタミンA・E・Kも低値を示します。
低βリポ蛋白血症と無βリポ蛋白血症は、家族歴によって鑑別します。低βリポ蛋白血症が常染色体優性遺伝であるのに対し、無βリポ蛋白血症は常染色体劣性遺伝疾患であるので、家族調査で無βリポ蛋白血症との鑑別が可能となります。
内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、低βリポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者、および低値であるが検出可能なLDL(低比重リポ蛋白)を有する低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者の場合、一般的に何も行ないません。
LDL(低比重リポ蛋白)の欠損する低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者の場合、無βリポ蛋白血症に対する治療と同様、脂溶性ビタミン、特にビタミンEのサプリメントを使用し、多量に補充します。
幼児には1日1000〜2000mg、成人には5000〜10000mgの脂溶性ビタミンを長期にわたって大量に補充することによって、中枢神経系の損傷の発生と進行を遅らせることができます。
消化器症状に対しては、脂肪の摂取、特に長鎖脂肪酸の摂取を制限します。栄養障害に対しては、カイロミクロンを経ずに吸収される中鎖脂肪酸を補充することもあります。
![[ハート]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/80.gif)
内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液に含まれるコレステロール濃度が低く、食後カイロミクロンの欠損する場合に、腸の粘膜を一部採って特殊な染色を行った上で顕微鏡で調べる腸生検を実施します。
内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、脂肪と脂溶性ビタミン(A、D、E、K)のサプリメントを使用し、補充します。
カイロミクロン停滞病は遺伝子異常を背景とし、代謝異常が生涯持続するために治癒しませんが、脂肪と脂溶性ビタミンを補充することにより、中枢神経系に対する損傷の発生と進行を遅らせることができます。
■用語 低βリポ蛋白血症 [用語(て)]
![[ダイヤ]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/82.gif)
低βリポ蛋白(たんぱく)血症とは、低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を示す常染色体優性遺伝疾患。家族性低βリポ蛋白血症とも呼ばれます。
その原因遺伝子として、アポBとPCSK9(プロ蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)が知られています。アポB変異の大部分は、短縮アポBを生成し、VLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌障害と異化促進の結果、血液中のアポB濃度が低下します。
人間の遺伝子は、父親由来と母親由来の2つが一組となってできています。LDL(低比重リポ蛋白)受容体やこれを働かせる遺伝子の両方に異常がある場合をホモ接合体と呼び、いずれか一方のみに異常が認められる場合をヘテロ接合体と呼びます。ホモ接合体のみならずヘテロ接合体も、低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を示します。
低βリポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者では、短縮アポBを生成して、血液中の脂質であるコレステロールの濃度が軽度に低下し、一般に、総コレステロール120mg/dl未満、LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール80mg/dl未満を示します。同じ血液中の脂質である中性脂肪(トリグリセライド)の濃度は、正常の値を示します。
低コレステロール血症を示すことを除いて、自覚症状がないことが多いものの、肝臓からのVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌不全のために、脂肪肝や胆石症の合併が増加することもあります。なお、自覚症状がないケースでは、発育も正常であり、かつ心血管病にかかるリスクが低いため、通常人より長生きするという報告もあります。
低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者では、より短い短縮アポBを生成して、血液中の脂質であるコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)の濃度が低下し、一般に、総コレステロール80mg/dl未満、LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール20mg/dl未満を示すか、非常に短い短縮アポBを生成してアポB合成が欠損し、無βリポ蛋白血症と類似した症状を示します。
アポB合成が欠損した場合の症状は、まず乳児期に現れ、発育不全がみられます。脂肪吸収の障害により、授乳開始とともに便に過度の脂肪が含まれる脂肪便という状態になり、便は脂っぽく、悪臭があり、水に浮かびやすくなります。慢性下痢、嘔吐(おうと)も生じます。
また、ビタミンEを始めとした脂溶性ビタミンの吸収障害により、思春期までに網膜色素変性による夜盲、視野狭窄(きょうさく)、視力低下などの目の症状が生じ、失明する可能性もあります。中枢神経系の損傷による運動失調症や精神遅滞、末梢(まっしょう)神経系の損傷による知覚低下や腱(けん)反射消失などが起きる可能性もあります。
また、末梢細胞へのコレステロール供給が低下するために、赤血球は有棘(ゆうきょく)赤血球となります。肝臓からのVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌不全のため、脂肪肝を示すこともあります。
未治療のケースでは、30歳前後までに中枢神経系の損傷により、歩行など通常の日常生活に必要な基本的な活動が著しく障害されることもあります。
アポB合成が欠損した場合は通常、小児期に発見されますが、まれに成人期になって偶然発見されるケースもあります。
![[ダイヤ]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/82.gif)
内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のLDL(低比重リポ蛋白)コレステロールの低値を確認し、リポ蛋白の電気泳動で短縮アポBを検出することで、低βリポ蛋白血症と確定します。
低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者で、アポB合成が欠損している場合は、血中の総コレステロール値は25〜45 mg/dlで、そのほとんどはHDL(高比重リポ蛋白)コレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)10 mg/dl未満であることが多く、アポBは検出感度以下、脂溶性ビタミンA・E・Kも低値を示します。
低βリポ蛋白血症と無βリポ蛋白血症は、家族歴によって鑑別します。低βリポ蛋白血症が常染色体優性遺伝であるのに対し、無βリポ蛋白血症は常染色体劣性遺伝疾患であるので、家族調査で無βリポ蛋白血症との鑑別が可能となります。
内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、低βリポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者、および低値であるが検出可能なLDL(低比重リポ蛋白)を有する低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者の場合、一般的に何も行ないません。
LDL(低比重リポ蛋白)の欠損する低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者の場合、無βリポ蛋白血症に対する治療と同様、脂溶性ビタミン、特にビタミンEのサプリメントを使用し、多量に補充します。
幼児には1日1000〜2000mg、成人には5000〜10000mgの脂溶性ビタミンを長期にわたって大量に補充することによって、中枢神経系の損傷の発生と進行を遅らせることができます。
消化器症状に対しては、脂肪の摂取、特に長鎖脂肪酸の摂取を制限します。栄養障害に対しては、カイロミクロンを経ずに吸収される中鎖脂肪酸を補充することもあります。
■用語 低中性脂肪血症 [用語(て)]
![[ダイヤ]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/82.gif)
低中性脂肪血症とは、血液に含まれる中性脂肪(トリグリセライド)の値が低い状態。低トリグリセライド血症とも呼ばれます。
中性脂肪は、エネルギーの貯蔵庫であり、生命維持活動に必要な細胞や血管を構築するための栄養素になります。また、中性脂肪を蓄えた脂肪細胞には、衝撃から内臓を守るクッション役、寒さや暑さから身を守る断熱材などの役割があります。
血液に含まれる中性脂肪の値が高いと高中性脂肪血症(高トリグリセライド血症)となり、心筋梗塞(こうそく)などの重篤な疾患が誘因されやすいものの、中性脂肪の値が低すぎても問題になります。
中性脂肪の値は、血液中のコレステロールと中性脂肪値を測る脂質検査で調べることができます。おおよその目安では、29mg/dl以下を低中性脂肪血症と見なし、30 ~149mg/dlを正常、150~299mg/dlを軽度高中性脂肪血症、300~749mg/dlを中等度高中性脂肪血症、750mg/dl以上を高度高中性脂肪血症としています。
適正な中性脂肪の値は現在、30~149mg/dlとなっており、29mg/dl以下は低中性脂肪血症に当てはまる可能性がありますが、この基準値以下でも普通の生活している場合であれば、問題はありません。
基準値をはるかに下回る場合は、問題が生じます。中性脂肪は筋肉や心臓を動かす体のエネルギー源であるため、低すぎると体を正常に動かすエネルギーまで不足してしまい、慢性的な疲労感を感じる原因になります。健康を維持する上では、適正な中性脂肪値を保つことが大切なのです。
中性脂肪が低くなりすぎる原因として、まず第一に考えられるのは、無理なダイエットです。極端に食事量を減らしたり、海草や野菜ばかり食べるなどの食事内容により、摂取するエネルギー量が極端に低かったり、栄養素が偏ったり、栄養が不足していることが原因となります。
あまりに中性脂肪が低い場合は、バセドウ病や甲状腺(せん)炎を原因とする甲状腺機能高進症や、肝硬変、吸収不良症候群などの疾患が隠れている可能性があります。
甲状腺機能高進症では、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている場合、全身の代謝が高進するとともに脂肪の代謝が促進され、コレステロールや中性脂肪が著しく低下します。この場合、動悸(どうき)、発汗、手の震え、倦怠(けんたい)感などの自律神経の緊張症状とともに、体重の減少が生じます。
肝硬変や吸収不良症候群では、脂肪自体が吸収および産生されていない状況で、コレステロールや中性脂肪が著しく低下します。
疾患がなく、食事をしっかり取っているにもかかわらず、低中性脂肪血症になっている人もいます。やせ形の人に多いのですが、そのような人は、生まれ付き中性脂肪値が低い可能性があります。
![[ダイヤ]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/82.gif)
内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)の値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。
血液に含まれる中性脂肪が29mg/dl以下の低中性脂肪血症と判明した場合は、原因となる疾患の有無を調べます。
内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、低下した中性脂肪の値を増加させる必要はなく、甲状腺機能高進症や肝硬変、吸収不良症候群、栄養障害などの原因となる疾患に対応して改善を図ります。