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■用語 ベネット病変 [用語(へ)]

[野球]野球などでの肩の使いすぎにより、肩甲骨後下方に骨のとげが形成された状態
 ベネット病変とは、野球のピッチャーなどの投球動作による肩の使いすぎにより、肩甲骨後下方に骨のとげである骨棘(こっきょく)が形成された状態。
 ベネット病変は、上腕を肩より上に上げてボールなどを投げたり、打ったりするオーバーヘッドスローイング動作を行うスポーツ全般で生じ、野球のピッチャー、キャッチャーのほか、バレーボールのアタッカー、アメリカンフットボールのクォーターバック、あるいはサーブやスマッシュを行うテニス、ハンドボール、陸上競技のやり投げ、水泳のクロールとバタフライなどでも生じます。
 オーバーヘッドスローイング動作では、ボールなどを投げると同時に腕全体も放り投げてしまう状態になるため、腕の裏側の筋肉である上腕三頭筋や肩関節内部にある関節包、関節唇といった軟部組織は腕を支えようとします。その時にこれらの筋がついている肩甲骨後下方あたりには常に引っ張られる力が加わり、関節包付着部が硬くなります。
 硬くなった関節包付着部は骨化現象を起こし、骨棘が形成されて骨が盛り上がり、弾力性を失うことがあります。これをベネット病変といいます。
 野球などを長年続けてきた人には、ベネット病変がみられることがあり、通常痛みを伴うことはありません。
 ベネット病変が進行して、痛みを伴った場合は、有痛性ベネット病変といいます。有痛性ベネット病変を生じると、野球のピッチャーの投球動作では、ワインドアップ時に肩の後ろに痛みが走り、加速時とフォロースルー時に肩の外後方から上腕外側の上腕三頭筋部にかけて激痛が走ります。全力投球ができなくなり、一度痛みが出ると、数日投げられなくなることもあります。
 痛みの発現には、上腕に走行する腋窩(えきか)神経による刺激が関与し、後方関節唇の損傷や、肩関節で上腕を保持している腱板(けんばん)という筋肉と腱の複合体の損傷を伴っている場合が多くみられます。
[野球]ベネット病変の検査と診断と治療
 整形外科の医師による診断では、ベネット病変の場合、触診で肩甲骨後下方の関節包付着部に骨性の盛り上がりを感知することがあります。X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、関節包付着部の骨棘が確認できます。
 ベネット病変が進行して痛みを伴った有痛性ベネット病変の場合、上腕の水平内転・内旋時の痛みと、肩関節の運動制限を感知することもあります。MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、後方関節唇と腱板後方の損傷を確認できることがあります。
 整形外科の医師による治療では、骨化現象があるだけで痛みのないベネット病変の場合、異常とは判断せず、処置を施さずに経過観察します。有痛性ベネット病変に進行する予防法として、肩関節周囲筋のストレッチングや強化訓練、投球後に行うクールダウンのストレッチングやアイシングを心掛けることを勧めます。
 有痛性ベネット病変で痛みがひどくない場合は、骨棘部への局所麻酔剤の注射や、ステロイド剤の注射を行います。リハビリで、後方関節包の拘縮に対するストレッチング、腱板の強化訓練を目的として、上腕三頭筋や肩関節により近いローテーターカフである後方の小円筋や棘下筋の強化訓練、肩に負担のかからない投球フォームの指導を行います。
 痛みがひどい場合や、スポーツへの復帰を希望する場合は、関節鏡手術で骨棘を切除したり、腋窩神経を剥離したりする場合もあります。




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■用語 ペニス結核疹 [用語(へ)]



[ダイヤ]男性のペニスの先に当たる亀頭部に、結核疹が発生して硬くなる結核アレルギー性の皮膚疾患
 ペニス結核疹(しん)とは、男性のペニス(陰茎)の先に当たる亀頭(きとう)部に、結核疹が発生して硬くなる疾患。陰茎結核疹、陰茎結核とも呼ばれます。
 結核疹は、結核に対するアレルギー反応によって生じる皮疹です。この結核疹の一種であるペニス結核疹は、結核に元来過敏性を有している人が結核菌に感染した際、病巣部より少量の結核菌、あるいは結核菌由来の抗原物質が血行性に運ばれて、ペニス亀頭部に到達し、そこでアレルギー反応を起こして発症します。
 その多くは、腎(じん)結核や膀胱(ぼうこう)結核など泌尿器系の結核に続発、合併して発症します。
 ペニス結核疹を発症すると、亀頭部に米粒大よりやや小さな皮疹が発生して、硬いしこりとなり、やがて膿疱(のうほう)、潰瘍(かいよう)を経て、亀頭部の形状が不整形の凸凹となり、醜い瘢痕(はんこん)となって治癒します。軽度の圧痛がある程度で、痛みはほとんどありません。
 潰瘍はあまり増大せず、比較的速やかに搬痕となって治癒しますが、再発しやすく新旧の皮膚病変が並列することもあります。陰茎形成性硬結症、陰茎海綿体炎を合併することもあります。
 明治時代から昭和20年代にかけて、長らく死因のトップで国民病、亡国病とも呼ばれていた結核が減少している近年では、ペニス結核疹は極めてまれな疾患です。
[ダイヤ]ペニス結核疹の検査と診断と治療
 泌尿器科の医師による診断では、硬いしこりの視診、触診を行うとともに、皮膚病変部からは結核菌が発見されないものの、病理組織像は結核性肉芽腫(にくげしゅ)あるいは類上皮細胞性肉芽腫を示し、ツベルクリン反応はほぼ100パーセント陽性であることから、ペニス結核疹と確定します。
 先行する結核感染巣の特定、陰茎がんとの鑑別も行います。
 泌尿器科の医師による治療では、肺結核に準じて、抗結核剤のリファンピシン、イソニアジド、ピラジナミドの3剤、もしくは2剤を用いた初期化学療法を行います。抗結核剤を投与すると、よく反応して大部分が1カ月から5カ月で治癒し、再発もみられなくなります。
 皮膚結核の治療薬である丸山ワクチンの投与や、ツベルクリン減感作療法(免疫療法)を行うこともあります。
 抗結核剤が無効な場合は、外科的な治療で皮膚病変部を切除することもあります。


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■用語 ベネット骨折 [用語(へ)]

[パンチ]母指の中手骨の根元にある母指CM関節で関節内骨折が起こり、脱臼も生じる外傷
 ベネット骨折とは、母指(親指)の先端部から根元に向かって強い力が加わったことにより、母指の中手骨(ちゅうしゅこつ)の根元にある母指CM関節で関節内骨折が起こり、脱臼(だっきゅう)も生じる外傷。母指CM関節脱臼骨折、第1中手骨基底部骨折とも呼ばれます。
 ベネット骨折という疾患名は、1882年に初めて報告したアイルランドの外科医エドワード・ベネットにちなみます。
 ボクシングやけんかでパンチを出して自らの母指の先端部に衝撃が加わった時や、野球でボールが母指の先端部に当たった時、スキーでストックを握った状態で手を突いた時、自転車やバイクのハンドルを握ったまま転倒して母指の根元を打撲した時などに発生します。
 母指CM関節は第1手根中手骨関節とも呼ばれ、母指の手前の甲の骨である第1中手骨と、母指の手根骨で手首にある第1手根骨(大菱形骨〔だいりょうけいこつ〕)の間にある関節で、母指が他の指と向き合って、物をつまんだり、握ったりなどの動作をする上で、大きな働きを担っています。
 ベネット骨折が発生すると、関節周辺に、はれや痛みが起こり、母指を動かしにくくなります。さらに、第1中手骨の根元に連結する筋肉である長母指外転筋が、母指を手首の方向に引っ張るので、第1中手骨の根元が外側に脱臼してきて、母指が変形してきます。
 適切に治療せずにほうっておくと、脱臼を繰り返したり、関節の変形を生じたり、不安定性が残って痛みの原因となることがあります。けがで母指の根元に、はれや痛みが起こったら、早めに整形外科、ないし手の外科を受診することが勧められます。
[パンチ]ベネット骨折の検査と診断と治療
 整形外科、ないし手の外科の医師による診断では、症状からベネット骨折と判断し、X線(レントゲン)検査を行って確認します。
 整形外科、ないし手の外科の医師による治療では、手で徒手整復して骨を元の位置に戻し、整復した状態が維持できる場合は、母指(親指)と示指(人差し指)を離した格好でギプス固定を施します。ギプス固定期間は、約4~5週間となります。
 痛みに対しては、消炎鎮痛剤の内服、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の関節内注射を行います。
 整復した状態が維持できず、骨折部がずれたり、関節内の骨片が安定しない場合は、鋼線と呼ばれる金属で骨を固定する手術か、金属のネジで骨を固定する手術を行います。その後、ギプス固定を施し、骨折が治癒した後に固定具の鋼線、ネジを除去します。
 痛みが強く、脱臼、亜脱臼を伴う高度な関節の変形が見られる場合には、第1手根骨(大菱形骨)の一部を取り除いて関節を作り直す関節形成術、関節を動かないように固定する関節固定術、人工関節を使う人工関節置換術などの手術を行います。




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■用語 ヘルペス性角膜炎 [用語(へ)]

[目]単純ヘルペスウイルスの感染で起こり、再発を繰り返す眼疾
 ヘルペス性角膜炎とは、目の角膜表面に樹枝状の潰瘍(かいよう)ができる疾患。再発を繰り返しながら、表層から深層に炎症が進んでいきます。角膜ヘルペスとも呼ばれます。
 角膜とは、黒目の表面を覆う透明な無血管組織で、4つの異なった層からなっています。外界の光が目の中に入る入り口となるとともに、目の屈折力の約7割を担うレンズとしての役割も果たしています。三叉(さんさ)神経が多岐に分布し、知覚が非常に鋭敏であるという特徴があり、厚さ約1ミリながら目の中の組織を守るために膠原線維(こうげんせんい)というとても丈夫な線維組織で作られています。
 この角膜は、常に外界と接して空気にさらされているために乾燥したり、ほこりが付いたりします。 そこで、まばたきというまぶたの動きによって、常にその表面を涙で湿らして、ほこりを取り除き、細菌やかび、ウイルスなどの侵入を防いでいます。しかし、目にゴミが入ったり、目を強くこすったり、涙の出る量が少なくて角膜が乾燥したりすると、角膜の表面に傷が付いて、傷口から細菌などが侵入し、感染を起こします。
 ヘルペス性角膜炎の原因は、単純ヘルペスウイルスの感染です。ちなみに、単純ヘルペスウイルスは、皮膚の単純疱疹(ほうしん)や、口唇ヘルペス(熱の花)の原因ともなるウイルスです。ヘルペス性角膜炎を発症する時に、単純ヘルペスウイルスが外から感染するのではありません。大部分の人は成人になるまでに、知らない間に感染していますが、あまり発症には至りません。
 ほとんどの場合、単純ヘルペスウイルスは感染後、目の奥にあって角膜の知覚をつかさどっている三叉神経節に潜伏感染しています。このいわば眠った状態の単純ヘルペスウイルスがストレスや体調不良、発熱、気温の低下などが引き金となって目覚め、角膜の表面に出てくることによって、ヘルペス性角膜炎が発症します。発症は、30歳代や40歳代で多くみられます。
 ヘルペス性角膜炎は、単純ヘルペスウイルスが角膜の表面の上皮で増える上皮型と、単純ヘルペスウイルスが角膜の内部に侵入し、角膜に混濁を生じる実質型に大きく分けられます。
 上皮型の症状としては、常に涙が流れ出ている状態となり、まぶしさ、異物感があります。まぶたの裏側から白目の表面を覆っている結膜も、充血してきます。時に痛みを覚えますが、視力の低下は軽度です。眼科医の診断に際して、角膜の上皮を染色すると樹枝状の特徴ある形を見ることができ、これが広がれば地図状の形になることもあります。
 実質型では、充血がひどく、角膜が円板状に濁ってしまうために視界がぼやけ、視力がかなり低下します。角膜の深部の感染した細胞を自分自身のリンパ球が攻撃して起こるのが実質型であり、さらに単純ヘルペスウイルスが深部に入ると、ぶどう膜炎を併発し、角膜に穴が空くこともあります。
 ほとんどの場合、片目で発生します。また、一度治しても、三叉神経節には単純ヘルペスウイルスが残っており、これがしばらくしてまた角膜に出てくるため、再発を繰り返すという厄介な特徴を持っています。
 何度も再発すると角膜全体が混濁して、治療しても視力障害を残す危険性があります。目の感染症の中では、一番失明率が高い疾患ですが、近年、ヘルペス性角膜炎に対して非常に効果を発揮する特効薬であるアシクロビル(ゾビラックス)、バラシクロビル(バルトレックス)が開発され、失明率は低下しました。
 他の人に伝染することはあまりないものの、単純ヘルペスウイルスに対して抗体を持っていない乳幼児に対しては、注意が必要です。成人の発症者が自分の目を触った手で、乳幼児に感染させる可能性があります。
 ヘルペス性角膜炎は、もともと体に単純ヘルペスウイルスを保有している人がかかり、再発しやすいものです。皮膚に発生するヘルペス感染症と同じく、ヘルペス性角膜炎に対しても、再発するごとに根気強く繰り返し治療していく必要があるといえます。ほうっておくと失明する可能性のある疾患なので、油断は大敵です。少しでも目に違和感があれば、特に一度経験した人は、早めに眼科を受診します。
[目]ヘルペス性角膜炎の検査と診断と治療
 眼科の医師は、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で角膜を観察して診断します。上皮型では樹枝状や地図状の潰瘍、実質型では円板状の混濁が診断に役立ちますが、特徴的な所見を示さない場合も多々あります。その場合は、角膜の悪い部位をこすり取ったり、涙を採取したりして、その中に単純ヘルペスウイルスがいないかどうかを調べます。
 一般には、単純ヘルペスウイルスを分離するのはごく一部の専門の施設でないと行えないため、ウイルスの持っている蛋白(たんぱく)に反応する抗体を用いた蛍光抗体法や、ウイルスのDNAを検出するPCRという方法が使用されています。
 また、ヘルペス性角膜炎では角膜の知覚が低下することが特徴であるため、角膜の表面をナイロン糸などの先で触れて、触れたことがわかるかどうかを検査します。
 眼科の医師による治療では、単純ヘルペスウイルスに対する特効薬であるアシクロビル(ゾビラックス)、あるいはバラシクロビル(バルトレックス)の眼軟こうの点入、IDUという薬の点眼を繰り返し行い、二次感染防止のために抗生物質の投与を行います。アシクロビル(ゾビラックス)、あるいはバラシクロビル(バルトレックス)を内服薬として使用することもあります。
 実質型では、体の免疫反応を抑えないと混濁がよくならないので、副腎(ふくじん)皮質ステロイド系の点眼薬を併用します。角膜全体が混濁して視力障害が著しい時には、角膜移植を行います。

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