■病気 糖尿病性腎症 [病気(た行)]
糖尿病によって腎臓の機能が悪化する疾患
糖尿病性腎症(じんしょう)とは、糖尿病によって腎臓の糸球体(しきゅうたい)が細小血管障害のため硬化して、数を減じていく疾患。糖尿病性神経障害、及び糖尿病性網膜症とともに、糖尿病に特有な3大合併症の一つです。
3大合併症はいずれも細い血管障害が主体となっているので、糖尿病性細小血管症と総称されることもあります。ちなみに、糖尿病の他の合併症では、糖尿病性大血管症としての動脈硬化症が重要です。動脈硬化症が進行すると、脳血管障害、虚血性心疾患、壊疽(えそ)などの重症の疾患に結び付きます。
糖尿病性腎症が進行した場合は、腎機能が低下するため、現在では透析療法を受ける人の原因疾患の第1位を占めています。糖尿病になって10年以上経過してから、徐々に蛋白(たんぱく)尿が現れ、やがてネフローゼ症候群となって、むくみを来し、腎機能が悪化してくるのが典型的です。
根本的な原因は、糖尿病による高血糖で、腎臓の糸球体の毛細血管が傷むことにあります。この糸球体は、非常にたくさんの毛細血管が糸を巻いた毬(まり)のように寄り集まっている腎臓中の主要構成組織であり、また、血液中の不要な老廃物を尿に濾過(ろか)して排泄(はいせつ)するという腎臓の最大の機能の担い手です。糸球体の毛細血管は、糖尿病で血糖が高い状態が続くと、次第に硬化して、数を減じてきます。そのために、本来は体外に排泄されるはずの老廃物が、体内にとどまってしまいます。
かなり進行してからでないと、糖尿病性腎症の自覚症状は現れません。従って、むくみなどの自覚症状が出現した場合は、かなり進行していることになります。腎機能が悪化し腎不全になると、体内への尿毒症物質の蓄積による尿毒症が出現して、頭痛、吐き気、立ちくらみなどを生じます。
糖尿病性腎症の病期分類は、5期に分かれています。蛋白尿と腎機能が指標になっており、第2期以降を臨床的に糖尿病性腎症と呼んでいます。
第1期(腎症前期)
症状はありません。医学的な異常所見も見当たりません。糖尿病を発症した時点で、第1期と解釈することができます。
第2期(早期腎症)
第1期から5〜15年で発症します。自覚症状はありません。
第3期(非代償性腎不全)
第3期A
尿検査用試験紙で、尿蛋白が陽性となります。自覚症状は通常ありません。
第3期B
続発性ネフローゼ症候群を呈します。低アルブミン血症によるむくみや、うっ血性心不全を生じます。
第4期(腎不全期)
むくみに加え、倦怠(けんたい)感、悪心、精神的不安定、掻痒(そうよう)感などの尿毒症症状が生じ始めます。インシュリンは腎臓で一部代謝、排泄されるため、この病期に至ると腎機能低下に伴い、体内にインシュリンが蓄積し、血糖コントロールに内服薬やインシュリンが不要になることもあります。
また、一部の血糖降下薬は活性代謝物がたまり、遷延(せんえん)性の低血糖を起こしやすくなるため注意が必要です。
第5期(透析療法期)
腎機能が廃絶するため、透析療法を行わないと尿毒症症状が容易に生じて、死に至ります。
糖尿病性腎症の検査と診断と治療
糖尿病を発症しても、なかなか治療に専念しない人も多く見受けられます。血糖値が高くても、糖尿病自体の自覚症状はないことが多いためです。しかし、高血糖や高血圧を放置しておくと、いつの間にか糖尿病性腎症を始めとする糖尿病合併症にかかっていることもあり、治療に苦慮する場合も少なくありません。
つまり、糖尿病合併症にならないような予防的な考え方で、糖尿病自体を治療する必要があります。もし糖尿病性腎症になったとしても、やはり血糖値を安定させ血圧も安定させることが、最も大切になります。そして、できる限りの早期発見、早期治療が、腎機能の悪化を防ぎます。
医師による糖尿病性腎症の診断は、尿中アルブミン排泄量の検査で行います。アルブミンは蛋白質の一つですが、一般的に使われている検査法である試験紙法で尿蛋白が陰性であっても、精密に測定すると尿中にアルブミンが出てきていることがあります。
具体的には、随時、尿でアルブミン(mg /dl)とクレアチニン(g/dl)の測定を行い、その比(アルブミン/クレアチニン)が30〜300mg/g・Crの範囲にあることを微量アルブミン尿と呼んでいて、病期では第2期(早期腎症)に相当します。
また、腎機能はクレアチニンクリアランスで表され、正常では80〜110ml/分で、腎機能が低下すると数値が低くなります。
検査には、腎臓生体針検査(病理検査)、腎臓超音波検査もあります。
基本的な治療法は、まず血糖値の正常化と血圧の正常化です。この血糖コントロールと血圧コントロールは、どの病期でも行われる治療法です。
血糖コントロール
食事療法と運動療法が基本となり、必要に応じて糖尿病薬を使用します。第4期(腎不全期)以降では、原則として経口薬は使用せず、インシュリン注射を使用します。また、運動療法は、第3期(非代償性腎不全)B以降は制限が必要です。
血糖コントロールの目標は、食前血糖値120mg/dl未満、食後2時間血糖値180mg/dl未満、HbA1c6・5%未満です。
血圧コントロール
糸球体の肥厚や硬化を防ぐために、糸球体内圧を下げるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン 受容体拮抗(きっこう)薬を用いることが推奨されていますが、全身の血圧も十分降圧する必要もあり、カルシウム拮抗薬などとの併用療法が必要になることも多いのが現状です。
血圧コントロールの目標は130/80mmHg未満ですが、可能ならば120/70mmHg未満を目標にします。
蛋白質摂取
食事中の蛋白質摂取量に関しては、第3期(非代償性腎不全)〜第4期(腎不全期)にかけては制限したほうがよいと考えられています。具体的には、標準体重1kg当たり通常は1・0〜1・2g/日のところを、0・8〜1・0g/日あるいは0・6〜0・8g/日まで段階的に制限していく方法が一般的です。
塩分摂取
塩分に関しては、高血圧が存在する場合は、第1期(腎症前期)から7〜8g/日の制限が必要です。第3期(非代償性腎不全)以降は高血圧の有無にかかわらず、5〜6g/日の制限が推奨されています。
食塩の取りすぎは、むくみを誘発し、血圧にもよくありません。水の飲みすぎにも、注意しなければなりません。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
糖尿病性腎症(じんしょう)とは、糖尿病によって腎臓の糸球体(しきゅうたい)が細小血管障害のため硬化して、数を減じていく疾患。糖尿病性神経障害、及び糖尿病性網膜症とともに、糖尿病に特有な3大合併症の一つです。
3大合併症はいずれも細い血管障害が主体となっているので、糖尿病性細小血管症と総称されることもあります。ちなみに、糖尿病の他の合併症では、糖尿病性大血管症としての動脈硬化症が重要です。動脈硬化症が進行すると、脳血管障害、虚血性心疾患、壊疽(えそ)などの重症の疾患に結び付きます。
糖尿病性腎症が進行した場合は、腎機能が低下するため、現在では透析療法を受ける人の原因疾患の第1位を占めています。糖尿病になって10年以上経過してから、徐々に蛋白(たんぱく)尿が現れ、やがてネフローゼ症候群となって、むくみを来し、腎機能が悪化してくるのが典型的です。
根本的な原因は、糖尿病による高血糖で、腎臓の糸球体の毛細血管が傷むことにあります。この糸球体は、非常にたくさんの毛細血管が糸を巻いた毬(まり)のように寄り集まっている腎臓中の主要構成組織であり、また、血液中の不要な老廃物を尿に濾過(ろか)して排泄(はいせつ)するという腎臓の最大の機能の担い手です。糸球体の毛細血管は、糖尿病で血糖が高い状態が続くと、次第に硬化して、数を減じてきます。そのために、本来は体外に排泄されるはずの老廃物が、体内にとどまってしまいます。
かなり進行してからでないと、糖尿病性腎症の自覚症状は現れません。従って、むくみなどの自覚症状が出現した場合は、かなり進行していることになります。腎機能が悪化し腎不全になると、体内への尿毒症物質の蓄積による尿毒症が出現して、頭痛、吐き気、立ちくらみなどを生じます。
糖尿病性腎症の病期分類は、5期に分かれています。蛋白尿と腎機能が指標になっており、第2期以降を臨床的に糖尿病性腎症と呼んでいます。
第1期(腎症前期)
症状はありません。医学的な異常所見も見当たりません。糖尿病を発症した時点で、第1期と解釈することができます。
第2期(早期腎症)
第1期から5〜15年で発症します。自覚症状はありません。
第3期(非代償性腎不全)
第3期A
尿検査用試験紙で、尿蛋白が陽性となります。自覚症状は通常ありません。
第3期B
続発性ネフローゼ症候群を呈します。低アルブミン血症によるむくみや、うっ血性心不全を生じます。
第4期(腎不全期)
むくみに加え、倦怠(けんたい)感、悪心、精神的不安定、掻痒(そうよう)感などの尿毒症症状が生じ始めます。インシュリンは腎臓で一部代謝、排泄されるため、この病期に至ると腎機能低下に伴い、体内にインシュリンが蓄積し、血糖コントロールに内服薬やインシュリンが不要になることもあります。
また、一部の血糖降下薬は活性代謝物がたまり、遷延(せんえん)性の低血糖を起こしやすくなるため注意が必要です。
第5期(透析療法期)
腎機能が廃絶するため、透析療法を行わないと尿毒症症状が容易に生じて、死に至ります。
糖尿病性腎症の検査と診断と治療
糖尿病を発症しても、なかなか治療に専念しない人も多く見受けられます。血糖値が高くても、糖尿病自体の自覚症状はないことが多いためです。しかし、高血糖や高血圧を放置しておくと、いつの間にか糖尿病性腎症を始めとする糖尿病合併症にかかっていることもあり、治療に苦慮する場合も少なくありません。
つまり、糖尿病合併症にならないような予防的な考え方で、糖尿病自体を治療する必要があります。もし糖尿病性腎症になったとしても、やはり血糖値を安定させ血圧も安定させることが、最も大切になります。そして、できる限りの早期発見、早期治療が、腎機能の悪化を防ぎます。
医師による糖尿病性腎症の診断は、尿中アルブミン排泄量の検査で行います。アルブミンは蛋白質の一つですが、一般的に使われている検査法である試験紙法で尿蛋白が陰性であっても、精密に測定すると尿中にアルブミンが出てきていることがあります。
具体的には、随時、尿でアルブミン(mg /dl)とクレアチニン(g/dl)の測定を行い、その比(アルブミン/クレアチニン)が30〜300mg/g・Crの範囲にあることを微量アルブミン尿と呼んでいて、病期では第2期(早期腎症)に相当します。
また、腎機能はクレアチニンクリアランスで表され、正常では80〜110ml/分で、腎機能が低下すると数値が低くなります。
検査には、腎臓生体針検査(病理検査)、腎臓超音波検査もあります。
基本的な治療法は、まず血糖値の正常化と血圧の正常化です。この血糖コントロールと血圧コントロールは、どの病期でも行われる治療法です。
血糖コントロール
食事療法と運動療法が基本となり、必要に応じて糖尿病薬を使用します。第4期(腎不全期)以降では、原則として経口薬は使用せず、インシュリン注射を使用します。また、運動療法は、第3期(非代償性腎不全)B以降は制限が必要です。
血糖コントロールの目標は、食前血糖値120mg/dl未満、食後2時間血糖値180mg/dl未満、HbA1c6・5%未満です。
血圧コントロール
糸球体の肥厚や硬化を防ぐために、糸球体内圧を下げるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン 受容体拮抗(きっこう)薬を用いることが推奨されていますが、全身の血圧も十分降圧する必要もあり、カルシウム拮抗薬などとの併用療法が必要になることも多いのが現状です。
血圧コントロールの目標は130/80mmHg未満ですが、可能ならば120/70mmHg未満を目標にします。
蛋白質摂取
食事中の蛋白質摂取量に関しては、第3期(非代償性腎不全)〜第4期(腎不全期)にかけては制限したほうがよいと考えられています。具体的には、標準体重1kg当たり通常は1・0〜1・2g/日のところを、0・8〜1・0g/日あるいは0・6〜0・8g/日まで段階的に制限していく方法が一般的です。
塩分摂取
塩分に関しては、高血圧が存在する場合は、第1期(腎症前期)から7〜8g/日の制限が必要です。第3期(非代償性腎不全)以降は高血圧の有無にかかわらず、5〜6g/日の制限が推奨されています。
食塩の取りすぎは、むくみを誘発し、血圧にもよくありません。水の飲みすぎにも、注意しなければなりません。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
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