■用語 指趾粘液囊腫 [用語(し)]
手指の先端にできる良性腫瘍で、中年以降の女性に多く発生
指趾粘液嚢腫(ししねんえきのうしゅ)とは、主に手指の先端の第1関節(DIP関節)の甲側、時に足趾の甲側に、水膨れのような形状の膨らみが生じる良性の疾患。ミューカスシストとも呼ばれます。
中年以降の女性に多くみられる傾向があります。
膨らみは直径1センチ以下のものが多く、膨らみの内部は透明なゼリー状の粘液で満たされています。
多くは膨らみを触知するだけで無症状ですが、大きくなると皮膚が引き延ばされて薄くなり、内部が透けて見えるようになったり、痛みを伴ったりすることがあります。皮膚が破れると、細菌が第1関節内に入って関節を壊し、化膿(かのう)性関節炎や骨髄炎に至る可能性があります。
また、爪(つめ)の付け根近くに膨らみが生じ、爪を作る爪母を圧迫した場合は、爪に縦方向の溝が入ったり、変形したりすることもあります。
この指趾粘液嚢腫には、線維芽細胞がヒアルロン酸を過剰に分泌して、皮膚下にたまる粘液腫性型と、骨性の盛り上がりの骨棘(こっきょく)の刺激により関節内の潤滑剤として働く滑液が周囲の組織に漏れ出し、貯留して膨らみを形成するガングリオン型があります。
さらに、第1関節の変形性関節症であるへバーデン結節に伴う変形や炎症が刺激となって、指趾粘液嚢腫が合併して生じるケースも多く見受けられます。
外傷が元になって生じるケースも多く見受けられるものの、複数の指に指趾粘液嚢腫ができます。
指趾粘液嚢腫は自然に治る傾向がほとんどないため、治療の希望があれば皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは整形外科の専門医を受診します。
指趾粘液囊腫の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科の医師による診断では、病変の見た目から判断することもよくあります。ただし、確定診断のためには、ゼリー状の粘液を注射器で吸引して顕微鏡で調べる生検を行い、ヒアルロン酸などを確認することが必要です。
このほか、小さな病変の確認や、より詳しい評価のために、X線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などを実施するケースもあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科の医師による治療では、健康に悪影響を及ぼすことが少ない良性疾患であり、治療を行わなければいけないというわけではありません。
膨らみが自然に消えることは少ないため、肥大した膨らみが神経や腱(けん)を圧迫して痛みがある場合や患者が希望する場合には、保存的治療、凍結療法、摘出手術のいずれかを行います。
保存的治療では、注射器でゼリー状の粘液を穿刺(せんし)吸引します。麻酔をかける必要はなく、痛みも少ないという特徴があります。しかし、根本的な治療方法ではないため、繰り返し行う必要がありますが、複数回実施することで治癒するケースもあります。粘液を吸引した後、少量のステロイド薬を注入することもあります。
凍結療法では、液体窒素を用いて、病変組織を凍結して破壊します。治療時に痛みを伴いますが、副作用は少なく安全性の高い方法とされます。
摘出手術では、局所麻酔をかけ、根治を目的として病変組織を十分に切除します。ガングリオン型の指趾粘液囊腫の場合は、病変組織が関節や腱に付着し、その根元が深かったり、小さな病変がたくさん付属していることがあるため、十分に注意を払って骨性の盛り上がりの骨棘を切除すると、治癒することが多くあります。
へバーデン結節に合併した指趾粘液囊腫の場合は、保存的治療で痛みが改善しない時や、変形がひどくなったり関節の動揺性がひどくなって日常生活に支障を来す時は、第1関節を固定する手術、骨棘と病変組織を切除する手術を行うことがあります。
指趾粘液嚢腫(ししねんえきのうしゅ)とは、主に手指の先端の第1関節(DIP関節)の甲側、時に足趾の甲側に、水膨れのような形状の膨らみが生じる良性の疾患。ミューカスシストとも呼ばれます。
中年以降の女性に多くみられる傾向があります。
膨らみは直径1センチ以下のものが多く、膨らみの内部は透明なゼリー状の粘液で満たされています。
多くは膨らみを触知するだけで無症状ですが、大きくなると皮膚が引き延ばされて薄くなり、内部が透けて見えるようになったり、痛みを伴ったりすることがあります。皮膚が破れると、細菌が第1関節内に入って関節を壊し、化膿(かのう)性関節炎や骨髄炎に至る可能性があります。
また、爪(つめ)の付け根近くに膨らみが生じ、爪を作る爪母を圧迫した場合は、爪に縦方向の溝が入ったり、変形したりすることもあります。
この指趾粘液嚢腫には、線維芽細胞がヒアルロン酸を過剰に分泌して、皮膚下にたまる粘液腫性型と、骨性の盛り上がりの骨棘(こっきょく)の刺激により関節内の潤滑剤として働く滑液が周囲の組織に漏れ出し、貯留して膨らみを形成するガングリオン型があります。
さらに、第1関節の変形性関節症であるへバーデン結節に伴う変形や炎症が刺激となって、指趾粘液嚢腫が合併して生じるケースも多く見受けられます。
外傷が元になって生じるケースも多く見受けられるものの、複数の指に指趾粘液嚢腫ができます。
指趾粘液嚢腫は自然に治る傾向がほとんどないため、治療の希望があれば皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは整形外科の専門医を受診します。
指趾粘液囊腫の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科の医師による診断では、病変の見た目から判断することもよくあります。ただし、確定診断のためには、ゼリー状の粘液を注射器で吸引して顕微鏡で調べる生検を行い、ヒアルロン酸などを確認することが必要です。
このほか、小さな病変の確認や、より詳しい評価のために、X線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などを実施するケースもあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科の医師による治療では、健康に悪影響を及ぼすことが少ない良性疾患であり、治療を行わなければいけないというわけではありません。
膨らみが自然に消えることは少ないため、肥大した膨らみが神経や腱(けん)を圧迫して痛みがある場合や患者が希望する場合には、保存的治療、凍結療法、摘出手術のいずれかを行います。
保存的治療では、注射器でゼリー状の粘液を穿刺(せんし)吸引します。麻酔をかける必要はなく、痛みも少ないという特徴があります。しかし、根本的な治療方法ではないため、繰り返し行う必要がありますが、複数回実施することで治癒するケースもあります。粘液を吸引した後、少量のステロイド薬を注入することもあります。
凍結療法では、液体窒素を用いて、病変組織を凍結して破壊します。治療時に痛みを伴いますが、副作用は少なく安全性の高い方法とされます。
摘出手術では、局所麻酔をかけ、根治を目的として病変組織を十分に切除します。ガングリオン型の指趾粘液囊腫の場合は、病変組織が関節や腱に付着し、その根元が深かったり、小さな病変がたくさん付属していることがあるため、十分に注意を払って骨性の盛り上がりの骨棘を切除すると、治癒することが多くあります。
へバーデン結節に合併した指趾粘液囊腫の場合は、保存的治療で痛みが改善しない時や、変形がひどくなったり関節の動揺性がひどくなって日常生活に支障を来す時は、第1関節を固定する手術、骨棘と病変組織を切除する手術を行うことがあります。
■用語 舌なめずり口唇炎 [用語(し)]
唇の皮が繰り返して、はがれ続ける疾患
舌なめずり口唇炎とは、唇が乾燥して皮がはがれたり、めくれたり、赤くなったり、ひび割れたり、かさぶたがみられたりする疾患。剥脱(はくだつ)性口唇炎、落屑(らくせつ)性口唇炎とも呼ばれます。
難治性で、症状が繰り返し出現し、治るまでに時間がかかることも少なくありません。
原因ははっきりしませんが、自分の舌で唇を繰り返しなめる、もしくは自分の手指で唇の皮をむしるなどの物理的な刺激による炎症と考えられています。大人より子供のほうが舌で唇をなめる機会が多く、子供がかかりやすい口唇炎であることから、舌なめずり口唇炎と呼ばれます。
唇が乾燥している状態であり、舌で唇をなめると唾液(だえき)で一時的に潤ったように感じられますが、舌なめずりのような刺激が繰り返し加わることで、唇の油分が減り、唾液に含まれる消化酵素が乾燥を助長し、唇の皮膚の表層にある角質層がはがれやすくなります。その結果、皮膚のターンオーバー(新陳代謝)が早まり、角質層が正常に形成されないため、外部からの刺激や異物の侵入から守ったり、内側に蓄えている水分が逃げないようにしたりする皮膚のバリア機能が失われた状態となります。
唇は極度に乾燥し、それによってさらに舌なめずりを繰り返すことで、症状が悪化するという悪循環を生じます。唇の皮がはがれたり、めくれたり、赤くなったり、ひび割れたり、かさぶたがみられたりするほか、出血などの症状がみられるようになります。また、口角に亀裂(きれつ)が入ったり、唇の内側の皮がむけたりするなど周囲の皮膚にまで炎症が波及することもあります。唾液や飲み物などの刺激によって、ヒリヒリ感、痛み、かゆみを生じることもあります。
特に冬季などの空気が乾燥した時期に、舌なめずり口唇炎は起こりやすくなります。
舌なめずり口唇炎は時には大人にもみられ、栄養不足、ビタミンの欠乏、精神的な背景なども原因になることもあります。
感染症による口唇炎を伴うケースもあり、唇に水疱(すいほう)ができるものはヘルペスなどのウイルス感染、白い苔(こけ)のようなものが唇に付着するものはカンジダなどによる真菌感染、ただれが強いものは細菌感染が考えられ、強い痛みやはれ、発熱などが現れることもあります。
舌なめずり口唇炎の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、舌なめずり口唇炎と確定するためには、アレルギー性の接触性口唇炎、いわゆる、かぶれを除外することが必要です。かぶれの原因として、食べ物や口紅、リップクリーム、歯磨き粉、治療で使用している外用薬などが考えられるので、これらに対しパッチテストを行い、かぶれかどうかを判断します。
また、口の中にいる一般的なカビであるカンジダや細菌、ウイルスなどの感染を伴うこともあり、それぞれ治療法が異なるので、検査を行います。
舌なめずり口唇炎と同じような症状を示す特殊な疾患として粘膜苔癬(たいせん) があるので、この疾患を除外するために、唇の組織を一部切り取って顕微鏡で調べる生検を行うこともあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、ワセリンなどの保湿剤を使用し、炎症が強い時はステロイド剤(副腎〈ふくじん〉皮質ホルモン剤)や非ステロイド剤の外用薬を使います。また、栄養バランスに気を付け、ビタミン、特にビタミンB2、B6を補うことも治療の一つとなります。
感染症による口唇炎を伴っている場合には、抗生物質(抗菌剤)、抗ウイルス薬、抗真菌薬など、それぞれの病原体に適した塗り薬や内服薬を使用します。
精神的な原因が背景にある場合には、抗うつ剤の内服薬の使用で改善するケースもありますが、無意識のうちに舌で唇をなめたり、皮をむしったりしてしまうことがあって、治りにくくなるので、ストレスをためないなど日常生活を工夫することも大切です。
舌なめずり口唇炎とは、唇が乾燥して皮がはがれたり、めくれたり、赤くなったり、ひび割れたり、かさぶたがみられたりする疾患。剥脱(はくだつ)性口唇炎、落屑(らくせつ)性口唇炎とも呼ばれます。
難治性で、症状が繰り返し出現し、治るまでに時間がかかることも少なくありません。
原因ははっきりしませんが、自分の舌で唇を繰り返しなめる、もしくは自分の手指で唇の皮をむしるなどの物理的な刺激による炎症と考えられています。大人より子供のほうが舌で唇をなめる機会が多く、子供がかかりやすい口唇炎であることから、舌なめずり口唇炎と呼ばれます。
唇が乾燥している状態であり、舌で唇をなめると唾液(だえき)で一時的に潤ったように感じられますが、舌なめずりのような刺激が繰り返し加わることで、唇の油分が減り、唾液に含まれる消化酵素が乾燥を助長し、唇の皮膚の表層にある角質層がはがれやすくなります。その結果、皮膚のターンオーバー(新陳代謝)が早まり、角質層が正常に形成されないため、外部からの刺激や異物の侵入から守ったり、内側に蓄えている水分が逃げないようにしたりする皮膚のバリア機能が失われた状態となります。
唇は極度に乾燥し、それによってさらに舌なめずりを繰り返すことで、症状が悪化するという悪循環を生じます。唇の皮がはがれたり、めくれたり、赤くなったり、ひび割れたり、かさぶたがみられたりするほか、出血などの症状がみられるようになります。また、口角に亀裂(きれつ)が入ったり、唇の内側の皮がむけたりするなど周囲の皮膚にまで炎症が波及することもあります。唾液や飲み物などの刺激によって、ヒリヒリ感、痛み、かゆみを生じることもあります。
特に冬季などの空気が乾燥した時期に、舌なめずり口唇炎は起こりやすくなります。
舌なめずり口唇炎は時には大人にもみられ、栄養不足、ビタミンの欠乏、精神的な背景なども原因になることもあります。
感染症による口唇炎を伴うケースもあり、唇に水疱(すいほう)ができるものはヘルペスなどのウイルス感染、白い苔(こけ)のようなものが唇に付着するものはカンジダなどによる真菌感染、ただれが強いものは細菌感染が考えられ、強い痛みやはれ、発熱などが現れることもあります。
舌なめずり口唇炎の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、舌なめずり口唇炎と確定するためには、アレルギー性の接触性口唇炎、いわゆる、かぶれを除外することが必要です。かぶれの原因として、食べ物や口紅、リップクリーム、歯磨き粉、治療で使用している外用薬などが考えられるので、これらに対しパッチテストを行い、かぶれかどうかを判断します。
また、口の中にいる一般的なカビであるカンジダや細菌、ウイルスなどの感染を伴うこともあり、それぞれ治療法が異なるので、検査を行います。
舌なめずり口唇炎と同じような症状を示す特殊な疾患として粘膜苔癬(たいせん) があるので、この疾患を除外するために、唇の組織を一部切り取って顕微鏡で調べる生検を行うこともあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、ワセリンなどの保湿剤を使用し、炎症が強い時はステロイド剤(副腎〈ふくじん〉皮質ホルモン剤)や非ステロイド剤の外用薬を使います。また、栄養バランスに気を付け、ビタミン、特にビタミンB2、B6を補うことも治療の一つとなります。
感染症による口唇炎を伴っている場合には、抗生物質(抗菌剤)、抗ウイルス薬、抗真菌薬など、それぞれの病原体に適した塗り薬や内服薬を使用します。
精神的な原因が背景にある場合には、抗うつ剤の内服薬の使用で改善するケースもありますが、無意識のうちに舌で唇をなめたり、皮をむしったりしてしまうことがあって、治りにくくなるので、ストレスをためないなど日常生活を工夫することも大切です。
■用語 若年性再発性網膜硝子体出血 [用語(し)]
網膜や眼球内に出血を起こす、若い人に多い眼病
若年性再発性網膜硝子体(しょうしたい)出血とは、網膜血管に血管炎が起こって血管が詰まったり、新生血管が生えてきて、網膜や眼球内に出血を起こす眼病。イールズ病とも呼ばれます。
眼球内出血のことを硝子体(しょうしたい)出血といい、この眼病は若い人によく出る疾患で硝子体出血を何度も起こします。若年者、ことに男子に多くみられ、突然の網膜硝子体の出血による視力低下で最初に気が付くケースが、多く認められます。
網膜硝子体の出血が起こると、光が網膜に届かなくなって、ひどい場合は急に何も見えなくなります。しかし、この硝子体出血は1~2週間でひき始めて、見え出すことが多いようです。出血を繰り返しているうちに、眼底に白い繊維のような組織の増殖が進み、この繊維が網膜を引っ張って、破ったりする網膜裂孔形成により、網膜剥離(はくり)や大出血を起こして、著しい視力の低下を来し、最悪の場合失明することがあります。また、出血がひどくなってしまうと、感染症も引き起こされることがあります。
大出血を起こす原因としては、網膜静脈壁の炎症を起こす網膜静脈周囲炎による静脈壁の破裂によるとする説が有力で、事実、病勢の盛んな時には網膜静脈に広範に白鞘(しろさや)をかぶったような変化がみられ、これは網膜静脈周囲炎によって起こると考えられます。また、まれに同様の変化が動脈壁にもみられることがあります。
網膜静脈周囲炎は通常、網膜周辺部に初発し、広範な領域に毛細血管網の閉塞(へいそく)した無血管領域が見られ、毛細血管網の閉塞は徐々に網膜中心部におよびます。こうした血管変化を起こす原因は、無血管領域の低酸素状態に陥った網膜からの影響と考えられます。
若年性再発性網膜硝子体出血の90%が両側性であるといわれるものの、必ずしも両眼同時に進行するものではなく、程度の差、発病と進行の時期的なずれはかなり著しい場合があります。
その病因に関しては、結核、その他細菌アレルギー説などが有力でしたが、若年性再発性網膜硝子体出血は病因にも不明な点が多く、結核アレルギー説、病巣感染説なども必ずしも信頼性が高いとはいえません。
しかし、日本において明治時代から昭和20年代にかけて、長らく死因のトップで国民病、亡国病とも呼ばれていた結核が、国を挙げて予防や治療に取り組んだため死亡者が激減したことと軌を一にするように、太平洋戦争の終戦前には相当多数起こっていた若年性再発性網膜硝子体出血も、戦後は著しく減少しました。
若年性再発性網膜硝子体出血の検査と診断と治療
眼科、あるいは小児眼科の医師による若年性再発性網膜硝子体出血の検査は、視力検査、眼底検査や蛍光眼底検査、視野検査を行い、網膜の状態を調べます。
これらの検査の結果、さらなる精密検査が必要であると判断された場合には、網膜電図検査や暗順応の検査が行うことがありますが、ほとんどの場合は眼底検査の段階で診断は可能です。そのほかの検査は、ほかの眼病を併発していないかなどを調べるために行います。
眼科、あるいは小児眼科の医師による若年性再発性網膜硝子体出血の治療としては、糖尿病と同様の治療を行うことで血液成分を改善していくことで、傷害を受けた毛細血管を消滅させることがあります。
眼科的な治療としては、レーザー光線やキセノン光線を照射することで、網膜周辺部無血管領域の低酸素状態に陥った毛細血管を消滅させ、破壊する光凝固と呼ばれるものがあります。低酸素状態を緩和、ないしは消失できれば、病勢の進行に好影響を与え、場合によっては治癒に導けます。
また、病勢そのものが一段落した後に網膜硝子体中に生じた新生血管網のみが出血を繰り返す場合は、光凝固によりその閉塞を図る治療が成果を上げています。
網膜硝子体手術によって、出血で濁った硝子体を取り除き、視力回復を試みることもあります。
若年性再発性網膜硝子体(しょうしたい)出血とは、網膜血管に血管炎が起こって血管が詰まったり、新生血管が生えてきて、網膜や眼球内に出血を起こす眼病。イールズ病とも呼ばれます。
眼球内出血のことを硝子体(しょうしたい)出血といい、この眼病は若い人によく出る疾患で硝子体出血を何度も起こします。若年者、ことに男子に多くみられ、突然の網膜硝子体の出血による視力低下で最初に気が付くケースが、多く認められます。
網膜硝子体の出血が起こると、光が網膜に届かなくなって、ひどい場合は急に何も見えなくなります。しかし、この硝子体出血は1~2週間でひき始めて、見え出すことが多いようです。出血を繰り返しているうちに、眼底に白い繊維のような組織の増殖が進み、この繊維が網膜を引っ張って、破ったりする網膜裂孔形成により、網膜剥離(はくり)や大出血を起こして、著しい視力の低下を来し、最悪の場合失明することがあります。また、出血がひどくなってしまうと、感染症も引き起こされることがあります。
大出血を起こす原因としては、網膜静脈壁の炎症を起こす網膜静脈周囲炎による静脈壁の破裂によるとする説が有力で、事実、病勢の盛んな時には網膜静脈に広範に白鞘(しろさや)をかぶったような変化がみられ、これは網膜静脈周囲炎によって起こると考えられます。また、まれに同様の変化が動脈壁にもみられることがあります。
網膜静脈周囲炎は通常、網膜周辺部に初発し、広範な領域に毛細血管網の閉塞(へいそく)した無血管領域が見られ、毛細血管網の閉塞は徐々に網膜中心部におよびます。こうした血管変化を起こす原因は、無血管領域の低酸素状態に陥った網膜からの影響と考えられます。
若年性再発性網膜硝子体出血の90%が両側性であるといわれるものの、必ずしも両眼同時に進行するものではなく、程度の差、発病と進行の時期的なずれはかなり著しい場合があります。
その病因に関しては、結核、その他細菌アレルギー説などが有力でしたが、若年性再発性網膜硝子体出血は病因にも不明な点が多く、結核アレルギー説、病巣感染説なども必ずしも信頼性が高いとはいえません。
しかし、日本において明治時代から昭和20年代にかけて、長らく死因のトップで国民病、亡国病とも呼ばれていた結核が、国を挙げて予防や治療に取り組んだため死亡者が激減したことと軌を一にするように、太平洋戦争の終戦前には相当多数起こっていた若年性再発性網膜硝子体出血も、戦後は著しく減少しました。
若年性再発性網膜硝子体出血の検査と診断と治療
眼科、あるいは小児眼科の医師による若年性再発性網膜硝子体出血の検査は、視力検査、眼底検査や蛍光眼底検査、視野検査を行い、網膜の状態を調べます。
これらの検査の結果、さらなる精密検査が必要であると判断された場合には、網膜電図検査や暗順応の検査が行うことがありますが、ほとんどの場合は眼底検査の段階で診断は可能です。そのほかの検査は、ほかの眼病を併発していないかなどを調べるために行います。
眼科、あるいは小児眼科の医師による若年性再発性網膜硝子体出血の治療としては、糖尿病と同様の治療を行うことで血液成分を改善していくことで、傷害を受けた毛細血管を消滅させることがあります。
眼科的な治療としては、レーザー光線やキセノン光線を照射することで、網膜周辺部無血管領域の低酸素状態に陥った毛細血管を消滅させ、破壊する光凝固と呼ばれるものがあります。低酸素状態を緩和、ないしは消失できれば、病勢の進行に好影響を与え、場合によっては治癒に導けます。
また、病勢そのものが一段落した後に網膜硝子体中に生じた新生血管網のみが出血を繰り返す場合は、光凝固によりその閉塞を図る治療が成果を上げています。
網膜硝子体手術によって、出血で濁った硝子体を取り除き、視力回復を試みることもあります。
☐用語 自己免疫性溶血性貧血 [用語(し)]
赤血球に結合する自己抗体ができて、赤血球の寿命が著しく短縮し、貧血を来す疾患
自己免疫性溶血性貧血とは、自身の赤血球膜上の抗原に結合する自己抗体ができて、赤血球が異常に早く破壊されて起こる貧血。
自己抗体は自分の体の成分に対する抗体で、本来は細菌などから体を守るために抗体は作られ、自分の体に対しては作られませんが、自己免疫疾患と呼ばれる一連の疾患では、自己抗体が出現し赤血球をまるで異物であるかのように攻撃します。
赤血球に自己抗体が結合し、補体と共同して血管内で赤血球を破壊するものと、自己抗体や補体を介して主に脾臓(ひぞう)で破壊されるものがあります。
この自己抗体による赤血球の破壊は、突然起こることもあれば、ゆっくりと進行することもあります。人によっては、このような破壊がしばらくすると止まることがあります。また、赤血球の破壊が止まらず、慢性化する人もいます。
自己免疫性溶血性貧血には、いろいろな病型があり、原因もさまざまです。主な病型は2種類あり、37度の正常体温付近で抗体の結合が強いものを温式自己免疫性溶血性貧血、正常体温以下の特に4度で抗体の結合が強いものを冷式自己免疫性溶血性貧血と呼びます。
自己免疫性溶血性貧血の発症者は全国で1300~1700人を数え、1年間に数百人程度の新たな発症者が発生していると推定されています。このうち、温式自己免疫性溶血性貧血の発症者が9割を占め、冷式自己免疫性溶血性貧血の発症者は1割です。
子供から高齢者までの幅広い年齢で、発症します。温式自己免疫性溶血性貧血は、小児期に1つの小さなピークがあるほか、10~30歳の若年層、50歳以後に増加し70歳代がピークの老年層に多くみられます。若年層では女性が優位で、老年層では男女差は認められません。
原因は自分の赤血球膜上の抗原と反応する自己抗体ができることによるのですが、なぜ抗原抗体反応が起こるのかはまだ明らかではありません。膠原(こうげん)病などの自己免疫疾患の患者や、リンパ腫(しゅ)などの悪性腫瘍(しゅよう)の患者で、この自己免疫性溶血性貧血がみられることがあります。また、マイコプラズマ肺炎の患者にも、冷式自己免疫性溶血性貧血がみられることがあります。
疾患の発症に、遺伝性はありません。
特に赤血球の破壊が軽度で緩やかに進む場合は、症状がみられないことがあります。それ以外では、主な症状は貧血によるもので、だるさ、動悸(どうき)、息切れ、めまい、頭痛、顔面蒼白などが現れます。
赤血球の破壊が重度な場合や急速な場合は、血液の中にヘモグロビン(血色素)の分解産物であるビリルビンがたまるため、白目の部分や肌が黄色く見える軽い黄疸(おうだん)がみられることもあり、腹部に不快感や膨満感を覚えたりします。脾臓がはれたり、濃い色を示すヘモグロビン尿がみられることもあります。慢性に経過すると胆石症を合併することも知られています。
冷式自己免疫性溶血性貧血では、手や足が冷たくなったり、青みがかったりすることがあります。冷式自己免疫性溶血性貧血のうちのまれなタイプである発作性寒冷血色素尿症では、気温の低下、冷水の飲用や洗顔・手洗いなど、寒気にさらされる部分が小さくても赤血球が破壊されることがあり、背中や脚に激しい痛みが生じたり、頭痛、嘔吐(おうと)、下痢がみられることもあります。暗褐色を示すヘモグロビン尿がみられることもあります。
原因が別の疾患によるものであれば、リンパ節のはれや圧痛、発熱など、原因になっている基礎疾患の症状が主に現れることがあります。
自己免疫性溶血性貧血の検査と診断と治療
小児科、内科、血液内科などの医師による診断では、 血液検査を行って、貧血であることを確認し、自己免疫反応の原因を特定します。
血液検査で未熟な赤血球(網状赤血球)の数が増加していれば、赤血球の破壊が進んでいることが疑われます。あるいは、血液検査から、ビリルビンが増加し、ハプトグロビンという蛋白(たんぱく)質が減少していることがわかる場合もあります。
原因として自己免疫性溶血性貧血の診断が確定するのは、血液検査で特定の抗体の量が多いことが確認された場合で、このような抗体は、赤血球に付着している抗体、または血液の液体成分に含まれる抗体のいずれかです。赤血球を破壊する自己免疫反応の原因を突き止めるため、そのほかの検査を行うこともあります。
小児科、内科、血液内科などの医師による治療では、副腎(ふくじん)皮質ステロイドホルモン薬の服用が有効です。最初に高用量の服用から始め、数週間ないし数カ月かけて徐々に減量していきます。
赤血球を破壊している臓器である脾臓の手術による摘出や、免疫抑制薬の服用も補助的な手段として行われます。赤血球の破壊が激しく貧血が強い場合は、輸血が必要になる時もありますが、輸血は貧血の原因を治療するものではなく、一時的な対症療法にすぎません。
冷式自己免疫性溶血性貧血では、寒さを避け保温に努めることが重要な治療法となります。保温に配慮した服装や寝具を利用するように気を付け、室温に注意し、手足や顔の露出部分が寒気にさらされないように注意を払います。時に免疫抑制薬が有用なこともあります。
また、別の疾患に合併して起きている時は、原因になっている基礎疾患の治療によりよくなることがあります。
症状が軽い場合や赤血球の破壊速度が遅くなっている場合は、自然経過で治癒することがあります。多くの症例は、中~長期間の薬物治療が必要となります。治療によって疾患の活動性が抑えられれば、 正常な日常生活が送れます。
なお、ほかの自己免疫疾患やリンパ腫などの疾患を合併していない温式自己免疫性溶血性貧血の場合は、診断から5年後の生存率は約80%、10年後は約70%です。しかし、高齢者では予後不良です。
自己免疫性溶血性貧血とは、自身の赤血球膜上の抗原に結合する自己抗体ができて、赤血球が異常に早く破壊されて起こる貧血。
自己抗体は自分の体の成分に対する抗体で、本来は細菌などから体を守るために抗体は作られ、自分の体に対しては作られませんが、自己免疫疾患と呼ばれる一連の疾患では、自己抗体が出現し赤血球をまるで異物であるかのように攻撃します。
赤血球に自己抗体が結合し、補体と共同して血管内で赤血球を破壊するものと、自己抗体や補体を介して主に脾臓(ひぞう)で破壊されるものがあります。
この自己抗体による赤血球の破壊は、突然起こることもあれば、ゆっくりと進行することもあります。人によっては、このような破壊がしばらくすると止まることがあります。また、赤血球の破壊が止まらず、慢性化する人もいます。
自己免疫性溶血性貧血には、いろいろな病型があり、原因もさまざまです。主な病型は2種類あり、37度の正常体温付近で抗体の結合が強いものを温式自己免疫性溶血性貧血、正常体温以下の特に4度で抗体の結合が強いものを冷式自己免疫性溶血性貧血と呼びます。
自己免疫性溶血性貧血の発症者は全国で1300~1700人を数え、1年間に数百人程度の新たな発症者が発生していると推定されています。このうち、温式自己免疫性溶血性貧血の発症者が9割を占め、冷式自己免疫性溶血性貧血の発症者は1割です。
子供から高齢者までの幅広い年齢で、発症します。温式自己免疫性溶血性貧血は、小児期に1つの小さなピークがあるほか、10~30歳の若年層、50歳以後に増加し70歳代がピークの老年層に多くみられます。若年層では女性が優位で、老年層では男女差は認められません。
原因は自分の赤血球膜上の抗原と反応する自己抗体ができることによるのですが、なぜ抗原抗体反応が起こるのかはまだ明らかではありません。膠原(こうげん)病などの自己免疫疾患の患者や、リンパ腫(しゅ)などの悪性腫瘍(しゅよう)の患者で、この自己免疫性溶血性貧血がみられることがあります。また、マイコプラズマ肺炎の患者にも、冷式自己免疫性溶血性貧血がみられることがあります。
疾患の発症に、遺伝性はありません。
特に赤血球の破壊が軽度で緩やかに進む場合は、症状がみられないことがあります。それ以外では、主な症状は貧血によるもので、だるさ、動悸(どうき)、息切れ、めまい、頭痛、顔面蒼白などが現れます。
赤血球の破壊が重度な場合や急速な場合は、血液の中にヘモグロビン(血色素)の分解産物であるビリルビンがたまるため、白目の部分や肌が黄色く見える軽い黄疸(おうだん)がみられることもあり、腹部に不快感や膨満感を覚えたりします。脾臓がはれたり、濃い色を示すヘモグロビン尿がみられることもあります。慢性に経過すると胆石症を合併することも知られています。
冷式自己免疫性溶血性貧血では、手や足が冷たくなったり、青みがかったりすることがあります。冷式自己免疫性溶血性貧血のうちのまれなタイプである発作性寒冷血色素尿症では、気温の低下、冷水の飲用や洗顔・手洗いなど、寒気にさらされる部分が小さくても赤血球が破壊されることがあり、背中や脚に激しい痛みが生じたり、頭痛、嘔吐(おうと)、下痢がみられることもあります。暗褐色を示すヘモグロビン尿がみられることもあります。
原因が別の疾患によるものであれば、リンパ節のはれや圧痛、発熱など、原因になっている基礎疾患の症状が主に現れることがあります。
自己免疫性溶血性貧血の検査と診断と治療
小児科、内科、血液内科などの医師による診断では、 血液検査を行って、貧血であることを確認し、自己免疫反応の原因を特定します。
血液検査で未熟な赤血球(網状赤血球)の数が増加していれば、赤血球の破壊が進んでいることが疑われます。あるいは、血液検査から、ビリルビンが増加し、ハプトグロビンという蛋白(たんぱく)質が減少していることがわかる場合もあります。
原因として自己免疫性溶血性貧血の診断が確定するのは、血液検査で特定の抗体の量が多いことが確認された場合で、このような抗体は、赤血球に付着している抗体、または血液の液体成分に含まれる抗体のいずれかです。赤血球を破壊する自己免疫反応の原因を突き止めるため、そのほかの検査を行うこともあります。
小児科、内科、血液内科などの医師による治療では、副腎(ふくじん)皮質ステロイドホルモン薬の服用が有効です。最初に高用量の服用から始め、数週間ないし数カ月かけて徐々に減量していきます。
赤血球を破壊している臓器である脾臓の手術による摘出や、免疫抑制薬の服用も補助的な手段として行われます。赤血球の破壊が激しく貧血が強い場合は、輸血が必要になる時もありますが、輸血は貧血の原因を治療するものではなく、一時的な対症療法にすぎません。
冷式自己免疫性溶血性貧血では、寒さを避け保温に努めることが重要な治療法となります。保温に配慮した服装や寝具を利用するように気を付け、室温に注意し、手足や顔の露出部分が寒気にさらされないように注意を払います。時に免疫抑制薬が有用なこともあります。
また、別の疾患に合併して起きている時は、原因になっている基礎疾患の治療によりよくなることがあります。
症状が軽い場合や赤血球の破壊速度が遅くなっている場合は、自然経過で治癒することがあります。多くの症例は、中~長期間の薬物治療が必要となります。治療によって疾患の活動性が抑えられれば、 正常な日常生活が送れます。
なお、ほかの自己免疫疾患やリンパ腫などの疾患を合併していない温式自己免疫性溶血性貧血の場合は、診断から5年後の生存率は約80%、10年後は約70%です。しかし、高齢者では予後不良です。