☐用語 先天性溶血性貧血 [用語(せ)]
赤血球の寿命が短くなり、骨髄が赤血球を作る造血機能が追い付かずに現れる先天性の貧血
先天性溶血性貧血とは、先天的に起きる溶血性貧血の総称。
溶血性貧血とは、全身に酸素を運ぶ役割を持つ赤血球そのものの寿命が短く、正常の約120日の寿命より早く消失してしまい、骨髄の造血機能が追い付けなくなって貧血を起こす疾患で、その原因が赤血球自体にあるものと、赤血球以外にあるものとがあります。原因が赤血球自体にあるもののほとんどは、先天性あるいは遺伝性の赤血球異常による溶血性貧血で、日本人には比較的まれな疾患です。
先天性溶血性貧血には、赤血球自体に異常がある遺伝性球状赤血球症や遺伝性楕円(だえん)赤血球症(卵形赤血球症)、酵素に異常がある赤血球酵素異常症、ヘモグロビン異常症、サラセミアなどがあります。日本で発見される先天性溶血性貧血の中では、遺伝性球状赤血球症が約70%、遺伝性楕円赤血球症が約2%、赤血球酵素異常症が約5%、ヘモグロビン異常症が約5%を占めます。
先天性溶血性貧血の代表的な疾患である遺伝性球状赤血球症は、血液を構成する細胞のうち、各臓器や組織への酸素運搬を担う赤血球細胞の遺伝的な異常によって、形状が球状に変形して本来の機能が低下し、壊れやすくなる疾患。慢性家族性黄疸(おうだん)、先天性溶血性黄疸、家族性球状赤血球症、球状赤血球性貧血とも呼ばれます。
常染色体優勢遺伝という形式で遺伝することが多いものの、常染色体劣性遺伝という形式で遺伝することもあり、突然変異による弧発例も存在します。
日本で発見される先天性溶血性貧血の中で最も頻度が高い疾患で、人口5〜10万人に1人の頻度とされています。主要な症状は貧血、黄疸、脾臓(ひぞう)のはれですが、症状の程度は個人差が大変強く、新生児期に重篤な症状を起こす場合もあれば、成人してから検査結果の異常で偶然発見される場合もあります。
赤血球は体内で狭い血管をも通過できるように、正常では中央部分がへこんだ円盤状の形をしています。この形態によって、狭い部分を通過する際に細胞が折り畳まれることで細胞を傷付けずにより先に流れていくことができます。
遺伝性球状赤血球症では、この特殊な形を保つための細胞骨格を作り上げる蛋白(たんぱく)質の遺伝子異常があるため、赤血球が通常通り変形することができず、細い血管や脾臓を通過するたびにその抵抗により細胞膜がどんどん削り取られてゆきます。細胞膜の面積が減っても細胞の中身の量は変わらないため、同じ表面積で最も体積を多くできる球状に赤血球が近付いてゆきます。それでも最終的には、細胞膜が薄くなることで形を保てずに赤血球が壊れてしまい、血色素(ヘモグロビン)が多量に赤血球外に出される溶血という現象が発生します。
細胞骨格にかかわる蛋白質には多くの種類があり、どの蛋白質にどのような異常が出るかによっても疾患の深刻さは異なってきます。
最重症の場合は、胎児期に高度の貧血のため、胎児水腫(すいしゅ)という状態を起こし得ます。新生児期に症状が出る場合の多くは、溶血のために血液中にビリルビン(胆汁色素)が増え新生児黄疸を起こして発見されます。黄疸の程度がひどい場合は、脳へのビリルビンの沈着とそれによる発達障害を起こすこともありますが、貧血による症状が深刻なことはまれです。新生児期をすぎると、皮膚の黄疸が問題となることは少なくなります。
遺伝性球状赤血球症の発症者では、赤血球が壊れずに体内を循環できる期間が疾患のない人と比べて少ないため、常に骨髄が活性化して多めに赤血球を作り続けている状態です。そのため、俗にリンゴ病と呼ばれる伝染性紅斑(こうはん)の原因になるヒトパルボウイルスB19型というウイルス感染への感染、赤血球を作る際に必要なビタミンB12や葉酸の不足など、骨髄の活動を抑制するような出来事があると急激に貧血が進行して症状を起こす可能性が高くなります。
また、皮膚の黄疸を起こすほどではないにしろ、溶血によって赤血球からビリルビンが漏れ出続けているため肝臓がそれを処理し切れずに、ビリルビンが胆石を作りそれによる胆石疝痛(せんつう)発作を起こす可能性が高くなります。
先天性溶血性貧血の検査と診断と治療
小児科、ないし血液内科の医師による溶血性貧血の診断では、血液の検査が最も重要です。これによって、貧血とともに、ビリルビンや乳酸脱水素酵素(LDH)といわれる物質の上昇が認められれば、溶血が強く疑われます。
身内に溶血性貧血の人がいる場合、先天性溶血性貧血の可能性があり、遺伝子や蛋白の異常を生化学的に検査していきます。
先天性溶血性貧血の代表的な疾患である遺伝性球状赤血球症の診断では、足の裏などから末梢(まっしょう)血を採取して、赤血球の形態観察で球状赤血球や小型球状赤血球の増加、赤血球の浸透圧抵抗の低下、血液中の間接型ビリルビン値の上昇、脾臓のはれなどを総合して診断します。可能であれば、赤血球膜の蛋白質を電気泳動で解析し、遺伝的異常を同定します。
なお、新生児期には赤血球の形態、赤血球の浸透圧抵抗ともに典型的な所見を示さないことも多いため、診断が難しいことがあります。
小児科、ないし血液内科の医師による遺伝性球状赤血球症の治療では、疾患の原因が遺伝的な蛋白質の異常であるため、ほかの先天性溶血性貧血と同様に根本的な治療法はありません。
対症療法として、正常より多くの量が必要となる葉酸を経口で補充します。まれに新生児期から貧血による症状が出る場合は、成熟に伴って骨髄が赤血球の消費を補えるだけ新たに赤血球を生産できるようになるまで、赤血球輸血や、エリスロポエチンという赤血球の生産を増やすホルモンの投与などを行います。
また、溶血や貧血に伴う症状が高度な場合や、これらの症状が軽度でも胆石が認められる場合などでは、赤血球を主に壊している脾臓を外科手術、あるいは腹腔(ふくくう)鏡下手術によって取り除く脾摘が治療法となります。元々の症状の程度によってどの程度の改善がみられるか個人差はありますが、軽症の場合はビリルビンなどの検査値がほぼ正常範囲になり、重症の場合でも輸血を必要とする頻度がかなり改善するなど大きな効果が見込めます。
しかし、脾臓という臓器が肺炎球菌など一部の細菌感染に対抗する上で重要な役割を持っているため、脾摘後はこれらの感染症に対して抵抗力が弱くなってしまいます。そのため脾摘の前にワクチン接種を受けることが推奨されます。また、脾摘を受けた発症者は脾摘を受けない遺伝性球状赤血球症の発症者と比べて、動脈/静脈塞栓(そくせん)の危険性が上がるという報告もあるため、元々の危険性が高い発症者では注意が必要になります。
特に乳幼児期は脾摘後に重症細菌感染症にかかりやすくなるため、重症の場合でも6歳になるまで脾摘は待つほうが安全とされます。軽症の場合は、青年期まで待機可能なこともあります。
そのほかの疾患の治療のため骨髄移植を行った場合には、骨髄の細胞が根本的に入れ替わるため遺伝性球状赤血球症も改善しますが、この疾患単独に対する治療としては治療に伴う合併症のリスクが高すぎるため通常は行われません。
先天性溶血性貧血とは、先天的に起きる溶血性貧血の総称。
溶血性貧血とは、全身に酸素を運ぶ役割を持つ赤血球そのものの寿命が短く、正常の約120日の寿命より早く消失してしまい、骨髄の造血機能が追い付けなくなって貧血を起こす疾患で、その原因が赤血球自体にあるものと、赤血球以外にあるものとがあります。原因が赤血球自体にあるもののほとんどは、先天性あるいは遺伝性の赤血球異常による溶血性貧血で、日本人には比較的まれな疾患です。
先天性溶血性貧血には、赤血球自体に異常がある遺伝性球状赤血球症や遺伝性楕円(だえん)赤血球症(卵形赤血球症)、酵素に異常がある赤血球酵素異常症、ヘモグロビン異常症、サラセミアなどがあります。日本で発見される先天性溶血性貧血の中では、遺伝性球状赤血球症が約70%、遺伝性楕円赤血球症が約2%、赤血球酵素異常症が約5%、ヘモグロビン異常症が約5%を占めます。
先天性溶血性貧血の代表的な疾患である遺伝性球状赤血球症は、血液を構成する細胞のうち、各臓器や組織への酸素運搬を担う赤血球細胞の遺伝的な異常によって、形状が球状に変形して本来の機能が低下し、壊れやすくなる疾患。慢性家族性黄疸(おうだん)、先天性溶血性黄疸、家族性球状赤血球症、球状赤血球性貧血とも呼ばれます。
常染色体優勢遺伝という形式で遺伝することが多いものの、常染色体劣性遺伝という形式で遺伝することもあり、突然変異による弧発例も存在します。
日本で発見される先天性溶血性貧血の中で最も頻度が高い疾患で、人口5〜10万人に1人の頻度とされています。主要な症状は貧血、黄疸、脾臓(ひぞう)のはれですが、症状の程度は個人差が大変強く、新生児期に重篤な症状を起こす場合もあれば、成人してから検査結果の異常で偶然発見される場合もあります。
赤血球は体内で狭い血管をも通過できるように、正常では中央部分がへこんだ円盤状の形をしています。この形態によって、狭い部分を通過する際に細胞が折り畳まれることで細胞を傷付けずにより先に流れていくことができます。
遺伝性球状赤血球症では、この特殊な形を保つための細胞骨格を作り上げる蛋白(たんぱく)質の遺伝子異常があるため、赤血球が通常通り変形することができず、細い血管や脾臓を通過するたびにその抵抗により細胞膜がどんどん削り取られてゆきます。細胞膜の面積が減っても細胞の中身の量は変わらないため、同じ表面積で最も体積を多くできる球状に赤血球が近付いてゆきます。それでも最終的には、細胞膜が薄くなることで形を保てずに赤血球が壊れてしまい、血色素(ヘモグロビン)が多量に赤血球外に出される溶血という現象が発生します。
細胞骨格にかかわる蛋白質には多くの種類があり、どの蛋白質にどのような異常が出るかによっても疾患の深刻さは異なってきます。
最重症の場合は、胎児期に高度の貧血のため、胎児水腫(すいしゅ)という状態を起こし得ます。新生児期に症状が出る場合の多くは、溶血のために血液中にビリルビン(胆汁色素)が増え新生児黄疸を起こして発見されます。黄疸の程度がひどい場合は、脳へのビリルビンの沈着とそれによる発達障害を起こすこともありますが、貧血による症状が深刻なことはまれです。新生児期をすぎると、皮膚の黄疸が問題となることは少なくなります。
遺伝性球状赤血球症の発症者では、赤血球が壊れずに体内を循環できる期間が疾患のない人と比べて少ないため、常に骨髄が活性化して多めに赤血球を作り続けている状態です。そのため、俗にリンゴ病と呼ばれる伝染性紅斑(こうはん)の原因になるヒトパルボウイルスB19型というウイルス感染への感染、赤血球を作る際に必要なビタミンB12や葉酸の不足など、骨髄の活動を抑制するような出来事があると急激に貧血が進行して症状を起こす可能性が高くなります。
また、皮膚の黄疸を起こすほどではないにしろ、溶血によって赤血球からビリルビンが漏れ出続けているため肝臓がそれを処理し切れずに、ビリルビンが胆石を作りそれによる胆石疝痛(せんつう)発作を起こす可能性が高くなります。
先天性溶血性貧血の検査と診断と治療
小児科、ないし血液内科の医師による溶血性貧血の診断では、血液の検査が最も重要です。これによって、貧血とともに、ビリルビンや乳酸脱水素酵素(LDH)といわれる物質の上昇が認められれば、溶血が強く疑われます。
身内に溶血性貧血の人がいる場合、先天性溶血性貧血の可能性があり、遺伝子や蛋白の異常を生化学的に検査していきます。
先天性溶血性貧血の代表的な疾患である遺伝性球状赤血球症の診断では、足の裏などから末梢(まっしょう)血を採取して、赤血球の形態観察で球状赤血球や小型球状赤血球の増加、赤血球の浸透圧抵抗の低下、血液中の間接型ビリルビン値の上昇、脾臓のはれなどを総合して診断します。可能であれば、赤血球膜の蛋白質を電気泳動で解析し、遺伝的異常を同定します。
なお、新生児期には赤血球の形態、赤血球の浸透圧抵抗ともに典型的な所見を示さないことも多いため、診断が難しいことがあります。
小児科、ないし血液内科の医師による遺伝性球状赤血球症の治療では、疾患の原因が遺伝的な蛋白質の異常であるため、ほかの先天性溶血性貧血と同様に根本的な治療法はありません。
対症療法として、正常より多くの量が必要となる葉酸を経口で補充します。まれに新生児期から貧血による症状が出る場合は、成熟に伴って骨髄が赤血球の消費を補えるだけ新たに赤血球を生産できるようになるまで、赤血球輸血や、エリスロポエチンという赤血球の生産を増やすホルモンの投与などを行います。
また、溶血や貧血に伴う症状が高度な場合や、これらの症状が軽度でも胆石が認められる場合などでは、赤血球を主に壊している脾臓を外科手術、あるいは腹腔(ふくくう)鏡下手術によって取り除く脾摘が治療法となります。元々の症状の程度によってどの程度の改善がみられるか個人差はありますが、軽症の場合はビリルビンなどの検査値がほぼ正常範囲になり、重症の場合でも輸血を必要とする頻度がかなり改善するなど大きな効果が見込めます。
しかし、脾臓という臓器が肺炎球菌など一部の細菌感染に対抗する上で重要な役割を持っているため、脾摘後はこれらの感染症に対して抵抗力が弱くなってしまいます。そのため脾摘の前にワクチン接種を受けることが推奨されます。また、脾摘を受けた発症者は脾摘を受けない遺伝性球状赤血球症の発症者と比べて、動脈/静脈塞栓(そくせん)の危険性が上がるという報告もあるため、元々の危険性が高い発症者では注意が必要になります。
特に乳幼児期は脾摘後に重症細菌感染症にかかりやすくなるため、重症の場合でも6歳になるまで脾摘は待つほうが安全とされます。軽症の場合は、青年期まで待機可能なこともあります。
そのほかの疾患の治療のため骨髄移植を行った場合には、骨髄の細胞が根本的に入れ替わるため遺伝性球状赤血球症も改善しますが、この疾患単独に対する治療としては治療に伴う合併症のリスクが高すぎるため通常は行われません。
☐用語 先天性溶血性貧血 [用語(せ)]
赤血球の寿命が短くなり、骨髄が赤血球を作る造血機能が追い付かずに現れる先天性の貧血
先天性溶血性貧血とは、先天的に起きる溶血性貧血の総称。
溶血性貧血とは、全身に酸素を運ぶ役割を持つ赤血球そのものの寿命が短く、正常の約120日の寿命より早く消失してしまい、骨髄の造血機能が追い付けなくなって貧血を起こす疾患で、その原因が赤血球自体にあるものと、赤血球以外にあるものとがあります。原因が赤血球自体にあるもののほとんどは、先天性あるいは遺伝性の赤血球異常による溶血性貧血で、日本人には比較的まれな疾患です。
先天性溶血性貧血には、赤血球自体に異常がある遺伝性球状赤血球症や遺伝性楕円(だえん)赤血球症(卵形赤血球症)、酵素に異常がある赤血球酵素異常症、ヘモグロビン異常症、サラセミアなどがあります。日本で発見される先天性溶血性貧血の中では、遺伝性球状赤血球症が約70%、遺伝性楕円赤血球症が約2%、赤血球酵素異常症が約5%、ヘモグロビン異常症が約5%を占めます。
先天性溶血性貧血の代表的な疾患である遺伝性球状赤血球症は、血液を構成する細胞のうち、各臓器や組織への酸素運搬を担う赤血球細胞の遺伝的な異常によって、形状が球状に変形して本来の機能が低下し、壊れやすくなる疾患。慢性家族性黄疸(おうだん)、先天性溶血性黄疸、家族性球状赤血球症、球状赤血球性貧血とも呼ばれます。
常染色体優勢遺伝という形式で遺伝することが多いものの、常染色体劣性遺伝という形式で遺伝することもあり、突然変異による弧発例も存在します。
日本で発見される先天性溶血性貧血の中で最も頻度が高い疾患で、人口5〜10万人に1人の頻度とされています。主要な症状は貧血、黄疸、脾臓(ひぞう)のはれですが、症状の程度は個人差が大変強く、新生児期に重篤な症状を起こす場合もあれば、成人してから検査結果の異常で偶然発見される場合もあります。
赤血球は体内で狭い血管をも通過できるように、正常では中央部分がへこんだ円盤状の形をしています。この形態によって、狭い部分を通過する際に細胞が折り畳まれることで細胞を傷付けずにより先に流れていくことができます。
遺伝性球状赤血球症では、この特殊な形を保つための細胞骨格を作り上げる蛋白(たんぱく)質の遺伝子異常があるため、赤血球が通常通り変形することができず、細い血管や脾臓を通過するたびにその抵抗により細胞膜がどんどん削り取られてゆきます。細胞膜の面積が減っても細胞の中身の量は変わらないため、同じ表面積で最も体積を多くできる球状に赤血球が近付いてゆきます。それでも最終的には、細胞膜が薄くなることで形を保てずに赤血球が壊れてしまい、血色素(ヘモグロビン)が多量に赤血球外に出される溶血という現象が発生します。
細胞骨格にかかわる蛋白質には多くの種類があり、どの蛋白質にどのような異常が出るかによっても疾患の深刻さは異なってきます。
最重症の場合は、胎児期に高度の貧血のため、胎児水腫(すいしゅ)という状態を起こし得ます。新生児期に症状が出る場合の多くは、溶血のために血液中にビリルビン(胆汁色素)が増え新生児黄疸を起こして発見されます。黄疸の程度がひどい場合は、脳へのビリルビンの沈着とそれによる発達障害を起こすこともありますが、貧血による症状が深刻なことはまれです。新生児期をすぎると、皮膚の黄疸が問題となることは少なくなります。
遺伝性球状赤血球症の発症者では、赤血球が壊れずに体内を循環できる期間が疾患のない人と比べて少ないため、常に骨髄が活性化して多めに赤血球を作り続けている状態です。そのため、俗にリンゴ病と呼ばれる伝染性紅斑(こうはん)の原因になるヒトパルボウイルスB19型というウイルス感染への感染、赤血球を作る際に必要なビタミンB12や葉酸の不足など、骨髄の活動を抑制するような出来事があると急激に貧血が進行して症状を起こす可能性が高くなります。
また、皮膚の黄疸を起こすほどではないにしろ、溶血によって赤血球からビリルビンが漏れ出続けているため肝臓がそれを処理し切れずに、ビリルビンが胆石を作りそれによる胆石疝痛(せんつう)発作を起こす可能性が高くなります。
先天性溶血性貧血の検査と診断と治療
小児科、ないし血液内科の医師による溶血性貧血の診断では、血液の検査が最も重要です。これによって、貧血とともに、ビリルビンや乳酸脱水素酵素(LDH)といわれる物質の上昇が認められれば、溶血が強く疑われます。
身内に溶血性貧血の人がいる場合、先天性溶血性貧血の可能性があり、遺伝子や蛋白の異常を生化学的に検査していきます。
先天性溶血性貧血の代表的な疾患である遺伝性球状赤血球症の診断では、足の裏などから末梢(まっしょう)血を採取して、赤血球の形態観察で球状赤血球や小型球状赤血球の増加、赤血球の浸透圧抵抗の低下、血液中の間接型ビリルビン値の上昇、脾臓のはれなどを総合して診断します。可能であれば、赤血球膜の蛋白質を電気泳動で解析し、遺伝的異常を同定します。
なお、新生児期には赤血球の形態、赤血球の浸透圧抵抗ともに典型的な所見を示さないことも多いため、診断が難しいことがあります。
小児科、ないし血液内科の医師による遺伝性球状赤血球症の治療では、疾患の原因が遺伝的な蛋白質の異常であるため、ほかの先天性溶血性貧血と同様に根本的な治療法はありません。
対症療法として、正常より多くの量が必要となる葉酸を経口で補充します。まれに新生児期から貧血による症状が出る場合は、成熟に伴って骨髄が赤血球の消費を補えるだけ新たに赤血球を生産できるようになるまで、赤血球輸血や、エリスロポエチンという赤血球の生産を増やすホルモンの投与などを行います。
また、溶血や貧血に伴う症状が高度な場合や、これらの症状が軽度でも胆石が認められる場合などでは、赤血球を主に壊している脾臓を外科手術、あるいは腹腔(ふくくう)鏡下手術によって取り除く脾摘が治療法となります。元々の症状の程度によってどの程度の改善がみられるか個人差はありますが、軽症の場合はビリルビンなどの検査値がほぼ正常範囲になり、重症の場合でも輸血を必要とする頻度がかなり改善するなど大きな効果が見込めます。
しかし、脾臓という臓器が肺炎球菌など一部の細菌感染に対抗する上で重要な役割を持っているため、脾摘後はこれらの感染症に対して抵抗力が弱くなってしまいます。そのため脾摘の前にワクチン接種を受けることが推奨されます。また、脾摘を受けた発症者は脾摘を受けない遺伝性球状赤血球症の発症者と比べて、動脈/静脈塞栓(そくせん)の危険性が上がるという報告もあるため、元々の危険性が高い発症者では注意が必要になります。
特に乳幼児期は脾摘後に重症細菌感染症にかかりやすくなるため、重症の場合でも6歳になるまで脾摘は待つほうが安全とされます。軽症の場合は、青年期まで待機可能なこともあります。
そのほかの疾患の治療のため骨髄移植を行った場合には、骨髄の細胞が根本的に入れ替わるため遺伝性球状赤血球症も改善しますが、この疾患単独に対する治療としては治療に伴う合併症のリスクが高すぎるため通常は行われません。
先天性溶血性貧血とは、先天的に起きる溶血性貧血の総称。
溶血性貧血とは、全身に酸素を運ぶ役割を持つ赤血球そのものの寿命が短く、正常の約120日の寿命より早く消失してしまい、骨髄の造血機能が追い付けなくなって貧血を起こす疾患で、その原因が赤血球自体にあるものと、赤血球以外にあるものとがあります。原因が赤血球自体にあるもののほとんどは、先天性あるいは遺伝性の赤血球異常による溶血性貧血で、日本人には比較的まれな疾患です。
先天性溶血性貧血には、赤血球自体に異常がある遺伝性球状赤血球症や遺伝性楕円(だえん)赤血球症(卵形赤血球症)、酵素に異常がある赤血球酵素異常症、ヘモグロビン異常症、サラセミアなどがあります。日本で発見される先天性溶血性貧血の中では、遺伝性球状赤血球症が約70%、遺伝性楕円赤血球症が約2%、赤血球酵素異常症が約5%、ヘモグロビン異常症が約5%を占めます。
先天性溶血性貧血の代表的な疾患である遺伝性球状赤血球症は、血液を構成する細胞のうち、各臓器や組織への酸素運搬を担う赤血球細胞の遺伝的な異常によって、形状が球状に変形して本来の機能が低下し、壊れやすくなる疾患。慢性家族性黄疸(おうだん)、先天性溶血性黄疸、家族性球状赤血球症、球状赤血球性貧血とも呼ばれます。
常染色体優勢遺伝という形式で遺伝することが多いものの、常染色体劣性遺伝という形式で遺伝することもあり、突然変異による弧発例も存在します。
日本で発見される先天性溶血性貧血の中で最も頻度が高い疾患で、人口5〜10万人に1人の頻度とされています。主要な症状は貧血、黄疸、脾臓(ひぞう)のはれですが、症状の程度は個人差が大変強く、新生児期に重篤な症状を起こす場合もあれば、成人してから検査結果の異常で偶然発見される場合もあります。
赤血球は体内で狭い血管をも通過できるように、正常では中央部分がへこんだ円盤状の形をしています。この形態によって、狭い部分を通過する際に細胞が折り畳まれることで細胞を傷付けずにより先に流れていくことができます。
遺伝性球状赤血球症では、この特殊な形を保つための細胞骨格を作り上げる蛋白(たんぱく)質の遺伝子異常があるため、赤血球が通常通り変形することができず、細い血管や脾臓を通過するたびにその抵抗により細胞膜がどんどん削り取られてゆきます。細胞膜の面積が減っても細胞の中身の量は変わらないため、同じ表面積で最も体積を多くできる球状に赤血球が近付いてゆきます。それでも最終的には、細胞膜が薄くなることで形を保てずに赤血球が壊れてしまい、血色素(ヘモグロビン)が多量に赤血球外に出される溶血という現象が発生します。
細胞骨格にかかわる蛋白質には多くの種類があり、どの蛋白質にどのような異常が出るかによっても疾患の深刻さは異なってきます。
最重症の場合は、胎児期に高度の貧血のため、胎児水腫(すいしゅ)という状態を起こし得ます。新生児期に症状が出る場合の多くは、溶血のために血液中にビリルビン(胆汁色素)が増え新生児黄疸を起こして発見されます。黄疸の程度がひどい場合は、脳へのビリルビンの沈着とそれによる発達障害を起こすこともありますが、貧血による症状が深刻なことはまれです。新生児期をすぎると、皮膚の黄疸が問題となることは少なくなります。
遺伝性球状赤血球症の発症者では、赤血球が壊れずに体内を循環できる期間が疾患のない人と比べて少ないため、常に骨髄が活性化して多めに赤血球を作り続けている状態です。そのため、俗にリンゴ病と呼ばれる伝染性紅斑(こうはん)の原因になるヒトパルボウイルスB19型というウイルス感染への感染、赤血球を作る際に必要なビタミンB12や葉酸の不足など、骨髄の活動を抑制するような出来事があると急激に貧血が進行して症状を起こす可能性が高くなります。
また、皮膚の黄疸を起こすほどではないにしろ、溶血によって赤血球からビリルビンが漏れ出続けているため肝臓がそれを処理し切れずに、ビリルビンが胆石を作りそれによる胆石疝痛(せんつう)発作を起こす可能性が高くなります。
先天性溶血性貧血の検査と診断と治療
小児科、ないし血液内科の医師による溶血性貧血の診断では、血液の検査が最も重要です。これによって、貧血とともに、ビリルビンや乳酸脱水素酵素(LDH)といわれる物質の上昇が認められれば、溶血が強く疑われます。
身内に溶血性貧血の人がいる場合、先天性溶血性貧血の可能性があり、遺伝子や蛋白の異常を生化学的に検査していきます。
先天性溶血性貧血の代表的な疾患である遺伝性球状赤血球症の診断では、足の裏などから末梢(まっしょう)血を採取して、赤血球の形態観察で球状赤血球や小型球状赤血球の増加、赤血球の浸透圧抵抗の低下、血液中の間接型ビリルビン値の上昇、脾臓のはれなどを総合して診断します。可能であれば、赤血球膜の蛋白質を電気泳動で解析し、遺伝的異常を同定します。
なお、新生児期には赤血球の形態、赤血球の浸透圧抵抗ともに典型的な所見を示さないことも多いため、診断が難しいことがあります。
小児科、ないし血液内科の医師による遺伝性球状赤血球症の治療では、疾患の原因が遺伝的な蛋白質の異常であるため、ほかの先天性溶血性貧血と同様に根本的な治療法はありません。
対症療法として、正常より多くの量が必要となる葉酸を経口で補充します。まれに新生児期から貧血による症状が出る場合は、成熟に伴って骨髄が赤血球の消費を補えるだけ新たに赤血球を生産できるようになるまで、赤血球輸血や、エリスロポエチンという赤血球の生産を増やすホルモンの投与などを行います。
また、溶血や貧血に伴う症状が高度な場合や、これらの症状が軽度でも胆石が認められる場合などでは、赤血球を主に壊している脾臓を外科手術、あるいは腹腔(ふくくう)鏡下手術によって取り除く脾摘が治療法となります。元々の症状の程度によってどの程度の改善がみられるか個人差はありますが、軽症の場合はビリルビンなどの検査値がほぼ正常範囲になり、重症の場合でも輸血を必要とする頻度がかなり改善するなど大きな効果が見込めます。
しかし、脾臓という臓器が肺炎球菌など一部の細菌感染に対抗する上で重要な役割を持っているため、脾摘後はこれらの感染症に対して抵抗力が弱くなってしまいます。そのため脾摘の前にワクチン接種を受けることが推奨されます。また、脾摘を受けた発症者は脾摘を受けない遺伝性球状赤血球症の発症者と比べて、動脈/静脈塞栓(そくせん)の危険性が上がるという報告もあるため、元々の危険性が高い発症者では注意が必要になります。
特に乳幼児期は脾摘後に重症細菌感染症にかかりやすくなるため、重症の場合でも6歳になるまで脾摘は待つほうが安全とされます。軽症の場合は、青年期まで待機可能なこともあります。
そのほかの疾患の治療のため骨髄移植を行った場合には、骨髄の細胞が根本的に入れ替わるため遺伝性球状赤血球症も改善しますが、この疾患単独に対する治療としては治療に伴う合併症のリスクが高すぎるため通常は行われません。
■用語 精神社会性低身長症 [用語(せ)]
愛情を感じられないストレスから、子供の睡眠時に成長ホルモンが十分に分泌されず、低身長を生じる状態
精神社会性低身長症とは、母子関係や家族関係の問題によって、子供が十分な愛情を感じられないまま育った結果、成長ホルモンの分泌が低下して身長が伸びない状態。精神社会的小人症、心理社会性低身長症、愛情遮断性低身長とも呼ばれます。
低身長は、さまざまな原因で身長が伸びない状態のことで、年齢別平均身長より20%、あるいは標準偏差(SD)より2SD以上低い場合を目安としており、同性・同年齢の100人に2~3人が低身長という定義に当てはまります。
精神社会性低身長症は、乳幼児から6歳児程度の子供に多くみられます。母親など養育者からの愛情を感じられない極度のストレスや不安から、子供は心から安らいでグッスリ眠ることができず、成長するために必要な成長ホルモンが睡眠時に脳下垂体から十分に分泌されなくなる結果、身体的な成長に遅れが生じ、年齢別平均身長を著しく下回ると考えられています。
子供は愛情ばかりでなく、十分な栄養を与えられていないこともあり、栄養不足も年齢に見合った身長の伸びを止めてしまう原因の1つになります。身体的な成長の遅れだけでなく、情緒の発達、言語や知的能力の発達の遅れを生じたり、行動異常を示すこともあります。
入院、死亡、離婚などによる母親不在の環境が原因となったり、母親など養育者が深い悩みを抱えていたり、うつ状態であったり、薬物依存や知的障害、精神的な病気を持っていたりして、適切な子育てができないことが原因となったりします。
母親など養育者自身が子供時代に十分な愛情を受けて育っていない場合に、世代を超えて子育てに影響する世代間伝達、愛情不足の連鎖もあります。夫婦仲が悪く、家庭環境の雰囲気が悪いことが原因になることもあります。
栄養障害によって現れる症状として、身長が低い、体重の増えが悪い、腕や脚が細い、やせている、肋骨(ろっこつ)が目立つ、お尻がへこんでいるなどがあります。不適切な養育の結果として観察される症状としては、おむつかぶれがひどい、皮膚が汚い、汚い服を着ているなどがあります。子供の心理的な変化や行動異常によって現れる症状としては、目を合わせない、表情が乏しい、感情表現が乏しい、動作が緩慢、抱きついたり寄り添ったりしない、親に抱かれるのを嫌がる、異様な食欲増進、尿や便をもらす、寝付きが悪い、かんしゃくを起こすなどがあります。
愛情不足の養育や、より重大な問題がある虐待やネグレクト(育児放棄)が生後1年以内に始まり、3年以上続く時は、情緒や知能の障害が永久に回復しないといわれています。
養育者が子供の精神社会性低身長症に気付いたら、母子手帳の成長曲線をつけてみたり、子供らしい豊かな表情をしているかどうか、気を配りましょう。心配なことがあれば、小児科医や保健師に相談しましょう。
精神社会性低身長症の検査と診断と治療
小児科の医師による診断では、過去から現在までの身長、体重、頭囲の計測値から成長曲線をつくり、子供の成長を評価します。食事の内容から、栄養学的な分析をします。また、養育環境についての情報を集めます。
小児科の医師による治療では、食事の内容について養育者に栄養指導を行い、子供の年齢に見合った十分な食事を与えるようにします。
また、子供と養育者にとって、ストレスの少ない環境になるように調整をします。母親など養育者に対する心理カウンセリングが必要な場合もあります。養育者は子供に対してストレスを与えていないつもりでも、気付いていない家庭の習慣が子供のストレスになっている場合もあります。
子供にとってストレスの少ない環境で、年齢に見合った十分な栄養を与えると体重が増加し、成長ホルモンの反応も回復して身長の伸びが促進されなど、成長の遅れは取り戻されます。
しかし、虐待やネグレクト(育児放棄)など養育者の子育てに重大な問題がある場合、ケースによっては養育者と子供を遠ざけることも必要です。入院で治療を受けさせたり、乳児院など保護観察施設で養育したりすることで遅れていた成長が改善されることもあります。
母親が不在の場合、あるいは母親がいても子供に愛情を十分に与えることができない場合には、母親に代わって父親や親に代わる養育者が十分な愛情を注ぐことで防ぐことは可能です。
精神社会性低身長症とは、母子関係や家族関係の問題によって、子供が十分な愛情を感じられないまま育った結果、成長ホルモンの分泌が低下して身長が伸びない状態。精神社会的小人症、心理社会性低身長症、愛情遮断性低身長とも呼ばれます。
低身長は、さまざまな原因で身長が伸びない状態のことで、年齢別平均身長より20%、あるいは標準偏差(SD)より2SD以上低い場合を目安としており、同性・同年齢の100人に2~3人が低身長という定義に当てはまります。
精神社会性低身長症は、乳幼児から6歳児程度の子供に多くみられます。母親など養育者からの愛情を感じられない極度のストレスや不安から、子供は心から安らいでグッスリ眠ることができず、成長するために必要な成長ホルモンが睡眠時に脳下垂体から十分に分泌されなくなる結果、身体的な成長に遅れが生じ、年齢別平均身長を著しく下回ると考えられています。
子供は愛情ばかりでなく、十分な栄養を与えられていないこともあり、栄養不足も年齢に見合った身長の伸びを止めてしまう原因の1つになります。身体的な成長の遅れだけでなく、情緒の発達、言語や知的能力の発達の遅れを生じたり、行動異常を示すこともあります。
入院、死亡、離婚などによる母親不在の環境が原因となったり、母親など養育者が深い悩みを抱えていたり、うつ状態であったり、薬物依存や知的障害、精神的な病気を持っていたりして、適切な子育てができないことが原因となったりします。
母親など養育者自身が子供時代に十分な愛情を受けて育っていない場合に、世代を超えて子育てに影響する世代間伝達、愛情不足の連鎖もあります。夫婦仲が悪く、家庭環境の雰囲気が悪いことが原因になることもあります。
栄養障害によって現れる症状として、身長が低い、体重の増えが悪い、腕や脚が細い、やせている、肋骨(ろっこつ)が目立つ、お尻がへこんでいるなどがあります。不適切な養育の結果として観察される症状としては、おむつかぶれがひどい、皮膚が汚い、汚い服を着ているなどがあります。子供の心理的な変化や行動異常によって現れる症状としては、目を合わせない、表情が乏しい、感情表現が乏しい、動作が緩慢、抱きついたり寄り添ったりしない、親に抱かれるのを嫌がる、異様な食欲増進、尿や便をもらす、寝付きが悪い、かんしゃくを起こすなどがあります。
愛情不足の養育や、より重大な問題がある虐待やネグレクト(育児放棄)が生後1年以内に始まり、3年以上続く時は、情緒や知能の障害が永久に回復しないといわれています。
養育者が子供の精神社会性低身長症に気付いたら、母子手帳の成長曲線をつけてみたり、子供らしい豊かな表情をしているかどうか、気を配りましょう。心配なことがあれば、小児科医や保健師に相談しましょう。
精神社会性低身長症の検査と診断と治療
小児科の医師による診断では、過去から現在までの身長、体重、頭囲の計測値から成長曲線をつくり、子供の成長を評価します。食事の内容から、栄養学的な分析をします。また、養育環境についての情報を集めます。
小児科の医師による治療では、食事の内容について養育者に栄養指導を行い、子供の年齢に見合った十分な食事を与えるようにします。
また、子供と養育者にとって、ストレスの少ない環境になるように調整をします。母親など養育者に対する心理カウンセリングが必要な場合もあります。養育者は子供に対してストレスを与えていないつもりでも、気付いていない家庭の習慣が子供のストレスになっている場合もあります。
子供にとってストレスの少ない環境で、年齢に見合った十分な栄養を与えると体重が増加し、成長ホルモンの反応も回復して身長の伸びが促進されなど、成長の遅れは取り戻されます。
しかし、虐待やネグレクト(育児放棄)など養育者の子育てに重大な問題がある場合、ケースによっては養育者と子供を遠ざけることも必要です。入院で治療を受けさせたり、乳児院など保護観察施設で養育したりすることで遅れていた成長が改善されることもあります。
母親が不在の場合、あるいは母親がいても子供に愛情を十分に与えることができない場合には、母親に代わって父親や親に代わる養育者が十分な愛情を注ぐことで防ぐことは可能です。
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■用語 切迫性尿失禁 [用語(せ)]
急な強い尿意を催し、トイレに間に合わずに尿が漏れる状態
切迫性尿失禁とは、急な強い尿意を催し、トイレにゆく途中やトイレで準備をする間に、尿が漏れる状態。急迫性尿失禁とも呼ばれます。
この切迫性尿失禁は、自分の意思に反して勝手に膀胱(ぼうこう)が収縮する過活動膀胱が主な原因です。過活動膀胱の症状は、我慢できないような強い尿意である尿意切迫感と、昼夜を問わない頻尿です。
普通、膀胱が正常であれば400~500mlの尿をためることが可能で、尿が250~300mlくらいになると尿意を感じて排尿が始まりますが、過活動膀胱では100ml前後の尿がたまると膀胱が収縮するために、突然の尿意を催して、我慢できなくなるのが特徴です。膀胱が正常であれば、尿意を感じ始めて10~15分ぐらいは我慢できることもありますが、過活動膀胱ではそれも難しいとされています。
この過活動膀胱を主な原因として起こる切迫性尿失禁は、せきやくしゃみ、運動時など、腹部に急な圧迫が加わった時に尿が漏れる腹圧性尿失禁と区別されていますが、実際は、切迫と腹圧の2つの要因が重なって失禁に至ることもあり、混合性尿失禁と呼ばれます。
過活動膀胱の人はとても多く、日本では40歳以上の男女のうち8人に1人は過活動膀胱の症状があり、その約半数に切迫性尿失禁の症状があると報告されています。近年40歳以下でも、過活動膀胱の症状に悩まされている人が大変多くなってきています。
女性が過活動膀胱になる最も多い原因は、膀胱と尿道を支えている骨盤底筋群や骨盤底を構成する靱帯(じんたい)が弱まる骨盤底障害です。骨盤底筋群や靱帯が弱まってたるむと、膀胱の底にある副交感神経の末端が膀胱に尿が十分にたまらないうちから活性化して、突然強い尿意が出るようになるのです。
女性は若い時は妊娠や出産で、また、更年期以降は老化と女性ホルモン低下の影響で骨盤底障害になりやすいので、男性よりも多くの発症者がいます。男性の場合も、老化や運動不足で骨盤底筋や尿道括約筋が衰えることによって過活動膀胱になることがあります。
また、男女ともに、脳と膀胱や尿道を結ぶ神経のトラブルで起こる過活動膀胱も増えています。こちらは、脳卒中や脳梗塞(こうそく)などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄(せきずい)損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害が原因となります。
過活動膀胱のほか、切迫性尿失禁は膀胱炎、結石などによって膀胱の刺激性が高まって起こるものもあります。
尿失禁は恥ずかしさのため医療機関への受診がためらわれ、尿パッドなどで対処している人も多いようですが、外出や人との交流を控えることにもつながりかねません。次第に日常生活の質が低下することも懸念されます。症状が続くようであれば、泌尿器科を受診することが勧められます。
切迫性尿失禁の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、一般的に、初診時に問診を行い、尿失禁の状況、出産歴、手術歴、婦人科疾患の有無、便秘の有無などを質問します。切迫性尿失禁の主な原因となる過活動膀胱かどうかを調べるための過活動膀胱スクリーニング質問票(リンク)や、過活動膀胱の症状の程度を調べるための過活動膀胱症状質問票(OABSS)という簡単な質問票を、診断のために使うこともあります。
問診以外には、膀胱の状態を調べるための検査を行うこともあります。切迫性尿失禁の症状があるからといって、必ずしも過活動膀胱とは限りませんので、ほかの疾患の可能性も含めて確認するための検査です。初診で行う検査は、主に腹部エコー検査(残尿量の測定)、血液検査、尿検査など比較的簡単な検査で、過活動膀胱の検査には尿流測定、パッドテスト、ストレステストなどもあります。
泌尿器科の医師による治療では、膀胱の収縮を阻止し、副交感神経に働く抗コリン剤(ポラキス、BUP−4)、または膀胱壁の筋肉である排尿筋を弛緩(しかん)させるカルシウム拮抗(きっこう)剤(アダラート、ヘルベッサー、ペルジピン)を用います。抗コリン剤を1~2カ月内服すると、過活動膀胱の80パーセントの発症者で改善されます。
次の治療では、できるだけ尿意を我慢して、膀胱を拡大するための訓練をします。毎日訓練すると、膀胱が少しずつ大きくなって尿がためられるようになりますので、200~400mlくらいまでためられるように訓練します。排尿間隔を少しずつ延長させ、2時間くらいは我慢できるようになれば成功です。尿道を締める筋肉の訓練も必要です。
難産を経験した女性、40歳を過ぎた女性で、時に切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁が重なる混合性尿失禁を起こしている場合、尿道、膣(ちつ)、肛門(こうもん)を締める骨盤底筋体操が割合効果的です。肛門の周囲の筋肉を5秒間強く締め、次に緩める簡単な運動で、仰向けの姿勢、いすに座った姿勢、ひじ・ひざをついた姿勢、机に手をついた姿勢、仰向けになり背筋を伸ばした姿勢という5つの姿勢で、20回ずつ繰り返します。
朝、昼、夕、就寝前の4回に分けて、根気よく毎日続けて行うのが理想的です。3カ月以上続けても効果のない場合には、手術が必要となる可能性が高くなります。
骨盤底筋の強化を目的として、電気刺激によって骨盤底筋や尿道括約筋など必要な筋肉を収縮させる電気刺激療法もあります。また、腟内コーンという器具を腟内に15分程度、1日2回ほど保持し、それを徐々に重たいものに変えていくことで骨盤底筋を強化し、症状を軽減する方法もあります。
重症例や希望の強い場合などには、手術による治療を行います。尿道括約筋の機能が低下している場合には、尿道の周囲にコラーゲンを注入する治療や、尿道括約筋を圧迫するように腹部の組織や人工線維で尿道を支えるスリング手術、日本ではあまり行われていない人工括約筋埋め込み術などがあります。
切迫性尿失禁とは、急な強い尿意を催し、トイレにゆく途中やトイレで準備をする間に、尿が漏れる状態。急迫性尿失禁とも呼ばれます。
この切迫性尿失禁は、自分の意思に反して勝手に膀胱(ぼうこう)が収縮する過活動膀胱が主な原因です。過活動膀胱の症状は、我慢できないような強い尿意である尿意切迫感と、昼夜を問わない頻尿です。
普通、膀胱が正常であれば400~500mlの尿をためることが可能で、尿が250~300mlくらいになると尿意を感じて排尿が始まりますが、過活動膀胱では100ml前後の尿がたまると膀胱が収縮するために、突然の尿意を催して、我慢できなくなるのが特徴です。膀胱が正常であれば、尿意を感じ始めて10~15分ぐらいは我慢できることもありますが、過活動膀胱ではそれも難しいとされています。
この過活動膀胱を主な原因として起こる切迫性尿失禁は、せきやくしゃみ、運動時など、腹部に急な圧迫が加わった時に尿が漏れる腹圧性尿失禁と区別されていますが、実際は、切迫と腹圧の2つの要因が重なって失禁に至ることもあり、混合性尿失禁と呼ばれます。
過活動膀胱の人はとても多く、日本では40歳以上の男女のうち8人に1人は過活動膀胱の症状があり、その約半数に切迫性尿失禁の症状があると報告されています。近年40歳以下でも、過活動膀胱の症状に悩まされている人が大変多くなってきています。
女性が過活動膀胱になる最も多い原因は、膀胱と尿道を支えている骨盤底筋群や骨盤底を構成する靱帯(じんたい)が弱まる骨盤底障害です。骨盤底筋群や靱帯が弱まってたるむと、膀胱の底にある副交感神経の末端が膀胱に尿が十分にたまらないうちから活性化して、突然強い尿意が出るようになるのです。
女性は若い時は妊娠や出産で、また、更年期以降は老化と女性ホルモン低下の影響で骨盤底障害になりやすいので、男性よりも多くの発症者がいます。男性の場合も、老化や運動不足で骨盤底筋や尿道括約筋が衰えることによって過活動膀胱になることがあります。
また、男女ともに、脳と膀胱や尿道を結ぶ神経のトラブルで起こる過活動膀胱も増えています。こちらは、脳卒中や脳梗塞(こうそく)などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄(せきずい)損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害が原因となります。
過活動膀胱のほか、切迫性尿失禁は膀胱炎、結石などによって膀胱の刺激性が高まって起こるものもあります。
尿失禁は恥ずかしさのため医療機関への受診がためらわれ、尿パッドなどで対処している人も多いようですが、外出や人との交流を控えることにもつながりかねません。次第に日常生活の質が低下することも懸念されます。症状が続くようであれば、泌尿器科を受診することが勧められます。
切迫性尿失禁の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、一般的に、初診時に問診を行い、尿失禁の状況、出産歴、手術歴、婦人科疾患の有無、便秘の有無などを質問します。切迫性尿失禁の主な原因となる過活動膀胱かどうかを調べるための過活動膀胱スクリーニング質問票(リンク)や、過活動膀胱の症状の程度を調べるための過活動膀胱症状質問票(OABSS)という簡単な質問票を、診断のために使うこともあります。
問診以外には、膀胱の状態を調べるための検査を行うこともあります。切迫性尿失禁の症状があるからといって、必ずしも過活動膀胱とは限りませんので、ほかの疾患の可能性も含めて確認するための検査です。初診で行う検査は、主に腹部エコー検査(残尿量の測定)、血液検査、尿検査など比較的簡単な検査で、過活動膀胱の検査には尿流測定、パッドテスト、ストレステストなどもあります。
泌尿器科の医師による治療では、膀胱の収縮を阻止し、副交感神経に働く抗コリン剤(ポラキス、BUP−4)、または膀胱壁の筋肉である排尿筋を弛緩(しかん)させるカルシウム拮抗(きっこう)剤(アダラート、ヘルベッサー、ペルジピン)を用います。抗コリン剤を1~2カ月内服すると、過活動膀胱の80パーセントの発症者で改善されます。
次の治療では、できるだけ尿意を我慢して、膀胱を拡大するための訓練をします。毎日訓練すると、膀胱が少しずつ大きくなって尿がためられるようになりますので、200~400mlくらいまでためられるように訓練します。排尿間隔を少しずつ延長させ、2時間くらいは我慢できるようになれば成功です。尿道を締める筋肉の訓練も必要です。
難産を経験した女性、40歳を過ぎた女性で、時に切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁が重なる混合性尿失禁を起こしている場合、尿道、膣(ちつ)、肛門(こうもん)を締める骨盤底筋体操が割合効果的です。肛門の周囲の筋肉を5秒間強く締め、次に緩める簡単な運動で、仰向けの姿勢、いすに座った姿勢、ひじ・ひざをついた姿勢、机に手をついた姿勢、仰向けになり背筋を伸ばした姿勢という5つの姿勢で、20回ずつ繰り返します。
朝、昼、夕、就寝前の4回に分けて、根気よく毎日続けて行うのが理想的です。3カ月以上続けても効果のない場合には、手術が必要となる可能性が高くなります。
骨盤底筋の強化を目的として、電気刺激によって骨盤底筋や尿道括約筋など必要な筋肉を収縮させる電気刺激療法もあります。また、腟内コーンという器具を腟内に15分程度、1日2回ほど保持し、それを徐々に重たいものに変えていくことで骨盤底筋を強化し、症状を軽減する方法もあります。
重症例や希望の強い場合などには、手術による治療を行います。尿道括約筋の機能が低下している場合には、尿道の周囲にコラーゲンを注入する治療や、尿道括約筋を圧迫するように腹部の組織や人工線維で尿道を支えるスリング手術、日本ではあまり行われていない人工括約筋埋め込み術などがあります。