■用語 汗孔角化症 [用語(か)]
カサカサした皮疹が四肢を中心に多発する皮膚病
汗孔角化(かんこうかくか)症とは、直径数ミリから数センチの大きさで、赤や茶色の円形または環状の形をした、平たく少しだけ盛り上がったカサカサした皮疹(ひしん)が、四肢を中心として、全身の皮膚に多発する疾患。
男性に多く、自覚症状が乏しいことが多くなっています。皮膚の症状はよくなったり悪くなったりして、基本的に慢性的かつゆっくり症状が経過します。時にしこりのようになり、皮膚がんに移行する例もあります。
以前は、汗の出口である汗孔が厚みを増して硬くなる角化異常が関与していると考えられていましたが、今は、皮膚病変が汗孔に限局しないことがわかっています。
皮疹の分布や経過により、古典型(ミベリ型)、日光表在播種(はしゅ)型、表在播種型、線状型、掌蹠(しょうせき)播種型、限局型の病型に分けますが、明確でないことも多くみられます。
古典型(ミベリ型)汗孔角化症は、手足や顔面に小型の皮疹が左右対称に数個、散発性に生じます。常染色体優性遺伝の疾患で、親子や兄弟がともに発症することがあります。 日光表在播種型汗孔角化症は、特に日光に当たる腕や足の外側に小型の皮疹が多数現れます。皮疹が融合することもあります。
表在播種型汗孔角化症は、常染色体優性遺伝の疾患で、紫外線が皮疹を誘発していると考えられています。症状は日光表在播種型とほぼ同様ですが、日光が当たる部位以外にも皮疹が多数現れます。皮疹は、円形ないしは楕円(だえん)形の不規則な環状の隆起局面で、中心部の皮膚は委縮しています。
線状型汗孔角化症は、生まれた時から幼少期までの間に、体の一部分の皮膚に集中して皮疹ができ始め、線状、帯状に現れます。
掌蹠播種型は、手のひらや足の裏に角化した小さな皮疹が多数現れます。全身に拡大することもあります。
限局型は、限られた部位に大型の皮疹ができます。
発症の原因として、常染色体優性遺伝、外傷、加齢、紫外線、放射線、免疫抑制状態、肝炎ウイルスなどが考えられています。
日本人の400人に1人は、汗孔角化症を発症する生まれ付きの素因を持っていると見なされています。さらに、そのような人では、日光に含まれる紫外線に当たるなどにより後天的に皮膚細胞のゲノムが変化すると、汗孔角化症の症状が全身の皮膚に多発することになります。
汗孔角化症を発症する人は、メバロン酸経路の酵素をコードするMVD、MVK、PMVK、FDPSなどの遺伝子に、生まれ付きの変化(遺伝子変異)を1つ持っています。人の細胞は遺伝子を2つずつ持っているため、遺伝子の片方が変化して働かなくても、もう片方がスペアとして働き、通常は何も問題は起きません。
しかし、皮膚細胞のゲノムに生じた後天的な変化によって、MVD遺伝子などが2つとも働かなくなった細胞が汗孔角化症の皮疹を作り、後天的な変化が胎児期に1度だけ生じると線状型汗孔角化症になり、大人になってから後天的な変化が皮膚のあちらこちらで何度も生じると、表在播種型汗孔角化症になります。
皮膚がんに移行することがあるので、皮膚病変に気付いたら、皮膚科専門医を受診して正しい診断をつけてもらい、適切な治療を受けることが必須です。
汗孔角化症の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍(しゅよう)科、小児科の医師による診断では、典型的な皮膚の症状では、見た目でも確定できます。
尋常性乾癬(かんせん)、表皮母斑(ぼはん)、疣贅(ゆうぜい)、扁平苔癬(たいせん)、日光角化症などの疾患と鑑別する必要があり、区別が難しい時は、皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる生検をすることがあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍科、小児科の医師による治療では、確立された治療法
は存在していないため、遮光のほか、外用薬や内服薬の使用、外科的な処置をします。
しかし、治療に抵抗性を示し、なかなか治療効果が出なかったり、再発したりすることが多く見受けられます。皮膚がんに移行した場合は、手術による治療が必要です。
外用薬は、主にサリチル酸ワセリンや尿素軟こうといった角質溶解剤、ビタミンD3軟こう、保湿剤を用います。内服薬としては、レチノイド(エトレチナート)を用いることがあります。
外科的な処置などによる治療としては、液体窒素による凍結療法、切除手術による治療のほか、炭酸ガス(CO2)レーザーやルビーレーザーなどのレーザー治療を行うことがあります。
汗孔角化(かんこうかくか)症とは、直径数ミリから数センチの大きさで、赤や茶色の円形または環状の形をした、平たく少しだけ盛り上がったカサカサした皮疹(ひしん)が、四肢を中心として、全身の皮膚に多発する疾患。
男性に多く、自覚症状が乏しいことが多くなっています。皮膚の症状はよくなったり悪くなったりして、基本的に慢性的かつゆっくり症状が経過します。時にしこりのようになり、皮膚がんに移行する例もあります。
以前は、汗の出口である汗孔が厚みを増して硬くなる角化異常が関与していると考えられていましたが、今は、皮膚病変が汗孔に限局しないことがわかっています。
皮疹の分布や経過により、古典型(ミベリ型)、日光表在播種(はしゅ)型、表在播種型、線状型、掌蹠(しょうせき)播種型、限局型の病型に分けますが、明確でないことも多くみられます。
古典型(ミベリ型)汗孔角化症は、手足や顔面に小型の皮疹が左右対称に数個、散発性に生じます。常染色体優性遺伝の疾患で、親子や兄弟がともに発症することがあります。 日光表在播種型汗孔角化症は、特に日光に当たる腕や足の外側に小型の皮疹が多数現れます。皮疹が融合することもあります。
表在播種型汗孔角化症は、常染色体優性遺伝の疾患で、紫外線が皮疹を誘発していると考えられています。症状は日光表在播種型とほぼ同様ですが、日光が当たる部位以外にも皮疹が多数現れます。皮疹は、円形ないしは楕円(だえん)形の不規則な環状の隆起局面で、中心部の皮膚は委縮しています。
線状型汗孔角化症は、生まれた時から幼少期までの間に、体の一部分の皮膚に集中して皮疹ができ始め、線状、帯状に現れます。
掌蹠播種型は、手のひらや足の裏に角化した小さな皮疹が多数現れます。全身に拡大することもあります。
限局型は、限られた部位に大型の皮疹ができます。
発症の原因として、常染色体優性遺伝、外傷、加齢、紫外線、放射線、免疫抑制状態、肝炎ウイルスなどが考えられています。
日本人の400人に1人は、汗孔角化症を発症する生まれ付きの素因を持っていると見なされています。さらに、そのような人では、日光に含まれる紫外線に当たるなどにより後天的に皮膚細胞のゲノムが変化すると、汗孔角化症の症状が全身の皮膚に多発することになります。
汗孔角化症を発症する人は、メバロン酸経路の酵素をコードするMVD、MVK、PMVK、FDPSなどの遺伝子に、生まれ付きの変化(遺伝子変異)を1つ持っています。人の細胞は遺伝子を2つずつ持っているため、遺伝子の片方が変化して働かなくても、もう片方がスペアとして働き、通常は何も問題は起きません。
しかし、皮膚細胞のゲノムに生じた後天的な変化によって、MVD遺伝子などが2つとも働かなくなった細胞が汗孔角化症の皮疹を作り、後天的な変化が胎児期に1度だけ生じると線状型汗孔角化症になり、大人になってから後天的な変化が皮膚のあちらこちらで何度も生じると、表在播種型汗孔角化症になります。
皮膚がんに移行することがあるので、皮膚病変に気付いたら、皮膚科専門医を受診して正しい診断をつけてもらい、適切な治療を受けることが必須です。
汗孔角化症の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍(しゅよう)科、小児科の医師による診断では、典型的な皮膚の症状では、見た目でも確定できます。
尋常性乾癬(かんせん)、表皮母斑(ぼはん)、疣贅(ゆうぜい)、扁平苔癬(たいせん)、日光角化症などの疾患と鑑別する必要があり、区別が難しい時は、皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる生検をすることがあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍科、小児科の医師による治療では、確立された治療法
は存在していないため、遮光のほか、外用薬や内服薬の使用、外科的な処置をします。
しかし、治療に抵抗性を示し、なかなか治療効果が出なかったり、再発したりすることが多く見受けられます。皮膚がんに移行した場合は、手術による治療が必要です。
外用薬は、主にサリチル酸ワセリンや尿素軟こうといった角質溶解剤、ビタミンD3軟こう、保湿剤を用います。内服薬としては、レチノイド(エトレチナート)を用いることがあります。
外科的な処置などによる治療としては、液体窒素による凍結療法、切除手術による治療のほか、炭酸ガス(CO2)レーザーやルビーレーザーなどのレーザー治療を行うことがあります。
☐用語 回帰熱 [用語(か)]
野生のダニやシラミが媒介する細菌感染症
回帰熱とは、野生のダニやシラミに媒介されることで発症する細菌感染症。再帰熱とも呼ばれます。
回帰熱を発症すると、発熱期と無熱期を数回繰り返すことから、この疾患名が付けられました。回帰熱を引き起こす病原体は、スピロヘータ科ボレリア属のボレリア・レカレンチス、ボレリア・ミヤモトイ、ボレリア・ヘルムシーなどの細菌で、回帰熱ボレリアとも呼ばれます。
回帰熱には、ダニが媒介してボレリア・レカレンチスやボレリア・ミヤモトイを病原体とするものと、シラミが媒介してボレリア・ミヤモトイやボレリア・ヘルムシーなどを病原体とするものがあります。
ダニ媒介回帰熱は、アフリカ大陸、イベリア半島(特に地中海地域)、中央アジア、中東の一部、インド、中国、アメリカ大陸など非常に広い範囲で分布します。シラミ媒介回帰熱は、エチオピア、スーダン、南スーダン、ソマリアなどアフリカ大陸の高地、インド、南米アンデス山地などでみられます。
日本では、海外で感染し帰国後に発症した数例を除き、過去数十年間、国内で回帰熱の患者の報告はありませんでしたが、近年の逆上り調査の結果、2011年以降に、北海道でボレリア・ミヤモトイ感染による回帰熱の患者2名が発生していたことが明らかになりました。
日本では、回帰熱は感染症法で全数把握対象の4類感染症に指定されており、診断した医師は直ちに保健所に届け出ることになっています。
回帰熱は、基本的にダニやシラミに刺されることを原因として発症します。人から人に直接感染することはありません。
刺されてから約1〜2週間の潜伏期間をへて、病原体が血液中に存在して40℃以上の高熱が1週間ぐらい続き、その後一時的に細菌が減少して約1週間は熱がなく、再び発熱するといった発熱期と無熱期を複数回繰り返します。
発熱期には、発熱以外に頭痛や筋肉痛、関節痛、悪寒、吐き気、結膜炎、点状出血、黄疸(おうだん)、肝臓や脾臓(ひぞう)の腫大(しゅだい)などが生じます。無熱期には、発汗、倦怠(けんたい)感がみられ、時に低血圧症や赤いぶつぶつとした発疹(はっしん)が発生することもあります。
一般的には2回目以降の発熱期は短く、熱の程度も軽くなります。これを繰り返した後、最終的に解熱します。
ただし、発熱期には、中枢神経障害として髄膜炎や脳出血、心筋炎、肺炎などを起こすこともあり、症状が重い場合には死に至ることもあります。妊婦が感染した場合は、低出生体重児や早産、自然流産のリスクが高まります。
ダニ媒介回帰熱とシラミ媒介回帰熱の症状は似ていますが、一般にシラミ媒介回帰熱のほうがより重篤な症状を示します。致死率は、ダニ媒介回帰熱では10%以下ですが、シラミ媒介回帰熱では50%にまで達することがあります。
回帰熱の検査と診断と治療
内科、皮膚科、感染症科、感染症内科などの医師による診断では、その特殊な熱型と、血液中の病原体ボレリア属の顕微鏡による検出によって、容易に回帰熱と確定できます。
血液検査では、血液中の細菌量が比較的多い発熱期に採血し、血液を染色して顕微鏡で観察して病原体の特徴的な形態が見られるか調べます。ほかにも、抗原や遺伝子などを検出する蛍光抗体法(免疫蛍光法)やPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法など別の方法を選択することもあります。
内科、皮膚科、感染症科、感染症内科などの医師による治療では、抗生物質を使用します。テトラサイクリン系の抗生物質が最も有効で、ストレプトマイシン、ペニシリンも効果がありますので、年齢などに応じて使用する抗生物質を決定します。
ただし、抗生物質の初回投与後数時間以内に悪寒や震えが生じ、その後ショックから死亡に至ることもあるので、注意が必要です。この反応は、ダニ媒介回帰熱の場合は30〜40%、シラミ媒介回帰熱の場合は80〜90%の症例で生じるといわれています。
回帰熱はワクチンによる予防対策を講じることができない疾患のため、病原体を保有するダニやシラミに刺されない対策を講じることが重要です。
そのポイントは、森林作業や農作業、レジャーなどで、草むらややぶなどダニやシラミが多く生息する場所に入る時は、肌をできるだけ出さないように、長袖(ながそで)、長ズボン、帽子、手袋、足を完全に覆う靴などを着用することです。
また、肌が出る部分には、人用の防虫スプレーを噴霧し、地面に直接寝転んだり、腰を下ろしたりしないように、敷物を敷きます。
衣類にダニがついていることがあるので、森林や野山などから帰宅後は衣類を家の外で脱ぎ、すぐに入浴し体をよく洗って、新しい服に着替えます。
万が一ダニ類に刺され、皮膚に吸着された時は、つぶしたり無理に引き抜こうとせず、入浴して体をよく洗って注意深く取り除くか、医療機関で処理してもらうことです。
シラミが移ることを防ぐために、衣類や寝具、ヘアブラシなどの共有を避けます。
回帰熱とは、野生のダニやシラミに媒介されることで発症する細菌感染症。再帰熱とも呼ばれます。
回帰熱を発症すると、発熱期と無熱期を数回繰り返すことから、この疾患名が付けられました。回帰熱を引き起こす病原体は、スピロヘータ科ボレリア属のボレリア・レカレンチス、ボレリア・ミヤモトイ、ボレリア・ヘルムシーなどの細菌で、回帰熱ボレリアとも呼ばれます。
回帰熱には、ダニが媒介してボレリア・レカレンチスやボレリア・ミヤモトイを病原体とするものと、シラミが媒介してボレリア・ミヤモトイやボレリア・ヘルムシーなどを病原体とするものがあります。
ダニ媒介回帰熱は、アフリカ大陸、イベリア半島(特に地中海地域)、中央アジア、中東の一部、インド、中国、アメリカ大陸など非常に広い範囲で分布します。シラミ媒介回帰熱は、エチオピア、スーダン、南スーダン、ソマリアなどアフリカ大陸の高地、インド、南米アンデス山地などでみられます。
日本では、海外で感染し帰国後に発症した数例を除き、過去数十年間、国内で回帰熱の患者の報告はありませんでしたが、近年の逆上り調査の結果、2011年以降に、北海道でボレリア・ミヤモトイ感染による回帰熱の患者2名が発生していたことが明らかになりました。
日本では、回帰熱は感染症法で全数把握対象の4類感染症に指定されており、診断した医師は直ちに保健所に届け出ることになっています。
回帰熱は、基本的にダニやシラミに刺されることを原因として発症します。人から人に直接感染することはありません。
刺されてから約1〜2週間の潜伏期間をへて、病原体が血液中に存在して40℃以上の高熱が1週間ぐらい続き、その後一時的に細菌が減少して約1週間は熱がなく、再び発熱するといった発熱期と無熱期を複数回繰り返します。
発熱期には、発熱以外に頭痛や筋肉痛、関節痛、悪寒、吐き気、結膜炎、点状出血、黄疸(おうだん)、肝臓や脾臓(ひぞう)の腫大(しゅだい)などが生じます。無熱期には、発汗、倦怠(けんたい)感がみられ、時に低血圧症や赤いぶつぶつとした発疹(はっしん)が発生することもあります。
一般的には2回目以降の発熱期は短く、熱の程度も軽くなります。これを繰り返した後、最終的に解熱します。
ただし、発熱期には、中枢神経障害として髄膜炎や脳出血、心筋炎、肺炎などを起こすこともあり、症状が重い場合には死に至ることもあります。妊婦が感染した場合は、低出生体重児や早産、自然流産のリスクが高まります。
ダニ媒介回帰熱とシラミ媒介回帰熱の症状は似ていますが、一般にシラミ媒介回帰熱のほうがより重篤な症状を示します。致死率は、ダニ媒介回帰熱では10%以下ですが、シラミ媒介回帰熱では50%にまで達することがあります。
回帰熱の検査と診断と治療
内科、皮膚科、感染症科、感染症内科などの医師による診断では、その特殊な熱型と、血液中の病原体ボレリア属の顕微鏡による検出によって、容易に回帰熱と確定できます。
血液検査では、血液中の細菌量が比較的多い発熱期に採血し、血液を染色して顕微鏡で観察して病原体の特徴的な形態が見られるか調べます。ほかにも、抗原や遺伝子などを検出する蛍光抗体法(免疫蛍光法)やPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法など別の方法を選択することもあります。
内科、皮膚科、感染症科、感染症内科などの医師による治療では、抗生物質を使用します。テトラサイクリン系の抗生物質が最も有効で、ストレプトマイシン、ペニシリンも効果がありますので、年齢などに応じて使用する抗生物質を決定します。
ただし、抗生物質の初回投与後数時間以内に悪寒や震えが生じ、その後ショックから死亡に至ることもあるので、注意が必要です。この反応は、ダニ媒介回帰熱の場合は30〜40%、シラミ媒介回帰熱の場合は80〜90%の症例で生じるといわれています。
回帰熱はワクチンによる予防対策を講じることができない疾患のため、病原体を保有するダニやシラミに刺されない対策を講じることが重要です。
そのポイントは、森林作業や農作業、レジャーなどで、草むらややぶなどダニやシラミが多く生息する場所に入る時は、肌をできるだけ出さないように、長袖(ながそで)、長ズボン、帽子、手袋、足を完全に覆う靴などを着用することです。
また、肌が出る部分には、人用の防虫スプレーを噴霧し、地面に直接寝転んだり、腰を下ろしたりしないように、敷物を敷きます。
衣類にダニがついていることがあるので、森林や野山などから帰宅後は衣類を家の外で脱ぎ、すぐに入浴し体をよく洗って、新しい服に着替えます。
万が一ダニ類に刺され、皮膚に吸着された時は、つぶしたり無理に引き抜こうとせず、入浴して体をよく洗って注意深く取り除くか、医療機関で処理してもらうことです。
シラミが移ることを防ぐために、衣類や寝具、ヘアブラシなどの共有を避けます。
■用語 カテコラミン誘発性多型性心室頻拍 [用語(か)]
致死性不整脈を引き起こす可能性がある不整脈
カテコラミン誘発性多型性心室頻拍とは、狭心症や心筋梗塞(こうそく)、心筋症といった心臓の器質的な病変がない場合でも、心室頻拍や心室細動といった致死性不整脈へと直接つながる可能性を有する頻脈性の不整脈。
CPVT(Catecholaminergic Polymorphic Ventricular Tachycardia)とも呼ばれます。
小児期の失神や突然死の原因疾患として、近年注目されている不整脈ですが、発生頻度は極めてまれであり、心臓における電気的刺激の伝達にかかわる遺伝子異常によって引き起こされます。
現在までに心臓のリアノジン受容体RyR2の遺伝子異常と、カルセクエストリン2(Calsequestrin 2)というカルシウム結合蛋白(たんぱく)の遺伝子異常により引き起こされることが明らかになっており、前者は常染色体優性遺伝を示し、後者は常染色体劣性遺伝を示します。これらの遺伝子異常により、心筋細胞内の筋小胞体に存在するリアノジン受容体(RyR)からの異常なカルシウムイオンの放出が起こることが知られています。
運動や感情の高まり(カテコラミン刺激)に伴って、脳内で放出される神経伝達物質であるカテコラミン(カテコールアミン)が、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍の誘因となります。
カテコラミンは体で興奮系の作用を示す神経伝達物質で、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンが含まれます。ドーパミンは中枢の神経伝達物質として快の感情、学習、意欲、運動、ホルモンの調節などの働きを持ちます。アドレナリンは恐怖のホルモンとして、ノルアドレナリンは怒りのホルモンとして、交感神経系の作動に働きます。
心筋細胞内の筋小胞体に存在するリアノジン受容体からカルシウムイオンが漏れ出て、これに運動や感情の高まりに伴って脳内で放出されたアドレナリンなどのカテコラミンが加わることによって、心筋細胞内のカルシウムイオンがさらに増加します。これにより心筋細胞の反応が過剰に強く引き起こされ、電気的興奮が異常に高まる結果、心室頻拍や心室細動といった重篤な致死性不整脈を発生させます。
現れる症状は、動悸(どうき)や、めまい、失神です。失神は、二方向性心室頻拍、多形性心室頻拍、多形性心室期外収縮、多源性心室頻拍などが誘発され、心室細動に移行することにより起こります。心停止が初めて現れる症状である場合もしばしば見受けられ、突然死につながることもあります。
カテコラミン誘発性多型性心室頻拍は、幼少時に発症することが最も多く、平均初発年齢は7歳から9歳。時として診断が遅れることがあり、青年期以降または中年期以降に診断される場合もあります。
約30%の発症者に、失神および突然死の家族歴を認めます。薬剤治療を行わなかった場合、予後はきわめて不良で、40歳までの死亡率が30~50%と高いことが報告されています。薬剤治療を行っても、10年で15%から40%は死亡するとされています。
カテコラミン誘発性多型性心室頻拍の検査と診断と治療
小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、運動をしたり、感情が高まって興奮したりする交感神経緊張時に失神を起こすことが多いため、これまでの失神の状況を問診します。また、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍と診断されている血縁者がいないか、もくして突然死した血縁者がいないかなどを詳しく問診します。
安静時心電図は役に経たないため、基礎心疾患の有無や、運動前後あるいは身体的ストレス、感情的ストレスによる不整脈を評価する目的で、心臓超音波検査、運動負荷心電図検査、24時間にわたる心電図を記録するホルタ―心電図検査などを行います。
β(ベータ)アドレナリン受容体刺激薬を点滴して不整脈を評価する薬物負荷検査、リアノジン受容体RyR2の遺伝子変異の有無を解析する遺伝子検査を行うこともあります。
小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、体内におけるカテコラミンの影響を抑制することに重点を置き、交感神経のアドレナリン受容体であるβ受容体に対するカテコラミンの伝達を遮断するβ遮断薬(交感神経β受容体遮断薬)が第一選択となります。β遮断薬単独で効果が得られない場合は、カルシウム拮抗(きっこう)薬やナトリウム遮断薬を併用することがあります。
症状の状態に応じて、適切な範囲での運動制限または運動禁止も行います。
心停止を起こしたことがある場合や、薬剤によって不整脈が抑制されない場合は、植え込み型除細動器(ICD)の埋め込み手術を勧めることがあります。植え込み型除細動器は致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置ですが、突然死の予防効果は不完全です。
カテコラミン誘発性多型性心室頻拍とは、狭心症や心筋梗塞(こうそく)、心筋症といった心臓の器質的な病変がない場合でも、心室頻拍や心室細動といった致死性不整脈へと直接つながる可能性を有する頻脈性の不整脈。
CPVT(Catecholaminergic Polymorphic Ventricular Tachycardia)とも呼ばれます。
小児期の失神や突然死の原因疾患として、近年注目されている不整脈ですが、発生頻度は極めてまれであり、心臓における電気的刺激の伝達にかかわる遺伝子異常によって引き起こされます。
現在までに心臓のリアノジン受容体RyR2の遺伝子異常と、カルセクエストリン2(Calsequestrin 2)というカルシウム結合蛋白(たんぱく)の遺伝子異常により引き起こされることが明らかになっており、前者は常染色体優性遺伝を示し、後者は常染色体劣性遺伝を示します。これらの遺伝子異常により、心筋細胞内の筋小胞体に存在するリアノジン受容体(RyR)からの異常なカルシウムイオンの放出が起こることが知られています。
運動や感情の高まり(カテコラミン刺激)に伴って、脳内で放出される神経伝達物質であるカテコラミン(カテコールアミン)が、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍の誘因となります。
カテコラミンは体で興奮系の作用を示す神経伝達物質で、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンが含まれます。ドーパミンは中枢の神経伝達物質として快の感情、学習、意欲、運動、ホルモンの調節などの働きを持ちます。アドレナリンは恐怖のホルモンとして、ノルアドレナリンは怒りのホルモンとして、交感神経系の作動に働きます。
心筋細胞内の筋小胞体に存在するリアノジン受容体からカルシウムイオンが漏れ出て、これに運動や感情の高まりに伴って脳内で放出されたアドレナリンなどのカテコラミンが加わることによって、心筋細胞内のカルシウムイオンがさらに増加します。これにより心筋細胞の反応が過剰に強く引き起こされ、電気的興奮が異常に高まる結果、心室頻拍や心室細動といった重篤な致死性不整脈を発生させます。
現れる症状は、動悸(どうき)や、めまい、失神です。失神は、二方向性心室頻拍、多形性心室頻拍、多形性心室期外収縮、多源性心室頻拍などが誘発され、心室細動に移行することにより起こります。心停止が初めて現れる症状である場合もしばしば見受けられ、突然死につながることもあります。
カテコラミン誘発性多型性心室頻拍は、幼少時に発症することが最も多く、平均初発年齢は7歳から9歳。時として診断が遅れることがあり、青年期以降または中年期以降に診断される場合もあります。
約30%の発症者に、失神および突然死の家族歴を認めます。薬剤治療を行わなかった場合、予後はきわめて不良で、40歳までの死亡率が30~50%と高いことが報告されています。薬剤治療を行っても、10年で15%から40%は死亡するとされています。
カテコラミン誘発性多型性心室頻拍の検査と診断と治療
小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、運動をしたり、感情が高まって興奮したりする交感神経緊張時に失神を起こすことが多いため、これまでの失神の状況を問診します。また、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍と診断されている血縁者がいないか、もくして突然死した血縁者がいないかなどを詳しく問診します。
安静時心電図は役に経たないため、基礎心疾患の有無や、運動前後あるいは身体的ストレス、感情的ストレスによる不整脈を評価する目的で、心臓超音波検査、運動負荷心電図検査、24時間にわたる心電図を記録するホルタ―心電図検査などを行います。
β(ベータ)アドレナリン受容体刺激薬を点滴して不整脈を評価する薬物負荷検査、リアノジン受容体RyR2の遺伝子変異の有無を解析する遺伝子検査を行うこともあります。
小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、体内におけるカテコラミンの影響を抑制することに重点を置き、交感神経のアドレナリン受容体であるβ受容体に対するカテコラミンの伝達を遮断するβ遮断薬(交感神経β受容体遮断薬)が第一選択となります。β遮断薬単独で効果が得られない場合は、カルシウム拮抗(きっこう)薬やナトリウム遮断薬を併用することがあります。
症状の状態に応じて、適切な範囲での運動制限または運動禁止も行います。
心停止を起こしたことがある場合や、薬剤によって不整脈が抑制されない場合は、植え込み型除細動器(ICD)の埋め込み手術を勧めることがあります。植え込み型除細動器は致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置ですが、突然死の予防効果は不完全です。
タグ:カテコラミン誘発性多型性心室頻拍 用語 用語(か) 用語(か行) 健康創造塾 肺塞栓、肺梗塞 肺動脈狭窄症 肺動脈性肺高血圧症 白衣高血圧 白血球増加症 バッセン・コルンツヴァイク症候群 微小脳梗塞 ビュルガー病 表在性血栓性静脈炎 貧血 ファロー四徴症 ファンコニー貧血 不整脈 狭心症 ブルガダ症候群 ブロードβ病 閉塞性血栓血管炎 レイノー病 リンパ浮腫 旅行者血栓症 ラクナ梗塞 溶血性貧血 夜間高血圧 門脈血栓症 無βリポ蛋白血症 無症候性脳梗塞 無症候性心筋虚血 脈なし病 慢性リンパ性白血病 末梢動脈疾患(PAD) 本態性血小板血症 ボタロー管開存症 閉塞性動脈硬化症 心室性期外収縮 心筋炎 洞性頻脈 WPW症候群 肺性心 特発性心筋症 先天性心臓病 心内膜炎 心臓ぜんそく 心臓神経症 心室細動 心室頻拍 原発性心筋症 洞不全症候群 神経循環無力症
■用語 家族性突然死症候群 [用語(か)]
致死性不整脈によって家族性に突然死が起こる疾患の総称
家族性突然死症候群とは、先天的な遺伝が原因で、若年者や壮年者に致死性不整脈による突然死が起こる疾患の総称。
先天性QT延長症候群、ブルガダ症候群、進行性心臓伝導障害などが、家族性突然死症候群に含まれます。ここでは、先天性QT延長症候群について解説します。
先天性QT延長症候群は、心臓の細胞に生まれ付き機能障害があるために、突然、脈が乱れる不整脈発作や失神発作を起こしたり、時には突然死に至ることもある先天性の疾患。
医療機関において、心臓の動きをコントロールしている電気刺激の変化を記録する心電計で検査すると、心電図に現れるQTと呼ばれる波形の部分の間隔(QT時間)が、正常な心臓に比べて長くなることから、この疾患名が付けられています。
常染色体優性遺伝を示す遺伝性の疾患で、性別に関係なく50%の確率で親から子供に遺伝しますが、症状には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても必ずしも不整脈発作の症状が現れるとは限りません。まれですが、先天性聾(ろう)と呼ばれる生まれ付きで両耳の聴力障害を伴うものは、常染色体劣性遺伝を示します。
心臓は収縮と弛緩(しかん)を絶えず繰り返していますが、この先天性QT延長症候群では、心臓の筋肉である心筋細胞が収縮して全身に血液を送り出した後、収縮前の状態に戻る時間が延長するために、心筋細胞が過敏になって不整脈発作を起こしやすくなります。
QT延長症候群には先天性と後天性とがありますが、学童期などの若年から指摘される先天性QT延長症候群は、心筋細胞の収縮と弛緩に関係する遺伝子に異常があるために起こります。一方、比較的年齢が高くなり、薬剤使用や徐脈に伴って起こる後天性QT延長症候群も、遺伝子の異常がかかわっています。
先天性QT延長症候群の原因は現在、2つが考えられています。1つは、心筋細胞にあるイオンチャネルと呼ばれる経路の異常です。心臓が規則正しく収縮と弛緩を繰り返すには、心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分が1分間に60~80回発生させている電気刺激が正しく伝えられることが重要です。電気刺激を正しく伝えるため、心筋細胞はイオンチャネルという経路を使ってナトリウムやカリウムなどのイオンを出し入れしていますが、このイオンチャネルが正常に働かなくなり、電気刺激が正しく伝えられなくなると、脈が乱れる不整脈発作が起きやすくなります。
イオンチャネルの異常は、イオンチャネルを作る際に使った設計図の誤り、すなわち遺伝子の異常で起こります。現在では4種類のイオンチャネルに遺伝子の異常が見付かっていますが、この4種類のイオンチャネルの遺伝子に異常が見付からない場合も多く、ほかの種類のイオンチャネルにも異常があるのではないかと考えられます。
もう1つの原因は、心臓に指令を出す交感神経の異常です。交感神経は、背骨の横に左右1本ずつあり、正常では左右の交感神経から収縮と弛緩を繰り返すように心臓に送られる指令は、バランスが保たれています。先天性QT延長症候群では、左側の交感神経の働きが右側より勝っており、バランスが崩れています。交感神経のアンバランスがなぜ起こるかは、わかっていません。
その実数は不明ですが、先天性QT延長症候群は2500〜5000人に1人程度の発症者が存在すると推定されています。
先天性QT延長症候群は原因遺伝子により、不整脈発作の切っ掛けや治療薬の効き方が変わってきます。重症度には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても症状が現れない場合があることも知られています。
症状としては、不整脈発作による動悸(どうき)、立ちくらみ、気分不快や、失神発作、けいれん発作などがあります。発作の多くは、短時間で自然に回復しますが、心室期外収縮や、トルサード・ド・ポアンツと呼ばれる多形性心室頻拍から、心室細動といわれる不整脈にまで進行して回復しない場合は、突然死に至ります。
また、失神発作、けいれん発作は、てんかんと間違えられることもよくあります。先天性聾、四肢の脱力、身体奇形などを伴うものもあります。
抗不整脈薬と、日常生活における発作誘因の回避で、突然死に至るような致死性不整脈発作はかなり予防できます。正しい診断がとても大切ですので、小児循環器科、循環器科などの不整脈の専門医を受診することが勧められます。
家族性突然死症候群(先天性QT延長症候群)の検査と診断と治療
小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、発作の既往歴、家族歴などから先天性QT延長症候群が疑われた場合は、心電図でQT時間の延長とT波と呼ばれる波の形の変化を確認します。検査の際に、運動や薬剤による負荷をかけることで、QT時間の延長がよりはっきりすることがあります。
遺伝子診断は、治療薬の選択や適切な生活指導のために有効です。近年では、原因遺伝子の型のみではなく、各原因遺伝子の変異部位によって重症度が異なることがわかってきており、QT時間や遺伝子型、あるいは変異部位に基づいて、リスク評価を行い、治療法を決定します。
小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、不整脈発作の予防のために、β(ベータ)遮断薬、ナトリウムチャネル遮断薬、カルシウム拮抗(きっこう)薬などの抗不整脈薬を内服します。
内服薬の効果がない場合は、植え込み型除細動器(ICD)、交感神経切除術などによる治療を考慮します。
植え込み型除細動器(ICD)は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置で、通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。
交感神経切除術は、心臓に指令を送る左側の交感神経を首から胸にかけて切断します。
日常生活においては、不整脈発作の誘因となる激しい運動や精神的興奮、驚愕を避けるなどの注意が必要です。
家族性突然死症候群とは、先天的な遺伝が原因で、若年者や壮年者に致死性不整脈による突然死が起こる疾患の総称。
先天性QT延長症候群、ブルガダ症候群、進行性心臓伝導障害などが、家族性突然死症候群に含まれます。ここでは、先天性QT延長症候群について解説します。
先天性QT延長症候群は、心臓の細胞に生まれ付き機能障害があるために、突然、脈が乱れる不整脈発作や失神発作を起こしたり、時には突然死に至ることもある先天性の疾患。
医療機関において、心臓の動きをコントロールしている電気刺激の変化を記録する心電計で検査すると、心電図に現れるQTと呼ばれる波形の部分の間隔(QT時間)が、正常な心臓に比べて長くなることから、この疾患名が付けられています。
常染色体優性遺伝を示す遺伝性の疾患で、性別に関係なく50%の確率で親から子供に遺伝しますが、症状には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても必ずしも不整脈発作の症状が現れるとは限りません。まれですが、先天性聾(ろう)と呼ばれる生まれ付きで両耳の聴力障害を伴うものは、常染色体劣性遺伝を示します。
心臓は収縮と弛緩(しかん)を絶えず繰り返していますが、この先天性QT延長症候群では、心臓の筋肉である心筋細胞が収縮して全身に血液を送り出した後、収縮前の状態に戻る時間が延長するために、心筋細胞が過敏になって不整脈発作を起こしやすくなります。
QT延長症候群には先天性と後天性とがありますが、学童期などの若年から指摘される先天性QT延長症候群は、心筋細胞の収縮と弛緩に関係する遺伝子に異常があるために起こります。一方、比較的年齢が高くなり、薬剤使用や徐脈に伴って起こる後天性QT延長症候群も、遺伝子の異常がかかわっています。
先天性QT延長症候群の原因は現在、2つが考えられています。1つは、心筋細胞にあるイオンチャネルと呼ばれる経路の異常です。心臓が規則正しく収縮と弛緩を繰り返すには、心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分が1分間に60~80回発生させている電気刺激が正しく伝えられることが重要です。電気刺激を正しく伝えるため、心筋細胞はイオンチャネルという経路を使ってナトリウムやカリウムなどのイオンを出し入れしていますが、このイオンチャネルが正常に働かなくなり、電気刺激が正しく伝えられなくなると、脈が乱れる不整脈発作が起きやすくなります。
イオンチャネルの異常は、イオンチャネルを作る際に使った設計図の誤り、すなわち遺伝子の異常で起こります。現在では4種類のイオンチャネルに遺伝子の異常が見付かっていますが、この4種類のイオンチャネルの遺伝子に異常が見付からない場合も多く、ほかの種類のイオンチャネルにも異常があるのではないかと考えられます。
もう1つの原因は、心臓に指令を出す交感神経の異常です。交感神経は、背骨の横に左右1本ずつあり、正常では左右の交感神経から収縮と弛緩を繰り返すように心臓に送られる指令は、バランスが保たれています。先天性QT延長症候群では、左側の交感神経の働きが右側より勝っており、バランスが崩れています。交感神経のアンバランスがなぜ起こるかは、わかっていません。
その実数は不明ですが、先天性QT延長症候群は2500〜5000人に1人程度の発症者が存在すると推定されています。
先天性QT延長症候群は原因遺伝子により、不整脈発作の切っ掛けや治療薬の効き方が変わってきます。重症度には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても症状が現れない場合があることも知られています。
症状としては、不整脈発作による動悸(どうき)、立ちくらみ、気分不快や、失神発作、けいれん発作などがあります。発作の多くは、短時間で自然に回復しますが、心室期外収縮や、トルサード・ド・ポアンツと呼ばれる多形性心室頻拍から、心室細動といわれる不整脈にまで進行して回復しない場合は、突然死に至ります。
また、失神発作、けいれん発作は、てんかんと間違えられることもよくあります。先天性聾、四肢の脱力、身体奇形などを伴うものもあります。
抗不整脈薬と、日常生活における発作誘因の回避で、突然死に至るような致死性不整脈発作はかなり予防できます。正しい診断がとても大切ですので、小児循環器科、循環器科などの不整脈の専門医を受診することが勧められます。
家族性突然死症候群(先天性QT延長症候群)の検査と診断と治療
小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、発作の既往歴、家族歴などから先天性QT延長症候群が疑われた場合は、心電図でQT時間の延長とT波と呼ばれる波の形の変化を確認します。検査の際に、運動や薬剤による負荷をかけることで、QT時間の延長がよりはっきりすることがあります。
遺伝子診断は、治療薬の選択や適切な生活指導のために有効です。近年では、原因遺伝子の型のみではなく、各原因遺伝子の変異部位によって重症度が異なることがわかってきており、QT時間や遺伝子型、あるいは変異部位に基づいて、リスク評価を行い、治療法を決定します。
小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、不整脈発作の予防のために、β(ベータ)遮断薬、ナトリウムチャネル遮断薬、カルシウム拮抗(きっこう)薬などの抗不整脈薬を内服します。
内服薬の効果がない場合は、植え込み型除細動器(ICD)、交感神経切除術などによる治療を考慮します。
植え込み型除細動器(ICD)は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置で、通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。
交感神経切除術は、心臓に指令を送る左側の交感神経を首から胸にかけて切断します。
日常生活においては、不整脈発作の誘因となる激しい運動や精神的興奮、驚愕を避けるなどの注意が必要です。
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