■用語 NSAIDs過敏じんましん [用語(A〜Z、数字)]
解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬の使用によって誘発されるじんましん
NSAIDs(エヌセイズ)過敏じんましんとは、アスピリンを始めとした解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用することによって誘発され、じんましんや血管浮腫(ふしゅ)の症状が出る疾患。アスピリンじんましん、NSAIDs過敏症皮膚型などとも呼ばれます。
アスピリンは、発熱があった時などに使用する解熱鎮痛薬で、アセチルサリチル酸により作られています。非ステロイド性抗炎症薬は全般として、体内でプロスタグランジンという痛みを起こし、熱を上げる炎症物質が合成されるのを妨げる作用を持ち、解熱薬や鎮痛薬、抗炎症薬として幅広く用いられています。
NSAIDs過敏じんましんを誘発しやすいのは、非ステロイド性抗炎症薬のうち酸性のものが知られています。酸性解熱鎮痛薬に共通してみられるシクロオキシゲナーゼ抑制作用、つまり体内でのプロスタグランジンの合成に作用するシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを阻害する作用が関係しているのではないかと考えられていますが、NSAIDs過敏じんましんを誘発する真のメカニズムは不明です。
非ステロイド性抗炎症薬の内服薬、座薬、注射薬、あるいは貼付(ちょうふ)薬、塗布薬を使用してから数分から半日で、副作用による急性の過敏反応により、皮膚に地図状に盛り上がった大小の赤いはれが生じ、かゆみを伴うじんましんや、まぶたや唇がはれる血管浮腫の症状が現れます。
じんましんは体のどんな部位にも現れ、全身に生じることもあります。血管浮腫が現れた場合は、顔全体がはれてきて、話しづらくなったり、目が開けづらくなったりすることもあります。
じんましんは基本的には24時間以内に、遅くとも48時間以内に消えますが、血管浮腫は翌日になるとさらに症状が悪化し、数日間持続することもあります。
皮膚症状のほかに、咽頭(いんとう)浮腫によるのどの詰まり、息苦しさ、せき、腹痛、吐き気などが起こった場合は、アナフィラキシーショックにつながる危険があります。アナフィラキシーショックは、急激に全身の血管が拡張することによる血圧低下、呼吸困難、意識障害などが起こり、生命の危険がある状態で、緊急の治療を必要とします。
もともと慢性じんましんがベースにある人の20~35%は、非ステロイド性抗炎症薬の使用によって、じんましんが発症もしくは増悪する可能性があるといわれています。ふだんは全く症状が出ないのに、非ステロイド性抗炎症薬を使用した時だけ、じんましんなどの症状が出る人もいます。
過労なども誘因になりやすいことが知られており、非ステロイド性抗炎症薬の使用した時の体調により、症状が現れる程度が異なり、同じ非ステロイド性抗炎症薬や量で必ず症状が現れるわけではありません。一般には、効き目の強い非ステロイド性抗炎症薬ほど、症状が現れやすいことが知られています。
NSAIDs過敏じんましんを発症する体質が疑われる人は、市販の風邪薬や、少量の解熱鎮痛成分の入った湿布、目薬などを使用する際は、常に慎重を期す必要があります。また、色素や防腐剤などの食品添加物でも症状が出ることがあるので、注意を要します。
じんましんの症状が出たもののすぐに消失したというような軽度の場合は、自宅で様子をみても大丈夫ですが、副作用を放置していると重くなり健康に影響を及ぼすことがあるので、次に非ステロイド性抗炎症薬を使用する際は医師や薬剤師に報告し、指示を仰ぐことが大切です。
特に息苦しさを感じた場合は、アナフィラキシーショックを起こす可能性もあるため、救急車などを利用して直ちに内科、アレルギー科を受診してください。その際は、使用した非ステロイド性抗炎症薬と服用時間を伝えてください。
NSAIDs過敏じんましんの検査と診断と治療
内科、アレルギー科の医師による診断では、詳細な問診を行い、過去に非ステロイド性抗炎症薬の使用により、明らかにじんましんや血管浮腫の症状が誘発されたことがあるかどうかを確認します。
また、アスピリンあるいは他の非ステロイド性抗炎症薬の吸入や経口負荷試験により病状を判断します。アレルギー反応ではないので、薬剤アレルギーの血液検査やプリックテストなどの皮膚テストは陰性になります。
内科、アレルギー科の医師による治療では、NSAIDs過敏じんましんの根本原因が不明で完全な予防策がないため、解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬の服用を避け、医薬品や食品の添加物を除外することが処置となります。
軽症の場合は、抗ヒスタミン薬による内服治療を行います。中等症で医師が必要と判断した場合は、症状に応じ抗ヒスタミン薬とリン酸エステル型ステロイド薬の点滴などを行います。
アナフィラキシーショックを起こしている場合は、アドレナリンの筋肉注射、抗ヒスタミン薬とリン酸エステル型ステロイド薬の点滴などを行います。急速な進行例では、アドレナリンの筋肉注射だけでなく点滴も考慮します。
NSAIDs(エヌセイズ)過敏じんましんとは、アスピリンを始めとした解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用することによって誘発され、じんましんや血管浮腫(ふしゅ)の症状が出る疾患。アスピリンじんましん、NSAIDs過敏症皮膚型などとも呼ばれます。
アスピリンは、発熱があった時などに使用する解熱鎮痛薬で、アセチルサリチル酸により作られています。非ステロイド性抗炎症薬は全般として、体内でプロスタグランジンという痛みを起こし、熱を上げる炎症物質が合成されるのを妨げる作用を持ち、解熱薬や鎮痛薬、抗炎症薬として幅広く用いられています。
NSAIDs過敏じんましんを誘発しやすいのは、非ステロイド性抗炎症薬のうち酸性のものが知られています。酸性解熱鎮痛薬に共通してみられるシクロオキシゲナーゼ抑制作用、つまり体内でのプロスタグランジンの合成に作用するシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを阻害する作用が関係しているのではないかと考えられていますが、NSAIDs過敏じんましんを誘発する真のメカニズムは不明です。
非ステロイド性抗炎症薬の内服薬、座薬、注射薬、あるいは貼付(ちょうふ)薬、塗布薬を使用してから数分から半日で、副作用による急性の過敏反応により、皮膚に地図状に盛り上がった大小の赤いはれが生じ、かゆみを伴うじんましんや、まぶたや唇がはれる血管浮腫の症状が現れます。
じんましんは体のどんな部位にも現れ、全身に生じることもあります。血管浮腫が現れた場合は、顔全体がはれてきて、話しづらくなったり、目が開けづらくなったりすることもあります。
じんましんは基本的には24時間以内に、遅くとも48時間以内に消えますが、血管浮腫は翌日になるとさらに症状が悪化し、数日間持続することもあります。
皮膚症状のほかに、咽頭(いんとう)浮腫によるのどの詰まり、息苦しさ、せき、腹痛、吐き気などが起こった場合は、アナフィラキシーショックにつながる危険があります。アナフィラキシーショックは、急激に全身の血管が拡張することによる血圧低下、呼吸困難、意識障害などが起こり、生命の危険がある状態で、緊急の治療を必要とします。
もともと慢性じんましんがベースにある人の20~35%は、非ステロイド性抗炎症薬の使用によって、じんましんが発症もしくは増悪する可能性があるといわれています。ふだんは全く症状が出ないのに、非ステロイド性抗炎症薬を使用した時だけ、じんましんなどの症状が出る人もいます。
過労なども誘因になりやすいことが知られており、非ステロイド性抗炎症薬の使用した時の体調により、症状が現れる程度が異なり、同じ非ステロイド性抗炎症薬や量で必ず症状が現れるわけではありません。一般には、効き目の強い非ステロイド性抗炎症薬ほど、症状が現れやすいことが知られています。
NSAIDs過敏じんましんを発症する体質が疑われる人は、市販の風邪薬や、少量の解熱鎮痛成分の入った湿布、目薬などを使用する際は、常に慎重を期す必要があります。また、色素や防腐剤などの食品添加物でも症状が出ることがあるので、注意を要します。
じんましんの症状が出たもののすぐに消失したというような軽度の場合は、自宅で様子をみても大丈夫ですが、副作用を放置していると重くなり健康に影響を及ぼすことがあるので、次に非ステロイド性抗炎症薬を使用する際は医師や薬剤師に報告し、指示を仰ぐことが大切です。
特に息苦しさを感じた場合は、アナフィラキシーショックを起こす可能性もあるため、救急車などを利用して直ちに内科、アレルギー科を受診してください。その際は、使用した非ステロイド性抗炎症薬と服用時間を伝えてください。
NSAIDs過敏じんましんの検査と診断と治療
内科、アレルギー科の医師による診断では、詳細な問診を行い、過去に非ステロイド性抗炎症薬の使用により、明らかにじんましんや血管浮腫の症状が誘発されたことがあるかどうかを確認します。
また、アスピリンあるいは他の非ステロイド性抗炎症薬の吸入や経口負荷試験により病状を判断します。アレルギー反応ではないので、薬剤アレルギーの血液検査やプリックテストなどの皮膚テストは陰性になります。
内科、アレルギー科の医師による治療では、NSAIDs過敏じんましんの根本原因が不明で完全な予防策がないため、解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬の服用を避け、医薬品や食品の添加物を除外することが処置となります。
軽症の場合は、抗ヒスタミン薬による内服治療を行います。中等症で医師が必要と判断した場合は、症状に応じ抗ヒスタミン薬とリン酸エステル型ステロイド薬の点滴などを行います。
アナフィラキシーショックを起こしている場合は、アドレナリンの筋肉注射、抗ヒスタミン薬とリン酸エステル型ステロイド薬の点滴などを行います。急速な進行例では、アドレナリンの筋肉注射だけでなく点滴も考慮します。
■用語 NSAIDs過敏喘息 [用語(A〜Z、数字)]
解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬の使用によって誘発される喘息発作
NSAIDs(エヌセイズ)過敏喘息(ぜんそく)とは、アスピリンを始めとした解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用することによって誘発される喘息発作。アスピリン喘息、解熱鎮痛薬喘息とも呼ばれます。
アスピリンは、発熱があった時などに使用する解熱鎮痛薬で、アセチルサリチル酸により作られています。非ステロイド性抗炎症薬は全般として、体内で痛みを起こし、熱を上げるプロスタグランジンという炎症物質が合成されるのを妨げる作用を持ち、解熱薬や鎮痛薬、抗炎症薬として幅広く用いられています。
もともと喘息を患っている人では、激しい喘息発作を起こす場合があり、成人喘息患者の約10%、重症喘息患者の約30%にNSAIDs過敏喘息が認められ、とりわけ鼻ポリープとも呼ばれる鼻茸(はなたけ)がある人や、蓄膿(ちくのう)症とも呼ばれる慢性副鼻腔(ふくびくう)炎を合併している人に多くみられます。
NSAIDs過敏喘息の主な症状としては、原因となる非ステロイド性抗炎症薬の服用後から、通常1時間以内に鼻詰まりや鼻水などに続き、息苦しさや咳(せき)などの喘息発作が起こります。また、腹痛や下痢、吐き気などの腹部の症状が出ることもあります。首の辺りから顔面にかけて紅潮し、血管浮腫(ふしゅ)などの皮疹(ひしん)は比較的少ないといわれています。
非ステロイド性抗炎症薬の使用による症状は、原因薬の効果発現時間にピークとなります。軽症の場合で約半日程度、重症の場合は24時間以上続くこともあります。血管浮腫などの皮疹は出てくるのも遅く、持続時間も長いとされます。症状が進行すると、アナフィラキシーショックと呼ばれる重篤な全身反応を引き起こし、急激に全身の血管が拡張して血圧が下がるとともに、呼吸困難、気管支の筋肉の攣縮(れんしゅく)が起こり、重い喘息発作から最悪の場合は死に至ることもあります。
NSAIDs過敏喘息の原因は、アスピリンやインドメタシンなどの非ステロイド性抗炎症薬への過敏症によって引き起こされます。NSAIDs過敏喘息を誘発しやすいのは、非ステロイド性抗炎症薬のうち酸性のものが知られています。酸性解熱鎮痛薬に共通してみられるシクロオキシゲナーゼ抑制作用、つまり体内でのプロスタグランジンの合成に作用するシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを阻害する作用が関係し、過敏症状を引き起こす細胞が活性化されるのではないかと考えられていますが、NSAIDs過敏喘息を誘発する真のメカニズムは不明です。遺伝的な影響はありません。
もともと喘息を患っていて、NSAIDs過敏喘息を発症する体質が疑われる場合、とりわけ鼻詰まりや嗅覚(きゅうかく)障害といった鼻の症状がある場合は、市販の風邪薬や解熱鎮痛薬、少量の解熱鎮痛成分の入った湿布、目薬などを使用する際は、常に慎重を期す必要があります。また、色素や防腐剤などの食品添加物でも症状が出ることがあるので、注意を要します。
NSAIDs過敏喘息の検査と診断と治療
内科、耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、詳細な問診を行い、過去に非ステロイド性抗炎症薬の使用により、明らかに喘息発作が誘発されたことがあるかどうかを確認します。
また、アスピリンあるいは他の非ステロイド性抗炎症薬による負荷試験も行います。これには内服法、吸入法、舌下内服法などがありますが、誘発される症状は非常に多様で、1秒率という1秒間に吐き出された空気の量が肺活量に占める割合の低下、発疹、眼瞼(がんけん)浮腫、遅発型喘息、大発作などが生じるため、呼吸器科の医師の管理のもとに行います。
内科、耳鼻咽喉科の医師による治療では、主にステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)を使用します。軽症の場合、全身的に影響の少ないステロイド点鼻薬の鼻への噴霧、ステロイド液の点鼻などの局所投与で鼻の症状のコントロールがつくこともあります。
重症の場合は、ステロイド薬の全身投与が必要になることもあります。また、鼻の治療とともに、気道粘膜に少量のステロイド薬を散布、塗布して、気道の炎症を抑えて気道を元の広さに戻すことで、喘息のコントロールを行います。
外科的手術としては、内視鏡下に鼻腔・副鼻腔手術を行い、鼻茸を始めとする病的粘膜の除去、鼻腔・副鼻腔の換気ルートを確保します。ただし、手術をしてNSAIDs過敏喘息が根本的に治るわけではないので、手術後も引き続き根気よく治療を続けます。NSAIDs過敏喘息の発症者はさまざまな薬物に対して過敏症があるため、手術に際しては慎重に対応します。
アナフィラキシーショックが出た場合は急激に悪化するため、ステロイド薬の点滴、人工呼吸器の装着、血圧を上げる高圧剤の投与、補液の点滴などの対症療法を行います。
NSAIDs(エヌセイズ)過敏喘息(ぜんそく)とは、アスピリンを始めとした解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用することによって誘発される喘息発作。アスピリン喘息、解熱鎮痛薬喘息とも呼ばれます。
アスピリンは、発熱があった時などに使用する解熱鎮痛薬で、アセチルサリチル酸により作られています。非ステロイド性抗炎症薬は全般として、体内で痛みを起こし、熱を上げるプロスタグランジンという炎症物質が合成されるのを妨げる作用を持ち、解熱薬や鎮痛薬、抗炎症薬として幅広く用いられています。
もともと喘息を患っている人では、激しい喘息発作を起こす場合があり、成人喘息患者の約10%、重症喘息患者の約30%にNSAIDs過敏喘息が認められ、とりわけ鼻ポリープとも呼ばれる鼻茸(はなたけ)がある人や、蓄膿(ちくのう)症とも呼ばれる慢性副鼻腔(ふくびくう)炎を合併している人に多くみられます。
NSAIDs過敏喘息の主な症状としては、原因となる非ステロイド性抗炎症薬の服用後から、通常1時間以内に鼻詰まりや鼻水などに続き、息苦しさや咳(せき)などの喘息発作が起こります。また、腹痛や下痢、吐き気などの腹部の症状が出ることもあります。首の辺りから顔面にかけて紅潮し、血管浮腫(ふしゅ)などの皮疹(ひしん)は比較的少ないといわれています。
非ステロイド性抗炎症薬の使用による症状は、原因薬の効果発現時間にピークとなります。軽症の場合で約半日程度、重症の場合は24時間以上続くこともあります。血管浮腫などの皮疹は出てくるのも遅く、持続時間も長いとされます。症状が進行すると、アナフィラキシーショックと呼ばれる重篤な全身反応を引き起こし、急激に全身の血管が拡張して血圧が下がるとともに、呼吸困難、気管支の筋肉の攣縮(れんしゅく)が起こり、重い喘息発作から最悪の場合は死に至ることもあります。
NSAIDs過敏喘息の原因は、アスピリンやインドメタシンなどの非ステロイド性抗炎症薬への過敏症によって引き起こされます。NSAIDs過敏喘息を誘発しやすいのは、非ステロイド性抗炎症薬のうち酸性のものが知られています。酸性解熱鎮痛薬に共通してみられるシクロオキシゲナーゼ抑制作用、つまり体内でのプロスタグランジンの合成に作用するシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを阻害する作用が関係し、過敏症状を引き起こす細胞が活性化されるのではないかと考えられていますが、NSAIDs過敏喘息を誘発する真のメカニズムは不明です。遺伝的な影響はありません。
もともと喘息を患っていて、NSAIDs過敏喘息を発症する体質が疑われる場合、とりわけ鼻詰まりや嗅覚(きゅうかく)障害といった鼻の症状がある場合は、市販の風邪薬や解熱鎮痛薬、少量の解熱鎮痛成分の入った湿布、目薬などを使用する際は、常に慎重を期す必要があります。また、色素や防腐剤などの食品添加物でも症状が出ることがあるので、注意を要します。
NSAIDs過敏喘息の検査と診断と治療
内科、耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、詳細な問診を行い、過去に非ステロイド性抗炎症薬の使用により、明らかに喘息発作が誘発されたことがあるかどうかを確認します。
また、アスピリンあるいは他の非ステロイド性抗炎症薬による負荷試験も行います。これには内服法、吸入法、舌下内服法などがありますが、誘発される症状は非常に多様で、1秒率という1秒間に吐き出された空気の量が肺活量に占める割合の低下、発疹、眼瞼(がんけん)浮腫、遅発型喘息、大発作などが生じるため、呼吸器科の医師の管理のもとに行います。
内科、耳鼻咽喉科の医師による治療では、主にステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)を使用します。軽症の場合、全身的に影響の少ないステロイド点鼻薬の鼻への噴霧、ステロイド液の点鼻などの局所投与で鼻の症状のコントロールがつくこともあります。
重症の場合は、ステロイド薬の全身投与が必要になることもあります。また、鼻の治療とともに、気道粘膜に少量のステロイド薬を散布、塗布して、気道の炎症を抑えて気道を元の広さに戻すことで、喘息のコントロールを行います。
外科的手術としては、内視鏡下に鼻腔・副鼻腔手術を行い、鼻茸を始めとする病的粘膜の除去、鼻腔・副鼻腔の換気ルートを確保します。ただし、手術をしてNSAIDs過敏喘息が根本的に治るわけではないので、手術後も引き続き根気よく治療を続けます。NSAIDs過敏喘息の発症者はさまざまな薬物に対して過敏症があるため、手術に際しては慎重に対応します。
アナフィラキシーショックが出た場合は急激に悪化するため、ステロイド薬の点滴、人工呼吸器の装着、血圧を上げる高圧剤の投与、補液の点滴などの対症療法を行います。
■用語 NSAIDs過敏症 [用語(A〜Z、数字)]
解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬の使用によって誘発される過敏症
NSAIDs(エヌセイズ)過敏症とは、アスピリンを始めとした解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用することによって誘発され、気管支喘息(ぜんそく)やじんましん、鼻炎などの症状が出る疾患。NSAIDs不耐症、アスピリン過敏症、アスピリン不耐症とも呼ばれます。
アスピリンは、発熱があった時などに使用する解熱鎮痛薬で、アセチルサリチル酸により作られています。非ステロイド性抗炎症薬は全般として、体内でプロスタグランジンという痛みを起こし、熱を上げる炎症物質が合成されるのを妨げる作用を持ち、解熱薬や鎮痛薬、抗炎症薬として幅広く用いられています。
NSAIDs過敏症を誘発しやすいのは、非ステロイド性抗炎症薬のうち酸性のものが知られています。酸性解熱鎮痛薬に共通してみられるシクロオキシゲナーゼ抑制作用、つまり体内でのプロスタグランジンの合成に作用するシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを阻害する作用が関係しているのではないかと考えられていますが、NSAIDs過敏症を誘発する真のメカニズムは不明です。
アレルギーとして症状が出るわけではなく、遺伝的な影響もありませんが、NSAIDs過敏症は30~50歳代の成人に多い疾患で、女性のほうが男性よりも1・5倍かかりやすいといわれています。
非ステロイド性抗炎症薬を服用することで、喘鳴などの気管支喘息症状や、発疹(はっしん)やかゆみなどのじんましん症状、鼻汁などの鼻炎症状などが発症します。これらの症状すべてを発症する場合や、どれか1つだけ発症する場合など、さまざまなパターンがあります。
もともと、喘息を患っている人では、激しい発作を起こす場合があり、NSAIDs過敏喘息といいます。
このNSAIDs過敏喘息は、鼻ポリープとも呼ばれる鼻茸(はなたけ)がある人や、慢性副鼻腔(ふくびくう)炎を合併している人に多くみられ、症状が進行すると、アナフィラキシーショックと呼ばれる重篤な全身反応を引き起こし、急激に全身の血管が拡張して血圧が下がり、最悪の場合は死に至ることもあります。
NSAIDs過敏症を発症する体質が疑われる人は、市販の風邪薬や、少量の解熱鎮痛成分の入った湿布、目薬などを使用する際は、常に慎重を期す必要があります。また、色素や防腐剤などの食品添加物でも症状が出ることがあるので、注意を要します。
NSAIDs過敏症の検査と診断と治療
内科、アレルギー科の医師による診断では、アスピリンあるいは他の非ステロイド性抗炎症薬の吸入や経口負荷試験により病状を判断します。アレルギー反応ではないので、薬剤アレルギーの血液検査やプリックテストなどの皮膚テストは陰性になります。
内科、アレルギー科の医師による治療では、NSAIDs過敏症の根本原因が不明で完全な予防策がないため、解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬の服用を避け、医薬品や食品の添加物を除外することが処置となります。
発熱時には、原則として氷冷します。どうしても薬が必要な時は、抗ヒスタミン薬、葛根湯(かっこんとう)などの漢方薬を処方します。比較的安全とされる酸性解熱鎮痛薬以外の薬剤であるアセトアミノフェン、塩基性解熱鎮痛薬であるソランタールを処方することもありますが、万全ではありません。発作時には、比較的安全とされるリン酸エステルステロイド薬を点滴で投与します。
関節リウマチなどの慢性疼痛(とうつう)疾患で鎮痛薬を連用する必要がある時は、アスピリンを少量から連続投与し、耐性を維持するアスピリン耐性誘導(アスピリン脱感作療法)などの方法で対処します。
NSAIDs(エヌセイズ)過敏症とは、アスピリンを始めとした解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用することによって誘発され、気管支喘息(ぜんそく)やじんましん、鼻炎などの症状が出る疾患。NSAIDs不耐症、アスピリン過敏症、アスピリン不耐症とも呼ばれます。
アスピリンは、発熱があった時などに使用する解熱鎮痛薬で、アセチルサリチル酸により作られています。非ステロイド性抗炎症薬は全般として、体内でプロスタグランジンという痛みを起こし、熱を上げる炎症物質が合成されるのを妨げる作用を持ち、解熱薬や鎮痛薬、抗炎症薬として幅広く用いられています。
NSAIDs過敏症を誘発しやすいのは、非ステロイド性抗炎症薬のうち酸性のものが知られています。酸性解熱鎮痛薬に共通してみられるシクロオキシゲナーゼ抑制作用、つまり体内でのプロスタグランジンの合成に作用するシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを阻害する作用が関係しているのではないかと考えられていますが、NSAIDs過敏症を誘発する真のメカニズムは不明です。
アレルギーとして症状が出るわけではなく、遺伝的な影響もありませんが、NSAIDs過敏症は30~50歳代の成人に多い疾患で、女性のほうが男性よりも1・5倍かかりやすいといわれています。
非ステロイド性抗炎症薬を服用することで、喘鳴などの気管支喘息症状や、発疹(はっしん)やかゆみなどのじんましん症状、鼻汁などの鼻炎症状などが発症します。これらの症状すべてを発症する場合や、どれか1つだけ発症する場合など、さまざまなパターンがあります。
もともと、喘息を患っている人では、激しい発作を起こす場合があり、NSAIDs過敏喘息といいます。
このNSAIDs過敏喘息は、鼻ポリープとも呼ばれる鼻茸(はなたけ)がある人や、慢性副鼻腔(ふくびくう)炎を合併している人に多くみられ、症状が進行すると、アナフィラキシーショックと呼ばれる重篤な全身反応を引き起こし、急激に全身の血管が拡張して血圧が下がり、最悪の場合は死に至ることもあります。
NSAIDs過敏症を発症する体質が疑われる人は、市販の風邪薬や、少量の解熱鎮痛成分の入った湿布、目薬などを使用する際は、常に慎重を期す必要があります。また、色素や防腐剤などの食品添加物でも症状が出ることがあるので、注意を要します。
NSAIDs過敏症の検査と診断と治療
内科、アレルギー科の医師による診断では、アスピリンあるいは他の非ステロイド性抗炎症薬の吸入や経口負荷試験により病状を判断します。アレルギー反応ではないので、薬剤アレルギーの血液検査やプリックテストなどの皮膚テストは陰性になります。
内科、アレルギー科の医師による治療では、NSAIDs過敏症の根本原因が不明で完全な予防策がないため、解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬の服用を避け、医薬品や食品の添加物を除外することが処置となります。
発熱時には、原則として氷冷します。どうしても薬が必要な時は、抗ヒスタミン薬、葛根湯(かっこんとう)などの漢方薬を処方します。比較的安全とされる酸性解熱鎮痛薬以外の薬剤であるアセトアミノフェン、塩基性解熱鎮痛薬であるソランタールを処方することもありますが、万全ではありません。発作時には、比較的安全とされるリン酸エステルステロイド薬を点滴で投与します。
関節リウマチなどの慢性疼痛(とうつう)疾患で鎮痛薬を連用する必要がある時は、アスピリンを少量から連続投与し、耐性を維持するアスピリン耐性誘導(アスピリン脱感作療法)などの方法で対処します。
■用語 HTLVー1関連脊髄症(HAM) [用語(A〜Z、数字)]
両足のまひによる歩行障害が起こり、ゆっくりと進行
HTLVー1関連脊髄(せきずい)症(HTLV-1-associated myelopathy:HAM)とは、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(Human T Lymphotropic Virus type 1:HTLVー1)の白血球(リンパ球)への感染によって、両足の筋肉が徐々にまひしていく慢性進行性の脊髄疾患。ヒトTリンパ球向性ウイルス1型感染に関連する疾患群の一つとして、1986年に鹿児島大が初めて報告しました。
ヒトTリンパ球向性ウイルス1型を保持するキャリアの大多数は生涯にわたって、このHTLVー1関連脊髄症や成人T細胞白血病(ATL)などを発症しないまま健康に過ごし、ごく一部の人が発症します。
1998年の全国調査では、日本でのヒトTリンパ球向性ウイルス1型のキャリアは全国に約120万人いるとされましたが、HTLVー1関連脊髄症の発症者は約1500人と確認されました。現在、年間発症率はキャリア10万人当たり3人と極めて低くなっています。
発症者は全国的に分布し、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の感染者の多い九州、四国、沖縄に多くみられます。東京や大阪など人口の集中する大都市圏でも、頻度的には少ないものの相当数の発症者が見いだされています。
世界的にみると、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型キャリア、成人T細胞白血病の分布と一致して、カリブ海沿岸諸国、南アメリカ、アフリカ、南インド、イラン内陸部などに発症者の集積が確認されています。それらの地域からの移民を介して、ヨーロッパ諸国、アメリカ合衆国など、世界的に発症者の存在が報告されています。
ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の感染経路としては、母乳を介する母子間垂直感染と、輸血、性交渉による水平感染が知られていて、出産時や母胎内での感染もあります。輸血では、感染リンパ球を含んだ輸血により感染し、血漿(けっしょう)成分輸血、血液製剤では感染しません。
なお、日本では現在、献血に際して抗体スクリーニングが行われており、輸血後の発症はなくなりました。2008年には、厚生労働省の難治性疾患克服研究事業の対象に追加されています。
発症は中年以降の成人に多くみられますが、10歳代、あるいはそれ以前の発症と考えられる例もあります。男女比は1:2・3と女性に多く、男性に多い成人T細胞白血病と対照的です。また、輸血後数週間で発症した例もあり、成人T細胞白血病が感染後長期のキャリア状態を経て発症するのとは異なります。
一義的な原因は、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の感染です。発症するメカニズムは、ウイルスに感染したTリンパ球が脊髄に浸潤し、その場でウイルス抗原を発現することにより、感染Tリンパ球を排除しようとするウイルス特異的免疫応答が生じ、その炎症反応に巻き込まれて周囲の脊髄組織が傷害されていると考えられています。感染者のごく一部にのみ発症するメカニズムはわかっていませんが、発症した人は体内のウイルス量が多いとされています。
基本的な症状は、慢性進行性の両足のまひで、痛みやしびれ、筋力の低下によって歩行障害を示します。初期の歩行障害は、足が棒のように突っ張って、ひきづりながら歩くため、足が内側を向いてしまい、靴の外側が擦れてきます。次第に突っ張りが強くなると、足を上げるのが困難となり、手すり歩行、車椅子移動になります。
同時に、自律神経症状は高率にみられ、特に、排尿困難、頻尿、残尿感、便秘などの膀胱直腸障害は初期より多くみられます。その他、進行例では皮膚乾燥、多くは汗をかきにくい発汗障害、起立性低血圧、インポテンツなども認められます。これらの症状はいずれも、脊髄の傷害を示唆するものであり、HTLVー1関連脊髄症の中核症状となっています。
それに加え、手指振戦、運動失調、眼球運動障害、あるいは軽度の認知症の症状を示し、病巣の広がりが想定される例もあります。
HTLVー1関連脊髄症の検査と診断と治療
HTLVー1関連脊髄症では、神経内科を受診することが重要で、医師の診察では極めて特徴的な所見の組み合わせがみられます。血液検査、腰椎穿刺(ようついせんし)で髄液検査を受け、血清抗HTLVー1抗体陽性、髄液抗HTLVー1抗体陽性を認めることが、診断の確定に必要です。また、類似の症状を示す他の疾患を除外するために、脊柱のレントゲン撮影やMRI検査が行われます。
治療においては、病態に対応した治療が行われます。脊髄の炎症の活動性がほとんどないと考えられる例では、足の突っ張りや排尿障害などに対する対症療法や、継続的なリハビリテーションのみでも有効です。筋弛緩(しかん)剤の使用や、腰や脊柱の筋力増強、アキレス腱の伸張により、歩行の改善が得られます。
排尿障害に対しては、尿道口からカテーテルを膀胱(ぼうこう)に挿入して、人工的に排尿させる導尿という方法により、外出への不安解消や夜間頻尿による不眠の改善など、日常生活動作(ADL)の改善が期待されます。
明らかな症状の進行がみられ、脊髄の炎症の活動期と判断される例では、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の増殖を抑制する抗ウイルス療法が最も理にかなった治療法といえます。しかし、残念ながらウイルスの体内での増殖を抑制する薬剤は、これまでに見付かっていません。他のいくつかの薬剤には、症状を軽減したり進行を遅らせる効果があることが報告されています。
副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の内服により、約7割の発症者で何らかの治療効果がみられていますが、むやみに大量投与や長期間継続することは避けられます。副作用、特に高齢者女性の骨粗鬆(こつそしょう)症による骨折、感染症の誘発、糖尿病の誘発には、十分注意が必要とされます。内服の中止により、しばしば再燃がみられています。
また、HTLVー1関連脊髄症に対して唯一医療保険適応となっているインターフェロンα剤も用いられ、ウイルス量の減少、免疫異常の改善がみられていますが、やはり、うつ症状や肝障害、白血球減少などの副作用には、十分な注意が必要とされます。
うつ症状や発熱による長期間の活動性低下は、運動機能の低下につながります。通常は徐々にまひしていく慢性進行性ですが、進行が早く数週間で歩行不能になる例もみられます。高齢での発症で進行度が早い傾向があり、重症例では両下肢の完全まひ、体の筋力低下による座位障害で寝たきりとなります。
一方で、運動障害が軽度のまま、長期に渡り症状の進行がほとんどみられない発症者も多くみられます。両腕の完全まひ、飲み下しや発声障害などを来す例はほとんどなく、基本的に生命予後は良好。
感染予防として、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型キャリアの妊婦の場合、産婦人科医と相談して、母乳を3カ月限定にするか、人工乳にします。血液を感染経路とするため、血の付いた歯ブラシなどは共用しないことです。
HTLVー1関連脊髄(せきずい)症(HTLV-1-associated myelopathy:HAM)とは、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(Human T Lymphotropic Virus type 1:HTLVー1)の白血球(リンパ球)への感染によって、両足の筋肉が徐々にまひしていく慢性進行性の脊髄疾患。ヒトTリンパ球向性ウイルス1型感染に関連する疾患群の一つとして、1986年に鹿児島大が初めて報告しました。
ヒトTリンパ球向性ウイルス1型を保持するキャリアの大多数は生涯にわたって、このHTLVー1関連脊髄症や成人T細胞白血病(ATL)などを発症しないまま健康に過ごし、ごく一部の人が発症します。
1998年の全国調査では、日本でのヒトTリンパ球向性ウイルス1型のキャリアは全国に約120万人いるとされましたが、HTLVー1関連脊髄症の発症者は約1500人と確認されました。現在、年間発症率はキャリア10万人当たり3人と極めて低くなっています。
発症者は全国的に分布し、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の感染者の多い九州、四国、沖縄に多くみられます。東京や大阪など人口の集中する大都市圏でも、頻度的には少ないものの相当数の発症者が見いだされています。
世界的にみると、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型キャリア、成人T細胞白血病の分布と一致して、カリブ海沿岸諸国、南アメリカ、アフリカ、南インド、イラン内陸部などに発症者の集積が確認されています。それらの地域からの移民を介して、ヨーロッパ諸国、アメリカ合衆国など、世界的に発症者の存在が報告されています。
ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の感染経路としては、母乳を介する母子間垂直感染と、輸血、性交渉による水平感染が知られていて、出産時や母胎内での感染もあります。輸血では、感染リンパ球を含んだ輸血により感染し、血漿(けっしょう)成分輸血、血液製剤では感染しません。
なお、日本では現在、献血に際して抗体スクリーニングが行われており、輸血後の発症はなくなりました。2008年には、厚生労働省の難治性疾患克服研究事業の対象に追加されています。
発症は中年以降の成人に多くみられますが、10歳代、あるいはそれ以前の発症と考えられる例もあります。男女比は1:2・3と女性に多く、男性に多い成人T細胞白血病と対照的です。また、輸血後数週間で発症した例もあり、成人T細胞白血病が感染後長期のキャリア状態を経て発症するのとは異なります。
一義的な原因は、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の感染です。発症するメカニズムは、ウイルスに感染したTリンパ球が脊髄に浸潤し、その場でウイルス抗原を発現することにより、感染Tリンパ球を排除しようとするウイルス特異的免疫応答が生じ、その炎症反応に巻き込まれて周囲の脊髄組織が傷害されていると考えられています。感染者のごく一部にのみ発症するメカニズムはわかっていませんが、発症した人は体内のウイルス量が多いとされています。
基本的な症状は、慢性進行性の両足のまひで、痛みやしびれ、筋力の低下によって歩行障害を示します。初期の歩行障害は、足が棒のように突っ張って、ひきづりながら歩くため、足が内側を向いてしまい、靴の外側が擦れてきます。次第に突っ張りが強くなると、足を上げるのが困難となり、手すり歩行、車椅子移動になります。
同時に、自律神経症状は高率にみられ、特に、排尿困難、頻尿、残尿感、便秘などの膀胱直腸障害は初期より多くみられます。その他、進行例では皮膚乾燥、多くは汗をかきにくい発汗障害、起立性低血圧、インポテンツなども認められます。これらの症状はいずれも、脊髄の傷害を示唆するものであり、HTLVー1関連脊髄症の中核症状となっています。
それに加え、手指振戦、運動失調、眼球運動障害、あるいは軽度の認知症の症状を示し、病巣の広がりが想定される例もあります。
HTLVー1関連脊髄症の検査と診断と治療
HTLVー1関連脊髄症では、神経内科を受診することが重要で、医師の診察では極めて特徴的な所見の組み合わせがみられます。血液検査、腰椎穿刺(ようついせんし)で髄液検査を受け、血清抗HTLVー1抗体陽性、髄液抗HTLVー1抗体陽性を認めることが、診断の確定に必要です。また、類似の症状を示す他の疾患を除外するために、脊柱のレントゲン撮影やMRI検査が行われます。
治療においては、病態に対応した治療が行われます。脊髄の炎症の活動性がほとんどないと考えられる例では、足の突っ張りや排尿障害などに対する対症療法や、継続的なリハビリテーションのみでも有効です。筋弛緩(しかん)剤の使用や、腰や脊柱の筋力増強、アキレス腱の伸張により、歩行の改善が得られます。
排尿障害に対しては、尿道口からカテーテルを膀胱(ぼうこう)に挿入して、人工的に排尿させる導尿という方法により、外出への不安解消や夜間頻尿による不眠の改善など、日常生活動作(ADL)の改善が期待されます。
明らかな症状の進行がみられ、脊髄の炎症の活動期と判断される例では、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の増殖を抑制する抗ウイルス療法が最も理にかなった治療法といえます。しかし、残念ながらウイルスの体内での増殖を抑制する薬剤は、これまでに見付かっていません。他のいくつかの薬剤には、症状を軽減したり進行を遅らせる効果があることが報告されています。
副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の内服により、約7割の発症者で何らかの治療効果がみられていますが、むやみに大量投与や長期間継続することは避けられます。副作用、特に高齢者女性の骨粗鬆(こつそしょう)症による骨折、感染症の誘発、糖尿病の誘発には、十分注意が必要とされます。内服の中止により、しばしば再燃がみられています。
また、HTLVー1関連脊髄症に対して唯一医療保険適応となっているインターフェロンα剤も用いられ、ウイルス量の減少、免疫異常の改善がみられていますが、やはり、うつ症状や肝障害、白血球減少などの副作用には、十分な注意が必要とされます。
うつ症状や発熱による長期間の活動性低下は、運動機能の低下につながります。通常は徐々にまひしていく慢性進行性ですが、進行が早く数週間で歩行不能になる例もみられます。高齢での発症で進行度が早い傾向があり、重症例では両下肢の完全まひ、体の筋力低下による座位障害で寝たきりとなります。
一方で、運動障害が軽度のまま、長期に渡り症状の進行がほとんどみられない発症者も多くみられます。両腕の完全まひ、飲み下しや発声障害などを来す例はほとんどなく、基本的に生命予後は良好。
感染予防として、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型キャリアの妊婦の場合、産婦人科医と相談して、母乳を3カ月限定にするか、人工乳にします。血液を感染経路とするため、血の付いた歯ブラシなどは共用しないことです。