■用語 早期再分極症候群 [用語(そ)]
致死性不整脈へと直接つながる可能性がある不整脈疾患
早期再分極症候群とは、心臓の器質的な病変がない場合でも、心室細動や心室頻拍などの致死性不整脈へと直接つながる可能性がある不整脈疾患。J波症候群、ERS(Early Repolarization Syndrome)とも呼ばれます。
再分極は、心電図の波形において心臓の電気的刺激が収束していく過程のことを指す言葉であり、早期再分極症候群は、心臓の拍動を生み出す電気的刺激の伝達において、通常の場合よりも心筋の電気的刺激が早く収束する不整脈の形態を意味することになります。
これに対して、早期再分極症候群の別名として使われることも多いJ波症候群のJ波は、心室の収縮を表すQRS波と、心室の弛緩(しかん)すなわち再分極を表すT波の間に出現することがある心電図の小さな波のことを指す言葉であり、心電図のQRS波の終わりにJ波が割り込むように出現することによって、心筋の電気的刺激を収束させる本来の波であるT波がくる前に早期に心筋の弛緩が始まることになります。
従って、心電図においJ波が出現すると、心臓の電気的刺激の収束である再分極が通常よりも早期に始まることになるので、心電図にJ波が現れるJ波症候群は、早期再分極症候群へとつながる一連の不整脈の形態としてもとらえられることになります。
早期再分極症候群ないしJ波症候群においては、心筋の電気的刺激の伝達において、本来よりも早く心臓の電気的刺激が収束する再分極が始まることによって、心臓の電気的状態が不安定となり、特発性の心室頻拍や心室細動といったより重篤で命にかかわる不整脈の状態へと移行する可能性がある程度高まる可能性があると考えられます。
しかし、こうした潜在的な危険性の一方で、早期再分極や心電図におけるJ波の出現は、自覚症状がないものや、心電図におけるJ波の所見が極めて軽微であるものも含めると、全人口の5~10%程度の人に見られるほど非常に多く認められる心電図の特徴でもあります。
つまり、早期再分極症候群という不整脈の形態自体は、発症率の極めて高い、極めて一般的な不整脈の形態であり、早期再分極症候群を有する人の多くが、実際には、失神などの危険な兆候はおろか、何の自覚症状も感じずに、心室細動のような致死的な不整脈とは無縁のまま健康な生活を送っているということにもなります。
早期再分極症候群と診断された場合、その不整脈の形態が実際にどの程度命にかかわる危険性が高いかは、心電図に見られるJ波の波形の大きさや、頻脈発作の有無、失神やめまい、立ちくらみといった危険な兆候の有無などから総合的に判断されていくことになります。
特に、ブルガダ症候群やQT延長症候群といったほかの致死性不整脈と合併して、この早期再分極症候群が現れている場合は、心室細動や心室頻拍を引き起こす危険性が高まる要因として重視されることになります。
早期再分極症候群を発症する70〜80%は男性であり、発症年齢は40歳前後。突然死の家族歴を10〜20%に認め、これは早期再分極症候群の発症に遺伝的背景が関与していることを示唆しており、実際に現在までに5種類のイオンチャネル遺伝子が原因遺伝子として報告されています。
心室細動や心室頻拍を引き起こす状況は一様でなく、夜間や睡眠中に発作を来す場合が多いものの、労作時や運動時に発作を来す場合も少なからず存在します。
主に左室下壁誘導ないしは左室側壁誘導の早期再分極が心室細動に関連しますが、右側胸部誘導に早期再分極を認めることもあります。J波の高さはさまざまな状況において変動し、時に消失するものの、徐脈が生じたり,長いポーズ(心停止)が生じた時に増強し、心室細動の発作の直前に通常は最もJ波は高くなります。
早期再分極症候群の検査と診断と治療
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、失神の既往歴、突然死の家族歴があり、心臓に流れる電流を異なる12方向から記録する12誘導心電図による検査で、左室下壁誘導(心電図検査のⅡ、Ⅲ、aVFと呼ばれる項目)と左室側壁誘導(心電図検査のⅠ、aVL、V4-V6と呼ばれる項目)の中の2誘導以上で1ミリ以上のJ波を認めた場合、早期再分極症候群の可能性を疑います。
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、心室細動が出現した場合は、植え込み型除細動器(ICD)の埋め込み手術を行います。植え込み型除細動器は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置。
心室細動が頻回にわたって出現する場合には、発作予防の抗不整脈薬の投与が必要となり、β(ベータ)刺激薬であるイソプロテレノールや心拍を早くするためのベーシングが有効です。再発予防には、キニジンが有効です。
抗不整脈薬の効果がない場合は、心室細動の引き金になる心室性期外収縮を発生させている左室下壁あるいは左室側壁の異常興奮部位を探し出し、足の付け根などからカテーテルと呼ばれる電極を心臓内に挿入し、高周波電流で焼灼(しょうしゃく)するカテーテルアブレーション(カテーテル焼灼法)という手術を行うことがあります。
早期再分極症候群とは、心臓の器質的な病変がない場合でも、心室細動や心室頻拍などの致死性不整脈へと直接つながる可能性がある不整脈疾患。J波症候群、ERS(Early Repolarization Syndrome)とも呼ばれます。
再分極は、心電図の波形において心臓の電気的刺激が収束していく過程のことを指す言葉であり、早期再分極症候群は、心臓の拍動を生み出す電気的刺激の伝達において、通常の場合よりも心筋の電気的刺激が早く収束する不整脈の形態を意味することになります。
これに対して、早期再分極症候群の別名として使われることも多いJ波症候群のJ波は、心室の収縮を表すQRS波と、心室の弛緩(しかん)すなわち再分極を表すT波の間に出現することがある心電図の小さな波のことを指す言葉であり、心電図のQRS波の終わりにJ波が割り込むように出現することによって、心筋の電気的刺激を収束させる本来の波であるT波がくる前に早期に心筋の弛緩が始まることになります。
従って、心電図においJ波が出現すると、心臓の電気的刺激の収束である再分極が通常よりも早期に始まることになるので、心電図にJ波が現れるJ波症候群は、早期再分極症候群へとつながる一連の不整脈の形態としてもとらえられることになります。
早期再分極症候群ないしJ波症候群においては、心筋の電気的刺激の伝達において、本来よりも早く心臓の電気的刺激が収束する再分極が始まることによって、心臓の電気的状態が不安定となり、特発性の心室頻拍や心室細動といったより重篤で命にかかわる不整脈の状態へと移行する可能性がある程度高まる可能性があると考えられます。
しかし、こうした潜在的な危険性の一方で、早期再分極や心電図におけるJ波の出現は、自覚症状がないものや、心電図におけるJ波の所見が極めて軽微であるものも含めると、全人口の5~10%程度の人に見られるほど非常に多く認められる心電図の特徴でもあります。
つまり、早期再分極症候群という不整脈の形態自体は、発症率の極めて高い、極めて一般的な不整脈の形態であり、早期再分極症候群を有する人の多くが、実際には、失神などの危険な兆候はおろか、何の自覚症状も感じずに、心室細動のような致死的な不整脈とは無縁のまま健康な生活を送っているということにもなります。
早期再分極症候群と診断された場合、その不整脈の形態が実際にどの程度命にかかわる危険性が高いかは、心電図に見られるJ波の波形の大きさや、頻脈発作の有無、失神やめまい、立ちくらみといった危険な兆候の有無などから総合的に判断されていくことになります。
特に、ブルガダ症候群やQT延長症候群といったほかの致死性不整脈と合併して、この早期再分極症候群が現れている場合は、心室細動や心室頻拍を引き起こす危険性が高まる要因として重視されることになります。
早期再分極症候群を発症する70〜80%は男性であり、発症年齢は40歳前後。突然死の家族歴を10〜20%に認め、これは早期再分極症候群の発症に遺伝的背景が関与していることを示唆しており、実際に現在までに5種類のイオンチャネル遺伝子が原因遺伝子として報告されています。
心室細動や心室頻拍を引き起こす状況は一様でなく、夜間や睡眠中に発作を来す場合が多いものの、労作時や運動時に発作を来す場合も少なからず存在します。
主に左室下壁誘導ないしは左室側壁誘導の早期再分極が心室細動に関連しますが、右側胸部誘導に早期再分極を認めることもあります。J波の高さはさまざまな状況において変動し、時に消失するものの、徐脈が生じたり,長いポーズ(心停止)が生じた時に増強し、心室細動の発作の直前に通常は最もJ波は高くなります。
早期再分極症候群の検査と診断と治療
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、失神の既往歴、突然死の家族歴があり、心臓に流れる電流を異なる12方向から記録する12誘導心電図による検査で、左室下壁誘導(心電図検査のⅡ、Ⅲ、aVFと呼ばれる項目)と左室側壁誘導(心電図検査のⅠ、aVL、V4-V6と呼ばれる項目)の中の2誘導以上で1ミリ以上のJ波を認めた場合、早期再分極症候群の可能性を疑います。
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、心室細動が出現した場合は、植え込み型除細動器(ICD)の埋め込み手術を行います。植え込み型除細動器は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置。
心室細動が頻回にわたって出現する場合には、発作予防の抗不整脈薬の投与が必要となり、β(ベータ)刺激薬であるイソプロテレノールや心拍を早くするためのベーシングが有効です。再発予防には、キニジンが有効です。
抗不整脈薬の効果がない場合は、心室細動の引き金になる心室性期外収縮を発生させている左室下壁あるいは左室側壁の異常興奮部位を探し出し、足の付け根などからカテーテルと呼ばれる電極を心臓内に挿入し、高周波電流で焼灼(しょうしゃく)するカテーテルアブレーション(カテーテル焼灼法)という手術を行うことがあります。
タグ:末梢動脈疾患(PAD) 無症候性心筋虚血 脈なし病 慢性リンパ性白血病 WPW症候群 洞性頻脈 心室性期外収縮 心筋炎 用語(さ行) 用語(そ) 用語 早期再分極症候群 健康創造塾 早期乳児てんかん性脳症 早期ミオクロニー脳症 無症候性脳梗塞 無βリポ蛋白血症 門脈血栓症 夜間高血圧 溶血性貧血 ラクナ梗塞 旅行者血栓症 リンパ浮腫 レイノー病 ロングフライト血栓症 DVT(深部静脈血栓症) MTP欠損症 PH(肺高血圧症) PIH(妊娠高血圧症候群) ブルガダ症候群 肺性心 特発性心筋症 先天性心臓病 心内膜炎 心臓ぜんそく 心臓神経症 心室細動 心室頻拍 原発性心筋症 洞不全症候群 神経循環無力症
■用語 続発性アルドステロン症 [用語(そ)]
ほかの臓器の疾患などの原因により、副腎皮質からアルドステロンが過剰に分泌されて起こる疾患
続発性アルドステロン症とは、ほかの臓器の疾患など何かしらの原因により副腎(ふくじん)皮質が刺激を受けることで、副腎皮質ホルモンの一つであるアルドステロン(鉱質コルチコイド)が過剰に分泌される疾患。二次性アルドステロン症とも呼ばれます。
アルドステロンの分泌は、レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系という血圧や体液量の調節にかかわるホルモン系のコントロールを受けているため、続発性アルドステロン症の大半はレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系の刺激が高進することに起因します。
エストロゲン製剤(卵胞ホルモン製剤)、経口避妊薬に起因する高血圧や、腎血管性高血圧(腎動脈狭窄<きょうさく>症)、妊娠高血圧、悪性高血圧、褐色細胞腫、傍糸球体細胞腫(しゅ)など高血圧の疾患から発生するもののほか、うっ血性心不全、偽性低アルドステロン症、腹水を随伴させた肝硬変、下剤および利尿薬などの不適切な利用、ネフローゼ症候群、バーター症候群、ギッテルマン症候群といった高血圧以外の疾患から発生するものがあります。
レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系を除いたものでは、血液中のカリウム濃度が異常に上昇した高カリウム血症によって引き起こされる傾向にあります。
続発性アルドステロン症で主に現れる症状は、浮腫(ふしゅ、むくみ)、下肢脱力、筋力低下であり、これらは血液中のカリウムが減る低カリウム血症を基礎にして生じ、どの続発性アルドステロン症にも同じく現れます。
また、続発性アルドステロン症を招いている元となる疾患の症状も示されます。例えば、腎血管性高血圧 、悪性高血圧、褐色細胞腫では、アルドステロンが腎臓に作用し、体の中にナトリウムと水分を蓄えるために高血圧を伴いますが、バーター症候群、心不全や肝硬変などの浮腫性疾患では高血圧を伴いません。
続発性アルドステロン症の検査と診断と治療
内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科の医師による診断では、元となる疾患が明らかとなり、低カリウム血症がみられ、副腎皮質から分泌されるアルドステロン、および腎臓から分泌され血圧を上昇させるレニンの両ホルモンが高値を示せば、大半の続発性アルドステロン症は確定できます。避妊薬、下剤、利尿薬などの服用している薬剤についての情報も重要となります。
内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科の医師による治療では、基本的に元となる疾患の是正が中心となります。
浮腫や低カリウム血症などが継続してみられ、元となる疾患の治療も難しいとされる場合は、カリウム保持性の利尿薬であるスピロノラクトン(アルダクトン)を使用します。以上の治療方法で改善がみられない場合においては、カリウム製剤を使用します。
そのほか、非ステロイド性抗炎症薬の一つであるインドメタシンがバーター症候群に有用とされる場合もあります。
なお、副作用などの理由からスピロノラクトンを適用できない場合、トリアムテレン(トリテレン)を使用します。ただし、抗アルドステロン様の作用は有しません。
高カリウム血症によって続発性アルドステロン症が引き起こされている場合は、軽度であれば、利尿薬を投与してカリウムの排出量を増やします。また、アルドステロン作用を持つホルモン剤を投与することもあります。
重度であれば、消化管からカリウムを吸収し、便と一緒に体外に排出する作用のあるレジン(樹脂製剤)を、経口または浣腸(かんちょう)で投与します。同時に下痢を誘発させて、カリウムを吸収したレジンが速やかに体外へ排出されるようにします。
続発性アルドステロン症とは、ほかの臓器の疾患など何かしらの原因により副腎(ふくじん)皮質が刺激を受けることで、副腎皮質ホルモンの一つであるアルドステロン(鉱質コルチコイド)が過剰に分泌される疾患。二次性アルドステロン症とも呼ばれます。
アルドステロンの分泌は、レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系という血圧や体液量の調節にかかわるホルモン系のコントロールを受けているため、続発性アルドステロン症の大半はレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系の刺激が高進することに起因します。
エストロゲン製剤(卵胞ホルモン製剤)、経口避妊薬に起因する高血圧や、腎血管性高血圧(腎動脈狭窄<きょうさく>症)、妊娠高血圧、悪性高血圧、褐色細胞腫、傍糸球体細胞腫(しゅ)など高血圧の疾患から発生するもののほか、うっ血性心不全、偽性低アルドステロン症、腹水を随伴させた肝硬変、下剤および利尿薬などの不適切な利用、ネフローゼ症候群、バーター症候群、ギッテルマン症候群といった高血圧以外の疾患から発生するものがあります。
レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系を除いたものでは、血液中のカリウム濃度が異常に上昇した高カリウム血症によって引き起こされる傾向にあります。
続発性アルドステロン症で主に現れる症状は、浮腫(ふしゅ、むくみ)、下肢脱力、筋力低下であり、これらは血液中のカリウムが減る低カリウム血症を基礎にして生じ、どの続発性アルドステロン症にも同じく現れます。
また、続発性アルドステロン症を招いている元となる疾患の症状も示されます。例えば、腎血管性高血圧 、悪性高血圧、褐色細胞腫では、アルドステロンが腎臓に作用し、体の中にナトリウムと水分を蓄えるために高血圧を伴いますが、バーター症候群、心不全や肝硬変などの浮腫性疾患では高血圧を伴いません。
続発性アルドステロン症の検査と診断と治療
内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科の医師による診断では、元となる疾患が明らかとなり、低カリウム血症がみられ、副腎皮質から分泌されるアルドステロン、および腎臓から分泌され血圧を上昇させるレニンの両ホルモンが高値を示せば、大半の続発性アルドステロン症は確定できます。避妊薬、下剤、利尿薬などの服用している薬剤についての情報も重要となります。
内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科の医師による治療では、基本的に元となる疾患の是正が中心となります。
浮腫や低カリウム血症などが継続してみられ、元となる疾患の治療も難しいとされる場合は、カリウム保持性の利尿薬であるスピロノラクトン(アルダクトン)を使用します。以上の治療方法で改善がみられない場合においては、カリウム製剤を使用します。
そのほか、非ステロイド性抗炎症薬の一つであるインドメタシンがバーター症候群に有用とされる場合もあります。
なお、副作用などの理由からスピロノラクトンを適用できない場合、トリアムテレン(トリテレン)を使用します。ただし、抗アルドステロン様の作用は有しません。
高カリウム血症によって続発性アルドステロン症が引き起こされている場合は、軽度であれば、利尿薬を投与してカリウムの排出量を増やします。また、アルドステロン作用を持つホルモン剤を投与することもあります。
重度であれば、消化管からカリウムを吸収し、便と一緒に体外に排出する作用のあるレジン(樹脂製剤)を、経口または浣腸(かんちょう)で投与します。同時に下痢を誘発させて、カリウムを吸収したレジンが速やかに体外へ排出されるようにします。
■用語 足底多汗症 [用語(そ)]
足の裏に異常なほどに大量の汗をかく症状
足底多汗症とは、足の裏に異常なほど大量の汗をかく症状。多汗症の一種で、足蹠(そくせき)多汗症とも呼ばれます。
多汗症は、体温の調節に必要な範囲を超えて、汗が異常に分泌する症状。全身性の多汗症と、手のひら、足の裏、腋(わき)の下、頭、鼻の頭などにみられる局所性の多汗症があります。
人間は意外と多くの場面で汗をかいており、発汗は体温調節の役割を担う大切な生理機能の一つでもあります。そのため、どのくらいの汗の量で多汗症と呼べるのか分類は難しいのですが、多汗症の場合は気温の変化や運動などとは関係なしに汗をかくことが多いので、心当たりがある人は少し振り返ってみるといいでしょう。
特に疾患と考える必要はないにしろ、汗をかくということは日常の生活と密接に関係していることですので、さまざまな悩みや問題を抱えている人が多いのも事実です。
局所性の多汗症は、汗をかきやすいという体質に、生活環境や精神的な影響が加わったものが大部分です。肥満、過度なダイエット、生活リズムの乱れ、性格的に神経質だったり、緊張しがちなタイプだったりと、ストレスをためやすい状況下に身を置いていることが原因となっています。
これらの原因の背後には、交感神経の働きが大きく関係しています。交感神経とは、副交感神経とうまくバランスを取り合いながら、人間が日々健康で過ごせるように作用しているものです。この交感神経がストレスなどさまざまな原因により過敏になってしまうと、体温上昇とは関係なく汗を大量にかくようになり、汗をかくことでさらなるストレスを作り出す悪循環に陥ってしまいます。
全身性の多汗症も、多くは体質的なものです。比較的急激に生じた場合には、代謝機能や自律神経などが障害される、いろいろな疾患が潜んでいる可能性があります。
局所性の多汗症の一種である足底多汗症が起こる原因は、汗をかきやすいという体質に、生活環境や精神的な影響が加わり、発汗を促す交感神経が通常よりも過敏になって起こるものが大部分です。
夏場などに革靴を履いたままで過ごしていれば、足に汗をかいて蒸れてしまうことは、誰にでもあることなのですが、これにとらわれてしまった状態が足底多汗症だといってよいでしょう。
また、足に合っていない靴を履いていることが、足底多汗症の原因の一つになっていることもあります。合っていない靴を使用するために、不快な刺激が反復して足に加えられ、交感神経が活性化するために発汗が起こるのです。
足の裏に大量の汗をかくため、革靴を履かなければならない会社員などは、靴下や靴の中が非常に蒸れた状態になります。細菌などが繁殖しやすく、周囲にわかるほどの不快な足の臭(にお)いを発することもあります。
特に、毎日同じ革靴を履いていると、足の臭いが強くなったり、その臭いが革靴に移り、革靴自体が強い臭いを発するようになることもあります。革靴や靴下、ストッキングを脱ぐと、足の臭いがものすごく強くなります。
足の臭いの一番の原因は、足裏の皮膚に存在するエクリン汗腺(かんせん)からの汗が過剰に出ることにより、足裏の皮膚の角質がふやけ、足に住む皮膚常在菌が角質の蛋白(たんぱく)質や皮脂を栄養素として分解した産物です。エクリン汗腺から出る汗自体は、99パーセントが水で、残り1パーセントもほとんどは塩分であるため、ほぼ無色透明であり、ほぼ無臭です。
症状が強い時は、足の裏の汗で靴下がぬれていて他人の家に上がれない、自宅のフローリングが汗でベタベタになる、サンダルを履くと足裏が滑ってうまく歩けないという状態にまでなります。また、水虫になることも少なくありません。
足底多汗症のセルフケア
足底多汗症の原因は、汗をかきやすい体質の人が革靴や熱がこもりやすいような靴を履かなければならないことにあるといってもよいでしょう。素足で生活している人は、足が蒸れることがないので、足底多汗症による足の臭いが発生する率がとても低くなります。
しかし、現代では、通勤、通学のために靴を履かないで生活することはほぼ難しいため、うまく対策をとる必要があります。まず、靴を選ぶ際には見た目だけでなく、自分の足に合った靴を選択しましょう。また、靴は3つ以上など複数持つようにしましょう。
同じ靴を連日履き続けると、汗がどんどん染み込んでしまい靴自体が臭くなると同時に、履いてすぐ足が臭くなることになります。それを防ぐためにも、1日履いた靴は次の日には履かず、湿った靴の中を日陰干しして乾燥させてから、別の日に履くようにしましょう。足裏の皮膚で繁殖している細菌は乾燥に弱いので、乾燥させることで細菌を死滅させ、臭いの悪化を防ぐことができます。
消臭スプレーや、消臭効果のある靴の中敷きを複数用意して使うというのも、お勧めの対策です。
汗をかいたら服を着替えるように、足の汗をタオルやウェットティッシュなどでしっかりふき取ってから、靴下を小まめに履き替えるようにすると、すっきりした状態になれ、臭いもかなり減ります。臭いを分解消臭する靴下、消臭ソックスを履くのもよいでしょう。
足の指同士が接触することで、細菌が繁殖するともされているため、普通の靴下ではなく、5本指ソックスを履くのもよいでしょう。
足を洗う際には、殺菌効果のあるせっけんなどできれいに洗うこと。ボディーソープでは保湿効果があるので、逆に足の臭いの発生を悪化させてしまいます。そして、軽石を使って、足の裏や足指の間、側面の古い角質や垢(あか)をこすり落とすことです。
以上の対策を試みても、足底多汗症による支障が改善しない場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診し、自分に合った治療を受けることをお勧めします。
足底多汗症の治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、原因となる疾患がある場合は、これを取り除くことが先決です。
足底多汗症に対しては、皮膚に塗ると汗腺をふさいで一時的に汗を抑える効果がある局所制汗剤として、20パーセントの塩化アルミニウム液や、5パーセントのホルマリン・アルコール液を足裏の汗が多い部分に塗布します。1日1〜2回塗り、乾いてからパウダーを振り掛けておきます。
精神的な緊張が強くて汗をかくような場合には、精神安定剤を内服することも有効です。
イオン浸透療法(イオントフォレーシス療法)を行うこともあります。水道水に浸した足の裏の部位に、弱い電流を20分ほど流して発汗を抑制するもので、個人差がありますが効果が出るまで数週間の集中的な治療が必要です。
治療を止めると再発の可能性が高く、副作用として湿疹(しっしん)、かゆみ、皮むけ、水疱(すいほう)などが生じることがあります。
このイオン浸透療法は皮膚科、皮膚泌尿器科で行う治療法ですが、同様の療法が行えるドライオニックと呼ばれる家庭用機器もあります。
局所制汗剤の外用、イオン浸透療法で十分な効果が得られなかった場合は、必要に応じてボトックス注射を行うこともあります。発汗は交感神経の末端から放出されるアセチルコリンという神経伝達物質により、汗腺が刺激されることで促されるため、汗が出やすい部分にボツリヌス注射を打つと、このアセチルコリンの放出が阻害されるため、汗を減らすことができます。
1回の注射による効果は、約半年間持続するとされています。ただし、副作用などのリスクもあります。
交感神経ブロック手術を行って、胸の辺りにある汗の分泌を調節する交感神経を切除することもあります。手術は基本的に、まず片方の交感神経を切除し、その後の体調の経過をみてから、もう一方の交感神経も切除するかどうかを決定します。
手術のメリットは成功率が高く効果に永続性があるということ、デメリットは神経を一度切除してしまうと元には戻らないということと、副作用として代償性発汗になる場合がほとんどであることです。代償性発汗とは、足の裏から汗が出なくなった代わりに、背中や下半身などこれまでと違った部位から大量の発汗が起こるものです。
足底多汗症とは、足の裏に異常なほど大量の汗をかく症状。多汗症の一種で、足蹠(そくせき)多汗症とも呼ばれます。
多汗症は、体温の調節に必要な範囲を超えて、汗が異常に分泌する症状。全身性の多汗症と、手のひら、足の裏、腋(わき)の下、頭、鼻の頭などにみられる局所性の多汗症があります。
人間は意外と多くの場面で汗をかいており、発汗は体温調節の役割を担う大切な生理機能の一つでもあります。そのため、どのくらいの汗の量で多汗症と呼べるのか分類は難しいのですが、多汗症の場合は気温の変化や運動などとは関係なしに汗をかくことが多いので、心当たりがある人は少し振り返ってみるといいでしょう。
特に疾患と考える必要はないにしろ、汗をかくということは日常の生活と密接に関係していることですので、さまざまな悩みや問題を抱えている人が多いのも事実です。
局所性の多汗症は、汗をかきやすいという体質に、生活環境や精神的な影響が加わったものが大部分です。肥満、過度なダイエット、生活リズムの乱れ、性格的に神経質だったり、緊張しがちなタイプだったりと、ストレスをためやすい状況下に身を置いていることが原因となっています。
これらの原因の背後には、交感神経の働きが大きく関係しています。交感神経とは、副交感神経とうまくバランスを取り合いながら、人間が日々健康で過ごせるように作用しているものです。この交感神経がストレスなどさまざまな原因により過敏になってしまうと、体温上昇とは関係なく汗を大量にかくようになり、汗をかくことでさらなるストレスを作り出す悪循環に陥ってしまいます。
全身性の多汗症も、多くは体質的なものです。比較的急激に生じた場合には、代謝機能や自律神経などが障害される、いろいろな疾患が潜んでいる可能性があります。
局所性の多汗症の一種である足底多汗症が起こる原因は、汗をかきやすいという体質に、生活環境や精神的な影響が加わり、発汗を促す交感神経が通常よりも過敏になって起こるものが大部分です。
夏場などに革靴を履いたままで過ごしていれば、足に汗をかいて蒸れてしまうことは、誰にでもあることなのですが、これにとらわれてしまった状態が足底多汗症だといってよいでしょう。
また、足に合っていない靴を履いていることが、足底多汗症の原因の一つになっていることもあります。合っていない靴を使用するために、不快な刺激が反復して足に加えられ、交感神経が活性化するために発汗が起こるのです。
足の裏に大量の汗をかくため、革靴を履かなければならない会社員などは、靴下や靴の中が非常に蒸れた状態になります。細菌などが繁殖しやすく、周囲にわかるほどの不快な足の臭(にお)いを発することもあります。
特に、毎日同じ革靴を履いていると、足の臭いが強くなったり、その臭いが革靴に移り、革靴自体が強い臭いを発するようになることもあります。革靴や靴下、ストッキングを脱ぐと、足の臭いがものすごく強くなります。
足の臭いの一番の原因は、足裏の皮膚に存在するエクリン汗腺(かんせん)からの汗が過剰に出ることにより、足裏の皮膚の角質がふやけ、足に住む皮膚常在菌が角質の蛋白(たんぱく)質や皮脂を栄養素として分解した産物です。エクリン汗腺から出る汗自体は、99パーセントが水で、残り1パーセントもほとんどは塩分であるため、ほぼ無色透明であり、ほぼ無臭です。
症状が強い時は、足の裏の汗で靴下がぬれていて他人の家に上がれない、自宅のフローリングが汗でベタベタになる、サンダルを履くと足裏が滑ってうまく歩けないという状態にまでなります。また、水虫になることも少なくありません。
足底多汗症のセルフケア
足底多汗症の原因は、汗をかきやすい体質の人が革靴や熱がこもりやすいような靴を履かなければならないことにあるといってもよいでしょう。素足で生活している人は、足が蒸れることがないので、足底多汗症による足の臭いが発生する率がとても低くなります。
しかし、現代では、通勤、通学のために靴を履かないで生活することはほぼ難しいため、うまく対策をとる必要があります。まず、靴を選ぶ際には見た目だけでなく、自分の足に合った靴を選択しましょう。また、靴は3つ以上など複数持つようにしましょう。
同じ靴を連日履き続けると、汗がどんどん染み込んでしまい靴自体が臭くなると同時に、履いてすぐ足が臭くなることになります。それを防ぐためにも、1日履いた靴は次の日には履かず、湿った靴の中を日陰干しして乾燥させてから、別の日に履くようにしましょう。足裏の皮膚で繁殖している細菌は乾燥に弱いので、乾燥させることで細菌を死滅させ、臭いの悪化を防ぐことができます。
消臭スプレーや、消臭効果のある靴の中敷きを複数用意して使うというのも、お勧めの対策です。
汗をかいたら服を着替えるように、足の汗をタオルやウェットティッシュなどでしっかりふき取ってから、靴下を小まめに履き替えるようにすると、すっきりした状態になれ、臭いもかなり減ります。臭いを分解消臭する靴下、消臭ソックスを履くのもよいでしょう。
足の指同士が接触することで、細菌が繁殖するともされているため、普通の靴下ではなく、5本指ソックスを履くのもよいでしょう。
足を洗う際には、殺菌効果のあるせっけんなどできれいに洗うこと。ボディーソープでは保湿効果があるので、逆に足の臭いの発生を悪化させてしまいます。そして、軽石を使って、足の裏や足指の間、側面の古い角質や垢(あか)をこすり落とすことです。
以上の対策を試みても、足底多汗症による支障が改善しない場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診し、自分に合った治療を受けることをお勧めします。
足底多汗症の治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、原因となる疾患がある場合は、これを取り除くことが先決です。
足底多汗症に対しては、皮膚に塗ると汗腺をふさいで一時的に汗を抑える効果がある局所制汗剤として、20パーセントの塩化アルミニウム液や、5パーセントのホルマリン・アルコール液を足裏の汗が多い部分に塗布します。1日1〜2回塗り、乾いてからパウダーを振り掛けておきます。
精神的な緊張が強くて汗をかくような場合には、精神安定剤を内服することも有効です。
イオン浸透療法(イオントフォレーシス療法)を行うこともあります。水道水に浸した足の裏の部位に、弱い電流を20分ほど流して発汗を抑制するもので、個人差がありますが効果が出るまで数週間の集中的な治療が必要です。
治療を止めると再発の可能性が高く、副作用として湿疹(しっしん)、かゆみ、皮むけ、水疱(すいほう)などが生じることがあります。
このイオン浸透療法は皮膚科、皮膚泌尿器科で行う治療法ですが、同様の療法が行えるドライオニックと呼ばれる家庭用機器もあります。
局所制汗剤の外用、イオン浸透療法で十分な効果が得られなかった場合は、必要に応じてボトックス注射を行うこともあります。発汗は交感神経の末端から放出されるアセチルコリンという神経伝達物質により、汗腺が刺激されることで促されるため、汗が出やすい部分にボツリヌス注射を打つと、このアセチルコリンの放出が阻害されるため、汗を減らすことができます。
1回の注射による効果は、約半年間持続するとされています。ただし、副作用などのリスクもあります。
交感神経ブロック手術を行って、胸の辺りにある汗の分泌を調節する交感神経を切除することもあります。手術は基本的に、まず片方の交感神経を切除し、その後の体調の経過をみてから、もう一方の交感神経も切除するかどうかを決定します。
手術のメリットは成功率が高く効果に永続性があるということ、デメリットは神経を一度切除してしまうと元には戻らないということと、副作用として代償性発汗になる場合がほとんどであることです。代償性発汗とは、足の裏から汗が出なくなった代わりに、背中や下半身などこれまでと違った部位から大量の発汗が起こるものです。
■用語 早発閉経 [用語(そ)]
平均的な閉経年齢に至る前の20歳代、30歳代で閉経を迎える状態
早発閉経とは、20歳代、30歳代といった若い時期に、女性の定期的子宮出血である月経がなくなり、閉経を迎える状態。早期閉経、早発卵巣不全とも呼ばれます。
閉経は、卵巣年齢が実年齢以上に衰えて卵巣機能が完全に停止している状態を指します。医学的には、1年間以上月経がないと閉経と定義されています。
個人差はありますが、多くの場合、一般的には45~56歳くらい、平均的には50歳で閉経するといわれ、通常は次第に月経の間隔が長くなり、やがて終了します。
病名としての早発閉経は、40歳未満の自然閉経と定義されています。日本産科婦人科学会の定義では、閉経が43歳未満までに起こることとされています。
早発閉経の起こる割合は、20歳代の女性で1000人に1人、30歳代の女性で100人に1人です。早発閉経は、特に妊娠を希望している女性にとっては大きな問題となります。
早発閉経の症状としては、徐々に月経の回数が減り、やがてなくなります。早発閉経を迎えると、女性ホルモンの分泌がなくなるので自律神経の働きが乱れ、気分の浮き沈みが激しい、うつっぽくなる、火照りやのぼせが出る、疲れやすい、息切れがする、動悸(どうき)がする、耳鳴りがするなど、更年期障害のような多岐にわたる症状がみられるようになります。
また、早発閉経が起きると、実年齢は若くても体の中は10歳ほど老いているということになるために、骨粗鬆(こつそしょう)症や脳梗塞(こうそく)、脳動脈瘤(りゅう)などを発症する可能性が高くなるともいわれています。
早発閉経の原因が特定できるのは、10パーセントほどで、残りの90パーセントは、原因不明といわれています。
原因が特定できるのは、染色体異常などの遺伝性疾患、甲状腺(せん)機能低下症などの自己免疫性疾患、卵巣の手術や化学療法、放射線療法の影響があります。
早発閉経の最も典型的な症例としては、初めての月経である初潮を迎えた当初から月経(生理)周期が不順で、高校生を終えるころには、年間を通じて1~3回程度しか月経がなく、20歳代前半もしくは中盤くらいからは、全く月経がなくなるといったようなケースです。このケースは、家族内に同じような傾向の女性がいる場合が多いため、遺伝的な側面が関与している可能性はあるとされています。
甲状腺機能低下症、甲状腺炎などの自己免疫性疾患により、抗卵巣自己抗体と呼ばれる異常な抗体が体内に産生され、卵巣を含む体内の組織を攻撃するために、早発閉経が起きることもあります。
過去に卵巣の手術をしている女性、片方の卵巣を摘出している女性は、早発閉経が起きやすくなります。例えば、卵巣に液体成分の入った袋のようなものができ、卵巣の一部にはれが生じる卵巣嚢腫(のうしゅ)の摘出手術を受けている女性の場合、早発閉経となる確率が有意に高くなっているとされています。また、卵巣の手術を受けていない場合でも、抗がん剤治療や放射線治療などの経歴があると、早発閉経が起きやすくなります。
生活習慣という面では、喫煙やダイエットによる過剰な栄養バランスの崩れ、過剰なストレス、野菜しか食べない菜食主義が、原因になることがあります。
今まであった月経が3カ月以上停止した状態を無月経といいますが、卵巣機能が休止しているだけで、これから回復することがあるという状態です。無月経には原因がいくつかあり、その原因を取り除くことで月経を起こすことができます。
一方、早発閉経は、卵巣機能が完全に停止していて排卵していない状態なので、妊娠することはできません。ただ、一言で早発閉経といっても、卵子を包む卵胞がなくなった状態と、卵胞が存在する状態の2種類があります。卵胞がなくなると妊娠の可能性はほとんどなくなってしまいますが、卵巣内に卵胞が存在する場合は、体外受精での妊娠に成功する可能性もあります。
早めの発見と治療が大切なので、月経が3カ月以上ない時は婦人科、産婦人科を受診することが勧められます。
早発閉経の検査と診断と治療
婦人科、産婦人科の医師による診断では、まず下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピン、すなわち黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)の値を調べる検査を行います。
この黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモンは、卵巣の機能が低下している際に、それ下支えするために放出されるホルモンです。これらが分泌されることで、低下した卵巣を活発にして卵子の排出を促しているわけです。
この検査で陽性となった場合には、腹腔(ふくくう)鏡を用いた検査を行い、卵巣に委縮が始まっているかどうかを確認します。この際に、卵巣組織を一部切除して生体検査を行い、原始卵胞という卵子の元になる細胞があるかどうかを確認します。
婦人科、産婦人科の医師による治療では、検査により早発閉経と判明した場合、一般的にホルモン補充療法を行います。ホルモン補充療法では、閉経により減少する女性ホルモンの一つであるエストロゲンを補充します。エストロゲンだけを補充すると副作用を伴うこともあるため、別のプロゲステロンといったホルモンを状態に合わせて併用していくのが一般的で、併せてゴナドトロピン製剤(HMG製剤)を大量に投与します。
ホルモンバランスを正常化させることで、更年期障害のようなのぼせ、息切れ、動悸などの症状の改善が期待できます。また、早発閉経によりリスクの上がる骨粗鬆症の発症を予防する効果もあります。
これとは別に、抗卵巣自己抗体と呼ばれる抗体が陽性反応を示す場合には、副腎(ふくじん) 皮質ホルモン(ステロイド剤)を用いた治療を行います。
早発閉経と診断された女性が妊娠を希望する場合、ホルモン補充療法の不妊治療を行って排卵を促すか、卵子があるうちに採卵して体外受精することで妊娠の可能性を探ります。
また、卵胞がなくなってしまうと妊娠の可能性はほとんどなくなってしまいますが、卵巣内の卵胞に原始卵胞という卵子の元となる細胞が存在する場合は、卵巣を摘出して残っていた原始卵胞のいくつかを目覚めさせて排卵を促すことができ、体外受精での妊娠、出産に成功する可能性もあります。