■用語 微小血管狭心症 [用語(ひ)]
冠動脈の末梢にある微小血管が一時的に収縮して起こる狭心症
微小血管狭心症とは、心臓の表面を取り巻く血管である冠動脈のうち、直径が0・5ミリ以下の非常に細い末梢(まっしょう)血管が一時的に収縮するために起こる狭心症。
一時的な収縮は末梢の微小血管の構造的あるいは機能的異常のために起こり、血流配分に異常を来して、心臓の筋肉である心筋が虚血状態になり、胸痛発作が生じます。
微小血管の内腔(ないくう)が狭くなって血流が阻害されるのではなく、血管の拡張が障害されるための症状といわれています。血流の需要が大きくなった時に末梢の微小血管網の一部に十分に拡張できない部位があると、周辺の拡張した微小血管網のほうに血流を奪われて、微小血管網の一部の収縮が高進するために、心筋が一時的に虚血状態になります。
胸痛発作は、階段や坂道の昇降運動といった一定の強さの運動や動作と無関係に、就寝中や早朝などの比較的安静にしている時にも起こります。
微小血管狭心症の発症者の70%は女性が占めるとされ、発症する年齢は30歳代半ばから60歳代半ばです。動脈硬化などで冠動脈が狭くなるために起こる狭心症に比べると、発症する年齢は若く、最も多いのは40歳代後半から50歳代前半の更年期前後の女性です。
この時期はエストロゲン(卵胞ホルモン)が減少し始めるとともに、人生においてもさまざまな問題を抱え、心臓に限らず心身の不調を感じる時期とも重なっています。はっきりとした原因解明にはいまだ至っていませんが、女性ホルモンが微小血管狭心症に関与していることは確実なようです。
冠動脈の狭窄(きょうさく)がないにもかかわらず冠動脈がけいれんを起こすために起こる血管攣縮(れんしゅく)性狭心症と同じように、微小血管狭心症が精神的ストレス、寒冷、大量飲酒、喫煙などが誘因となって起こることも知られています。
微小血管狭心症の症状としては、通常の狭心症で典型的にみられる胸の中央部に締め付けられるような痛みが突然起こる短時間の胸痛発作ではなく、背部痛、顎(あご)やのど、耳の後部などへの放散痛、動悸(どうき)、呼吸困難感、吐き気や胃痛などの消化器症状など多彩な不定愁訴であることが多く、その持続時間も数分ではなく数時間におよぶこともあります。
微小血管狭心症の検査と診断と治療
循環器科、循環器内科などの医師による診断では、通常の心電図検査を中心に、運動負荷心電図検査、心臓ペーシング負荷試験、冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査)などを行います。
運動負荷心電図検査では、無症状時の心電図からは狭心症であるかどうかわからないため、階段を上り下りしたり、ベルトの上を歩いたり、自転車をこいだりして心臓に運動負荷をかけることによって、心電図に現れる変化から狭心症らしいかどうか、またどの程度運動が可能かを評価します。
心臓ペーシング負荷試験では、血管を通してカテーテルという細長いチューブを心臓の冠静脈まで挿入して、心筋虚血を誘発した上で、心臓を還流して戻ってくる冠静脈血を採血し、心筋虚血のために心筋から代謝される乳酸を測定します。
冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査)では、カテーテルを心臓の冠動脈まで挿入し、造影剤を注射して冠動脈のX線撮影を行います。
運動負荷心電図検査や心臓ペーシング負荷試験で心筋虚血の存在が証明されているのに、冠動脈造影検査では狭窄が認められず、冠動脈攣縮も起こらないのであれば、微小血管狭心症を疑います。
しかし、胸痛発作時も心電図の変化に乏しく、冠動脈のX線撮影では映ってこないような微小血管の病変を想定するので、多くの場合は診断に時間を要し、診断されていないこともあります。
診断がつきにくい時には、診断的治療といって亜硝酸剤(ニトロペンなど)の舌下錠を発作時に試してみて、症状がよくなれば狭心症と考えて対応することがあります。しかし、冠動脈の大きな部位の攣縮には特効薬である亜硝酸剤が微小血管狭心症には効きにくい発症者
も認められ、亜硝酸剤の舌下錠が効かない際には狭心症と診断されず、症状を抱えたまま消化器内科や整形外科、心療内科、精神科にかかってしまうこともあります。
鑑別する疾患としては、心疾患の不整脈、食道や胃などの消化器疾患、胸部の整形外科的疾患、心身症があります。
循環器科、循環器内科などの医師による治療では、心筋の血流需要を高めないようにするためには、交感神経遮断薬が有効です。心筋の血流増加を図るのであれば、太い血管の血流を改善する亜硝酸剤が有効です。微小血管の収縮を抑制するためには、細い血管の拡張薬であるカルシウム拮抗(きっこう)薬が有効です。
つまり、治療薬については、アデノシン系の薬を避けるほかは通常の狭心症の場合と変わりがありません。これこそ特効薬といえるような薬はないのです。細い血管の拡張薬であるアデノシン系の薬は、時に微小血管網の一部の収縮を起こして逆に胸痛発作を誘発させることがあります。
予後は、通常の狭心症に比べて良好です。心筋梗塞(こうそく)や脳血管障害などを起こすことは少ないといわれていますが、中には比較的リスクの高い発症者も認められています。
最も大切になるのは、予防です。冠動脈の末梢の微小血管内皮に障害を来す原因になる高血圧、脂質異常症、糖尿病、メタボリック症候群などを適度な運動と食事で予防し、大量飲酒や喫煙をしないこと、精神的ストレスをため込まないことで、微小血管狭心症の発症も避けることできるとされています。
微小血管狭心症とは、心臓の表面を取り巻く血管である冠動脈のうち、直径が0・5ミリ以下の非常に細い末梢(まっしょう)血管が一時的に収縮するために起こる狭心症。
一時的な収縮は末梢の微小血管の構造的あるいは機能的異常のために起こり、血流配分に異常を来して、心臓の筋肉である心筋が虚血状態になり、胸痛発作が生じます。
微小血管の内腔(ないくう)が狭くなって血流が阻害されるのではなく、血管の拡張が障害されるための症状といわれています。血流の需要が大きくなった時に末梢の微小血管網の一部に十分に拡張できない部位があると、周辺の拡張した微小血管網のほうに血流を奪われて、微小血管網の一部の収縮が高進するために、心筋が一時的に虚血状態になります。
胸痛発作は、階段や坂道の昇降運動といった一定の強さの運動や動作と無関係に、就寝中や早朝などの比較的安静にしている時にも起こります。
微小血管狭心症の発症者の70%は女性が占めるとされ、発症する年齢は30歳代半ばから60歳代半ばです。動脈硬化などで冠動脈が狭くなるために起こる狭心症に比べると、発症する年齢は若く、最も多いのは40歳代後半から50歳代前半の更年期前後の女性です。
この時期はエストロゲン(卵胞ホルモン)が減少し始めるとともに、人生においてもさまざまな問題を抱え、心臓に限らず心身の不調を感じる時期とも重なっています。はっきりとした原因解明にはいまだ至っていませんが、女性ホルモンが微小血管狭心症に関与していることは確実なようです。
冠動脈の狭窄(きょうさく)がないにもかかわらず冠動脈がけいれんを起こすために起こる血管攣縮(れんしゅく)性狭心症と同じように、微小血管狭心症が精神的ストレス、寒冷、大量飲酒、喫煙などが誘因となって起こることも知られています。
微小血管狭心症の症状としては、通常の狭心症で典型的にみられる胸の中央部に締め付けられるような痛みが突然起こる短時間の胸痛発作ではなく、背部痛、顎(あご)やのど、耳の後部などへの放散痛、動悸(どうき)、呼吸困難感、吐き気や胃痛などの消化器症状など多彩な不定愁訴であることが多く、その持続時間も数分ではなく数時間におよぶこともあります。
微小血管狭心症の検査と診断と治療
循環器科、循環器内科などの医師による診断では、通常の心電図検査を中心に、運動負荷心電図検査、心臓ペーシング負荷試験、冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査)などを行います。
運動負荷心電図検査では、無症状時の心電図からは狭心症であるかどうかわからないため、階段を上り下りしたり、ベルトの上を歩いたり、自転車をこいだりして心臓に運動負荷をかけることによって、心電図に現れる変化から狭心症らしいかどうか、またどの程度運動が可能かを評価します。
心臓ペーシング負荷試験では、血管を通してカテーテルという細長いチューブを心臓の冠静脈まで挿入して、心筋虚血を誘発した上で、心臓を還流して戻ってくる冠静脈血を採血し、心筋虚血のために心筋から代謝される乳酸を測定します。
冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査)では、カテーテルを心臓の冠動脈まで挿入し、造影剤を注射して冠動脈のX線撮影を行います。
運動負荷心電図検査や心臓ペーシング負荷試験で心筋虚血の存在が証明されているのに、冠動脈造影検査では狭窄が認められず、冠動脈攣縮も起こらないのであれば、微小血管狭心症を疑います。
しかし、胸痛発作時も心電図の変化に乏しく、冠動脈のX線撮影では映ってこないような微小血管の病変を想定するので、多くの場合は診断に時間を要し、診断されていないこともあります。
診断がつきにくい時には、診断的治療といって亜硝酸剤(ニトロペンなど)の舌下錠を発作時に試してみて、症状がよくなれば狭心症と考えて対応することがあります。しかし、冠動脈の大きな部位の攣縮には特効薬である亜硝酸剤が微小血管狭心症には効きにくい発症者
も認められ、亜硝酸剤の舌下錠が効かない際には狭心症と診断されず、症状を抱えたまま消化器内科や整形外科、心療内科、精神科にかかってしまうこともあります。
鑑別する疾患としては、心疾患の不整脈、食道や胃などの消化器疾患、胸部の整形外科的疾患、心身症があります。
循環器科、循環器内科などの医師による治療では、心筋の血流需要を高めないようにするためには、交感神経遮断薬が有効です。心筋の血流増加を図るのであれば、太い血管の血流を改善する亜硝酸剤が有効です。微小血管の収縮を抑制するためには、細い血管の拡張薬であるカルシウム拮抗(きっこう)薬が有効です。
つまり、治療薬については、アデノシン系の薬を避けるほかは通常の狭心症の場合と変わりがありません。これこそ特効薬といえるような薬はないのです。細い血管の拡張薬であるアデノシン系の薬は、時に微小血管網の一部の収縮を起こして逆に胸痛発作を誘発させることがあります。
予後は、通常の狭心症に比べて良好です。心筋梗塞(こうそく)や脳血管障害などを起こすことは少ないといわれていますが、中には比較的リスクの高い発症者も認められています。
最も大切になるのは、予防です。冠動脈の末梢の微小血管内皮に障害を来す原因になる高血圧、脂質異常症、糖尿病、メタボリック症候群などを適度な運動と食事で予防し、大量飲酒や喫煙をしないこと、精神的ストレスをため込まないことで、微小血管狭心症の発症も避けることできるとされています。
■用語 火だこ [用語(ひ)]
比較的低い温熱刺激が皮膚表面に作用して生ずる紫紅色の色素沈着
火だことは、温風ヒーターや赤外線電気こたつなどからの44度以下の比較的低温の温熱刺激が長時間、あるいは繰り返し皮膚表面に作用することで生じる紫紅色の網目状、あるいは斑(まだら)状の色素沈着。温熱性紅斑(こうはん)とも呼ばれます。
暖房器具で至近距離から、火傷(やけど)を起こさない程度の温熱で温めた場合に、皮膚と毛細血管周囲の線維組織が温熱刺激で炎症を起こして、色素沈着ができます。毛細血管の走行に沿って、最初は赤くなり、次第に紫がかった紅色になってゆきます。
触っても、しこりなどはなく、かゆみも痛みもないのが一般的ですが、痂皮(かひ)や潰瘍(かいよう)、痛み、かゆみも伴うこともあります。
皮膚の深い部分に損傷がおよんでいると、低温火傷になり、水疱(すいほう)ができたりします。
温風ヒーターやハロゲンヒーター、ストーブの熱い空気の噴き出し口に当てていた皮膚や、赤外線電気こたつ、電気毛布、あんか、懐炉、火鉢、湯たんぽなどに長時間接していた皮膚などに、火だこができます。
エアコンが普及した現代では減りましたが、生活習慣がもたらした意外な原因の火だこもみられるようになりました。例えば、ホットカーペットの上でいつも同じ体位で寝ていたため、温熱刺激を受けていた側の胸から腹部に生じた例などです。最近では、自動車のヒーターや加温装置付きの椅子が原因となった例もあります。
中年から高齢の人に多く、また女性の下腿部分に多くみられます。
冬場にもスカートをはいて、机の足元に暖房器具を置いて仕事をしたりする女性では、温熱刺激がじかに下肢に作用して、太もも、ひざから下の下腿などに火だこを生じやすく、時に皮膚がんの発生素地になり、角化性小結節と呼ばれる、がん前駆症や有棘(ゆうきょく)細胞がんが発生することもあります。
通常は夏になると、色素沈着は薄くなったり消えたりしますが、原因に気付かず温熱刺激を長期間にわたって続けると色素沈着が取れにくくなります。
火だこの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、特徴的な色素沈着とその分布、経過より判断します。
似た症状があり鑑別すべき疾患としては、血の巡りに問題があって網目のように主に下肢の皮膚が赤紫色に変わるリベドー疾患(網状皮斑〔もうじょうひはん〕)があります。
治療の効果がみられない場合や経過の長い場合は、皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる組織検査を行うこともあります。また、皮膚以外にも症状が現れていないかどうかを確認するため、血液検査、尿検査、レントゲン写真など、必要に応じて検査が追加されます。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、赤みが強く、炎症を起こしている場合、ステロイド剤の塗り薬を処方します。潰瘍もあれば、潰瘍治療も併用します。
色素沈着を防ぐために、ビタミンCなどの内服薬を処方することもあります。色素沈着が残ってしまった場合は、ビタミンCなどの内服薬やハイドロキノンなどの美白作用のある外用剤を使用して、改善するようにします。
人目が気になる場合は、カバー用化粧品やファンデーションなどで目立たなくするのも一つの方法です。
火だこを予防するには。暖房器具で暖を取る際に、長時間同じ皮膚の部位が当たらないようにすること、暖房器具を皮膚の至近距離に設置しないこと、暖房器具の温度をあまり上げないこと、暖房器具に当たりながら入眠しないことなどに気を付けます。エアコンを使って、部屋全体を加温、加湿するのも有効です。
火だことは、温風ヒーターや赤外線電気こたつなどからの44度以下の比較的低温の温熱刺激が長時間、あるいは繰り返し皮膚表面に作用することで生じる紫紅色の網目状、あるいは斑(まだら)状の色素沈着。温熱性紅斑(こうはん)とも呼ばれます。
暖房器具で至近距離から、火傷(やけど)を起こさない程度の温熱で温めた場合に、皮膚と毛細血管周囲の線維組織が温熱刺激で炎症を起こして、色素沈着ができます。毛細血管の走行に沿って、最初は赤くなり、次第に紫がかった紅色になってゆきます。
触っても、しこりなどはなく、かゆみも痛みもないのが一般的ですが、痂皮(かひ)や潰瘍(かいよう)、痛み、かゆみも伴うこともあります。
皮膚の深い部分に損傷がおよんでいると、低温火傷になり、水疱(すいほう)ができたりします。
温風ヒーターやハロゲンヒーター、ストーブの熱い空気の噴き出し口に当てていた皮膚や、赤外線電気こたつ、電気毛布、あんか、懐炉、火鉢、湯たんぽなどに長時間接していた皮膚などに、火だこができます。
エアコンが普及した現代では減りましたが、生活習慣がもたらした意外な原因の火だこもみられるようになりました。例えば、ホットカーペットの上でいつも同じ体位で寝ていたため、温熱刺激を受けていた側の胸から腹部に生じた例などです。最近では、自動車のヒーターや加温装置付きの椅子が原因となった例もあります。
中年から高齢の人に多く、また女性の下腿部分に多くみられます。
冬場にもスカートをはいて、机の足元に暖房器具を置いて仕事をしたりする女性では、温熱刺激がじかに下肢に作用して、太もも、ひざから下の下腿などに火だこを生じやすく、時に皮膚がんの発生素地になり、角化性小結節と呼ばれる、がん前駆症や有棘(ゆうきょく)細胞がんが発生することもあります。
通常は夏になると、色素沈着は薄くなったり消えたりしますが、原因に気付かず温熱刺激を長期間にわたって続けると色素沈着が取れにくくなります。
火だこの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、特徴的な色素沈着とその分布、経過より判断します。
似た症状があり鑑別すべき疾患としては、血の巡りに問題があって網目のように主に下肢の皮膚が赤紫色に変わるリベドー疾患(網状皮斑〔もうじょうひはん〕)があります。
治療の効果がみられない場合や経過の長い場合は、皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる組織検査を行うこともあります。また、皮膚以外にも症状が現れていないかどうかを確認するため、血液検査、尿検査、レントゲン写真など、必要に応じて検査が追加されます。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、赤みが強く、炎症を起こしている場合、ステロイド剤の塗り薬を処方します。潰瘍もあれば、潰瘍治療も併用します。
色素沈着を防ぐために、ビタミンCなどの内服薬を処方することもあります。色素沈着が残ってしまった場合は、ビタミンCなどの内服薬やハイドロキノンなどの美白作用のある外用剤を使用して、改善するようにします。
人目が気になる場合は、カバー用化粧品やファンデーションなどで目立たなくするのも一つの方法です。
火だこを予防するには。暖房器具で暖を取る際に、長時間同じ皮膚の部位が当たらないようにすること、暖房器具を皮膚の至近距離に設置しないこと、暖房器具の温度をあまり上げないこと、暖房器具に当たりながら入眠しないことなどに気を付けます。エアコンを使って、部屋全体を加温、加湿するのも有効です。
■用語 頻脈性不整脈 [用語(ひ)]
心臓の拍動が異常に速くなり、血圧の低下を招く不整脈
頻脈性不整脈とは、心臓の拍動が異常に速くなる不整脈。
血管系統の中心器官である心臓には、4つの部屋があります。上側の右心房と左心房が、血液を受け入れる部屋です。下側の右心室と左心室が、血液を送り出す部屋です。4つの部屋がリズミカルに収縮することで、心臓は絶え間なく全身に血液を送り出すことができるのです。
このリズムを作っているのが心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分で、1分間に60~80回の電気刺激を発生させて、心臓を規則正しく収縮させています。この電気刺激が何らかの原因で正常に働かなくなることによって、拍動のリズムに乱れが生じて、不整脈が起こります。
不整脈は、拍動が速くなる頻脈性不整脈、拍動がゆっくりになる徐脈性不整脈、拍動が不規則になる期外収縮の3つに分類されます。
頻脈性不整脈は、1分間当たりの拍動が100回を大きく上回る症状をみせます。人間の血液量は一定なので拍動する回数が多くなると、1回の拍動で送り出される血液量が少なくなり、血圧の低下を招きます。
頻脈性不整脈で現れる症状としては、動悸(どうき)や血圧の低下による息苦しさなどが起こります。短時間、胸が痛くなることもあります。
原因としてもっとも多いのは、加齢によるものです。年を取ると誰でも少しずつ不整脈になっていきます。次に、ストレス、過労、睡眠不足が原因になってきます。基本的には狭心症や心筋梗塞(こうそく)とは別の疾患ですが、すでに心臓の疾患があると、不整脈になりやすいのも事実です。また、頻脈性不整脈の原因となっているのは、心臓の動きにかかわる電流に過電流を起こす部位があるためである、という研究結果もあります。
頻脈性不整脈を来す病態には、運動後などにみられる無害な洞性頻脈や、命にかかわることはほとんどない発作性上室性頻拍、心房細動のほか、心室頻拍、心室細動、WPW症候群などがあります。心室頻拍や心室細動は、放置したままでいると短時間で意識消失から突然死に至る危険性が高く、緊急な治療を必要とする重症不整脈に相当します。
心室頻拍は、心室から発生した異所性刺激によって、1分間当たりの拍動が100~200回という非常に速い発作性の頻脈を示します。血液の送り出しが阻害されて血圧も低下し、さらには心室細動に移行する可能性のある危険な病態です。
心室細動は、心室の無秩序な興奮により異常な刺激を受け、1分間当たりの拍動が300~600回と極端に速くなる病態です。心室が小刻みに不規則に震える細動を伴って、電気刺激に心臓の反応が追い付かなくなり、拍動が弱まって血液の送り出しが不能な状態となり、血圧はゼロに下がります。胸痛や不快感が起き、血液が脳や体全体に届かなくなって、細動が10秒前後続くと意識を消失、さらに10分続くと脳死に至るともいわれています。
心臓突然死の多くは心室細動が原因で、即座に心臓マッサージを開始するか、公的機関やスポーツ施設を中心に配備されている自動体外式除細動器(AED)などを用いて細動を取り除かなければ、循環停止から呼吸停止に陥り死亡します。
心室細動は、もともと心臓の筋肉が弱っている人に多く起き、拡張型心筋症やブルガダ症候群と呼ばれる珍しい心臓病を持つ人にも起きます。また、遺伝的に重症不整脈を起こしやすいタイプもあり、若者が睡眠中などの安静時や運動中に、心室細動を起こすこともあります。
若者の場合、持病がなければ心室頻拍や心室細動などの重症不整脈の兆候も現れにくく、たとえ不整脈で倒れても軽度で回復して、それに気付かない場合があって予知が難しく、突然死の原因になりやすいという特徴があります。
心室細動は活動時よりも安静時、特に睡眠時に起こりやすく、睡眠中に心室細動発作を繰り返していても本人には自覚されないこともあります。同居者がいた場合、夜間に突然もだえてうなり声を上げたり、体を突っ張ったり、失禁したりする全身症状を指摘され、初めて発作があったことがわかることもあります。睡眠時などの安静時の発作は、再発率が高くなっています。
日本国内では心臓が原因の突然死が年間7万人を超え、そのうち最も重大な直接原因が重症不整脈と考えられています。
重症不整脈は、命にかかわるものなので、まずは毎年の健康診断をきちんと受けること、そして健診で異常が見付かったり、胸の自覚症状があった際には循環器科、循環器内科、もしくは不整脈専門の不整脈科、不整脈内科を受診することが勧められます。
頻脈性不整脈の検査と診断と治療
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による診断では、検査によって症状を特定します。普通の心電図検査を中心に、胸部X線、血液検査、さらにホルター心電図、運動負荷検査、心臓超音波検査などを行います。いずれの検査も、痛みは伴いません。
ホルター心電図は、携帯式の小型の心電計を付けたまま帰宅してもらい、体を動かしている時や、寝ている時に心電図がどう変化するかをみる検査。長時間の記録ができ、不整脈の数がどれくらいあるか、危険な不整脈はないか、症状との関係はどうか、狭心症は出ていないかなどがわかります。とりわけ、日中に発作が起こりにくい不整脈を発見するのに効果を発揮します。
運動負荷検査は、階段を上り下りしたり、ベルトの上を歩いたり、自転車をこいでもらったりする検査。運動によって不整脈がどのように変わるか、狭心症が出るかどうかをチェックします。
心臓超音波検査は、心臓の形態や動きをみるもので、心臓に疾患があるかどうかが診断できます。
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による内科治療では、抗不整脈薬という拍動を正常化する働きのある薬を中心に行います。ただし、不整脈そのものを緩和、停止、予防する抗不整脈薬での治療は、症状を悪化させたり、別の不整脈を誘発したりする場合があり、慎重を要する治療法であるといえます。抗不整脈薬のほかに、抗血栓薬など不整脈の合併症を予防する薬なども用います。
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による外科治療では、頻脈性不整脈に対して、体内に挿入したカテーテル(細い管)の先端から高周波を流し、心臓の過電流になっている部位を焼き切って正常化する、カテーテル・アブレーション法という新しい治療法が行われています。この治療法は、心臓の電位を測って映像化する技術が確立したことで実現しました。
薬物療法に応じず、血行動態の急激な悪化を伴い心室頻拍、心室細動、心房粗細動などを生じる重症不整脈に対しては、直流通電(DCショック)を行います。また、慢性的に重症心室頻拍、心室細動の危険が持続する症状に対しては、植え込み型除細動器(ICD)の埋め込み手術も考慮されます。植え込み型除細動器は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置です。
治療に関しては、疾患自体の原因がはっきりしていないため対症療法に頼るしかなく、現在のところ根治療法はありません。心室細動発作を起こした際は、自動体外式除細動器(AED)、または手術で体内に固定した植え込み型除細動器(ICD)などの電気ショックで回復します。
心室細動発作を起こしたことが心電図などで確認されていたり、原因不明の心停止で心肺蘇生(そせい)を受けたことがある人では、植え込み型除細動器(ICD)の適応が勧められます。このような発症者は今後、同様の発作を繰り返すことが多く、そのぶん、植え込み型除細動器(ICD)の効果は絶大といえます。また、診断に際して行う検査においてリスクが高いと判断された場合にも、植え込みが強く勧められます。
といっても、植え込み型除細動器(ICD)の植え込みはあくまで対症療法であり、発作による突然死を減らすことはできても、発作回数自体を減らすことはできないところに限界があるといわざるを得ません。
植え込み型除細動器(ICD)は通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。治療には500万円ほどかかりますが、健康保険が利き、高額療養費の手続きをすれば、自己負担は所定の限度額ですみます。手術後は、入浴や運動もできます。
ただし、電磁波によって誤作動の危険性もあり、社会的な環境保全が待たれます。電子調理器、盗難防止用電子ゲート、大型のジェネレーター(発電機)などが、誤作動を誘発する恐れがあります。
万一、発作が起きた際の用心のため、高所など危険な場所での仕事は避けたほうがよく、車の運転も手術後の半年は原則禁止。電池取り替えのため、個人差もありますが、5〜8年ごとの再手術も必要です。確率は低いものの、手術時にリード線が肺や血管を破ってしまう気胸、血胸なども報告されています。
頻脈性不整脈とは、心臓の拍動が異常に速くなる不整脈。
血管系統の中心器官である心臓には、4つの部屋があります。上側の右心房と左心房が、血液を受け入れる部屋です。下側の右心室と左心室が、血液を送り出す部屋です。4つの部屋がリズミカルに収縮することで、心臓は絶え間なく全身に血液を送り出すことができるのです。
このリズムを作っているのが心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分で、1分間に60~80回の電気刺激を発生させて、心臓を規則正しく収縮させています。この電気刺激が何らかの原因で正常に働かなくなることによって、拍動のリズムに乱れが生じて、不整脈が起こります。
不整脈は、拍動が速くなる頻脈性不整脈、拍動がゆっくりになる徐脈性不整脈、拍動が不規則になる期外収縮の3つに分類されます。
頻脈性不整脈は、1分間当たりの拍動が100回を大きく上回る症状をみせます。人間の血液量は一定なので拍動する回数が多くなると、1回の拍動で送り出される血液量が少なくなり、血圧の低下を招きます。
頻脈性不整脈で現れる症状としては、動悸(どうき)や血圧の低下による息苦しさなどが起こります。短時間、胸が痛くなることもあります。
原因としてもっとも多いのは、加齢によるものです。年を取ると誰でも少しずつ不整脈になっていきます。次に、ストレス、過労、睡眠不足が原因になってきます。基本的には狭心症や心筋梗塞(こうそく)とは別の疾患ですが、すでに心臓の疾患があると、不整脈になりやすいのも事実です。また、頻脈性不整脈の原因となっているのは、心臓の動きにかかわる電流に過電流を起こす部位があるためである、という研究結果もあります。
頻脈性不整脈を来す病態には、運動後などにみられる無害な洞性頻脈や、命にかかわることはほとんどない発作性上室性頻拍、心房細動のほか、心室頻拍、心室細動、WPW症候群などがあります。心室頻拍や心室細動は、放置したままでいると短時間で意識消失から突然死に至る危険性が高く、緊急な治療を必要とする重症不整脈に相当します。
心室頻拍は、心室から発生した異所性刺激によって、1分間当たりの拍動が100~200回という非常に速い発作性の頻脈を示します。血液の送り出しが阻害されて血圧も低下し、さらには心室細動に移行する可能性のある危険な病態です。
心室細動は、心室の無秩序な興奮により異常な刺激を受け、1分間当たりの拍動が300~600回と極端に速くなる病態です。心室が小刻みに不規則に震える細動を伴って、電気刺激に心臓の反応が追い付かなくなり、拍動が弱まって血液の送り出しが不能な状態となり、血圧はゼロに下がります。胸痛や不快感が起き、血液が脳や体全体に届かなくなって、細動が10秒前後続くと意識を消失、さらに10分続くと脳死に至るともいわれています。
心臓突然死の多くは心室細動が原因で、即座に心臓マッサージを開始するか、公的機関やスポーツ施設を中心に配備されている自動体外式除細動器(AED)などを用いて細動を取り除かなければ、循環停止から呼吸停止に陥り死亡します。
心室細動は、もともと心臓の筋肉が弱っている人に多く起き、拡張型心筋症やブルガダ症候群と呼ばれる珍しい心臓病を持つ人にも起きます。また、遺伝的に重症不整脈を起こしやすいタイプもあり、若者が睡眠中などの安静時や運動中に、心室細動を起こすこともあります。
若者の場合、持病がなければ心室頻拍や心室細動などの重症不整脈の兆候も現れにくく、たとえ不整脈で倒れても軽度で回復して、それに気付かない場合があって予知が難しく、突然死の原因になりやすいという特徴があります。
心室細動は活動時よりも安静時、特に睡眠時に起こりやすく、睡眠中に心室細動発作を繰り返していても本人には自覚されないこともあります。同居者がいた場合、夜間に突然もだえてうなり声を上げたり、体を突っ張ったり、失禁したりする全身症状を指摘され、初めて発作があったことがわかることもあります。睡眠時などの安静時の発作は、再発率が高くなっています。
日本国内では心臓が原因の突然死が年間7万人を超え、そのうち最も重大な直接原因が重症不整脈と考えられています。
重症不整脈は、命にかかわるものなので、まずは毎年の健康診断をきちんと受けること、そして健診で異常が見付かったり、胸の自覚症状があった際には循環器科、循環器内科、もしくは不整脈専門の不整脈科、不整脈内科を受診することが勧められます。
頻脈性不整脈の検査と診断と治療
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による診断では、検査によって症状を特定します。普通の心電図検査を中心に、胸部X線、血液検査、さらにホルター心電図、運動負荷検査、心臓超音波検査などを行います。いずれの検査も、痛みは伴いません。
ホルター心電図は、携帯式の小型の心電計を付けたまま帰宅してもらい、体を動かしている時や、寝ている時に心電図がどう変化するかをみる検査。長時間の記録ができ、不整脈の数がどれくらいあるか、危険な不整脈はないか、症状との関係はどうか、狭心症は出ていないかなどがわかります。とりわけ、日中に発作が起こりにくい不整脈を発見するのに効果を発揮します。
運動負荷検査は、階段を上り下りしたり、ベルトの上を歩いたり、自転車をこいでもらったりする検査。運動によって不整脈がどのように変わるか、狭心症が出るかどうかをチェックします。
心臓超音波検査は、心臓の形態や動きをみるもので、心臓に疾患があるかどうかが診断できます。
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による内科治療では、抗不整脈薬という拍動を正常化する働きのある薬を中心に行います。ただし、不整脈そのものを緩和、停止、予防する抗不整脈薬での治療は、症状を悪化させたり、別の不整脈を誘発したりする場合があり、慎重を要する治療法であるといえます。抗不整脈薬のほかに、抗血栓薬など不整脈の合併症を予防する薬なども用います。
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による外科治療では、頻脈性不整脈に対して、体内に挿入したカテーテル(細い管)の先端から高周波を流し、心臓の過電流になっている部位を焼き切って正常化する、カテーテル・アブレーション法という新しい治療法が行われています。この治療法は、心臓の電位を測って映像化する技術が確立したことで実現しました。
薬物療法に応じず、血行動態の急激な悪化を伴い心室頻拍、心室細動、心房粗細動などを生じる重症不整脈に対しては、直流通電(DCショック)を行います。また、慢性的に重症心室頻拍、心室細動の危険が持続する症状に対しては、植え込み型除細動器(ICD)の埋め込み手術も考慮されます。植え込み型除細動器は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置です。
治療に関しては、疾患自体の原因がはっきりしていないため対症療法に頼るしかなく、現在のところ根治療法はありません。心室細動発作を起こした際は、自動体外式除細動器(AED)、または手術で体内に固定した植え込み型除細動器(ICD)などの電気ショックで回復します。
心室細動発作を起こしたことが心電図などで確認されていたり、原因不明の心停止で心肺蘇生(そせい)を受けたことがある人では、植え込み型除細動器(ICD)の適応が勧められます。このような発症者は今後、同様の発作を繰り返すことが多く、そのぶん、植え込み型除細動器(ICD)の効果は絶大といえます。また、診断に際して行う検査においてリスクが高いと判断された場合にも、植え込みが強く勧められます。
といっても、植え込み型除細動器(ICD)の植え込みはあくまで対症療法であり、発作による突然死を減らすことはできても、発作回数自体を減らすことはできないところに限界があるといわざるを得ません。
植え込み型除細動器(ICD)は通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。治療には500万円ほどかかりますが、健康保険が利き、高額療養費の手続きをすれば、自己負担は所定の限度額ですみます。手術後は、入浴や運動もできます。
ただし、電磁波によって誤作動の危険性もあり、社会的な環境保全が待たれます。電子調理器、盗難防止用電子ゲート、大型のジェネレーター(発電機)などが、誤作動を誘発する恐れがあります。
万一、発作が起きた際の用心のため、高所など危険な場所での仕事は避けたほうがよく、車の運転も手術後の半年は原則禁止。電池取り替えのため、個人差もありますが、5〜8年ごとの再手術も必要です。確率は低いものの、手術時にリード線が肺や血管を破ってしまう気胸、血胸なども報告されています。
■用語 肥大型心筋症 [用語(ひ)]
心臓の筋肉の疾患で、左心室心筋の異常肥大を特徴とする疾患
肥大型心筋症とは、心臓で血液を送り出している左心室心筋の異常肥大を特徴とし、原因または原因との関連が不明な疾患。原因として多くは、心筋収縮に関連する蛋白(たんぱく)質の遺伝子変異が認められます。
血管系統の中心器官である心臓には、4つの部屋があります。上側の右心房と左心房が、血液を受け入れる部屋です。下側の右心室と左心室が、血液を送り出す部屋です。4つの部屋がリズミカルに収縮することで、心臓は絶え間なく血液を全身に送り出すことができるのです。リズムを作っているのが心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分で、1分間に60~80回の電気刺激を発生させて、心臓を規則正しく収縮させています。
心筋が肥大して厚くなると、心臓内部の空間が狭くなって、心臓は十分な量の血液を送り出せなくなります。右心室と左心室の間にある心室中隔の上部で、左心室心筋の肥大が著しい場合には、心臓が収縮する時に左心室の血液流出路の狭窄(きょうさく)を生じるものがあり、これを閉塞(へいそく)性肥大型心筋症と呼びます。
狭窄の生じないものは、非閉塞性肥大型心筋症と呼びます。この非閉塞性肥大型心筋症の中で、肥大する部位が心臓の底の心尖(しんせん)部に限局するものは、心尖部肥大型心筋症と呼びます。
また、肥大型心筋症では、心室中隔以外の部分である左心室自由壁に比べて、心室中隔の異常肥大が著しいことが一般的なため、非対称性中隔肥大と呼ぶこともあります。
症状としては、非閉塞性肥大型心筋症では、動悸(どうき)、呼吸困難、胸部圧迫感、胸痛などが自覚症状として現れます。
閉塞性肥大型心筋症では、さらにめまい、あるいは失神が加わります。失神の多くは運動時に起こりますが、運動をすると安静時よりも心臓が強く収縮するため、左心室の血液流出路の閉塞を強めるためと考えられます。重い場合には、運動中に急死することもあります。多くみられるのは、若年者で家族歴に急死例のある人。
非閉塞性肥大型心筋症では多くの場合、無症状か症状が軽度なので、検診の心電図異常で見付かるか、自覚症状がないまま突然死でたまたま見付かることもまれではありません。
肥大型心筋症の検査と診断と治療
循環器科、循環器内科、心臓血管外科、心臓血管内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、症状、身体所見、心電図などの各種検査、特に心臓超音波検査(心エコー)の所見により、心筋肥大の分布、心臓全体の収縮力の状態を判断します。
閉塞性肥大型心筋症の場合には、左心室の血液流出路付近の狭窄部分の血流の速さを超音波ドップラー法を用いて測定し、重症度を調べます。
循環器科、循環器内科、心臓血管外科、心臓血管内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、β(ベータ)遮断剤やカルシウム拮抗(きっこう)剤、ジソピラミド(リスモダン)などを処方します。これらの薬剤は、心筋の弾力性を保ったり、左心室の血液流出路の狭窄を軽減したりする目的で用います。しかし、これらの薬剤も急死を予防できるものではありません。
閉塞性肥大型心筋症の場合には、ペースメーカーの植え込みによる治療を行うこともあります。この治療は、右心室側へ外的な電気刺激を与えて心筋の収縮リズムをコントロールすることにより、左心室側の心筋の収縮に遅れが生じて血液流出路の狭窄が著しく軽減することを利用したもので、ぺースメーカーの植え込み後はほとんどの症例で、短期間のうちに失神発作などの症状がなくなります。
心筋の異常肥大が著しい場合には、肥大している心筋に栄養を送っている冠動脈にエタノールを注入して、その心筋を部分的に壊死(えし)させたり、肥大している心筋の一部を切り取って血液が流れやすくする手術を行うこともあります。
日常生活では、自覚症状のない軽症例でも運動中の急死が起こりますから、急激な運動は避けます。
肥大型心筋症とは、心臓で血液を送り出している左心室心筋の異常肥大を特徴とし、原因または原因との関連が不明な疾患。原因として多くは、心筋収縮に関連する蛋白(たんぱく)質の遺伝子変異が認められます。
血管系統の中心器官である心臓には、4つの部屋があります。上側の右心房と左心房が、血液を受け入れる部屋です。下側の右心室と左心室が、血液を送り出す部屋です。4つの部屋がリズミカルに収縮することで、心臓は絶え間なく血液を全身に送り出すことができるのです。リズムを作っているのが心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分で、1分間に60~80回の電気刺激を発生させて、心臓を規則正しく収縮させています。
心筋が肥大して厚くなると、心臓内部の空間が狭くなって、心臓は十分な量の血液を送り出せなくなります。右心室と左心室の間にある心室中隔の上部で、左心室心筋の肥大が著しい場合には、心臓が収縮する時に左心室の血液流出路の狭窄(きょうさく)を生じるものがあり、これを閉塞(へいそく)性肥大型心筋症と呼びます。
狭窄の生じないものは、非閉塞性肥大型心筋症と呼びます。この非閉塞性肥大型心筋症の中で、肥大する部位が心臓の底の心尖(しんせん)部に限局するものは、心尖部肥大型心筋症と呼びます。
また、肥大型心筋症では、心室中隔以外の部分である左心室自由壁に比べて、心室中隔の異常肥大が著しいことが一般的なため、非対称性中隔肥大と呼ぶこともあります。
症状としては、非閉塞性肥大型心筋症では、動悸(どうき)、呼吸困難、胸部圧迫感、胸痛などが自覚症状として現れます。
閉塞性肥大型心筋症では、さらにめまい、あるいは失神が加わります。失神の多くは運動時に起こりますが、運動をすると安静時よりも心臓が強く収縮するため、左心室の血液流出路の閉塞を強めるためと考えられます。重い場合には、運動中に急死することもあります。多くみられるのは、若年者で家族歴に急死例のある人。
非閉塞性肥大型心筋症では多くの場合、無症状か症状が軽度なので、検診の心電図異常で見付かるか、自覚症状がないまま突然死でたまたま見付かることもまれではありません。
肥大型心筋症の検査と診断と治療
循環器科、循環器内科、心臓血管外科、心臓血管内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、症状、身体所見、心電図などの各種検査、特に心臓超音波検査(心エコー)の所見により、心筋肥大の分布、心臓全体の収縮力の状態を判断します。
閉塞性肥大型心筋症の場合には、左心室の血液流出路付近の狭窄部分の血流の速さを超音波ドップラー法を用いて測定し、重症度を調べます。
循環器科、循環器内科、心臓血管外科、心臓血管内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、β(ベータ)遮断剤やカルシウム拮抗(きっこう)剤、ジソピラミド(リスモダン)などを処方します。これらの薬剤は、心筋の弾力性を保ったり、左心室の血液流出路の狭窄を軽減したりする目的で用います。しかし、これらの薬剤も急死を予防できるものではありません。
閉塞性肥大型心筋症の場合には、ペースメーカーの植え込みによる治療を行うこともあります。この治療は、右心室側へ外的な電気刺激を与えて心筋の収縮リズムをコントロールすることにより、左心室側の心筋の収縮に遅れが生じて血液流出路の狭窄が著しく軽減することを利用したもので、ぺースメーカーの植え込み後はほとんどの症例で、短期間のうちに失神発作などの症状がなくなります。
心筋の異常肥大が著しい場合には、肥大している心筋に栄養を送っている冠動脈にエタノールを注入して、その心筋を部分的に壊死(えし)させたり、肥大している心筋の一部を切り取って血液が流れやすくする手術を行うこともあります。
日常生活では、自覚症状のない軽症例でも運動中の急死が起こりますから、急激な運動は避けます。