■用語 有棘細胞がん [用語(ゆ)]
表皮の有棘層の細胞ががん化する皮膚がん
有棘(ゆうきょく)細胞がんとは、表皮の有棘層の細胞ががん化する皮膚がん。日本人に多い皮膚がんの1つで、基底細胞がんに次いで発生頻度が高くなっています。
皮膚は、表面から表皮、真皮、その深部の皮下組織の3層から構成されています。表皮は、さらに表面側から順に、角質層、顆粒(かりゅう)層、有棘層、基底層の4層に分けられます。表皮の最下層である基底層は、真皮と接しています。真皮には、血管、神経、毛嚢(もうのう)、脂腺(しせん)、汗腺、立毛筋などの組織があります。
有棘細胞がんは、表皮の中間層を占める有棘層を構成する細胞から発生します。
長年にわたり日光に含まれる紫外線を浴び続けた顔面、耳、前腕、手の甲などの皮膚に、光線角化症(日光角化症)と呼ばれる、かさつきのある紅斑(こうはん)ができることがあります。口唇、主に下唇にも同じような病変ができることがあり、光線性口唇炎(日光口唇炎)と呼ばれます。光線角化症と光線性口唇炎は、ごく早期の有棘細胞がんに相当し、がん細胞は表皮のみにとどまり、表皮内がんとも呼ばれます。また、原因が特定できない表皮内がんをボーエン病と呼びます。
光線角化症、光線性口唇炎、ボーエン病のいずれも進行すると、皮膚の深部に浸潤し、角質を多く含む組織に変化する角化を伴う腫瘍(しゅよう)や潰瘍(かいよう)を形成し悪臭を伴うようになり、リンパ節転移や遠隔転移を起こすことがあります。
有棘細胞がんの原因として最も多いのは日光に含まれる紫外線、特に中波長紫外線に長期間にわたって当たることですが、やけどの跡(熱傷瘢痕〈はんこん〉)、放射線による皮膚炎、慢性の炎症(骨髄炎、褥瘡〈じょくそう〉、膿皮〈のうひ〉症など)、パピローマウイルスの感染、タールの長期暴露、慢性ヒ素中毒など、さまざまな原因で有棘細胞がんが発生することがあります。
有棘細胞がんの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍科の医師による診断では、視診で見当がつきますが、診断を確定するためには、局所麻酔をして皮膚病変の一部を切り取り切り顕微鏡で調べる生検と、これまでの生活歴の把握が必要です。
そのほかに、腫瘍の浸潤の深さや転移など、病変の広がりを調べるために、超音波(エコー)検査を始め、CTやMRI、PETと呼ばれる画像検査を行うこともあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍科の医師による治療では、光線角化症やボーエン病のような表皮内がんの段階であれば、病変の切除で完治します。
また、顔や頭部に発生した光線角化症では、病変の切除のほかに、イミキモド(ベセルナクリーム)による外用治療が可能な場合もあります。イミキモドを塗布すると皮膚の免疫系を活性化し、強い炎症を起こすことでがん細胞を除去する効果があります。欠点として、塗布した皮と膚が荒れて、びらん、痛みが出ることがあること、治療期間が2〜4カ月と比較的長いことが挙げられます。また、角化が強い場合は効果がないことがあります。
有棘細胞がんに進行した場合は、原則として手術により切除します。病変の進行度にもよりますが、通常、病変辺縁より0・5〜2センチ程度離して切除します。切除後の皮膚欠損が大きくなった場合には、植皮や皮弁などの再建手術を行います。
再発の危険性が高い場合は、手術後に放射線治療を追加することがあります。また、手術ができない場合や遠隔転移がある場合は、放射線治療、抗がん剤治療を単独あるいは組み合わせて行います。
放射線を照射する放射線治療は、手術に比べ根治率はやや劣るものの比較的高い効果があり、有棘細胞がんにもしばしば適用されています。しかし、切除する治療である手術に比べると、がん細胞が残ってしまったり、その結果として再発しやすかったりするため、体の調子がよくないなど手術ができない場合に行われたり、目の周囲などがんが発生した部位などの理由から手術が勧められない場合に実施されることが多くなっています。また、最初に手術した結果、顕微鏡の検査で取り切れなかったことが確認された場合に、再手術の代わりに放射線治療が行われることもあります。
抗がん剤治療は通常、手術不可能な進行例に適用します。また、化学放射線療法として、放射線治療と組み合わせて同時に行うことがあります。
病気の進行を遅らせることを目標にした抗がん剤治療として、主にシスプラチン(カルボプラチン)とアドリアシン(エピルビシン)を併用するCA療法のほか、イリノテカン(CPTー11)などが使用されています。しかし、有棘細胞がんに対する効き目が得られないこともあります。
有棘(ゆうきょく)細胞がんとは、表皮の有棘層の細胞ががん化する皮膚がん。日本人に多い皮膚がんの1つで、基底細胞がんに次いで発生頻度が高くなっています。
皮膚は、表面から表皮、真皮、その深部の皮下組織の3層から構成されています。表皮は、さらに表面側から順に、角質層、顆粒(かりゅう)層、有棘層、基底層の4層に分けられます。表皮の最下層である基底層は、真皮と接しています。真皮には、血管、神経、毛嚢(もうのう)、脂腺(しせん)、汗腺、立毛筋などの組織があります。
有棘細胞がんは、表皮の中間層を占める有棘層を構成する細胞から発生します。
長年にわたり日光に含まれる紫外線を浴び続けた顔面、耳、前腕、手の甲などの皮膚に、光線角化症(日光角化症)と呼ばれる、かさつきのある紅斑(こうはん)ができることがあります。口唇、主に下唇にも同じような病変ができることがあり、光線性口唇炎(日光口唇炎)と呼ばれます。光線角化症と光線性口唇炎は、ごく早期の有棘細胞がんに相当し、がん細胞は表皮のみにとどまり、表皮内がんとも呼ばれます。また、原因が特定できない表皮内がんをボーエン病と呼びます。
光線角化症、光線性口唇炎、ボーエン病のいずれも進行すると、皮膚の深部に浸潤し、角質を多く含む組織に変化する角化を伴う腫瘍(しゅよう)や潰瘍(かいよう)を形成し悪臭を伴うようになり、リンパ節転移や遠隔転移を起こすことがあります。
有棘細胞がんの原因として最も多いのは日光に含まれる紫外線、特に中波長紫外線に長期間にわたって当たることですが、やけどの跡(熱傷瘢痕〈はんこん〉)、放射線による皮膚炎、慢性の炎症(骨髄炎、褥瘡〈じょくそう〉、膿皮〈のうひ〉症など)、パピローマウイルスの感染、タールの長期暴露、慢性ヒ素中毒など、さまざまな原因で有棘細胞がんが発生することがあります。
有棘細胞がんの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍科の医師による診断では、視診で見当がつきますが、診断を確定するためには、局所麻酔をして皮膚病変の一部を切り取り切り顕微鏡で調べる生検と、これまでの生活歴の把握が必要です。
そのほかに、腫瘍の浸潤の深さや転移など、病変の広がりを調べるために、超音波(エコー)検査を始め、CTやMRI、PETと呼ばれる画像検査を行うこともあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍科の医師による治療では、光線角化症やボーエン病のような表皮内がんの段階であれば、病変の切除で完治します。
また、顔や頭部に発生した光線角化症では、病変の切除のほかに、イミキモド(ベセルナクリーム)による外用治療が可能な場合もあります。イミキモドを塗布すると皮膚の免疫系を活性化し、強い炎症を起こすことでがん細胞を除去する効果があります。欠点として、塗布した皮と膚が荒れて、びらん、痛みが出ることがあること、治療期間が2〜4カ月と比較的長いことが挙げられます。また、角化が強い場合は効果がないことがあります。
有棘細胞がんに進行した場合は、原則として手術により切除します。病変の進行度にもよりますが、通常、病変辺縁より0・5〜2センチ程度離して切除します。切除後の皮膚欠損が大きくなった場合には、植皮や皮弁などの再建手術を行います。
再発の危険性が高い場合は、手術後に放射線治療を追加することがあります。また、手術ができない場合や遠隔転移がある場合は、放射線治療、抗がん剤治療を単独あるいは組み合わせて行います。
放射線を照射する放射線治療は、手術に比べ根治率はやや劣るものの比較的高い効果があり、有棘細胞がんにもしばしば適用されています。しかし、切除する治療である手術に比べると、がん細胞が残ってしまったり、その結果として再発しやすかったりするため、体の調子がよくないなど手術ができない場合に行われたり、目の周囲などがんが発生した部位などの理由から手術が勧められない場合に実施されることが多くなっています。また、最初に手術した結果、顕微鏡の検査で取り切れなかったことが確認された場合に、再手術の代わりに放射線治療が行われることもあります。
抗がん剤治療は通常、手術不可能な進行例に適用します。また、化学放射線療法として、放射線治療と組み合わせて同時に行うことがあります。
病気の進行を遅らせることを目標にした抗がん剤治療として、主にシスプラチン(カルボプラチン)とアドリアシン(エピルビシン)を併用するCA療法のほか、イリノテカン(CPTー11)などが使用されています。しかし、有棘細胞がんに対する効き目が得られないこともあります。
■用語 ゆう状胃炎 [用語(ゆ)]
びらん性胃炎の一種で、胃の粘膜表面に多数の隆起が現れる疾患
ゆう状胃炎とは、びらん性胃炎の一種で、胃の粘膜表面が隆起して、中心部にびらんと呼ばれるただれた状態を浅く認める疾患。いぼ状胃炎、たこいぼ胃炎、隆起型びらん性胃炎とも呼ばれます。
多数の隆起が現れることが多く、胃の出口近くの幽門前庭部に主として生じるほか、胃底腺(せん)、幽門腺境界領域にも生じます。
隆起の形状から、足の裏にできるたこ、いぼのような形を示すたこいぼ型、棍棒(こんぼう)型、ポリープ型(球型)、蛇行型(数珠型)に分類されます。
また、胃の粘膜表面の隆起が低めで3カ月以内の短期間に消える消失型と、隆起が高めで長期間にわたって消えない存続型とがあります。消失型をびらん性胃炎と呼び、存続型のみをゆう状胃炎と呼ぶ場合もあります。
原因としては、アルコールの摂取などの食習慣、胃酸の過分泌、ストレスなどが考えられます。ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が原因となることは、まれです。
症状としては、特に決まったものはなく、自覚症状がない場合もあります。一般的には、上腹部の不快感やもたれ、食後の胸焼け、胃痛、吐き気や嘔吐(おうと)がみられます。
胃・十二指腸潰瘍(かいよう)を合併することもあります。
ゆう状胃炎の検査と診断と治療
内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による診断では、内視鏡検査を行い、多発性で隆起性の斑(まだら)状また点状のびらんを認めれば、ゆう状胃炎と確定します。場合によっては、内視鏡観察下でびらんの一部を採取して、顕微鏡で組織を調べる生検を行います。
内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による治療では、無症状であれば経過観察となります。
症状が強ければ、アルコールといった原因物質の除去と、胃酸の分泌を抑える胃酸分泌抑制剤であるヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤、あるいはプロトンポンプ阻害剤を投与します。
なお、存続型のゆう状胃炎では長期間その変化が見られないことが多く、ケースによっては良性有茎性ポリープへ病変することもあります。
胃炎の治療には生活習慣が密接にかかわってくるため、生活習慣の改善を心掛け、再発の予防をする必要もあります。
食事を抜くと胃腸の運動に変化が起こり、胃酸の刺激を受けやすくなったり、胃酸が出すぎたりします。きちんとした食生活に努め、刺激性の強い食べ物の摂取を控えます。
塩辛い食べ物、甘すぎる食べ物、冷たすぎる飲み物、熱すぎる飲み物、炭酸飲料などは控えるようにします。コーヒー、お茶などカフェインを多く含む飲み物には、胃粘膜を刺激する働きがあり、特に空腹時には控えたほうがいいようです。
十分な睡眠時間の確保は、胃炎の再発防止に欠かせません。睡眠不足が続くと夜間に胃酸の分泌が促され、胃の粘膜に悪影響を与えます。睡眠不足自体が、ストレスの原因にもなります。
運動は血行を促進し、消化管の機能を活発にします。また、ストレスの発散にも有効です。休養や運動を含め、ゆとりあるライフスタイルを心掛けることも、再発防止には重要です。
ゆう状胃炎とは、びらん性胃炎の一種で、胃の粘膜表面が隆起して、中心部にびらんと呼ばれるただれた状態を浅く認める疾患。いぼ状胃炎、たこいぼ胃炎、隆起型びらん性胃炎とも呼ばれます。
多数の隆起が現れることが多く、胃の出口近くの幽門前庭部に主として生じるほか、胃底腺(せん)、幽門腺境界領域にも生じます。
隆起の形状から、足の裏にできるたこ、いぼのような形を示すたこいぼ型、棍棒(こんぼう)型、ポリープ型(球型)、蛇行型(数珠型)に分類されます。
また、胃の粘膜表面の隆起が低めで3カ月以内の短期間に消える消失型と、隆起が高めで長期間にわたって消えない存続型とがあります。消失型をびらん性胃炎と呼び、存続型のみをゆう状胃炎と呼ぶ場合もあります。
原因としては、アルコールの摂取などの食習慣、胃酸の過分泌、ストレスなどが考えられます。ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が原因となることは、まれです。
症状としては、特に決まったものはなく、自覚症状がない場合もあります。一般的には、上腹部の不快感やもたれ、食後の胸焼け、胃痛、吐き気や嘔吐(おうと)がみられます。
胃・十二指腸潰瘍(かいよう)を合併することもあります。
ゆう状胃炎の検査と診断と治療
内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による診断では、内視鏡検査を行い、多発性で隆起性の斑(まだら)状また点状のびらんを認めれば、ゆう状胃炎と確定します。場合によっては、内視鏡観察下でびらんの一部を採取して、顕微鏡で組織を調べる生検を行います。
内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による治療では、無症状であれば経過観察となります。
症状が強ければ、アルコールといった原因物質の除去と、胃酸の分泌を抑える胃酸分泌抑制剤であるヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤、あるいはプロトンポンプ阻害剤を投与します。
なお、存続型のゆう状胃炎では長期間その変化が見られないことが多く、ケースによっては良性有茎性ポリープへ病変することもあります。
胃炎の治療には生活習慣が密接にかかわってくるため、生活習慣の改善を心掛け、再発の予防をする必要もあります。
食事を抜くと胃腸の運動に変化が起こり、胃酸の刺激を受けやすくなったり、胃酸が出すぎたりします。きちんとした食生活に努め、刺激性の強い食べ物の摂取を控えます。
塩辛い食べ物、甘すぎる食べ物、冷たすぎる飲み物、熱すぎる飲み物、炭酸飲料などは控えるようにします。コーヒー、お茶などカフェインを多く含む飲み物には、胃粘膜を刺激する働きがあり、特に空腹時には控えたほうがいいようです。
十分な睡眠時間の確保は、胃炎の再発防止に欠かせません。睡眠不足が続くと夜間に胃酸の分泌が促され、胃の粘膜に悪影響を与えます。睡眠不足自体が、ストレスの原因にもなります。
運動は血行を促進し、消化管の機能を活発にします。また、ストレスの発散にも有効です。休養や運動を含め、ゆとりあるライフスタイルを心掛けることも、再発防止には重要です。
■用語 有痛性ベネット病変 [用語(ゆ)]
野球などでの肩の使いすぎにより、肩甲骨後下方に骨のとげが形成され、痛みを伴う状態
有痛性ベネット病変とは、野球のピッチャーなどの投球動作による肩の使いすぎにより、肩甲骨後下方に骨のとげである骨棘(こっきょく)が形成され、痛みを伴う状態。
有痛性ベネット病変は、上腕を肩より上に上げてボールなどを投げたり、打ったりするオーバーヘッドスローイング動作を行うスポーツ全般で生じ、野球のピッチャー、キャッチャーのほか、バレーボールのアタッカー、アメリカンフットボールのクォーターバック、あるいはサーブやスマッシュを行うテニス、ハンドボール、陸上競技のやり投げ、水泳のクロールとバタフライなどでも生じます。
オーバーヘッドスローイング動作では、ボールなどを投げると同時に腕全体も放り投げてしまう状態になるため、腕の裏側の筋肉である上腕三頭筋や肩関節内部にある関節包、関節唇といった軟部組織は腕を支えようとします。その時にこれらの筋がついている肩甲骨後下方あたりには常に引っ張られる力が加わり、関節包付着部が硬くなります。
硬くなった関節包付着部は骨化現象を起こし、骨棘が形成されて骨が盛り上がり、弾力性を失うことがあります。これをベネット病変といいます。
野球などを長年続けてきた人には、ベネット病変がみられることがあり、通常痛みを伴うことはありません。
ベネット病変が進行して、痛みを伴う有痛性ベネット病変を生じると、野球のピッチャーの投球動作では、ワインドアップ時に肩の後ろに痛みが走り、加速時とフォロースルー時に肩の外後方から上腕外側の上腕三頭筋部にかけて激痛が走ります。全力投球ができなくなり、一度痛みが出ると、数日投げられなくなることもあります。
痛みの発現には、上腕に走行する腋窩(えきか)神経による刺激が関与し、後方関節唇の損傷や、肩関節で上腕を保持している腱板(けんばん)という筋肉と腱の複合体の損傷を伴っている場合が多くみられます。
有痛性ベネット病変の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、触診で肩甲骨後下方の関節包付着部に骨性の盛り上がりを感知することがあります。また、上腕の水平内転・内旋時の痛みと、肩関節の運動制限を感知することもあります。
X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、関節包付着部の骨棘が確認できます。MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、後方関節唇と腱板後方の損傷を確認できることがあります。
整形外科の医師による治療では、特に痛みがひどくない場合は、骨棘部への局所麻酔剤の注射や、ステロイド剤の注射を行います。
リハビリで、後方関節包の拘縮に対するストレッチング、腱板の強化訓練を目的として、上腕三頭筋や肩関節により近いローテーターカフである後方の小円筋や棘下筋の強化訓練、肩に負担のかからない投球フォームの指導を行います。
痛みがひどい場合や、スポーツへの復帰を希望する場合は、関節鏡手術で骨棘を切除したり、腋窩神経を剥離したりする場合もあります。
なお、骨化現象があるだけで痛みのないベネット病変の場合は、異常とは判断せず治療対象としません。
有痛性ベネット病変とは、野球のピッチャーなどの投球動作による肩の使いすぎにより、肩甲骨後下方に骨のとげである骨棘(こっきょく)が形成され、痛みを伴う状態。
有痛性ベネット病変は、上腕を肩より上に上げてボールなどを投げたり、打ったりするオーバーヘッドスローイング動作を行うスポーツ全般で生じ、野球のピッチャー、キャッチャーのほか、バレーボールのアタッカー、アメリカンフットボールのクォーターバック、あるいはサーブやスマッシュを行うテニス、ハンドボール、陸上競技のやり投げ、水泳のクロールとバタフライなどでも生じます。
オーバーヘッドスローイング動作では、ボールなどを投げると同時に腕全体も放り投げてしまう状態になるため、腕の裏側の筋肉である上腕三頭筋や肩関節内部にある関節包、関節唇といった軟部組織は腕を支えようとします。その時にこれらの筋がついている肩甲骨後下方あたりには常に引っ張られる力が加わり、関節包付着部が硬くなります。
硬くなった関節包付着部は骨化現象を起こし、骨棘が形成されて骨が盛り上がり、弾力性を失うことがあります。これをベネット病変といいます。
野球などを長年続けてきた人には、ベネット病変がみられることがあり、通常痛みを伴うことはありません。
ベネット病変が進行して、痛みを伴う有痛性ベネット病変を生じると、野球のピッチャーの投球動作では、ワインドアップ時に肩の後ろに痛みが走り、加速時とフォロースルー時に肩の外後方から上腕外側の上腕三頭筋部にかけて激痛が走ります。全力投球ができなくなり、一度痛みが出ると、数日投げられなくなることもあります。
痛みの発現には、上腕に走行する腋窩(えきか)神経による刺激が関与し、後方関節唇の損傷や、肩関節で上腕を保持している腱板(けんばん)という筋肉と腱の複合体の損傷を伴っている場合が多くみられます。
有痛性ベネット病変の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、触診で肩甲骨後下方の関節包付着部に骨性の盛り上がりを感知することがあります。また、上腕の水平内転・内旋時の痛みと、肩関節の運動制限を感知することもあります。
X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、関節包付着部の骨棘が確認できます。MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、後方関節唇と腱板後方の損傷を確認できることがあります。
整形外科の医師による治療では、特に痛みがひどくない場合は、骨棘部への局所麻酔剤の注射や、ステロイド剤の注射を行います。
リハビリで、後方関節包の拘縮に対するストレッチング、腱板の強化訓練を目的として、上腕三頭筋や肩関節により近いローテーターカフである後方の小円筋や棘下筋の強化訓練、肩に負担のかからない投球フォームの指導を行います。
痛みがひどい場合や、スポーツへの復帰を希望する場合は、関節鏡手術で骨棘を切除したり、腋窩神経を剥離したりする場合もあります。
なお、骨化現象があるだけで痛みのないベネット病変の場合は、異常とは判断せず治療対象としません。
■用語 有痛性筋けいれん [用語(ゆ)]
運動中や睡眠中に、ふくらはぎの筋肉が突然、けいれんして激しい痛みを伴う状態
有痛性筋けいれんとは、ふくらはぎの筋肉が突然、けいれんして激しい痛みを伴う状態。腓腹(ひふく)筋けいれん、こむら返り、こぶら返り、筋クランプとも呼ばれます。
同じような有痛性の筋肉のけいれんは、太もも、足の裏、首、腹などにも起こります。有痛性筋けいれんが起こりやすいのは、登山や水泳などの運動中や睡眠中。立ち仕事の多い人や、高齢者に多くみられます。局所的けいれんは無痛なケースが多いものの、一般的には激痛を伴います。
原因の多くは筋肉の疲れや冷え、運動不足、いつもと違う動きをしたことなどによるものです。血液の電解質異常、腎臓(じんぞう)や心臓の病気、糖尿病、腰椎(ようつい)の病気などが原因で起こる場合もあります。
人間の体は、筋肉の収縮と弛緩(しかん)を調節することによって、バランスのとれた動きをします。この筋肉の調節の仕組みは、脳や脊髄(せきずい)などの中枢神経からの信号が末梢(まっしょう)神経を通って筋肉に送られて、筋肉の収縮が起こり、次に筋肉や腱(けん)のセンサーから逆方向に信号が中枢神経に送られ、どれくらい収縮するか弛緩するかが決められています。
有痛性筋けいれんは、この仕組みの中で起こる異常収縮で、ふくらはぎの腓腹筋が異常な緊張を起こし、収縮したまま弛緩しない状態になり、激しい痛みを伴います。
筋肉の異常収縮が起こる理由は、2つ考えられます。1つは、神経や筋肉が刺激を受けやすい状態になっていることです。運動などで多量の汗をかいた時は、血液中のナトリウムやカリウムなどの電解質のバランスが崩れ、神経や筋肉が興奮しやすくなります。
もう1つは、筋肉や腱のセンサーがうまく作動しないことで、立ち仕事の後や、久しぶりに運動した後、加齢とともに夜に起こりやすくなる有痛性筋けいれんなどに相当します。足の筋肉が緊張した状態が長時間持続すると、センサーが常に刺激された状態に置かれ、やがてセンサーがうまく働かなくなります。この時に、ふくらはぎに余分な力がかかるとセンサーが過剰に反応し、異常な収縮が引き起こされ有痛性筋けいれんが起こります。
高齢者では、慢性の運動不足のために常に腓腹筋が緊張した状態にあり、少し脚を伸ばしたりふくらはぎを打っただけでも、有痛性筋けいれんを起こすことがあります。
また、寝ている時は脚の温度が低下し、センサーの感度が鈍くなることも理由に挙げらます。布団の重みや重力のため足先が伸びた状態になっていることも、有痛性筋けいれんを起こしやすくします。寝ていて伸びをする時に、かかとを前に出すようにすると少なくなります。
ほとんどの有痛性筋けいれんは病気とは無関係に起こるものですが、健康な人でも夏に多量の汗をかいた時に水だけ飲んで電解質が補給されないと、熱けいれんと呼ばれる有痛性筋けいれんを起こすので危険です。妊娠中のカルシウム不足、下痢によるカリウム不足などでも起こりやすくなります。
利尿剤やある種の漢方薬、民間薬などの薬剤も、電解質バランスを崩すことがあります。アルコール依存症や胃摘出後数年たってからビタミン欠乏によって起こることもあり、近年では、若者の食生活の偏りによるビタミンB1不足によって起こることも増加しています。
腎臓や心臓の病気、糖尿病のほか、ある種の筋肉や神経の病気、甲状腺の病気でも、有痛性筋けいれんが起こりやすくなることがあります。腰椎の変形が原因で、脊髄神経を圧迫するために神経の異常な興奮が起こりやすくなり、有痛性筋けいれんを起こすこともあります。
有痛性筋けいれんの対策と軽減策
頑固な有痛性筋けいれんや、足以外の筋肉にけいれんが起こる場合は、整形外科、内科、内分泌代謝科、老人科などの医師による診察が必要です。
医師による治療では、基礎疾患があればその改善を図るのが原則で、有痛性筋けいれんがひどい時には、筋弛緩薬、抗不安薬、漢方薬などを用い、電解質を改善する薬、タウリン、糖尿病の合併症に使用する薬を用いることもあります。一般的には、ビタミンEを摂取すると効果的といわれています。
薬の内服で症状が改善すれば、薬は減量または中止することが望ましく、再発するようであればその都度内服するようにします。
スポーツや立ち仕事の後では、筋肉の疲労をとることが予防に大切。血行をよくする意味からスポーツマッサージや指圧などを早めに行い、スポーツドリンクなどで水分と電解質の補給を心掛けます。
また、慢性的な有痛性筋けいれんでは運動不足の注意信号と考え、ふだんから脚のストレッチやマッサージをすることが予防になります。寝る前に、軽いストレッチやマッサージをするのもお勧めです。
カリウムやカルシウム、マグネシウムなどの電解質を補給するために、野菜や果物、海藻類、牛乳、小魚などをバランスよく食べることも、予防に役立ちます。ビタミンB1も筋肉代謝には重要な成分といえるので、多くを含む卵や豚肉、ぬか漬けなどを食べるようにします。
予防に心掛けても有痛性筋けいれんが起きてしまった時は、片方の手で痛いところを優しくさすって、もう片方の手で足のつま先をゆっくり顔の方へ曲げるようにして、ふくらはぎの筋肉をよく伸ばします。そうすれば、少しずつ痛みは治まります。
詳しい病気解説は健康創造塾(http://ksjuku.com)へどうぞ
健康創造塾i−mode版(http://ksjuku.com/i.html)、au版(http://ksjuku.com/e.html)、Yahoo!ケータイ版(http://ksjuku.com/v.html)へも寄り道してください
有痛性筋けいれんとは、ふくらはぎの筋肉が突然、けいれんして激しい痛みを伴う状態。腓腹(ひふく)筋けいれん、こむら返り、こぶら返り、筋クランプとも呼ばれます。
同じような有痛性の筋肉のけいれんは、太もも、足の裏、首、腹などにも起こります。有痛性筋けいれんが起こりやすいのは、登山や水泳などの運動中や睡眠中。立ち仕事の多い人や、高齢者に多くみられます。局所的けいれんは無痛なケースが多いものの、一般的には激痛を伴います。
原因の多くは筋肉の疲れや冷え、運動不足、いつもと違う動きをしたことなどによるものです。血液の電解質異常、腎臓(じんぞう)や心臓の病気、糖尿病、腰椎(ようつい)の病気などが原因で起こる場合もあります。
人間の体は、筋肉の収縮と弛緩(しかん)を調節することによって、バランスのとれた動きをします。この筋肉の調節の仕組みは、脳や脊髄(せきずい)などの中枢神経からの信号が末梢(まっしょう)神経を通って筋肉に送られて、筋肉の収縮が起こり、次に筋肉や腱(けん)のセンサーから逆方向に信号が中枢神経に送られ、どれくらい収縮するか弛緩するかが決められています。
有痛性筋けいれんは、この仕組みの中で起こる異常収縮で、ふくらはぎの腓腹筋が異常な緊張を起こし、収縮したまま弛緩しない状態になり、激しい痛みを伴います。
筋肉の異常収縮が起こる理由は、2つ考えられます。1つは、神経や筋肉が刺激を受けやすい状態になっていることです。運動などで多量の汗をかいた時は、血液中のナトリウムやカリウムなどの電解質のバランスが崩れ、神経や筋肉が興奮しやすくなります。
もう1つは、筋肉や腱のセンサーがうまく作動しないことで、立ち仕事の後や、久しぶりに運動した後、加齢とともに夜に起こりやすくなる有痛性筋けいれんなどに相当します。足の筋肉が緊張した状態が長時間持続すると、センサーが常に刺激された状態に置かれ、やがてセンサーがうまく働かなくなります。この時に、ふくらはぎに余分な力がかかるとセンサーが過剰に反応し、異常な収縮が引き起こされ有痛性筋けいれんが起こります。
高齢者では、慢性の運動不足のために常に腓腹筋が緊張した状態にあり、少し脚を伸ばしたりふくらはぎを打っただけでも、有痛性筋けいれんを起こすことがあります。
また、寝ている時は脚の温度が低下し、センサーの感度が鈍くなることも理由に挙げらます。布団の重みや重力のため足先が伸びた状態になっていることも、有痛性筋けいれんを起こしやすくします。寝ていて伸びをする時に、かかとを前に出すようにすると少なくなります。
ほとんどの有痛性筋けいれんは病気とは無関係に起こるものですが、健康な人でも夏に多量の汗をかいた時に水だけ飲んで電解質が補給されないと、熱けいれんと呼ばれる有痛性筋けいれんを起こすので危険です。妊娠中のカルシウム不足、下痢によるカリウム不足などでも起こりやすくなります。
利尿剤やある種の漢方薬、民間薬などの薬剤も、電解質バランスを崩すことがあります。アルコール依存症や胃摘出後数年たってからビタミン欠乏によって起こることもあり、近年では、若者の食生活の偏りによるビタミンB1不足によって起こることも増加しています。
腎臓や心臓の病気、糖尿病のほか、ある種の筋肉や神経の病気、甲状腺の病気でも、有痛性筋けいれんが起こりやすくなることがあります。腰椎の変形が原因で、脊髄神経を圧迫するために神経の異常な興奮が起こりやすくなり、有痛性筋けいれんを起こすこともあります。
有痛性筋けいれんの対策と軽減策
頑固な有痛性筋けいれんや、足以外の筋肉にけいれんが起こる場合は、整形外科、内科、内分泌代謝科、老人科などの医師による診察が必要です。
医師による治療では、基礎疾患があればその改善を図るのが原則で、有痛性筋けいれんがひどい時には、筋弛緩薬、抗不安薬、漢方薬などを用い、電解質を改善する薬、タウリン、糖尿病の合併症に使用する薬を用いることもあります。一般的には、ビタミンEを摂取すると効果的といわれています。
薬の内服で症状が改善すれば、薬は減量または中止することが望ましく、再発するようであればその都度内服するようにします。
スポーツや立ち仕事の後では、筋肉の疲労をとることが予防に大切。血行をよくする意味からスポーツマッサージや指圧などを早めに行い、スポーツドリンクなどで水分と電解質の補給を心掛けます。
また、慢性的な有痛性筋けいれんでは運動不足の注意信号と考え、ふだんから脚のストレッチやマッサージをすることが予防になります。寝る前に、軽いストレッチやマッサージをするのもお勧めです。
カリウムやカルシウム、マグネシウムなどの電解質を補給するために、野菜や果物、海藻類、牛乳、小魚などをバランスよく食べることも、予防に役立ちます。ビタミンB1も筋肉代謝には重要な成分といえるので、多くを含む卵や豚肉、ぬか漬けなどを食べるようにします。
予防に心掛けても有痛性筋けいれんが起きてしまった時は、片方の手で痛いところを優しくさすって、もう片方の手で足のつま先をゆっくり顔の方へ曲げるようにして、ふくらはぎの筋肉をよく伸ばします。そうすれば、少しずつ痛みは治まります。
詳しい病気解説は健康創造塾(http://ksjuku.com)へどうぞ
健康創造塾i−mode版(http://ksjuku.com/i.html)、au版(http://ksjuku.com/e.html)、Yahoo!ケータイ版(http://ksjuku.com/v.html)へも寄り道してください