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■用語 扁平乳頭 [用語(へ)]

[バー]乳頭の出っ張りが短く、全体的に平たくなっている状態
 扁平(へんぺい)乳頭とは、乳房の先にある乳頭の出っ張りが短く、広く円形に広がっていて、全体的に平たくなっている状態。扁平乳首とも呼ばれます。
 乳頭が指先ほど突出している通常の乳頭でもないし、乳頭が乳房の内側に埋没している陥没乳頭でもない状態です。乳頭の出っ張りの高さが5ミリ以下と多少あるものの、くびれが不明確な乳首も、扁平乳頭に含まれます。
 原因は生まれ付きのことが多く、初めは出っ張りの高さがあったのに何らかの原因で平たくなることもあります。
 乳頭には、15~25個の乳口、筋線維、神経があります。乳頭の下部には、母乳(乳汁)が通る乳管があります。その乳頭下にあって乳頭を支える乳管などの線維組織が発達しなかったり、繊維組織が癒着したりすると、出っ張りが短い扁平乳頭が起こります。程度が強いと、乳頭が乳房の内側に埋没する陥没乳頭になります。扁平乳頭、陥没乳頭が起こる根本的な原因や要因は、明確になっていません。
 扁平乳頭は、陥没乳首と同じく、子供ができた時の授乳の際に支障を来します。一般に母親の乳頭が1センチの高さと大きさがあれば、新生児が母乳を吸いやすいとされています。
 妊娠すると乳房の状態も変化していき、妊娠前は扁平乳頭だったのに出っ張ってくる女性もいますが、扁平乳頭のままだと出っ張りが不足し、新生児が乳頭をうまく吸うことができないために、母乳育児が難しくなります。
 新生児は母乳を飲む時、乳輪全体を口にくわえ、乳頭を舌で巻き込むようにしています。扁平乳頭の場合は、乳頭を舌に巻き込むのが普通より難しいので、母乳を深く吸いにくいということがあります。しかし、全く授乳ができないというわけではありません。
 扁平乳頭の女性の母乳育児のコツとしては、新生児ができるだけ口の奥まで乳頭を入れやすくするために、乳房が硬く張った状態での授乳は避けることです。乳房がパンパンに張っている時は、乳輪周辺が少し柔らかくなる程度に搾乳をしてから授乳を始めると、吸いつきやすくなります。
 新生児が乳首の先だけを吸うのは、乳首を傷める原因になり、十分な母乳の分泌がされない可能性も高くなります。授乳中は新生児の口に乳首を押し込むような感じでサポートをすると、飲みやすくなります。授乳後は乳首を清潔にして、オイルなどで保湿してケアしておきます。
 根気よく授乳することで、乳首も長くなってくるという人も多くいます。どうしても、新生児が吸いつけないという場合には、ほ乳瓶の乳首みたいな保護器を乳首の上につけて、母乳を吸わせることもできます。
 日ごろからマッサージで乳頭に刺激を与えて、出っ張らせ、新生児に実際に乳頭を吸わせて授乳を繰り返すと、出っ張り状態を保つようになることもあります。
 マッサージ法は多々ありますが、一例を紹介します。1)親指と人差し指を乳輪の外側に置く、2)乳頭を優しく押し出す、3)乳輪を優しく広げるように親指と人差し指を水平に伸ばす、4)親指と人差し指を乳輪の上下に置く、5)乳頭を優しく押し出す、6)乳輪を優しく広げるように親指と人差し指を上下に伸ばす。
 これが、基本的なマッサージ法です。マッサージは、定期的に続けることで効果が出ますから、根気よく続けることが大切です。タイミングとしては、入浴時がお勧めで、体がポカポカに温まると血行が促されるので効果的です。
 また、マッサージ以外にも、販売されているプチフィット、ピペトップといった乳頭吸引器などの矯正器具を利用します。乳頭吸引器の場合は、専用のローションを乳頭とその周辺に塗り、胸に吸引カップを装着して真空状態にし、吸引力によって乳頭を出っ張らせます。毎日続けることにより、少しずつですが症状を改善していきます。
 ただし、妊娠中のマッサージは、早産を招くという説もあります。無理やりに乳頭を出っ張らせることで、皮膚が切れて出血し、痛み、さらに感染して炎症を起こす危険もありますので、細心の注意が必要になります。
 扁平乳頭は見た目の問題だけでなく、授乳をする状況になった時に、うまく授乳ができなくて乳腺(にゅうせん)炎を引き起こすことがあります。心配であれば医療機関で診察を受け、改善、矯正を図ることは可能です。授乳が始まってからでは改善、矯正も大変ですから、早期に婦人科、産婦人科、乳腺外科、形成外科、整形外科、あるいは美容整形外科を受診することが勧められます。
[バー]扁平乳頭の検査と診断と治療
 婦人科、産婦人科、乳腺外科、形成外科、整形外科、美容整形外科の医師による診断では、実際の乳頭の高さで判断するよりも、組織の柔軟性が判断の目安になるため、親指と人差し指を乳輪に添えて乳頭を軽く引っ張って高さを測るピンチテストで、5ミリ以下の伸びしかない乳頭を扁平乳頭と判断します。
 婦人科、産婦人科、乳腺外科、形成外科、整形外科、美容整形外科の医師による治療では、軽度であれば、乳頭吸引器などの器具を活用したり、乳房マッサージを習慣にすることで、改善することも可能です。
 形成手術を行い、ある程度高さやくびれがある乳首にすることも可能です。手術法は、乳輪部分を切開し、裏側から乳頭を押し上げて突出させ、固定します。左右どちらの場合でも矯正でき、片側の乳頭とのバランスを見ながらデザインして形成します。
 ただし、乳管の繊維組織の癒着が強く、陥没乳頭の傾向がある女性の場合は、手術後に症状が再発する可能性があります。

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■用語 閉経後膣委縮症 [用語(へ)]



[喫茶店]閉経後に女性ホルモンのレベルが低下し、膣粘膜の内層が委縮して薄くなる状態
 閉経後膣委縮症とは、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが閉経後に低下し、膣壁が委縮して薄くなり、弾力性を失う状態。膣委縮症とも呼ばれます。
 生理が止まった閉経後の女性は、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンの減少によって、さまざまな体の変化を経験します。その中でも、多くの女性が経験するのが、閉経後膣委縮症です。
 女性生殖器系の器官である膣は、骨盤内にあって子宮と体外とをつなぐ管状の器官で、伸び縮みできる構造をしています。膣の前方には膀胱(ぼうこう)や尿道があり、後方には直腸があります。膣壁の内層は粘膜に覆われ、その粘膜面には横に走るひだがあります。このひだは正中部で集合し、前壁と後壁で中央に縦に走るひだになっています。このひだは出産の経験のない人に、多く認められます。
 この膣の中は、温かく湿っていて有機物が豊富にある状態で、細菌の繁殖に適しています。しかし、膣には自浄作用という働きがあります。膣壁上皮は卵巣から分泌されるエストロゲンの作用により、表皮細胞への分化が促され、細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離(はくり)した細胞内のグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて、膣内の乳酸桿菌(かんきん)によって乳酸菌に換えられます。これにより膣内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。
 閉経後の女性の場合、膣壁は女性ホルモンや少量の男性ホルモンの働きにより、閉経後十数年たっても若い時代の3分の2の厚さが保たれていますが、エストロゲンが不足してくると膣のひだが少なくなるとともに、膣壁そのものも委縮して薄くなり、膣分泌物の低下などが原因でコラーゲンが少なくなり、膣の乾燥感も起こります。
 それとともに自浄作用も低下して、細菌やカビが繁殖するために、充血して炎症を生じる膣炎が半数に起こります。これは、委縮性膣炎、あるいは老人性膣炎と呼ばれます。
 委縮性膣炎を発症すると、下り物が黄色っぽくなる、下り物に血が混じる、下り物に悪臭を伴うなどの症状が、現れることがあります。膣壁の痛みや灼熱(しゃくねつ)感などの不快感、膣入口や外陰部の乾燥感、掻痒(そうよう)感、違和感、痛みなどの症状が、現れることもあります。性行為に際して、痛みを伴ったり、出血、掻痒感などの症状が、現れることもあります。
 エストロゲンの分泌が低下したり、膣壁が委縮して薄くなること自体は、閉経後の女性であれば当たり前のことですので、無症状であったり、症状が軽いこともあります。
 閉経後膣委縮症、委縮性膣炎は必ずしも治療が必要なわけではありませんが、黄色い下り物は子宮体がんなどに伴う症状の可能性もありますので、注意が必要となります。
[喫茶店]閉経後膣委縮症の検査と診断と治療
 婦人科、産婦人科の医師による診断では、膣の内部や外陰部の肉眼的な観察を主に行います。さらに、細菌検査を行い、カビや細菌の有無を調べます。同時に、がん細胞の有無も確認します。
 明らかにエストロゲンが低下している年齢でなければ、ホルモン検査を行うこともあります。
 近年は、診断と治療的効果判定の数値化を目的に、膣健康指数を用いて診断する方法も行われるようになりました。
 婦人科、産婦人科の医師による治療では、がん細胞がない場合は、女性ホルモンの膣錠、エストロゲンの経口剤や貼付(ちょうふ)剤、女性ホルモンの補充療法などで、症状の改善を図ります。
 軽度の閉経後膣委縮症であれば、膣洗浄によって細菌を流し、症状を改善させることもあります。細菌感染がひどい場合は、抗生物質が入った膣錠を併用することもあります。性交痛などに対して、潤滑ゼリーを勧めることもあります。
 閉経後膣委縮症、委縮性膣炎の多くは1~2週間の治療で治りますが、1カ月程度にわたって薬剤を使用しないと治らない人もいます。
 外陰炎、外陰掻痒症を併発している時は、平行した治療で症状の改善を図ります。子宮体がんや乳がんなどの病歴がある人に対しては、別の治療法が選択されることもあります。


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■用語 ヘルペス脳炎 [用語(へ)]

[晴れ]単純ヘルペスウイルスの感染によって起こる脳炎
 ヘルペス脳炎とは、単純ヘルペスウイルスの感染によって起こる重い急性脳炎。単純ヘルペス脳炎とも呼ばれます。
 小児、成人、高齢者とすべての年代に起こり、とりわけ成人での発症頻度が高い疾患です。日本では年に約400例という発症頻度で、時期的な集中はみられません。
 主として単純ヘルペスウイルス1型(口唇ヘルペス)の感染によって、ヘルペス脳炎は起こります。単純ヘルペスウイルス2型(性器ヘルペス)の感染では、良性の脊髄(せきずい)炎、髄膜炎が起こるのが一般的です。
 有り触れて共存的なヘルペスウイルスが重いヘルペス脳炎を起こす原因は、よくわかっていません。ヘルペスウイルスの上気道感染に続いて嗅(きゅう)神経を経由し、あるいは血液に運ばれて、好発部位である側頭葉・大脳辺縁系に侵入し、出血性壊死(えし)の傾向を示しながら脳を破壊すると推定されています。
 成人と高齢者のヘルペス脳炎の発症については、三叉(さんさ)神経節などの中枢神経系に潜伏していたヘルペスウイルスが、風邪や疲れなどで体の抵抗力が落ちた際に突然、出てきて暴れ出すとも推定されています。
 風邪の症状で始まり、40℃以上の発熱、頭痛、けいれん発作、意識障害、異常行動、性格の変化、知能障害、言語障害、運動まひなどが現れます。重症になると、ものが飲み込めなくなる嚥下(えんげ)障害や呼吸障害が現れ、昏睡(こんすい)に陥り、生命にかかわります。
 死亡率は20〜30パーセント、治療せずに放置した場合の死亡率は60~70パーセントとされています。発症早期の治療が極めて重要なので、おかしいと思ったらすぐに神経内科、内科、小児科などを受診し入院すべきです。
[晴れ]ヘルペス脳炎の検査と診断と治療
 神経内科、内科、小児科の医師による診断では、血液や脳脊髄液を調べ、単純ヘルペスウイルス1型の感染の証拠が得られれば判断できます。実際には、検査結果が出るまでに日数がかかるので、症状のほか、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、脳波検査などの結果から判断します。
 神経内科、内科、小児科の医師による治療では、急性期における単純ヘルペスウイルス1型の増殖を抑えるため、抗ウイルス剤のアシクロビル、ビダラビン、バラシクロビルなどを投与します。
 二次感染を予防する意味でペニシリン系、セフェム系の抗生剤を投与し、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤を併用することもあります。その他は対症療法を適切に行います。
 脳の破壊が進む以前の早期に抗ウイルス剤を使用すれば、記憶障害、行動異常、症候性てんかんなどの後遺症を残さずに治すことが可能です。単純ヘルペスウイルスに対する特効薬である抗ウイルス剤の導入以後、死亡率は10パーセント以下に減り、約半数の社会復帰例がみられています。

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■用語 閉塞性無精子症 [用語(へ)]



[クリスマス]精巣の中で精子が作られているものの、精子を運ぶための精路が途中で閉塞している状態
 閉塞(へいそく)性無精子症とは、男性の精巣(睾丸〔こうがん〕)の中で精子が作られているものの、精子が精巣から体外へ出ていく精路のどこかが閉塞して状態。精子が精液と合流して体外へ出ていくことができず、射出精液中に、卵子と結合して個体を生成する精子が認められません。
 男性の精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢腺(せいのうせん)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢腺成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。
 運動能力を持つ男性の精子のほうは、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体において成熟し、精嚢腺と前立腺で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。射精によって精液が尿道から出ていく際には、最初は主に前立腺からの成分、続いて精嚢腺からの成分が出ていきます。
 男性の100人に1人は、射出精液中に精子が認められない無精子症といわれています。この無精子症は、閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症の2つの型に分類されます。
 閉塞性無精子症は精巣自体の造精機能に障害がないのに対して、非閉塞性無精子症は精子が精巣から体外へ出ていく精路があるにもかかわらず、精巣の造精機能の低下により、精巣で全く精子が作られていない状態、もしくは射出精液中に精子が認められない状態を指しています。
 閉塞性無精子症は、無精子症の15〜20パーセントを占めているといわれています。非閉塞性無精子症のほうは、無精子症の80~85パーセントを占めているといわれています。
 閉塞性無精子症の原因となる疾患は、両側精巣上体炎、小児期の両側鼠径(そけい)ヘルニア術後、精管切断(パイプカット)術後、原因不明の精路閉塞症、先天性両側精管欠損症などです。
 一方、非閉塞性無精子症の原因となる疾患は、X染色体が1つ以上多いクラインフェルター症候群などの染色体異常症、脳下垂体と視床下部の障害による性腺刺激ホルモンの低下、おたふく風邪による精巣炎、高プロラクチン血症による精子形成の低下、薬の副作用による性腺刺激ホルモンの低下、精巣が陰嚢(いんのう)内に位置していない停留精巣、精巣の上の精索部の静脈が拡張した精索静脈瘤(りゅう)などです。
[クリスマス]閉塞性無精子症の検査と診断と治療
 泌尿器科の医師による診断では、精液検査の結果、射出精液中に精子が存在しない場合に無精子症と判断します。加えて、精巣の大きさに問題がなく、ホルモン検査では脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の値が正常値で、精路に閉塞部位が認められれば、ほぼ閉塞性無精子症と判断できます。
 ただし、性腺刺激ホルモンの値が正常値でも、まれにY染色体の特定部位の微小欠失により、精巣内での精子の成熟が途中で停止しているケースでは、非閉塞性無精子症と判断します。
 泌尿器科の医師による閉塞性無精子症の治療では、精子が精巣から体外へ出ていく精路を再開させる精路再建手術を行います。閉塞部位が短く手術でつなぎ合わせることができれば、精液に精子が出るようになり、夫婦生活による自然妊娠も期待できます。
 先天性の精管欠損症などで閉塞部位が長い場合は、手術では治療できません。この場合は、閉塞性無精子症の人では精巣で精子が作られているため、精巣精子採取法によって、精巣の精細管や精巣上体、精管から精子を直接取り出し、人工授精、体外受精、顕微授精などという方法を用いて妊娠を期待します。
 閉塞性無精子症と診断された段階で、我が子をあきらめる必要はありません。


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