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■用語 猫鳴き症候群 [用語(ね)]

[猫]5番染色体の短腕の欠損により引き起こされ、新生児が猫の鳴き声に似た泣き声を発する重度の先天性障害
 猫(ねこ)鳴き症候群とは、22対ある常染色体のうち、5番染色体の短腕(5p)の一部分が欠損していることが原因で引き起こされ、罹患(りかん)した新生児が出生時に猫の鳴き声のような泣き声を発するのを特徴とする重度の先天性障害。
 5p(ごぴー)モノソミー、5pー(まいなす)症候群、5p欠失症候群、レジューン症候群とも呼ばれます。
 常染色体は性染色体以外の染色体のことであり、人間の体細胞には22対、44本の常染色体があります。それぞれの常染色体はX型をしていて、短腕(p)と長腕(q)という部分があり、5番染色体の短腕の末端の一部分が欠損している状態が5pモノソミーに相当し、猫鳴き症候群を引き起こします。
 5pモノソミーは、常染色体の一部分が欠けている常染色体部分モノソミーの一種で、常染色体部分モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれても知的障害を含む重い先天性障害を併発します。通常、2本で対をなしている常染色体が1本になる常染色体モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれることはできません。
 5pモノソミーから引き起こされる猫鳴き症候群の主な原因は、突然変異による5番染色体の変化が原因で、なぜ突然変異が起こるのかまではわかっていません。
 まれに、両親からの遺伝が原因で起こります。転座といって、ほかの染色体の一部分が5番染色体の短腕に間違ってくっついていることにより起こり、この場合は両親の片方が染色体異常の保因者であることがあります。
 猫鳴き症候群は、フランス人のジェローム・レジューンによって1963年に初めて発見されました。レジューンは、1959年にダウン症の原因を発見したことでよく知られる人物です。 
 猫鳴き症候群に罹患した新生児は、出生時に子猫の鳴き声のような甲高いニャーニャーという泣き声を発します。特有の泣き声は喉頭(こうとう)の変化が原因とされ、数週間継続して消失します。
 新生児は子宮内発育不全のため低出生体重であり、医学的な症状としては重度の精神発達遅滞、小頭症、成長不全、筋緊張低下、両目の離れた円形の顔、眼瞼(がんけん)裂斜下、内眼角贅皮(ぜいひ)、外斜視、鼻根部偏平、耳介低位、副耳などが認められます。
 多指、心奇形、腎(じん)奇形、脊柱側湾などが認められることもあります。発語は3歳以降で、言葉の出ないこともあります。
 身体的な合併症がみられる場合は、専門医による適切な治療が必要ですが、乳幼児期の頻繁な呼吸器感染症、筋緊張が弱いことによる便秘を除けば、おおむね健康に育っていき、多くが成人期まで生存します。




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■用語 熱中症 [用語(ね)]

[晴れ]暑さによって体温調節がうまくいかず、体内に熱がこもることで起こる急性の障害の総称
 熱中症とは、暑さによって体温調節がうまくいかず、体内に熱がこもることで起こる急性の障害の総称。
 専門的には、「暑熱環境下にさらされる、あるいは運動などによって体の中でたくさんの熱を作るような条件下にあった者が発症し、体温を維持するための生理的な反応より生じた失調状態から、全身の臓器の機能不全に至るまでの、連続的な病態」されています。熱中症という漢字は、読んで字のとおり、熱に中(あた)るという意味を持っています。
 この熱中症には、いくつかの種類があります。熱波により主として高齢者に起こるもの、高温環境で幼児に起こるもの、暑熱環境での労働で起こるもの、スポーツ活動中に起こるもの、夜間熱中症とも呼ばれ夕方5時以降の夜間に起こるものなどです。
 いずれのケースも、体内に熱がたまったために温熱中枢が障害され、体温調節機能が破綻(はたん)して、体温が異常に上昇した結果、肝臓、腎臓(じんぞう)、中枢神経などに障害を起こします。日射病、熱けいれん、熱疲労(熱ひはい)、熱射病、熱失神などさまざまな病態が、熱中症には含まれます。
 日本における熱中症の発生は、かつては軍隊や労働現場で発生するとされていましたが、近年では日常生活時やスポーツ活動中に発生しています。
 熱中症というと「暑い環境で起こるもの」という概念があるかと思われますが、労働やスポーツ活動中に起こる熱中症では、体内の筋肉からの大量の熱の発生と脱水などの影響により、寒いとされる環境でも発生し得るものです。実際、11月などの冬季でも、死亡事故が起きています。活動開始から比較的短時間の30分程度からでも、発症する例もみられます。
 また、熱中症というと日中の炎天下や蒸し暑い時の外出中、労働中、スポーツ中に発症するものが多数を占めますが、近年では熱中症による死亡者の約40パーセントは夜間に亡くなっています。
 そもそも真夏日や猛暑日、熱帯夜が多い年は、熱中症で亡くなる人も増えます。一般的には、最高気温が25度を超えると熱中症の発症者が現れ、30度を超えると熱中症で死亡する人の数が増え始めるといわれています。
 気温が低くても、湿度が高ければ、汗が蒸発しにくくなって体内の熱がうまく放熱できなくなるため、熱中症の危険が高くなります。例えば、気温が25度以下でも、湿度が80パーセント以上ある時は、注意が必要となります。また、風が弱い時は、汗をかいても体にまとわりついて蒸発しにくくなって、体温を下げる効果を弱めてしまうため、体に熱がこもりやすくなるので危険です。
[晴れ]熱中症の症状
 熱中症の症状は、大量発汗、強い口の乾き、倦怠(けんたい)感、興奮、高体温、発汗停止、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、脱力感、反射の低下、筋けいれん、強い頭痛、めまい、失神、精神錯乱、昏睡(こんすい)、意識不明などがみられます。最終的に呼吸停止、心停止に至ることもあります。
 熱中症を暑熱障害、熱症として、重症度で分類すると、以下のようになります。
●1度(軽症度)、熱けいれん: 四肢や腹筋の痛み、時には腹痛を伴ったけいれんがみられます。多量の発汗で、塩分などの電解質が入っていない水のみを補給した場合に起こります。呼吸数が増加し、顔色が悪くなり、めまいなどもみられます。
●2度 (中等度)、熱疲労: めまい、疲労感、虚脱感、頭痛、失神、吐き気、嘔吐、血圧の低下、頻脈、顔面の蒼白、多量の発汗などで、ショック症状がみられます。脱水と塩分などの電解質が失われて、極度の脱力状態となります。
●3度 (重傷度)、熱射病:2度の症状に加えて、意識障害、奇怪な言動や行動、過呼吸、ショック状態になります。温度調節機能の破錠による多臓器障害が起こり、脳、肺、肝臓、腎臓などに障害が生じます。
 熱中症の初期症状はめまいや、頭痛、吐き気などで、特有の症状ではないので気付きにくいとされます。
 夜間熱中症の場合は、室内にいても発症します。特に都会では、ヒートアイランド現象により夜間になっても気温が下がりにくく、日中の熱が建物の壁などに吸収されて室内にこもりやすくなります。そのため、気密性が高い最近の住宅では、室内はサウナのような状態となり、就寝している間に知らず知らずに発症することになり、命を落とす高齢者が続出しています。
 高齢者は体温調節機能が低く、体に熱がこもりやすい上、暑さやのどの渇きを感じにくいため、熱中症や夜間熱中症になりやすくなります。
 高齢者の中には、エアコンは体に悪いと誤解して全く使わなかったり、トイレが近くなるからと水分を取らない人もいます。また、防犯の観点から、窓を閉め切って眠ってしまう人もいます。そのような状態での睡眠中は、水分を取ることができないので、脱水状態となり、朝起きた途端に意識障害や心疾患などが起こってしまう危険もあります。
[晴れ]熱中症の手当と治療
 熱中症は、いくつかの症状が重なり合い、互いに関連し合って起こります。また、軽い症状から重い症状へと症状が進行することもありますが、きわめて短時間で急速に重症となることもあります。
 しかも、熱中症は大変に身近なところで起きていますので、十分にその危険性を認識しておくことが必要です。 
 もし周りの人が熱中症にかかった場合には、すべての症状に対して次の三つが手当の基本となります。
●休息:安静にさせる。そのための安静を保てる環境へと運ぶことともなる。衣服を緩める、また、必要に応じて脱がせ、体を冷却しやすい状態とする。
●冷却:涼しい場所、例えばクーラーの入っているところ、風通しの良い日陰などで休ませる。症状に応じて、必要な冷却を行う。
●水分補給:意識がはっきりしている場合に限り、水分補給を行う。意識障害がある、吐き気がある場合には、医療機関での輸液が必要となるので、直ちに救急車を呼ぶこと。
 以上の三つをベースとして手当を行い、症状やその程度によって追加して望まれる手当も派生します。
 医療機関での治療においては、氷水浴、アルコール冷却などを行い、ラクテック、生理食塩水、デキストラン製剤などの輸液を行います。
[晴れ]熱中症の予後と予防
 熱中症にかかった人が、暑い環境での活動や運動を再開するには、相当の日数を置く必要があります。
 どんなに症状が軽かったとしても、1週間程度。症状が重くなるにつれ、日数は増えていきます。詳しくは医師と相談の上、当人の調子を照らし合わせながら、再開を決めることになります。 
 その間は、暑い環境での活動や激しい運動は、厳禁となります。十分に回復するまでの休息の日数を置いた上、涼しいところでの軽めの運動から開始し、徐々に運動負荷を上げていくのがよいでしょう。 また、一度かかった者は再度かかりやすいとも見なされていますので、十分に注意をしつつ、活動や運動を行うようにしなければなりません。
 熱中症を予防するための注意事項について述べれば、酷夏の運動場、体育館、海水浴場、市街地などにいて、通風性がよくない場合には熱中症を起こしやすいので、スポーツドリンクなどで塩分を含む水分補給を積極的に行うことが必要です。休息を多く取り入れ、激しい運動は中止すべきです。
 夜間熱中症を防ぐためには、まず、こまめに水分を取ること。のどが渇いた時にはすでに脱水に近い状態になっているといわれ、補給した水分が体全体に運ばれるまでには時間差があるので、早め早めに水分補給をすることが大切です。のどの渇きを感じた時だけガブガブ飲むのではなく、のどが渇く前に少量の水を取るようにするとよいでしょう。
 特に、夜眠る前と朝起きた時の水分補給は忘れずに。風呂に入る時も水分が失われやすいので、入浴前後に水分を取り、40度以下のぬるめの湯で、あまり長湯にならないようにしましょう。寝ている間にもかなりの水分が失われますので、枕元に飲料を置いて水分の補給に努めましょう。
 また、汗と一緒に体のミネラルが不足してしまうので、塩分や糖分も適度に補給するとよいでしょう。真水(軟水)だけではなく、ミネラルウォーター(硬水)、麦茶、梅干入りの水、スポーツドリンクを時々飲むようにすると、手軽にミネラルが補給できます。
 ただし、冷たい水やビール、コーヒーなどの飲みすぎには注意を。冷水は胃の調子を悪くしたり、体の冷えの原因になることがあり、ビールやコーヒーなどは利尿作用が強く、脱水を進めてしまうことがあるからです。
 水分補給に加えて、気を付けたいのが室温の調整です。冷やしすぎはよくありませんが、気温30度を超えるような時は、何らかの方法で室温調整が必要です。湿度計付き温度計を置き、室温28度、湿度60パーセントになったらエアコンを使うなど、目で確認できる温度の管理がお勧め。
 エアコンが苦手な人は、送風が直接体に当たらない工夫をしたり、隣の部屋のエアコンをつけるようにしたりすると、冷やしすぎを防ぐことができます。どうしてもエアコンが苦手という人には、扇風機や冷却マットなどの使用をお勧めします。
 さらに、部屋の中でじっとしていると、室温に対して鈍くなってしまうので、時々体を動かしましょう。汗をかくのが嫌だと感じる人もいるようですが、汗には体の熱を下げ、余分な水分を排出する働きがあるので、適度に汗をかくことは必要です。
 水分を補給しても、ただため込むだけでは脱水を防ぐことはできず、体がむくむ原因になります。血液循環をよくして水分を体全体にゆき渡らせ、古い水分を老廃物と一緒に汗や尿として排出し、水を循環させることが大切。
 ふだん運動不足の人や代謝がよくない人は、汗をかきにくく、その結果、熱が体にこもったり、余分な水分がたまって体調を崩してしまうこともあるので、日頃から汗をかける体に整えておくことも必要。
 暑さにより体は疲労し、体の代謝が弱って脱水症状が進みますので、夜の睡眠に影響しない程度の軽い昼寝をし、夜は十分に睡眠を取って体を休めましょう。そうすれば、熱中症や夜間熱中症、夏バテから体を守ることができます。




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■用語 ネガティブカロリーダイエット [用語(ね)]

[レストラン]ネガティブカロリー食品を取り入れて、トータルの摂取カロリーを減らすダイエット法
 ネガティブカロリーダイエットとは、食品自体に含まれるカロリーよりも、その食品を消化するために必要なカロリーのほうが大きい食品を食べることによりダイエットを図る方法。マイナスカロリーダイエットとも呼ばれます。
 ネガティブカロリーダイエットに用いられる食品は、食べれば食べるほどやせるような特性を持つ食品といわれ、ネガティブカロリー食品、またはマイナスカロリー食品と呼ばれています。そのため、ネガティブカロリー食品ダイエットとも、マイナスカロリー食品ダイエットとも呼ばれることがあります。
 人間は、運動をしている時だけ、エネルギーを使用しているわけではありません。人間が毎日生活するために、生きていくために、どんな行為にもエネルギーが必要です。このエネルギーを消費カロリーといいます。それに対して、食べ物を食べて体内に取り込むエネルギーを摂取カロリーといいます。摂取するカロリーよりも、消費するカロリーのほうが大きければ、いくら食べても太りません。
 例えばリンゴで考えた場合、リンゴ一切れに含まれるカロリーは、115キロカロリーです。一方、リンゴ一切れを体内に取り込むために必要な消化カロリーは、155キロカロリーです。消化カロリーは食べ物を咀嚼(そしゃく)して、胃腸で消化、吸収して排出するまでに必要なエネルギーのことで、リンゴ一切れ食べるだけで、単純に40キロカロリーを体内に蓄積された脂肪から消費できるわけです。
 ネガティブカロリーダイエットは理論上、食べれば食べるほどやせることになり、空腹を我慢せずに行えるダイエット方法といえます。多くのダイエット初心者が取り組むことが多いリンゴダイエットも、ネガティブカロリーダイエットを活用した方法の一つです。
 ネガティブカロリーダイエットでは、果物や野菜、海藻類に多いネガティブカロリー食品を食事の前に食べます。これにより、少量の食事でも満腹感を感じられて、食べすぎを抑えることにより、トータルの摂取カロリーを減らすことができます。あるいは、1日3食のうちの1食だけをネガティブカロリー食品をメインにした食事にします。
 いずれにしろ、基本的に必要とされる栄養バランスを崩さないようするダイエット方法であり、単品の食材だけを食べるダイエット方法より栄養バランスにも優れています。
 併せて、ウォーキングなどの有酸素運動を行うことも必要です。運動を全くしないのであれば、基礎代謝も低下するので、リバウンドも起こしやすくなるからです。
 ネガティブカロリー食品に挙げられる果物は、リンゴ、ブルーベリー 、グレープフルーツ、マスクメロン、クランベリー 、グレープフルーツ、レモン、ライム、マンゴー 、オレンジ、パパイヤ、ピーチ 、パイナップル、ラズベリー 、イチゴ、ミカン、スイカなど。
 ネガティブカロリー食品に挙げられる野菜は、アスパラガス、ビートルート、ブロッコリー、キャベツ、ニンジン、カリフラワー、セロリ 、チコリー、キュウリ、トマト、ニンニク 、リョクトウ(緑豆)、レタス、タマネギ 、ダイコン、ホウレンソウ、カブ 、ズッキーニなど。
 そのほか、ワカメ、コンブなどの海藻類、ウーロン茶、水、トウガラシ(唐辛子)もネガティブカロリー食品に挙げられます。トウガラシは、普通のネガティブカロリー食品と違い、その果皮に含まれる辛み成分であるカプサイシンに、体内の中性脂肪をエネルギー消費されやすい脂肪酸に変化させる働きがあります。
 なお、健康ダイエットという概念からいうと、ネガティブカロリー食品だけを食べて行うネガティブカロリーダイエットには、問題があります。一部の食品に限った食事を取ることは、短期間でやせて一時的なダイエット効果はあったとしても、栄養バランスが崩れてしまうため最終的には健康上よくないからです。
 肉や魚介類なども当然必要です。栄養バランスを崩さないように注意して、日々の生活に上手にネガティブカロリーダイエットを取り入れて下さい。




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■用語 年齢依存性てんかん性脳症 [用語(ね)]

[クリスマス]難治性てんかんで、発症時期と症状が年齢と強い関係を持っている疾患群
 年齢依存性てんかん性脳症とは、発症時期と症状が年齢と強い関係を持っており、新生児期から幼児期にかけて特徴的なてんかん発作で発症する疾患群。難治性てんかんの代表でもあり、特異的な脳波所見を示し、知能、運動、情緒に関する発達障害を併発します。
 年齢依存性てんかん性脳症の代表的な疾患として、大田原症候群(早期乳児てんかん性脳症)、ウエスト症候群(点頭てんかん)、レノックスガストー症候群(レンノックス・ガストー症候群)が挙げられます。年間の発症者数は約500人で、推定患者数は約2万人です。
[クリスマス]生後3カ月以前の乳児早期に発症する大田原症候群
 大田原症候群とは、新生児期から生後3カ月以前の乳児早期に発症する難治性のてんかん。早期乳児てんかん性脳症とも、EIEE(early infantile epileptic encephalopathy with suppression burst)とも呼ばれます。
 生後4カ月から1歳ころに発症するウエスト症候群(点頭てんかん)、2歳~8歳に発症するレノックスガストー症候群とともに、年齢依存性てんかん性脳症に分類されます。それぞれのてんかんの好発年齢が乳幼児期にみられること、大田原症候群からウエスト症候群へ、さらにウエスト症候群からレノックスガストー症候群へと年齢とともに移行することが多いため、脳の発達過程とこれらのてんかんの発症が密接に関連しているものと考えられています。
 てんかんは、脳の神経細胞の伝達システムに一時的な機能異常が発生して、反復性の発作が起こる疾患です。発作時には意識障害がみられるのが普通ですが、動作の異常、けいれんなどだけの場合もあります。こうした異常な症状が長期間に渡って何度も繰り返し現れるのが、てんかんの特徴です。
 大田原症候群の発症者は、10万人に1人以下とみられています。発症すると、強直発作を頻発します。強直発作は全身を強直させて、頭部を前屈し、両上肢を挙上させ、眼球が上転する数秒~30秒程度の発作で、発作の発見時には多くの場合、一過性に呼吸を止めて、唇や爪(つめ)が青紫色になるチアノーゼが見られます。覚醒(かくせい)時にも睡眠にも、発作は出現します。
 脳波を調べると、覚醒時、睡眠時を問わず持続的に、サプレッションバーストという特徴的な脳波が認められます。サプレッションバーストは、振幅の小さい波の時(サプレッション)と、振幅の大きい波の時(バースト)とが交互に現れるものです。発作を起こしている時の脳波は、ほとんどが全般性脱同期を示します。
 強直発作に伴って脳の働きが弱まり、知的障害や運動障害などを来します。
 大田原症候群は、脳の低酸素や感染症、事故などよる脳損傷によっても生じますが、一部は脳で働くARX、およびSTXBP1という遺伝子の配列の異常によって生じます。ARXという遺伝子は、ガンマアミノ酪酸(GABA、 ギャバ)と呼ばれる脳の興奮を抑える物質を含む神経細胞の発生に関係しています。
 小児科、あるいは神経内科の医師による治療では、抗てんかん薬の内服のほか、ビタミンB6の内服、副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン(ACTH)療法、甲状腺(こうじょうせん)刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の注射などが行われます。
 しかしながら、大田原症候群の発作は難治で、多くは抗てんかん剤および副腎皮質刺激ホルモンに反応しません。薬剤が部分的に有効で発作が消退しても、重症の心身障害を残し予後は極めて不良で、早期死亡の例も少なくありません。
 脳の前頭葉に焦点性皮質形成異常のある大田原症候群の場合には、外科治療が精神運動発達と発作コントロールの両方に有益な効果があります。
[クリスマス]生後4カ月から1歳ころの小児に発症するウエスト症候群
 ウエスト症候群とは、生後4カ月から1歳ころの小児、特に男児に多く発症する予後不良のてんかん。1841年にウエストという医師が彼自身の息子の病状と経過を報告したのが最初で、点頭てんかんとも呼ばれます。
 てんかんの一つのウエスト症候群は、発症前の発達が正常で、いろいろな検査でも原因が見いだせない特発性と、明らかな原因となる基礎疾患があって脳に障害が存在し、その随伴症状として発作がみられる症候性の2つに大別されます。特発性が10から20パーセント、症候性が80から90パーセントを占めます。
 症候性の基礎疾患としては、胎内感染症、先天性脳奇形、先天性代謝異常症、新生児頭蓋内(ずがいない)出血、新生児低酸素性虚血性脳症、小頭症、髄膜脳炎、結節性硬化症、フェニルケトン尿症、頭部外傷などがあります。原因となる基礎疾患のうち、単性疾患としては結節性硬化症が最も多く、皮膚の白斑(はくはん)が診断の手掛かりとなります。
 発作の型としては、瞬間的な全身性ミオクロニー発作が特徴です。すなわち、驚いたように両腕を上げると同時に頭部を前屈(点頭)する短い強直発作が数秒間の間隔で、数回から数十回と反復して起こります。このような反復発作をシリーズ形成といい、寝て起きた時あるいは眠くなった時など1日に数シリーズ繰り返してみられます。
 発作が起こるとともに、今まで笑っていた乳児が笑わなくなったり、お座りしていた乳児がお座りしなくなるような精神運動発達の荒廃がみられてきます。
 症状がある場合は、小児科、あるいは神経内科を受診します。早期診断と早期治療開始が重要で、とりわけウエスト症候群発症まで正常の発達がみられていた特発性では、治療によって良好な予後が期待されます。
 医師による診断では、脳波検査が決め手となり、ヒプスアリスミア(脳波の不整波)と呼ばれる特徴的な所見がみられます。生後1カ年未満で、10分間程度の間に発作が10~30回まとまってみられるシリーズ形成、ヒプスアリスミア、精神運動発達遅滞がみられれば、ウエスト症候群と確定されます。原因となる症候性の基礎疾患の検討も重要で、血液検査、頭部CT、頭部MRI検査などを行います。
 医師による治療では、バルプロ酸、ゾニサミド、ニトラゼパム、クロナゼパムなどの抗てんかん薬と、ビタミンB6の大量投与が試みられますが、有効でない場合も少なくありません。
 その場合は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)療法が行われます。約70パーセントにコントロールが期待されますが、副作用として感染症、高血圧、電解質異常、一過性の脳委縮などがみられることがあるため注意が必要で、最近はなるべく少量を短期間に使用する傾向があります。症候性では、ACTH療法で一時的にコントロールできても再発することも多く、年齢が進むとレノックスガストー症候群へ変容することも多くみられます。
 予後は不良で、90パーセント以上に何らかの精神運動発達障害みられます。また、50パーセント以上に他の発作型の合併がみられます。ウエスト症候群の発作そのものは、2~3歳以後になると自然消失しますが、多くはレノックスガストー症候群や焦点発作などの他の発作型へ移行します。脳波のヒプスアリスミアも発達の一時期にみられる異常で、年齢とともに、焦点性発作波や不規則棘徐波(きょくじょは)結合に移行します。
 ウエスト症候群で予後良好なものとしては、発症以前の発達が正常で、治療が発症1カ月以内に開始されて発作が抑制され、脳波で局在のみられないものが挙げられます。発作の消失は、必ずしも知能の改善を意味しません。
[クリスマス]幼少期に始まるレノックスガストー症候群
 レノックスガストー症候群とは、通常、幼少期に始まるてんかんの重症型。レンノックス・ガストー症候群とも呼ばれます。
 レノックスガストー症候群は、年齢依存性てんかん性脳症の一つにも分類され、頻回に続く全般性の発作、激しい脳波異常、高率な知的機能の低下が特徴で、極めて治りにくいタイプのてんかん群に相当します。
 全般性の発作は、いつも同じ1種類だけではなく、急に手足を突っ張るようにする強直けいれんを主体にして、意識だけがぼーっとする非定型欠神(けっしん)発作、手足をピクピクさせるミオクロニー発作、突然力が抜けて倒れる転倒(脱力)発作など、いろいろな形のけいれん発作がみられます。
 脳波検査を行うと、遅い棘徐波結合など特徴的な波形が出現します。重篤な知的機能の低下を残すことも、少なくありません。
 多くは3~5歳をピークに、2~8歳で発症しますが、成人になって発症することもあります。しかし、頻度の少ない、まれな疾患です。
 レノックスガストー症候群の一部は、ウエスト症候群(点頭てんかん)などの他のてんかん性脳症から移行してきます。脳炎、脳症などの疾患の後遺症として起こることもあります。
 このレノックスガストー症候群で生じる複数の発作の中でも、転倒発作が最も生活に支障を来します。前兆なく突然意識を消失し、全身の意識が抜けて激しく転倒するために、生傷が絶えず、頭の保護のためにしばしば保護帽を必要とします。
 症状がある場合は、小児科、あるいは神経内科を受診します。
 医師による診断では、脳波検査を最も重視します。てんかんは脳の神経細胞の電気的発射によって起きますので、この過剰な発射を脳波検査で記録することができます。診断のみでなく、てんかんの発作型の判定にも役立ちます。脳波検査のほかにも、CT検査やMRI検査などは、脳腫瘍(しゅよう)や脳外傷などを画像で確認できるため有効です。
 医師による治療では、いろいろな抗けいれん薬が発作の症状を抑えるために使用されますが、レノックスガストー症候群ではけいれんが治まりにくいことが多く、部分的にしか成功していません。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を使用するホルモン療法が奏効することもあります。
 発作を軽くするために、脳梁(のうりょう)離断術という手術を行うこともあります。全般性のてんかん発作では、短時間で異常波が対側の脳へ伝わり、その異常波が両方の脳で同期したてんかん波となるために、脳梁という場所が重要であると考えられています。そこで、転倒発作を防ぐためには、脳梁の部分で左右の脳の連絡を絶つ方法をとります。大人では脳梁を前から3分の2を部分的に切りますが、子供では脳梁をすべて切ります。
 脳梁離断術は根治術ではなく緩和術であるため、発作すべてをなくすことはできません。しかし、発作の症状を減らすことによって、生活の質を向上させることが可能です。




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