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■病気 野兎病 [病気(や)]

[リゾート]野ウサギなどとの接触で引き起こされる感染病
 野兎(やと)病とは、グラム陰性菌の野兎病菌によって引き起こされる感染症。日本では野ウサギとの接触で感染することが多いために野兎病と名付けられていて、ツラレミア 、大原病とも呼ばれます。
 世界的には北アメリカ、北ヨーロッパ、北アジアに広くみられ、日本では北海道、東北、関東地方で多くみられ、野兎病菌に感染した野ウサギ、モグラ、リス、ネズミ、ハムスターなどの齧歯(げっし)類に触ることで、主に感染が起こります。
 冬場の感染症はほとんどが野ウサギとの接触によって起こり、特にその皮をはぐ時に起こります。夏場は、野兎病菌を持ったカやアブ、ダニに刺されて起こります。
 まれに、火が十分に通っていない齧歯類の肉を食べたり、野兎病菌に汚染された水を飲んだり、野兎病菌に汚染された干し草を扱ったり、齧歯類の食肉解体中や芝刈り機で動物をひいて空気中に舞い上がった菌を吸い込んだりすることでも起こります。この野兎病菌は、傷のない皮膚からも侵入することができるのが特徴。
 猟師、食肉処理業者、農業従事者、毛皮製造業者、検査技師に多くみられ、散発的に起こりますが、時に流行を示すことがあります。過去、スウェーデン、フィンランド、アメリカでは、カの媒介による流行がありました。
 野兎病菌は10〜50個の菌だけでも感染、発症する可能性があり、重症の疾患を起こし死者も出すことがあることから、生物兵器として使われる可能性が心配されています。人から人への感染例は、報告されていません。
 日本では、第二次世界大戦前は年平均13.8件の発生がありましたが、戦後は食糧難のために野ウサギを捕獲、解体する機会が増加し1955年まで年間50~80例と急増しました。その後減少傾向を示し、1999年、2008年の千葉県での各1例の発生以降、感染例の報告はありません。
 野兎病には、4種類の型があります。最もよくみられるのが潰瘍(かいよう)リンパ節型で、手や指に潰瘍ができ、感染部位と同じ側のリンパ節がはれます。2番目の眼リンパ節型では、目に充血やはれが生じ、リンパ節もはれます。この型は、感染した指や細菌のついた指で目に触れたり、感染部位の体液が目に入ることで起こると考えられます。
 3番目は扁桃(へんとう)リンパ節型で、リンパ節がはれるだけで潰瘍はできないことから、食物を通して体内に入った細菌が原因と思われます。4番目はチフス型で、高熱、腹痛、激しい消耗がみられ、リンパ節のはれはみられません。
 野兎病を引き起こす細菌を吸いこんだ場合には、肺炎を起こすこともあります。
 菌と接触してから1〜10日後、通常は2〜4日後に突然症状が現れます。まず、頭痛、悪寒、吐き気、嘔吐(おうと)、約40度に達する熱、激しい疲労感が起こり、続いて、極度の脱力感、悪寒の繰り返し、大量の発汗が起こります。
 扁桃リンパ節型とチフス型の野兎病を除き、24〜48時間以内に指、腕、目、口蓋(こうがい)などの感染部に炎症性の水疱(すいほう)が現れます。水疱にはすぐに膿(うみ)がたまり、破れて潰瘍になります。腕や脚には単独でできますが、目や口の中にはいくつもできます。
 潰瘍周囲のリンパ節ははれて膿を持ち、膿はやがて排出されます。発疹(はっしん)は疾患の経過中、いつでも現れることがあります。
 肺炎が起こることもあるものの、空せきや胸の中心部に焼けるような痛みが起こるだけで、あまり重い症状は現れません。ただし、中にはせん妄を起こすケースもあります。
[リゾート]野兎病の検査と診断と治療
 カやアブ、ダニに刺されたり、ウサギやリスなどの野生動物と少しでも接触したりした後で、急な発熱、リンパ節のはれ、特徴的な潰瘍がみられた場合に、野兎病と診断されます。
 検査技師が感染した場合は、リンパ節や肺のみに限った感染のことが多いので、診断するのは難しく、野兎病菌は特別の培地で培養することになります。
 野兎病の治療では、抗生物質のストレプトマイシンを7〜14日間注射します。潰瘍には湿性包帯を当て、頻繁に取り替えます。包帯をすることによって、感染の広がりを防ぐことができます。まれに、大きな膿のかたまりである膿瘍ができて、切開して膿を吸い出さなくてはならなくなります。
 症状が出た目には温湿布を当て、サングラスをかけるといくらか楽になります。激しい頭痛がある場合は、コデインのようなオピオイド系鎮痛薬を使います。
 放置すると約3人に1人は死亡しますが、治療すればほぼ全員が助かります。死亡するのは感染が手に負えないほど広がった場合や、肺炎、髄膜炎、腹膜炎などを起こした場合です。再発はまれなものの、治療が不適切だと起こります。野兎病にかかると免疫ができます。
 野兎病菌は、水や土、齧歯類の死体や皮の中で何週間も生存可能です。ただし、熱には弱く、55度で10分の加熱で不活化します。野兎病菌で飲用水の水源地が汚染されても、塩素殺菌などの通常の処理で、飲用水による感染は防げると考えられています。
  一般の場で野兎病菌で汚染されたものの表面の消毒の一つの方法としては、まず、0.5パーセントの次亜塩素酸ナトリウム溶液をスプレーします。10分後に今度は70パーセントのアルコールを使用します。アルコールはよく燃えますので、火気に注意する必要があります。次亜塩素酸ナトリウム溶液についても塩素ガスを発生したり、脱色作用があったりします。薬品の使用に当たっては、注意が必要です。

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■病気 薬剤性大腸炎 [病気(や)]

[トイレ]抗生物質など薬物の副作用で引き起こされる急性腸炎
 薬剤性大腸炎とは、疾患の治療のために投与された薬物の副作用で発生する急性腸炎。薬剤起因性腸炎とも呼ばれます。
 原因となる薬物は、一般に抗生物質が多く、時には消炎鎮痛剤、抗がん剤などでも起こります。抗生物質によるものは抗生物質関連大腸炎とも呼ばれ、それらはさらに偽膜性腸炎と急性出血性腸炎に大別されています。
◆偽膜性腸炎◆
 偽膜性腸炎は、何らかの疾患のために抗生物質を投与されている人に現れる急性腸炎。偽膜とは、大腸粘膜に発生するうみの固まりです。
 基礎疾患のある高齢者に多くみられ、抗生剤を投与された5〜10日後に、水のような便が出る下痢に見舞われます。大量の粘液を含んだ便が出たり、その中に血液が混じっていることもあります。腹鳴、下腹の鈍痛、腹部膨満感、中等度の発熱も伴います。
 ひどい場合には、複数の症状を起こし、ショック状態になることもあります。
 偽膜性腸炎を起こす薬剤としては抗生剤が最も多く、そのほか非ステロイド性消炎鎮痛剤、抗がん剤、免疫抑制剤、重金属製剤、経口避妊剤などの薬剤も誘因となることがあります。
 原因としては、疾患に対する治療を目的に投与された抗生物質、特にセフェム系やリンコマイシン系の抗生物質がその目的に反する副作用として、腸内細菌のバランスの乱れが引き起こし、ディフィシル菌が異常増殖し、それが作る毒素が大腸粘膜の循環障害を引き起こすとされています。
 抗生物質は微生物を原料にして作られた薬剤で、副作用は少ないのですが、人によってはアレルギー反応が起きたり、発疹(はっしん)、のどの渇き、めまいなどの症状が現れることもあります。
◆急性出血性腸炎◆
 急性出血性腸炎は、偽膜性腸炎と同じく、何らかの疾患のために抗生物質を投与されている人に現れる急性腸炎。急性出血性大腸炎とも呼ばれます。
 高齢者よりも若年者から中年者に多くみられ、風邪などの治療のためにペニシリン系抗生物質を投与された3~4日後に突然、激しい腹痛と血性下痢に見舞われます。血液の混じった下痢が頻回に渡って現れ、ちょうどトマトジュースのように見える便が出ます。
 ただ、大腸のびらんの程度が低い場合では、下痢ないし軟便で下血を伴わないこともあり、腹痛も軽微なことがあります。
 合成ペニシリンが主な起因薬剤とされていますが、セフェム系や他の抗生物質も誘因となり得ます。抗生物質のほか、非ステロイド性消炎鎮痛剤、抗がん剤、免疫抑制剤、重金属製剤、経口避妊剤などの薬剤も誘因となることがあります。
 急性出血性腸炎のメカニズムはいまだに解明されていませんが、疾患に対する治療を目的に投与されたペニシリン系抗生物質が、その目的に反する副作用として何らかのアレルギー反応を引き起こし、大腸の血流を障害してびらんや潰瘍(かいよう)などの炎症を引き起こし、腹痛、下痢、下血を起こすと見なされています。
[トイレ]薬剤性大腸炎の検査と診断と治療
 何か薬剤を服用している期間中に、思い当たる原因もなく腹痛や下痢、発熱が続くような症状が現れたら、内科、消化器科、胃腸科の担当医に相談します。
◆偽膜性腸炎◆
 医師による診断では、まず、抗生物質の投与歴を確認します。あれば、抗生物質の内容も確認します。次いで、便中のディフィシル菌毒素の検出や便の培養検査を行います。
 大腸内視鏡検査を行うと、大腸粘膜に、黄白色で半球状に隆起したうみの固まりである偽膜が多発しています。偽膜が互いに融合して、地図のような形になっているものもあります。
 この変化は直腸下端から始まることが多いので、前処置なしに検査できる直腸鏡でも診断することができます。ひどい場合には、偽膜が全大腸に及んでいることもあります。
 治療はまず、投与中の抗生物質をすぐに中止すること。次いで、ディフィシル菌に著しい効果を示すバンコマイシン、ないしメトロニダゾール(フラジール)という抗生物質1〜2グラムを5日間投与しますが、1〜2週間で病状は改善します。
 時には、内視鏡検査を行うだけで、改善するケースもあります。これは検査によって大腸へ空気が注入されることが、細菌の増殖に何らかの影響を与えるためではないかと考えられています。
◆急性出血性腸炎◆
 医師による診断では、偽膜性腸炎と同じく、まず抗生物質の投与歴を確認します。あれば、抗生物質の内容も確認します。投与経路では、経口投与の場合が多いようです。
 次いで、大腸内視鏡検査を行うと、横行結腸を中心にS状結腸から結腸の粘膜に発赤、びらんが認められ、潰瘍が認められることもあります。
 血液検査では、白血球の増加などを認めるものの特徴的ではありません。糞便検査では、クレブシエラ・オキシトカ菌が高率に検出されます。この菌の毒素産生は認められませんが、何らかの関与が考えられています。
 抗生物質が原因となった急性出血性腸炎は、その抗生物質を中止することが第一の治療法です。脱水を認めれば、輸液を行います。下痢がひどい場合も、腸の安静を保つために、点滴による栄養の補給を行います。
 その他症状に応じて、腸の動きを抑えて、痛みを和らげる作用のある鎮痙(ちんけい)剤、腸内細菌のバランスを整える整腸剤などの投与を行います。
 これらの対症療法だけで急速に症状が改善し、2〜4週間ぐらいで治癒します。
 ただし、薬剤が原因であると考えられる場合でも、自分だけの判断で服用を中止せず、担当の医師の指示に従うことが大切です。原因となる薬剤は、一般にペニシリン系抗生物質が多いもの、他の抗生物質や消炎鎮痛剤などでも起こることがあるからです。

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■病気 夜間高血圧 [病気(や)]

[夜]夜間高血圧とは、夜の間から早朝にかけて、寝ている間も血圧が高い状態が続く病態ことです。血圧が上がりっぱなしで、下がらないことから、「ノン・ディッパー(血圧が沈まない人)」という呼び方もされます。
 原因の一つに、動脈硬化が疑われます。健康な状態であれば、夜の就寝時は交感神経から副交感神経へ切り替わり、血管が自然に拡張します。血圧は昼よりも、10~20パーセント下がります。しかし、動脈硬化が進行していると、自律神経が切り替わった程度では血管が広がらず、血圧が高いままの状態になるのです。
 1日の約3分の1を占める夜間、ゆっくり体を休ませるべき時間帯において、本来なら下降すべき血圧が十分下降しないか、上昇し、血管も心臓も酷使されるわけですから、動脈硬化や心肥大が進行しやすくなります。
 その危険度は、正常な血圧の人の4倍以上だということがわかっています。また、昼間の行動力や思考力が低下するという研究結果もありました。
 つまり、夜間高血圧は、死のリスクを高め、生活の質を著しく下げるのです。ほかの生活習慣病との合併も多く、腎臓病や糖尿病の人がなりやすいといわれています。
 この「夜間持続型」タイプには、長時間持続タイプの降圧薬が医師から処方されます。




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■病気 夜間頻尿 [病気(や)]

[夜]頻尿のうち、就寝後に排尿回数の増加がある状態を、夜間頻尿といいます。
 頻尿とは、尿をした後、一定の時間の経過を待たずに、すぐまた尿意を感じ、排尿回数が増加した状態のことです。この頻尿では、膀胱(ぼうこう)が敏感になり、尿が少したまると不快感を覚えて尿をしたくなる場合と、病気などの原因で膀胱そのものの容量が普通より小さくなり、すぐに尿をしたくなる場合とがあります。
 夜間頻尿では、睡眠が妨げられるのでQOL(生活の質)の低下を招き、高齢者の場合では夜起きた時に転倒して、骨折の原因にもなります。
 六十歳以上の男性に起こる老人病として代表的な前立腺肥大症では、この夜間頻尿が最初の症状として現れます。尿がそれほどたまっていないのに、何回も目覚めます。排尿しても、50~150ミリリットルほど残るために、相対的に膀胱容量が小さくなったのと同じになって、頻尿が起こってくるのです。
 同様の夜間頻尿は、前立腺がん、慢性腎(じん)不全、膀胱頸部(けいぶ)硬化症でもみられます。




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