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■病気 卵管がん [病気(ら)]

[ダイヤ]女性の卵管に生じる、極めてまれながん
 卵管がんとは、女性の卵管に生じるがん。卵管は、子宮の左右両端から伸びて、子宮と卵巣を結んでいる長さ約10センチの細い管です。
 女性性器がんの中では最も発生頻度が低く、全体の1パーセント程度の発症率となっています。
 出産経験のない女性、閉経前後の女性、不妊の女性に多いといわれていて、広範囲の年齢層に発生します。好初発年齢は主に50~60歳で、そのうち約半数が閉経後に発症します。
 はっきりとした原因は、解明されていません。卵管がんはまず、卵管内腔(ないくう)の卵管上皮より発生し、内腔に乳頭状に発育します。早期より筋層にも浸潤します。初期がんの多くは、卵管の内腔が水腫(すいしゅ)状を呈します。組織学的には、大部分が腺(せん)がんであり、卵巣の上皮性卵巣がんの中の漿液(しょうえき)性腺がんに類似しています。
 初期には、ほとんど無症状のまま経過します。進行すると、下腹部の痛み、不正出血、水のようなサラサラとした下り物が多量に出るなどがみられます。水様性の下り物は、水腫状になった卵管に漿液性の液体が貯留し、これが卵管平滑筋の収縮によって間欠的に子宮内腔、腟(ちつ)を通じて体外に排出されるものです。
 そのほか、黄色い下り物が出たり、閉経後の女性では血が混じった下り物が出ることもあります。腹水がたまることによる腹部の膨らみもみられ、おなかの上からでも触れられるようになります。
[ダイヤ]卵管がんの検査と診断と治療
 卵管は骨盤内にあって腹腔内に隠れている臓器なので、自覚症状が出るのが遅くなるため、卵巣がんと同じく卵管がんの早期発見は極めて困難です。卵管がんを少しでも早い段階で発見するためにも、定期的に婦人科、産婦人科で検診を受けることが大切になります。
 医師による内診で、進行したがんでは卵管がはれているとか、しこりとして触れる場合もあります。その場合は超音波やCT、MRIで検査をして、腫瘍があるか否か調べます。くねくねとしたソーセージ状の腫瘍があり、その中に液体を貯留し充実部もあれば、卵管がんの可能性が高くなります。また、子宮腔内からの吸引細胞診が、発見の切っ掛けとなることもあります。
 治療は、手術により両側の卵管と卵巣、そして子宮を全て摘出します。発見された時にはかなり進行していることが多く、非常に治りにくいため、手術後に抗がん剤による化学療法も行います。
 がんが消化器やリンパ節に転移している場合は、その部分も手術によって切除し、抗がん剤による化学療法、放射線治療を行います。

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■病気 卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍) [病気(ら)]

[晴れ]卵巣に液体成分の入った袋のようなものができ、はれが生じた状態
 卵巣嚢腫(のうしゅ)とは、卵子や女性ホルモンを作っている卵巣に液体成分の入った袋のようなものができ、卵巣の一部にはれが生じた状態。嚢胞性腫瘍(しゅよう)とも呼ばれます。
 この卵巣嚢腫の多くは、子宮の左右両側に一つずつある卵巣の片側に発生しますが、両側に発生することもあります。通常は直径2〜3cm程度の大きさの卵巣は、妊娠、受精に必要な卵胞を抱えている臓器で、女性ホルモンを作っているため、多種類の腫瘍ができやすい臓器です。
 卵巣嚢腫にはいろいろなタイプがあり、大きさもピンポン玉大の小さなものからグレープフルーツ大以上のものまでさまざまです。ほとんどの卵巣嚢腫は小さなもので、症状もありません。かなり大きくなってきて初めて、腹部の膨隆、あるいは腹部に腫瘤(しゅりゅう)を触れるようになってきます。また、時には下腹部に圧迫感、強い痛みを感じることもあります。
 しかしながら、ほとんどの卵巣嚢腫は良性で、がんに代表される悪性腫瘍ではありません。ごくまれに、悪性の卵巣がんであることがあり、嚢腫が茎を持って大きくなる場合には、時として何らかの原因で捻転(ねんてん)を起こすことがあります。このような場合には、激しい痛み、吐き気、嘔吐(おうと)などの強い症状を現したり、種類によっては腹水、胸水を伴うこともあり、そのための全身症状を現します。
 そのために、卵巣嚢腫が見付かった場合には、まず悪いものではないかどうか、治療が必要なものであるかどうかなどをチェックする必要があります。 
 卵巣嚢腫の主なタイプとして、機能性嚢腫、単純性嚢腫、皮様嚢腫、子宮内膜症性嚢腫があります。
 機能性嚢腫は、一時的に排卵日ごろにはれて、自然に消えてなくなるもの。女性なら誰でも、排卵日ごろには卵子を入れる袋である卵胞が大きくなり、卵胞が破裂して卵子が飛び出すことによって、排卵が起こります。まれに、卵胞が大きくなっても卵子が飛び出さず、排卵が起こらないことがあります。大きくなった卵胞がしばらく残っている状態が、この機能性嚢腫です。
 普通、次の月経のころには小さくなります。消失が遅れる場合でも、1〜3カ月以内には消えてなくなります。
 単純性嚢腫は、若い女性に非常によくみられる良性のもの。丸い袋のように見える腫瘍で、内部には隔壁や腫瘍の固まりが全くなく、液体成分だけです。直径5~6cmくらいまでの小さなもので症状がなければ、経過観察をするだけでもかまいません。
 ただし、この単純性嚢腫のようにみえても非常にまれに悪性部分が隠れている場合があるので、定期的な検査は必要です。
 皮様嚢腫は、20〜30歳代によくみられ、内部に皮脂、毛髪、歯、軟骨などを含んだ良性のもの。小さいものなら無症状ですが、大きくなると下腹部痛や不快感などが生じます。普通は次第に大きくなるので、経過観察をしたとしても最終的に手術が必要になることが多い腫瘍です。
 左右の卵巣にできたり、再発することがよくあり、一部ががん化することもあるので、手術しない場合でも定期的な検診は必要です。
 子宮内膜症性嚢腫は、子宮内膜症が原因で卵巣にできるもの。子宮内膜症というのは、子宮の内膜が子宮の内側以外の部分にできる疾患。卵巣に子宮内膜症ができると、月経のたびに卵巣の中でも出血が起こります。そのために、卵巣の中にドロドロの茶褐色の血液がたまるので、別名チョコレート嚢腫(嚢胞)とも呼ばれています。
 月経は毎月起こるので、チョコレート嚢腫も少しずつ大きくなります。大きくなった嚢腫によって下腹部痛、特に性交時の下腹部痛や月経時の下腹部痛が起こります。
[晴れ]卵巣嚢腫の検査と診断と治療
 卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)がほかの婦人科腫瘍と異なるところは、特徴的な初発症状が乏しいことです。早期発見が完全な治療を受けるためには必要なのですが、なかなか症状が出にくく、大量の腹水がたまってから、慌てて婦人科を受診するケースが少なくありません。
 従って、何らかの下腹部痛、不正出血、下り物の増加、腹部膨満感など、ふだんとは異なる症状を感じた場合には、この卵巣嚢腫を念頭に入れ、早期に婦人科を受診して適切な検査を受けることが必要です。
 卵巣嚢腫は、産婦人科の通常検査である内診や超音波検査などによって見付かります。詳しく超音波検査をすることによって、腫瘍の位置、腫瘍の大きさ、腫瘍内部が水だけなのか固まり部分があるのか、腫瘍の中が壁で区切られているのか、腫瘍の中に血液や毛髪、軟骨などが入っていそうかどうかなど、かなりのことがわかります。
 少しでも悪性腫瘍の疑いがある場合には、血液をとってCA125などいくつかの腫瘍マーカーの値を測定します。ただし、卵巣がんの種類によっては、腫瘍マーカーが高くならないことがあります。逆に、卵巣がんでなくても、CA125などが高くなることもあります。
 内診や超音波検査、血液検査だけでは良性か悪性かの判定が難しい場合、さらにCTやMRI検査を行います。実際には、超音波検査で判定が困難な場合は詳しい検査をしても区別が付かないことが多いので、ある程度の大きさがあって全く良性腫瘍とはいい切れない場合には、手術療法を行います。 
 卵巣嚢腫が良性と判断される場合は、一般的に、腹腔(ふくくう)鏡を使って腫瘍部分だけを取り去ることができます。全身麻酔をして、へその下あるいは上に非常に小さな皮膚切開をし、腹の中を観察するための内視鏡カメラを挿入します。1cm以下の切開をさらに数カ所追加して、そこから遠隔操作ができる手術機械を挿入して手術を行います。腹腔鏡を使って手術をした場合には、術後の腹部の傷はほとんど目立ちません。
 腹腔鏡手術が困難なタイプの卵巣嚢腫、あるいは悪性が疑われる場合は、通常の開腹による手術を行います。
 一般的に、卵巣嚢腫の手術は、婦人科の手術の中でもかなり簡単な部類に入ります。ただし、子宮内膜症性嚢腫に限っては、その後の妊娠に対する影響がありますので、慎重に対応する必要があります。
 ごくまれに、がんのような悪性の経過をたどるものがありますが、がんが卵巣内にとどまっている場合は、がんのできている卵巣と卵管だけを切除するだけでよいこともあります。がんが卵巣外にも及んでいる場合は、両側の卵巣と卵管、子宮、胃の下部から垂れて腸の前面を覆う薄いである大網(だいもう)、リンパ節などを広範に摘出しなければなりません。
 大網は最も卵巣がんが転移しやすい部位とされ、早期がんの場合でも切除することがあります。卵巣をすべて摘出してしまうと、女性ホルモンの分泌がなくなるので、ホルモンのバランスが崩れて、自律神経のバランスも崩れ、更年期障害のような症状が現れます。
 がんが卵巣外に広く散らばっている場合には、手術の後、抗がん剤による強力な化学療法が必要となります。抗がん剤はがんの種類によってかなり有効で、残ったがんが縮小したり、消失することもあります。この場合は、もう一度手術を行い、残った腫瘍を完全に摘出したり、化学療法を中止する時期を決定します。




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■病気 卵巣の形態異常(ターナー症候群) [病気(ら)]

[晴れ]性染色体の異常によって、卵巣組織が認められない疾患
 卵巣の形態異常とは、多くは性染色体の異常によって、卵巣の発育異常が生じる先天的な疾患。これらはターナー症候群と呼ばれます。
 この疾患では、卵巣は索状痕跡(こんせき)様、すなわち、ひも状で、卵巣組織が認められません。卵巣から分泌されるはずの女性ホルモンが欠如するため、第二次性徴が発来せず、月経や乳房の発育がみられません。
 ただ、症状には個人差が大きく、中学生になっても性の発達がみられない女性が多い一方、ほぼ正常に二次性徴が現れて、初潮が来る女性もいます。
 そのほかに、ターナー症候群では身長が低い短躯(たんく)、鎖骨から首の外側にかけての皮膚がたるんでいるためにひだができる翼状頸(よくじょうけい)、ひじから先の腕が外向きになる外反肘(がいはんちゅう)などの特有な症状がみられます。知能は概して正常です。
 中学生くらいまでは、低身長以外、あまり気になる症状がない女性も多くいます。また、合併症として、後天的に治療を要する症状が出てくる場合もあります。中耳炎、難聴、骨粗鬆(こつそしょう)症、糖尿病などがその例で、思春期以降に起こることがあります。
 ターナー症候群という疾患名は1938年、これを初めてきちんとまとめたアメリカの内科医ヘンリー・ターナーの名前に由来します。それから約20年後の1959年、染色体の検査が開発され、以後、ターナー症候群は染色体検査できちんと診断でき、幅広く見付けられるようになりました。しかし、この疾患は染色体異常が原因のため、今のところ疾患そのものを治す方法はありませんが、二次性徴は女性ホルモン剤の使用で治療が可能で、低身長も成長ホルモン治療で改善します。
 染色体は、体を作るすべての細胞の内部にあり、2つに分かれる細胞分裂の一定の時期のみ、色素で染めると棒状の形で確認できます。染色体には22対の常染色体と2対の性染色体とがあります。父親から22本の常染色体と1本の性染色体、母親から同じく22本の常染色体と1本の性染色体を受け継いで全部で46対の染色体を持つことになります。性染色体にはXとYという2つの種類があり、Xを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。
 ターナー症候群の女性の場合の典型的な例は、45Xであり、Xが1つしかないものです。また、X染色体が2本あるのに先が欠けていたり、時には小さなY染色体の一部を持っていたり、46XXと45Xとが混ざり合っているモザイクを持つなど要因はさまざまです。
 ターナー症候群の発生頻度は、1000~2000人に1人と推定されています。先天的な疾患の中では、かなり多いほうといえるでしょう。しかも、この染色体構造を持っていると圧倒的に流産の確率が上がりますので、受精卵の段階での発生数はかなりであろうと考えられます。
[晴れ]卵巣の形態異常の検査と診断と治療
 早期発見、早期治療が重要です。本人と家族に、卵巣の形態異常をもたらすターナー症候群という体質を正しく理解する時間的余裕が得られますので、低身長の女児では積極的に染色体検査を受けます。
 背が低いのを少しでも高くしてほしいという女性に対して、よりよい治療成績も得られます。ターナー症候群における低身長症は成長速度が遅いわけですので、発見が遅れれば遅れるほど標準的な身長との差は開いて、せっかく治療しても取り戻すことが難しくなってきます。
 また、低身長症の裏に重大な疾患が隠されていた場合、それを早い段階で見付けて、早く治療することが大事です。成長を促すホルモンを出す脳や甲状腺(せん)、あるいは栄養を体に活かす役割を担う心臓、腎(じん)臓、肝臓、消化器官そのものに異常がある場合は、一刻も早くその元凶を治していかなければなりません。
 ターナー症候群の日本人女性は成長ホルモン治療を受けなかった場合、最終身長が平均139センチなので、治療希望の人には早期発見、早期治療は極端な低身長を防ぎ、最終身長を平均身長に近付ける上で効果が見られています。
 染色体検査でターナー症候群であることが確定すれば、そのすべての人に成長ホルモン治療が公費でできます。二次性徴も女性ホルモン剤の使用で治療が可能ですので、卵巣ホルモンや黄体ホルモンの補充は、最終身長を考慮して時期が決められます。
 成長ホルモン治療の方法は、自己注射方法で、家庭で注射を行います。そのため、医師の適切な指示により注射をすることが必要です。年齢に応じ、夜寝る前に毎日、あるいは2日に1回注射をします。小さいうちは、親などが注射をし、自分でできるようになれば本人が行います。注射針はとても細く、痛みは少ないので心配ありません。
 成長ホルモン注射は基本的に、最終身長に達するまで続けることが必要です。具体的には、年間成長率が1センチになった時か、手のレントゲンで骨端線が閉じる時まで、すなわち15〜16歳ころまで続けることになります。しかし、思春期の早い遅い、性腺刺激ホルモン分泌不全の有無によって治療期間が異なり、20歳を過ぎることもあります。
 身長の伸びの程度もさまざまな条件が関係してきますが、一般的にホルモン不足が重症なほど成長率も高いといえます。
 成長ホルモン治療ではまれに、副作用がみられることもあります。注射した場所の皮膚が赤くなったり、かゆくなったり、注射部位がへこむこともあります。同じ場所ばかりに注射するのでなく、毎回注射する場所を変えることが重要です。
 身長が伸びるのに伴って、関節が痛むこともあります。多くはいわゆる成長痛で、一時的なもので心配いりません。しかし、股関節の痛みが強い時や長時間続く時は、大腿骨(だいたいこつ)骨頭すべり症なども疑う必要があります。
 一時期、成長ホルモン治療と白血病発症との関連性が心配されましたが、現在ではその関連性は否定されています。 原則として安全な治療薬ですが、治療中はもちろん、治療後も定期的に検査を行うなど、副作用がないかを専門医で調べる必要があります。
 なお、ターナー症候群の女性は糖尿病になりやすいので、肥満に注意します。染色体にY染色体の成分が確認された際には、性腺腫瘍(しゅよう)を発症する危険性があるため、性腺摘除を行います。

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■病気 卵巣腫瘍 [病気(ら)]

[晴れ]卵巣の片側または両側に、はれが生じた状態
 卵巣腫瘍(しゅよう)とは、子宮の左右両側に一つずつある卵巣に、はれが生じた状態。多くは卵巣の片側に発生しますが、両側に発生することもあります。
 通常は直径2〜3cm程度の大きさの卵巣は、妊娠、受精に必要な卵胞を抱えている臓器で、女性ホルモンを産生しているため、腫瘍ができやすい臓器です。また、体内の臓器の中で、最も多種類の腫瘍ができる臓器でもあります。
 卵巣腫瘍は大きく分けて、内容が液状で弾力性のある、あるいは軟らかい嚢腫(のうしゅ)と、内容が固形である充実性腫瘍の2つがあります。また、卵巣腫瘍は臨床経過に応じて、良性群、中間群(境界悪性)、悪性群に大きく分けられます。悪性群の代表は、卵巣がんです。
 嚢腫は、中に水のようなものがたまって、ぶよぶよしています。ほとんどの場合良性ですが、中には悪性のものや、悪性に変化するものがあるので注意が必要です。充実性腫瘍は、約75〜80パーセントが悪性もしくは境界悪性です。嚢腫と充実性腫瘍が混じったものもあります。そのほか、ホルモンを作り出す腫瘍もあります。
 卵巣そのものは親指の頭くらいですが、腫瘍ができると徐々に大きくなり、時には数キログラムにもなります。
 卵巣腫瘍の原因は、卵巣内で分泌される液が自然にたまって嚢胞になるとか、子宮内膜症による場合とか、双胎(二子)の場合、あるいは排卵誘発剤によって起こる卵巣の腫大などのほかは、はっきりしません。
 しかし、 卵巣は生殖細胞である卵子が存在する場所なので、胎生期よりさまざまな種類の組織が紛れ込んでいて、それが発育するとも考えられます。従って、卵巣腫瘍には大変多くの種類が存在します。
 卵巣の良性腫瘍は一般的に、ホルモンを作り出すものを除いて、全身症状は乏しいものが多いようです。症状は腫瘍の大小に関係があり、小さなものでは無症状のものが多く、かなり大きくなってきて初めて、腹部の膨隆、あるいは腹部に腫瘤を触れるようになってきます。また、時には下腹部に圧迫感、強い痛みを感じることもあります。
 多くは特別な場合を除いて、いろいろな異常を感じ、医師を訪れた際に偶然に発見されることがしばしばです。
 腫瘍が茎を持って大きくなる場合には、時として何らかの原因で捻転(ねんてん)を起こすことがあります。このような場合には、激しい痛み、吐き気、嘔吐(おうと)などの強い症状を現したり、種類によっては腹水、胸水を伴うこともあり、そのための全身症状を現します。
 そのほか、ホルモンを作り出す腫瘍では、作り出されたホルモンにより、いろいろな異常が引き起こされたりします。
[晴れ]卵巣腫瘍の検査と診断と治療
 卵巣腫瘍がほかの婦人科腫瘍と異なるところは、特徴的な初発症状が乏しいことです。早期発見が完全な治療を受けるためには必要なのですが、なかなか症状が出にくく、大量の腹水がたまってから、慌てて婦人科を受診するケースが少なくありません。
 従って、何らかの下腹部痛、不正出血、下り物の増加、腹部膨満感など、ふだんとは異なる症状を感じた場合には、この卵巣腫瘍を常に念頭に入れ、早期に婦人科を受診して適切な検査を受けることが重要です。特に、下腹部に膨満感があり、ウエストのサイズが大きくなった場合は、ただ太っただけなどとすまさずに、必ず婦人科を受診するようにします
 卵巣腫瘍の診断に最も有用なのは、経腟(けいちつ)超音波検査で、腟の中に超音波プローブという細い管を挿入して卵巣を観察します。この検査は、下腹部を表面から超音波で観察する経腹超音波検査に比べ、卵巣を近いところから詳しく観察できるため、小さな腫瘍を早期に発見するためには不可欠な検査です。
 ただし、卵巣腫瘍でも直径が15cmを超えるほど巨大なものでは、経腹超音波検査のほうが有用なこともあります。また、画像診断として、卵巣腫瘍の種類を特定するためにはCTやMRI検査が有効です。
 卵巣腫瘍が良性か悪性かを判断する一つの目安として、腫瘍マーカーが用いられています。腫瘍マーカーは初期や低年齢の女性の場合は陰性のことが多いため、正確に良性か悪性かを判断するためには、手術によって摘出し、顕微鏡で腫瘍細胞を調べる病理検査を行います。
 治療としては、良性の腫瘍で、若い女性の場合には、腫瘤(しゅりゅう)だけを取る切除術を行い、健康な部分を残すように心掛けます。もし、両側に発生しても、少なくとも片側の健康な部分を残すように努めます。
 このような保存的療法を行うことによって、卵巣の機能は保たれ、妊娠の可能性も残ることになります。
 また、卵巣摘除をする場合も、できるだけ卵管は残すように心掛けます。ただし、腫瘍が卵管に接したり、癒着がひどく、卵管にも病変が認められるような場合には、卵巣とともに卵管の摘出も行われます。
 時として、がんのような悪性の経過をたどるものがありますが、がんが卵巣内にとどまっている場合は、がんのできている卵巣と卵管だけを切除するだけでよいこともあります。がんが卵巣外にも及んでいる場合は、両側の卵巣と卵管、子宮、胃の下部から垂れて腸の前面を覆う薄いである大網(だいもう)、リンパ節などを広範に摘出しなければなりません。
 大網は最も卵巣がんが転移しやすい部位とされ、早期がんの場合でも切除することがあります。卵巣をすべて摘出してしまうと、女性ホルモンの分泌がなくなるので、ホルモンのバランスが崩れて、自律神経のバランスも崩れ、更年期障害のような症状が現れます。
 がんが卵巣外に広く散らばっている場合には、手術の後、抗がん剤による強力な化学療法が必要となります。抗がん剤はがんの種類によってかなり有効で、残ったがんが縮小したり、消失することもあります。この場合は、もう一度手術を行い、残った腫瘍を完全に摘出したり、化学療法を中止する時期を決定します。

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