■用語 1p36欠失症候群 [用語(あ行)]
染色体の異常によって発症する生まれつきの疾患
1p36(いちぴーさんろく)欠失症候群とは、染色体の異常によって発症し、生まれた時から持っている疾患。
その名前の通り、1番染色体短腕の末端の36領域に微細な欠失がみられます。ほとんどの発症者は、顔貌(がんぼう)に特徴があり、運動や言葉の発達に遅れが生じます。
1p36欠失症候群の発症者は、日本では2万5000人から4万人に1人の頻度で年間10人から20人程度出生し、現在は約100人いると推測されています。
しかし、一般医師における認知度が低く、未診断のまま原因不明の重度精神発達遅滞児として重度心身障害児施設に入所している例が多いと考えられ、正確な有病率はわかっていません。男女の割合は、3対7で女性のほうが多いとされます。
染色体の異常は、生殖細胞の減数分裂過程で精子あるいは卵子ができる時に起こると考えられています。ほとんどの場合は、突然変異により生じます。
ただし、ほかの染色体との不均衡転座によって生じる欠失が認められる場合は、約半数の発症者で両親のうちの一方に由来する均衡転座から生じています。
1p36欠失症候群の発症者の主な症状は、突出した下顎(かがく)や落ちくぼんだ目などの特徴的な顔貌、運動や言葉の発達の遅れ、てんかん発作。特に特徴的な顔貌と発達の遅れは、ほぼ100%の割合でみられます。
これらの症状のほか、生まれつき心臓の構造に問題がみられる先天性心疾患、生まれつき口蓋(こうがい)に割れがみられる口蓋裂、口唇裂などの口腔(こうくう)外科疾患、難聴などの耳鼻科疾患、肥満などを合併することがあります。
染色体の欠失の大きさや、合併症の程度にも影響され、経過はさまざまで、発音がうまくできない構音障害を示しながらも会話が可能になる場合もあれば、自力歩行ができない場合もあります。
自力歩行ができ、日常生活も比較的自立している発症者の場合、過食から肥満になることがあります。
1p36欠失症候群の検査と診断と治療
小児科の医師による出生後の診断では、特徴的な外見や症状から可能性が疑われ、染色体検査で確定します。
ただし、染色体の欠失の大きさが微細であることから、Gーband(ジーバンド)法などの通常の染色体検査では検出が困難で、染色体の一部に蛍光物質で目印をつけて蛍光顕微鏡で観察するFISH(フィッシュ)法により確定診断が可能です。近年では、正確な欠失範囲を同定するために、網羅的に解析することができるアレイCGH法などの染色体検査が用いられるようになってきています。
小児科の医師などによる治療では、根本的な治療法がないため、さまざまな症状に対する対症療法を行います。てんかん発作に対しては薬物療法、先天性心疾患に対しては手術療法が中心となります。症状が安定している場合は、口蓋裂などの手術に踏み切ることもあります。
それに加えて、コミュニケーションの訓練や、咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)の問題による摂食障害がある場合は口から食べる行為の訓練など、専門的な訓練を行うことも重要です。
てんかん発作の予後にはばらつきがあり、症状の緩和が得られる場合もあれば、生涯にわたって持続する場合もあります。てんかん発作の予後は、運動や言葉の発達の予後と関係します。先天性心疾患を合併している場合には、その治療の成否が生命予後に影響します。
1p36(いちぴーさんろく)欠失症候群とは、染色体の異常によって発症し、生まれた時から持っている疾患。
その名前の通り、1番染色体短腕の末端の36領域に微細な欠失がみられます。ほとんどの発症者は、顔貌(がんぼう)に特徴があり、運動や言葉の発達に遅れが生じます。
1p36欠失症候群の発症者は、日本では2万5000人から4万人に1人の頻度で年間10人から20人程度出生し、現在は約100人いると推測されています。
しかし、一般医師における認知度が低く、未診断のまま原因不明の重度精神発達遅滞児として重度心身障害児施設に入所している例が多いと考えられ、正確な有病率はわかっていません。男女の割合は、3対7で女性のほうが多いとされます。
染色体の異常は、生殖細胞の減数分裂過程で精子あるいは卵子ができる時に起こると考えられています。ほとんどの場合は、突然変異により生じます。
ただし、ほかの染色体との不均衡転座によって生じる欠失が認められる場合は、約半数の発症者で両親のうちの一方に由来する均衡転座から生じています。
1p36欠失症候群の発症者の主な症状は、突出した下顎(かがく)や落ちくぼんだ目などの特徴的な顔貌、運動や言葉の発達の遅れ、てんかん発作。特に特徴的な顔貌と発達の遅れは、ほぼ100%の割合でみられます。
これらの症状のほか、生まれつき心臓の構造に問題がみられる先天性心疾患、生まれつき口蓋(こうがい)に割れがみられる口蓋裂、口唇裂などの口腔(こうくう)外科疾患、難聴などの耳鼻科疾患、肥満などを合併することがあります。
染色体の欠失の大きさや、合併症の程度にも影響され、経過はさまざまで、発音がうまくできない構音障害を示しながらも会話が可能になる場合もあれば、自力歩行ができない場合もあります。
自力歩行ができ、日常生活も比較的自立している発症者の場合、過食から肥満になることがあります。
1p36欠失症候群の検査と診断と治療
小児科の医師による出生後の診断では、特徴的な外見や症状から可能性が疑われ、染色体検査で確定します。
ただし、染色体の欠失の大きさが微細であることから、Gーband(ジーバンド)法などの通常の染色体検査では検出が困難で、染色体の一部に蛍光物質で目印をつけて蛍光顕微鏡で観察するFISH(フィッシュ)法により確定診断が可能です。近年では、正確な欠失範囲を同定するために、網羅的に解析することができるアレイCGH法などの染色体検査が用いられるようになってきています。
小児科の医師などによる治療では、根本的な治療法がないため、さまざまな症状に対する対症療法を行います。てんかん発作に対しては薬物療法、先天性心疾患に対しては手術療法が中心となります。症状が安定している場合は、口蓋裂などの手術に踏み切ることもあります。
それに加えて、コミュニケーションの訓練や、咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)の問題による摂食障害がある場合は口から食べる行為の訓練など、専門的な訓練を行うことも重要です。
てんかん発作の予後にはばらつきがあり、症状の緩和が得られる場合もあれば、生涯にわたって持続する場合もあります。てんかん発作の予後は、運動や言葉の発達の予後と関係します。先天性心疾患を合併している場合には、その治療の成否が生命予後に影響します。
■用語 安静時狭心症 [用語(あ行)]
就寝中など比較的安静にしている際に起こる狭心症
安静時狭心症とは、就寝中や早朝など比較的安静にしている際に発生する狭心症。
狭心症は、心臓の表面を取り巻く血管である冠(状)動脈の狭窄(きょうさく)などによって、心臓の筋肉である心筋に十分な血液が送られなくなり、心筋が一時的な酸素欠乏になった状態のことです。
狭心症にはいろいろなタイプがありますが、よく知られているタイプは、一般的にみられる労作(ろうさ)性狭心症と、安静時に発生する安静時狭心症の2つです。
安静時狭心症は、心不全などを合併することも多く、一般的にみられる労作性狭心症よりも重症です。
労作狭心症は、動脈硬化などで冠動脈が狭くなっている際に、過度のストレス、精神的興奮、坂道や階段の昇降運動といった一定の強さの運動や動作が誘因となり、心臓の負担が増すことで心筋が一時的な酸素欠乏になって起こるものです。
安静時狭心症の中には、労作性狭心症のように冠動脈の狭窄を伴うものと伴わないものがあります。
冠動脈の狭窄がないにもかかわらず狭心症が起こる機序としては、冠攣縮(かんれんしゅく)という現象が関与すると考えられています。冠攣縮では、ストレスや迷走神経の刺激などによって冠動脈がけいれんを起こし、内腔(ないくう)が狭くなるために血流が低下して狭心症が起こります。冠攣縮は運動や動作とは無関係に起こるために、安静時狭心症の大部分は冠攣縮による狭心症といわれています。
冠攣縮による狭心症のうち、深夜から早朝にかけて就寝中に発生し、心電図波形のうちで、ST部分が通常より著名に上昇した状態を来たすものを異型狭心症と呼んでいます。
異型狭心症は日本人によくみられ、血管攣縮性狭心症とも呼ばれ、冠動脈に明らかな動脈硬化はないのに、血管がけいれんして内腔が極端に狭くなるために胸痛発作が起こります。
深夜から早朝の就寝中や安静時に胸痛発作が起こりやすいのが特徴ですが、早朝の運動時にも起こり、喫煙、過呼吸、ストレス、不眠やアルコール過飲が胸痛発作の引き金になります。胸痛に冷汗や嘔吐(おうと)、失神を伴う時があり、重症の不整脈や心筋梗塞(こうそく)を起こして突然死することもあります。
安静時狭心症の検査と診断と治療
循環器科、循環器内科の医師による診断では、検査によって症状を特定します。普通の心電図検査を中心に、胸部X線、血液検査、さらにホルター心電図、心臓超音波検査(心エコー)、心臓カテーテル検査、薬剤負荷カテーテル検査などを行います。いずれの検査も、痛みは伴いません。
ホルター心電図は、携帯式の小型の心電計を付けたまま帰宅してもらい、体を動かしている時や、寝ている時に心電図がどう変化するかをみる検査。長時間の記録ができ、自覚症状のない血管攣縮が出ていないかなどがわかります。
心臓超音波検査は、心臓の大きさ、心筋の動き、弁の機能などを評価できます。
心臓カテーテル検査は、カテーテルという細長い管を腕や大腿(だいたい)の動脈より挿入して血管を通して心臓まで到達させ、さらに大動脈起始部より出ている冠動脈にカテーテルを挿入して造影剤を注入することで、冠動脈の状態の詳細を把握することができます。
薬剤負荷カテーテル検査は、冠動脈造影剤に加え、冠動脈のけいれんを誘発するアセチルコリン、エルゴノビンといった薬剤を直接冠動脈に注入し、症状、心電図変化、血管造影所見から診断を行います。診断制度は80~90%と高い一方、攣縮の活動性の低い人では誘発されないこともあります。また、攣縮の活動性には日内変動があり、一般的に深夜から早朝に生じることが多いため、朝一番に施行することが多くなります。
循環器科、循環器内科の医師による治療では、薬剤負荷カテーテル検査や発作時心電図により異型狭心症と診断された場合、原則として薬物治療となります。カルシウム拮抗(きっこう)薬、ニトログリセリンや硝酸イソソルビドなどの硝酸薬、ニコランジルなどの冠血管拡張剤が主体です。
安静時狭心症の中で冠動脈の狭窄を伴う場合は、経皮的冠動脈形成術、冠動脈バイパス手術などの外科的治療も行われます。
また、日常生活でも血管攣縮の誘発因子を避けることが必要です。誘発因子として、心身の疲労、ストレス、喫煙、精神的興奮、寒冷、過換気、女性ホルモン欠乏、アルコールなどがあります。
安静時狭心症のリスクを低めるには、食事が役立ちます。青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)という成分は、血栓を溶かす作用があり、動脈硬化を予防します。タマネギに含まれる硫化アリルも、血液をサラサラにする作用があります。
血管の弾力性を保つ蛋白(たんぱく)質、抗酸化作用のある緑黄色野菜と大豆製品も、必要不可欠です。
安静時狭心症とは、就寝中や早朝など比較的安静にしている際に発生する狭心症。
狭心症は、心臓の表面を取り巻く血管である冠(状)動脈の狭窄(きょうさく)などによって、心臓の筋肉である心筋に十分な血液が送られなくなり、心筋が一時的な酸素欠乏になった状態のことです。
狭心症にはいろいろなタイプがありますが、よく知られているタイプは、一般的にみられる労作(ろうさ)性狭心症と、安静時に発生する安静時狭心症の2つです。
安静時狭心症は、心不全などを合併することも多く、一般的にみられる労作性狭心症よりも重症です。
労作狭心症は、動脈硬化などで冠動脈が狭くなっている際に、過度のストレス、精神的興奮、坂道や階段の昇降運動といった一定の強さの運動や動作が誘因となり、心臓の負担が増すことで心筋が一時的な酸素欠乏になって起こるものです。
安静時狭心症の中には、労作性狭心症のように冠動脈の狭窄を伴うものと伴わないものがあります。
冠動脈の狭窄がないにもかかわらず狭心症が起こる機序としては、冠攣縮(かんれんしゅく)という現象が関与すると考えられています。冠攣縮では、ストレスや迷走神経の刺激などによって冠動脈がけいれんを起こし、内腔(ないくう)が狭くなるために血流が低下して狭心症が起こります。冠攣縮は運動や動作とは無関係に起こるために、安静時狭心症の大部分は冠攣縮による狭心症といわれています。
冠攣縮による狭心症のうち、深夜から早朝にかけて就寝中に発生し、心電図波形のうちで、ST部分が通常より著名に上昇した状態を来たすものを異型狭心症と呼んでいます。
異型狭心症は日本人によくみられ、血管攣縮性狭心症とも呼ばれ、冠動脈に明らかな動脈硬化はないのに、血管がけいれんして内腔が極端に狭くなるために胸痛発作が起こります。
深夜から早朝の就寝中や安静時に胸痛発作が起こりやすいのが特徴ですが、早朝の運動時にも起こり、喫煙、過呼吸、ストレス、不眠やアルコール過飲が胸痛発作の引き金になります。胸痛に冷汗や嘔吐(おうと)、失神を伴う時があり、重症の不整脈や心筋梗塞(こうそく)を起こして突然死することもあります。
安静時狭心症の検査と診断と治療
循環器科、循環器内科の医師による診断では、検査によって症状を特定します。普通の心電図検査を中心に、胸部X線、血液検査、さらにホルター心電図、心臓超音波検査(心エコー)、心臓カテーテル検査、薬剤負荷カテーテル検査などを行います。いずれの検査も、痛みは伴いません。
ホルター心電図は、携帯式の小型の心電計を付けたまま帰宅してもらい、体を動かしている時や、寝ている時に心電図がどう変化するかをみる検査。長時間の記録ができ、自覚症状のない血管攣縮が出ていないかなどがわかります。
心臓超音波検査は、心臓の大きさ、心筋の動き、弁の機能などを評価できます。
心臓カテーテル検査は、カテーテルという細長い管を腕や大腿(だいたい)の動脈より挿入して血管を通して心臓まで到達させ、さらに大動脈起始部より出ている冠動脈にカテーテルを挿入して造影剤を注入することで、冠動脈の状態の詳細を把握することができます。
薬剤負荷カテーテル検査は、冠動脈造影剤に加え、冠動脈のけいれんを誘発するアセチルコリン、エルゴノビンといった薬剤を直接冠動脈に注入し、症状、心電図変化、血管造影所見から診断を行います。診断制度は80~90%と高い一方、攣縮の活動性の低い人では誘発されないこともあります。また、攣縮の活動性には日内変動があり、一般的に深夜から早朝に生じることが多いため、朝一番に施行することが多くなります。
循環器科、循環器内科の医師による治療では、薬剤負荷カテーテル検査や発作時心電図により異型狭心症と診断された場合、原則として薬物治療となります。カルシウム拮抗(きっこう)薬、ニトログリセリンや硝酸イソソルビドなどの硝酸薬、ニコランジルなどの冠血管拡張剤が主体です。
安静時狭心症の中で冠動脈の狭窄を伴う場合は、経皮的冠動脈形成術、冠動脈バイパス手術などの外科的治療も行われます。
また、日常生活でも血管攣縮の誘発因子を避けることが必要です。誘発因子として、心身の疲労、ストレス、喫煙、精神的興奮、寒冷、過換気、女性ホルモン欠乏、アルコールなどがあります。
安静時狭心症のリスクを低めるには、食事が役立ちます。青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)という成分は、血栓を溶かす作用があり、動脈硬化を予防します。タマネギに含まれる硫化アリルも、血液をサラサラにする作用があります。
血管の弾力性を保つ蛋白(たんぱく)質、抗酸化作用のある緑黄色野菜と大豆製品も、必要不可欠です。
■用語 音響外傷 [用語(あ行)]
極めて大きな音により急性に引き起こされる音響性聴力障害
音響外傷とは、極めて大きな音を急に聞くことで引き起こされる聴力障害。急性音響性難聴と呼ばれることもあります。
音量の大きな音楽を演奏するロックバンドのライブコンサートやショー、イベントなどの数時間の観覧、ヘッドホンやイヤホンを介した大音量での長時間の音楽鑑賞が原因となって、若い人に症状が起こることもあり、ロック難聴やヘッドホン難聴と呼ばれることもあります。
また、祝賀用の爆竹の破裂音、花火の破裂音、ピストルの発砲音を繰り返し聞く、大音量の爆発音を何度も聞く、工場の機械の瞬間的に生じた大きな作動音を聞くことでも、音響外傷の症状が起こります。
音は空気の振動によって、外耳道から鼓膜を介して中耳へと伝わります。中耳にある骨が振動すると内耳へと情報が伝わり、内耳の中の蝸牛(かぎゅう)にあるリンパ液が振動を受けます。この振動を有毛細胞と呼ばれる感覚細胞が感知することで、脳へと音の情報が伝わります。
音響外傷は、一定レベルを超える大音量にさらされることにより、音を感知する有毛細胞が障害を受けることで発症します。
症状は、音が聞こえにくくなる難聴、耳鳴り、耳が詰まったり、こもったりする感じが生じる耳閉感、耳の痛みです。めまいや吐き気を伴うこともあります。
音が聞こえにくくなる難聴の場合、音全般が聞こえにくくなったり、低音だけ聞こえが悪くなったりなど症状はさまざまです。
症状は一時的に起こり、自然に回復する場合もあります。また、音の発生源に近いほうの耳だけに、症状が起こることもあります。
軽度のものであれば音から離れることで症状が改善しますが、重篤な場合には難聴や耳鳴りが永続化してしまうこともあります。
大音量にさらされた後、難聴、耳鳴りなどの症状が続く場合は、早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診してください。
音響外傷の検査と診断と治療
耳鼻咽喉科の医師による診断では、大きな音にさらされたという情報が有益になります。
検査としては、まずは耳の中をのぞくことができる耳鏡を使って、鼓膜に穴が開く鼓膜穿孔(せんこう)がないかを確かめます。次に、耳の聞こえが低下していることを確認するために、純音聴力検査を行います。さまざまな振動数の音がどれくらい聞こえているかを調べる検査で、左右それぞれの耳で行います。状況によっては、めまいに関する検査をすることもあります。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、耳の神経の修復を助けるホルモン剤、ビタミン剤、循環改善剤などを用いることがあります。状況によっては、ステロイド剤を使うこともあります。
難聴が軽く、早期に治療を始めた場合には、回復する可能性があります。
難聴の症状が固定すると、症状を完全に回復させることが難しい場合もあるため、音を聞く際には適度に休憩をとるなど予防策を講じることが大切です。
イヤホンで音楽を聞く際には、音量を大きくしすぎず、長時間にわたって聞かないようにします。また、ライブコンサートなどの観覧に際しては、会場の音が強いと感じるようであればその場から離れたり、耳栓を使用したりするなど耳を保護する対策を講じることが重要です。
耳の神経は疲れやストレスの影響を受けるため、心身の安静を保つことも必要です。規則正しい生活を送り、ストレスをため込まないことが大切。
音響外傷とは、極めて大きな音を急に聞くことで引き起こされる聴力障害。急性音響性難聴と呼ばれることもあります。
音量の大きな音楽を演奏するロックバンドのライブコンサートやショー、イベントなどの数時間の観覧、ヘッドホンやイヤホンを介した大音量での長時間の音楽鑑賞が原因となって、若い人に症状が起こることもあり、ロック難聴やヘッドホン難聴と呼ばれることもあります。
また、祝賀用の爆竹の破裂音、花火の破裂音、ピストルの発砲音を繰り返し聞く、大音量の爆発音を何度も聞く、工場の機械の瞬間的に生じた大きな作動音を聞くことでも、音響外傷の症状が起こります。
音は空気の振動によって、外耳道から鼓膜を介して中耳へと伝わります。中耳にある骨が振動すると内耳へと情報が伝わり、内耳の中の蝸牛(かぎゅう)にあるリンパ液が振動を受けます。この振動を有毛細胞と呼ばれる感覚細胞が感知することで、脳へと音の情報が伝わります。
音響外傷は、一定レベルを超える大音量にさらされることにより、音を感知する有毛細胞が障害を受けることで発症します。
症状は、音が聞こえにくくなる難聴、耳鳴り、耳が詰まったり、こもったりする感じが生じる耳閉感、耳の痛みです。めまいや吐き気を伴うこともあります。
音が聞こえにくくなる難聴の場合、音全般が聞こえにくくなったり、低音だけ聞こえが悪くなったりなど症状はさまざまです。
症状は一時的に起こり、自然に回復する場合もあります。また、音の発生源に近いほうの耳だけに、症状が起こることもあります。
軽度のものであれば音から離れることで症状が改善しますが、重篤な場合には難聴や耳鳴りが永続化してしまうこともあります。
大音量にさらされた後、難聴、耳鳴りなどの症状が続く場合は、早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診してください。
音響外傷の検査と診断と治療
耳鼻咽喉科の医師による診断では、大きな音にさらされたという情報が有益になります。
検査としては、まずは耳の中をのぞくことができる耳鏡を使って、鼓膜に穴が開く鼓膜穿孔(せんこう)がないかを確かめます。次に、耳の聞こえが低下していることを確認するために、純音聴力検査を行います。さまざまな振動数の音がどれくらい聞こえているかを調べる検査で、左右それぞれの耳で行います。状況によっては、めまいに関する検査をすることもあります。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、耳の神経の修復を助けるホルモン剤、ビタミン剤、循環改善剤などを用いることがあります。状況によっては、ステロイド剤を使うこともあります。
難聴が軽く、早期に治療を始めた場合には、回復する可能性があります。
難聴の症状が固定すると、症状を完全に回復させることが難しい場合もあるため、音を聞く際には適度に休憩をとるなど予防策を講じることが大切です。
イヤホンで音楽を聞く際には、音量を大きくしすぎず、長時間にわたって聞かないようにします。また、ライブコンサートなどの観覧に際しては、会場の音が強いと感じるようであればその場から離れたり、耳栓を使用したりするなど耳を保護する対策を講じることが重要です。
耳の神経は疲れやストレスの影響を受けるため、心身の安静を保つことも必要です。規則正しい生活を送り、ストレスをため込まないことが大切。
■用語 温熱じんましん [用語(あ行)]
風呂のお湯などの温熱刺激が原因となって生ずるじんましん
温熱じんましんとは、風呂や暖房器具、ドライヤー、温かい飲食物などの温熱刺激によって生じる皮膚病。
症状は通常、温熱刺激が加わってから数分以内に現れ、数時間以内に消失します。
温熱刺激が加わってから通常数分以内に、強いかゆみを伴う皮膚の盛り上がりが生じます。かゆみや皮膚の変化は、数時間以内に治まることが多く認められます。
じんましんは、何らかの刺激によって皮膚の血管周辺にあるマスト細胞(肥満細胞)が刺激されて、細胞内に蓄えられているヒスタミンという化学物質が放出され、皮膚のはれや、かゆみ、湿疹(しっしん)ができる症状です。ヒスタミンには皮膚の血管を拡張させる作用があり、血管が拡張することで血液中の液体成分が血管の外に漏れ出し、これが皮膚を赤く盛り上げてはれとなるのです。ヒスタミンには、神経に作用してかゆみを引き起こす作用もあるため、赤いはれとともにかゆみも生じます。
マスト細胞が刺激される原因はさまざまですが、風呂のお湯に浸(つ)かったり、暖房器具に当たったりして、皮膚が急に激しい温度変化にさらされることも刺激になり、温熱じんましんが発生しやすくなります。
全身が冷え切った状態で、いきなり風呂のお湯に浸かると、皮膚表面の温度が急激に上がり、温熱じんましんが出やすくなります。風呂上がりに体が赤く、強いかゆみが出るという場合は、温熱じんましんが出ている可能性が高いといえます。
また、冬場に寒い屋外から戻って急に暖かい室内に入った時や、夏場にエアコンで冷えた室内から急に暑い屋外に出た時にも、温熱じんましんが出やすくなります。
温熱じんましんは、急に体が温まることが原因で起きるもので、空気が乾燥して皮膚のバリア機能が弱まり刺激を受けやすくなる冬場に、多くみられる疾患です。梅雨の時期から夏にかけて、みられるケースもあります。
寒い冬場は、暖房器具のすぐ近くで暖を取ることも珍しくありません。最近の暖房器具は、温風が出るものが多く、それが肌に当たるとその部分だけ急激に体温が上昇し、じんましんが出やすくなります。
温風だけでなく、赤外線電気こたつ、電気毛布、ホットカーペット、あんか、懐炉、ヒートパッド、火鉢、湯たんぽなどなど体に密着させて使う暖房器具でも、同じ状況が起きやすくなります。
運動後に、温熱じんましんが出る場合もあります。運動をすると体温が上がり、とりわけ冬場に運動をする前と運動をした後では、皮膚表面の温度が大きく変わり、温熱じんましんが出やすくなります。冬場に運動をすると体がかゆくなるという場合は、温熱じんましんが出ている可能性があります。
そのほかの温熱刺激物質としては、ドライヤー、日光、料理に伴う熱なども挙げられ、敏感な人ではホットコーヒーなど温かい飲食物を摂取した後にも、唇がはれるなど粘膜症状としてじんましんが出ることもあります。
温熱じんましんは誰でも発症する可能性がありますが、アレルギー体質の人や冷え性の人が特に発症しやすいといえます。アレルギー体質の人は、温熱じんましんの原因となるヒスタミンが出やすいためです。また、冷え性の人は、常に皮膚が冷えているので、ほかの人よりも低温でじんましんが出やすくなります。
このほかにも、乾燥肌、敏感肌の人も、温熱じんましんが出やすいといえます。
温熱じんましんはどの年代でも発症する可能性がありますが、乳幼児や高齢者に多い傾向があります。例えば、「赤ちゃんは冷やしてはいけない」とされるため、つい厚着をさせがちですが、体温調節がまだうまくできないので、温度差が激しい場所に行くと体温も変わりやすい結果、かゆみが出て激しくぐずることもあります。
また、高齢者の場合は、加齢から肌の温度調節がうまくいかず乾燥肌になりやすいため、温熱じんましんになりやすい状態です。
温熱じんましんでは、皮膚のはれや、かゆみ、湿疹、粘膜のはれなどが主な症状として現れます。局所的にできるものは、赤みやかゆみが強く、蚊が刺したように皮膚がプクッと膨らむ傾向があります。
かゆいからといって皮膚をかきむしると、それが刺激になってさらにじんましんが広がることもあります。
そのほかの症状として、全身倦怠(けんたい)感、頭痛、ふらつき、吐き気や嘔吐(おうと)、下痢、腹痛、息苦しさなどが挙げられます。重症の場合には意識を失うこともあり、症状は個人によって大きく異なります。
温熱じんましんのほとんどは、花粉やハウスダストなどがアレルゲンとなって起こるアレルギー性ではなく、単に皮膚が刺激を受けたことによって起こる非アレルギー性であり、お湯に浸かったり、暖房器具に当たったりすれば必ず出るものではありません。ストレスがたまっていたり、抵抗力が弱っていたりすると、発生しやすくなります。
温熱じんましんは、日常のふとした切っ掛けで生じることがあるため、温熱刺激による異変を感じた場合や、風呂のお湯に浸かったり、体温が急激に上がったりするたびに、温熱じんましんが出るような場合は、一度、皮膚科ないし皮膚泌尿器科で詳しく皮膚の状態を診察してもらうことが大切です。
温熱じんましんの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、問診にて具体的な症状やそれまでの経過を確認します。
特に、入浴後やドライヤーの使用後、温かい飲食物の摂取後に症状が生じたなどの情報は重要で、じんましんの発症前の状況や症状の変化を具体的に伝えてもらいます。
温熱じんましんが疑われる場合には、実際に温熱刺激を皮膚に加え、その後の皮膚変化を医師が評価する検査を行うこともあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、じんましんが生じる原因となる温熱刺激をできるだけ避けることが重要です。また、かゆみの原因となるヒスタミンを抑えるための治療薬を処方します。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が中心ですが、かゆみが強い場合にはステロイド薬を併用することもあります。じんましんの症状が治まっても、薬の服用期間は厳守してもらいます。
主に内服薬を処方しますが、眠気や排尿障害などの副作用が生じることもあります。
温熱じんましんを繰り返す状態が続く場合は、抵抗力や免疫力を高めるために体質改善を視野に入れて、漢方薬を試してみるのもお勧めです。すぐに効果が現れなくても、指示された通りに根気よく治療を続けることによって、完治することもあります。
温熱じんましんとは、風呂や暖房器具、ドライヤー、温かい飲食物などの温熱刺激によって生じる皮膚病。
症状は通常、温熱刺激が加わってから数分以内に現れ、数時間以内に消失します。
温熱刺激が加わってから通常数分以内に、強いかゆみを伴う皮膚の盛り上がりが生じます。かゆみや皮膚の変化は、数時間以内に治まることが多く認められます。
じんましんは、何らかの刺激によって皮膚の血管周辺にあるマスト細胞(肥満細胞)が刺激されて、細胞内に蓄えられているヒスタミンという化学物質が放出され、皮膚のはれや、かゆみ、湿疹(しっしん)ができる症状です。ヒスタミンには皮膚の血管を拡張させる作用があり、血管が拡張することで血液中の液体成分が血管の外に漏れ出し、これが皮膚を赤く盛り上げてはれとなるのです。ヒスタミンには、神経に作用してかゆみを引き起こす作用もあるため、赤いはれとともにかゆみも生じます。
マスト細胞が刺激される原因はさまざまですが、風呂のお湯に浸(つ)かったり、暖房器具に当たったりして、皮膚が急に激しい温度変化にさらされることも刺激になり、温熱じんましんが発生しやすくなります。
全身が冷え切った状態で、いきなり風呂のお湯に浸かると、皮膚表面の温度が急激に上がり、温熱じんましんが出やすくなります。風呂上がりに体が赤く、強いかゆみが出るという場合は、温熱じんましんが出ている可能性が高いといえます。
また、冬場に寒い屋外から戻って急に暖かい室内に入った時や、夏場にエアコンで冷えた室内から急に暑い屋外に出た時にも、温熱じんましんが出やすくなります。
温熱じんましんは、急に体が温まることが原因で起きるもので、空気が乾燥して皮膚のバリア機能が弱まり刺激を受けやすくなる冬場に、多くみられる疾患です。梅雨の時期から夏にかけて、みられるケースもあります。
寒い冬場は、暖房器具のすぐ近くで暖を取ることも珍しくありません。最近の暖房器具は、温風が出るものが多く、それが肌に当たるとその部分だけ急激に体温が上昇し、じんましんが出やすくなります。
温風だけでなく、赤外線電気こたつ、電気毛布、ホットカーペット、あんか、懐炉、ヒートパッド、火鉢、湯たんぽなどなど体に密着させて使う暖房器具でも、同じ状況が起きやすくなります。
運動後に、温熱じんましんが出る場合もあります。運動をすると体温が上がり、とりわけ冬場に運動をする前と運動をした後では、皮膚表面の温度が大きく変わり、温熱じんましんが出やすくなります。冬場に運動をすると体がかゆくなるという場合は、温熱じんましんが出ている可能性があります。
そのほかの温熱刺激物質としては、ドライヤー、日光、料理に伴う熱なども挙げられ、敏感な人ではホットコーヒーなど温かい飲食物を摂取した後にも、唇がはれるなど粘膜症状としてじんましんが出ることもあります。
温熱じんましんは誰でも発症する可能性がありますが、アレルギー体質の人や冷え性の人が特に発症しやすいといえます。アレルギー体質の人は、温熱じんましんの原因となるヒスタミンが出やすいためです。また、冷え性の人は、常に皮膚が冷えているので、ほかの人よりも低温でじんましんが出やすくなります。
このほかにも、乾燥肌、敏感肌の人も、温熱じんましんが出やすいといえます。
温熱じんましんはどの年代でも発症する可能性がありますが、乳幼児や高齢者に多い傾向があります。例えば、「赤ちゃんは冷やしてはいけない」とされるため、つい厚着をさせがちですが、体温調節がまだうまくできないので、温度差が激しい場所に行くと体温も変わりやすい結果、かゆみが出て激しくぐずることもあります。
また、高齢者の場合は、加齢から肌の温度調節がうまくいかず乾燥肌になりやすいため、温熱じんましんになりやすい状態です。
温熱じんましんでは、皮膚のはれや、かゆみ、湿疹、粘膜のはれなどが主な症状として現れます。局所的にできるものは、赤みやかゆみが強く、蚊が刺したように皮膚がプクッと膨らむ傾向があります。
かゆいからといって皮膚をかきむしると、それが刺激になってさらにじんましんが広がることもあります。
そのほかの症状として、全身倦怠(けんたい)感、頭痛、ふらつき、吐き気や嘔吐(おうと)、下痢、腹痛、息苦しさなどが挙げられます。重症の場合には意識を失うこともあり、症状は個人によって大きく異なります。
温熱じんましんのほとんどは、花粉やハウスダストなどがアレルゲンとなって起こるアレルギー性ではなく、単に皮膚が刺激を受けたことによって起こる非アレルギー性であり、お湯に浸かったり、暖房器具に当たったりすれば必ず出るものではありません。ストレスがたまっていたり、抵抗力が弱っていたりすると、発生しやすくなります。
温熱じんましんは、日常のふとした切っ掛けで生じることがあるため、温熱刺激による異変を感じた場合や、風呂のお湯に浸かったり、体温が急激に上がったりするたびに、温熱じんましんが出るような場合は、一度、皮膚科ないし皮膚泌尿器科で詳しく皮膚の状態を診察してもらうことが大切です。
温熱じんましんの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、問診にて具体的な症状やそれまでの経過を確認します。
特に、入浴後やドライヤーの使用後、温かい飲食物の摂取後に症状が生じたなどの情報は重要で、じんましんの発症前の状況や症状の変化を具体的に伝えてもらいます。
温熱じんましんが疑われる場合には、実際に温熱刺激を皮膚に加え、その後の皮膚変化を医師が評価する検査を行うこともあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、じんましんが生じる原因となる温熱刺激をできるだけ避けることが重要です。また、かゆみの原因となるヒスタミンを抑えるための治療薬を処方します。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が中心ですが、かゆみが強い場合にはステロイド薬を併用することもあります。じんましんの症状が治まっても、薬の服用期間は厳守してもらいます。
主に内服薬を処方しますが、眠気や排尿障害などの副作用が生じることもあります。
温熱じんましんを繰り返す状態が続く場合は、抵抗力や免疫力を高めるために体質改善を視野に入れて、漢方薬を試してみるのもお勧めです。すぐに効果が現れなくても、指示された通りに根気よく治療を続けることによって、完治することもあります。