■病気 腎臓がん [病気(さ行)]
細胞にできる腎細胞がんと、尿の通路にできる腎盂がん
腎臓(じんぞう)がんとは、血液から不要物をこし取って尿を作る器官である腎臓に発生するがん。
成人にも幼小児にも腎臓のがんはできますが、幼小児にできる腎臓のがんはウイルムス腫瘍(しゅよう)といい、成人の腎臓がんと全く違う性質のものです。
成人の腎臓にできるがんには、腎臓の細胞にできる腎細胞がんと、腎臓の尿の通路にできる腎盂がんの2つがあります。
がん全体の中で、腎臓がんが占める割合は1パーセント以下です。腎臓がんの中で、腎細胞がんが占める割合は90パーセント、腎盂がんが占める割合は残りの10パーセントです。
【腎細胞がん】
腎細胞がんとは、腎臓の細胞にできるがん。腎臓に発生するがんの約90パーセントを占めることから、単に腎がんとも呼ばれます。
がんは、腎臓の実質で、尿を作る腎尿細管上皮細胞から発生します。年間発生者数は1万〜1万2000人と推定され、発症年齢は50〜60歳代が最も多く、男女比はほぼ2〜3対1の割合。
原因は不明ですが、発症の危険因子として、たばこや鎮痛解熱剤の大量摂取、ホルモン薬の常用、肥満、高血圧、糖尿病、心筋梗塞(こうそく)の既往がいわれています。
また、腎不全により長期間血液透析を受けている人における腎細胞がんの発生頻度は、一般の人に比べて100倍ぐらい高いといわれています。これは血液中の尿毒症物質が原因と考えられています。
初期は、無症状です。近年は画像診断の普及により、人間ドックや他の疾患で医療機関を受診した際に偶然、無症状の小さな腎細胞がんが発見されることが多くなりました。
サイズの大きい腫瘍(しゅよう)においては、出たり止まったりの肉眼でわかる血尿、腎臓の疼痛(とうつう)、側腹部の腫瘤(しゅりゅう)が認められます。また、全身的症状として倦怠(けんたい)感、発熱、体重減少、食欲不振、貧血などを来す場合は、進行が速いといわれています。
腫瘍が静脈内に進展した場合は、下大静脈という腹部で一番大きな静脈が閉塞(へいそく)し、血液が他の静脈を通って心臓に戻るため、腹部体表の静脈が目立ったり、男性の陰嚢(いんのう)内の静脈が目立つ現象が起こることもあります。
腎細胞がんの転移しやすい臓器は肺と骨で、肺転移の多くは自覚症状に乏しく、骨に転移すると痛みを伴います。
まれに、腎細胞がんが産生するサイトカインという物質によって、赤血球増多症や高血圧、高カルシウム血症などが引き起こされることがあります。
【腎盂がん】
腎盂(じんう)がんとは、腎臓で作られた尿の最初の通路である腎盂にできるがん。
腎盂がんは尿の流れてくる通路の表面のところにできますので、何ら特別の自覚症状もないのに突然、無症候性の血尿が約5人に4人の割合で出ます。この血尿は、血が膀胱よりも上のほうから流れてくるわけですから、尿の全部が真っ赤になります。
その他の症状としては、がんからの出血により、たまたま尿の流れが阻害されると腎臓がはれるために、腹部に痛みが出ることもあります。しかし、腎盂がんそのもので痛むということはなく、血尿が唯一の症状といえるものです。
40歳以降の男性、特に60〜70歳代に多くみられます。男女比はほぼ3対1の割合です。
漏斗状の腎盂の周辺には、長さ25〜30センチ、内腔(ないくう)約5ミリの尿管などの臓器が隣接しているため、腎盂がんがみられた場合には、いろいろな部位にもがんが発生していることもあります。
腎臓がんの検査と診断と治療
【腎細胞がん】
肉眼的血尿に気付いたら、泌尿器科、腎臓内科の専門医を受診します。人間ドックや検診などで腎細胞がんが疑われた場合は、すぐに泌尿器科の専門医を受診します。
医師による診断では、まず尿検査と腎臓の画像診断を行います。尿の検査では、血液の出血の有無、がん細胞の有無を調べます。画像診断では、超音波検査、CT検査(コンピューター断層撮影)、静脈性腎盂造影や腎動脈造影で、腎臓の形の変化や動脈の分布状態を調べます。
これらの検査で腎静脈や下大静脈の腫瘍による閉塞が疑われる場合には、MRI検査により進展範囲を診断します。
肺転移の有無は、胸部X線写真や肺CTによって検索します。骨転移の有無は、骨シンチグラフィを行って確認します。
医師による治療では、腎臓を摘出する手術が最善の方法です。薬物療法、放射線療法もありますが、これらはあくまでも手術の補助療法です。
手術は従来、開腹手術による腎臓の摘出だけでしたが、近年は開腹手術よりも術後が楽な腹腔鏡下の手術が開発され、この方法で周囲脂肪組織も含めた腎臓の摘出も行われています。リンパ節切除も腹腔鏡下で行われます。
各種画像診断の普及から発見される機会が増加している、腫瘍サイズが3〜4センチと小さい腎細胞がんに対しては、腎臓を全部摘出せず、腫瘍とともに腎臓の一部のみを摘出する手術が行われています。このような手術を受けた場合でも、腎臓を全部摘出する手術を受けた場合でも、再発率、生存率については大差がないといわれています。
腎臓が摘出ができない症例に対しては、動脈塞栓(そくせん)術や凍結術が有効なこともあります。動脈塞栓術は、腎動脈を人工的に閉塞させ、がんに血液が流れ込まないようにする方法で、大きな腫瘍を摘出する手術に先立って行われることもあります。
薬物療法については、抗がん剤はほとんど無効ですが、インターフェロンやインターロイキンが有効なこともあります。
肺や骨などへの転移に対しては、自己の免疫力を高める免疫療法や分子標的治療を行うことが一般的です。転移巣が少数で、腫瘍の大きさや数が変わらない場合、経過観察後あるいは免疫療法後に、手術による転移部位の摘出が行われることがあります。
肺の転移巣に対する外科療法では、長期生存も期待されます。さらに骨転移、脳転移などに対しても、外科療法や放射線療法が行われることがあります。
腫瘍サイズが3〜4センチと小さい腎細胞がんは、90パーセント以上が治癒しています。5〜6センチの腫瘍では20〜30パーセント、7〜8センチの腫瘍では、30〜40パーセントで再発を認めるといわれています。
10センチ以上の大きな腫瘍や、転移のある腫瘍では、治癒率はより劣ります。発熱、体重減少、貧血などの症状のある腎細胞がんの予後は、無症状のがんより明らかに不良です。
【腎盂がん】
痛くない血尿が出たら腎盂がんを疑い、すぐに泌尿器科を受診します。
医師による診断では、まず尿検査と腎臓、腎盂の画像診断を行います。尿の検査では、血液の出血の有無、がん細胞の有無を調べます。画像診断では、超音波検査、CT検査(コンピューター断層撮影)、静脈性腎盂造影や腎動脈造影で、腎臓の形の変化や動脈の分布状態を調べます。近年は、超音波検査やCT検査で発見率が向上してきました。
また、専用の内視鏡で直接がんを確認する方法もあり、内視鏡を利用してがんと思われる組織の一部を採取して、診断を確実なものにすることもあります。
治療法としては、腎盂や尿管、あるいは腎臓の摘出と、膀胱部分を切除する手術を行います。通常、がんが発生した腎盂のみを摘出するという方法は、行われません。周辺の臓器にもがんが発生している可能性も高いため、同時に摘出、切除手術を行います。腎盂のみを摘出した場合では、残った尿管や腎臓にがんが発生する可能性が出てきます。
しかし、がんがまだ小さい場合では、大掛かりな摘出、切除手術を行わず、内視鏡を使って病巣のみを切除する方法が行われることもあります。
補助療法として手術後に、放射線療法を行うこともあります。さらに、がんが転移していた場合には、化学療法として、マイトマイシン、メソトレキセート、シスプラチン、アドリアマイシンなどの抗がん剤を併用して治療を行います。
早期のうちに治療を行うことができ、がんをすべて切除することができれば、予後はよくなっています。手術後も定期的な検査は受け、他の臓器への転移がないかどうか調べておいたほうがよいでしょう。
腎盂がんの5年生存率は、40〜60パーセントです。
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腎臓(じんぞう)がんとは、血液から不要物をこし取って尿を作る器官である腎臓に発生するがん。
成人にも幼小児にも腎臓のがんはできますが、幼小児にできる腎臓のがんはウイルムス腫瘍(しゅよう)といい、成人の腎臓がんと全く違う性質のものです。
成人の腎臓にできるがんには、腎臓の細胞にできる腎細胞がんと、腎臓の尿の通路にできる腎盂がんの2つがあります。
がん全体の中で、腎臓がんが占める割合は1パーセント以下です。腎臓がんの中で、腎細胞がんが占める割合は90パーセント、腎盂がんが占める割合は残りの10パーセントです。
【腎細胞がん】
腎細胞がんとは、腎臓の細胞にできるがん。腎臓に発生するがんの約90パーセントを占めることから、単に腎がんとも呼ばれます。
がんは、腎臓の実質で、尿を作る腎尿細管上皮細胞から発生します。年間発生者数は1万〜1万2000人と推定され、発症年齢は50〜60歳代が最も多く、男女比はほぼ2〜3対1の割合。
原因は不明ですが、発症の危険因子として、たばこや鎮痛解熱剤の大量摂取、ホルモン薬の常用、肥満、高血圧、糖尿病、心筋梗塞(こうそく)の既往がいわれています。
また、腎不全により長期間血液透析を受けている人における腎細胞がんの発生頻度は、一般の人に比べて100倍ぐらい高いといわれています。これは血液中の尿毒症物質が原因と考えられています。
初期は、無症状です。近年は画像診断の普及により、人間ドックや他の疾患で医療機関を受診した際に偶然、無症状の小さな腎細胞がんが発見されることが多くなりました。
サイズの大きい腫瘍(しゅよう)においては、出たり止まったりの肉眼でわかる血尿、腎臓の疼痛(とうつう)、側腹部の腫瘤(しゅりゅう)が認められます。また、全身的症状として倦怠(けんたい)感、発熱、体重減少、食欲不振、貧血などを来す場合は、進行が速いといわれています。
腫瘍が静脈内に進展した場合は、下大静脈という腹部で一番大きな静脈が閉塞(へいそく)し、血液が他の静脈を通って心臓に戻るため、腹部体表の静脈が目立ったり、男性の陰嚢(いんのう)内の静脈が目立つ現象が起こることもあります。
腎細胞がんの転移しやすい臓器は肺と骨で、肺転移の多くは自覚症状に乏しく、骨に転移すると痛みを伴います。
まれに、腎細胞がんが産生するサイトカインという物質によって、赤血球増多症や高血圧、高カルシウム血症などが引き起こされることがあります。
【腎盂がん】
腎盂(じんう)がんとは、腎臓で作られた尿の最初の通路である腎盂にできるがん。
腎盂がんは尿の流れてくる通路の表面のところにできますので、何ら特別の自覚症状もないのに突然、無症候性の血尿が約5人に4人の割合で出ます。この血尿は、血が膀胱よりも上のほうから流れてくるわけですから、尿の全部が真っ赤になります。
その他の症状としては、がんからの出血により、たまたま尿の流れが阻害されると腎臓がはれるために、腹部に痛みが出ることもあります。しかし、腎盂がんそのもので痛むということはなく、血尿が唯一の症状といえるものです。
40歳以降の男性、特に60〜70歳代に多くみられます。男女比はほぼ3対1の割合です。
漏斗状の腎盂の周辺には、長さ25〜30センチ、内腔(ないくう)約5ミリの尿管などの臓器が隣接しているため、腎盂がんがみられた場合には、いろいろな部位にもがんが発生していることもあります。
腎臓がんの検査と診断と治療
【腎細胞がん】
肉眼的血尿に気付いたら、泌尿器科、腎臓内科の専門医を受診します。人間ドックや検診などで腎細胞がんが疑われた場合は、すぐに泌尿器科の専門医を受診します。
医師による診断では、まず尿検査と腎臓の画像診断を行います。尿の検査では、血液の出血の有無、がん細胞の有無を調べます。画像診断では、超音波検査、CT検査(コンピューター断層撮影)、静脈性腎盂造影や腎動脈造影で、腎臓の形の変化や動脈の分布状態を調べます。
これらの検査で腎静脈や下大静脈の腫瘍による閉塞が疑われる場合には、MRI検査により進展範囲を診断します。
肺転移の有無は、胸部X線写真や肺CTによって検索します。骨転移の有無は、骨シンチグラフィを行って確認します。
医師による治療では、腎臓を摘出する手術が最善の方法です。薬物療法、放射線療法もありますが、これらはあくまでも手術の補助療法です。
手術は従来、開腹手術による腎臓の摘出だけでしたが、近年は開腹手術よりも術後が楽な腹腔鏡下の手術が開発され、この方法で周囲脂肪組織も含めた腎臓の摘出も行われています。リンパ節切除も腹腔鏡下で行われます。
各種画像診断の普及から発見される機会が増加している、腫瘍サイズが3〜4センチと小さい腎細胞がんに対しては、腎臓を全部摘出せず、腫瘍とともに腎臓の一部のみを摘出する手術が行われています。このような手術を受けた場合でも、腎臓を全部摘出する手術を受けた場合でも、再発率、生存率については大差がないといわれています。
腎臓が摘出ができない症例に対しては、動脈塞栓(そくせん)術や凍結術が有効なこともあります。動脈塞栓術は、腎動脈を人工的に閉塞させ、がんに血液が流れ込まないようにする方法で、大きな腫瘍を摘出する手術に先立って行われることもあります。
薬物療法については、抗がん剤はほとんど無効ですが、インターフェロンやインターロイキンが有効なこともあります。
肺や骨などへの転移に対しては、自己の免疫力を高める免疫療法や分子標的治療を行うことが一般的です。転移巣が少数で、腫瘍の大きさや数が変わらない場合、経過観察後あるいは免疫療法後に、手術による転移部位の摘出が行われることがあります。
肺の転移巣に対する外科療法では、長期生存も期待されます。さらに骨転移、脳転移などに対しても、外科療法や放射線療法が行われることがあります。
腫瘍サイズが3〜4センチと小さい腎細胞がんは、90パーセント以上が治癒しています。5〜6センチの腫瘍では20〜30パーセント、7〜8センチの腫瘍では、30〜40パーセントで再発を認めるといわれています。
10センチ以上の大きな腫瘍や、転移のある腫瘍では、治癒率はより劣ります。発熱、体重減少、貧血などの症状のある腎細胞がんの予後は、無症状のがんより明らかに不良です。
【腎盂がん】
痛くない血尿が出たら腎盂がんを疑い、すぐに泌尿器科を受診します。
医師による診断では、まず尿検査と腎臓、腎盂の画像診断を行います。尿の検査では、血液の出血の有無、がん細胞の有無を調べます。画像診断では、超音波検査、CT検査(コンピューター断層撮影)、静脈性腎盂造影や腎動脈造影で、腎臓の形の変化や動脈の分布状態を調べます。近年は、超音波検査やCT検査で発見率が向上してきました。
また、専用の内視鏡で直接がんを確認する方法もあり、内視鏡を利用してがんと思われる組織の一部を採取して、診断を確実なものにすることもあります。
治療法としては、腎盂や尿管、あるいは腎臓の摘出と、膀胱部分を切除する手術を行います。通常、がんが発生した腎盂のみを摘出するという方法は、行われません。周辺の臓器にもがんが発生している可能性も高いため、同時に摘出、切除手術を行います。腎盂のみを摘出した場合では、残った尿管や腎臓にがんが発生する可能性が出てきます。
しかし、がんがまだ小さい場合では、大掛かりな摘出、切除手術を行わず、内視鏡を使って病巣のみを切除する方法が行われることもあります。
補助療法として手術後に、放射線療法を行うこともあります。さらに、がんが転移していた場合には、化学療法として、マイトマイシン、メソトレキセート、シスプラチン、アドリアマイシンなどの抗がん剤を併用して治療を行います。
早期のうちに治療を行うことができ、がんをすべて切除することができれば、予後はよくなっています。手術後も定期的な検査は受け、他の臓器への転移がないかどうか調べておいたほうがよいでしょう。
腎盂がんの5年生存率は、40〜60パーセントです。
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