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■学校放射線基準は「安全でない」 ノーベル賞受賞の米医師団が声明 [健康ダイジェスト]

 東京電力福島第1原発の事故で、文部科学省が福島県内の小中学校などの屋外活動制限の可否に関する放射線量の基準を、年間20ミリシーベルトを目安として設定したことに対し、米国の民間組織「社会的責任のための医師の会(PSR、本部ワシントン)」が2日までに、「子供の発がんリスクを高めるもので、このレベルの被曝を安全と見なすことはできない」との声明を発表しました。
 PSRは、1985年にノーベル平和賞を受賞した「核戦争防止国際医師の会」の米国内組織。
 声明は、米科学アカデミーの研究報告書を基に「放射線に安全なレベルはなく、子供や胎児はさらに影響を受けやすい」と指摘。「年間20ミリシーベルトは、子供の発がんリスクを200人に1人増加させ、このレベルでの被曝が2年間続く場合、子供へのリスクは100人に1人となる」として、「子供への放射線許容量を年間20ミリシーベルトに引き上げたのは不当なことだ」と批判しました。
 この学校放射線基準の是非を巡る議論は、被爆地長崎でも波紋が広がっています。被曝医療の専門家の見解は一様でなく、被爆者からは「基準決定に至る経過が不透明」と政府の対応に疑問を抱く声が出ています。
 政府が定めた基準は、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に準拠。勧告では、緊急時の一般人の許容限度を年間20~100ミリシーベルト、事故が収束に向かうレベルでは同1~20ミリシーベルトを目安に対応するよう求めています。だが、子供にそのまま当てはめると比較的高い放射線量の被曝を認めることになるとして、専門家の批判が相次ぎ、内閣官房参与の小佐古敏荘東大大学院教授が辞任する一因にもなりました。
 事故以降、被曝医療や放射線の情報提供のため度々福島入りしている長崎大大学院医歯薬学総合研究科の山下俊一教授は、「ICRPの緊急時と収束時の境目を取ったのが20ミリシーベルト。非常事態に置かれた現地の状況を踏まえれば、数値には理論的根拠はある」と一定容認。「事態が収束に向かえば放射線量の数値も下がるとみられるが、今は福島の生活、社会環境などを踏まえると政策的に判断せざるを得ないのではないか」との見解を示しました。
 日赤長崎原爆病院の朝長万左男院長は、「20ミリシーベルトで特に何か症状が現れるわけではないが、成長期にある子供は10ミリシーベルト程度で抑える方向で努力してもよかった」と指摘しました。
 一方、被爆者団体などの思いは複雑です。長崎原爆遺族会の正林克記会長は、「20ミリシーベルトがいいか悪いかではなく、政府は将来を担う子供たちのことを考え、安全な環境に移すことを最優先に考えるべきだ」と疑問を呈しました。
 政府の基準値決定の経過を批判する意見もあります。文科省から基準値への助言を求められた国の原子力安全委員会は、正式な委員会を招集しませんでした。長崎原爆被災者協議会の山田拓民事務局長は、「何か便宜的に処置したような印象を受ける。もっと議論をすべきだった」と話しました。

 2011年5月2日(月)




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