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■ES細胞から立体的な目の網膜組織 移植治療実現へ一歩 [健康ダイジェスト]

 さまざまな細胞になる能力がある胚性幹細胞(ES細胞)から立体的な人の目の網膜組織を作ることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市中央区)などが成功し、網膜の再生医療に期待が高まっています。
 試験管内に約9000個のES細胞を浮遊させながら目的の細胞に分化させ、約1カ月後には、真ん中が杯のようにへこんだ「眼杯(がんぱい)」と呼ばれる状態になりました。4カ月後には、人の場合と同じように神経など細胞が層構造を持つ網膜組織を確認できたといいます。液体窒素で急速に冷やすことで、どの段階でも冷凍保存できるようにもなりました。
 このES細胞から作った網膜組織は今後5年以内に動物実験で有効性を確認するほか、同じく「万能細胞」と呼ばれる人工多能性幹細胞(iPS細胞)から同センターなどが作ったシート状の網膜の一部細胞は、患者に移植する臨床研究が2013年度にも始まる見通しです。
 動物実験で網膜の細胞ががん化せず、人に移植しても問題がないと確認できたためで、実現すればiPS細胞を使った国内初の臨床研究となります。
 計画によると、iPS細胞から網膜を構成する網膜色素上皮細胞を作り、悪化すれば失明につながる「加齢黄斑変性症」の患者の網膜裏に移植します。病気の進行を遅らせ、視力を少し回復する効果が期待できるといいます。
 この加齢黄斑変性症は網膜色素上皮細胞が傷付き、この細胞が栄養を供給する視細胞にも障害が出る病気で、60歳代以上に多く、国内に数十万人の患者がいるとみられます。
 網膜は光を感知する組織で、いったん傷付くと再生せず、治療法が確立されていません。再生医療の対象となる主な病気は、加齢黄斑変性と、視細胞が傷付いて視野が狭くなるなどする「網膜色素変性症」の2種類。
 網膜色素上皮細胞は比較的構造が単純なことなどから応用が近付きましたが、一方で視細胞は神経系のため構造が複雑で培養が難しく、細胞移植だけでは機能の回復が難しい可能性も指摘されていました。
 14日、同センターなどが米科学誌「セル・ステムセル」に発表した目の網膜組織作製の成功で、網膜色素変性症に対する移植治療も、実現へと一歩近付きました。網膜色素変性症の治療法確立は、患者らの団体が寄付して各地の治療研究を支援するほど期待されています。同センターは、サルなどで有効性を確認した上で、臨床研究につなげたいといいます。
 また、目の網膜組織作製の成功は、重い加齢黄斑変性の治療にも役立つ可能性があります。同症でも網膜色素上皮細胞だけでなく、視細胞にも大きな障害がある場合は両方とも置き換えなければならず、組織の移植が必要になるためです。
 同センターの笹井芳樹グループディレクターらは、「移植研究の一方、患者の細胞を使って網膜組織を作ることで、病気の原因遺伝子の治療研究なども進めたい」としています。

 2012年6月19日(火)




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