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■ノロウイルス、遺伝子変異で感染リスク増大の恐れ 餅つき大会中止など各地に影響広がる [健康ダイジェスト]

 大きな流行になっているノロウイルスは、遺伝子に複数の変化が起きて、人への感染の危険性が高まっている恐れのあることが国立感染症研究所や北里大学などの調査でわかりました。
 過去に感染し免疫を獲得した人でも再感染しやすくなっている可能性があり、子供中心の流行が今後、大人にも拡大し、食中毒の多発などにもつながる恐れがあるとして、専門家が注意を呼び掛けています。
 ノロウイルスは、激しい嘔吐(おうと)や下痢などの胃腸炎を引き起こすウイルスです。感染力が強く、乳幼児や高齢者の場合、脱水症状などを起こして入院治療が必要になることもあります。
 国立感染症研究所などの研究グループが、今シーズン、全体の7割以上を占める「G2・2」というタイプのウイルスを詳しく調べたところ、遺伝子に変化が起きていることが明らかになりました。遺伝子の変化は、人への感染力にかかわる部分で起きていて、過去に感染し、免疫を獲得した人でも再感染しやすくなっている可能性があるということです。
 同様の遺伝子の変化は、10年前の2006年にも確認され、大きな流行が起きています。当時、流行していた「G2・4」というタイプのウイルスの遺伝子が変化し、人が免疫を持たない新たなウイルスとなって感染を広げました。例年より1カ月早い10月ごろから患者が急速に増え始め、国立感染症研究所によりますと、9月から12月上旬までの3カ月余りで、子供を中心に患者は推計300万人以上に上りました。
 このうち、東京都内のホテルでは利用客など360人以上の集団感染が発生。ノロウイルスの感染経路は通常、ウイルスの付着した手を口元に持っていく経路がほとんどですが、このケースでは利用客の嘔吐物を通じて床のじゅうたんにウイルスが付着し、消毒が十分でないまま、そのじゅうたんの上を人が歩くことでウイルスが空中に舞い上がり、感染が広がった可能性が指摘されています。
 また、2006年は、ノロウイルスが原因の食中毒も多発。厚生労働省によりますと、ノロウイルスが原因の食中毒は499件と、例年より100件以上多く、患者は2万7616人に上りました。
 ノロウイルスについて詳しい北里大学の片山和彦教授は食中毒が多発した理由について、遺伝子の変化によって免疫を持つ大人にも感染が広がったこと、症状が治まってもウイルスが1、2週間ほどは便から排出されることを知らない人が多いと思われること、手や腕のそでぐちなどにウイルスが付着した状態で調理を行ったケースがあったことなどを挙げています。
 片山教授によりますと、年明けの1月以降に食中毒の発生が多くなったケースもあり、「自分が感染した場合だけでなく家族に感染者がいる場合も調理前に服を着替え、手洗いの徹底を行うことが重要だ」ということです。
 一方、ノロウイルスが全国的に猛威を振るう中、各地に影響が広がっています。
 宮城県では、水揚げされたカキからノロウイルスが相次いで検出され、宮城県漁業協同組合は、12月20日から25日まで、県内すべての海域で生食用カキの出荷を見合わせました。静岡市清水区の小学校では11月に、給食の調理員がノロウイルスに感染していたことがわかり、一時的に給食を中止しました。
 影響は、年末年始にかけての催し物にも及んでいます。全国的に相次いでいるのが、ノロウイルスの流行を理由にした餅つき大会の開催中止です。
 千葉県木更津市の郷土博物館は、23日に開催予定だった餅つき大会の開催を見送りました。10年前からほぼ毎年行っていましたが、ノロウイルス対策を理由に中止するのは初めて。地元の保健所から、「流行のピークなのでやめたほうがよい」と助言されたといいます。同館は、「昨年は子供からお年寄りまで150人ほどが来場した。万一の時はたくさんの人が感染してしまう」と理解を求めています。
 岡山市の岡山聖園(みその)幼稚園も、年末恒例の餅つき大会を今年は中止しました。「子供が伝統文化に触れ食育にもなっていたが、子供の健康が第一」と説明しています。川崎市の武蔵小杉駅前の商店街や愛知県豊川市の豊川市民病院も、同様に取りやめました。
 餅つきは、手返しや切り分け、味付けなど、手で触れる工程が多く、手指についたノロウイルスから感染が広がりやすくなります。熊本県南小国町の保育園では、8日の餅つき大会が原因とみられる食中毒が発生し、園児や保護者など計52人が嘔吐や下痢を訴えました。
 一方、感染防止策に取り組み、例年通り開催するところもあります。東京都世田谷区の上町児童館では18日、餅つき大会が行われました。調理スタッフは全員マスクと手袋を着用し、子供たちには消毒を徹底しました。親子で参加した近くの主婦は、「餅つきは家庭ではできない体験。実施できてよかった」と話しています。
 東京都町田市の小川自治会は昨年から、同市保健所の助言に従い、ついた餅をあんこ餅ときなこ餅に調理するのをやめました。白餅として販売し、自宅で煮たり焼いたりして食べてもらいます。「ついた餅は飾り用の鏡餅にして食べないようにするか、雑煮や汁粉など火を通して提供すれば、感染リスクは減らせる」と同保健所。
 厚労省によると、餅つきに食品衛生法の規定はなく、主に自治体の保健所などの判断に委ねられるため、各地で対応が異なっています。
 日本の食文化に詳しい熊倉功夫・国立民族学博物館名誉教授は、「餅つきには共同体を結び付けてきた側面もあり、中止すると地域がますますバラバラになる。衛生面と両立する方法を模索してほしい」と話しています。

 2016年12月23日(金)

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