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■新型コロナウイルス、新興・途上国感染が先進国を抜く 1日5万人を超え新たなリスク [健康ダイジェスト]

 アメリカやヨーロッパが経済再開へ動き始める中、新興・途上国で新型コロナウイルスへの感染が急増しています。新規感染者数は5月上旬に先進国を逆転し、8日に1日5万人を超えました。
 ロシアは感染者数が連日1万人を超え、ブラジルは1日の死者数がアメリカに次いで世界2位となりました。脆弱な医療体制にもかかわらず、貧困層の不満を抑えるため経済再開を急いでおり、感染爆発の懸念が高まっています。財政基盤が不安定な新興・途上国の感染拡大は、世界経済へのリスクにもなりかねません。
 世界保健機関(WHO)のデータをもとに、新型コロナウイルスの新規感染者数を国連の基準で先進国と新興・途上国に分類して集計したところ、先進国は4月上中旬から4割以上減少した一方で、新興・途上国は拡大が止まりません。
 ロシアは病院や軍で集団感染が相次ぎ、9日まで7日連続で新規感染者数が1万人を超えました。政府系研究機関は、感染源の64%が病院に集中すると指摘しています。ブラジルも新規感染者が1万人を超え、1日当たりの死者数はアメリカにに次ぐ2位で推移しています。サンパウロなど大都市の貧困街では外出自粛令を無視して営業を続ける店も少なくなく、こうした地域が感染拡大の温床となっています。
 アフリカも急増が懸念されており、WHOによると累積の感染者数は4万人超、死者数は約1300人ですが、対策をとらなければ1年間で最大4400万人が感染して同19万人が死亡する恐れがあります。特に南アフリカやカメルーンの感染拡大に警鐘を鳴らしています。
 新興・途上国は先進国に比べて、公的な医療体制が脆弱。感染拡大が医療崩壊、ひいては死者の増加につながるリスクも高くなります。WHOによると公的医療関連支出は国内総生産(GDP)比で3%と、先進国の8%を大きく下回ります。感染拡大が目立つロシアやブラジル、イラン、インド、メキシコは、いずれも世界平均(6%)を下回ります。
 ブラジルは憲法で公的医療を無料で受けられると定めているものの公立病院が少なく、富裕層向け病院では集中治療室(ICU)に空きがある一方、公立病院頼みの低所得者は適切な治療を受けられずに死亡する事態が相次いでいます。イランはアメリカの経済制裁で弱っていた医療体制に、コロナ禍が追い打ちをかけました。病院では人工呼吸器に加え、マスクやガウンも不足し、被害拡大を招きました。
 感染爆発の危機に直面している新興・途上国では、それでも外出禁止の解除や商店の営業再開を目指す動きは後を絶ちません。3月に全土封鎖したインドは、感染者が比較的少ない2割強の地域で経済活動の再開を認めました。
 ブラジルのジャイール・ボルソナロ大統領は新型コロナウイルス感染症を「ただの風邪」と呼び、「外出自粛は経済や雇用を破壊する」と国民に呼び掛けています。ロシアは6日の閣議で、地方の感染状況を踏まえた行動制限の緩和を議し、モスクワでは12日から建設業や製造業の再開を認めます。
 経済再開を急ぐ背景には、財政や経済の弱さがあります。先進国のような手厚い補償や現金給付を提供できず、国民の不満が政府へ向かいやすくなります。
 新興・途上国は外出規制などに伴う経済対策で財政赤字が膨らみ、これを不安視する海外マネーの流出を招いています。その結果、自国通貨の相場が下落し、対外債務の実質負担を高めるという悪循環に陥っています。国際通貨基金(IMF)には、100カ国以上が緊急融資を求めています。
 新興・途上国の感染爆発を止められなければ、世界の新型コロナウイルスへの闘いに終止符は打てません。対外債務の不履行などが広がれば、世界経済にも大混乱が広がる懸念があり、医療・経済の両面でグローバルな支援体制の構築が求められています。

 2020年5月10日(日)

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