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■ポリオ根絶したイギリス、下水からウイルス検出 当局はワクチン接種を呼び掛け [健康ダイジェスト]

 イギリスの健康安全保障局(HSA)は6月22日、数十年ぶりにロンドン市内でポリオ(急性灰白髄炎・小児まひ)の原因となるポリオウイルスが検出されたことを明らかにした。
 イギリスで最後に野生株のポリオウイルスへの感染が確認されたのは1984年で、2003年にはポリオの根絶を宣言していますが、ロンドンの下水処理施設からポリオウイルスが検出され、新たな集団感染が起こるのではないかと懸念されています。感染すると深刻な障害や死につながる可能性もあり、ワクチン接種歴を確認するようHSAが市民に呼び掛けています。
 ポリオは、感染者が排泄後に手をよく洗わず、他人の飲食するものに触れたりすることで広がります。また、せきやくしゃみで移るケースもあります。感染しても症状がなく気付かないことがほとんどなものの、100人から1000人に1人が脊髄や脳の神経をウイルスに攻撃され、主に足にまひを生じることがあります。呼吸筋が侵されると死に至る場合もあります。
 イギリスのスコッツマン紙によれば、これまでイギリスでは下水サンプルからポリオウイルスが単発で検出されることはありました。海外で経口生ポリオワクチン(生きたウイルスの毒性を弱めたもの)の接種を受けたイギリス人または旅行者が排泄し、その糞便中にワクチン由来ポリオウイルスが含まれていたためです。しかし今回は2月から5月にかけて遺伝子的にリンクした複数のウイルスが、ロンドン北部と東部にサービスを提供する下水処理場のサンプルから検出されました。
 今回のサンプルに含まれるウイルスは、イギリスで進化したものだとされます。もとは経口生ポリオワクチンに含まれていた弱毒化したポリオウイルスの株で、時間とともに変化し、「野生株」または自然に存在するウイルスに近い動きをするようになったものだといいます。
 ロンドンに本部を置くスカイニュースによれば、この20年ほどの間にイギリスを含め西ヨーロッパではワクチン由来のポリオの集団感染は起こっていません。ヨーロッパ地域でも、確認された集団感染はウクライナ2件、ウズベキスタン1件、イスラエル1件のみだといいます。
 HSAは、海外で生ポリオワクチンを接種した人が2022年の初めに入国してウイルスを排出し、ロンドンにウイルスが侵入したとみています。
 イギリスを含むポリオが根絶された国のほとんどでは、生ワクチンではなく不活化ワクチン(ウイルスの感染能力を失わせたものが原料)が予防接種に使われています。しかしスカイニュースによれば、感染が残るパキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアでは流行時に効果が高い生ワクチンを利用しています。これらの国から来た人がウイルスをもたらした可能性が高く、その人物は現在、ロンドン北東部でウイルスを家族など近しい人々に移しており、その人たちの糞便中のウイルスが検出されていると考えられています。
 HSAは現在コミュニティー内での感染の程度を調査中で、念のためほかの地域でも起こっていないか確認するとしており、ナショナル・インシデント(国家的緊急事態)を宣言し、世界保健機関(WHO)に状況報告を行いました。
 もっとも、これまでポリオ感染者の報告はなく、サジド・ジャビッド保健相はウイルスの検出については「特に心配していない」とBBCに話しています。
 イギリスでは、ポリオワクチンの接種は1歳までに3回、その後3歳、14歳でブースター接種することになっています。最初の3回の接種率は92%を超えており、かなりの予防効果が期待できます。
 ただし、最初の3回の接種率はロンドンでは90%弱に低下しており、ブースター接種に関しても5歳までに71%の子供が受けているにすぎないといいます。今のところ感染リスクは低いものの、ワクチン接種率の低い地域で感染が広がる可能性があるといいます。
 集団感染が起きれば、イギリスはWHOからのポリオ清浄国としてのお墨付きを失うことになりかねない。HSAは、ワクチン接種が完全に終わっていない子供たちは感染リスクが高いとし、できる限り早く接種を受けさせるよう保護者に求めています。また、長らく感染がなく警戒心が薄れていたこともあり、特にロンドンの医師たちにポリオの症状に注意するよう呼び掛けています。

 2022年6月24日(金)

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