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■用語 乳房痛 [用語(な行)]

[位置情報]女性の乳房に痛みが生じる状態
 乳房痛とは、女性の乳房に痛みが生じる状態を指す症状。
 女性の乳房は、乳汁(母乳)の出口となる乳頭(乳首)、乳汁を作る働きを持つ乳腺(にゅうせん)と脂肪、血管、神経でできています。痛みの症状の原因は、卵巣から分泌されている女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)がほとんどで、思春期、月経期間、妊娠期間、閉経時と、女性であればどの時期でも起こる可能性があります。また、乳房の疾患が原因となって、乳房に痛みやしこり現れることもあります。
 乳房痛は、軽いしびれから鋭い痛みまで、重症度が異なります。乳房痛を患う女性は、乳房の圧痛を感じたり、通常にない乳房の張りを感じたりする場合があります。
 月経のある女性は、月経周期に関連し、排卵から次の月経までの黄体期に卵巣から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用で、乳腺内の血管の膨張や乳腺組織の増加のために、乳房に痛みや張りを感じます。両方の乳房に起こり、全体的に痛むことが多いようです。生理的なものであれば、日常生活に支障を来すことはありません。月経周期に関連する痛みは大抵の場合、生理中または生理後には軽減します。
 強い痛みが続く場合は、医師による治療の対象になります。この治療が必要な乳房痛は、現れる時期や月経の有無から、周期性乳房痛と非周期性乳房痛に分けられます。
 周期性乳房痛は、月経のある女性に起こります。黄体期から症状が現れて、次の月経まで7日間以上にわたって中等度より強めの痛みが続きます。痛みのために、眠りが浅くなったり、通勤や通学に不都合を生じたり、不快感や苦痛感、性生活への影響もみられます。
 女性の月経周期には複数のホルモンがかかわっているので、どれか1つのホルモンに原因を特定することはできませんが、大脳の下部にある下垂体(脳下垂体)から分泌されるプロラクチンの過剰な増加などのホルモン変化が主な原因とされています。また、周期的な強い乳房痛は、乳がんの発症や増殖にかかわる危険因子の1つで、乳がんのリスクを高めることが知られています。
 非周期性乳房痛は、月経周期とは関係なく痛みが現れます。周期性乳房痛よりも頻度は少ないものの、閉経後の女性に多くみられます。外傷、炎症などの器質的疾患以外ではっきりとした乳房痛の原因を特定することは困難ですが、非周期性乳房痛もホルモンの変化が原因と考えられています。ホルモンの変化による乳房痛の多くは、両方の乳房に感じます。
 片側の乳房の一部で持続する乳房痛は、乳がんとの関連性も認められています。乳がんでの非周期性乳房痛の出現頻度は、2~7%前後と推定されています。
 乳房に痛みを伴う疾患としては、乳汁を分泌する乳腺に炎症が起こる乳腺炎が代表的です。乳房にしこりができる主な疾患は、乳腺症、乳腺線維腺腫(せんいせんしゅ)、乳がんで、うち乳腺症にのみ押さえた時の圧痛があります。
 乳腺炎には、急性のものと慢性のものがあります。急性乳腺炎のほとんどは、授乳期、ことに産褥(さんじょく)期にみられ、うっ滞性乳腺炎と化膿(かのう)性乳腺炎の2つに分けられます。慢性の乳腺炎には、授乳期以外に膿(うみ)の塊ができる乳輪下膿瘍(のうよう)があります。
 急性うっ滞性乳腺炎は、若い初産の女性の出産後2~3日のころによくみられるもので、乳管からの乳汁の排出障害があるために、乳房のはれと軽い発赤と熱感が起こります。痛みはあっても、激しい全身症状は出ません。初産の場合、乳管が狭いので乳汁が乳腺内に詰まってしまうことが、その原因と考えられています。乳児への授乳が十分でない場合にも起きます。
 急性化膿性乳腺炎は、出産後2~6週のころに乳腺内に乳汁がたまり、ここに主にブドウ球菌による細菌感染が起きて、乳房全体にはれが生じます。炎症が進むと、乳房が硬く赤くはれて、激しく痛み、熱感があります。その後、炎症が1カ所に固まってくると、膿瘍を作り、時には自然に破れて膿が外に出ることもあります。わきの下のリンパ節がはれたり、全身に寒けや震えが出て、時に40℃以上にも発熱することもあります。
 乳輪下膿瘍は、乳頭の乳管開口部から化膿菌が侵入したことにより、乳輪の下に膿がたまり、乳輪周囲の皮膚にまで広がる慢性疾患です。授乳やホルモン分泌とは関係なく、若い女性によくみられ、乳輪の下に痛みのある硬いしこりができては破れて、膿が出ることを何回も繰り返します。陥没乳頭の人に多くみられますが、乳首が陥没していない人でもみられます。
 乳腺症は、女性ホルモンのバランスが崩れることで、乳腺に起こるさまざまな病変の総称です。30~40歳代でよくみられる良性疾患で、乳腺炎や乳がんのようにはっきりとした病気ではありません。生理前に乳腺が張る、乳房が痛むということは女性なら誰でも経験があることですが、乳腺症も女性ホルモンの影響を強く受けて起こりますので、月経周期に応じて症状が変化します。すなわち、卵巣からのホルモン分泌が増える生理前になると症状が強くなり、生理が終わると自然に和らぎます。
 症状は乳房のしこりや痛み、乳頭分泌など多様ですが、多くは正常な体の変化で、通常は治療の必要はありません。
 乳腺線維腺腫は、乳汁を分泌する乳腺が増殖することで形成される良性のしこりです。乳腺の分泌腺が増殖するタイプ、乳腺周囲の線維組織が増殖するタイプ、両者が混在しているタイプとがあります。はっきりとした原因はわかっていないのですが、思春期以降に発症することが多いので、卵巣から分泌される女性ホルモンの卵胞ホルモン(エストロゲン)が何らかの発症原因になっていると考えられます。思春期に小さな線維腺腫が形成され、次第に増大して20歳前後にはっきりと触れる、痛みを伴わないしこりとして自覚されることが多いようです。
 線維腺腫の発育速度には個人差が大きいために、症状を自覚する年齢も10歳代後半から40歳前後までと幅広くなっています。また、片側に多発することも、両側に発症することもあります。
 乳がんは、乳腺にできるがんです。40歳代以上に多く、高齢出産をした女性や、授乳の経験が少ない女性、肥満の女性、親族ががんにかかったことがある女性などがかかりやすいことが知られています。初発症状としては乳房に痛みのない硬いしこりができて、押しても動かないのが特徴で、同じしこりを触れる疾患でも乳腺症とは痛みの有無で、ある程度は判別がつきます。しかし、必ずしも痛みを伴わないわけではなく、特に進行すると片側の乳房の一部が痛みを伴うことが多くなります。
 同時に、皮膚にへこみが生じたり、乳頭から血の混じった分泌物が出るといった症状が起こることがあります。乳がんはほかのがんに比べて進行が遅く、しこりが1センチ四方の大きさになるまで10年ほどかかるので、しこりが小さいうちに見付かれば90%以上の人が治ります。
 乳房痛を乳がんと結び付ける女性が多いのですが、乳房の痛みが必ずしも乳がんによるとは限らず、良性変化である乳腺症が原因のことが多いので、痛みが長く続くようなら乳腺科、乳腺外科、外科を受診することが勧められます。
[位置情報]乳房痛の検査と診断と治療
 乳腺科、乳腺外科、外科の医師による診断では、乳がんの可能性も考慮し、問診、視診、触診、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、超音波(エコー)検査などを行います。
 乳腺症が疑われた場合、明らかな乳腺腫瘍(しゅよう)が認められず、がんでないことを確かめた上で、2~3カ月間様子を見て、症状が生理周期と同調した場合に、乳腺症と確定します。
 乳腺科、乳腺外科、外科の医師による治療では、乳腺症の場合で痛みなどの症状があまりないケースでは、経過観察だけで、特に治療は行いません。
 強い痛みが5~6カ月ほど続くようなケースでは、薬物療法を行います。男性ホルモンの働きをする薬や、女性ホルモンの一種である卵胞ホルモン(エストロゲン)の働きを抑える抗エストロゲン薬、鎮痛薬などの飲み薬を処方し、2~3カ月使うと効果が現れます。
 薬物療法は根本的な治療法ではありませんが、半数以上の人で症状は軽減します。まれに、副作用として太ったり、肝臓に障害を起こしたり、血栓ができやすくなったりする人もいます。
 乳腺症と乳がんの確実な区別が難しい場合には、針を刺して細胞を吸引し、顕微鏡で観察する検査(細胞診)や、局所麻酔をしてから乳腺の一部を切り取り、顕微鏡で調べる検査(乳房生検)などを行います。
 顕微鏡で見ると、増殖性病変として腺症、乳頭腫症などが認められ、委縮性病変としては線維症、嚢胞(のうほう)症、アポクリン化生などが認められます。前者の増殖性病変が認められた場合は、乳がん発症のリスクが高くなりますので、精密検査を行うことになります。
 乳がんを起こしている場合は、乳房の病変部を切除する手術行うことで、乳がんを治すことができるだけでなく乳房の痛みを治すことができます。

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■用語 乳腺嚢胞 [用語(な行)]

[位置情報]乳腺から分泌された液体が乳管にたまり、袋状になる状態
 乳腺嚢胞(にゅうせんのうほう)とは、女性の乳房全体に張り巡らされ、乳腺で作られた母乳を乳頭へ運ぶ管である乳管の中に分泌液がたまって袋のような状態になり、乳房のしこりとして認められる疾患。乳腺嚢腫(のうしゅ)とも呼ばれます。
 乳腺症の一つのタイプで、厳密には疾患ではなく、加齢やそのほかの要因によって起こる良性のしこりです。30歳~40歳代の女性に多くみられ、閉経して60歳くらいになるとほとんどみられなくなります。
 生理周期に合わせて卵巣から分泌される女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響で、乳腺は拡張と増殖と委縮を繰り返しますが、これが何年も続くことで乳房に病変が生じることがあります。その一つが乳腺嚢胞であり、加齢によって生じる自然な変化ともいえます。
 乳房の両側、または片側に、1個から複数個のしこりができます。しこりの大きさはさまざまで、数ミリ程度のものもあれば10センチ以上のものもあります。
 しこりは、乳腺から分泌された液体が乳管の中の一カ所にたまり、その部分が袋状になって膨らんだ状態のため、乳房に触ると丸くて、押すと軟らかい感じがします。ツルツルしていて凹凸はないことが多く、痛みもありません。
 生理前や排卵の時は卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響で、しこりが大きくなったりすることもあります。乳管の中にたまる分泌液が多くなると、膨満して痛みを感じることもあります。
 自覚症状があまりないので、小さなしこりの場合は見落とされることも多く、大きくなって初めてしこりがあることに気付く場合も少なくありません。乳がん検診を受けた際に、乳腺嚢胞があると指摘された場合は、乳腺科、乳腺外科などを1年に1回は受診し、検査をしてもらうことが勧められます。
 受診して良性のしこりと診断されれば、放置しておいても問題はありません。乳腺嚢胞はがんに移行することがほとんどないためですが、まれに、嚢胞内の壁にがんが潜んでいる可能性があります。これを嚢胞内乳がんと呼び、嚢胞内に分泌液をためながらがん細胞が増殖し、しこりが大きくなっていきます。
 嚢胞内乳がんの発見の遅れにつながらないためにも、定期的に受診し、検査を受けることが大切です。
 また、1カ月に1回は、入浴の際に時々乳房を手のひらで洗うなど、自己触診することが勧められます。具体的には、乳房を手の指の腹で触り、しこりの有無をチェックします。指をそろえて、指の腹全体で乳房全体を円を描くように触ります。乳房の内側と外側をていねいにさすってみましょう。調べる乳房のほうの腕を下げたポーズと腕を上げたポーズで、左右両方の乳房をチェックします。
 自己触診で新しくしこりを発見し、自然に消えない場合は、次の検査まで待たずに受診することが勧められます。
[足]乳腺嚢胞の検査と診断と治療
 乳腺科、乳腺外科などの医師による診断では、まずは原因を調べるために、乳房の視診や触診のほか、乳管内の分泌液の検査、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、超音波(エコー)検査などを行います。
 乳腺科、乳腺外科などの医師による治療では、超音波(エコー)検査によって良性の乳腺嚢胞と診断されれば、正常な乳腺とほぼ変わらないため放置しておいても問題はなく、経過観察します。小さなしこりの場合は自然消滅することも多いので、しばらく経過をみた結果で治療が必要ない場合もあります。
 しこりが大きい、または複数個あって気になる場合は、細い針を刺して乳管内の分泌物を吸引することもあります。ただし、吸引していったんしこりがなくなっても、再び乳腺から分泌された液体が乳管の中にたまったり、違う個所の乳管にたまったりすることもあります。分泌液を吸引した後もしこりが残っていたり、12週間以内に再発した場合は、がんの可能性もあります。
 また、細い針で乳管内の分泌液を吸引した際に、液体が茶褐色をしていたり、血液が混ざっている場合も、がんの可能性があるため分泌液にがん細胞が含まれていないか検査をします。がん細胞が見付かった場合は、手術によってしこりを切除します。

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■用語 乳暈炎 [用語(な行)]

[位置情報]乳暈の皮膚が過敏になって炎症を起こし、湿疹、ただれ、かゆみが生じる状態
 乳暈(にゅううん)炎とは、女性の乳暈に湿疹(しっしん)や、ただれが生じ、かゆみを伴っている状態。乳輪炎とも呼ばれます。
 乳首、すなわち乳頭の周囲を取り囲む輪状の部位で、4センチから5センチが標準的な大きさである乳輪、すなわち乳暈には、多くの皮脂腺(せん)があり、皮脂腺から分泌される皮脂によっていつも保護されているのですが、皮脂の分泌の減少などによって皮膚が乾燥して過敏になると、炎症が起こることがあります。ここに主に黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、時には大腸菌、緑膿(りょくのう)菌などの細菌が入り、感染すると化膿が起こることがあります。
 また、母乳をつくる乳腺が発達する思春期の女性では、ホルモンのバランスが不安定になって、乳頭から分泌液が出現し、乳暈炎や乳頭炎になることもあります。
 乳暈炎になると、湿疹や、ただれが生じ、かゆみを伴います。はれが認められることもあります。
 大体は、両側に症状が現れます。かゆみを伴うため、無意識のうちにかいてしまって悪化したり、治ってもまた再発し、繰り返すこともあります。下着のサイズや形が合っていないために、乳首や乳暈が下着と擦れ合い、炎症を繰り返すこともあります。また、化膿している状態であれば、下着にくっ付き、かさぶたのようになることもあります。
 乾燥肌、アトピー性皮膚炎、陥没乳頭の女性が、乳暈炎、乳頭炎になりやすいとされています。
 乳暈炎になった場合には、化学繊維でできた下着を着用していたならば、木綿やシルクなどの自然素材でできた下着に替えて、症状が治まるかどうか確かめます。また、患部を軟こうで覆い、下着と擦れ合わないようにガーゼ付きのばんそうこうなどで保護して、経過を観察すればよいでしょう。
 それでも症状が改善しない場合には、皮膚科、ないし婦人科、乳腺科を受診することが勧められます。
 乳暈炎、乳頭炎とよく似た症状が、乳房パジェット病よって引き起こされることがまれにあります。乳房パジェット病は、乳がんの特殊なタイプであり、乳暈炎、乳頭炎と同じように湿疹、ただれ、かゆみを伴います。そして、乳がん全体の1~2パーセントを占めるという非常にまれな疾患のため、見落とされがちです。発症年齢は乳がんよりやや高く、50歳代の女性に最も多くみられます。
 症状としては、ヒリヒリとした痛みを伴う場合もあり、乳頭からの分泌物や出血もみられる場合もあります。通常の乳がんのようにしこりを触れることはないので、急性湿疹やたむしなどの皮膚病と間違えられやすく、乳がんの一種とは思われないこともあり注意が必要です。
 進行すると、表皮が破れてただれ、円状に乳頭や乳暈を超えて拡大したり、乳頭が消失してしまうこともあります。
 しかし、長期に放置したとしても進行する速度が遅いので、乳腺内のがん細胞が表皮内に浸潤することはまれであるとされています。早期に治療すれば予後は良好ながんで、転移が確認されなければ心配はないといわれています。
[位置情報]乳暈炎の検査と診断と治療
 皮膚科、婦人科、乳腺科の医師による診断では、視診、触診で判断し、マンモグラフィー(乳房X線撮影)、超音波(エコー)などで検査することもあります。
 乳房パジェット病との鑑別が必要な場合は、顕微鏡で乳頭分泌物やかさぶたなどの細胞を見る細胞診で、パジェット細胞という特徴的な泡沫(ほうまつ)状の細胞が認められるかどうか調べます。
 皮膚科、婦人科、乳腺科の医師による治療では、乳暈(乳輪)、乳頭(乳首)を清潔に保ち、塗り薬を使用します。
 細菌の感染があれば、抗生物質入りの軟こうを塗り、感染がなければ、ステロイド剤などの軟こうを塗り、落ち着いたら保湿剤を塗ります。
 乳房パジェット病の場合は、早期の乳がんと同じ治療法を適応し、病変部だけを切除して乳房を温存するケースと、乳房全体を切除するケースとがあります。検査の段階で病変が乳腺レベルにとどまっている場合は、美容的な観点を考慮して、放射線治療を併用しての乳房温存療法が選択される可能性が高くなりますが、進行程度や広がり具合によっては、乳房全体を切除するケースや乳頭を切除しなければならないケースもあります。

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■用語 乳頭、乳輪の黒ずみ [用語(な行)]

[位置情報]乳房の先端部分の皮膚に存在するメラニン色素が多くなり、黒みを帯びる状態
 乳頭、乳輪の黒ずみとは、生理的に皮膚に存在し、皮膚の色に変化を与えるメラニン色素が多くなり、皮膚が黒みを帯びる状態。体の異常ではありません。
 皮膚に存在するメラニン色素の量が変化すると、淡褐色、褐色、黒褐色、黒色などの色が現れます。また、人間の体の表面を覆う厚さ約2ミリの皮膚は、基底層、有棘(ゆうきょく)層、顆粒(かりゅう)層、角質層の4層からなる表皮と、コラーゲンやエラスチンなどから構成されている真皮の2つの層に分かれていますが、表皮にメラニン色素が増えるほど褐色調が強く、真皮の上層に増えると暗褐色から黒色、真皮の深いところに増えると青色調が強く現れます。
 乳首、すなわち乳頭や、乳頭の周囲を取り囲む輪状の部位である乳輪の皮膚が黒ずむのは、紫外線や外的刺激から真皮を守るために、表皮の基底層にあるメラノサイトで生成されるメラニン色素が多くなるためです。皮膚の敏感な部分ほど黒ずみやすく、乳房の場合は柔らかな先端部分の真皮を守るために、メラニン色素が多くなりやすくなっているのです。
 また、乳頭や乳輪の色は、加齢、妊娠、授乳、ストレスによっても変化します。
 加齢により、皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)が遅くなると、表皮の一番上にある古い角質細胞と一緒にメラニン色素が残って、皮膚は黒みを帯びます。しかし、高齢になるとメラニン色素の生成自体が衰えてくるので、次第に薄めの茶色から茶色程度に薄まっていきます。
 妊娠・出産による変化により、人によって程度はあるものの、妊娠4週あたりから乳房が張ったり、乳頭が敏感になったりするとともに、次第に乳頭や乳輪が黒みを帯びて、淡褐色、褐色、黒褐色に変化していきます。
 この原因となるのは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という卵巣から分泌される2つの女性ホルモンで、妊娠20週くらいから急激に分泌が増加します。この2つのホルモンはメラニン色素を生成するメラノサイトを刺激するので、分泌が増加することで乳頭や乳輪の皮膚のメラニン色素が増え、黒みを帯びやすくなるのです。
 乳頭に関しては、母乳を生成する準備段階として、徐々に乳頭が硬く、皮膚も厚くなっていき、新生児に授乳する準備段階として、新生児がくわえて吸う力から保護する働きを持つメラニン色素が増え、黒みを帯びてくるとも考えられています。また、視力が0・01から0・02程度しかない新生児が乳頭を見付けやすいように、黒みを帯びてくるとも考えられています。
 また、精神的ストレス、不規則な生活、睡眠不足があると、脳下垂体からのメラニン細胞刺激ホルモン(メラノトロピン)や副腎(ひくじん)皮質刺激ホルモン(コルチコトロピン)などのメラノサイトを刺激するホルモンの分泌を増加させ、乳頭や乳輪の皮膚が黒みを帯びることがあります。
[位置情報]乳頭、乳輪の黒ずみの自己治療と医師による治療
 乳頭、乳輪の黒ずみに対する手軽に始められる自己治療には、美白成分を配合した顔やボディー用の乳液やクリームを使う方法があります。メラニン色素の生成を抑えて、できてしまったメラニン色素を薄くする成分が含まれているものを選ぶと黒ずみの改善が期待できます。
 また、高い効果を望む場合は、バストトップの黒ずみ専用のクリームやジェル、皮膚の古くなった角質を取り除くピーリング剤も市販されていますので、上手に活用しましょう。
 主な美白成分として、ハイドロキノンやトレチノイン酸、ルミキシルペプチド、ビタミンC誘導体が知られており、1日2回、朝晩塗るだけで薬剤が表皮の深い層に働き掛け、メラニン色素を薄くしていきますが、それぞれ一長一短があります。
 ハイドロキノンは、ビタミンCとトレチノイン酸とともに使用すると効果が高く、メラニン色素を生成する酵素であるチロシナーゼの働きを抑えて、黒ずみを徐々に薄くしていきます。美白効果は高いものの、刺激が強く安定性も悪いため、以前は皮膚科でしか処方することができないものでしたが、現在は低濃度で配合されたものも市販されています。
 トレチノイン酸はビタミンA誘導体で、皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を促進し、ピーリング剤と同様に皮膚がポロポロと落ちることがあります。また、催奇形性(催奇形作用)がある点にも注意が必要で、妊娠中に使用すると胎児に奇形を発生させる可能性があります。
 ルミキシルペプチドは、メラニン色素を生成する酵素であるチロシナーゼの働きを阻害し、黒ずみを徐々に薄くします。天然由来のタンパク質であるため皮膚への刺激が少ないのに加え、ハイドロキノンの17倍の美白効果があるといわれています。
 ビタミンC誘導体は、壊れやすいビタミンCを化粧品に配合できるように安定化させたもので、酵素反応により体内でビタミンCになります。メラニン色素が生成されにくくするだけでなく、できてしまったメラニン色素を薄くする作用もあります。しかし、強い刺激により皮膚が乾燥しやすいため、保湿成分が配合されたものを選ぶことが勧められます。
 いずれにしても、自分の皮膚に合ったものを選ぶことが大切です。強力な美白成分やピーリング成分を含んでいるものもあり、皮膚への刺激が強すぎると黒ずみをなくすどころか皮膚を傷めてしまうため、使用方法や分量には十分な注意を払う必要があります。また、初めて使用する際には、まず腕などでパッチテストを行うようにしましょう。
 徐々に薄くするというより、確実にしっかり乳頭、乳輪の黒ずみを除去することを希望する場合は、皮膚科や美容外科などのクリニックを受診することがお勧めです。ハイドロキノンやトレチノイン酸などを配合した塗り薬を処方してもらったり、レーザー治療を受けたりすることができます。
 塗り薬は、同じ有効成分を使っていても市販のものと医療用のものとでは量が違う場合がありますので、より高い効果が期待できます。レーザーによる治療は高い効果がある反面、メラニン色素の脱失により色むらが発生するリスクもあるため、信頼できるクリニックを選ぶ必要があります。

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