■病気 大血管転位症 [病気(た)]
大動脈が右心室から、肺動脈が左心室から出ている疾患
大血管転位症とは、正常の人とは反対に、右心室から大動脈、左心室から肺動脈が出ているもの。生まれ付き大血管の位置関係が反対、すなわち転位になっている先天性心臓病です。
この疾患には、完全大血管転位症と修正大血管転位症の2種類があります。右心房と右心室がつながり、左心房と左心室がつながっているのが完全大血管転位症、右心房と左心室がつながり、左心房と右心室がつながっているのが修正大血管転位症です。
完全大血管転位症は、新生児期にチアノ-ゼを来す先天性心臓病の中では最も多いものです。極めて重症の心臓病であり、心室中隔欠損や心房中隔欠損がなければ、あるいは動脈管が開いていなければ、全身に酸素を含んだ血液を送ることが不可能で生きていられないため、1950年代までは助ける手段がありませんでした。動脈管を開存させるプロスタグランディンという薬の登場と、心臓外科の進歩により、治療成績は飛躍的に向上し、今日では90パーセントを超える救命率に達しています。
合併している心臓病の有無により、症状、経過は異なります。心室中隔欠損を合併していないものでは、生まれた直後からチアノ-ゼを認め、以後進行します。心室中隔欠損を合併しているものでは、チアノ-ゼは軽度ながら、泣いた時などに顕著に現れます。生後3週間から6週間で、多呼吸、頻脈、多汗などの心不全症状が明らかとなります。心室中隔欠損と肺動脈狭窄(きょうさく)を合併しているものでは、症状と経過はファロ-四徴症に類似し、肺動脈狭窄の強いものはチアノ-ゼもより高度になります。手術治療を受けなければ、生後1年以内に90パーセントは死亡します。
一方、修正大血管転位症は比較的まれな疾患であり、左右の心房と心室の関係が入れ替わり、さらに心室と出口の大血管の関係が入れ替わっているために、血液の流れが大静脈→右心房→左心室→肺動脈→肺静脈→左心房→右心室→大動脈→大静脈となっています。体から戻ってきた静脈血が肺へ送られ、肺から戻ってきた動脈血が全身に送られて、血液の流れは修正されているため、修正大血管転位症と呼ばれるのです。
血流からは大きな異常がなく、正常に過ごすことも可能ですが、この修正大血管転位症でも、多くの例で心室中隔や心房中隔の欠損症や不整脈を伴い、それにより重症度に差があります。生後1カ月以内に心不全症状を来すものから、80歳まで天寿を全うするものまで、症状、経過は個々の症例によりさまざまです。
心室中隔欠損を合併し、肺動脈狭窄がないものは、症状出現が早く、乳児期早期に心不全症状を起こします。右心室の入り口の弁である三尖(さんせん)弁閉鎖不全を来すものは、幼児期以降に運動時の息切れを起こします。心室中隔欠損と肺動脈狭窄を合併するものは、チアノ-ゼを起こします。心室中隔欠損や肺動脈狭窄の合併のないものでは、成人期まで症状もなく経過し、健康診断での心電図異常で判明したり、房室ブロックなどで不整脈から息切れや意識消失発作を来たして見付かる場合もあります。
大血管転位症の検査と診断と治療
完全大血管転位症では、心臓超音波検査で診断が確定します。さらに、心臓カテーテル検査を行い、心臓を養う血管である冠動脈の走行、心室中隔欠損の有無や位置などを確認し、治療方針、手術方法が検討されます。また、心臓カテーテル検査に際しては、心房中隔欠損を通じる血流交通が十分かどうかも調べ、場合によっては、風船カテーテルを用いて左右の心房間の交通を広げる、バス(BAS:Balloon Atrial Septostomy )治療を行って、チアノ-ゼの改善を図ります。
修正大血管転位症では、健康診断で通常行われる診断聴診所見、胸部X線検査、心電図といった検査で疑われた場合、循環器を専門にしている医療機関で心臓超音波検査を受ければ確定診断がつきます。いろいろな不整脈を合併していることが多いため、24時間心電図や負荷心電図なども必要。手術治療が考慮される場合には、心臓カテーテル検査でさらに詳しく冠動脈、三尖弁、肺動脈弁の形態や他の合併疾患を調べることがあります。
完全大血管転位症の治療では、まず動脈管の開存を維持するプロスタグランディンの点滴投与を行って、肺への血流を維持します。上記のように、心臓カテーテル検査に際してバス治療を行って、チアノ-ゼの改善を図る場合もあります。
外科治療では、肺動脈狭窄がない場合、入れ替わっている大血管を元に戻す手術である大動脈スイッチ手術(ジャテネ手術、ジャテーン手術)が第一選択になります。この手術に際しては、単に出口の血管を入れ替えるだけでなく、大動脈の根元近くから出ている冠動脈を移植する必要があります。乳児期以降には、心房内血流転換手術(マスタード手術、セニング手術)を行う場合もまれにあります。
肺動脈狭窄を伴っていて、大動脈スイッチ手術が適さない場合には、体肺動脈短絡術などを行って肺への血流を増やした後に、3~5歳で肺動脈の再建を伴うラステリ手術が行われます。ラステリ手術は、動脈血を心室内導管を通して大動脈に、静脈血を心外導管を通して肺動脈に流すものです。
手術直後は、人工心肺の影響などから、強心剤や利尿剤を投与します。一時的に肺高血圧の悪化を生じる場合もあり、注意が必要です。長期的には、多くの場合は正常児に近い発育が見込まれますが、手術後に肺動脈狭窄、大動脈弁逆流、不整脈などを起こすことがあり、定期的なフォローアップが必要です。
修正大血管転位症の治療においても、合併する心臓病によって手術が必要な場合があります。特に、小児期にチアノ-ゼ、心不全を生じる場合は手術により、その後の発育、生活の質の改善が見込まれます。症例によっては、大動脈スイッチ手術と心房内血流転換手術を組み合わせたダブルスイッチ手術を行うことで、より長期に良好な心機能が期待できる場合もあります。
成人期の心不全症状に対しては内科的治療が第一となりますが、三尖弁逆流が進行してきた場合は外科治療も考慮されます。また、完全房室ブロックで徐脈による運動時の息切れ、意識消失発作などの既往があれば、ペースメーカー治療が考慮されます。動悸(どうき)発作など脈が速くなる頻脈性不整脈には、抗不整脈薬やカテーテル治療が考慮されます。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
大血管転位症とは、正常の人とは反対に、右心室から大動脈、左心室から肺動脈が出ているもの。生まれ付き大血管の位置関係が反対、すなわち転位になっている先天性心臓病です。
この疾患には、完全大血管転位症と修正大血管転位症の2種類があります。右心房と右心室がつながり、左心房と左心室がつながっているのが完全大血管転位症、右心房と左心室がつながり、左心房と右心室がつながっているのが修正大血管転位症です。
完全大血管転位症は、新生児期にチアノ-ゼを来す先天性心臓病の中では最も多いものです。極めて重症の心臓病であり、心室中隔欠損や心房中隔欠損がなければ、あるいは動脈管が開いていなければ、全身に酸素を含んだ血液を送ることが不可能で生きていられないため、1950年代までは助ける手段がありませんでした。動脈管を開存させるプロスタグランディンという薬の登場と、心臓外科の進歩により、治療成績は飛躍的に向上し、今日では90パーセントを超える救命率に達しています。
合併している心臓病の有無により、症状、経過は異なります。心室中隔欠損を合併していないものでは、生まれた直後からチアノ-ゼを認め、以後進行します。心室中隔欠損を合併しているものでは、チアノ-ゼは軽度ながら、泣いた時などに顕著に現れます。生後3週間から6週間で、多呼吸、頻脈、多汗などの心不全症状が明らかとなります。心室中隔欠損と肺動脈狭窄(きょうさく)を合併しているものでは、症状と経過はファロ-四徴症に類似し、肺動脈狭窄の強いものはチアノ-ゼもより高度になります。手術治療を受けなければ、生後1年以内に90パーセントは死亡します。
一方、修正大血管転位症は比較的まれな疾患であり、左右の心房と心室の関係が入れ替わり、さらに心室と出口の大血管の関係が入れ替わっているために、血液の流れが大静脈→右心房→左心室→肺動脈→肺静脈→左心房→右心室→大動脈→大静脈となっています。体から戻ってきた静脈血が肺へ送られ、肺から戻ってきた動脈血が全身に送られて、血液の流れは修正されているため、修正大血管転位症と呼ばれるのです。
血流からは大きな異常がなく、正常に過ごすことも可能ですが、この修正大血管転位症でも、多くの例で心室中隔や心房中隔の欠損症や不整脈を伴い、それにより重症度に差があります。生後1カ月以内に心不全症状を来すものから、80歳まで天寿を全うするものまで、症状、経過は個々の症例によりさまざまです。
心室中隔欠損を合併し、肺動脈狭窄がないものは、症状出現が早く、乳児期早期に心不全症状を起こします。右心室の入り口の弁である三尖(さんせん)弁閉鎖不全を来すものは、幼児期以降に運動時の息切れを起こします。心室中隔欠損と肺動脈狭窄を合併するものは、チアノ-ゼを起こします。心室中隔欠損や肺動脈狭窄の合併のないものでは、成人期まで症状もなく経過し、健康診断での心電図異常で判明したり、房室ブロックなどで不整脈から息切れや意識消失発作を来たして見付かる場合もあります。
大血管転位症の検査と診断と治療
完全大血管転位症では、心臓超音波検査で診断が確定します。さらに、心臓カテーテル検査を行い、心臓を養う血管である冠動脈の走行、心室中隔欠損の有無や位置などを確認し、治療方針、手術方法が検討されます。また、心臓カテーテル検査に際しては、心房中隔欠損を通じる血流交通が十分かどうかも調べ、場合によっては、風船カテーテルを用いて左右の心房間の交通を広げる、バス(BAS:Balloon Atrial Septostomy )治療を行って、チアノ-ゼの改善を図ります。
修正大血管転位症では、健康診断で通常行われる診断聴診所見、胸部X線検査、心電図といった検査で疑われた場合、循環器を専門にしている医療機関で心臓超音波検査を受ければ確定診断がつきます。いろいろな不整脈を合併していることが多いため、24時間心電図や負荷心電図なども必要。手術治療が考慮される場合には、心臓カテーテル検査でさらに詳しく冠動脈、三尖弁、肺動脈弁の形態や他の合併疾患を調べることがあります。
完全大血管転位症の治療では、まず動脈管の開存を維持するプロスタグランディンの点滴投与を行って、肺への血流を維持します。上記のように、心臓カテーテル検査に際してバス治療を行って、チアノ-ゼの改善を図る場合もあります。
外科治療では、肺動脈狭窄がない場合、入れ替わっている大血管を元に戻す手術である大動脈スイッチ手術(ジャテネ手術、ジャテーン手術)が第一選択になります。この手術に際しては、単に出口の血管を入れ替えるだけでなく、大動脈の根元近くから出ている冠動脈を移植する必要があります。乳児期以降には、心房内血流転換手術(マスタード手術、セニング手術)を行う場合もまれにあります。
肺動脈狭窄を伴っていて、大動脈スイッチ手術が適さない場合には、体肺動脈短絡術などを行って肺への血流を増やした後に、3~5歳で肺動脈の再建を伴うラステリ手術が行われます。ラステリ手術は、動脈血を心室内導管を通して大動脈に、静脈血を心外導管を通して肺動脈に流すものです。
手術直後は、人工心肺の影響などから、強心剤や利尿剤を投与します。一時的に肺高血圧の悪化を生じる場合もあり、注意が必要です。長期的には、多くの場合は正常児に近い発育が見込まれますが、手術後に肺動脈狭窄、大動脈弁逆流、不整脈などを起こすことがあり、定期的なフォローアップが必要です。
修正大血管転位症の治療においても、合併する心臓病によって手術が必要な場合があります。特に、小児期にチアノ-ゼ、心不全を生じる場合は手術により、その後の発育、生活の質の改善が見込まれます。症例によっては、大動脈スイッチ手術と心房内血流転換手術を組み合わせたダブルスイッチ手術を行うことで、より長期に良好な心機能が期待できる場合もあります。
成人期の心不全症状に対しては内科的治療が第一となりますが、三尖弁逆流が進行してきた場合は外科治療も考慮されます。また、完全房室ブロックで徐脈による運動時の息切れ、意識消失発作などの既往があれば、ペースメーカー治療が考慮されます。動悸(どうき)発作など脈が速くなる頻脈性不整脈には、抗不整脈薬やカテーテル治療が考慮されます。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
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■病気 体臭 [病気(た)]
体臭のメカニズム
《汗と体臭と、個性と》
広辞苑によると、「体臭」とは「皮膚の汗腺・皮脂腺の分泌物から生ずる一種の臭気」、現代実用辞典に至っては、「からだのにおい」と素っ気ない表現で片付けています。
しかし、汗をかく季節には、体臭を気にしないでいられる人は、少ないのではないでしょうか。特に潔癖症、臭い過敏症ともいえる現代人にとっては、自分や他人の体臭が気になります。そこで、そもそも体臭とは何かといった点から、考えてみましょう。
体臭ができるメカニズムは、ほぼ解明されています。皮脂や汗など脂質の酸化が、その大きな原因です。同時に、体臭が「HLA」という遺伝子に関係しており、人によって臭いの種類も違えば、臭う強さも違うなど個人差があることも、わかっています。
私たち人間が動物である以上、他の動物と同様に、その個体を識別するものが「体臭」といったところが、妥当な認識ではないでしょうか。このように考えれば、「一般的に体臭が薄い」といわれる日本人でも、人によって臭いがほとんどなかったり、あるいは体臭そのものがよい香りだという幸運な人がいる一方、臭いが強かったり、あるいは自分の体臭は悪臭だと思い込んで悩む人がいるのも、納得できます。
「自分の体臭は悪臭で、人に嫌われるのではないか」といった不安や悩みを持つことこそが、現代人の深刻な心の病の一つだとも、一説にいわれています。まずは、自分の個性の一つとして、体臭を前向きにとらえることから、対処してみたいものです。
《体臭の発生源とその理由》
《実は、においに恋してる?》
興味深い調査結果が、あります。未婚の女性に、男性の着たTシャツの「におい」をかいでもらい、好き嫌いの関係を探ったところ、父親由来のにおいの遺伝子(HLA)を多く持つ男性に対して、好意を持つ傾向があったというのです。
これを推測していくと、女性は父親の、男性は母親のにおいと似ている異性を好むという仮説も、成り立ちます。また、特に脇の下のにおいは、思春期以降に出てくるため、フェロモンと関係しているといった説も、根強くあります。とかく否定されがちな存在ですが、体臭はもしかしたら、異性に好き嫌いを判定させる好材料なのかもしれませんね。
因みに、日本ではあまり発達してこなかった化粧品に、香りの強い順に「香水」、「オードトワレ」、「コロン」などの種類がある「フレグランス」があります。まことしやかに語られてきた説では、「体臭が日本人より強い欧米人がにおいを隠すために、フレグランスを使う文化を発達させてきた」としていますが、まったくの俗説に属します。彼らが体臭を気にし始めた歴史より、香料を愛用し始めた歴史のほうが、圧倒的に古いからです。
このフレグランスを選ぶ際、おおかたの人は「香りが好き」といった基準で、つい選びがちなのではないでしょうか。しかしながら、フレグランスは自分の体臭や体温と相まって香りを醸し出すもの。最初から「体臭ありき」で発想し、選ぶのが正解なのです。
かの女優、マリリン・モンローがシャネルNo.5をネグリジェにしていたという話は、あまりにも有名です。シャネルの香水がモンローの体臭と組み合わされた時、とても魅惑的な香りを放ったことと想像されます。
自分の体臭と体温、それとの組み合わせで選ぶフレグランス。そのような視点で楽しめば、体臭そのものが自分の魅力をいっそう引き出す要素となるのです。香水やオードトワレの場合は、香りが強くて持続性もあるので、使用する量に気を付けましょう。自分にとってはよくても、周囲に不快感を覚えさせたり、必要以上に「派手な人」といった印象を与えることもあるので、配慮をお忘れなく。
《こんな臭いにはご用心》
体から発せられるにおいには個人差があり、においの強さもまた人それぞれではありますが、時には、臭いの原因が病気に基づくこともあります。
例えば、糖尿病になると甘い臭いがするようになり、甲状腺機能亢進症やパーキンソン氏病になると、皮脂腺が刺激され、独特の体臭が出るようになるといわれます。また、口臭がひどい場合は、内臓疾患の可能性もあります。
大切な体をしっかりセルフチェックするためにも、日頃の自分の体臭を知っておくことが、大切となります。「体臭がいつもと違う」、「体のにおいが変わってきた」、「ケアをいろいろしても、臭いが軽減されない」…こんな時は、一度専門医に相談してみましょう。
体臭防止の傾向と対策
《清潔第一。食べ物注意》
体臭は個性、あなたの魅力とはいえ、猛暑の夏に体臭が強くなっては、自分でもうっとうしいもの。周りから「汗くさい」なんていわれないためにも、生活や食事に一工夫していきましょう。
臭い対策でまず最初に押さえておきたいのが、気持ち的なポイント。「汗をかきたくない」、「汗をかくと臭い→人に嫌われる」といった頭の中の思考回路を一度、断ち切ることです。
なぜかといえば、気にすれば気にするほど、汗をかく要因になるからです。これを「精神性発汗」といいます。例えば、緊張すると冷や汗が出たり、手に汗が浮いたりするのが、精神性発汗です。「汗をかくことは自然なことで、汗へのケアをすればよい」と気持ちを切り替えて、必要以上の心配は抑えていきましょう。
次にケア。こちらは清潔第一。毎日、お風呂に入る、まめに下着を取り替えるといったことが基本ですが、近年はさまざまな制汗剤が出回っているので、出掛ける前に使用しておくのもよいでしょう。
因みに、制汗剤とデオドラント剤では、もともとの発想が違うことをご存知ですか。制汗剤は、汗腺に働きかけて汗を出にくくするもの。デオドラント剤のほうは、臭いを作り出す雑菌を退治したり、繁殖を阻止するもの。覚えておくと、何かと便利でしょう。
第三に、汗をかいたら、こまめの対処を。汗を拭(ふ)き取り、サッパリと。こちら用にもシート状の拭き取り剤が多数市販されているので、便利です。汗をかけば、誰でも気持ちが悪いもの。肌だって、同じなのです。汗をかいたまま放置されれば、肌が臭いを発生させる。つまり、汗臭さや体臭が強くなるのは、「不快だ」という肌からのサインともいえましょう。
そして、もう一つ気を付けたいのが、食生活。下表で示すように、基本的に肉類の多い食生活をしていると、体臭は強くなるといわれています。欧米人の体臭が強いのも、食生活に一因があるとされています。
逆に多く取りたいのが、抗酸化食品。先にも述べた通り、体臭の原因は脂質などの酸化。酸化を防げば、体臭も抑えることができるわけです。
《体臭を抑えるために控えたい食品》
《意識して取りたい抗酸化食品》
《部位別の臭いの原因とケア法》
特に気になる部位には、適材適所の臭い対策を。
《汗と体臭と、個性と》
広辞苑によると、「体臭」とは「皮膚の汗腺・皮脂腺の分泌物から生ずる一種の臭気」、現代実用辞典に至っては、「からだのにおい」と素っ気ない表現で片付けています。
しかし、汗をかく季節には、体臭を気にしないでいられる人は、少ないのではないでしょうか。特に潔癖症、臭い過敏症ともいえる現代人にとっては、自分や他人の体臭が気になります。そこで、そもそも体臭とは何かといった点から、考えてみましょう。
体臭ができるメカニズムは、ほぼ解明されています。皮脂や汗など脂質の酸化が、その大きな原因です。同時に、体臭が「HLA」という遺伝子に関係しており、人によって臭いの種類も違えば、臭う強さも違うなど個人差があることも、わかっています。
私たち人間が動物である以上、他の動物と同様に、その個体を識別するものが「体臭」といったところが、妥当な認識ではないでしょうか。このように考えれば、「一般的に体臭が薄い」といわれる日本人でも、人によって臭いがほとんどなかったり、あるいは体臭そのものがよい香りだという幸運な人がいる一方、臭いが強かったり、あるいは自分の体臭は悪臭だと思い込んで悩む人がいるのも、納得できます。
「自分の体臭は悪臭で、人に嫌われるのではないか」といった不安や悩みを持つことこそが、現代人の深刻な心の病の一つだとも、一説にいわれています。まずは、自分の個性の一つとして、体臭を前向きにとらえることから、対処してみたいものです。
《体臭の発生源とその理由》
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皮脂を分泌し、体の表面を守り、潤いを与える。 | 空気に触れることで酸化し、臭いが生じる。 |
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汗を出すことで、体温と水分を調整している。 | 汗そのものは、ほとんど臭いがない。ただ、上記の皮脂と混ざり合い、雑菌が繁殖するなどして、臭いを発生させる。 |
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異性へのアピール!? | 脇の下、乳輪、外陰部など限られた部分にのみあり、この腺から分泌される汗には脂肪、鉄分、尿素、アンモニアなどが含まれ、汗そのものに大なり小なり臭いがある。 |
《実は、においに恋してる?》
興味深い調査結果が、あります。未婚の女性に、男性の着たTシャツの「におい」をかいでもらい、好き嫌いの関係を探ったところ、父親由来のにおいの遺伝子(HLA)を多く持つ男性に対して、好意を持つ傾向があったというのです。
これを推測していくと、女性は父親の、男性は母親のにおいと似ている異性を好むという仮説も、成り立ちます。また、特に脇の下のにおいは、思春期以降に出てくるため、フェロモンと関係しているといった説も、根強くあります。とかく否定されがちな存在ですが、体臭はもしかしたら、異性に好き嫌いを判定させる好材料なのかもしれませんね。
因みに、日本ではあまり発達してこなかった化粧品に、香りの強い順に「香水」、「オードトワレ」、「コロン」などの種類がある「フレグランス」があります。まことしやかに語られてきた説では、「体臭が日本人より強い欧米人がにおいを隠すために、フレグランスを使う文化を発達させてきた」としていますが、まったくの俗説に属します。彼らが体臭を気にし始めた歴史より、香料を愛用し始めた歴史のほうが、圧倒的に古いからです。
このフレグランスを選ぶ際、おおかたの人は「香りが好き」といった基準で、つい選びがちなのではないでしょうか。しかしながら、フレグランスは自分の体臭や体温と相まって香りを醸し出すもの。最初から「体臭ありき」で発想し、選ぶのが正解なのです。
かの女優、マリリン・モンローがシャネルNo.5をネグリジェにしていたという話は、あまりにも有名です。シャネルの香水がモンローの体臭と組み合わされた時、とても魅惑的な香りを放ったことと想像されます。
自分の体臭と体温、それとの組み合わせで選ぶフレグランス。そのような視点で楽しめば、体臭そのものが自分の魅力をいっそう引き出す要素となるのです。香水やオードトワレの場合は、香りが強くて持続性もあるので、使用する量に気を付けましょう。自分にとってはよくても、周囲に不快感を覚えさせたり、必要以上に「派手な人」といった印象を与えることもあるので、配慮をお忘れなく。
《こんな臭いにはご用心》
体から発せられるにおいには個人差があり、においの強さもまた人それぞれではありますが、時には、臭いの原因が病気に基づくこともあります。
例えば、糖尿病になると甘い臭いがするようになり、甲状腺機能亢進症やパーキンソン氏病になると、皮脂腺が刺激され、独特の体臭が出るようになるといわれます。また、口臭がひどい場合は、内臓疾患の可能性もあります。
大切な体をしっかりセルフチェックするためにも、日頃の自分の体臭を知っておくことが、大切となります。「体臭がいつもと違う」、「体のにおいが変わってきた」、「ケアをいろいろしても、臭いが軽減されない」…こんな時は、一度専門医に相談してみましょう。
体臭防止の傾向と対策
《清潔第一。食べ物注意》
体臭は個性、あなたの魅力とはいえ、猛暑の夏に体臭が強くなっては、自分でもうっとうしいもの。周りから「汗くさい」なんていわれないためにも、生活や食事に一工夫していきましょう。
臭い対策でまず最初に押さえておきたいのが、気持ち的なポイント。「汗をかきたくない」、「汗をかくと臭い→人に嫌われる」といった頭の中の思考回路を一度、断ち切ることです。
なぜかといえば、気にすれば気にするほど、汗をかく要因になるからです。これを「精神性発汗」といいます。例えば、緊張すると冷や汗が出たり、手に汗が浮いたりするのが、精神性発汗です。「汗をかくことは自然なことで、汗へのケアをすればよい」と気持ちを切り替えて、必要以上の心配は抑えていきましょう。
次にケア。こちらは清潔第一。毎日、お風呂に入る、まめに下着を取り替えるといったことが基本ですが、近年はさまざまな制汗剤が出回っているので、出掛ける前に使用しておくのもよいでしょう。
因みに、制汗剤とデオドラント剤では、もともとの発想が違うことをご存知ですか。制汗剤は、汗腺に働きかけて汗を出にくくするもの。デオドラント剤のほうは、臭いを作り出す雑菌を退治したり、繁殖を阻止するもの。覚えておくと、何かと便利でしょう。
第三に、汗をかいたら、こまめの対処を。汗を拭(ふ)き取り、サッパリと。こちら用にもシート状の拭き取り剤が多数市販されているので、便利です。汗をかけば、誰でも気持ちが悪いもの。肌だって、同じなのです。汗をかいたまま放置されれば、肌が臭いを発生させる。つまり、汗臭さや体臭が強くなるのは、「不快だ」という肌からのサインともいえましょう。
そして、もう一つ気を付けたいのが、食生活。下表で示すように、基本的に肉類の多い食生活をしていると、体臭は強くなるといわれています。欧米人の体臭が強いのも、食生活に一因があるとされています。
逆に多く取りたいのが、抗酸化食品。先にも述べた通り、体臭の原因は脂質などの酸化。酸化を防げば、体臭も抑えることができるわけです。
《体臭を抑えるために控えたい食品》
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動物性たんぱく質や脂肪を多く含む肉や乳製品を多く摂取すると、脂質の分泌が増え、臭いのもととなる。汗も、かきやすくなる。肉・牛乳・チーズなどは、控えめにしよう。 |
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辛いものを食べると汗が出るのは、誰もが経験したことがあるはず。また、ニンニク・ニラ・ネギ・ラッキョウなどが臭いの原因であることも、周知の事実。夏は食べる時間や場所を選びたい。 |
《意識して取りたい抗酸化食品》
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小麦胚芽、植物油、アーモンド、ピーナッツ、うなぎ、緑黄色野菜など |
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どじょう、うなぎ、レバー、さば、干ししいたけ、強化米、納豆など |
《部位別の臭いの原因とケア法》
特に気になる部位には、適材適所の臭い対策を。
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頭皮や髪に皮脂がたまると、細菌に分解されて、臭いが発生。たばこなどの臭いが移りやすいことも、悪臭の原因に。 | まめの洗髪を心掛ける。また、濡れていると臭いが移りやすいので、よく乾かす。 |
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唾液の分泌が少なくなると、細菌が繁殖し、食べカスの分解や発酵が進むために、悪臭が発生。 | よく噛んで食べて、唾液の分泌を促す。食後は歯磨きをし、臭いの原因となる食べカスを残さない。口の中が渇いたら、適度な水分を補給する。ない場合には、ガムなどでも。 |
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アポクリン腺による独特の臭いが発生。 | 吸汗性の高い下着を身に着ける。消臭剤を利用する。食生活に注意する。 |
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アポクリン腺と恥垢によって、臭いが発生。 | こまめに洗う。ただし、石鹸などの洗い残しがあると、それ自体が臭いの原因に。シャワーなどで洗い流す程度が、最もよい。 |
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足の裏に密集したエクリン腺からの汗を、雑菌が分解。脂質とも混ざり合い、悪臭が発生。 | 程よいゆとりがあり、通気性の高い靴を選ぶ。2日続けて、同じ靴を履かない。とりわけ冬は体が汗をかかないぶん、手足が汗をかきやすくなる。時々、靴内をアルコールで拭くなどして、靴内の雑菌を排除する。足も、アルコールの入ったウエットティッシュで拭いたり、汗を抑える足用スプレーを使う。 |
■病気 帯状疱疹 [病気(た)]
水ぼうそうウイルスが再活動
私たちが子供の頃によくかかる病気の一つに、水ぼうそう(水痘)があります。ウイルス性の病気である水ぼうそうは、一度発症して治ってしまうと一生感染しません。
ところが、その時のウイルスは死んでしまったのでなく、長い間、体の中の神経節に潜り込んでいたのです。このウイルスが、病気などで抵抗力が弱くなった時や疲れた時、あるいは年を取ったことにより再び活動を始めることがあります。これが、皮膚の病気「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」です。
ただし、子供の頃に水ぼうそうにかかったといっても、必ずしも帯状疱疹になるわけではありません。10人に1〜2人の確率とされています。
体の片側に出る帯状の水ぶくれ
帯状疱疹は神経の通っている部分に、それも体の左右どちらかに帯のように現れます。
初めはピリピリ、チクチクした痛みから始まり、しばらくするとその部分が帯状に赤くなり、やがて水ぶくれになって神経痛のような激しい痛みを伴います。
一番、多いのは、肋間(ろっかん)神経のある胸から背中にかけてです。顔面にある三叉(さんさ)神経に沿って現れる場合は、失明や顔面神経麻痺を伴うこともあるので、特に注意が必要です。この他、下腹部、腕、足、おしりの下などにも現れます。
痛みが始まってから水ぶくれが治るまでの期間は、通常、約3週間〜1カ月です。痛みは水ぶくれが治る頃に消えますが、治った後も長期間にわたって、しつこく痛むことがあります。こちらは「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれ、高齢者に多いものです。
帯状疱疹の自覚症状は非常にわかりやすいものですから、帯状疱疹後神経痛にまで進行する前に、できるだけ早く皮膚科で診てもらうようにしましょう。
体力が低下した時が要注意
加齢、病気、疲労、ストレスなどで体の抵抗力が落ち、おとなしかったウイルスが活動し始めることで、帯状疱疹は起こります。
完全に帯状疱疹を予防する方法はありませんが、日ごろから栄養と睡眠を十分にとり、適度に運動を行うなど、心身の健康に気を配って体力を低下させないことが、最も大切な予防法です。
できるだけ初期に治療を
どんな病気でも同じですが、帯状疱疹にかかった場合も、できるだけ初期に治療を始めたほうが早く治ります。
帯状疱疹後神経痛は、ウイルスによって神経が破壊されることが原因と考えられています。従って、治癒に時間がかかるほど、また発症時の痛みが強いほど、帯状疱疹後神経痛に進みやすくなります。
帯状疱疹の治療では、原因療法として抗ウイルス剤、対症療法として消炎鎮痛剤が処方されています。
抗ウイルス剤は、ウイルスの増殖を阻止して治癒を早めます。神経がまだ破壊されていない初期の段階で使用すれば、帯状疱疹後神経痛の予防が期待できます。
また、痛みがひどい場合は、神経ブロックを行って痛みを止める治療法が有効です。
神経ブロックとは、局所麻酔剤を用いて、神経の流れを一時的に遮断する治療法です。この治療法によって血液循環がよくなるとともに、神経の緊張が和らぎ、その神経が支配している領域の痛みを止めることができるのです。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
私たちが子供の頃によくかかる病気の一つに、水ぼうそう(水痘)があります。ウイルス性の病気である水ぼうそうは、一度発症して治ってしまうと一生感染しません。
ところが、その時のウイルスは死んでしまったのでなく、長い間、体の中の神経節に潜り込んでいたのです。このウイルスが、病気などで抵抗力が弱くなった時や疲れた時、あるいは年を取ったことにより再び活動を始めることがあります。これが、皮膚の病気「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」です。
ただし、子供の頃に水ぼうそうにかかったといっても、必ずしも帯状疱疹になるわけではありません。10人に1〜2人の確率とされています。
体の片側に出る帯状の水ぶくれ
帯状疱疹は神経の通っている部分に、それも体の左右どちらかに帯のように現れます。
初めはピリピリ、チクチクした痛みから始まり、しばらくするとその部分が帯状に赤くなり、やがて水ぶくれになって神経痛のような激しい痛みを伴います。
一番、多いのは、肋間(ろっかん)神経のある胸から背中にかけてです。顔面にある三叉(さんさ)神経に沿って現れる場合は、失明や顔面神経麻痺を伴うこともあるので、特に注意が必要です。この他、下腹部、腕、足、おしりの下などにも現れます。
痛みが始まってから水ぶくれが治るまでの期間は、通常、約3週間〜1カ月です。痛みは水ぶくれが治る頃に消えますが、治った後も長期間にわたって、しつこく痛むことがあります。こちらは「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれ、高齢者に多いものです。
帯状疱疹の自覚症状は非常にわかりやすいものですから、帯状疱疹後神経痛にまで進行する前に、できるだけ早く皮膚科で診てもらうようにしましょう。
体力が低下した時が要注意
加齢、病気、疲労、ストレスなどで体の抵抗力が落ち、おとなしかったウイルスが活動し始めることで、帯状疱疹は起こります。
完全に帯状疱疹を予防する方法はありませんが、日ごろから栄養と睡眠を十分にとり、適度に運動を行うなど、心身の健康に気を配って体力を低下させないことが、最も大切な予防法です。
できるだけ初期に治療を
どんな病気でも同じですが、帯状疱疹にかかった場合も、できるだけ初期に治療を始めたほうが早く治ります。
帯状疱疹後神経痛は、ウイルスによって神経が破壊されることが原因と考えられています。従って、治癒に時間がかかるほど、また発症時の痛みが強いほど、帯状疱疹後神経痛に進みやすくなります。
帯状疱疹の治療では、原因療法として抗ウイルス剤、対症療法として消炎鎮痛剤が処方されています。
抗ウイルス剤は、ウイルスの増殖を阻止して治癒を早めます。神経がまだ破壊されていない初期の段階で使用すれば、帯状疱疹後神経痛の予防が期待できます。
また、痛みがひどい場合は、神経ブロックを行って痛みを止める治療法が有効です。
神経ブロックとは、局所麻酔剤を用いて、神経の流れを一時的に遮断する治療法です。この治療法によって血液循環がよくなるとともに、神経の緊張が和らぎ、その神経が支配している領域の痛みを止めることができるのです。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
タグ:病気(た)
■病気 大腿骨頭壊死 [病気(た)]
血液供給が断たれて、大腿骨の頭の部分が壊死
大腿(だいたい)骨頭壊死(えし)とは、大腿骨の頭の部分への血液供給が断たれて、骨頭の一部、あるいは大部分が生命力を失う疾患。
原因不明で起こるものを突発性大腿骨頭壊死といいます。これに対して、もとに何か疾患、あるいは疾患的状態があるために、大腿骨頭壊死を来す場合もあります。例えば、老人によく起こる大腿骨頸部(けいぶ)骨折では、大腿骨頭に栄養を送っている血管が骨折を起こした際に損傷され、後に大腿骨頭壊死を生じます。
突発性大腿骨頭壊死は、30〜40歳代の成人、しかも男性に多く起こり、アルコール愛飲者や副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の投与を受けた人に多くみられます。原因は完全には明確になっていませんが、大量のアルコール飲酒による肝臓障害が骨まで侵す危険性があることは否定できませんし、副腎皮質ホルモンの投与については、期間の長さより1日の投与量の多さが原因となりやすいことがわかってきています。
しばしば、股(こ)関節、大腿、ひざにかけての痛みが、突発的に起こります。多くのものは安静にしていれば2〜3週間で軽快しますが、次第に運動時にも安静時にも、痛みが持続して起こってくるようになります。
片側に発症すると、約半分くらいの割合で1年くらいのうちに、反対側にも骨頭壊死が生じてきます。
X線写真を撮ると、疾患の初期には骨頭輪郭の不整や、骨陰影の濃い部分の存在などの変化にすぎませんが、次第に進行すると、骨濃厚部が陥没して関節面が不整となります。
さらに経過すると、大腿骨頭変形に基づく変形性股関節症を合併します。
大腿骨頭壊死の検査と診断と治療
大腿骨頭壊死の診断には、単純X線撮影、骨シンチグラム、CT、MRIなどの検査が用いられます。早期に確実な診断ができるのはMRIで、骨シンチグラムなどと併用して確実な診断が下されます。
骨頭の変形が軽度で進行が遅いような場合は、つえの使用、体重のコントロール、筋力トレーニング、長距離歩行の制限、重量物の運搬禁止などでカバーすることができます。痛みに対しては、鎮痛消炎剤の服用で対処します。つえを使うことには最初は抵抗があるかもしれませんが、痛みを軽減するには有効です。また、つえの正しい使い方、筋肉トレーニングの方法は、整形外科医やリハビリの専門医から指導を受けます。
しかしながら、これらの保存的治療では症状の進行防止は大きく期待できないため、進行が予想される場合は手術が行われます。骨頭壊死がそれほど進行していないものに対しては、骨頭を温存して荷重部を変えることを目的とした骨切り術を行って、陥没を防止します。骨切り術としては、前方回転骨切り術、後方回転骨切り術、内反骨切り術、骨移植術などがありますが、骨移植術はあまり行われません。
最も多く行われている前方回転骨切り術は、骨頭を一度切り離して前方へ回転させ、壊死している部分を前のほうへ持っていく手術。壊死は骨頭の前方の部分に発生しやすいため、後方の正常な部分を一番上に回してきて、体重を受け止めるという方法です。切り離した骨頭は約10cmのボルトで固定し、数年後に骨が完全に結合していることを確認して、ボルトを抜き取ります。使用する金具類はチタン合金製で、体内に長期間入れておいても体への影響はほとんどありません。
壊死範囲が広いものや、すでに骨頭変形が進行したものに対しては、人工骨頭や関節置換を行わざるを得ません。関節置換では、全関節を人工関節に置き換えます。
この疾患の好発年齢が30〜40歳代と、人工骨頭や関節置換の適応年齢よりもかなり低いために、長期間に渡って挿入された場合、緩みや摩耗などの問題が生じます。近年、人工骨頭自体の構造も改良され、摩擦による骨の障害をできるだけ少なくする工夫もされています。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
大腿(だいたい)骨頭壊死(えし)とは、大腿骨の頭の部分への血液供給が断たれて、骨頭の一部、あるいは大部分が生命力を失う疾患。
原因不明で起こるものを突発性大腿骨頭壊死といいます。これに対して、もとに何か疾患、あるいは疾患的状態があるために、大腿骨頭壊死を来す場合もあります。例えば、老人によく起こる大腿骨頸部(けいぶ)骨折では、大腿骨頭に栄養を送っている血管が骨折を起こした際に損傷され、後に大腿骨頭壊死を生じます。
突発性大腿骨頭壊死は、30〜40歳代の成人、しかも男性に多く起こり、アルコール愛飲者や副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の投与を受けた人に多くみられます。原因は完全には明確になっていませんが、大量のアルコール飲酒による肝臓障害が骨まで侵す危険性があることは否定できませんし、副腎皮質ホルモンの投与については、期間の長さより1日の投与量の多さが原因となりやすいことがわかってきています。
しばしば、股(こ)関節、大腿、ひざにかけての痛みが、突発的に起こります。多くのものは安静にしていれば2〜3週間で軽快しますが、次第に運動時にも安静時にも、痛みが持続して起こってくるようになります。
片側に発症すると、約半分くらいの割合で1年くらいのうちに、反対側にも骨頭壊死が生じてきます。
X線写真を撮ると、疾患の初期には骨頭輪郭の不整や、骨陰影の濃い部分の存在などの変化にすぎませんが、次第に進行すると、骨濃厚部が陥没して関節面が不整となります。
さらに経過すると、大腿骨頭変形に基づく変形性股関節症を合併します。
大腿骨頭壊死の検査と診断と治療
大腿骨頭壊死の診断には、単純X線撮影、骨シンチグラム、CT、MRIなどの検査が用いられます。早期に確実な診断ができるのはMRIで、骨シンチグラムなどと併用して確実な診断が下されます。
骨頭の変形が軽度で進行が遅いような場合は、つえの使用、体重のコントロール、筋力トレーニング、長距離歩行の制限、重量物の運搬禁止などでカバーすることができます。痛みに対しては、鎮痛消炎剤の服用で対処します。つえを使うことには最初は抵抗があるかもしれませんが、痛みを軽減するには有効です。また、つえの正しい使い方、筋肉トレーニングの方法は、整形外科医やリハビリの専門医から指導を受けます。
しかしながら、これらの保存的治療では症状の進行防止は大きく期待できないため、進行が予想される場合は手術が行われます。骨頭壊死がそれほど進行していないものに対しては、骨頭を温存して荷重部を変えることを目的とした骨切り術を行って、陥没を防止します。骨切り術としては、前方回転骨切り術、後方回転骨切り術、内反骨切り術、骨移植術などがありますが、骨移植術はあまり行われません。
最も多く行われている前方回転骨切り術は、骨頭を一度切り離して前方へ回転させ、壊死している部分を前のほうへ持っていく手術。壊死は骨頭の前方の部分に発生しやすいため、後方の正常な部分を一番上に回してきて、体重を受け止めるという方法です。切り離した骨頭は約10cmのボルトで固定し、数年後に骨が完全に結合していることを確認して、ボルトを抜き取ります。使用する金具類はチタン合金製で、体内に長期間入れておいても体への影響はほとんどありません。
壊死範囲が広いものや、すでに骨頭変形が進行したものに対しては、人工骨頭や関節置換を行わざるを得ません。関節置換では、全関節を人工関節に置き換えます。
この疾患の好発年齢が30〜40歳代と、人工骨頭や関節置換の適応年齢よりもかなり低いために、長期間に渡って挿入された場合、緩みや摩耗などの問題が生じます。近年、人工骨頭自体の構造も改良され、摩擦による骨の障害をできるだけ少なくする工夫もされています。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
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