■用語 魚鱗癬 [用語(か行)]
魚の鱗のように皮膚の表面が硬くなり、はがれ落ちる皮膚病
魚鱗癬(ぎょりんせん)とは、魚の鱗(うろこ)のように皮膚の表面が硬くなり、はがれ落ちる皮膚疾患。
皮膚の表面は表皮細胞が細胞核を失って死んで作られる角質層で覆われていて、この角質層は皮膚のバリア機能に重要な役割を果たしています。角質層には、垢(あか)になって自然にはがれ落ちては作られる一定のサイクルがあり、その際、皮膚には古い角質層がスルリと落ちる巧みなメカニズムが備わっています。
ところが、魚鱗癬においては、その機能がおかしくなって角質層がうまくはがれ落ちないために異常な角質層、すなわち魚の鱗のようにカサカサした鱗屑(りんせつ)がみられるようになります。
魚鱗癬はいくつかの種類があり、最も多くみられる尋常性魚鱗癬のほか、より重症の伴性遺伝性魚鱗癬、水疱(すいほう)性魚鱗癬性紅皮症、非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症、葉状魚鱗癬、道化師様魚鱗癬があります。いずれもまれな先天性の皮膚疾患です。遺伝しますが、両親に症状がなくても子供に現れることがあります。
これらの皮膚疾患とは別に、魚鱗癬を部分的な症状として、神経を中心とするさまざまな臓器に異常を生じる遺伝的な疾患があり、それらを魚鱗癬症候群といいます。
また、これらの先天性魚鱗癬のほかに、後天性魚鱗癬もあります。こちらはホジキン病、菌状息肉症、悪性リンパ腫(しゅ)などの悪性腫瘍(しゅよう)、ビタミン欠乏症などの栄養障害、甲状腺機能低下、あるいは医療行為である人工透析などが原因で生じ、遺伝はしません。
尋常性魚鱗癬は、250人に1人くらいの頻度で発症します。常染色体優性遺伝形式をとり、生まれた時は症状がなく、乳幼児期になってから発症します。ほぼ全身の皮膚が極度に乾燥し、特に四肢の伸側と下腿(かたい)の前面に、皮膚症状が強く出ます。腋(わき)や肘(ひじ)の屈側や、外陰部など湿っている部位には、皮膚症状が目立たないのが普通です。
皮膚症状は夏に軽快し、空気が乾燥した冬に増悪。汗がほとんど出ない場合が多いため、体温調節が難しく、夏場は熱中症になりやすく、冬は角化による亀裂(きれつ)によって歩行に支障を来す場合もあります。アトピー性皮膚炎を合併することもあります。難治性の疾患ですが、成人になると自然軽快する場合もあります。
伴性遺伝性魚鱗癬は、X染色体により伝えられる伴性遺伝性で、ほとんどが男児が発症します。X 染色体上にあるステロイドサルファターゼ(ステロイドスルファターゼ)という蛋白(たんぱく)に異常があることが、はっきりわかっています。ステロイドサルファターゼは、角質層にあるコレステロール硫酸から硫酸基を外してコレステロールにする酵素を作る遺伝子であるため、コレステロールに比べてくっつきやすいコレステロール硫酸がたまって、角質層が落ちにくくなります。
生まれた時には皮膚症状がありませんが、数カ月から四肢の伸側を中心に鱗屑がみられます。腋や肘の屈側にも鱗屑がみられるなど、尋常性魚鱗癬に比べて症状がより高度である特徴があります。冬の時期に症状が目立ち、夏には軽くなります。
水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症は、10万人に1人の頻度で発症します。ケラチン1、ケラチン10、ケラチン2eという蛋白の遺伝子の異常により、常染色体優性遺伝します。全身が赤くなって、古い角質層が厚い鱗状に硬くなり、硬くてゴワゴワした水疱を伴うのが特徴。ウイルスなどから体を守る皮膚のバリア機能の低下で、感染症にかかりやすく体温調節も難しくなります。
水疱を伴わない非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症は、染色体劣性遺伝し、30〜50万人に1人の頻度で発症するとされている。
水疱型と非水疱型の先天性魚鱗癬様紅皮症は、国の小児慢性特定疾患研究事業に認定されており18歳未満、治療継続の場合は20歳未満まで、医療費補助を受けることができます。伝染性は全くありませんが、外見の印象が強い症状であるため、差別や偏見の対象となる問題があります。
葉状魚鱗癬は、ケラトヒアリンという蛋白の遺伝子の異常により染色体劣性遺伝し、生まれた時より発症します。全身が赤くなることはなく、大形の鱗屑が皮膚に生じます。眼瞼(がんけん)外反、口唇突出、手足の角化などを生じることがあります。
道化師様魚鱗癬は、染色体劣性遺伝し、よろい状の非常に硬くて厚い皮膚を生じる最重症型で、死亡することもあります。
魚鱗癬の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師は、皮膚の症状から診断します。伴性遺伝性魚鱗癬の確定診断は、白血球のステロイドサルファターゼの活性を測定して、活性が極めて低値であることからなされます。
アトピー性皮膚炎の人でも肌の乾燥のために軽度の魚鱗癬のような症状がみられることがあり、この場合は、アトピー性皮膚炎の症状の有無により判断します。
まれですが、悪性リンパ腫などの時に、魚鱗癬のような皮膚症状が現れることがあるので、大人になって出現した後天性魚鱗癬には注意が必要です。
遺伝子の研究によって、伴性遺伝性魚鱗癬はステロイドサルファターゼ、水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症はケラチン、葉状魚鱗癬ではケラトヒアリンという蛋白に異常があることがわかってきましたので、医師による診断の確定、遺伝相談のためには、遺伝子検査も役立ちます。
魚鱗癬には特効的な治療法はなく、対症療法が行われます。軽症の尋常性魚鱗癬には、皮膚の表面を滑らかにする尿素含有軟こう、ビタミンA含有軟こう、サリチル酸ワセリンが効きます。重症の場合は、エトレチナート剤(ビタミンA誘導体)を内服します。各々特有の副作用に注意が必要です。
魚鱗癬(ぎょりんせん)とは、魚の鱗(うろこ)のように皮膚の表面が硬くなり、はがれ落ちる皮膚疾患。
皮膚の表面は表皮細胞が細胞核を失って死んで作られる角質層で覆われていて、この角質層は皮膚のバリア機能に重要な役割を果たしています。角質層には、垢(あか)になって自然にはがれ落ちては作られる一定のサイクルがあり、その際、皮膚には古い角質層がスルリと落ちる巧みなメカニズムが備わっています。
ところが、魚鱗癬においては、その機能がおかしくなって角質層がうまくはがれ落ちないために異常な角質層、すなわち魚の鱗のようにカサカサした鱗屑(りんせつ)がみられるようになります。
魚鱗癬はいくつかの種類があり、最も多くみられる尋常性魚鱗癬のほか、より重症の伴性遺伝性魚鱗癬、水疱(すいほう)性魚鱗癬性紅皮症、非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症、葉状魚鱗癬、道化師様魚鱗癬があります。いずれもまれな先天性の皮膚疾患です。遺伝しますが、両親に症状がなくても子供に現れることがあります。
これらの皮膚疾患とは別に、魚鱗癬を部分的な症状として、神経を中心とするさまざまな臓器に異常を生じる遺伝的な疾患があり、それらを魚鱗癬症候群といいます。
また、これらの先天性魚鱗癬のほかに、後天性魚鱗癬もあります。こちらはホジキン病、菌状息肉症、悪性リンパ腫(しゅ)などの悪性腫瘍(しゅよう)、ビタミン欠乏症などの栄養障害、甲状腺機能低下、あるいは医療行為である人工透析などが原因で生じ、遺伝はしません。
尋常性魚鱗癬は、250人に1人くらいの頻度で発症します。常染色体優性遺伝形式をとり、生まれた時は症状がなく、乳幼児期になってから発症します。ほぼ全身の皮膚が極度に乾燥し、特に四肢の伸側と下腿(かたい)の前面に、皮膚症状が強く出ます。腋(わき)や肘(ひじ)の屈側や、外陰部など湿っている部位には、皮膚症状が目立たないのが普通です。
皮膚症状は夏に軽快し、空気が乾燥した冬に増悪。汗がほとんど出ない場合が多いため、体温調節が難しく、夏場は熱中症になりやすく、冬は角化による亀裂(きれつ)によって歩行に支障を来す場合もあります。アトピー性皮膚炎を合併することもあります。難治性の疾患ですが、成人になると自然軽快する場合もあります。
伴性遺伝性魚鱗癬は、X染色体により伝えられる伴性遺伝性で、ほとんどが男児が発症します。X 染色体上にあるステロイドサルファターゼ(ステロイドスルファターゼ)という蛋白(たんぱく)に異常があることが、はっきりわかっています。ステロイドサルファターゼは、角質層にあるコレステロール硫酸から硫酸基を外してコレステロールにする酵素を作る遺伝子であるため、コレステロールに比べてくっつきやすいコレステロール硫酸がたまって、角質層が落ちにくくなります。
生まれた時には皮膚症状がありませんが、数カ月から四肢の伸側を中心に鱗屑がみられます。腋や肘の屈側にも鱗屑がみられるなど、尋常性魚鱗癬に比べて症状がより高度である特徴があります。冬の時期に症状が目立ち、夏には軽くなります。
水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症は、10万人に1人の頻度で発症します。ケラチン1、ケラチン10、ケラチン2eという蛋白の遺伝子の異常により、常染色体優性遺伝します。全身が赤くなって、古い角質層が厚い鱗状に硬くなり、硬くてゴワゴワした水疱を伴うのが特徴。ウイルスなどから体を守る皮膚のバリア機能の低下で、感染症にかかりやすく体温調節も難しくなります。
水疱を伴わない非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症は、染色体劣性遺伝し、30〜50万人に1人の頻度で発症するとされている。
水疱型と非水疱型の先天性魚鱗癬様紅皮症は、国の小児慢性特定疾患研究事業に認定されており18歳未満、治療継続の場合は20歳未満まで、医療費補助を受けることができます。伝染性は全くありませんが、外見の印象が強い症状であるため、差別や偏見の対象となる問題があります。
葉状魚鱗癬は、ケラトヒアリンという蛋白の遺伝子の異常により染色体劣性遺伝し、生まれた時より発症します。全身が赤くなることはなく、大形の鱗屑が皮膚に生じます。眼瞼(がんけん)外反、口唇突出、手足の角化などを生じることがあります。
道化師様魚鱗癬は、染色体劣性遺伝し、よろい状の非常に硬くて厚い皮膚を生じる最重症型で、死亡することもあります。
魚鱗癬の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師は、皮膚の症状から診断します。伴性遺伝性魚鱗癬の確定診断は、白血球のステロイドサルファターゼの活性を測定して、活性が極めて低値であることからなされます。
アトピー性皮膚炎の人でも肌の乾燥のために軽度の魚鱗癬のような症状がみられることがあり、この場合は、アトピー性皮膚炎の症状の有無により判断します。
まれですが、悪性リンパ腫などの時に、魚鱗癬のような皮膚症状が現れることがあるので、大人になって出現した後天性魚鱗癬には注意が必要です。
遺伝子の研究によって、伴性遺伝性魚鱗癬はステロイドサルファターゼ、水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症はケラチン、葉状魚鱗癬ではケラトヒアリンという蛋白に異常があることがわかってきましたので、医師による診断の確定、遺伝相談のためには、遺伝子検査も役立ちます。
魚鱗癬には特効的な治療法はなく、対症療法が行われます。軽症の尋常性魚鱗癬には、皮膚の表面を滑らかにする尿素含有軟こう、ビタミンA含有軟こう、サリチル酸ワセリンが効きます。重症の場合は、エトレチナート剤(ビタミンA誘導体)を内服します。各々特有の副作用に注意が必要です。
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今年もお世話になりました。
良いお年をお迎えください。
by pandan (2011-12-30 07:29)