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■適度な運動で遺伝子の働き変化 信州大学教授ら解明 [健康ダイジェスト]

 適度な運動による健康維持効果には遺伝子の働きの変化がかかわっていることが、信州大学大学院医学系研究科(長野県松本市)の谷口俊一郎教授と橋本繁成助教らの研究で明らかになりました。糖尿病やがんなどの原因にもなる臓器の炎症を促進する遺伝子の働きが、運動後に抑制されることを確認しました。
 生命活動を担う情報が記録されている遺伝子の働きは、人の意思で変えられることを実証した形で、「遺伝子イコール運命」といった固定観念を改めて突き崩す成果といえそうです。
 谷口教授らは、遺伝子の働きを決める仕組みの一つで、メチル基という物質が遺伝子に付着する「メチル化(炎症性遺伝子修飾)」と呼ばれる現象に着目。
 臓器の炎症は体が有害なストレスや刺激を受けた時に生じますが、この時、炎症を抑える働きをする遺伝子は多くのメチル基が付いて働きが抑えられ、炎症を促進する遺伝子はメチル基がはがれて働きが活発化していると考えられています。
 信州大学では、能勢博・同研究科教授が開発したゆっくり歩きと早歩きを交互に繰り返す運動法「インターバル速歩」の効果と、遺伝子の関係を調べる「遺伝子解析コンソーシアム」に取り組んでいます。谷口教授らは「適度な運動をすると遺伝子の働きも若返るのではないか」との仮説を立て、コンソーシアムを通じて、インターバル速歩を半年間行った中高年グループの血液を採取して遺伝子の変化を調べました。
 働きが強くなりすぎると炎症を起こす原因になるタンパク質「ASC」の遺伝子を調べたところ、インターバル速歩を始める前はメチル化の割合が加齢とともに減り、働きが強まって炎症を起こしやすい状態でした。だが、速歩を始めて半年後にはメチル化の割合が高くなり、健康な若者のレベルに近付きました。橋本助教は、「年齢に換算すると25~30年の若返り効果があった」と説明しています。
 炎症を促進する働きがある別の遺伝子でも同様の変化が確認でき、運動による効果が多面的に現れることも判明。半年後にメチル化の割合に変化がみられた遺伝子は約30個に上ります。肥満やがん、うつに関係する遺伝子も含まれていることから、谷口教授らは今後、個々の遺伝子を一つ一つ調査し、遺伝子の働きの変化がどんな効果をもたらしているのかなどを解き明かしていく考えです。
 遺伝情報を伝えるDNA(デオキシリボ核酸)の一部である遺伝子の構造は基本的に変わりませんが、どの遺伝子がどの程度働くかは環境などの影響で変化することはこれまでの研究でも解明されています。
 谷口教授は、「遺伝子の構造は先天的に決まっていても、その働きは努力で変えることができる。DNAは運命ではない」と話しています。

 2013年1月3日(木)




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