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■用語 ウイルス性いぼ [用語(う)]

[ダイヤ]ヒト乳頭腫ウイルスが皮膚や粘膜に侵入して、いぼができる疾患の総称
 ウイルス性いぼとは、ヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス(ヒトパピローマウイルス)が皮膚や粘膜に侵入して、いぼができる疾患の総称。いぼの別名は疣贅(ゆうぜい)で、ウイルス性疣贅とも呼ばれます。
 ウイルス性いぼは、尋常(じんじょう)性疣贅、青年性扁平(へんぺい)疣贅、尖圭(せんけい)コンジロームなどに分類され、それぞれの原因となる乳頭腫ウイルスの型があります。
 ヒト乳頭腫ウイルスは現在までに150種類以上の種類が見付かり、その型によりいろいろな疾患の症状を現すことが知られています。子宮頸(けい)がんやある種の皮膚がんの原因にもなりますが、がんを起こすヒト乳頭腫ウイルスの型は特定のものであって、通常のウイルス性いぼががんに進展するわけではありません。
ウイルス性いぼの中で最も多い尋常性疣贅
 尋常性疣贅は、ヒト乳頭腫ウイルスが皮膚に感染して、いぼができる疾患。普通、いぼといわれるものの多くは、この尋常性疣贅です。
 外傷を受けやすい露出部、特に手足の甲や指、膝頭(ひざがしら)などによくできますが、爪(つめ)の周囲にもできます。頭部、顔面、頸部、足底にできることもあります。
 ささくれなど傷のある皮膚に感染し、数カ月後には光沢のある肌色の直径1ミリ大の半球状に隆起した発疹(ほっしん)ができ、次第に大きくなって、表面が角化して粗く灰白色になります。直径2~10ミリ大になり、融合して2~3センチ大になることもあります。
 頭部、顔面、頸部に生じる場合は、先端がとがった細長い指状、糸状の突起になることがあります。
 足の裏に生じる場合は、特に足底(そくてい)疣贅と呼ばれ、通常、米粒大から小豆大の大きさで、足の裏の皮膚面からやや盛り上がり、表面が粗くて白っぽい色をした硬い部分ができます。しばしば多発して集まり、敷石状になります。これをモザイク疣贅と呼ぶこともあります。
 足底は体重が掛かって、いぼがめり込んでしまうため、歩く時に不快を感じたり、小石を踏んでいるように痛むことがあります。
 足底疣贅は学童期の小児に多く発症し、素足になる学校のプールサイドや脱衣所の床などで接触感染するとみられます。しばしば魚(うお)の目(鶏眼)や、たこ(べんち)と間違われますが、魚の目、たこは靴などによる長期間の摩擦や圧迫が原因で、足底疣贅はウイルス感染症という違いがあります。
 ちなみに、子供には魚の目、たこは、まずできません。魚の目、たこは、加重による皮膚の角化で、一種の老化現象として大人にできるものです。
 尋常性疣贅を放置しておくと、ほかの部位に移ります。針でほじくったり、市販の薬で取ろうとしたりすると、いぼがほかの部位により広がることになります。素人判断は禁物で、まず皮膚科、皮膚泌尿器科の医師を受診し、適切な治療を受けるべきです。
若い人の主に顔面や手の甲に、扁平に隆起した小さないぼが多発する青年性扁平疣贅
 青年性扁平疣贅は、若い人の主に顔面や手の甲に、扁平に隆起した小さないぼが多発する疾患。扁平いぼ、扁平疣贅とも呼ばれます。
 青年期の男女にできますが、10歳以下の子供にもできます。中年以上ではほとんどみられません。
 ウイルス性いぼの一種であり、主にヒト乳頭腫ウイルス3型と10型の皮膚感染が原因で起こります。同じウイルス性疣贅の一種で、手のひらや足の裏に表面がざらざらした硬いいぼが生じやすい尋常性疣贅とは、ヒト乳頭腫ウイルスの型が違います。
 顔面、手の甲、あるいは前腕などに生じるいぼは、2、3ミリから1センチ大で、扁平に多少隆起した円形か楕円(だえん)形をしており、周囲の皮膚と同じ色調または褐色調です。表面は、あまりざらざらしていません。
 普通、自覚症状はありませんが、顔面や手の甲を爪や手でかいたり、顔面にかみそりを当てたりすると、ウイルスがかき傷、そり傷に沿って感染するため、直線状にいぼが並んで生じ、増えていくこともあります。
 ほかのウイルス性いぼと比べて、青年性扁平疣贅は自然に軽快する可能性が高いと考えられています。特に、突然赤くなって皮がむけ、かゆくなるのは治る前兆で、この炎症の症状が出てから1~2週間ほどで、ウイルスを排除するための免疫機能によって抗体が体の中に作られるとともに、自然消退する性質があります。
 しかし、治る前兆の炎症の症状がいつ出るかは人によって異なり、炎症が起きるまでには長期間かかるのが一般的です。
性器に軟らかい、いぼのような腫瘍ができる尖圭コンジローム
 尖圭コンジロームは、男女の性器に軟らかい、いぼのような腫瘍(しゅよう)ができる疾患。尖圭コンジローマとも呼ばれます。
 性行為感染症の1つとされており、ヒト乳頭腫ウイルスがセックスの時などに感染することで起こります。好発するのは、いわゆる性活動の盛んな年代。
 ヒト乳頭腫ウイルスに感染した人がすべてすぐに発症するわけではなく、ウイルスが体内に潜んでいるだけの人がかなりいるといわれています。そのため、移された相手がはっきりしない場合も多くみられます。潜伏期間は一定ではありませんが、一般的に感染後2~3カ月で症状が現れます。
 男性では、主として冠状溝という、亀頭と陰茎の中央の間にある溝に、ニワトリのトサカのような腫瘍ができて増殖します。塊が大きくなるとカリフラワー状になることもあります。陰嚢(いんのう)、尿道口、肛門(こうもん)周囲、口腔(こうくう)にできることもあります。
 女性では、大小の陰唇、膣(ちつ)、会陰(えいん)部などの皮膚と粘膜の境界にある湿った部分にでき、 尿道口、肛門周囲、口腔にできることもあります。
 感染初期は異物感があるだけで自覚症状はほとんどありませんが、かゆみやひりひりする感じがあったり、ほてる、性交痛を感じる場合もあります。
 いったん治療して腫瘍が消えても、ヒト乳頭腫ウイルスが皮下に潜んでいて再発を繰り返すことがよくあります。女性では、原因となるヒト乳頭腫ウイルスと子宮頸がんとの関連も推定されています。
 男性の場合、正常な陰茎にも1〜2ミリの小さないぼのようなぶつぶつがみられることがありますが、これは治療の必要はありません。しかし、尖圭コンジロームは悪性のものや性行為で移るものまでさまざまなものがありますので、亀頭部にできている痛みのないはれ物に気付いたら、泌尿器科か皮膚科の専門医を受診します。
[ハート]ウイルス性いぼの検査と診断と治療
尋常性疣贅の検査と診断と治療
 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による尋常性疣贅の診断では、いぼの表面を薄く切り取ると点状に出血することで、魚の目、たこと鑑別します。古いいぼでは角質が厚くなって、区別が難しくなります。
 確実に診断する方法は、いぼを切除して組織学的に診断するか、ウイルス抗原または核酸を検出します。
 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、いぼを凍結して取る凍結療法や、電気焼灼(しょうしゃく)が一般的に行われます。
 凍結療法は、液体窒素を綿棒に含ませて、いぼの凍結、融解を繰り返す方法です。いぼの部分を超低温で瞬間的に凍結させ、部分的にやけどの状態を起こすことで、皮膚内部のいぼの芯(しん)を表面に押し上げ、徐々にいぼを縮小させます。
 処置そのものにかなりの痛みを伴うほか、場合によっては水膨れが発生し、処置後も患部に激痛が伴うこともあります。 また、場合によっては水膨れ内部に出血が発生し、黒く変色することもありますが、この状態になると激痛こそあるものの、治りは早くなります。
 通常、凍結療法は4~7日が効果のピークであるために、1~2週間に1回の通院で治療しなければならず、効果に個人差こそありますが、およそ数週から2カ月以上と長い日数が必要とされます。治癒率の低いことも欠点で、特に角質の厚い爪の周囲や足底ではなかなか治りません。
 なお、家庭用のいぼ治療薬として知られるイボコロリは、角質を溶かすだけなのでかえって広げてしまうことがあります。凍結療法と組み合わせると、よい結果が得られます。
 電気焼灼は、レーザーメスや電気メスでいぼを焼く方法です。液体窒素による凍結療法と違って一度で治るものの、麻酔が必須で、傷跡を残すことがあります。凍結療法などと異なり、保険適応外でもあります。
 一部の医療機関では、凍結療法で治りにくいケースや痛みに耐えられないケースで、DNCB(2.4-ジニトロクロロベンゼン)という薬を塗布していぼを取る治療法を行っています。DNCBは本来、かぶれの状態を見る検査薬で、これを治療に応用し、いぼをかぶれた状態にして取ります。多少かゆみを伴ったり、じくじくした状態になったりすることがありますが、痛みはありません。塗布を2カ月続けると、約70パーセントが治癒するとされます。
 ほかにも、抗生物質のブレオマイシンの局所注射、ウイルス消毒薬の使用、はと麦の種を成分とする漢方薬ヨクイニンの内服、免疫療法などいろいろの治療法があります。
青年性扁平疣贅の検査と診断と治療
 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による青年性疣贅の診断では、皮膚症状から視診で判断し、似たような尋常性疣贅やほかの疾患と鑑別します。場合によっては、いぼの一部を採取して組織検査をすることもあります。
 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、ほかのウイルス性いぼなどの一番基本となる治療法である液体窒素凍結療法の効果が少なく、ある時期になると一斉に自然消退することがあるため、経過をみることもあります。
 治りにくい場合には、尋常性疣贅と同様に、いぼを凍結して取る液体窒素凍結療法や電気焼灼、ヨクイニンの内服などが一般的に行われます。
 この青年性扁平疣贅では、皮膚を刺激すると、いぼが次々とできてしまいます。爪や手で引っかいたり、顔面ではかみそりを当てたりしないことが必要です。
尖圭コンジロームの検査と診断と治療
 泌尿器科、ないし皮膚科の医師による尖圭コンジロームの診断では、梅毒でみられる扁平コンジロームと違って先のとがったいぼで、多発すると鶏冠状を示すため、多くは見た目で判定できます。判断が難しい場合は、皮膚組織の一部を切除して顕微鏡検査で判定します。時には、血液検査で梅毒ではないことを確認することもあります。
 泌尿器科、ないし皮膚科の医師の治療では、小さくて少数なら5−FU軟こう、尿素軟こうなどの塗り薬も効果があるといわれていますが、一般的には液体窒素による凍結凝固や、レーザー、電気メスによる焼灼が有効です。大きかったり、多発、再発する場合は、周囲の皮膚を含めて手術で切除します。
 これらの治療によって一時的に腫瘍は消えますが、ウイルスは周囲の皮膚に潜んでいるため20〜50パーセントで再発します。
 診断が確定したら、きちんと治るまで性行為は控えるか、コンドームを使用するようにします。特に、女性が生理の時はふだんよりさまざまな菌に感染しやすいので、性行為は控えます。また、避妊目的でピルを服用しても、性行為感染症の予防にはなりませんので、男性にコンドームの使用を求めます。




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■用語 ウェルニッケ・コルサコフ症候群 [用語(う)]

[バー]ビタミンB1の欠乏のために、脳の働きに障害が起きる疾患
 ウェルニッケ・コルサコフ症候群とは、ビタミンB1(チアミン)の欠乏のために、アルコール依存症の人や栄養不良の人に発症する中枢神経疾患。
 急性期のものをウェルニッケ脳症、慢性期(後遺症)のものをコルサコフ症候群と呼びます。ウェルニッケ脳症は眼球運動障害や運動失調を伴い、慢性化すると健忘症を主症状とするコルサコフ症候群に移行します。
 はっきりしたウェルニッケ脳症がなくても、コルサコフ症候群にかかる場合もありますが、コルサコフ症候群にかかっている人の約80パーセントに、ウェルニッケ脳症も起きています。また、ウェルニッケ・コルサコフ症候群は、ビタミンB1の欠乏がなくても、外傷、脳卒中、腫瘍(しゅよう)、脳の感染症などによって側頭葉が損傷した場合にも起こります。
 ウェルニッケ脳症は体内の炭水化物の代謝に必要なビタミンB1の欠乏のみでも発症するものの、アルコール依存症の人や長期間のアルコール多飲者などに多く起こるため、アルコールも複合的に影響して発症すると考えられてれています。大量のアルコールの摂取によってビタミンB1の腸管からの吸収が障害され、さらにアルコールを多飲する人は食事を摂取しない飲み方をする人が多いためです。
 飢餓による栄養障害は現在では非常に少なくなりましたが、インスタント食品の偏食による栄養の偏りや、摂食障害、妊娠悪阻(つわり)などもビタミンB1の欠乏を招いて、ウェルニッケ脳症を発症する要因になります。
 脳内の非常に特異的な場所である乳頭体(にゅうとうたい)、中脳水道周囲灰白質、視床下部、視床内側部、小脳虫部などが、病変の好発部位となります。
 従って、症状も特徴的であり、急性期には眼球運動障害、運動失調、意識障害の3主要症状が現れます。
 眼球運動障害は、外直筋(がいちょくきん)まひのために眼球が一点を見詰めたまま動かなくなることが多く、瞳孔(どうこう)の異常などを起こす内眼筋まひはまれです。回復してくると、眼球が自動的に一方向に素早く動いてからゆっくりと元の位置に戻る水平眼振が起こり、物が2つに見える複視やめまい感が自覚されます。
 運動失調としては、小脳の働きが悪くなるために、立ったり座ったりした時に体がふらついて倒れたり、歩行がおぼつかなかったり、手足を思うように動かせなくなるといった症状が急性に起こります。
 意識障害としては、無欲、注意力散漫、すぐに眠ってしまう傾眠といった軽い意識障害から昏睡まで、さまざまな程度に起こります。思考や行動が乱れる錯乱、意識混濁に加えて幻覚や錯覚がみられるせん妄が、前面に出ることもあります。
 慢性期になると、健忘症を主症状とするコルサコフ症候群に移行します。出来事を覚える記銘力の障害や、覚えた出来事をずっと保持しておく記憶力の障害、場所や時間や人物がわからなくなる見当識(けんとうしき)障害、記憶の不確かな部分を作話で補おうとする「コルサコフ作り話」をしたりします。
 短期間の記憶は保たれ、社交的な付き合いや論理的な会話はできます。理解力や計算などの能力は、比較的保たれます。
 長期間のアルコール多飲者が、通常の酔っ払った状態とは異なる意識状態の異変を感じたら、ウェルニッケ・コルサコフ症候群を疑うことが重要で、早急に救急患者として医療機関を受診することが大切です。
 放置すると意識障害がさらに進行して、昏睡状態を引き起こし、ひいては死に至るケースもあり、仮に回復しても重度の健忘や運動失調といった後遺症を招くことが多くなります。
[バー]ウェルニッケ・コルサコフ症候群の検査と診断と治療
 内科、神経内科の医師による診断では、症状と中枢神経所見からウェルニッケ・コルサコフ症候群を疑い、ビタミンB1(チアミン)不足になり得る栄養不良状態が存在したかどうかを問診し、MRI(磁気共鳴画像)検査で視床や中脳水道周囲などに病変部位が認められれば、確定できます。
 ただし、軽いものでは病変部位が認められないこともあります。血中のビタミンB1濃度の測定も行います。
 また、ウェルニッケ・コルサコフ症候群では意識障害が特徴であるため、頭部外傷、薬物、脳症、髄膜炎、脳炎などに起因する意識障害と識別します。
 内科、神経内科の医師による治療は、ビタミンB1濃度の測定の血液検査は結果が出るまで時間がかかるため、通常は結果が出る前に開始し、早急にビタミンB1を投与します。
 ウェルニッケ脳症の典型的な3主要症状が現れた時には、治療を行っても後遺症であるコルサコフ症候群を残すことが多いため、できる限り早期に診断し、早期に治療を開始することが極めて重要です。
 一般的には、数日間ビタミンB1を1日1000ミリグラムほど静脈注射し、その後は150ミリグラムほど経口投与で補充します。
 ビタミンB1を静脈注射すると、意識障害や眼球運動障害は迅速に改善します。しかし、運動失調や記憶障害などの改善は単純ではなく、回復の度合は症状の現れた期間が長引くほど悪化します。
 長期間のアルコール多飲者やアルコール依存症の人に発症者が多いので、アルコール依存に対するリハビリテーションや、末梢(まっしょう)神経障害を併発して手足のしびれが起こり、特に夜間に強いビリビリとした痛みが多いことがあるので、そのリハビリテーションが必要となることもあります。
 長期的な断酒や健康的な食生活によって、ウェルニッケ・コルサコフ症候群が次第に治っていくことがあります。しかし、側頭葉の損傷が原因の場合には、回復は遅く、完治はしません。




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■用語 ウェルニッケ脳症 [用語(う)]

[バー]栄養不良の人やアルコール多飲者に起こる脳症
 ウェルニッケ脳症とは、ビタミンB1(チアミン)の欠乏のために、脳の働きに障害が起きる疾患。
体内の炭水化物の代謝に必要なビタミンB1の欠乏のみでも発症しますが、長期間のアルコール多飲者やアルコール依存症の人などに多く起こるため、アルコールも複合的に影響して発症するとも推測されています。
 大量のアルコールの摂取によってビタミンB1の腸管からの吸収が障害され、さらにアルコールを多飲する人は食事を摂取しない飲み方をする人が多いためです。
 飢餓による栄養障害は現在では非常に少なくなりましたが、インスタント食品の偏食による栄養の偏りや、摂食障害、妊娠悪阻(つわり)などもビタミンB1の欠乏を招いて、ウェルニッケ脳症を発症する要因になります。
 脳内の非常に特異的な場所である乳頭体(にゅうとうたい)、中脳水道周囲、視床などが、病変の好発部位となります。従って、症状も特徴的であり、急性期には眼球運動障害、運動失調、意識障害の3主要症状が現れます。
 眼球運動障害は、外直筋(がいちょくきん)まひのために目の玉が一点を見詰めたまま動かなくなることが多く、瞳孔(どうこう)の異常などを起こす内眼筋まひはまれです。回復してくると、眼球が自動的に一方向に素早く動いてからゆっくりと元の位置に戻る水平眼振が起こり、物が2つに見える複視やめまい感が自覚されます。
 運動失調としては、小脳の働きが悪くなるために、立ったり座ったりした時に体がふらついて倒れたり、歩行がおぼつかなかったり、手足を思うように動かせなくなるといった症状が急性に起こります。
 意識障害としては、無欲、注意力散漫、すぐに眠ってしまう傾眠といった軽い意識障害から昏睡まで、さまざまな程度に起こります。思考や行動が乱れる錯乱、意識混濁に加えて幻覚や錯覚がみられるせん妄が、前面に出ることもあります。
 慢性期になると、場所や時間がわからなくなる見当識(けんとうしき)障害、健忘、記銘力や記憶力の障害など、いわゆる物忘れの症状が主体となります。
 長期間のアルコール多飲者が、通常の酔っ払った状態とは異なる意識状態の異変を感じたら、ウェルニッケ脳症を疑うことが重要で、早急に救急患者として医療機関を受診することが大切です。
[バー]ウェルニッケ脳症の検査と診断と治療
 内科、神経内科の医師による診断では、症状と神経所見からウェルニッケ脳症を疑い、ビタミンB1不足になり得る栄養不良状態が存在したかどうかを問診し、MRI(磁気共鳴画像)検査で病変部位が認められれば、確定できます。血中のビタミンB1濃度の測定も行います。
 内科、神経内科の医師による治療は、ビタミンB1濃度の測定の血液検査は結果が出るまで時間がかかるため、通常は結果が出る前に開始し、早急にビタミンB1を投与します。
 典型的な3主要症状が現れた時には、治療を行っても後遺症を残すことが多いため、できる限り早期に診断し、早期に治療を開始することが極めて重要です。
 一般的には、数日間ビタミンB1を1日1000ミリグラムほど静脈注射し、その後は150ミリグラムほど内服で補充します。
 ビタミンB1を静脈注射すると、眼球運動障害は迅速に改善します。しかし、運動失調や記憶障害などの改善は単純ではなく、回復の度合は症状の現れた期間が長引くほど悪化します。
 長期間のアルコール多飲者やアルコール依存症の人に発症者が多いので、アルコール依存に対するリハビリテーションや、末梢(まっしょう)神経障害を併発して手足のしびれが起こり、特に夜間に強いビリビリとした痛みが多いことがあるので、そのリハビリテーションが必要となることもあります。




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■用語 魚の目 [用語(う)]

[足]刺激や圧迫により、足の皮膚が部分的に厚くなり、痛みを生じる状態
 魚(うお)の目とは、外からの持続的な機械的摩擦や圧迫などによって、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなり、痛みを生じる状態。鶏眼(けいがん)とも呼ばれます。
 皮膚表面の角質層は、円錐(えんすい)状に下に向かって厚くなっています。その中央にある芯(しん)が皮膚の奥深くへと入り込み、先がとがっているため、上から押したり、立ったり歩いたりして体重が掛かると、神経を刺激して痛みを生じます。
 魚の目と同様、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなる状態には、たこもあります。こちらは厚くなった皮膚の状態が平らに盛り上がっているもので、手で触ると硬く感じるものの、痛みは生じません。たこが慢性化すると、表面が白くカサカサになり、女性ではストッキングが引っ掛かったりもします。
 魚の目のできやすい場所は、足の指の背(上側)、指と指の間、足裏の母指球の下、第2指と第3指の付け根あたり。いずれも靴による摩擦や圧迫を受けやすい場所です。まれに、かかとにできることもあります。
 原因のほとんどは、靴の履き方が悪いために足に掛かる体重分散が偏ることと、足に合わない靴を履いているために摩擦や圧迫を受けることにあります。例えば、小さめの靴を履いていると、足の指や付け根などが靴に当たり、圧迫され続けます。靴幅が狭くて、足指が両側から圧迫されると、指と指の摩擦が起こります。こうした圧迫や摩擦の結果 、皮膚は硬くなり、魚の目になります。
 大きめの靴でも、足が靴の前側へと滑っていき、やはり足指や付け根のあたりが圧迫されて、同じことが起こります。 底が薄い靴でも、地面から受ける衝撃が大きく、足の裏が圧迫されます。
 魚の目のできやすい足もあります。その代表が開張(かいちょう)足で、親指と小指の付け根を結ぶ横のラインの中央に、くぼみがなく、ベタッとした足を指します。この開張足の人は、横ラインの中央部が靴底の圧迫を受け、魚の目ができやすくなります。開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。
 開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、指の骨をつなぐ靱帯(じんたい)が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のために靱帯が伸び切った状態になり、開張足を起こします。
 ハンマー足指やその他の足指の変形も、魚の目の原因となります。ハンマー足指とは、靴のつま先部分がきついために指が伸ばせず、指の関節がハンマーのような形で曲がったままになった状態です。曲がって上へ飛び出した足指の背が靴に当たるため、そこが角質化しやすくなります。
 巻きづめ、内反小趾(ないはんしょうし)も、原因となります。巻きづめとは、伸びたつめの両端が皮膚に食い込んだ状態で、先の細い靴でつま足が両側から圧迫され続けると起こります。巻きづめ気味の人は、指と指がこすれ合うので、指の間に魚の目ができやすくなります。
 内反小趾とは、親指が圧迫を受けて変形する外反母趾と逆に、小指が圧迫を受けて変形した状態で、小指の外側に、魚の目ができる人は放っておくと小指が変形し、手術の必要性が生じます。
 女性では、冷え性と関係していることもあります。特に足の冷えやすい人は、血行不良から皮膚の角質化が起こりやすいとされています。
 中高年では、動脈硬化や糖尿病と関係していることもあります。動脈硬化の場合には足の血行不良から、糖尿病では末梢(まっしょう)神経の障害から、魚の目ができやすくなるからです。反対に、魚の目が治らないことから、動脈硬化などの疾患が発見されることもあります。
[足]魚の目の検査と診断と治療
 魚の目の治療と予防に必要なことは、外からの機械的な摩擦や圧迫を防ぐことです。そのためには、足に合った靴を選び、魚の目の上にスポンジを当てて、絆創膏(ばんそうこう)でしっかり固定するか、薬剤の入った市販の保護パッドを張っておきます。軽い症状なら、しばらくすると自然に治っていきます。
 また、スピール膏を使用するのもよいでしょう。これは皮膚の角質を軟化させるもので、家庭で行える治療薬として広く使用されています。まず、スピール膏を患部の大きさと同じか、少し小さめに切って患部に当てて、その上から絆創膏で固定します。2〜3日してはがすと、患部が白くふやけているので、ナイフかはさみで、魚の目の芯の先を少し血が出る程度に削り取ります。これを何回か繰り返します。
 保護パッドなどで治らない場合や、痛みがひどかったり、悪化したりした場合には、早めに皮膚科の専門医の治療を受けます。医師による治療では通常、外科用のレーザーメスや電気メスで厚くなった部分を削ります。その後、フェルトや毛皮でできたさまざまな種類のパッドを当てて、患部への圧迫を減らします。
 患部の血流障害がある時は、削って切除することはできません。この場合は、患部にかかる圧力を減らすために、矯正器具やインナーを挿入した特殊な靴が必要になります。
 手術で除去しても、自分の足に合わない靴を履き続けていると再発します。予防の基本は、靴選びにあります。
 靴の理想は「きつからず、緩からず」で、靴店では必ず両足とも履いて、歩いてみます。腰掛けたり、かがんだりして、つま先やくるぶし、かかとなどに当たる個所がないかどうか確認します。モデル風に一直線上を早歩きしてみると、当たる個所がわかりやすくなります。足がむくんで大きくなる夕方の時間帯に、ピッタリの靴を買っておけば、後できつくて足が痛いということもなくなります。
 なお、開張足は自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。




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