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■用語 中枢性思春期早発症 [用語(ち)]

[バー]性腺刺激ホルモンの影響を受けて性ホルモンの分泌が盛んになり、二次性徴が早く起こる疾患
 中枢性思春期早発症とは、下垂体(脳下垂体)から性腺(せいせん)刺激ホルモンであるゴナドトロピンが分泌され、それにより性腺からの女性ホルモンまたは男性ホルモンの分泌が盛んになり、二次性徴の成熟が通常の思春期よりも2〜3年程度早い年齢で起こる疾患。
 真性思春期早発症、脳性思春期早発症、ゴナドトロピン依存性思春期早発症とも呼ばれます。
 女子では、乳房が少しでも膨らんできた時が、思春期の開始です。この乳房の発育が7歳6カ月以前に起こった時、中枢性思春期早発症の可能性が高いといえます。8歳より前に陰毛が生えてくる、10歳6カ月より前に月経が発来するなどの症状も認めます。
 乳房発育だけがみられる時は、女性ホルモンの分泌の一過性の高進によると考えられる乳房早期発育症との区別が必要です。
 男子では、精巣( 睾丸〔こうがん〕)が4ミリリットル以上の大きさになった時が、思春期の開始です。この精巣の発育が9歳未満で起こった時、中枢性思春期早発症の可能性が非常に高いといえます。10歳より前に陰毛が生えてくる、11歳より前にひげが生えたり、声変わりするなどの症状も認めます。
 この中枢性思春期早発症は、脳内視床下部よりも中枢にある成熟時計と呼ばれる体内時計により、視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(ゴナドトロピン放出ホルモン〔GnRH〕または 黄体形成ホルモン放出ホルモン〔LHーRH〕)の分泌が高進し、これが下垂体からの性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピン(黄体形成ホルモン〔LH〕および卵胞刺激ホルモン〔FSH〕)の分泌を促進し、さらにこのゴナドトロピンが女性の性腺である卵巣からの女性ホルモンであるエストロジェンの分泌、男性の性腺である精巣からの男性ホルモンであるテストステロンの分泌を促進することで引き起こされ、二次性徴が早く起こります。
 また、中枢性思春期早発症は、胚芽腫(はいがしゅ)・過誤腫・星状細胞腫などの脳腫瘍(しゅよう)や脳炎後遺症、水頭症などによる器質性思春期早発症と、明らかな原因が認められない特発性思春期早発症の2つに大きく分けられます。
 女子に起こるものの多くは、原因不明の特発性思春期早発症ですが、男子に起こるものは、脳腫瘍などによる器質性思春期早発症が多くみられます。
 女性ホルモンであるエストロジェン、または男性ホルモンであるテストステロンが早期に分泌されることにより、成長のスパート(急激な進行)が起こります。女子に男子の約3〜5倍多く、起こります。
 原因が脳腫瘍による場合は、腫瘍の圧迫症状による頭痛、視野狭窄(きょうさく)などが起こることがあります。
 未治療で放置すると、実際の年齢に対して、実際のその人の体の年齢を現す骨年齢が促進して、骨が成長する骨端(こったん)が早期に融合するため、一時的に身長が伸びた後、最終的に低身長で成長が終わります。
 低年齢で乳房が大きくなってきた場合や、急に背が伸びてきた場合には、小児内分泌科などを受診することが勧められます。
[バー]中枢性思春期早発症の検査と診断と治療
 小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、問診でいつごろから、どのような症状が始まったかを聞き、視診と触診で全身および外性器の性成熟の状態をチェックします。
 また、ホルモン検査で血液中の性腺刺激ホルモンや性ホルモンの分泌状態、頭部MRI(磁気共鳴画像撮影)検査で脳腫瘍などの病変の有無、腹部超音波(エコー)検査で副腎や卵巣の腫瘍の有無を調べることもあります。手と手首のX線(レントゲン)検査を行い、骨年齢を判定して骨の成熟の有無を調べることもあります。
 ホルモン検査では、性腺刺激ホルモンと性ホルモンの基礎値の上昇が認められるとともに、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)負荷試験( 黄体形成ホルモン放出ホルモン〔LHーRH〕テスト)では、性腺刺激ホルモンの思春期レベルの反応が認められます。また、骨年齢が促進し、成長率も高くなります。
 小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による治療では、GnRHアナログ(LHーRHアナログ)という薬剤で選択的に性腺刺激ホルモンの分泌を抑えます。月に1回の皮下注射を行うことで、多くの場合は著しい効果を示し、二次性徴の進行停止、退縮がみられ、骨年齢の進行が緩やかになります。
 器質性思春期早発症の場合、脳腫瘍が原因であれば、外科手術により腫瘍を摘出します。手術により切除が難しい場合は、放射線治療や化学療法(抗がん剤)を行います。
 しかし、過誤腫が原因であれば、腫瘍そのものによる圧迫症状などがなければ、薬物療法を行います。また、脳炎後遺症、水頭症が原因であれば、薬物療法を行います。

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■用語 膣委縮症 [用語(ち)]



[喫茶店]閉経後に女性ホルモンのレベルが低下し、膣粘膜の内層が委縮して薄くなる状態
 膣(ちつ)委縮症とは、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが閉経後に低下し、膣壁が委縮して薄くなり、弾力性を失う状態。閉経後膣委縮症とも呼ばれます。
 生理が止まった閉経後の女性は、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンの減少によって、さまざまな体の変化を経験します。その中でも、多くの女性が経験するのが、膣委縮症です。
 女性生殖器系の器官である膣は、骨盤内にあって子宮と体外とをつなぐ管状の器官で、伸び縮みできる構造をしています。膣の前方には膀胱(ぼうこう)や尿道があり、後方には直腸があります。膣壁の内層は粘膜に覆われ、その粘膜面には横に走るひだがあります。このひだは正中部で集合し、前壁と後壁で中央に縦に走るひだになっています。このひだは出産の経験のない人に、多く認められます。
 この膣の中は、温かく湿っていて有機物が豊富にある状態で、細菌の繁殖に適しています。しかし、膣には自浄作用という働きがあります。膣壁上皮は卵巣から分泌されるエストロゲンの作用により、表皮細胞への分化が促され、細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離(はくり)した細胞内のグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて、膣内の乳酸桿菌(かんきん)によって乳酸菌に換えられます。これにより膣内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。
 閉経後の女性の場合、膣壁は女性ホルモンや少量の男性ホルモンの働きにより、閉経後十数年たっても若い時代の3分の2の厚さが保たれていますが、エストロゲンが不足してくると膣のひだが少なくなるとともに、膣壁そのものも委縮して薄くなり、膣分泌物の低下などが原因でコラーゲンが少なくなり、膣の乾燥感も起こります。
 それとともに自浄作用も低下して、細菌やカビが繁殖するために、充血して炎症を生じる膣炎が半数に起こります。これは、委縮性膣炎、あるいは老人性膣炎と呼ばれます。
 委縮性膣炎を発症すると、下り物が黄色っぽくなる、下り物に血が混じる、下り物に悪臭を伴うなどの症状が、現れることがあります。膣壁の痛みや灼熱(しゃくねつ)感などの不快感、膣入口や外陰部の乾燥感、掻痒(そうよう)感、違和感、痛みなどの症状が、現れることもあります。性行為に際して、痛みを伴ったり、出血、掻痒感などの症状が、現れることもあります。
 エストロゲンの分泌が低下したり、膣壁が委縮して薄くなること自体は、閉経後の女性であれば当たり前のことですので、無症状であったり、症状が軽いこともあります。
 膣委縮症、委縮性膣炎は必ずしも治療が必要なわけではありませんが、黄色い下り物は子宮体がんなどに伴う症状の可能性もありますので、注意が必要となります。
[喫茶店]膣委縮症の検査と診断と治療
 婦人科、産婦人科の医師による診断では、膣の内部や外陰部の肉眼的な観察を主に行います。さらに、細菌検査を行い、カビや細菌の有無を調べます。同時に、がん細胞の有無も確認します。
 明らかにエストロゲンが低下している年齢でなければ、ホルモン検査を行うこともあります。
 近年は、診断と治療的効果判定の数値化を目的に、膣健康指数を用いて診断する方法も行われるようになりました。
 婦人科、産婦人科の医師による治療では、がん細胞がない場合は、女性ホルモンの膣錠、エストロゲンの経口剤や貼付(ちょうふ)剤、女性ホルモンの補充療法などで、症状の改善を図ります。
 軽度の膣委縮症であれば、膣洗浄によって細菌を流し、症状を改善させることもあります。細菌感染がひどい場合は、抗生物質が入った膣錠を併用することもあります。性交痛などに対して、潤滑ゼリーを勧めることもあります。
 膣委縮症、委縮性膣炎の多くは1~2週間の治療で治りますが、1カ月程度にわたって薬剤を使用しないと治らない人もいます。
 外陰炎、外陰掻痒症を併発している時は、平行した治療で症状の改善を図ります。子宮体がんや乳がんなどの病歴がある人に対しては、別の治療法が選択されることもあります。


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■用語 膣乾燥症 [用語(ち)]



[喫茶店]温かく、湿っている膣の中が乾燥し、潤いを欠く状態
 膣(ちつ)乾燥症とは、女性生殖器系の器官である膣の中が乾燥し、潤いを欠く状態。
 膣は、骨盤内にあって子宮と体外とをつなぐ管状の器官で、伸び縮みできる構造をしています。膣の前方には膀胱(ぼうこう)や尿道があり、後方には直腸があります。膣壁は粘膜に覆われ、その粘膜面には横に走るひだがあります。このひだは正中部で集合し、前壁と後壁で中央に縦に走るひだになっています。このひだは出産の経験のない人に、多く認められます。
 この膣の中は、温かく湿っていて有機物が豊富にある状態で、細菌の繁殖に適しています。しかし、膣には自浄作用という働きがあります。膣壁上皮は卵巣から分泌される女性ホルモンであるエストロゲンの作用により、表皮細胞への分化が促され、細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離(はくり)した細胞内のグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて、膣内の乳酸桿菌(かんきん)によって乳酸菌に換えられます。これにより膣内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。
 しかし、40歳代の後半くらいから閉経を迎える女性、および閉経後の女性では、膣の正常な柔軟性、酸性度、潤滑性を維持するために必要不可欠なエストロゲンの分泌量が減り、これが膣壁の粘膜を薄くして柔軟性を失わせるとともに、潤滑性を失わせ、膣乾燥症の原因になります。
 膣の中が乾燥することにより、痛みやかゆみを覚え、膣壁がこすれたりすることによる炎症なども起こることがあります。
 性交渉の際にも、膣の中が乾燥し、潤いがない上に、膣壁の柔軟性がないことで痛みを伴ったり、状態によっては性交渉そのものが苦痛になることもあります。
 エストロゲンは、閉経期および閉経後のほか、妊娠中、授乳中に減少し、卵巣の摘出、喫煙によっても減少します。無理なダイエットによって月経周期が崩れたり、生理がこないという若い女性でも、エストロゲンは減少します。ごくまれに、食べ物などのアレルギー反応に関連して、エストロゲンの減少を経験することがあります。
 膣が乾燥する理由としては、エストロゲンの減少以外にもいくつかあります。風邪薬、アレルギー治療薬、一部の抗うつ剤は、膣を含め体全体の乾燥の原因になります。乳がんの治療に使用されるような化学療法薬も、膣を含め体全体の乾燥の原因になる可能性があります。市販のビデ(膣洗浄剤)を使用すると、膣の中の自然な化学的バランスが崩れて、これが炎症や乾燥の原因になることがあります。
 自分自身の体を異物と認識して攻撃する自己免疫性疾患の一種で、全身の分泌腺(せん)組織を侵して唾液(だえき)や涙などが出にくくなるシェーグレン症候群という難病の一症状としても、膣にあるバルトリン腺と呼ばれる分泌腺が侵され、膣乾燥症がみられることもあります。40~60歳の女性に多いのが特徴で、女性ホルモンの要因も関連して発症すると考えられています。
[喫茶店]膣乾燥症の検査と診断と治療
 婦人科、産婦人科の医師による診断では、まず膣乾燥症の原因を探し出すために、問診を行います。自覚症状に関する質問をしたり、治療中の病気や市販薬、処方薬にかかわらず使用している薬について質問をしたりします。
 確実な診断を得るためには、内診のほか、超音波検査、MRI検査、基礎体温の測定、血液中ホルモン検査、腎臓(じんぞう)と尿管の検査、膣分泌物の顕微鏡検査や培養検査などを行うこともあります。原因を特定できない場合や、ほかの症状がある場合は、追加の検査を行うこともあります。
 婦人科、産婦人科の医師による治療では、閉経期および閉経後の女性ホルモンのエストロゲン不足によるものであれば、天然のエストロゲンを薬として補充します。
 しかし、ホルモン療法はすべての人に適した治療というわけではなく、副作用が出ることもあります。副作用には、体重増加、体液貯留、吐き気、頭痛、乳房を押した時の痛み、皮膚にできる色の濃い斑点(はんてん)、脳梗塞(こうそく)、血栓、認知症、乳がんや卵巣がんのリスクの増加があります。
 ホルモン療法以外の選択肢はいくつかあり、膣の乾燥に対応するために特別に作られた保湿剤を使うと、1回の使用で最大3日間症状を和らげることができます。性交痛の対策としては、性交渉の際に膣用のゼリーやローションといった潤滑剤を使用すると、痛みを和らげることができます。潤滑剤が膣壁の粘膜に潤いを与え、1回の使用で数時間効果が持続します。
 市販のビデ(膣洗浄剤)、せっけん、リンスなど膣を洗うために作られた製品を使用して膣の乾燥を生じている場合は、その使用を避けることで悪化させないようにします。
 ほかにも、エストロゲンと似た作用をするイソフラボンを含む大豆と大豆製品を食事で摂取すると、膣の乾燥が和らぐことがあります。八味地黄丸(はちみじおうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などの漢方薬を服用することで、膣の乾燥が和らぐこともあります。
 シェーグレン症候群による膣乾燥症であれば、内科などでステロイド薬や免疫抑制薬などの服用を含めて、適した治療を受けてもらいます。そちらの治療を行うことで、改善する可能性が考えられます。


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■用語 中枢神経系原発リンパ腫 [用語(ち)]

[喫茶店]中枢神経系の脳、脊髄、髄膜や眼球の中に悪性リンパ腫ができる疾患
 中枢神経系原発リンパ腫(しゅ)とは、中枢神経系の脳、脊髄(せきずい)、脳の外側を覆っている髄膜、眼球などの中に悪性リンパ腫ができる疾患。
 リンパ腫は、リンパ系に悪性腫瘍、すなわちがんが発生する疾患です。リンパ系は免疫系の一部で、リンパ液、リンパ管、リンパ節、脾臓(ひぞう)、胸腺(きょうせん)、扁桃(へんとう)、骨髄から構成されています。このリンパ系は、蛋白(たんぱく)質を豊富に含むリンパ液の流れを体に循環させ、バクテリア、ウイルス、老廃物などを集めます。これらをリンパ管を通して、リンパ節に運び、リンパ節の中のリンパ球という感染と戦う細胞でろ過して取り除きます。リンパ液は静脈の毛細血管に吸収され、老廃物などは最終的には体から排出されます。
 リンパ球の集団の一部の細胞が悪性化し、それが中枢神経系の内部でリンパ腫を引き起こすものと考えられています。しかし、リンパ節のような組織の存在しない中枢神経系や眼球内に、悪性リンパ腫が発生する原因は、わかっていません。
 中枢神経系原発リンパ腫は、脳、脊髄、髄膜のいずれかより発生します。また、その位置が脳に非常に近いことから、眼球からも中枢神経系原発リンパ腫が発生することがあり、これは眼内リンパ腫と呼ばれます。
 この中枢神経系原発リンパ腫にかかる危険因子としては、膠原(こうげん)病、免疫不全疾患、臓器移植、加齢などによる免疫不全、ヘルペスウイルスの仲間であるエプスタイン・バーウイルス感染などがあります。
 脳に中枢神経系原発リンパ腫、すなわち脳リンパ腫が前頭葉、後頭葉、脳深部、脳幹などに生じると、脳腫瘍によって、頭蓋(とうがい)内の圧力が高まるために起こる頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)などの症状が起こります。
 脳腫瘍ができた部位によっても症状が異なり、前頭葉に腫瘍があると知能低下(認知症)や失語症、性格変化、尿失禁など、後頭葉に腫瘍があると視野障害など、脳幹に腫瘍があると運動まひ、眼球運動障害などが生じます。
 数日から何週間単位で進行する亜急性を示すものが多く、一度症状が出たら悪化するのは早いと考えなければなりません。
 眼球内に中枢神経系原発リンパ腫、すなわち眼内リンパ腫が生じると、視野の中に虫が飛んでいるように見える飛蚊(ひぶん)症や、視界に霧がかかったように見える霧視、光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)感、視力の低下、眼痛、充血など自覚症状が起こります。
 眼内リンパ腫が生じた場合には、中枢神経系にも生じていることもあり、中枢神経系の症状が先に出てくる場合と、目の症状が先に出てくる場合とがあります。目の症状が先行した場合は、8割近くが数年以内に中枢神経系にもリンパ腫を生じ、多彩な神経症状を生じます。
 脊髄に中枢神経系原発リンパ腫が生じると、首や背中や下肢の痛み、骨格筋が委縮して筋力が低下するミオパチー、膀胱(ぼうこう)直腸障害などが起こります。
[喫茶店]中枢神経系原発リンパ腫の検査と診断と治療
 脳神経外科、脳腫瘍外科などの医師による脳リンパ腫の診断では、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、腫瘍を形成する白っぽい病変として描出され、造影剤を用いると多くの場合、はっきりわかります。
 腫瘍を形成する病変は、前頭葉、側頭葉、小脳、脳深部に多く認められ、脳の中に2個以上のリンパ腫が同時にできる多発例もしばしば認められます。
 脳にだけリンパ腫ができたのか、脳ではない体のどこかに発生したリンパ腫が脳に転移したのかを区別するのは、困難です。
 検査が終わってリンパ腫が疑われた場合は、すぐに定位脳手術という方法で腫瘍の一部分を切り取り、顕微鏡で調べる検査である生検を行います。
 一方、眼科などの医師による眼内リンパ腫の診断では、まず、一般的な眼科の検査を行います。検査をすると、眼球の内容の大部分を占めるゼリー状の透明な組織である硝子体(しょうしたい)の混濁が認められたり、網膜の下の眼底に腫瘍の塊が生じているのが認められたり、両者が混在して認められたりします。
 硝子体の混濁が認められた時は、硝子体手術という方法で硝子体を切除することによって、眼内のリンパ腫細胞を採取し、これを病理検査することによって眼内リンパと確定します。いわゆる細胞診と呼ばれる診断法ですが、眼内の混濁がなくなることで視力の向上も期待できます。
 硝子体の混濁が認められず、網膜の下の眼底に腫瘍の塊が生じているような場合には、硝子体手術によって網膜下の組織を採取し、これを病理検査することによって眼内リンパと確定します。
 また、中枢神経系の病変の有無を調べるために、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を併用して行います。これらの検査を行い、脳のリンパ腫である中枢神経系原発悪性リンパ腫が疑わしい場合は、血液内科、脳神経外科などの医師と連携して診断を確定します。
 脳神経外科、脳腫瘍外科などの医師による脳リンパ腫の治療では、メトトレキセートという抗がん剤を投与した後に、脳全体に放射線を照射する方法を行います。この方法が最も良い治療成績を示し、平均的な生存期間は3年以上になると報告されていますが、集中管理できる施設でしか行うことができません。
 脳腫瘍ができた部位によりますが、腫瘍の切除手術は行いません。脳リンパ腫の場合、周囲組織との境目が明確でないため完全切除は難しく、大きく切除すると脳機能に多大な影響を与えかねないためです。
 残念ながら、いずれの治療法を選択しても再発率や死亡率は高いものです。
 一方、眼科などの医師による眼内リンパ腫の治療では、眼内リンパ腫に対する局所的な治療を行うとともに、中枢神経系原発悪性リンパ腫や全身性の悪性リンパ腫に対する治療も考慮します。
 局所的な治療としては、放射線を眼部に照射する方法と、メトトレキサートを眼内に注射する方法があります。前者の放射線療法は、連日の照射治療を2週間程度続けることになります。後者の注射による薬物療法は、週に1、2回、その後は月に1回のペースで半年から1年間程度続けることになります。
 いずれも治療方法として有効といわれていますが、どちらがよいかということは判断が分かれており、また、副作用も比較的重くなっています。




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