■年金、現状水準には68歳まで就労必要 5年に1度の財政検証 [健康ダイジェスト]
公的年金の財政状況をチェックし、将来の給付水準の見通しを示す「財政検証」は5年に1度行われることになっており、厚生労働省は27日、検証結果を公表しました。
経済成長率が最も高いシナリオでも将来の給付水準(所得代替率)は今より16%下がり、成長率の横ばいが続くケースでは3割弱も低下します。60歳まで働いて65歳で年金をもらう今の高齢者と同水準の年金を現在20歳の人がもらうには68歳まで働く必要があるとの試算も示しました。年金制度の改革が急務であることが、改めて浮き彫りになりました。
財政検証は公的年金の「定期健診」に相当し、経済や人口に一定の前提を置き、年金財政への影響や給付水準の変化を試算します。今回は6つの経済前提を想定して2115年までを見通しました。
試算では、夫が会社員で60歳まで厚生年金に加入し、妻が専業主婦の世帯をモデルに、現役世代の手取り収入に対する年金額の割合である「所得代替率」が将来どう推移するかをはじき出しました。政府は、長期にわたって所得代替率50%以上を確保することを目標にしています。
2019年度は、現役の手取り平均額35万7000円に対して年金額は約22万円で、所得代替率は61・7%でした。
物価や賃金の上昇率や就業率などに応じ、中長期の実質経済成長率が0・9%からマイナス0・5%までの6つのシナリオのうち、経済成長と労働参加が進む3つのケースでは、将来の所得代替率が50%超を維持できます。2014年の前回財政検証と比べると、将来の所得代替率はわずかに上昇しました。女性や高齢者の就業率が想定よりも上昇し、年金制度の支え手が増えたためです。積立金の運用が想定を上回ったことも寄与しました。
ただ2029年度以降の賃金上昇率が1・6%、実質経済成長率が0・9%という最もよいシナリオでも、今と比べた所得代替率は16%下がります。
成長率が横ばい圏で推移する2つのシナリオでは、2050年までに所得代替率が50%を割り込みます。最も厳しいマイナス成長の場合には、国民年金の積立金が枯渇し、代替率が4割超も低下。これらの場合、50%の給付水準を維持するために、現役世代の保険料率の引き上げなどの対策が必要になります。
今の年金制度に抜本改革された2004年当時の見通しに比べると、年金財政のバランスをとるために給付抑制が必要な期間は長期化しています。2004年の想定では、基準となる経済前提のケースで2023年度までの19年間で給付抑制は終了する計画でした。今回の財政検証では、最も経済状況がよいケースでも、今後27年間は給付の抑制を続けなければならないとの結果でした。
2004年改革は、現役世代の保険料負担の増加と引退世代の年金給付抑制が改革の両輪でした。だが実際には、保険料の引き上げは進んだものの、少子化の進展に併せて年金額を抑える「マクロ経済スライド」はデフレなどを理由に、2回しか発動されていません。そのことで、将来世代の給付水準を押し下げています。
今回の検証では、若い世代が何歳まで働けば、今年65歳で年金受給が始まる高齢者と同じ水準の年金をもらうことができるかを試算しました。それによると成長率が横ばいの場合、現在20歳は68歳9カ月まで働いて保険料を納め、年金の開始年齢も同様に遅らせる必要があります。働く期間は今よりも8年9カ月長くなります。
同様に現在の30歳は68歳4カ月、40歳なら67歳2カ月まで働いて、ようやく今の65歳と同水準をもらうことができます。
厚労省は今回の財政検証を踏まえ、年末までに年金改革の具体案をまとめる方針。支え手拡大と給付抑制に取り組む必要がありそうです。
2019年8月27日(火)
経済成長率が最も高いシナリオでも将来の給付水準(所得代替率)は今より16%下がり、成長率の横ばいが続くケースでは3割弱も低下します。60歳まで働いて65歳で年金をもらう今の高齢者と同水準の年金を現在20歳の人がもらうには68歳まで働く必要があるとの試算も示しました。年金制度の改革が急務であることが、改めて浮き彫りになりました。
財政検証は公的年金の「定期健診」に相当し、経済や人口に一定の前提を置き、年金財政への影響や給付水準の変化を試算します。今回は6つの経済前提を想定して2115年までを見通しました。
試算では、夫が会社員で60歳まで厚生年金に加入し、妻が専業主婦の世帯をモデルに、現役世代の手取り収入に対する年金額の割合である「所得代替率」が将来どう推移するかをはじき出しました。政府は、長期にわたって所得代替率50%以上を確保することを目標にしています。
2019年度は、現役の手取り平均額35万7000円に対して年金額は約22万円で、所得代替率は61・7%でした。
物価や賃金の上昇率や就業率などに応じ、中長期の実質経済成長率が0・9%からマイナス0・5%までの6つのシナリオのうち、経済成長と労働参加が進む3つのケースでは、将来の所得代替率が50%超を維持できます。2014年の前回財政検証と比べると、将来の所得代替率はわずかに上昇しました。女性や高齢者の就業率が想定よりも上昇し、年金制度の支え手が増えたためです。積立金の運用が想定を上回ったことも寄与しました。
ただ2029年度以降の賃金上昇率が1・6%、実質経済成長率が0・9%という最もよいシナリオでも、今と比べた所得代替率は16%下がります。
成長率が横ばい圏で推移する2つのシナリオでは、2050年までに所得代替率が50%を割り込みます。最も厳しいマイナス成長の場合には、国民年金の積立金が枯渇し、代替率が4割超も低下。これらの場合、50%の給付水準を維持するために、現役世代の保険料率の引き上げなどの対策が必要になります。
今の年金制度に抜本改革された2004年当時の見通しに比べると、年金財政のバランスをとるために給付抑制が必要な期間は長期化しています。2004年の想定では、基準となる経済前提のケースで2023年度までの19年間で給付抑制は終了する計画でした。今回の財政検証では、最も経済状況がよいケースでも、今後27年間は給付の抑制を続けなければならないとの結果でした。
2004年改革は、現役世代の保険料負担の増加と引退世代の年金給付抑制が改革の両輪でした。だが実際には、保険料の引き上げは進んだものの、少子化の進展に併せて年金額を抑える「マクロ経済スライド」はデフレなどを理由に、2回しか発動されていません。そのことで、将来世代の給付水準を押し下げています。
今回の検証では、若い世代が何歳まで働けば、今年65歳で年金受給が始まる高齢者と同じ水準の年金をもらうことができるかを試算しました。それによると成長率が横ばいの場合、現在20歳は68歳9カ月まで働いて保険料を納め、年金の開始年齢も同様に遅らせる必要があります。働く期間は今よりも8年9カ月長くなります。
同様に現在の30歳は68歳4カ月、40歳なら67歳2カ月まで働いて、ようやく今の65歳と同水準をもらうことができます。
厚労省は今回の財政検証を踏まえ、年末までに年金改革の具体案をまとめる方針。支え手拡大と給付抑制に取り組む必要がありそうです。
2019年8月27日(火)
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