■病気 網膜剥離 [病気(も)]
眼底から網膜が、はがれてしまう疾患
網膜剥離(はくり)とは、何らかの原因で網膜が眼底からはがれて、硝子体(しょうしたい)中に突出する疾患。治療せずに放置した場合、網膜の機能の回復が難しく失明する可能性が高くなります。
どの年齢でも網膜剥離になる可能性がありますが、20歳代と50歳代の近視の人に多いといわれています。男女の性差は、はっきりしていません。
目の奥にある網膜は、物を見るための神経の膜で、厚さ約0.1~O.4ミリ。物を見る時、光は角膜を通って瞳孔(どうこう)から眼球内に入り、水晶体で屈折された後、硝子体を通って網膜に到達します。この時、網膜で感じ取られた光の刺激が視神経を介して脳に伝えられ、見えると認識されます。
網膜の中央に位置して、物を見る中心部分を黄斑(おうはん)と呼び、ここは光に対して非常に敏感な部分です。また、網膜は10層の組織から構成されていて、内側の9層は神経網膜といい、最も外側の1層を網膜色素上皮と呼びます。神経網膜には、光を感じる細胞が並んでいます。
硝子体は、細かい繊維でできたゲル状の透明な物質で、眼球の中に満たされています。光が通りやすく、目の形を保つのに役立っています。
網膜色素上皮と神経網膜の接着は弱いため、何らかの原因で神経網膜が網膜色素上皮からはがれて、硝子体の中に浮き上がってしまうのが、網膜剥離です。
原因はさまざまで、網膜に穴が開くことによって起こるものや、滲出(しんしゅつ)液という水分が網膜の下にたまって起こるものなどがあります。網膜に穴が開く原因として挙げられるのは、老化、高度の近視、網膜の委縮などで、誘因として挙げられるのは、目の外傷、強い体の振動、過労などです。
最も多いのは、網膜に網膜裂孔という穴が開いてしまい、液化硝子体という硝子体の中にある水がその穴を通って、網膜の下に入り込むことで発生する裂孔原性網膜剥離です。中高年になると、硝子体に液化硝子体ができて、眼球の動きとともに硝子体が眼球内で揺れ動くようになっています。硝子体と網膜が強く癒着している部分があると、眼球の動きで網膜が引っ張られ網膜裂孔ができてしまい、液化硝子体が入り込んで網膜がはがれるのです。
また、ボールが目に当たるなど、強い力が目に加わって網膜が剥離してしまう外傷性網膜剥離も、裂孔原性網膜剥離の一つです。
糖尿病網膜症では、出血しやすい血管を含んだ膜が網膜の上にでき、この膜が収縮して網膜を引っ張ると、網膜が剥離してしまう牽引(けんいん)性網膜剥離が起こります。
ぶどう膜といって、眼球の外側の強膜の内側にあって、眼球を覆う脈絡膜、毛様体、虹彩(こうさい)からなる膜に炎症があったり、眼球内に腫瘍(しゅよう)などがあると、網膜血管や脈絡膜から血液中の水分がにじみ出し、網膜下にたまって網膜が剥離する続発性網膜剥離が起こります。これらの病変による場合は、その原因となっている疾患の治療がまず必要となります。
一般に、初めのうちは剥離した網膜の範囲は小さくても、この範囲が時間とともにだんだんと拡大するというような経過をたどります。重症の場合は、すべての網膜がはがれてしまいます。
はがれた網膜は、青灰白色に混濁して、しわが寄り、光の刺激を脳に伝えることができません。また、はがれた網膜には栄養が十分に行き渡らなくなるため、網膜剥離の状態が長く続くと、徐々に網膜の機能が低下してしまいます。そうなると、たとえ手術によって網膜が元の位置に戻せたとしても、見え方の回復が悪いといった後遺症を残すことがあります。
網膜剥離の先行的な症状として、黒い点や小さなゴミのようなものが見える飛蚊(ひぶん)症や、視界の中に閃光(せんこう)のようなものが見える光視(こうし)症を自覚することがありますが、無症状のこともあります。
病状が進んでくると、カーテンをかぶせられたように見ている物の一部が見えにくくなる視野欠損や、見たい物がはっきり見えない視力低下が起きます。網膜には痛覚がないので、痛みはありません。
網膜剥離の検査と治療と予後
飛蚊症や光視症のような網膜剥離の先行的な症状を自覚した場合には、早めに眼科医の診察を受けることが大切です。
網膜剥離で最も大切な検査は、眼底検査です。点眼薬で瞳孔を開き、眼底の様子を調べます。硝子体出血などで眼底が見えない時には、超音波検査を行います。
見えない部分の位置を調べる視野検査も行われます。見えない部分と、病変の部分は対応しています。
網膜裂孔だけであれば、レーザーによるレーザー光凝固術で、高エネルギーの光線を瞳孔を通して送り、網膜を焼いて裂け目の周囲をふさぎ、網膜剥離への進行が抑えられることもあります。
すでに網膜剥離が発生してしまった場合、多くは手術が必要となります。手術には、大きく分けて二つの方法があります。
一つの方法は、目の外から網膜裂孔に相当する部分に当て物をし、さらに穴の周りに熱凝固や冷凍凝固を行って、剥離した網膜をはがれにくくし、必要があれば網膜の下にたまった水を抜くというやり方です。はがれた網膜を目の中から押さえつけるために、眼球内に空気や特殊なガスを注入することがあります。
もう一つの方法は、目の中に細い手術器具を入れ、目の中から網膜剥離を治療する硝子体手術という方法で、網膜に裂け目ができた時に血管からの出血によって濁った硝子体を取り除きます。この方法では、はがれた網膜を押さえるために、ほぼ全例で目の中に空気や特殊なガスを入れます。
眼球内に空気や特殊なガスを注入した場合は、手術後に、うつぶせ姿勢による安静が必要です。空気やガスは軽いので、上方に向かう特性があります。うつぶせ姿勢を保って安静にすることで、空気やガスは網膜を元の位置に戻し、くっつける手助けをします。
手術療法によって、多くの網膜剥離は元の位置に戻す網膜復位が可能ですが、一度の手術で網膜が復位しないために、複数回の手術を必要とすることもあります。また、最大限に手を尽くしても、残念ながら失明してしまう場合もあります。
手術後の視力に関しては、網膜剥離が発生から間もない状態であり、はがれている範囲も小さい場合は、手術も比較的簡単で、見え方も元通りに回復する可能性が高いといえます。物を見る中心部分の黄斑がはがれていない場合には、手術前と同程度にまで回復する場合もあります。黄斑がはがれてしまっていた場合には、元通りの視力に戻ることは難しくなってしまいます。
手術を受ける側の心構えとしては、あまり動くと剥離が広がる恐れがあるので、手術を受けるまで安静にします。ストレスを感じたり、むやみに心配したりして、精神的に緊張するのもよくありません。不安なことや不明なことがあれば、遠慮せず担当医に相談し、心身ともにリラックスして手術を受けるようにします。
手術の後は、担当医の指示に従って安静にします。レーザー光凝固術の場合は、入院の必要はなく、通院治療を行います。その他の手術では経過によりますが、多くは約10日間程度で退院できます。
手術後に目を動かしても、手術の結果に大きな影響はありませんが、眼内の状態が落ち着くまでに1~3カ月必要です。少なくとも手術後1カ月間は、疲れない程度に目を使用します。
網膜剥離の重症度や個々のケースにもよりますが、事務織や管理職の人は手術後1カ月目から、運転手や重労働の人は2カ月ごろから仕事に復帰できます。日常生活でも、手術後1カ月間は重い物を持ったり、走ったり、車の運転をすることなどは避けます。また、年に1、2回の定期検査を必ず受けましょう。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
網膜剥離(はくり)とは、何らかの原因で網膜が眼底からはがれて、硝子体(しょうしたい)中に突出する疾患。治療せずに放置した場合、網膜の機能の回復が難しく失明する可能性が高くなります。
どの年齢でも網膜剥離になる可能性がありますが、20歳代と50歳代の近視の人に多いといわれています。男女の性差は、はっきりしていません。
目の奥にある網膜は、物を見るための神経の膜で、厚さ約0.1~O.4ミリ。物を見る時、光は角膜を通って瞳孔(どうこう)から眼球内に入り、水晶体で屈折された後、硝子体を通って網膜に到達します。この時、網膜で感じ取られた光の刺激が視神経を介して脳に伝えられ、見えると認識されます。
網膜の中央に位置して、物を見る中心部分を黄斑(おうはん)と呼び、ここは光に対して非常に敏感な部分です。また、網膜は10層の組織から構成されていて、内側の9層は神経網膜といい、最も外側の1層を網膜色素上皮と呼びます。神経網膜には、光を感じる細胞が並んでいます。
硝子体は、細かい繊維でできたゲル状の透明な物質で、眼球の中に満たされています。光が通りやすく、目の形を保つのに役立っています。
網膜色素上皮と神経網膜の接着は弱いため、何らかの原因で神経網膜が網膜色素上皮からはがれて、硝子体の中に浮き上がってしまうのが、網膜剥離です。
原因はさまざまで、網膜に穴が開くことによって起こるものや、滲出(しんしゅつ)液という水分が網膜の下にたまって起こるものなどがあります。網膜に穴が開く原因として挙げられるのは、老化、高度の近視、網膜の委縮などで、誘因として挙げられるのは、目の外傷、強い体の振動、過労などです。
最も多いのは、網膜に網膜裂孔という穴が開いてしまい、液化硝子体という硝子体の中にある水がその穴を通って、網膜の下に入り込むことで発生する裂孔原性網膜剥離です。中高年になると、硝子体に液化硝子体ができて、眼球の動きとともに硝子体が眼球内で揺れ動くようになっています。硝子体と網膜が強く癒着している部分があると、眼球の動きで網膜が引っ張られ網膜裂孔ができてしまい、液化硝子体が入り込んで網膜がはがれるのです。
また、ボールが目に当たるなど、強い力が目に加わって網膜が剥離してしまう外傷性網膜剥離も、裂孔原性網膜剥離の一つです。
糖尿病網膜症では、出血しやすい血管を含んだ膜が網膜の上にでき、この膜が収縮して網膜を引っ張ると、網膜が剥離してしまう牽引(けんいん)性網膜剥離が起こります。
ぶどう膜といって、眼球の外側の強膜の内側にあって、眼球を覆う脈絡膜、毛様体、虹彩(こうさい)からなる膜に炎症があったり、眼球内に腫瘍(しゅよう)などがあると、網膜血管や脈絡膜から血液中の水分がにじみ出し、網膜下にたまって網膜が剥離する続発性網膜剥離が起こります。これらの病変による場合は、その原因となっている疾患の治療がまず必要となります。
一般に、初めのうちは剥離した網膜の範囲は小さくても、この範囲が時間とともにだんだんと拡大するというような経過をたどります。重症の場合は、すべての網膜がはがれてしまいます。
はがれた網膜は、青灰白色に混濁して、しわが寄り、光の刺激を脳に伝えることができません。また、はがれた網膜には栄養が十分に行き渡らなくなるため、網膜剥離の状態が長く続くと、徐々に網膜の機能が低下してしまいます。そうなると、たとえ手術によって網膜が元の位置に戻せたとしても、見え方の回復が悪いといった後遺症を残すことがあります。
網膜剥離の先行的な症状として、黒い点や小さなゴミのようなものが見える飛蚊(ひぶん)症や、視界の中に閃光(せんこう)のようなものが見える光視(こうし)症を自覚することがありますが、無症状のこともあります。
病状が進んでくると、カーテンをかぶせられたように見ている物の一部が見えにくくなる視野欠損や、見たい物がはっきり見えない視力低下が起きます。網膜には痛覚がないので、痛みはありません。
網膜剥離の検査と治療と予後
飛蚊症や光視症のような網膜剥離の先行的な症状を自覚した場合には、早めに眼科医の診察を受けることが大切です。
網膜剥離で最も大切な検査は、眼底検査です。点眼薬で瞳孔を開き、眼底の様子を調べます。硝子体出血などで眼底が見えない時には、超音波検査を行います。
見えない部分の位置を調べる視野検査も行われます。見えない部分と、病変の部分は対応しています。
網膜裂孔だけであれば、レーザーによるレーザー光凝固術で、高エネルギーの光線を瞳孔を通して送り、網膜を焼いて裂け目の周囲をふさぎ、網膜剥離への進行が抑えられることもあります。
すでに網膜剥離が発生してしまった場合、多くは手術が必要となります。手術には、大きく分けて二つの方法があります。
一つの方法は、目の外から網膜裂孔に相当する部分に当て物をし、さらに穴の周りに熱凝固や冷凍凝固を行って、剥離した網膜をはがれにくくし、必要があれば網膜の下にたまった水を抜くというやり方です。はがれた網膜を目の中から押さえつけるために、眼球内に空気や特殊なガスを注入することがあります。
もう一つの方法は、目の中に細い手術器具を入れ、目の中から網膜剥離を治療する硝子体手術という方法で、網膜に裂け目ができた時に血管からの出血によって濁った硝子体を取り除きます。この方法では、はがれた網膜を押さえるために、ほぼ全例で目の中に空気や特殊なガスを入れます。
眼球内に空気や特殊なガスを注入した場合は、手術後に、うつぶせ姿勢による安静が必要です。空気やガスは軽いので、上方に向かう特性があります。うつぶせ姿勢を保って安静にすることで、空気やガスは網膜を元の位置に戻し、くっつける手助けをします。
手術療法によって、多くの網膜剥離は元の位置に戻す網膜復位が可能ですが、一度の手術で網膜が復位しないために、複数回の手術を必要とすることもあります。また、最大限に手を尽くしても、残念ながら失明してしまう場合もあります。
手術後の視力に関しては、網膜剥離が発生から間もない状態であり、はがれている範囲も小さい場合は、手術も比較的簡単で、見え方も元通りに回復する可能性が高いといえます。物を見る中心部分の黄斑がはがれていない場合には、手術前と同程度にまで回復する場合もあります。黄斑がはがれてしまっていた場合には、元通りの視力に戻ることは難しくなってしまいます。
手術を受ける側の心構えとしては、あまり動くと剥離が広がる恐れがあるので、手術を受けるまで安静にします。ストレスを感じたり、むやみに心配したりして、精神的に緊張するのもよくありません。不安なことや不明なことがあれば、遠慮せず担当医に相談し、心身ともにリラックスして手術を受けるようにします。
手術の後は、担当医の指示に従って安静にします。レーザー光凝固術の場合は、入院の必要はなく、通院治療を行います。その他の手術では経過によりますが、多くは約10日間程度で退院できます。
手術後に目を動かしても、手術の結果に大きな影響はありませんが、眼内の状態が落ち着くまでに1~3カ月必要です。少なくとも手術後1カ月間は、疲れない程度に目を使用します。
網膜剥離の重症度や個々のケースにもよりますが、事務織や管理職の人は手術後1カ月目から、運転手や重労働の人は2カ月ごろから仕事に復帰できます。日常生活でも、手術後1カ月間は重い物を持ったり、走ったり、車の運転をすることなどは避けます。また、年に1、2回の定期検査を必ず受けましょう。
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■病気 ものもらい(麦粒腫) [病気(も)]
まぶたの分泌腺に起こる急性の化膿性炎症
ものもらいとは、まぶたの縁などが赤くはれて、痛む急性の化膿(かのう)性炎症。ものもらいは俗称で、正式には麦粒腫(ばくりゅうしゅ)と呼ばれます。
原因は、主に黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などの細菌感染です。まぶたの表面についている細菌が、まぶたの分泌腺(せん)である皮脂腺、瞼板(けんばん)腺(マイボーム腺)、アポクリン腺に入り、感染して化膿が生じます。
まつげの根元にある皮脂腺や、汗を出すアポクリン腺に感染した場合を外麦粒腫、特殊な皮脂腺の一つである瞼板腺(マイボーム腺)に感染した場合を内麦粒腫と呼びます。
まぶたの不衛生、コンタクトレンズの汚れ、目をこする行為などが、細菌感染を引き起こす要因として挙げられます。また、風邪と同様に、季節の変わり目、寝不足や体調不良で疲れがたまっている時に、生じやすい性質があります。
初めは、まぶたに局所的な赤みが出現して、はれ、しばしば軽度の痛み、かゆみを伴います。炎症が強くなってくると、赤み、はれ、痛みが強くなり、熱を持ったりすることもあります。まぶたの内側にできる内麦粒腫では、かなり痛みがありますが、まぶたの外側にできる外麦粒腫では、まばたきをした 時に異物感がある程度です。
化膿が進むと、はれた部分が自然に破れて、うみが出ることがあります。うみが出てしまえば、その後症状は回復に向かい、多くは自然に治癒します。しかし、うみがたまって大きくなった時には、切開してうみを出す治療が必要になることも。
まれに、眼窩蜂窩織(がんかほうかしき)炎、敗血症など重い疾患を引き起こすことがあります。ものもらいの局所をいじらないようにして安静にし、早めに治療を受けることが大切となります。
熱が出た時は、入院治療が必要なこともあります。繰り返して再発する時は、ほかに糖尿病や免疫疾患がないかを調べる必要があります。
なお、「ものもらい」という名称から伝染病のような印象を受けますが、普通に皮膚表面に存在する細菌によって起こるため、他人に伝染することはありません。
「ものもらい」は関東などの俗称で、大阪などにおける「めばちこ」、京都などにおける「めいぼ」「めぼ」、あるいは「めばち」、「めこじき」、「めかんじん」、「めんぼう」など、地方によってさまざまな呼び方をされています。
「ものもらい」、「めこじき」、「めかんじん」の呼び名は、かつての日本に他人から物を恵んでもらうと、この疾患が治癒するという迷信が存在したことに由来します。「めばちこ」は、この疾患の発症者が目をぱちぱちさせる様子に由来するのではないか、と推測されています。
ものもらいの検査と診断と治療
ものもらい(麦粒腫)の多くは、そのまま安静にしておけば自然に治癒します。しかし、「ものもらいができたな」と思った時には、放置せずに薬剤師や眼科医に早めに相談をするのがお勧めです。「そのうちに」と放置しておいて、はれや、かゆみがひどくなると面倒です。
特に、化膿が悪化した場合には、まぶたの切開によってうみの排出を必要とすることがあるので、はれがひどい場合には、眼科を受診します。うみを出すために針などでつつくと、かえって悪化する原因になるので、注意して下さい。
医師による治療は、抗生物質が入った点眼液や眼軟膏(なんこう)の処方が主で、場合により抗生物質の飲み薬を服用することもあります。なお、ものもらい用の市販薬も、販売されています。
治療を開始して2~3日で症状が軽くなり、4~5日すると治るのが普通です。この時期は、かゆくても、まぶたを触らないようにします。コンタクトレンズの装用も控えるようにします。かゆみが強い時は、目の周りを冷やすと少し落ち着きます。
手が汚かったり、栄養不足など、環境によっては再発することもあります。家庭でも、患部の清潔とバランスの取れた食事を心掛けます。
日常のものもらい予防対策としては、 前髪が目に掛からないようにする、コンタクトレンズを不潔な指で脱着しない、目の周りをしっかりと化粧しない、花粉症でかゆくてもあまり目をこすらない、などが挙げられます。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
ものもらいとは、まぶたの縁などが赤くはれて、痛む急性の化膿(かのう)性炎症。ものもらいは俗称で、正式には麦粒腫(ばくりゅうしゅ)と呼ばれます。
原因は、主に黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などの細菌感染です。まぶたの表面についている細菌が、まぶたの分泌腺(せん)である皮脂腺、瞼板(けんばん)腺(マイボーム腺)、アポクリン腺に入り、感染して化膿が生じます。
まつげの根元にある皮脂腺や、汗を出すアポクリン腺に感染した場合を外麦粒腫、特殊な皮脂腺の一つである瞼板腺(マイボーム腺)に感染した場合を内麦粒腫と呼びます。
まぶたの不衛生、コンタクトレンズの汚れ、目をこする行為などが、細菌感染を引き起こす要因として挙げられます。また、風邪と同様に、季節の変わり目、寝不足や体調不良で疲れがたまっている時に、生じやすい性質があります。
初めは、まぶたに局所的な赤みが出現して、はれ、しばしば軽度の痛み、かゆみを伴います。炎症が強くなってくると、赤み、はれ、痛みが強くなり、熱を持ったりすることもあります。まぶたの内側にできる内麦粒腫では、かなり痛みがありますが、まぶたの外側にできる外麦粒腫では、まばたきをした 時に異物感がある程度です。
化膿が進むと、はれた部分が自然に破れて、うみが出ることがあります。うみが出てしまえば、その後症状は回復に向かい、多くは自然に治癒します。しかし、うみがたまって大きくなった時には、切開してうみを出す治療が必要になることも。
まれに、眼窩蜂窩織(がんかほうかしき)炎、敗血症など重い疾患を引き起こすことがあります。ものもらいの局所をいじらないようにして安静にし、早めに治療を受けることが大切となります。
熱が出た時は、入院治療が必要なこともあります。繰り返して再発する時は、ほかに糖尿病や免疫疾患がないかを調べる必要があります。
なお、「ものもらい」という名称から伝染病のような印象を受けますが、普通に皮膚表面に存在する細菌によって起こるため、他人に伝染することはありません。
「ものもらい」は関東などの俗称で、大阪などにおける「めばちこ」、京都などにおける「めいぼ」「めぼ」、あるいは「めばち」、「めこじき」、「めかんじん」、「めんぼう」など、地方によってさまざまな呼び方をされています。
「ものもらい」、「めこじき」、「めかんじん」の呼び名は、かつての日本に他人から物を恵んでもらうと、この疾患が治癒するという迷信が存在したことに由来します。「めばちこ」は、この疾患の発症者が目をぱちぱちさせる様子に由来するのではないか、と推測されています。
ものもらいの検査と診断と治療
ものもらい(麦粒腫)の多くは、そのまま安静にしておけば自然に治癒します。しかし、「ものもらいができたな」と思った時には、放置せずに薬剤師や眼科医に早めに相談をするのがお勧めです。「そのうちに」と放置しておいて、はれや、かゆみがひどくなると面倒です。
特に、化膿が悪化した場合には、まぶたの切開によってうみの排出を必要とすることがあるので、はれがひどい場合には、眼科を受診します。うみを出すために針などでつつくと、かえって悪化する原因になるので、注意して下さい。
医師による治療は、抗生物質が入った点眼液や眼軟膏(なんこう)の処方が主で、場合により抗生物質の飲み薬を服用することもあります。なお、ものもらい用の市販薬も、販売されています。
治療を開始して2~3日で症状が軽くなり、4~5日すると治るのが普通です。この時期は、かゆくても、まぶたを触らないようにします。コンタクトレンズの装用も控えるようにします。かゆみが強い時は、目の周りを冷やすと少し落ち着きます。
手が汚かったり、栄養不足など、環境によっては再発することもあります。家庭でも、患部の清潔とバランスの取れた食事を心掛けます。
日常のものもらい予防対策としては、 前髪が目に掛からないようにする、コンタクトレンズを不潔な指で脱着しない、目の周りをしっかりと化粧しない、花粉症でかゆくてもあまり目をこすらない、などが挙げられます。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
タグ:病気(も) 蒙古斑 ものもらい(麦粒腫) 麦粒腫(ものもらい) 結膜結石 眼瞼縁炎(ただれ目) 正常眼圧緑内障 オカルト黄斑ジストロフィー 先天性黄斑変性症 網膜硝子体出血(眼底出血) 家族性角膜変性 角膜ジストロフィー 網膜色素変性症 杆体錐体ジストロフィー 疲れ目 角膜変性 視力障害 眼精疲労 白内障 飛蚊症 一過性黒内障 ストロベリーマーク 異所性蒙古斑 アクロコルドン 血管腫 水いぼ サーモンパッチ いぼ(疣贅) 色素性母斑 青あざ 尋常性疣贅 ミルメシア 母斑細胞性母斑 母斑 悪性黒色腫 スピッツ母斑 ウンナ母斑 正中部母斑 イチゴ状血管腫 単純性血管腫 ポートワイン母斑 スキンタッグ 百いぼ 足底疣贅 太田母斑 カンジダ性指間びらん症 青年性扁平疣贅 扁平疣贅 ウイルス性いぼ
■病気 門脈圧高進症 [病気(も)]
腸から肝臓につながる血管内で、血圧が上昇
門脈圧高進症とは、腸から肝臓につながる門脈から枝分かれした血管内で、血圧が異常に高くなる状態。これに伴って食道静脈瘤(りゅう)、胃静脈瘤、脾腫(ひしゅ)、腹水など、二次的な症状が現れます。
大静脈である門脈には、腸全体を始め、脾臓、膵臓(すいぞう)、胆嚢(たんのう)から流れ出る血液が集まります。門脈は肝臓に入ると左右に分かれ、さらに細かく枝分かれして肝臓全体に広がります。血液は肝細胞との物質の交換を行った後は、末梢(まっしょう)の肝静脈に流れ出して、大きな3本の肝静脈に集められ、さらに下大静脈を介して体循環に戻り心臓へと向かいます。
門脈の血圧、すなわち門脈圧を上昇させる原因は、2つあります。門脈を通る血流量の増加と、肝臓を通る血流に対する抵抗の増大です。欧米諸国では、門脈圧が高進する最も一般的な原因は肝硬変による血流抵抗の増大で、その一番の原因はアルコールの過剰摂取となっています。日本でも、原因の90パーセント以上が進行した慢性肝炎を含む肝硬変によるものです。そのほかの門脈圧高進症を来す疾患としては、特発性門脈圧高進症、肝外門脈閉塞(へいそく)症、肝静脈の閉塞するバッド・キアリ症候群、日本住血吸虫症などがあります。
門脈圧の高進により、門脈から体循環に直接つながる静脈の発達が促され、肝臓を迂回(うかい)するルートが形成されます。この側副血行路と呼ばれるバイパスによって、正常な体では肝臓で血液から取り除かれるはずの物質が、体循環に入り込むようになります。
側副血行路は特定の部位で発達しますが、食道の下端にできた場合は特に注意が必要で、血管が拡張し曲がりくねって、食道静脈瘤を形成します。拡張した血管はもろくなって出血しやすく、時に大出血を起こし、吐血や下血などの症状が現れます。側副血行路はへその周辺部や直腸で発達することもあり、胃の上部にできた静脈瘤も出血しやすく、時には大出血となりますし、直腸にできた静脈瘤もまれに出血することがあります。
脾臓は脾静脈を通じて門脈に血液を供給しているため、門脈圧の高進はしばしば脾臓のはれを引き起こします。脾機能高進による血球破壊のために、貧血を生じることもあります。蛋白(たんぱく)質を含む体液である腹水が肝臓と腸の表面から漏れ出して、腹腔(ふくくう)が膨張することもあります。
門脈圧高進症の検査と診断と治療
門脈圧高進症の基礎となる疾患が不明な場合には、肝機能検査を始め、超音波検査、血管造影、CT、MRIなど各種の画像検査により診断を確定します。基礎となる疾患が明らかになれば、食道静脈瘤、胃静脈瘤の有無と、その静脈瘤が出血しやすいかどうかを診断する必要があるため、内視鏡検査が最も重要で、早急を要します。
脾腫では、触診で腹壁越しに、はれた脾臓が感じられることから、腹水では、腹部の膨らみや、軽くたたいて打診を行うと鈍い音がすることから診断されます。ごくまれに、腹壁を通して肝臓や脾臓に針を挿入し、門脈内の血圧を直接測定することがあります。
治療では、門脈圧の上昇から生じる二次的な病態である静脈瘤、脾腫、腹水、脾腫などに対する対症療法が主体となります。中心になるのは食道静脈瘤、胃静脈瘤に対する治療で、予防的治療、待機的治療、緊急的治療があります。
予防的治療は、内視鏡検査により、出血しそうと判断した静脈瘤に対して行います。待機的治療は、静脈瘤の出血後、時期をおいて行うものです。緊急的治療は、出血している症例に止血を目的に行う治療です。緊急的治療では、出血している静脈を収縮させる薬を静脈注射で投与し、失われた血液を補うために輸血をします。大出血に際しては、内視鏡的に静脈瘤を治療します。
静脈瘤の治療は、1980年ころまでは外科医による手術治療が中心でしたが、最近では内視鏡を用いた内視鏡的硬化療法、静脈瘤結紮(けっさつ)療法が第一選択として行われています。
内視鏡的硬化療法には、直接、静脈瘤内に硬化剤を注入する方法と、静脈瘤の周囲に硬化剤を注入し、周囲から静脈瘤を固める方法があります。どちらも静脈瘤に血栓形成を十分に起こさせることにより、食道への側副血行路を遮断するのが目的です。静脈瘤結紮療法は、特殊なゴムバンドで縛って静脈瘤を壊死(えし)に陥らせ、組織を荒廃させ、結果的に静脈瘤に血栓ができることが目的となります。
これらの治療には、側副血行路の状態をみるために、血管造影や超音波を用いた検査が行われます。胃静脈瘤に対しては、血管造影を用いた塞栓療法も用いられます。また、門脈圧を下げるような薬剤を用いた治療、手術が必要な症例もあり、手術では側副血行路の遮断や血管の吻合(ふんごう)術が行われます。
出血が続いたり再発を繰り返す場合は、外科処置を行って、門脈系と体循環の静脈系の間にシャントと呼ばれるバイパスを形成し、肝臓を迂回(うかい)する血液ルートを作ることがあります。静脈系の血圧の方がはるかに低いため、門脈の血圧は下がります。
肝硬変を起こしていたり肝機能に障害がある場合は、こうしたバイパス形成手術によって肝性脳症を起こすリスクが高くなりますので、手術の代わりに、皮膚から注射針を直接肝臓に刺し、注射針を通してワイヤとカテーテルを挿入し、門脈と体循環の静脈系とを結ぶシャントを形成することもあります。
脾腫を伴う場合はハッサブ手術や血管内治療、腹水を伴う場合には利尿剤の投与などが行われます。
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門脈圧高進症とは、腸から肝臓につながる門脈から枝分かれした血管内で、血圧が異常に高くなる状態。これに伴って食道静脈瘤(りゅう)、胃静脈瘤、脾腫(ひしゅ)、腹水など、二次的な症状が現れます。
大静脈である門脈には、腸全体を始め、脾臓、膵臓(すいぞう)、胆嚢(たんのう)から流れ出る血液が集まります。門脈は肝臓に入ると左右に分かれ、さらに細かく枝分かれして肝臓全体に広がります。血液は肝細胞との物質の交換を行った後は、末梢(まっしょう)の肝静脈に流れ出して、大きな3本の肝静脈に集められ、さらに下大静脈を介して体循環に戻り心臓へと向かいます。
門脈の血圧、すなわち門脈圧を上昇させる原因は、2つあります。門脈を通る血流量の増加と、肝臓を通る血流に対する抵抗の増大です。欧米諸国では、門脈圧が高進する最も一般的な原因は肝硬変による血流抵抗の増大で、その一番の原因はアルコールの過剰摂取となっています。日本でも、原因の90パーセント以上が進行した慢性肝炎を含む肝硬変によるものです。そのほかの門脈圧高進症を来す疾患としては、特発性門脈圧高進症、肝外門脈閉塞(へいそく)症、肝静脈の閉塞するバッド・キアリ症候群、日本住血吸虫症などがあります。
門脈圧の高進により、門脈から体循環に直接つながる静脈の発達が促され、肝臓を迂回(うかい)するルートが形成されます。この側副血行路と呼ばれるバイパスによって、正常な体では肝臓で血液から取り除かれるはずの物質が、体循環に入り込むようになります。
側副血行路は特定の部位で発達しますが、食道の下端にできた場合は特に注意が必要で、血管が拡張し曲がりくねって、食道静脈瘤を形成します。拡張した血管はもろくなって出血しやすく、時に大出血を起こし、吐血や下血などの症状が現れます。側副血行路はへその周辺部や直腸で発達することもあり、胃の上部にできた静脈瘤も出血しやすく、時には大出血となりますし、直腸にできた静脈瘤もまれに出血することがあります。
脾臓は脾静脈を通じて門脈に血液を供給しているため、門脈圧の高進はしばしば脾臓のはれを引き起こします。脾機能高進による血球破壊のために、貧血を生じることもあります。蛋白(たんぱく)質を含む体液である腹水が肝臓と腸の表面から漏れ出して、腹腔(ふくくう)が膨張することもあります。
門脈圧高進症の検査と診断と治療
門脈圧高進症の基礎となる疾患が不明な場合には、肝機能検査を始め、超音波検査、血管造影、CT、MRIなど各種の画像検査により診断を確定します。基礎となる疾患が明らかになれば、食道静脈瘤、胃静脈瘤の有無と、その静脈瘤が出血しやすいかどうかを診断する必要があるため、内視鏡検査が最も重要で、早急を要します。
脾腫では、触診で腹壁越しに、はれた脾臓が感じられることから、腹水では、腹部の膨らみや、軽くたたいて打診を行うと鈍い音がすることから診断されます。ごくまれに、腹壁を通して肝臓や脾臓に針を挿入し、門脈内の血圧を直接測定することがあります。
治療では、門脈圧の上昇から生じる二次的な病態である静脈瘤、脾腫、腹水、脾腫などに対する対症療法が主体となります。中心になるのは食道静脈瘤、胃静脈瘤に対する治療で、予防的治療、待機的治療、緊急的治療があります。
予防的治療は、内視鏡検査により、出血しそうと判断した静脈瘤に対して行います。待機的治療は、静脈瘤の出血後、時期をおいて行うものです。緊急的治療は、出血している症例に止血を目的に行う治療です。緊急的治療では、出血している静脈を収縮させる薬を静脈注射で投与し、失われた血液を補うために輸血をします。大出血に際しては、内視鏡的に静脈瘤を治療します。
静脈瘤の治療は、1980年ころまでは外科医による手術治療が中心でしたが、最近では内視鏡を用いた内視鏡的硬化療法、静脈瘤結紮(けっさつ)療法が第一選択として行われています。
内視鏡的硬化療法には、直接、静脈瘤内に硬化剤を注入する方法と、静脈瘤の周囲に硬化剤を注入し、周囲から静脈瘤を固める方法があります。どちらも静脈瘤に血栓形成を十分に起こさせることにより、食道への側副血行路を遮断するのが目的です。静脈瘤結紮療法は、特殊なゴムバンドで縛って静脈瘤を壊死(えし)に陥らせ、組織を荒廃させ、結果的に静脈瘤に血栓ができることが目的となります。
これらの治療には、側副血行路の状態をみるために、血管造影や超音波を用いた検査が行われます。胃静脈瘤に対しては、血管造影を用いた塞栓療法も用いられます。また、門脈圧を下げるような薬剤を用いた治療、手術が必要な症例もあり、手術では側副血行路の遮断や血管の吻合(ふんごう)術が行われます。
出血が続いたり再発を繰り返す場合は、外科処置を行って、門脈系と体循環の静脈系の間にシャントと呼ばれるバイパスを形成し、肝臓を迂回(うかい)する血液ルートを作ることがあります。静脈系の血圧の方がはるかに低いため、門脈の血圧は下がります。
肝硬変を起こしていたり肝機能に障害がある場合は、こうしたバイパス形成手術によって肝性脳症を起こすリスクが高くなりますので、手術の代わりに、皮膚から注射針を直接肝臓に刺し、注射針を通してワイヤとカテーテルを挿入し、門脈と体循環の静脈系とを結ぶシャントを形成することもあります。
脾腫を伴う場合はハッサブ手術や血管内治療、腹水を伴う場合には利尿剤の投与などが行われます。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
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■病気 門脈血栓症 [病気(も)]
腸から肝臓につながる門脈が血栓で閉塞
門脈血栓症とは、肝臓に血液を供給する門脈が血栓でふさがれて、血液の流れが悪くなった疾患。
門脈は胃、小腸、大腸、脾臓(ひぞう)、膵臓(すいぞう)などの血液を肝臓に送る静脈の最終ルートで、その後、血液は肝臓部の下大静脈に入り、心臓に流れ込みます。この門脈内の血液が、固まってしまうことがあるのです。
原因となるのは、血液凝固疾患や、肝静脈の閉塞(へいそく)するバッド・キアリ症候群、慢性心不全、慢性収縮性心膜炎などです。肝硬変や肝臓がん、膵臓がん、胃がん、胆管炎、膵炎、肝膿瘍(のうよう)が、原因となることもあります。また、新生児では、へその部分からの感染が門脈血栓症を引き起こします。妊婦では、特に子癇(しかん)という発作性の全身けいれんが門脈血栓症を引き起こします。
しかしながら、門脈血栓症発症者の半数以上は、原因不明です。
門脈が血栓で閉塞すると、門脈とそこに流れ込む他の静脈の圧力が上昇し、門脈圧高進症と呼ばれる状態を来します。そして、行き場のなくなった血液は食道静脈へと流れ、静脈瘤(りゅう)という拡張や屈曲を生じ、これが破裂して出血し、吐血の原因となります。脾臓もはれ、腹に水がたまる腹水も出現します。
門脈血栓症の発症者の約3分の1では、閉塞が徐々に進行し、閉塞部の周りに、側副血行路という別の血液の通り道が形成されます。門脈が再び開通することはごくまれで、再開通しても門脈圧は下がらないこともあります。
門脈血栓症の検査と診断と治療
門脈血栓症は、上部消化管からの急な出血や脾臓のはれといった診察時の所見から、まず疑われます。診断を確定するために肝生検を行うことがあり、組織の一部を採取して顕微鏡で調べます。門脈圧が高く、肝生検で組織が正常ならば、門脈血栓症の可能性があります。閉塞部分の確認には、超音波検査やCT検査が有効で、造影剤を門脈に注入して静脈の血管造影検査を行うか、MRI検査によって診断が確かめられます。
治療の目標は、門脈の圧力を下げ、門脈の血栓を修復し、食道静脈瘤の出血を防ぐこととなります。
門脈の圧力を下げるためには、門脈と下大静脈を結ぶシャントと呼ばれるバイパスを形成して、肝臓を迂回(うかい)する血液ルートを作る手術を行います。肝硬変を起こしていたり肝機能に障害がある場合は、こうしたバイパス形成手術によって肝性脳症を起こすリスクが高くなりますので、手術の代わりに、皮膚から注射針を直接肝臓に刺し、注射針を通してワイヤとカテーテルを挿入し、門脈と肝静脈系とを結ぶシャントを形成することもあります。
門脈の血栓を修復するためには、腹を開けて、固まった血液を取り出したり、血液のうっ滞で腐りかけている腸を切除したりします。最近では、首の静脈からカテーテルを入れ、肝臓の組織を越えて門脈に至り、機械的に血栓を壊したり、吸引したり、血栓溶解剤を直接病変部に高濃度で流したりします。
食道静脈瘤を修復して出血を防ぐためには、特殊なゴムバンドで縛る方法や、内視鏡を挿入してそこから刺激性の化学物質を注入する硬化療法が行われます。
原因となっている疾患や発症者の病状によっては、肝臓移植が最も有効な治療法となる場合もあります。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
門脈血栓症とは、肝臓に血液を供給する門脈が血栓でふさがれて、血液の流れが悪くなった疾患。
門脈は胃、小腸、大腸、脾臓(ひぞう)、膵臓(すいぞう)などの血液を肝臓に送る静脈の最終ルートで、その後、血液は肝臓部の下大静脈に入り、心臓に流れ込みます。この門脈内の血液が、固まってしまうことがあるのです。
原因となるのは、血液凝固疾患や、肝静脈の閉塞(へいそく)するバッド・キアリ症候群、慢性心不全、慢性収縮性心膜炎などです。肝硬変や肝臓がん、膵臓がん、胃がん、胆管炎、膵炎、肝膿瘍(のうよう)が、原因となることもあります。また、新生児では、へその部分からの感染が門脈血栓症を引き起こします。妊婦では、特に子癇(しかん)という発作性の全身けいれんが門脈血栓症を引き起こします。
しかしながら、門脈血栓症発症者の半数以上は、原因不明です。
門脈が血栓で閉塞すると、門脈とそこに流れ込む他の静脈の圧力が上昇し、門脈圧高進症と呼ばれる状態を来します。そして、行き場のなくなった血液は食道静脈へと流れ、静脈瘤(りゅう)という拡張や屈曲を生じ、これが破裂して出血し、吐血の原因となります。脾臓もはれ、腹に水がたまる腹水も出現します。
門脈血栓症の発症者の約3分の1では、閉塞が徐々に進行し、閉塞部の周りに、側副血行路という別の血液の通り道が形成されます。門脈が再び開通することはごくまれで、再開通しても門脈圧は下がらないこともあります。
門脈血栓症の検査と診断と治療
門脈血栓症は、上部消化管からの急な出血や脾臓のはれといった診察時の所見から、まず疑われます。診断を確定するために肝生検を行うことがあり、組織の一部を採取して顕微鏡で調べます。門脈圧が高く、肝生検で組織が正常ならば、門脈血栓症の可能性があります。閉塞部分の確認には、超音波検査やCT検査が有効で、造影剤を門脈に注入して静脈の血管造影検査を行うか、MRI検査によって診断が確かめられます。
治療の目標は、門脈の圧力を下げ、門脈の血栓を修復し、食道静脈瘤の出血を防ぐこととなります。
門脈の圧力を下げるためには、門脈と下大静脈を結ぶシャントと呼ばれるバイパスを形成して、肝臓を迂回(うかい)する血液ルートを作る手術を行います。肝硬変を起こしていたり肝機能に障害がある場合は、こうしたバイパス形成手術によって肝性脳症を起こすリスクが高くなりますので、手術の代わりに、皮膚から注射針を直接肝臓に刺し、注射針を通してワイヤとカテーテルを挿入し、門脈と肝静脈系とを結ぶシャントを形成することもあります。
門脈の血栓を修復するためには、腹を開けて、固まった血液を取り出したり、血液のうっ滞で腐りかけている腸を切除したりします。最近では、首の静脈からカテーテルを入れ、肝臓の組織を越えて門脈に至り、機械的に血栓を壊したり、吸引したり、血栓溶解剤を直接病変部に高濃度で流したりします。
食道静脈瘤を修復して出血を防ぐためには、特殊なゴムバンドで縛る方法や、内視鏡を挿入してそこから刺激性の化学物質を注入する硬化療法が行われます。
原因となっている疾患や発症者の病状によっては、肝臓移植が最も有効な治療法となる場合もあります。
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