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■用語 炎症性乳がん [用語(え)]

[バー]まれに発生する特殊なタイプの乳がんで、非常に治りにくい種類
 炎症性乳がんとは、乳房の皮膚が赤くはれて、オレンジの皮のような外観を示すタイプの乳がん。
 まれに発生している特殊なタイプの乳がんで、非常に治りにくい種類です。乳がん全体の約1パーセントを占めます。
 一般的な乳がんと同様、40~50歳代に最も多く発症しますが、全年齢において発症する可能性があります。
 主に乳頭周辺に症状が出現し、はっきりしたしこりはなく、乳房の3分の1以上の皮膚が赤くはれて、あたかも炎症を起こしたかのように見えるのが特徴です。
 さらに、乳房の皮膚がザラザラして、でこぼこになり、毛穴が目立つようになります。まるでオレンジや夏みかんの皮のような外観を示すため、オレンジ皮様皮膚、橙皮(とうひ)状皮膚などと呼ばれることもあります。
 また、比較的短期間のうちに乳房が大きくなることも特徴の一つです。乳房が熱を持つように感じ、かゆみが出ることもあります。これらの症状はほとんどの場合、片側の乳房だけにみられます。
 しかし、実際は皮膚炎などではなく、がん細胞が乳房のリンパ液の流れをブロックすることにより、皮膚に症状が出たものです。
 皮膚の下には、網の目のように張り巡らされたリンパ管があります。このリンパ管の中に、乳管で発生したがん細胞が入って増殖し、詰まりを起こすために、リンパ液の流れが停滞し、乳房の炎症やはれを引き起こします。
 さらに進行すると、乳房に潰瘍(かいよう)ができることもあります。ここから分泌液が染み出したり、出血することがあります。潰瘍に細菌などが感染すると、臭いを発するようになります。
 まれな乳がんではあるものの、乳がんの中では比較的進行が早く、転移も起こしやすいことから、悪性度の高いがんといえます。
 診断がついた時には、すでにほかの部位に転移しているケースも多く、その皮膚の症状や急激な進行から、急性乳腺(にゅうせん)炎と誤診されることも珍しくありません。
 乳房に赤みやはれが認められたら、皮膚科のみならず、乳腺外科を受診してみることが勧められます。
[バー]炎症性乳がんの検査と診断と治療
 皮膚科、乳腺外科の医師による診断では、しこりがないケースが多いため、一般的な乳がんで有効なマンモグラフィー(乳房X線検査)、超音波(エコー)検査などでわからないことがほとんどです。
 乳房の皮膚を一部採取し、顕微鏡で調べる生体検査が、最も確実とされています。生体検査を行い、皮膚やその下にあるリンパ管に、がん細胞が存在しているのが確認されれば、炎症性乳がんと確定します。
 皮膚科、乳腺外科の医師による治療では、抗がん剤による化学療法を中心に、症状に応じて乳腺の動脈に直接抗がん剤を注射する方法や、放射線療法、ホルモン療法などが選択されます。
 乳房を切除する手術をした場合でも、手術後の化学療法を継続することで、5年生存率は約50パーセントまでに上昇しています。
 以前は、乳房を切除する手術のみの治療が主に行われていましたが、その結果は思わしくないもので、患者のほぼ全員に再発がみられ、5年生存率はわずか17パーセントであったとのデータがあります。




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■用語 エプスタイン・バーウイルス感染症 [用語(え)]

[喫茶店]主にエプスタイン・バーウイルスの感染で起こり、青年期に多くみられる疾患
 エプスタイン・バーウイルス感染症とは、主にエプスタイン・バーウイルスの感染で起こり、15~30歳くらいの青年期に多くみられる良性の疾患。EBウイルス感染症、伝染性単核球症とも呼ばれ、アメリカではキス病とも呼ばれています。
 ヘルペスウイルスの仲間であるエプスタイン・バーウイルスはBリンパ球に感染しますが、感染Bリンパ球を排除するためにTリンパ球が増加します。サイトメガロウイルス、トキソプラズマ、またHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染した場合でも、同様の症状がみられることがあります。
 エプスタイン・バーウイルスに感染する時期によって、症状の現れ方が異なります。日本人の70パーセントは2〜3歳までに初感染しますが、乳幼児期では病原菌に感染しても症状が現れない不顕性感染が多く、症状が現れても軽度です。
 思春期以降に感染すると、約50パーセントが発症します。ただし、感染してもほとんどが4~6週間で、症状は自然になくなるといわれています。20歳代では90パーセント以上が抗体を持っているといわれていますが、成人になってから初感染した場合、症状が重くなります。6カ月以上症状が続く場合は、重症化している可能性があります。
 エプスタイン・バーウイルスは一度感染すると、その後は潜伏感染状態となり、終生に渡って共存します。そのため、急性感染症以外にもいろいろな疾患を引き起こすことがわかってきました。再感染はしないものの、免疫力が低下した場合に発症することもあります。
 キスや飲み物の回し飲みなどによる、既感染者の唾液を介した経口感染が、主要な感染経路です。まれに、輸血により伝播(でんぱ)されます。感染してから発症するまでの潜伏期間は、4~6週間といわれています。
 主な症状は、発熱、頸部(けいぶ)リンパ節の腫脹(しゅちょう)、咽頭(いんとう)痛。 まず、頭痛、熱感、悪寒、発汗、食欲不振、倦怠(けんたい)感などの前駆症状が数日間続き、その後38℃以上の高熱が1~2週間続きます。発熱のないこともありますが、通常は発症から4~8日が最も高熱で、以後徐々に下がってきます。
 頸部リンパ節の腫脹は、発症2週目ころから現れ、時に全身性のリンパ節腫脹もみられます。上咽頭のリンパ節腫大による鼻閉も、よく起こります。口蓋扁桃(こうがいへんとう)は発赤、腫脹し、口蓋に出血性の粘膜疹(しん)が出て咽頭痛が生じます。発疹は、抗生物質、特にペニシリン系を投与された後に現れることがしばしばあります。
 肝臓や脾臓(ひぞう)が腫大することもあり、急激な腫脹のためにまれに脾臓の破裂を招くことがあります。
 発熱が1週間続く場合は、内科あるいは耳鼻咽喉(いんこう)科の医師を受診し、精密検査を受けることが勧められます。症状が進行して、劇症肝炎や血球貪食(どんしょく)症候群などを併発すれば、生命の危険があります。リンパ節腫大が長引き、悪性リンパ腫と誤診されることがあるので、要注意です。ほとんどの大人は既感染者なので、他人への伝播を気にする必要はありません。
[喫茶店]エプスタイン・バーウイルス感染症の検査と診断と治療
 内科、耳鼻咽喉科の医師による診断では、血液検査を行い、白血球の増加、特に末梢(まっしょう)血中の単核球(リンパ球)の増加と、正常なリンパ球と異なった形の異型リンパ球の出現がみられることを確認します。ほとんどのケースで肝機能異常を認め、エプスタイン・バーウイルス血清中抗体価が陽性となることなどで、総合判断します。
 このエプスタイン・バーウイルス感染症に特異的にみられるポール・バンネル反応を調べる血清試験があり、これが陽性ならば診断が決められます。しかし、日本人では検査が陽性にならないものが多く、頼りになりません。
 ほかのウイルス感染や悪性リンパ腫、リンパ性白血病などとの区別が、必要になります。
 内科、耳鼻咽喉科の医師による治療では、抗エプスタイン・バーウイルス薬はないため、安静と対症療法が中心です。咽頭痛がひどい場合は、アセトアミノフェンなどの消炎鎮痛薬を用います。血小板減少や肝機能障害の程度が強く、症状が長引く場合は、ステロイドホルモン剤を用いることもあります。肝機能障害には、肝庇護(ひご)剤を用いることもあります。 発疹が現れることがあるため、抗生物質、特にペニシリン系抗生物質の投与は避けます。
 安静にしていれば経過は比較的良好で、1〜2週間で解熱し、リンパ節のはれも数週から数カ月で自然に消えます。
 重症の場合は、血漿(けっしょう)交換療法や抗がん剤が用いられます。アシクロビル(ゾビラックス)などの抗ウイルス薬の有効性は、証明されていません。
 異型リンパ球は、少数ながら数カ月残存しているケースもあります。肝臓や脾臓のはれも1カ月ほどで回復しますが、まれに脾臓破裂を起こすことがあるので、治った後も2カ月ほどは腹に圧力や衝撃がかかる運動などは避けるようにします。
 また、疾患が治ったと思っても、数週間たってから肝機能障害などが悪化することがあるので、リンパ節のはれがなくなっても数週間は経過に注意し、医師の指示を受けることが大切です。




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■用語 円背 [用語(え)]

[スキー]脊椎の胸椎部の後方への湾曲が極端に大きくなっている疾患の総称
 円背(えんぱい)とは、背骨、すなわち脊椎(せきつい)のうちの胸椎部の後方への湾曲が極端に大きくなっている疾患の総称。脊椎後湾症、脊柱後湾症、亀背(きはい)、猫背(ねこぜ)とも呼ばれます。
 人間の脊椎は、7個の頸椎(けいつい)、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨で成り立っています。正常な脊椎は体の前から見ると真っすぐですが、横から見ると、緩やかなS字の形をしています。すなわち頸椎部は前湾(前に向かって湾曲している)、胸椎部は後湾(後ろに向かって湾曲している)、腰椎部は前湾を示しています。
 このように脊椎は本来、後湾している部分があるのですが、円背では、胸椎部の後湾している角度が極端に大きくなったり、腰椎部の前湾が失われて後湾になったりしています。
 円背はいわゆる背中が丸くなっている疾患の総称で、背中を丸めた猫背が習慣化するなど姿勢の異常などによる非構築性円背(機能的円背)は日常的に注意すれば治せるもので、問題はありません。しかし、病的な後湾である構築性円背は病的な後湾であり、治療が必要になります。
 構築性円背には、青年期後湾症(ショイエルマン病)、先天性脊柱後湾症、老人性後湾症(老人性円背)、脊椎カリエス(結核性脊椎炎) による後湾、脊椎損傷後の後湾などがあります。
 青年期後湾症は、成長に伴って複数の円柱状の椎体がくさび状に変形し、脊椎、特に胸椎部が丸く変形するものです。成長期は骨の発育が速いため、特に異常が発生しやすくなりますが、成長が終了すると進行も止まります。
 先天性脊柱後湾症は、椎骨の前方にある円柱状の椎体の生まれ付きの変形によるもので、椎体の癒合や、くさび状の椎体がみられます。成長に伴って進行するものがあります。
 老人性後湾症は、加齢が原因で多くの椎体間の椎間板が変性したり、骨粗鬆(こつそしょう)症で多くの椎体が押しつぶされることによって起こります。
 脊椎カリエスによる後湾は、小児期の脊椎カリエスの後遺症としてよくみられます。
 脊椎損傷後の後湾は、事故などで胸椎部と腰椎部の移行部の脊椎が高度に骨折し、さらに後方の靱帯(じんたい)の損傷を伴った場合に起こるものです。進行する場合は、手術を行う必要があります。
 そのほか、椎骨の後方にあるアーチ型をした椎弓の切除後や放射線治療の後に、後湾が起こることがあります。また、強直性脊椎炎では、胸椎部に後湾が起こったまま椎体が癒着し、強直に陥るのが特徴です。脊髄髄膜瘤(りゅう)、軟骨無形成症でも、後湾が起こることがあります。
 原因によって異なりますが、円背は、軽度では何の症状も現れない場合が多く、持続的な背中の痛みがみられることがある程度です。重度になると、腰が強く傷んだり、神経の障害を生じる場合があります。また、脊椎がねじれを伴って側方に湾曲する脊椎側湾症と合併すると、複雑な湾曲が現れます。
[スキー]円背の検査と診断と治療
 整形外科の医師による診断では、円背は痛みなどの症状に乏しいため、脊椎の変形から疑います。次に、X線(レントゲン)検査を行い、画像で椎体の変形が見付かれば、比較的簡単に判断できます。
 原因を知るために、さらに詳しい検査が必要な際は、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査が有用です。また、加齢が原因と疑われる際は、骨粗鬆症の検査を行います。
 整形外科の医師による治療は、原因や進行度、年齢によって方法が異なります。軽度の場合は、運動療法で姿勢を正すために必要な力をつけて、経過観察します。重度の場合は、サポーターやコルセットで姿勢を固定したり、負荷を軽減する装具療法を行い、進行の防止を図ります。
 先天性の後湾症や、筋力低下や感覚障害などの神経の障害が現れた場合、後湾の状態がひどい場合は、手術を行って後湾している脊椎を矯正して固定します。
 ほかの疾患が円背の原因である場合には、その疾患の治療を行います。
 円背と診断されたら、医師の指示に従って、運動療法や装具療法を正しく根気よく行うことが大切となります。とりわけ青年期後湾症、先天性脊柱後湾症は進行するので、途中で治療をやめたりすると、計画的な治療が受けられなくなります。また、進行するかどうかをみるために、定期的に検査を受ける必要があることもあります。

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■用語 エドワーズ症候群 [用語(え)]

[ダイヤ]染色体の異常により引き起こされる重度の先天性障害
 エドワーズ症候群とは、18番目の常染色体が1本多い、3本あることが原因で引き起こされる重度の先天性障害。エドワード症候群、18トリソミー症候群、18トリソミーとも呼ばれます。
 人間の体は、父親と母親からもらった遺伝子情報に基づいて作られます。遺伝子情報は、染色体という生体物質が担っています。一般の細胞の核には、1番から22番までの一対の常染色体が44本、それにXまたはYの性染色体の2本が加わって、合計46本の染色体がセットになって存在します。半数の23本ずつを父親と母親から継承しています。
 合計46本の染色体のうち、ある染色体が過剰に存在し、3本ある状態がトリソミーです。卵子や精子が作られる過程で染色体が分離しますが、分離がうまくいかないことがトリソミーを引き起こします。
 18番目の常染色体が3本あるトリソミーがエドワーズ症候群で、イギリスのジョン・エドワーズらのグループにより1960年に初めて報告されました。
 日本では現在、新生児約5000人から8000人に1人の頻度でエドワーズ症候群が発生するといわれ、男児は流産する場合が多いため、女児に多くみられます。
 母親が高齢、特に35歳以上の場合は、若い母親よりも過剰な染色体が生じる原因となるため、エドワーズ症候群の新生児を産む確率が高くなります。しかし、過剰な染色体が生じる原因は、父親にあることもあります。
 エドワーズ症候群のうち、約80パーセントが染色体が3本独立している標準型トリソミー、約10パーセントが正常細胞とトリソミーの細胞が混在しているモザイク型、約5パーセントが多い1本が他の染色体についている転座型、約5パーセントが詳細不明と見なされています。
 一部の転座型を除き、そのほとんどは細胞分裂時に起こる突然変異だと考えられており、遺伝的な背景は否定されています。
 早産ではなくて満期産、過熟産で生まれることが多いものの、出生時の体重は2200グラム以下と低体重であり、死産になることも多くなっています。また、明らかな全身の発育不全で生まれ、精神発達遅滞のほか、後頭部の突出、両眼開離、口唇裂、口蓋(こうがい)裂、小顎(しょうがく)、耳介の低位、指の屈曲、多指、先天性心疾患、腹直筋ヘルニアなどの消化管の奇形、揺り椅子(いす)状の足といった多くの異常がみられます。
 先天性心疾患はほぼ必発で、心室中隔欠損症、心内膜床欠損症などのほか、単心室、総肺静脈還流異常症、ファロー症候群など、極めて重篤なことも少なくありません。
 誕生後の予後は一般的に悪く、生後2カ月以内に約半数、1年以内に90パーセント以上が死亡します。先天性心疾患の重症度が、特に生命予後に重要な影響を及ぼします。
 モザイク型では、正常細胞とトリソミーの細胞の混在する割合や症状により、生命予後、成長発達に恵まれる場合もあり、中学生になるまで成長したケースも報告されています。
[ダイヤ]エドワーズ症候群の検査と診断と治療
 産婦人科の医師による出生前の診断では、超音波検査異常または母体血清スクリーニングの異常所見から、エドワーズ症候群と確定します。
 小児科の医師による出生後の診断では、特徴的な外見から疑われ、染色体検査で確定します。
 小児科の医師による治療では、根本的な治療法がなく予後の改善は見込めないため、さまざまな症状に対する対症療法を行います。症状が安定している場合は、口唇裂、多指、腹直筋ヘルニアなどの手術に踏み切ることもあります。

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