■用語 遠心性後天性白斑 [用語(え)]
黒子を中心にして、周囲の皮膚に白いまだらが円形に生じる疾患
遠心性後天性白斑(はくはん)とは、色素性母斑の一番小さい型である黒子(ほくろ)を中心にして、周囲の皮膚に白斑が円形に生じる疾患。サットン後天性遠心性白斑、サットン白斑、サットン母斑とも呼ばれます。
小児や青年の胴体や顔、頸部(けいぶ)などにみられ、中心から外に向けてだんだん大きくなる傾向があります。その半数くらいに、全身どこにでも突然、皮膚の一部の色が抜けて、その部分が白斑、すなわち白いまだらとなる尋常性白斑の合併がみられます。
遠心性後天性白斑は徐々に広がりますが、それに伴って中心にある黒子は縮小するようになり、最終的には消えます。中心の黒子が消失すると、周囲の白斑も消失していく傾向があります。
遠心性後天性白斑は、中心にある色素性母斑である黒子や、皮膚の色素であるメラニンを作るメラノサイト(メラニン細胞、メラニン形成細胞、色素細胞)に対する自己免疫反応が原因といわれています。
この正常でない免疫反応が、中心にある黒子に対して生じ、次いで、黒子の周囲の正常な皮膚のメラノサイトに対しても生じると、メラノサイトを変性させたり、消失させるために皮膚の色が抜けて、白いまだらが円形に生じることになります。
なお、中心に黒子がないのに、腫瘍(しゅよう)や母斑の周囲に同じような白斑ができることをサットン現象といいます。最も危険なのは悪性黒色腫(メラノーマ)で、しばしばみられます。血管腫、皮膚線維腫、表皮母斑、青色母斑、老人性疣贅(ゆうぜい)(いぼ)などでも、このサットン現象が起こることがあります。
遠心性後天性白斑の検査と診断と治療
皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による診断では、視診で判断します。皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、黒子の周囲の皮膚のメラノサイトの消失、あるいは変性が見られ、その周りにはマクロファージおよびリンパ球の浸潤が見られます。
皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による治療では、中心の黒子が消失すると周囲の白斑も軽快していくため、治療として中央の色素性母斑である黒子だけを切除する場合もあります。初期の段階で切除すると、白斑は自然に消えて治癒します。
また、特に支障がない場合、経過観察になることもあります。基本的には、尋常性白斑と同様の治療方法がとられます。
尋常性白斑と同様の治療としては、外用剤として副腎(ふくじん)皮質ステロイド軟こうやビタミンD3軟こうなどを使用する治療と、紫外線照射療法(PUVA療法)が一般的です。
外用剤の皮膚への塗布は、内服薬に比べて全身に及ぼす副作用が少なく、免疫の働きを調節する作用があります。
紫外線照射療法(PUVA療法)は、オクソラレンという薬を10〜30分前に塗布、ないし2時間前に内服し、その後、長波長紫外線を照射する方法です。紫外線の働きで残っている色素細胞が活発になり、色素を作るようになるのを期待します。紫外線に当たった後は、せっけんで薬をよく洗い落とします。
近年では、中波長紫外線(UVB)のうち、治療に有効な波長のみを全身に照射するナローバンドUVB療法も行われています。
治療の効果があると、白斑の中に点状の色素斑ができて徐々に拡大し、島状の色素斑になります。続いて、白斑の周囲にも色素が増強すると、徐々に周囲の肌色になじんできます。
遠心性後天性白斑(はくはん)とは、色素性母斑の一番小さい型である黒子(ほくろ)を中心にして、周囲の皮膚に白斑が円形に生じる疾患。サットン後天性遠心性白斑、サットン白斑、サットン母斑とも呼ばれます。
小児や青年の胴体や顔、頸部(けいぶ)などにみられ、中心から外に向けてだんだん大きくなる傾向があります。その半数くらいに、全身どこにでも突然、皮膚の一部の色が抜けて、その部分が白斑、すなわち白いまだらとなる尋常性白斑の合併がみられます。
遠心性後天性白斑は徐々に広がりますが、それに伴って中心にある黒子は縮小するようになり、最終的には消えます。中心の黒子が消失すると、周囲の白斑も消失していく傾向があります。
遠心性後天性白斑は、中心にある色素性母斑である黒子や、皮膚の色素であるメラニンを作るメラノサイト(メラニン細胞、メラニン形成細胞、色素細胞)に対する自己免疫反応が原因といわれています。
この正常でない免疫反応が、中心にある黒子に対して生じ、次いで、黒子の周囲の正常な皮膚のメラノサイトに対しても生じると、メラノサイトを変性させたり、消失させるために皮膚の色が抜けて、白いまだらが円形に生じることになります。
なお、中心に黒子がないのに、腫瘍(しゅよう)や母斑の周囲に同じような白斑ができることをサットン現象といいます。最も危険なのは悪性黒色腫(メラノーマ)で、しばしばみられます。血管腫、皮膚線維腫、表皮母斑、青色母斑、老人性疣贅(ゆうぜい)(いぼ)などでも、このサットン現象が起こることがあります。
遠心性後天性白斑の検査と診断と治療
皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による診断では、視診で判断します。皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、黒子の周囲の皮膚のメラノサイトの消失、あるいは変性が見られ、その周りにはマクロファージおよびリンパ球の浸潤が見られます。
皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による治療では、中心の黒子が消失すると周囲の白斑も軽快していくため、治療として中央の色素性母斑である黒子だけを切除する場合もあります。初期の段階で切除すると、白斑は自然に消えて治癒します。
また、特に支障がない場合、経過観察になることもあります。基本的には、尋常性白斑と同様の治療方法がとられます。
尋常性白斑と同様の治療としては、外用剤として副腎(ふくじん)皮質ステロイド軟こうやビタミンD3軟こうなどを使用する治療と、紫外線照射療法(PUVA療法)が一般的です。
外用剤の皮膚への塗布は、内服薬に比べて全身に及ぼす副作用が少なく、免疫の働きを調節する作用があります。
紫外線照射療法(PUVA療法)は、オクソラレンという薬を10〜30分前に塗布、ないし2時間前に内服し、その後、長波長紫外線を照射する方法です。紫外線の働きで残っている色素細胞が活発になり、色素を作るようになるのを期待します。紫外線に当たった後は、せっけんで薬をよく洗い落とします。
近年では、中波長紫外線(UVB)のうち、治療に有効な波長のみを全身に照射するナローバンドUVB療法も行われています。
治療の効果があると、白斑の中に点状の色素斑ができて徐々に拡大し、島状の色素斑になります。続いて、白斑の周囲にも色素が増強すると、徐々に周囲の肌色になじんできます。
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■用語 エッグシェルネイル [用語(え)]
爪の甲が薄く白くなり、爪の先端が内側に湾曲する状態
エッグシェルネイルとは、爪(つめ)の甲が薄く白くなり、爪の先端が内側に湾曲する状態。卵殻爪(らんかくそう)とも呼ばれます。
卵の殻のような形になって、しばらくほうっておけば元の爪の甲の形に戻るというわけではありません。薄くなった爪の甲は、健康な爪の甲よりもずっともろくなるため、ちょっとしたことで割れやすくなります。
爪が割れやすい状態は、ほかの爪の疾患を引き起こします。エッグシェルネイルがもとで、爪の甲が両側縁に向かって深く湾曲する巻き爪や陥入爪になるケースも珍しくありません。
エッグシェルネイルの発生には、過剰なダイエットによる栄養不足が大きく関係しています。爪は健康のバロメータであり、栄養状態が現れやすい部位ですから、男性よりもダイエットに取り組んでいるケースが多い女性がかかりやすいといえるでしょう。また、内臓の疾患、神経障害、薬物が原因で、エッグシェルネイルが発生することもあります。
エッグシェルネイルは命にかかわる疾患ではないので、あまり気にしない人も多いようですが、正常な状態とはほど遠く、悪化して巻き爪や陥入爪になれば、治療もより困難になります。エッグシェルネイルになったら、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。爪が割れやすくなりますから、自己治療は危険です。
エッグシェルネイルの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、エッグシェルネイルを起こし得る外的物質や薬物、あるいは皮膚疾患、内臓の疾患、細菌感染、栄養不足などを検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、一般的には、爪の甲の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合もあります。
栄養不足が原因でエッグシェルネイルを生じている場合、栄養バランスのとれた1日3食の食生活を心掛け、爪の健康に必要な栄養素である蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類などをしっかり摂取してもらいます。
内臓などの疾患が原因でエッグシェルネイルを生じている場合、その原因となる疾患を治療することが先決です。
自分でできる対処法としては、圧力がかかって爪が割れる原因になるマニキュア、ネイルアート、小さい靴を履くなどを避けることです。
エッグシェルネイルとは、爪(つめ)の甲が薄く白くなり、爪の先端が内側に湾曲する状態。卵殻爪(らんかくそう)とも呼ばれます。
卵の殻のような形になって、しばらくほうっておけば元の爪の甲の形に戻るというわけではありません。薄くなった爪の甲は、健康な爪の甲よりもずっともろくなるため、ちょっとしたことで割れやすくなります。
爪が割れやすい状態は、ほかの爪の疾患を引き起こします。エッグシェルネイルがもとで、爪の甲が両側縁に向かって深く湾曲する巻き爪や陥入爪になるケースも珍しくありません。
エッグシェルネイルの発生には、過剰なダイエットによる栄養不足が大きく関係しています。爪は健康のバロメータであり、栄養状態が現れやすい部位ですから、男性よりもダイエットに取り組んでいるケースが多い女性がかかりやすいといえるでしょう。また、内臓の疾患、神経障害、薬物が原因で、エッグシェルネイルが発生することもあります。
エッグシェルネイルは命にかかわる疾患ではないので、あまり気にしない人も多いようですが、正常な状態とはほど遠く、悪化して巻き爪や陥入爪になれば、治療もより困難になります。エッグシェルネイルになったら、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。爪が割れやすくなりますから、自己治療は危険です。
エッグシェルネイルの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、エッグシェルネイルを起こし得る外的物質や薬物、あるいは皮膚疾患、内臓の疾患、細菌感染、栄養不足などを検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、一般的には、爪の甲の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合もあります。
栄養不足が原因でエッグシェルネイルを生じている場合、栄養バランスのとれた1日3食の食生活を心掛け、爪の健康に必要な栄養素である蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類などをしっかり摂取してもらいます。
内臓などの疾患が原因でエッグシェルネイルを生じている場合、その原因となる疾患を治療することが先決です。
自分でできる対処法としては、圧力がかかって爪が割れる原因になるマニキュア、ネイルアート、小さい靴を履くなどを避けることです。
タグ:用語(え) オニキア 爪甲剥離症 爪甲周囲炎(爪囲炎) 爪甲白斑症 エッグシェルネイル ハイパートロフィー カンジダ性爪囲爪炎 黄色爪 爪白癬(爪の水虫) 巻き爪 二枚爪 匙状づめ 時計ガラスつめ(ヒポクラテスつめ) 爪甲横溝 爪甲軟化症 陥入爪 スプーンネイル コルゲーテッドネイル ボーズライン(爪甲横溝) 化膿性爪囲炎(ひょうそう) バロニキア 爪甲鉤弯症 湾曲爪 黄色爪症候群 爪甲層状分裂症 爪甲脱落症 オニコプトーシス ルコニキア オニコライシス 爪甲縦裂症 オニコレクシス 爪甲委縮症 オニカトロフィア 巨爪症 オニキクシス 卵殻爪 オニコマレーシア 爪肥厚症 オニコファジー 咬爪症 爪かみ
■用語 栄養失調 [用語(え)]
標準体重より体重が20パーセント以上減少している状態
栄養失調とは、一般的に、標準体重より体重が20パーセント以上減少している状態。栄養不良、栄養不足、羸痩(るいそう)とも呼ばれます。
標準体重より少ないからといって、人それぞれで体重がほぼ一定している場合には、すぐ病的だとはいえません。しかし、過去6カ月以内に元来の体重から10パーセント以上減った場合は、医学的に問題となります。
この栄養失調は、栄養過多による肥満の反対、つまり脂肪だけが減っているということではありません。筋肉など、脂肪以外の組織も減少している状態をいいます。
栄養失調を起こす原因には、さまざまなものがあります。大きく分けて、食事で摂取する熱量(カロリー)が体の要求を満たすのに十分でない場合と、摂取する熱量は足りていても十分に吸収・利用がされない場合に、栄養失調の状態になります。
食事で摂取する熱量が体の要求を満たすのに十分でない場合の栄養失調の一般的な形態は、蛋白(たんぱく)・エネルギー栄養失調と、微量栄養素栄養失調に分かれます。
蛋白・エネルギー栄養失調は、体に必要なエネルギーと蛋白質の不十分な吸収と利用を示します。微量栄養失調は、体に少量必要なビタミンや微量元素などの不足が原因で、さまざまな疾患につながり、体の正常な機能を損ないます。
摂取する熱量は足りていても十分に吸収・利用がされない場合は、消化器系の疾患や、がん、糖尿病、甲状腺(こうじょうせん)機能高進症などのいろいろな疾患が原因となっている場合があります。
消化管である胃腸に疾患があると、食欲不振に陥ると同時に、食べた物の消化・吸収も正常に行われなくなるため、栄養失調になります。消化器系の疾患で多いのは、胃潰瘍(かいよう)と十二指腸潰瘍です。また、消化液や酵素を分泌する腺臓器である肝臓、膵臓(すいぞう)に、慢性肝炎、肝硬変、慢性膵炎などの疾患があるケースでも、食欲が減退して、栄養失調になります。
体のどの臓器、組織にできたがんでも、初期症状として栄養失調になり、体重が落ち、やせてきます。がん細胞が体の栄養を奪ってしまうために起こり、特に消化器系に発生したがんでは顕著です。末期になると、体がやせ細ってきます。
糖尿病の初期には太り出すことがありますが、放置して進行すると食欲があるのに栄養失調になり、体がやせてきて、のどの渇き、多尿などの症状が現れます。糖尿病は膵臓から出るインシュリンの働きが悪くなり、血糖値が高くなる疾患で、進行すると目、腎臓(じんぞう)、神経などに合併症を来す全身病。親や兄弟に糖尿病の人がいると、発症率が高くなります。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される疾患が甲状腺機能高進症で、代謝が活発になって消費カロリーが増えるため食欲が増しますが、それ以上に代謝が激しいので、急激に栄養失調になります。動悸(どうき)がする、汗をかきやすい、手が震えるなどの症状も伴います。男女比で見ると、約1対4で女性に多く、多くは20歳~50歳代で発症します。
そのほか、神経性食欲不振症、過度のダイエットが、栄養失調の原因となっている場合があります。
神経性食欲不振症は若い女性に多く、肥満に対する強い不安などが原因で食欲不振になり、食べても自ら吐いてしまうこともあります。その結果、栄養失調となり、極度のやせ、無月経などを引き起こします。本人には、栄養失調の自覚がないことが多いとされています。
減量を目的とした自己流の過度のダイエットによる食事制限によって、栄養失調、摂取エネルギー不足に陥って、極端にやせるケースもあります。貧血や肝機能障害などの合併症を引き起こす危険性もあります。
そのほか、感染症、外傷、手術なども、栄養失調を起こす原因となります。
栄養失調の一般的な症状は徐々に起こってきますが、自覚症状としては、倦怠(けんたい)感、無気力、脱力感があり、体重は次第に減少し、体温も下がり、脈が少なくなります。やがてむくみ、貧血、下痢が現れ、末期には昏睡(こんすい)状態になって死亡します。
1カ月で2~3キロ以上体重が減ったら、念のため内科を受診しましょう。
栄養失調の検査と診断と治療
内科の医師による診断では、さまざまな疾患を念頭に入れて、食欲や食事摂取の有無を始めとした病状を詳しく聞いた後に、必要な診察や検査を迅速に行います。
内科の医師による治療では、原因となっている疾患がある場合は、その疾患を治療することが先決です。
原因となっている疾患が特に見当たらなければ、十分な熱量と、牛乳、卵、大豆など良質な蛋白質を与えれば、容易に回復します。全体の摂取カロリーに占める糖質、脂肪、蛋白質の割合は、およそ3対1対1になるのがよいとされています。加えて、食事は1日3回、規則正しく取ることが大事です。
重症者では、消化機能も低下し、慢性下痢を伴っているものが多いので、初めは流動食を少量ずつ1日数回に分けて与えます。食べ物は、糖質食品(くず湯やかゆなど)、消化の良い蛋白質、脂肪(バター)の順で増加していきます。むくみが強い場合には、食塩を制限します。
栄養失調とは、一般的に、標準体重より体重が20パーセント以上減少している状態。栄養不良、栄養不足、羸痩(るいそう)とも呼ばれます。
標準体重より少ないからといって、人それぞれで体重がほぼ一定している場合には、すぐ病的だとはいえません。しかし、過去6カ月以内に元来の体重から10パーセント以上減った場合は、医学的に問題となります。
この栄養失調は、栄養過多による肥満の反対、つまり脂肪だけが減っているということではありません。筋肉など、脂肪以外の組織も減少している状態をいいます。
栄養失調を起こす原因には、さまざまなものがあります。大きく分けて、食事で摂取する熱量(カロリー)が体の要求を満たすのに十分でない場合と、摂取する熱量は足りていても十分に吸収・利用がされない場合に、栄養失調の状態になります。
食事で摂取する熱量が体の要求を満たすのに十分でない場合の栄養失調の一般的な形態は、蛋白(たんぱく)・エネルギー栄養失調と、微量栄養素栄養失調に分かれます。
蛋白・エネルギー栄養失調は、体に必要なエネルギーと蛋白質の不十分な吸収と利用を示します。微量栄養失調は、体に少量必要なビタミンや微量元素などの不足が原因で、さまざまな疾患につながり、体の正常な機能を損ないます。
摂取する熱量は足りていても十分に吸収・利用がされない場合は、消化器系の疾患や、がん、糖尿病、甲状腺(こうじょうせん)機能高進症などのいろいろな疾患が原因となっている場合があります。
消化管である胃腸に疾患があると、食欲不振に陥ると同時に、食べた物の消化・吸収も正常に行われなくなるため、栄養失調になります。消化器系の疾患で多いのは、胃潰瘍(かいよう)と十二指腸潰瘍です。また、消化液や酵素を分泌する腺臓器である肝臓、膵臓(すいぞう)に、慢性肝炎、肝硬変、慢性膵炎などの疾患があるケースでも、食欲が減退して、栄養失調になります。
体のどの臓器、組織にできたがんでも、初期症状として栄養失調になり、体重が落ち、やせてきます。がん細胞が体の栄養を奪ってしまうために起こり、特に消化器系に発生したがんでは顕著です。末期になると、体がやせ細ってきます。
糖尿病の初期には太り出すことがありますが、放置して進行すると食欲があるのに栄養失調になり、体がやせてきて、のどの渇き、多尿などの症状が現れます。糖尿病は膵臓から出るインシュリンの働きが悪くなり、血糖値が高くなる疾患で、進行すると目、腎臓(じんぞう)、神経などに合併症を来す全身病。親や兄弟に糖尿病の人がいると、発症率が高くなります。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される疾患が甲状腺機能高進症で、代謝が活発になって消費カロリーが増えるため食欲が増しますが、それ以上に代謝が激しいので、急激に栄養失調になります。動悸(どうき)がする、汗をかきやすい、手が震えるなどの症状も伴います。男女比で見ると、約1対4で女性に多く、多くは20歳~50歳代で発症します。
そのほか、神経性食欲不振症、過度のダイエットが、栄養失調の原因となっている場合があります。
神経性食欲不振症は若い女性に多く、肥満に対する強い不安などが原因で食欲不振になり、食べても自ら吐いてしまうこともあります。その結果、栄養失調となり、極度のやせ、無月経などを引き起こします。本人には、栄養失調の自覚がないことが多いとされています。
減量を目的とした自己流の過度のダイエットによる食事制限によって、栄養失調、摂取エネルギー不足に陥って、極端にやせるケースもあります。貧血や肝機能障害などの合併症を引き起こす危険性もあります。
そのほか、感染症、外傷、手術なども、栄養失調を起こす原因となります。
栄養失調の一般的な症状は徐々に起こってきますが、自覚症状としては、倦怠(けんたい)感、無気力、脱力感があり、体重は次第に減少し、体温も下がり、脈が少なくなります。やがてむくみ、貧血、下痢が現れ、末期には昏睡(こんすい)状態になって死亡します。
1カ月で2~3キロ以上体重が減ったら、念のため内科を受診しましょう。
栄養失調の検査と診断と治療
内科の医師による診断では、さまざまな疾患を念頭に入れて、食欲や食事摂取の有無を始めとした病状を詳しく聞いた後に、必要な診察や検査を迅速に行います。
内科の医師による治療では、原因となっている疾患がある場合は、その疾患を治療することが先決です。
原因となっている疾患が特に見当たらなければ、十分な熱量と、牛乳、卵、大豆など良質な蛋白質を与えれば、容易に回復します。全体の摂取カロリーに占める糖質、脂肪、蛋白質の割合は、およそ3対1対1になるのがよいとされています。加えて、食事は1日3回、規則正しく取ることが大事です。
重症者では、消化機能も低下し、慢性下痢を伴っているものが多いので、初めは流動食を少量ずつ1日数回に分けて与えます。食べ物は、糖質食品(くず湯やかゆなど)、消化の良い蛋白質、脂肪(バター)の順で増加していきます。むくみが強い場合には、食塩を制限します。
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■用語 嚥下性肺炎 [用語(え)]
誤嚥によって、口の中の細菌が気管や肺に流れ込んで生じる肺炎
嚥下(えんげ)性肺炎とは、口の中に常在する細菌が唾液などの分泌物とともに気管内に入る誤嚥に引き続いて、発症する肺炎。誤嚥性肺炎とも呼ばれます。
飲み物や食べ物を飲み込む動作を嚥下といい、食道を通って胃に運ばれます。食道と気管は隣り合わせで、気管の入り口である喉頭(こうとう)が大きく開いており、このままでは飲み物や食べ物が気管に入ってしまいます。それを防ぐために、フタの役目を持つ喉頭蓋(がい)という軟骨からなる部分が、嚥下の動作とともに気管の入り口をふさぎます。
健常者でも、本来は胃の中に運ばれなければならない飲み物などが誤って気管内に入る誤嚥を起こしますが、むせたり、せき込んだりして気管から吐き出そうとします。たとえ誤嚥により口の中の細菌が唾液などの分泌物とともに気管や気管支、肺に入り込んだとしても、体力や抵抗力、免疫力により細菌を駆除できるので、生活していく上でさほど影響はありません。
高齢や脳の病気などの影響で嚥下機能の低下がある人は、飲み物や食べ物をうまく飲み込めず、喉頭蓋の動きが低下し、さらに誤嚥した際のむせたり、せき込んだりといった動作も鈍くなり、気管への誤嚥を招きやすくなります。誤嚥によって口の中の細菌が気管や気管支、肺に入り込んだ場合、体力や抵抗力、免疫の低下などにより細菌を駆除することができす、嚥下性肺炎にかかる危険度が増します。
超高齢化社会を迎えて、肺炎の重要性が増しています。抗生物質(抗菌剤)の発達にもかかわらず、肺炎は全死亡原因の第4位、高齢者に限ってみると第1位です。高齢者の肺炎のほとんどは、この嚥下性肺炎に相当し、再発を繰り返す特徴があります。
再発を繰り返すと、耐性菌が発生して抗生物質による治療に抵抗性を持つため、優れた抗生物質が開発された現在でも、体力や抵抗力、免疫力が全般的に落ちている高齢者が多く死亡する原因になっています。
嚥下性肺炎の原因となる誤嚥は、胃液などの消化液が食べ物とともに食道を逆流して肺に流れ込むような明らかで大量の誤嚥よりも、不顕性誤嚥といって、口の中の分泌物や胃液が少量ずつ肺内へ吸引される誤嚥のほうが原因として重要です。この不顕性誤嚥に合わせて、口の中の細菌が気管や気管支に吸引され、嚥下性肺炎が引き起こされます。
不顕性誤嚥は、特別な現象ではありません。元気な高齢者であっても、夜間は嚥下機能が低下するため、容易に誤嚥してしまいます。加齢とともに、のど仏の位置は下がり、嚥下の時に喉頭蓋が気管の入り口をふさぐのに時間がかかるようになるからです。特に、鎮静薬、向精神薬などの薬を服用している場合は、嚥下反射が抑えられ、不顕性誤嚥を起こしやすくなります。
肺炎は一般に、発熱、せき、痰(たん)、呼吸困難、胸痛などを主な症状としますが、これらの訴えが高齢者の場合ははっきりしません。また、肺炎は一般的に38℃以上の高熱を起こしますが、高齢者の場合は体温の上昇をみないか、あっても微熱程度のものが少なくありません。それに対して、呼吸数は増え、皮膚や舌の乾燥、すなわち脱水状態になることが多いといわれています。
嚥下性肺炎の検査と診断と治療
内科、呼吸器内科、呼吸器科の医師による診断は、胸のX線(レントゲン)検査で行われます。嚥下性肺炎では低酸素血症に陥っていることが多くあるため、パルスオキシメーターという医療機器によりSpO2(動脈血酸素飽和度)をモニターすることが、診断の参考となります。
原因となった細菌の特定のため、喀痰(かくたん)の培養検査を行います。気管支鏡で気管内採痰ができれば診断がより確実になりますが、発症者の状態があまりよくないことが多いので、細菌の特定は難しいこともしばしばあります。嚥下性肺炎を引き起こす主な原因となるのは、肺炎球菌です。
内科、呼吸器内科、呼吸器科の医師による治療では、原因となった細菌を殺菌するペニシリン系、セフェム系などの抗生物質を投与します。胃液を肺の中に吸い込んで肺炎になった場合、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)を短期に用いて肺炎を鎮める場合もあります。
さらに、低酸素血症に陥って呼吸不全(酸素欠乏)になった場合は、酸素吸入を行います。重症の呼吸不全では、人工呼吸器などによる治療も併せて行います。
嚥下性肺炎の多くは抗生物質の投与で治るものの、肺炎の原因である不顕性誤嚥が減らなければ、いったん改善した肺炎が悪化します。そこで、誤嚥を減らす予防策が重要となります。
何より大事なのは口の中を清潔に保ち、口の中でたくさんの細菌を増殖させないようにすることです。歯磨きを毎日して口の中の細菌を減らしたり、たとえ歯がなくともブラッシングをしたり、就寝前にポピヨンヨードでうがいすることも有効な方法です。
寝たきりの高齢者の場合は、仰向けに寝かして放置していると誤嚥が悪化するので、頭部や上半身をベッドで高くしたり、口腔(こうくう)ケアなどを行うと有効です。栄養状態の低下、筋力の低下、意識レベルの低下が誤嚥を増やすため、日ごろよりこれらに対処しておきます。
また、医師による治療で、嚥下機能を改善するアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、抗血小板薬(シロスタゾール)を投与することもあります。アンジオテンシン変換酵素阻害薬は高血圧の薬ですが、嚥下反射物質の濃度を上昇させて肺炎を予防します。抗血小板薬も脳梗塞(こうそく)の予防薬ですが、嚥下反射を高めて肺炎を予防します。
唐辛子(とうがらし)に含まれるカプサイシンにも、同様の作用が認められています。カプサイシンの入った辛い物を食べて、嚥下反射あるいはせき反射を高めておくことは、誤嚥予防、肺炎予防に役立ちます。
嚥下(えんげ)性肺炎とは、口の中に常在する細菌が唾液などの分泌物とともに気管内に入る誤嚥に引き続いて、発症する肺炎。誤嚥性肺炎とも呼ばれます。
飲み物や食べ物を飲み込む動作を嚥下といい、食道を通って胃に運ばれます。食道と気管は隣り合わせで、気管の入り口である喉頭(こうとう)が大きく開いており、このままでは飲み物や食べ物が気管に入ってしまいます。それを防ぐために、フタの役目を持つ喉頭蓋(がい)という軟骨からなる部分が、嚥下の動作とともに気管の入り口をふさぎます。
健常者でも、本来は胃の中に運ばれなければならない飲み物などが誤って気管内に入る誤嚥を起こしますが、むせたり、せき込んだりして気管から吐き出そうとします。たとえ誤嚥により口の中の細菌が唾液などの分泌物とともに気管や気管支、肺に入り込んだとしても、体力や抵抗力、免疫力により細菌を駆除できるので、生活していく上でさほど影響はありません。
高齢や脳の病気などの影響で嚥下機能の低下がある人は、飲み物や食べ物をうまく飲み込めず、喉頭蓋の動きが低下し、さらに誤嚥した際のむせたり、せき込んだりといった動作も鈍くなり、気管への誤嚥を招きやすくなります。誤嚥によって口の中の細菌が気管や気管支、肺に入り込んだ場合、体力や抵抗力、免疫の低下などにより細菌を駆除することができす、嚥下性肺炎にかかる危険度が増します。
超高齢化社会を迎えて、肺炎の重要性が増しています。抗生物質(抗菌剤)の発達にもかかわらず、肺炎は全死亡原因の第4位、高齢者に限ってみると第1位です。高齢者の肺炎のほとんどは、この嚥下性肺炎に相当し、再発を繰り返す特徴があります。
再発を繰り返すと、耐性菌が発生して抗生物質による治療に抵抗性を持つため、優れた抗生物質が開発された現在でも、体力や抵抗力、免疫力が全般的に落ちている高齢者が多く死亡する原因になっています。
嚥下性肺炎の原因となる誤嚥は、胃液などの消化液が食べ物とともに食道を逆流して肺に流れ込むような明らかで大量の誤嚥よりも、不顕性誤嚥といって、口の中の分泌物や胃液が少量ずつ肺内へ吸引される誤嚥のほうが原因として重要です。この不顕性誤嚥に合わせて、口の中の細菌が気管や気管支に吸引され、嚥下性肺炎が引き起こされます。
不顕性誤嚥は、特別な現象ではありません。元気な高齢者であっても、夜間は嚥下機能が低下するため、容易に誤嚥してしまいます。加齢とともに、のど仏の位置は下がり、嚥下の時に喉頭蓋が気管の入り口をふさぐのに時間がかかるようになるからです。特に、鎮静薬、向精神薬などの薬を服用している場合は、嚥下反射が抑えられ、不顕性誤嚥を起こしやすくなります。
肺炎は一般に、発熱、せき、痰(たん)、呼吸困難、胸痛などを主な症状としますが、これらの訴えが高齢者の場合ははっきりしません。また、肺炎は一般的に38℃以上の高熱を起こしますが、高齢者の場合は体温の上昇をみないか、あっても微熱程度のものが少なくありません。それに対して、呼吸数は増え、皮膚や舌の乾燥、すなわち脱水状態になることが多いといわれています。
嚥下性肺炎の検査と診断と治療
内科、呼吸器内科、呼吸器科の医師による診断は、胸のX線(レントゲン)検査で行われます。嚥下性肺炎では低酸素血症に陥っていることが多くあるため、パルスオキシメーターという医療機器によりSpO2(動脈血酸素飽和度)をモニターすることが、診断の参考となります。
原因となった細菌の特定のため、喀痰(かくたん)の培養検査を行います。気管支鏡で気管内採痰ができれば診断がより確実になりますが、発症者の状態があまりよくないことが多いので、細菌の特定は難しいこともしばしばあります。嚥下性肺炎を引き起こす主な原因となるのは、肺炎球菌です。
内科、呼吸器内科、呼吸器科の医師による治療では、原因となった細菌を殺菌するペニシリン系、セフェム系などの抗生物質を投与します。胃液を肺の中に吸い込んで肺炎になった場合、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)を短期に用いて肺炎を鎮める場合もあります。
さらに、低酸素血症に陥って呼吸不全(酸素欠乏)になった場合は、酸素吸入を行います。重症の呼吸不全では、人工呼吸器などによる治療も併せて行います。
嚥下性肺炎の多くは抗生物質の投与で治るものの、肺炎の原因である不顕性誤嚥が減らなければ、いったん改善した肺炎が悪化します。そこで、誤嚥を減らす予防策が重要となります。
何より大事なのは口の中を清潔に保ち、口の中でたくさんの細菌を増殖させないようにすることです。歯磨きを毎日して口の中の細菌を減らしたり、たとえ歯がなくともブラッシングをしたり、就寝前にポピヨンヨードでうがいすることも有効な方法です。
寝たきりの高齢者の場合は、仰向けに寝かして放置していると誤嚥が悪化するので、頭部や上半身をベッドで高くしたり、口腔(こうくう)ケアなどを行うと有効です。栄養状態の低下、筋力の低下、意識レベルの低下が誤嚥を増やすため、日ごろよりこれらに対処しておきます。
また、医師による治療で、嚥下機能を改善するアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、抗血小板薬(シロスタゾール)を投与することもあります。アンジオテンシン変換酵素阻害薬は高血圧の薬ですが、嚥下反射物質の濃度を上昇させて肺炎を予防します。抗血小板薬も脳梗塞(こうそく)の予防薬ですが、嚥下反射を高めて肺炎を予防します。
唐辛子(とうがらし)に含まれるカプサイシンにも、同様の作用が認められています。カプサイシンの入った辛い物を食べて、嚥下反射あるいはせき反射を高めておくことは、誤嚥予防、肺炎予防に役立ちます。
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